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明細書 :微生物燃料電池用電極及びそれを用いた微生物燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5494996号 (P5494996)
登録日 平成26年3月14日(2014.3.14)
発行日 平成26年5月21日(2014.5.21)
発明の名称または考案の名称 微生物燃料電池用電極及びそれを用いた微生物燃料電池
国際特許分類 H01M   8/16        (2006.01)
H01M   4/90        (2006.01)
H01M   4/96        (2006.01)
H01M   8/02        (2006.01)
C12P   3/00        (2006.01)
C12N   1/20        (2006.01)
C12M   1/40        (2006.01)
FI H01M 8/16
H01M 4/90 Y
H01M 4/96 M
H01M 4/96 B
H01M 8/02 E
C12P 3/00 Z
C12N 1/20 Z
C12M 1/40 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 19
出願番号 特願2012-544122 (P2012-544122)
出願日 平成23年5月16日(2011.5.16)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 7th Asian Conference on Electrochemistry in KUMAMOTO(ACEC2010)(2010年5月18~22日)において文書をもって発表
国際出願番号 PCT/JP2011/061199
国際公開番号 WO2012/066806
国際公開日 平成24年5月24日(2012.5.24)
優先権出願番号 2010257390
優先日 平成22年11月18日(2010.11.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年4月19日(2013.4.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】橋本 和仁
【氏名】渡邉 一哉
【氏名】趙 勇
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査官 【審査官】國島 明弘
参考文献・文献 特開2007-095471(JP,A)
特開2009-093861(JP,A)
特開2006-114375(JP,A)
特開2007-225444(JP,A)
特開2007-035437(JP,A)
特開2006-058289(JP,A)
国際公開第2011/025021(WO,A1)
調査した分野 H01M 4/86- 4/98
H01M 8/00- 8/24
特許請求の範囲 【請求項1】
カーボンを含む電極基盤、及びその表面の全部又は一部に形成されたカーボンナノワイヤからなる微生物燃料電池用電極であって、
前記電極基盤は、間隙及び/又は細孔を含む、繊維構造又は多孔質構造を有し、
前記間隙の長さ及び/又は幅、及び細孔の直径が6μm~20μmである、
前記微生物燃料電池用電極。
【請求項2】
カーボンナノワイヤの全部又は一部がナノワイヤネットワークを形成する、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
電極基盤がグラファイトからなる、請求項1又は2に記載の電極。
【請求項4】
前記間隙又は細孔内に電子供与微生物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電極を用いた微生物燃料電池。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の電極からなるアノード及び/又はカソード、
電解質溶液、及び
それらを収容する電解槽
を含んでなる、請求項5に記載の微生物燃料電池であって、
前記電解槽において、槽内の前記電解質溶液が、単一又は複数の種からなる電子供与微生物及び当該微生物の代謝に必要な栄養基質をさらに含む前記微生物燃料電池。
【請求項7】
カソードがガス透過性を有するエア・カソードで、かつ電解槽がアノード槽のみで構成される単槽構造を有する、請求項6に記載の微生物燃料電池。
【請求項8】
アノード又はカソードが設置される槽内に酸化還元メディエータ化合物、電子メディエータ及び/又は導電性微粒子をさらに含む、請求項6又は7に記載の微生物燃料電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物燃料電池に用いる電極、より具体的には、表面にカーボンナノワイヤ構造を有するカーボンを含む電極基盤からなる電極、及びそれを用いた微生物燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の化石燃料に替わる新たな発電システムとして微生物燃料電池が注目を集めている。
【0003】
微生物燃料電池とは、微生物の生物活性能力を利用して化学エネルギーを電気エネルギーに変換する発電システムである。微生物燃料電池は、燃料として有機排液、汚泥、食物残渣等の未利用のバイオマスを使用できることから、持続可能な発電システムであり、かつ発電に並行して有機廃棄物を分解処理できるという利点を有する。また、汚染物質を利用する能力を持つ微生物を使用すれば、汚染廃液の処理等の環境浄化も可能である。さらに、微生物自体が有機物から電子を取り出す生体触媒として機能するため、水素燃料電池等の従来の化学燃料電池のようなガス交換プロセス等を必要とせず、低コストで、極めて高いエネルギー変換効率を有するという利点もある。
【0004】
一方、現在の微生物燃料電池は、出力電流密度が低いという大きな問題を有しており、実用的な発電力を得るにはさらなる改良を必要としている。一般に、微生物燃料電池における出力電流密度の増加は、微生物から電極への電荷移動効率に依存する。また、この電荷移動効率は、電極表面積及び電極特性に影響される。
【0005】
そこで、上記問題を解決するために、例えば、HNQ(2-hydroxy-1,4-naphthoquinone)等の電子メディエータ(電子伝達体)を電解槽に添加して微生物から電極への電子伝達効率を向上させることで出力電流密度を高めるという試みがなされている(非特許文献1)。しかし、電子メディエータは、それ自体が一般的に高価であり、また人体等に対して有害なものが多いという問題がある。さらに、得られる電流発生量も実用性の面では不十分である。
【0006】
特許文献1では、電子蓄積型微生物変異体を用いて、さらに電極基盤となる炭素繊維にポリアニリンを塗布又はディッピングした微生物燃料電池が開示されている。炭素繊維を用いることで電極表面を増大させ、かつ電子メディエータとしてポリアニリンを被覆することで微生物から直接電子を効率よく抽出できるようにしたものである。しかし、この微生物燃料電池は、炭素繊維表面にポリアニリンの薄層被膜を形成しただけであり、微生物と電極の電子授受の向上にはさらなる改善の余地がある。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2007-324005号公報
【0008】

【非特許文献1】Rhoads A et al., 2005, Environ Sci Technol., 39:4666-4671.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記した問題点に鑑み、微生物燃料電池において微生物から電極への電荷移動効率をより一層高めることで高出力電流を発生することが可能な微生物燃料電池用電極の開発とその提供を目的とする。また、その電極を用いた高出力微生物燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記問題を解決するために鋭意研究を行った結果、カーボンを含む電極基盤表面に、カーボンナノワイヤ構造を形成させて電極表面積を増大することにより、微生物から電極への電荷移動効率が従来の微生物燃料電池用電極と比較して10倍~100倍も増強することを見出した。本発明は、当該知見に基づくものであり、すなわち以下を提供する。
【0011】
(1)カーボンを含む電極基盤、及びその表面の全部又は一部に形成されたカーボンナノワイヤからなる微生物燃料電池用電極であって、前記微生物燃料電池用電極は、間隙及び/又は細孔を含む、繊維構造又は多孔質構造を有し、前記間隙の長さ及び/又は幅、及び細孔の直径が6μm~20μmである、前記微生物燃料電池用電極。
【0012】
(2)カーボンナノワイヤの全部又は一部がナノワイヤネットワークを形成する、(1)に記載の電極。
【0013】
(3)電極基盤がグラファイトからなる、(1)又は(2)に記載の電極。
【0014】
(4)前記間隙又は細孔内に電子供与微生物を含む、(1)~(3)のいずれかに記載の電極。
【0015】
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の電極を用いた微生物燃料電池。
【0016】
(6)(1)~(4)のいずれかに記載の電極からなるアノード及び/又はカソード、電解質溶液、及びそれらを収容する電解槽を含んでなる、(5)に記載の微生物燃料電池であって、前記電解槽において、槽内の前記電解質溶液が、単一又は複数の種からなる電子供与微生物及び当該微生物の代謝に必要な栄養基質をさらに含む前記微生物燃料電池。
【0017】
(7)カソードがガス透過性を有するエア・カソードで、かつ電解槽がアノード槽のみで構成される単槽構造を有する、(6)に記載の微生物燃料電池。
【0018】
(8)アノード又はカソードが設置される槽内に酸化還元メディエータ化合物、電子メディエータ及び/又は導電性微粒子をさらに含む、(6)又は(7)に記載の微生物燃料電池。
【0019】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2010-257390号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の微生物燃料電池用電極によれば、電極の表面積を著しく増大させることが可能となり、それによって高出力電流密度を発生可能な電極を提供することができる。
【0021】
本発明の微生物燃料電池によれば、従来の微生物燃料電池と比較して出力を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(A)グラファイトプレート上に形成されたカーボンナノワイヤの走査電子顕微鏡図を示す。グラファイトプレート表面がナノワイヤネットワークを形成している直径40nm以下のカーボンナノワイヤで覆われているのがわかる。(B)実施例2においてGP又はGP-CNアノードの使用によって得られた発生電流を示す。
【図2】(A)グラファイトフェルトと、(B)グラファイトフェルトを構成する1本のグラファイトファイバの表面上に形成されたカーボンナノワイヤ(本図では、カーボンナノワイヤがナノワイヤネットワークを形成している)の走査電子顕微鏡図を示す。(C)グラファイトフェルトの表面上にカーボンナノワイヤを形成させた本発明の微生物燃料電池用電極の一形態を示す。
【図3】本発明の微生物燃料電池の一例を示す概念図。
【図4】実施例3のグラファイトフェルト(GF)又はグラファイトフェルト-カーボンナノワイヤ(GF-CN)アノード電極による微生物燃料電池の電圧(四角プロット)及び出力密度(丸プロット)を示す。(□)は、GF電極の電圧を、(■)は、GF-CN電極の電圧を、それぞれ示す。(○)は、GF電極の出力密度を、(●)は、GF-CN電極の出力密度を、それぞれ示す。
【図5】(A)実施例4のGF又はGF-CNアノード電極による微生物燃料電池の電圧(四角プロット)及び出力密度(丸プロット)を示す。(□)は、GF電極、(■)は、GF-CN電極の電圧をそれぞれ示す。(○)は、GF電極、(●)は、GF-CN電極の出力密度をそれぞれ示す。(B)実施例4の微生物燃料電池において、電解槽にHQNを加える前の、サイクリックボルタモグラムを示す。(C)実施例4の微生物燃料電池において、電解槽にHQNを加えた後の微生物燃料電池におけるサイクリックボルタモグラムを示す。(B)及び(C)において、破線(1)はGF電極の、実線(2)はGF-CN電極のサイクリックボルタモグラムをそれぞれ示す。
【図6】実施例5の微生物燃料電池におけるGF又はGF-CNアノード電極のPmax値の時間的変動を示す。(1)はGF電極を、(2)はGF-CN電極を、(3)はGF-PAN電極を、それぞれ示す。
【図7】本発明の微生物燃料電池用電極が繊維構造である場合の、電極を構成する各繊維の間隙の大きさと電子供与微生物(a)の大きさを示す概念図である。各繊維(b)の表面には本図では図示していないがカーボンナノワイヤが形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.微生物燃料電池用電極
1-1.概要
本発明の第1の実施形態は、微生物燃料電池用電極である。本発明の「微生物燃料電池用電極」とは、微生物燃料電池に用いる電極をいう。

【0024】
「微生物燃料電池」(microbial fuel cell: MFC)とは、電子供与微生物を生体触媒として、その微生物の呼吸等の代謝によって発生する電子を獲得又は抽出し、それを電極に伝達させることによって発電させる装置をいう。微生物燃料電池及び電子供与微生物については、「2.微生物燃料電池」の章で詳述するので、ここではその説明を省略する。

【0025】
1-2.微生物燃料電池用電極の構成
本発明の微生物燃料電池用電極は、電極基盤及びその表面の全部又は一部に形成されたカーボンナノワイヤによって構成されている。以下、本発明の微生物燃料電池用電極を構成する電極基盤及びカーボンナノワイヤについて具体的に説明をする。

【0026】
1-2-1.電極基盤
「電極基盤」とは、電極本体を構成する電子導電体をいう。電極基盤は、原則として、電極本体と外部回路とを連絡する導線との接続端子を有する。

【0027】
本発明の微生物燃料電池用電極を構成する電極基盤本体の材質は、カーボンを含む電子導電体である。ここでいう「カーボン」とは、いわゆる炭素原子(C)からなる物質であって、導電性を有するものをいう。例えば、グラファイト(黒鉛)や炭(活性炭、木炭)、カーボンブラック等が挙げられる。好ましくは、グラファイトである。本発明の電極基盤は、カーボンの他に、金属(合金を含む)又はその酸化物等の他の電子導電体を含むことができる。例えば、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスニウム(Os)、イリジウム(Ir)、インジウム(In)、スズ(Sn)等、又はそれらの合金、あるいはその酸化物を含んでいてもよい。

【0028】
本発明の微生物燃料電池用電極を構成する電極基盤は、それ自体が電極の形状を保持できる剛性を有していてもよい。例えば、電極がグラファイトで構成される場合、その厚さ又は太さを所定の大きさ以上に成形することによって、電極として一定形状を保持できるようになる。この場合、電極基盤自体が電極の支持体を兼ねることになる。

【0029】
あるいは、前記電極基盤は、カーボンブラックのようなパウダ状の微粒子や、被膜等の極めて薄い薄膜のように、それ自身が剛性を有さなくてもよい。この場合、電極基盤自体は、電極としての形状を保持できないため、電極形状を付与する他の物質から成る支持体表面上に形成される必要がある。「他の物質からなる支持体」の材質は、剛性を有する絶縁体で、かつ好ましくは耐水性の物質であれば特に限定はしない。例えば、ガラス、プラスチック、合成ゴム、セラミックス、又は耐水処理した紙や植物片が挙げられる。電極基盤を支持体表面上に担持させる方法として、例えば、塗布(浸漬を含む)、吹き付け、貼付、蒸着等が挙げられる。これらは、当該分野で公知の方法に基づいて行えばよい。例えば、カーボンブラックを適当な接着剤及びその溶剤と混合して、浸漬によってグラスウール表面上に固着させる方法が挙げられる。支持体表面上に形成される電極基盤の厚さは、その表面上に、後述するカーボンナノワイヤ構造を形成でき、かつ電極基盤に接続された導線に電子供与微生物から受け取った電子を伝達可能であれば、特に限定はしない。電極の大きさ、電極の生産コスト、電極を投入する槽内の環境等に応じて適宜定めればよい。

【0030】
1-2-2.カーボンナノワイヤ
本発明における微生物燃料電池用電極は、上述の電極基盤の表面の全部又は一部にカーボンナノワイヤを有する。「カーボンナノワイヤ(carbon nanowire)」とは、カーボンによって構成される線状ナノ構造体で、特に人工的に形成されたものをいう。具体的には、図2(B)で示されるような構造を有する線状ナノ構造体である。本発明においては、グラフェンが特定の構造をとることによって形成されるカーボンナノチューブやカーボンナノホーンもカーボンナノワイヤに包含される。

【0031】
本実施形態の微生物燃料電池用電極におけるカーボンナノワイヤは、同一面上に広がる複数の独立したナノワイヤから構成される2次元ナノワイヤ、及びナノワイヤネットワークをその構造の一形態として包含する。本明細書において「ナノワイヤネットワーク」とは、同一面上及び/又は異なる面上において隣接する個々のカーボンナノワイヤが、接触並びに/あるいは縦方向及び/又は径方向に成長することによって互いに融合して形成される3次元網目状構造をいう。例えば、図1(A)及び図2(B)に示す構造が該当する。ナノワイヤネットワークは、通常、約10nm~約1μm程の無数の細孔を有している。この大きさの細孔には、微生物は侵入できないが、酸化還元メディエータ化合物、電子メディエータ及び/又は導電性微粒子等の電子伝達性介在物質は侵入できる。このようなナノワイヤ構造を電極基盤表面に形成させることによって本発明の電極の表面積を劇的に増大させることが可能となる。なお、「電子伝達性介在物質」、「酸化還元メディエータ化合物」、「電子メディエータ」及び「導電性微粒子」については、「2.微生物燃料電池」の章で詳述するので、ここではその説明を省略する。

【0032】
本発明のカーボンナノワイヤは、当該分野で公知の方法に基づいて作製することができるが、グラファイトフェルト等のカーボンファイバ電極基盤の表面に、従来の化学蒸着法の条件でカーボンナノワイヤを形成させようとしても、その表面の疎水性により基盤表面にカーボンナノワイヤをうまく形成できない場合がある。これは、エタノール:水を1:3~3:1の割合、より好ましくは1:1の割合で混合させた混合液を用いて、カーボンファイバ電極基盤の表面が親水性になるように前処理を行うことによって解決され得る。具体的作製方法については、後述する「1-5.微生物燃料電池用電極の作製」の項で説明をする。

【0033】
1-3.微生物燃料電池用電極の構造
本発明の電極の構造は、特に限定はしないが、繊維構造又は多孔質構造を有することが好ましい。電極を繊維構造又は多孔質構造とすることにより電極表面に多数の凹凸が形成されるため、平板電極のような表面が平面状の電極と比べて電極表面積をより増大させることができるからである。その結果、「2.微生物燃料電池」の章で詳述する電子供与微生物又は電子伝達性介在物質から電極への電子伝達率が向上し、電子供与微生物から発生した電子を電極により効率よく伝達することができる。本発明の電極の構造は、前述のように、電極基盤自身が剛性を有する場合には、電極基盤の構造によって決定され、剛性がない場合には、支持体の構造によって決定される。

【0034】
本明細書で「繊維構造」とは、細い線状の電極単位が複数集合した構造をいう。例えば、図2(A)で示すような線状構造を有するグラファイトファイバの表面に図2(B)で示すようなカーボンナノワイヤが形成された電極単位が、図2(C)で示すように複数集合した構造をいう。このような繊維構造を有する電極の例としては、グラファイトフェルトやカーボンウール等のカーボンファイバを電極基盤として、その表面にカーボンナノワイヤを形成させたカーボンファイバ電極、又は電極基盤としてのカーボンブラックを金属ウール表面に担持させ、さらにカーボンナノワイヤを前記カーボンブラック上に形成させたようなカーボン/金属ファイバ電極、カーボンブラックをグラスウール表面に担持させ、さらにカーボンナノワイヤを前記カーボンブラック上に形成させたようなカーボン/グラスファイバ電極、カーボンブラックをペーパー表面に担持させ、さらにカーボンナノワイヤを前記カーボンブラック上に形成させたようなカーボン/セルロースファイバ電極、カーボンブラックをシルクフェルト上に担持させ、さらにカーボンナノワイヤを前記カーボンブラック上に形成させたようなカーボン/繊維状タンパク質電極、カーボンブラックをプラスチックウール上に担持させ、さらにカーボンナノワイヤを前記カーボンブラック上に形成させたようなカーボン/プラスチックファイバ電極等が挙げられる。好ましくは、グラファイトフェルトやカーボンウール等のカーボンファイバを電極基盤として、その表面にカーボンナノワイヤを形成させたカーボンファイバ電極である。

【0035】
本明細書で「多孔質構造」とは、その表面及び内部に多数の孔を有する構造をいう。このような多孔質構造を有する電極の例としては、例えば、多孔質体カーボンからなる電極基盤の表面にカーボンナノワイヤを形成させた電極、又は電極基盤としてのカーボンブラックを多孔質セラミック、多孔質プラスチック、植物片(例えば、木材)、動物片(例えば、骨、貝殻、スポンジ)等の表面に担持させ、さらにカーボンナノワイヤを前記カーボンブラック上に形成させたような電極が挙げられる。

【0036】
本発明の微生物燃料電池用電極の形状は、電極としての機能を果たすことができる形状であれば、特に限定はしない。本電極を使用する微生物燃料電池の形状等に応じて適宜定めればよい。例えば、平板状、略平板状、柱状、略柱状、球状、略球状、又はそれらの組み合わせが挙げられる。このような電極形状は、電極基盤自体が、電極の形状を保持できる剛性を有する場合には、電極基盤を前記所望の形状に構成することで決定できる。また、電極基盤自体に電極の形状を保持する剛性がない場合には、支持体を所望の形状に構成することで決定できる。

【0037】
一の実施形態において、本発明の微生物燃料電池用電極が繊維構造又は多孔質構造を有する場合、使用する電子供与微生物よりも大きい間隙又は細孔を一以上含むことが好ましい。電子供与微生物が電極の間隙又は細孔内に侵入することにより、滑面状の電極と比較して電子供与微生物又は電子伝達性介在物質から電極への電子伝達率を向上できる他、電子供与微生物を間隙又は細孔内で定着・増殖させることが可能となるからである。すなわち、本発明の微生物燃料電池用電極において、前記電子供与微生物よりも大きい間隙又は細孔は、微生物燃料電池用電極と電子供与微生物との接触表面積を増大させると共に、電極内部に電子供与微生物を定着させることによって電極内部で電極又はカーボンナノワイヤと電子供与微生物との接触を保持する機能を果たし得る。一般に、微生物燃料電池用電極で使用される電子供与微生物の大きさは、球菌であれば直径約0.5~2μm、また後述するシェワネラ属のような桿菌であれば短径約0.2~1μm及び長径約1~8μmである。したがって、前記間隙又は細孔の大きさは、これらの微生物が容易に侵入可能な大きさ、例えば、図7に示すような繊維構造の各繊維間の間隙であれば、長さ及び幅が6μm~20μm、好ましくは8μm~18μmあればよく、細孔であれば、直径が6μm~20μm、好ましくは8μm~18μmあればよい。通常、20μmを超える大きさになると電極あたりの電子供与微生物との接触率が低下し始め、また電解質液の水流又は水圧等による電極内部からの電子供与微生物の流出率も増加する。これらの傾向は、直径が100μmを超える大きさになるとより顕著になる。その結果、電子伝達性介在物質から電極への電子伝達率が低下し、また電子供与微生物が電極内部に定着しにくくなる。したがって、直径6~20μmを主たる間隙又は細孔の大きさとする繊維構造又は多孔質構造が望ましい。もっとも、前記電極は、その構造的特徴上、直径6~20μmの間隙又は細孔に伴い必然的に生じ得る直径20μmを超える大きさや、直径6μm未満の大きさの間隙や細孔を含んでいても構わない。

【0038】
また、一の実施形態において、本発明の微生物燃料電池用電極は、前記間隙又は細孔内に電子供与微生物を含むことができる。微生物燃料電池は、電子供与微生物を生体触媒に、そして有機性廃水等のバイオマスを燃料として発電を行う。したがって、本発明の微生物燃料電池用電極は、前記有機性廃水等のバイオマス中に浸漬して使用されるが、このようなバイオマス中には、通常、電子供与微生物以外の種々雑多な微生物が混在している。電子供与微生物以外の、電極との間で電子伝達に寄与しない微生物が、前記間隙又は細孔に侵入し、占有した場合、電子供与微生物と電極との接触率が減少し、結果的に本発明の電極の発電効率を低減させる可能性がある。そこで、本発明の電極の間隙又は細孔内に予め電子供与微生物を包含させ、占有させておくことができる。所定の電子供与微生物と電極との間で電子伝達をさせたい場合や電子供与微生物以外の微生物が多数存在するバイオマスを燃料として使用する場合に、この構成が便利である。ここで使用する電子供与微生物は、単一種に限られず、共存可能であり、かつ各微生物と電極との電子伝達を互いに抑制しない微生物どうしの場合であれば、複数種であってもよい。電極の間隙又は細孔内に予め電子供与微生物を包含させる方法は、特に限定しないが、通常は微生物として電子供与微生物のみを含む培養液等の溶液中に、本発明の電極を所定の期間、例えば、30分~3日、1時間~1日、6時間~12時間、浸漬させておけばよい。このような電極は、乾燥等を防ぐため使用時まで保水若しくは保湿しておくか、嫌気性電子供与微生物の場合であれば密封しておくことが好ましい。

【0039】
一の実施形態において、前記電子供与微生物を含む本発明の電極が、さらに微生物よりも小さい孔を有する筐体によって覆われていてもよい。これにより、本電極の使用時に電子供与微生物以外の微生物がバイオマスから前記間隙又は細孔内に侵入することを完全排除できるほか、電子供与微生物が電極外に拡散、又は流出しないように電極内又は電極周辺に封じ込めることができるため、より効率的に電位を発生させることができる。「微生物よりも」とは、バイオマス中に通常存在する微生物よりもという意味であって、電子供与微生物は言うまでもなく、他の微生物をも包含する。本明細書において「微生物よりも小さい孔」とは、微生物は通過できないが、電子供与微生物の燃料となり得る有機物及びその分解産物並びに電子メディエータ及び伝導性微粒子等の電子伝達性介在物質は通過できる大きさの孔をいう。具体的には、例えば、0.45μm以下、好ましくは0.2μm以下である。筐体は、本発明の電極とバイオマス中の微生物とを隔離することができれば、必ずしも剛性を有する必要はない。筐体の材質は、耐水性で上記サイズの孔を有するものであれば、特に限定はしない。例えば、市販の濾過滅菌フィルタで使用されるセルロースアセテート、親水性ポリフッ化ビニリデン、親水性ポリエーテルスルフォン等を利用することができる。このような構成の微生物燃料電池用電極は、様々な微生物の存在するバイオマス等を燃料に用いて特定の電子供与微生物のみで発電させたい場合には、特に有効である。

【0040】
本発明の微生物燃料電池用電極におけるカーボンナノワイヤは、前記電極基盤の表面の全部又は一部を被覆するように形成される。この構造により、例えば、グラファイトフェルトのみからなる電極を用いた微生物燃料電池と比較して、その表面積を劇的に増大させることが可能となる。一般に電極性能は、その表面積に依存する。それ故、本発明の電極は、従来の微生物燃料電池用電極と比べて飛躍的な出力値を得ることができる。

【0041】
ナノワイヤ構造によって形成される間隙及び/又は細孔には、通常、電子供与微生物は侵入できない。しかし、本発明の微生物燃料電池用電極においては、後述する電子伝達性介在物質がこの間隙及び/又は細孔に入り込み、ナノワイヤ構造による増大した表面積を有効に活用していると考えられる。それ故、電子供与微生物が侵入できなくとも、本発明の電極で電子を効率よく回収することができる。

【0042】
本電極は、微生物燃料電池において使用する場合には通常アノード(陰極、負極又はマイナス極)として機能するがカソード(陽極、正極又はプラス極)として用いることもできる。

【0043】
1-4.微生物燃料電池用電極のその他の用途
本発明の微生物燃料電池用電極は、微生物燃料電池のみならず、その構成上、本発明の電極が適用可能な微生物燃料電池以外の他の用途においても使用することができる。

【0044】
本発明の微生物燃料電池用電極は、カーボンナノワイヤによって従来の電極と比較してその表面積を劇的に増大させることによって電子伝導性微生物との直接的な又は間接的な電子伝達効率を高め、その結果、発生電位を飛躍的に増強することを特徴とする。

【0045】
したがって、本発明の電極は、当該原理を応用できる他の分野の電極においても同様の利用が可能となる。例えば、微生物太陽電池用電極、微生物電気分解セル(microbial electrolysis cell)、及びバイオセンサー等が挙げられる。

【0046】
微生物太陽電池とは、前述の特開2007-324005号公報に記載されているように、シアノバクテリア等の光合成細菌を用いて、当該細菌が光合成を行った際に発生する電子を電極に伝達することにより発電させる電池であり、微生物太陽電池用電極は、その電極として使用される。

【0047】
微生物電気分解セルとは、微生物燃料電池と同様の構成を有し、有機物から微生物が発生させた電流を使い、低い電位の電極でプロトンから水素を発生させる装置である。ここでいうバイオセンサーとは、微生物燃料電池と同様の構成を有する微生物を用いた検出装置をいう。例えば、BODセンサーが挙げられる。

【0048】
1-5.微生物燃料電池用電極の作製
本発明の微生物燃料電池用電極は、前述のように導電性の基盤上にカーボンナノワイヤを形成する当該分野で公知の全ての方法を用いて作製することができる。以下、本発明の微生物燃料電池用電極の具体的な作製方法について、一例を挙げて説明をする。

【0049】
(1)電極基盤の調製
電極基盤は、それ自体が支持体となる剛性を有する場合、必要に応じた大きさ及び/又は形状に調製する。例えば、グラファイトフェルトを電極基盤として使用する場合には、市販の適当な厚さのグラファイトフェルトを微生物燃料電池の形状に合わせて、所望の大きさ及び形状に切断すればよい。また、電極基盤を他の支持体上に形成させる場合には、例えば、グラスファイバのような適当な支持体を必要に応じた大きさ及び/又は形状に調製した後、その支持体上に電極基盤となるカーボンブラックを当該分野で公知の技術、例えば、塗布、蒸着等によって形成させてもよい。あるいは、そのような構成を有する市販の電極基盤を利用することもできる。

【0050】
なお、カーボンは、疎水性であることから、例えば、前記グラファイトフェルト等のカーボンファイバを電極基盤として使用する場合には、その表面を適当な条件下で親水化処理しておくことが好ましい。親水化処理の方法は、当該分野で公知の方法を用いればよい。例えば、実施例1に記載のように、36N程度の硫酸に一晩浸漬しておく方法が挙げられる。硫酸で表面処理し親水化させた電極基盤は、その後、例えば、ポリビニルアルコールと硝酸ニッケル六水和物((Ni(NO3)3・6H2O)を含むエタノール/水の混合液に浸漬し、乾燥後、焼結によって電極基盤表面に酸化ニッケル(NiO)の粒子からなるニッケル触媒層を形成させる。これによって、電極基盤表面の有機物を除き、続いて、水素(H2)及び窒素(N2)の混合ガスを用いて酸化ニッケル粒子を減じる処理を行うことで、電極基盤の表面処理を達成できる。

【0051】
(2)カーボンナノワイヤの形成
カーボンナノワイヤを電極基盤に形成させる方法は、特に限定はされず、当該分野で公知の方法を利用することができる。一例としては、電極基盤の表面上に直接合成させる方法が挙げられる。例えば、エチレン(C24)、水素及び窒素からなる混合ガスを流通させた高温加熱炉内で、表面を適当に前処理した電極基盤の表面上に合成させる方法が挙げられる。

【0052】
(3)洗浄
電極基盤表面上にカーボンナノワイヤを形成させた後は、エタノール等で数回、例えば、3回以上洗浄し、不純物を除去する。

【0053】
2.微生物燃料電池
2-1.概要と定義
本発明の第2の実施形態は、前記本発明のいずれか一の微生物燃料電池用電極を用いた微生物燃料電池である。

【0054】
「微生物燃料電池」とは、前述のように電子供与微生物を生体触媒として、その微生物の呼吸等の代謝によって発生する電子を獲得又は抽出し、それを電極に伝達させることによって発電させる装置をいう。

【0055】
「電子供与微生物」とは、代謝によって発生した電子を本発明の微生物燃料電池用電極に直接的に(例えば、細胞膜に存在する電子伝達体と電極との接触によって)又は間接的に(例えば、電子伝達性介在物質を介して)伝達することのできる微生物をいう。

【0056】
ここで、「電子伝達性介在物質」とは、例えば、(1)酸化還元メディエータ化合物、(2)電子メディエータ及び/又は(3)導電性微粒子のように微生物から電極に電子を運搬できる電子運搬体をいう。

【0057】
(1)「酸化還元メディエータ化合物」とは、主として電子供与微生物内で生産された後、細胞外に放出され、微生物/電極間を往復しながら自身の酸化還元によって微生物の代謝により発生した電子を電極に運搬することができる電子シャトル化合物をいう。例えば、フェナジン-1-カルボキサミド、ピオシアニン、2-アミノ-3-カルボキシ-1,4-ナフトキノン(ACNQ)が挙げられる。

【0058】
(2)「電子メディエータ」とは、酸化還元メディエータ化合物と同様の機能を有する人工的に合成された酸化還元化合物をいう。例えば、ニュートラルレッド、サフラニン、フェナジンエトスルフェート、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルーO、フェノチアジノン、レゾルフィン、ガロシアニン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン(HNQ)、ポルフィリンが挙げられる。

【0059】
(3)「導電性微粒子」とは、電子供与微生物と結合し当該微生物から電子を抽出した後、その電子を電極に伝達し得る、金属又は半導体からなる微粒子であり、例えば、酸化鉄、硫化鉄、酸化マンガンが挙げられる。

【0060】
本発明の微生物燃料電池において、電子供与微生物の種類は、本発明の微生物燃料電池用電極に電子を伝達可能な微生物であれば、特に限定はしない。好適には、細胞外電子伝達能を有する微生物である。「細胞外電子伝達能」とは、電子伝達体を酸化還元する一連の流れによって、生命活動に必要なエネルギーを獲得すると共に、発生した電子を細胞膜に存在する電子伝達体(例えば、膜結合型シトクロム)に伝達する能力をいう(Lovley D.R. ; Nat.Rev.Microbiol., 2006, 4, 497-508)。このような能力を有する微生物であれば、細胞膜上の電子伝達体に保持された電子を、電子伝達体と電極との直接的な接触によって容易に伝達でき、また酸化還元メディエータ化合物のような介在物質が微生物から容易に電子を抽出することができるので好ましい。細胞外電子伝達能を有する電子供与微生物としては、例えば、シェワネラ(Shewanella)属及びジオバクター(Geobacter)属のような異化的金属還元細菌、シュードモナス(Pseudomonas)属及びロドフェラックス(Rhodoferax)属等が挙げられる。シェワネラ属の細菌の具体例としては、シェワネラ・ロイヒカ(S. loihica)、シェワネラ・オネイデンシス(S. oneidensis)シェワネラ・プトレファシエンス(S. putrefaciens)、及びシェワネラ・アルガ(S. algae)が挙げられる。ジオバクター属の細菌の具体例としては、ジオバクター・サルフレドゥセンス(G. sulfurreducens)及びジオバクター・メタリレドゥセンス(G.metallireducens)が挙げられる。シュードモナス(Pseudomonas)属の細菌の具体例としては、シュードモナス・エアルギノーザ(P. aeruginosa)が挙げられる。ロドフェラックス(Rhodoferax)属の細菌の具体例としては、ロドフェラックス・フェリレドゥセンス(R. ferrireducens)が挙げられる。さらに、酸化還元メディエータ化合物を産生し、それを細胞外に放出することのできる電子供与微生物は、本発明上、特に好ましい。酸化還元メディエータ化合物が後述するカーボンナノワイヤと直接電子伝達を行うことにより、本発明の効果をより発揮し得るからである。酸化還元メディエータ化合物を生産・放出する電子供与微生物の例としては、例えば、前記シェワネラ属、シュードモナス属及びロドフェラックス属等が挙げられる。電子伝達性微生物は、野生型及び変異型を問わない。例えば、遺伝子操作によって、より多くの電子を細胞外に放出する変異型電子供与微生物及び/又はより多くの酸化還元メディエータ化合物を生成・放出する変異型電子供与微生物は、本発明の目的に合致し、より好ましい。

【0061】
2-2.微生物燃料電池の構成
本発明の微生物燃料電池の構成について、図3に示す本発明の微生物燃料電池の一概念図を用いて説明する。この図で示す微生物燃料電池は、一対の電極(31及び32)、隔膜(33)及び電解質溶液(34及び35)を収容した電解槽(30)、並びに前記一対の電極と電気的に接続された外部回路(例えば、データロガー)(36)を備える。ただし、本発明の微生物燃料電池の構成は、この構成に限定されるものではなく本発明の微生物燃料電池用電極を使用可能な公知のあらゆる微生物燃料電池を含むものとする。

【0062】
2-2-1.電極
本発明の微生物燃料電池は、電極として、一対のアノード(31)及びカソード(32)を備える。

【0063】
アノードには前記本発明の前記第1の実施形態の微生物燃料電池用電極を使用する。アノードは、その少なくとも一面が、後述するアノード槽の電解質溶液と直接接している必要がある。通常、アノードは、電解槽の電解質溶液中に浸漬して使用される。

【0064】
カソードは、特に限定しない。例えば、炭素や金属のような導電体を含むものであればよい。図3では、大気開放されたエア・カソード(空気正極)を使用した場合を示している。エア・カソードは、気体(特に酸素)透過性を有するものが好ましい。例えば、カーボンペーパーやカーボンクロス、白金粒子を担持した4-ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。

【0065】
2-2-2.隔膜
隔膜(33)は、電解槽内で前記一対の電極を分離するように構成されている。隔膜の材質は、カチオンを選択的に透過できるものであれば、特に限定はしない。例えば、プロトン(H+)交換膜(PEM)が挙げられる。プロトン交換膜は、プロトン伝導性のイオン交換高分子電解質であって、例えば、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、又は有機/無機複合化合物が挙げられる。前記パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂は、例えば、スルホ基(-SO3H)及び/又はカルボキシル基(-COOH)を有するパーフルオロビニルエーテルを基礎とする重合単位、並びにテトラフルオロエチレンを基礎とする重合単位を含む共重合体を含む。具体的な例としては、ナフィオン(登録商標:デュポン社)が挙げられる。また、前記有機/無機複合化合物は、炭化水素系高分子(例えば、ポリビニルアルコールを主体とする)と無機化合物(例えば、タングステン酸)が複合化した化合物からなる物質である。これらは、公知の膜であり、ナフィオンのように、多くが市販されていることから、それらを利用することも可能である。

【0066】
また、カソードを大気開放する場合、カソード(エア・カソード)と隔膜とを結合して一体化させることもできる。このような一体型カソード/隔膜は、単槽型微生物燃料電池で使用することができる。

【0067】
なお、本発明の微生物燃料電池において、隔膜(33)は、必須の構成要件ではない。しかし、電極の寿命等、電池の実用性を考慮した場合、隔膜を設けることが望ましい。

【0068】
2-2-3.電解質溶液
電解質溶液(34)は、電解質を包含する溶液である。本発明の微生物燃料電池で使用する電解質は、水中で電離可能な物質であれば特に限定はしない。また、単一種に限られず、複数の電解質の混合物を用いることもできる。電解質の具体例としては、K2HPO4/KH2PO4、NaCO3/NaHCO3、などが挙げられる。

【0069】
2-2-4.電解槽
電解槽は、本発明の微生物燃料電池の本体部を構成する。電解槽は、隔膜によってアノード槽とカソード槽に分離された二槽型、及びエア・カソードと隔膜が一体化し、アノード槽のみからなる等の構成を有する単槽型等が知られているが、本発明の微生物燃料電池では、いずれの型も使用することができる。

【0070】
二槽型の場合、アノード槽ではアノードの、またカソード槽ではカソードの、全部又は一部がそれぞれ前記電解質溶液と直接接するように配置される。燃料槽であるアノード槽には、前記電解質溶液に加えて、電子供与微生物、及びその燃料及び電子供与体、並びに必要に応じて電子メディエータ及び導電性微粒子等の電子伝達性介在物質を包含する。

【0071】
アノード槽において用いる電子供与微生物は、単一種、又は複数種のいずれであってもよい。複数種の電子供与微生物からなる混合系は、有機排水や汚泥等を燃料として使用する場合、外部から電子供与微生物を加えなくとも、それらに元来生息する電子供与微生物をそのまま利用することができる利点で優れている。例えば、シュードモナス・エアルギノーザやジオバクターは、土壌、淡水、海水等の自然環境の至るところに生息しているため、通常、汚泥等を燃料とすれば、外部から添加することなく利用できる。また、前述のようにシュードモナス・エアルギノーザは酸化還元メディエータ化合物を生産できるため本発明の電子供与微生物としては非常に有用である。

【0072】
一方、空気層であるカソード槽は、酸素を含む空気を供給し得るように構成されている。

【0073】
燃料は、電子供与微生物の維持及び/又は増殖に必要な栄養基質である。栄養基質は、その微生物が代謝可能な物質であれば、特に限定されるものではない。例えば、メタノールやエタノールのようなアルコール類、又は、グルコース等の単糖類、デンプン、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、マルトース、スクロースや、ラクトース等の多糖類等の有用資源、並びに農産業廃棄物、有機排液、し尿、汚泥、食物残渣等の未利用資源、すなわち有機性廃棄物を用いることができる。また、燃料は、電子供与微生物の電子供与体となり得る物質(例えば、乳酸)を含み得る。燃料は、アノード槽における電子供与微生物の維持及び増殖のため、及び/又は電子供与体の供給のため、必要に応じて追加することができる。

【0074】
電子伝達性介在物質は必要に応じて電解槽に添加すればよい。包含される電子供与微生物の少なくとも1種が酸化還元メディエータ化合物を生産・放出可能であれば、電子伝達性介在物質は、必ずしも添加せずともよい。逆に、包含される電子供与微生物がいずれも酸化還元メディエータ化合物を生産・放出できない種である場合には、電子伝達性介在物質の添加は必須となる。
【実施例】
【0075】
<実施例1:微生物燃料電池用電極の作製>
本実施例では、本発明の電極基盤及びその表面の全部又は一部に導電性物質からなるナノワイヤが形成された微生物燃料電池用電極(以下、「(電極基盤の種類)-(導電性物質の種類)ナノワイヤ電極」のように表す)であるグラファイトフェルト-カーボンナノワイヤ電極(A)、グラファイトプレート-カーボンナノワイヤ電極(B)及びグラファイトフェルト-ポリアニリンナノワイヤ電極(C)の作製について述べる。
【実施例】
【0076】
A.グラファイトフェルト-カーボンナノワイヤ電極の作製
(1)グラファイトフェルト(以下、「GF」とも表す)の調製
GF(綜合カーボン社製、厚さ3mm)を1cm2に切断した後、表面の親水性を高めるために36Nの硫酸中に室温で1日浸漬した。25g/L(w/v)のポリビニルアルコールと50g/Lの硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO3)3・6H2O)を含む水/エタノール(1:1)の混合液に浸漬させた後、120℃で10分間、オーブンで乾燥させた。その後、400℃で2時間焼結して、GF表面上に酸化ニッケル(NiO)の粒子からなる薄膜層を形成させ、GF表面に存在する有機物を除去した。続いて、総流量100sccmで20%の水素(H2)及び80%窒素(N2)(v/v)の混合ガスを用いて、酸化ニッケル粒子を減じる処理を行った。
【実施例】
【0077】
(2)カーボンナノワイヤ(以下、「CN」とも表す)のGF表面への形成
カーボンナノワイヤは、化学蒸着(CVD: chemical vapor deposition)法によって直接GF表面上に形成させた。まず、750℃の管石英炉内において20%のエチレン(C2H4)、20%の水素及び60%の窒素からなる混合ガスを絶えず流通させながら、上記(1)で表面の前処理を行ったGFを、ニッケル触媒を用いて4時間インキュベーションして、その表面にカーボンナノワイヤを直接合成させた。合成後、エタノールで洗浄し、実験使用時まで蒸留水中に保存した。これを本発明のグラファイトフェルト-カーボンナノワイヤからなる微生物燃料電池用電極(GF-CN電極)とした。
【実施例】
【0078】
B.グラファイトプレート-ポリアニリンナノワイヤ電極の作製
(1)グラファイトプレート(以下、「GP」とも表す)の調製
表面を磨いた3cm2のGP(コクゴ社製)を、上記「A.グラファイトフェルト-カーボンナノワイヤ電極の作製」における「(1)グラファイトフェルトの調製」と同一の方法によって調製した。
【実施例】
【0079】
(2)カーボンナノワイヤ(以下、「CN」とも表す)のGP表面への形成
上記「A.グラファイトフェルト-カーボンナノワイヤ電極の作製」における「(2)カーボンナノワイヤのGF表面への形成」と同一の方法によって調製した。得られた電極を本発明のグラファイトプレート-カーボンナノワイヤからなる微生物燃料電池用電極(GP-CN電極)とした。
【実施例】
【0080】
C.グラファイトフェルト-ポリアニリンナノワイヤ電極の作製
(1)グラファイトフェルトの調製
上記「A.グラファイトフェルト-カーボンナノワイヤ電極の作製」における「(1)グラファイトフェルトの調製」と同一の方法によって調製した。
【実施例】
【0081】
(2)ポリアニリンナノワイヤ(以下、「PAN」とも表す)のGF表面上への形成
電解液としてのモノマー溶液は、0.2Mアニリンモノマー(和光純薬)を包含する1M硫酸溶液とした。
【実施例】
【0082】
導線であるチタンワイヤの一端を(1)で調製したGFの一端に接続し、これを作用電極とし、導線の他端をポテンショスタット(HZ-5000、北斗電工)に接続した。さらに参照電極(飽和KCl溶液に浸漬されたAg/AgCl電極)及び対極(白金)の一端を前記ポテンショスタットに接続した。これらの電極を前記モノマー溶液に浸漬し、続いて、作用電極の電位を参照電極に対して-0.5V~1.3V間に設定した後、50mV/秒の電極スキャン速度で、往復10回のスキャン回数によってGF表面上に、PANを電着形成させた。
【実施例】
【0083】
PANを電着形成したGFをポテンショスタットから外し、蒸留水で3回洗浄した後、乾燥させた。これを本発明のグラファイトフェルト-ポリアニリンナノワイヤからなる微生物燃料電池用電極(GF-PAN電極)とした。
【実施例】
【0084】
<実施例2:本発明の微生物燃料電池用電極における発電能の検証>
本発明の微生物燃料電池用電極における発電能を、ポテンショスタットシステムを用いた電気化学セルで検証した。
【実施例】
【0085】
1.電極
アノードとしての作用電極は、以下の組合せで用いた。
【実施例】
【0086】
実施例1において作製したGP-CN電極及び対照電極としてGPのみからなる電極(GP電極)をそれぞれ用いた。GP電極は、実施例1の「B.グラファイトプレート-カーボンナノワイヤ電極の作製」における「(1)グラファイトプレートの調製」で調製されたものを用いた。各電極サイズは同一である。
【実施例】
【0087】
また、白金極及びAg/AgCl(飽和KCl)極をそれぞれ、対極及び参照電極とした。
【実施例】
【0088】
2.電子供与微生物
電子供与微生物として、シェワネラ・ロイヒカ(Shewanella loihica)PV-4株(American type culture collection: ATCC No.BAA-1088;2008年版)を用いた。
【実施例】
【0089】
予めS. loihica PV-4を5mLのLB培地(Difco社)に植菌し、30℃にて一晩、好気的に培養した。培養液を遠心して菌体を回収し、1mLのDM培地(Difined Media)に懸濁し、この懸濁液を電解槽に添加した。DM培地の組成は、2.5g/LのNaHCO3、0.08g/LのCaCl2・2H2O、1.0g/LのNH4Cl、0.2g/LのMgCl2・6H2O、10g/LのNaCl、7.2g/LのHEPESである。また、S. loihica PV-4への電子供与体として20mM乳酸ナトリウム(和光純薬)を、また本培養時にはS. loihica PV-4の成育に必要な微量養分を供給するため0.5g/Lのイースト・エクストラクト(和光純薬)を加えた。
【実施例】
【0090】
3.ポテンショスタットシステムの調製
本実施例で使用したポテンショスタットシステムは、以下のようにして調製した。まず、電解槽の底部にアノードである作用電極を敷き、DM-L培地5mLを槽内に入れ、純窒素で10分間パージした。対極及び参照電極を槽内に入れた後、ポテンショスタット(HSV-100、北斗電工)を用いて、参照電極(Ag/AgCl電極)に対して0.2Vの定電圧を印加した電解槽内に約2×108細胞のS. loihica PV-4を含む前記前培養液を添加した。
【実施例】
【0091】
(結果)
結果を図1(B)に示す。この図は、アノードとして、GP-CN電極又はGP電極を用いた時のS. loihica PV-4から得た発生電流密度の時間的経緯を示している。
【実施例】
【0092】
GP電極を用いた場合、電流はS. loihica PV-4を投入(0時間)後に徐々に増加し、30時間後、約10μA/cm2の一定値に達した。一方、本発明の微生物燃料電池用電極であるGP-CN電極を用いた場合には、S. loihica PV-4を投入して約15時間後には、約150μA/cm2にまで達する非常に大きな電流が得られた。その後、電流は乳酸の枯渇と共に下降したが、GP-CN電極は、電子供与体として20mMの乳酸を電解槽に数回添加(図1(B)の白矢印)することによって直ちに回復し、最高値270μA/cm2の高い値に達した。一方、GP電極は、乳酸添加後に回復したものの、約10μA/cm2の電流の増加は見られなかった。
【実施例】
【0093】
以上の結果から、グラファイトプレート表面にカーボンナノワイヤを形成させた本発明の微生物燃料電池用電極は、電子供与微生物との高親和性及びそれによる電子回収効率の高さから、従来の生物燃料電池用電極と比較すると微生物燃料電池用電極として非常に優れた発電能を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0094】
<実施例3:繊維構造を有する本発明の微生物燃料電池用電極における発電能の検証>
電子メディエータ及び導電性微粒子を含まない微生物燃料電池における、繊維構造を有する本発明の微生物燃料電池用電極の発電能を検証した。
【実施例】
【0095】
1.電極
アノードは、実施例1において作製したGF-CN電極及びその対照電極であるGF電極を用いた。電極サイズは、いずれも1cm2で同一である。
【実施例】
【0096】
カソードは、エア・カソードを用いた。エア・カソードは、8mg/cm2の白金粒子を担持した4-ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から成る(シグマ社)。
【実施例】
【0097】
2.電子供与微生物の調製
電子供与微生物は、日本の釜石市にて採取した水田の土に包含された微生物を用いた。
【実施例】
【0098】
3.電解槽の調製
本実施例で使用した電解槽は、図3に示す本発明の微生物燃料電池において隔膜(33)のない単槽型電解槽からなる。また、槽内には、電子供与微生物及び栄養基質が添加された電解質溶液が収容されている。具体的には、15mLの容量を有する電解槽に、電解質溶液として、200mMのK2HPO4/KH2PO4(pH6.8)を含む12mLのバッファ溶液を入れ、また、栄養基質として、スターチ:ペプトン:フィッシュミールを3:1:1(289g COD/L、COD=化学的酸素要求量)で混合した有機混合基質を用いた。この有機混合基質は、本発明の微生物燃料電池に使用するバイオマスのモデルである。前記有機混合基質を一日に0.2~0.4mLで電解槽に添加した。続いて、培地を5分間窒素でパージした。500mg(湿重量)の水田土壌を電解槽に加え、30℃で嫌気的に培養した。その後、前記有機混合基質(300g COD/L)を電解槽に1日あたり0.2mL添加した。
【実施例】
【0099】
電流/電圧(IV)カーブ及び出力カーブを得るために、ポテンショスタット(HA-1510、北斗電工)を用いて、様々な総電圧における電流を測定した。
【実施例】
【0100】
(結果)
図4に結果を示す。図4は、各アノードを用いた時の微生物燃料電池のIV及び出力をそれぞれ示している。アノードにGF電極を用いた場合、0.08mA/cm2の短絡電流密度(○)及びPmaxで24μW/cm2の出力密度(□)がそれぞれ得られた。一方、アノードにGF-CN電極を用いた場合、0.51mA/cm2の短絡電流密度(●)及びPmaxで130μW/cm2の出力密度(■)がそれぞれ得られた。すなわち、GF表面をCNで被覆することで、出力が5倍以上向上することが明らかとなった。
【実施例】
【0101】
実施例2及び3の結果から、GP又はGFの電極表面上にカーボンナノワイヤを形成することで、その微生物燃料電池用電極は、微生物燃料電池において極めて有効な電子回収体となることが判明した。
【実施例】
【0102】
本実施例の微生物燃料電池は、実用化段階で使用される微生物燃料電池により近い系で構成されている。例えば、使用した電子供与微生物は、水田の土に包含されていたものであって、同定はされていない。またその土は、本発明の電子供与微生物となり得ない他の多くの微生物も包含している。すなわち、本系は、電子供与微生物を外部から必ずしも添加せずとも、実際の微生物燃料電池において燃料として使用される汚泥や有機排液等をそのまま用いることで、それらに普遍的に存在する電子供与微生物によって、本発明の微生物燃料電池が本発明の効果を十分に奏し得ることを示している。
【実施例】
【0103】
<実施例4:電子メディエータを有する本発明の微生物燃料電池用電極における発電能の検証>
電子メディエータを含む微生物燃料電池における本発明の微生物燃料電池用電極の発電能を検証した。
【実施例】
【0104】
本実施例における方法は、原則、実施例3の方法に準じ、電極、電子供与微生物、及び電解槽の基本構成は、実施例3と同一のものを使用した。
【実施例】
【0105】
本実施例に特徴的な点としては、電解槽に、さらに0.5mMのHNQ(2-ヒドロキシー1,4-ナフトキノン)を加えている。HQNは、微生物燃料電池において電流を増強するために使用される典型的な人工電子メディエータ化合物である。
【実施例】
【0106】
(結果)
図5(A)に結果を示す。図5(A)は、各アノードを用いた時の微生物燃料電池のIV及び出力をそれぞれ示している。HQNを有する微生物燃料電池では、アノードにGF-CN電極を用いた場合に、Pmax(■)は、600μW/cm2にも達した。すなわち、本発明の微生物燃料電池用電極であるGF-CN電極を用いた実施例3の微生物燃料電池に、電子メディエータを加えることで、出力がさらに4.5倍以上向上することが明らかとなった。
【実施例】
【0107】
<実施例5:各微生物燃料電池用電極のサイクリックボルタモグラム>
実施4における各アノードを用いた微生物燃料電池においてサイクリックボルタモグラムを測定し、微生物混合存在下における電子伝達特性を調べた。サイクリックボルタモグラムとは、電気化学セルにおいて、参照極に対して作用極の電位を連続的に変化させてその際に流れる電流を測定するものである。その際の+と‐のピークの中点から、この反応系の酸化還元電位が求められる。
【実施例】
【0108】
(結果)
図5(B)及び(C)に結果を示す。(B)は、実施例4の微生物燃料電池において、電解槽にHQNを加える前の、実質的に実施例3の微生物燃料電池の、サイクリックボルタモグラムを、(C)は、電解槽にHQNを加えた後の微生物燃料電池におけるサイクリックボルタモグラムを、それぞれ示す。(B)及び(C)において、破線(1)はGF電極の、実線(2)はGF-CN電極のサイクリックボルタモグラムをそれぞれ示す。
【実施例】
【0109】
これらの図においては、GF電極を用いた場合に比べGF-CN電極を用いた場合に、電解液中の酸化還元種を示すピークが大きくなっている。これは、電子移動に関与する酸化還元種の量が増大したからであり、GF-CN電極の電極としての優位性を示すものである。
【実施例】
【0110】
<実施例6:本発明の微生物燃料電池用電極と従来技術の微生物燃料電池用電極との発電能の比較>
電子メディエータ及び導電性微粒子を含まない微生物燃料電池において、本発明の微生物燃料電池用電極と従来技術の微生物燃料電池用電極との発電能を比較した。
【実施例】
【0111】
(方法)
アノードとして、実施例1において作製したGF-CN電極及びその対照電極であるGF電極に加え、GF-PAN電極を用いたことを除けば、カソード、電子供与微生物及び電解槽の構成及び方法は、実施例3と同一である。
【実施例】
【0112】
(結果)
図6に結果を示す。■プロットで表される(1)は、GF電極の、★プロットで表される(2)は、GF-CN電極の、そして▲プロットで表される(3)は、GF-PAN電極の、Pmaxの時間的変化を示している。GF電極のPmaxは、約30μW/cm2で比較的安定化した。GF-PAN電極のPmaxは、7日後に約180μW/cm2もの値に達したが、その後、急速に減少し31日後にはGF電極と同程度になった。一方、GF-CN電極は、GF-PAN電極のPmaxの最高値には達しないものの、10日後には約120μW/cm2の値に達し、その後、約120μW/cm2で比較的安定化した。この結果から、本発明の構成を有するGF-CN電極は、様々な異化活性を示す天然の微生物群集の存在下において、非常に安定な発電能を有することが明らかとなった。
【実施例】
【0113】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6