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明細書 :多点プローブ及びそれを構成する電子接点シート、多点プローブアレイ並びに多点プローブの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-226257 (P2014-226257A)
公開日 平成26年12月8日(2014.12.8)
発明の名称または考案の名称 多点プローブ及びそれを構成する電子接点シート、多点プローブアレイ並びに多点プローブの製造方法
国際特許分類 A61B   5/0408      (2006.01)
A61B   5/0492      (2006.01)
G01R   1/067       (2006.01)
A61B   5/0478      (2006.01)
FI A61B 5/04 300E
G01R 1/067 B
A61B 5/04 300H
A61B 5/04 300Q
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 29
出願番号 特願2013-107229 (P2013-107229)
出願日 平成25年5月21日(2013.5.21)
発明者または考案者 【氏名】関谷 毅
【氏名】染谷 隆夫
【氏名】酒井 真理
出願人 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
【識別番号】100147267、【弁理士】、【氏名又は名称】大槻 真紀子
審査請求 未請求
テーマコード 2G011
Fターム 2G011AA10
2G011AA12
要約 【課題】従来のプローブに比べて格段に高空間分解能が実現可能な多点プローブを提供する。
【解決手段】本発明の多点プローブ100は、シート状の絶縁基材に、互いに離間して配置する複数の電子接点2と、各電子接点2に接続された複数の配線とを有する電子接点シートを、その一端から他端に向けて巻回することにより多層に積層して構成された管状の積層体10Aからなる多点プローブであって、電子接点2はシート状の絶縁基材で覆われることなく露出し、配線は、最上層の配線3a以外(3b、3c)は少なくともその一部がシート状の絶縁基材に覆われるように積層されていることを特徴とする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
シート状の絶縁基材に、列状に離間して配設された複数の電子接点と、各電子接点に接続された複数の配線とを有する電子接点シートを、その一端から他端に向けて巻回することにより多層に積層して構成された管状の積層体からなる多点プローブであって、
前記電子接点は前記シート状の絶縁基材で覆われることなく露出し、前記配線は、最上層の配線以外は少なくともその一部が前記シート状の絶縁基材に覆われるように積層されていることを特徴とする多点プローブ。
【請求項2】
軸状の芯材を備え、前記電子接点シートは前記芯材の外周面に巻回されていることを特徴とする請求項1に記載の多点プローブ。
【請求項3】
前記複数の電子接点は、前記シート状の絶縁基材の一方の面において、前記電子接点シートの一端側の縁部に沿って配置されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の多点プローブ。
【請求項4】
前記シート状の絶縁基材は、前記縁部が前記管状の積層体の一端から他端に向けて後退するように形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の多点プローブ。
【請求項5】
前記複数の電子接点は、前記管状の積層体の軸線を基準として螺旋状に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の多点プローブ。
【請求項6】
前記複数の配線は、前記複数の電子接点を起点として所定範囲にわたり前記管状の積層体の軸線方向に沿って延在されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の多点プローブ。
【請求項7】
各配線に接続され、外部回路に接続される複数のパッドが、前記電子接点シートの前記他端の近傍においてその他端に沿って配置されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の多点プローブ。
【請求項8】
前記電子接点シートは、前記複数の電子接点及び前記複数のパッドが露出するように、第1の絶縁素材で被覆されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の多点プローブ。
【請求項9】
前記シート状の絶縁基材において、前記配線が配設された面の他方の面に、第1のシールド導電膜が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の多点プローブ。
【請求項10】
前記シート状の絶縁基材において、前記配線が配設された面に、第2のシールド導電膜が形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の多点プローブ。
【請求項11】
前記シート状の絶縁基材に、前記複数の電子接点に接続された増幅器を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の多点プローブ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の多点プローブが、ベース基板上に離間して複数立設されていることを特徴とする多点プローブアレイ。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の多点プローブを構成する電子接点シート。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載の多点プローブの製造方法であって、
前記電子接点シートを、その一端から他端に向けて、前記複数の電子接点が露出するように巻回した後に、全体に第2の絶縁素材を被覆し、その後、前記複数の電子接点及び複数のパッド上の第2の絶縁素材を除去することを特徴とする多点プローブの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多点プローブ及びそれを構成する電子接点シート、多点プローブアレイ並びに多点プローブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体表面および生体内部から発せられる生体信号を検出することは現在の健康状態を把握するだけでなく、将来起こり得る疾患を事前に検知することを可能にするという点で、健康で豊かな社会を実現する次世代医療技術として注目されている。
【0003】
この生体信号を、高空間分解能で検出することは疾患を詳細に調べる上で極めて重要である。
例えば、脳や脊髄等の生体組織の電気信号の検出は、先端部に複数の電圧検出用電子接点が形成されたプローブを脳に刺入して行われる(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
特許文献1に開示されたプローブは、シート状もしくは板状の絶縁基材(以下適宜「平板絶縁基材」という)上に、電子接点とそれに接続された配線とを備える構成である。
また、特許文献2に開示されたプローブは、同じく平板絶縁基材上に、立設するプローブ電子接点と、それに接続する配線とを備える構成である。
一方、管状の構造体、例えばカテーテルや内視鏡の側面に電気信号を検出する電子接点やセンサー等の電子接点を形成したシート状の絶縁基材を、螺旋状に巻きつけて電気的、化学的、機械的生体信号を検知するデバイスが本発明者らによって提案されている(非技術文献1)。この方法では、管状の構造体表面に多数の電気接点を配設することが可能である。
また、生体に適用するデバイスでは、生体信号の検出だけでなく、生体へ刺激を与える電子接点や、生体への刺激付与とその応答を検出する入出力電子接点の組み合わせで生体情報を検出する構成が知られている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第4406697号公報
【特許文献1】特開2012-130519号公報
【0006】

【非特許文献1】Tsuyoshi Sekitani, Ute Zschieschang, Hagen Klauk, Takao Someya, “Flexible organic transistors and circuits with extreme bending stability”, Nature Material 9, 1015-1022, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されたプローブによって、脳の一部位の電気信号を調べることはできるが、その3次元的な空間分解能は十分でなく、脳の多数の部位間の信号伝達を調べるには、広範囲に極めて高密度に電子接点が形成されたプローブが求められている。
また、非特許文献1に開示されたシート状のプローブでは、広範囲で高密度に電子接点を形成すると、螺旋状の巻回し距離が長くなるとともに、配線の数が著しく増加し、配線抵抗の増加による信号検出精度の低下や、電子接点数が配線数で限定される等の課題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、従来のプローブに比べて格段に高空間分解能が実現可能な多点プローブ及びそれを構成する電子接点シート、多点プローブアレイ並びに多点プローブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用した。
本発明の一態様に係る多点プローブは、シート状の絶縁基材に、列状に離間して配設された複数の電子接点と、各電子接点に接続された複数の配線とを有する電子接点シートを、その一端から他端に向けて巻回することにより多層に積層して構成された管状の積層体からなる多点プローブであって、前記電子接点は前記シート状の絶縁基材で覆われることなく露出し、前記配線は、最上層の配線以外は少なくともその一部が前記シート状の絶縁基材に覆うように積層されていることを特徴とする。
なお、本明細書において、「電子接点」とは、例えば電極等の広く電流を通す部分を意味する。
【0010】
本発明の一態様に係る多点プローブは、上記多点プローブにおいて、軸状の芯材を備え、前記電子接点シートは前記芯材の外周面に巻回されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る多点プローブは、上記多点プローブにおいて、前記複数の電子接点は、前記シート状の絶縁基材の一方の面において、前記電子接点シートの一端側の縁部に沿って配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る多点プローブは、上記多点プローブにおいて、前記シート状の絶縁基材は、前記縁部が前記管状の積層体の一端から他端に向けて後退するように形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る多点プローブは、上記多点プローブにおいて、前記複数の電子接点は、前記管状の積層体の軸線を基準として螺旋状に配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る多点プローブは、上記多点プローブにおいて、前記複数の配線は、前記複数の電子接点を起点として所定範囲にわたり前記管状の積層体の軸線方向に沿って延在されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る多点プローブは、上記多点プローブにおいて、各配線に接続され、外部回路に接続される複数のパッドが、前記電子接点シートの前記他端の近傍においてその他端に沿って配置されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る多点プローブは、上記多点プローブにおいて、前記電子接点シートは、複数の電子接点及び複数のパッドが露出するように、第1の絶縁素材で被覆されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る多点プローブは、上記多点プローブにおいて、前記シート状の絶縁基材において、前記配線が配設された面の他方の面に、第1のシールド導電膜が形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る多点プローブは、上記多点プローブにおいて、前記シート状の絶縁基材において、前記配線が配設された面に、第2のシールド導電膜が形成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様に係る多点プローブは、上記多点プローブにおいて、前記シート状の絶縁基材に、前記複数の電子接点に接続された増幅器を有することを特徴とする。
【0020】
本発明の一態様に係る多点プローブアレイは、上記多点プローブが、ベース基板上に離間して複数立設されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の一態様に係る電子接点シートは、上記多点プローブを構成する電子接点シートである。
【0022】
本発明の一態様に係る多点プローブの製造方法は、上記多点プローブの製造方法であって、前記電子接点シートを、その一端から他端に向けて、前記複数の電子接点が露出するように巻回した後に、全体に第2の絶縁素材を被覆し、その後、前記複数の電子接点及び複数のパッド上の第2の絶縁素材を除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様に係る多点プローブによれば、電子接点シートを、その一端から他端に向けて巻回することにより多層に積層して構成された管状の積層体からなり、電子接点はシート状の絶縁基材で覆われることなく露出された構成を採用したことにより、電子接点を多点プローブの表面に集積して配置できるので、高密度の電子接点配置が可能となり、高空間分解能で電気信号検出、電気的刺激付与等が可能となる。配線が最上層の配線以外は少なくともその一部がシート状の絶縁基材に覆うように積層されるように、電子接点シートが巻回された構成を採用したことにより、多層配線構造となるので、電子接点が配置された絶縁基材が巻回されていないプローブ(以下適宜「非巻回プローブ」という)に比べて高密度の配線が可能となり、その結果、高密度の電子接点配置が可能となる。巻回数を大きくすることにより、従来の非巻回プローブに比べて格段に高密度の電子接点配置が可能となり、多数の同時信号検出等が可能となる。また、本発明の多点プローブでは、従来の非巻回プローブと同程度の高密度の電子接点配置に対して、簡単な配線レイアウトで済み、配線密度も低くて済む。
【0024】
本発明の一態様に係る多点プローブによれば、軸状の芯材を備え、電子接点シートはその芯材の外周面に巻回された構成を採用したことにより、電子接点を軸状の芯材の外周面に集積して配置できるので高密度の電子接点配置が可能となり、高空間分解能で電気信号検出、電気的刺激付与等が可能となる。電子接点シートを芯材に巻きつけた後に芯材を抜いて、よりフレキシブルな多点プローブを実現できる。また、芯材を抜いた構成で生体内に使用した場合、振動によって生体が損傷を受けることを低減することができる。
【0025】
本発明の一態様に係る多点プローブによれば、複数の電子接点は、シート状の絶縁基材の一方の面において、電子接点シートの一端側の縁部に沿って配置された構成を採用したので、管状の積層体の外周面に高密度で電子接点配置が可能となる。例えば、矩形の電子接点シートの場合は縁部が軸線に対して傾斜するように巻回するだけで管状の積層体の軸線に対して密に並べることができ、高密度に電子接点を配置できる。
【0026】
本発明の一態様に係る多点プローブによれば、シート状の絶縁基材は、縁部が管状の積層体の一端から他端に向けて後退するように形成された構成を採用したので、当該縁部に沿って電子接点を配置して、縁部が管状の積層体の軸線に対して傾斜するように電子接点シートを芯材に巻回するだけで、管状の積層体の軸線に対して密に並べることができ、高密度に電子接点を配置できる。
【0027】
本発明の一態様に係る多点プローブによれば、複数の電子接点は、管状の積層体の軸線を基準として螺旋状に配置された構成を採用したので、管状の積層体の外周面に電子接点を密に並べることで高密度に電子接点を配置できる。
【0028】
本発明の一態様に係る多点プローブによれば、複数の配線は、複数の電子接点を起点として所定範囲にわたり管状の積層体の軸線方向に沿って延在する構成を採用したことにより、配線が管状の積層体の軸線方向に対して傾斜して配置する構成に比べて、配線の重畳回数が少なくなり、クロストークを低減できる。また、配線が形成された箇所は配線が形成されていない箇所に比べて厚くなるので、重畳回数が少なくなることにより、多層配線構造が薄くなる。また、配線のレイアウトが簡単なので高密度で配線できる。
【0029】
本発明の一態様に係る多点プローブによれば、複数のパッドは、電子接点シートの他端の近傍においてその他端に沿って配置された構成を採用したことにより、パッド数を多数配置することが可能になり、その結果、高密度の電子接点配置が可能となる。すなわち、電子接点シートの他端は巻回後にプローブの最表面に残る部分であり、電子接点シートで覆われないので高密度で配置することができる。これに対して、例えば、電子接点シートの上記一端と上記他端との間に位置する端部は巻回により電子接点シートが覆い重なっていくために、この端部にパッドを形成する場合には、上記他端側の、管状の積層体の外周の範囲にしかパッドを形成することができない。そのため、多数のパッドを形成することができず、その結果、高密度で電子接点を配置することができない。
【0030】
本発明の一態様に係る多点プローブによれば、電子接点シートは、複数の電子接点及び複数のパッドが露出するように第1の絶縁素材で被覆された構成を採用したことにより、配線が第1の絶縁素材で被覆されてその絶縁が確実となる。電子接点シートの巻回により、配線の表面はシート状の絶縁基材の他方の面に覆われることで絶縁が確保されるが、さらに第1の絶縁素材で被覆する構成とすることで絶縁が確実となる。
【0031】
本発明の一態様に係る多点プローブによれば、配線が配設された面の他方の面に、第1のシールド導電膜が形成された構成を採用したことにより、多層配線構造における層間の配線の間のクロストークが低減される。
【0032】
本発明の一態様に係る多点プローブによれば、配線が配設された面に、第2のシールド導電膜が形成された構成を採用したことにより、多層配線構造の層間の配線の間のクロストークが低減される。
【0033】
本発明の一態様に係る多点プローブによれば、シート状の絶縁基材に、複数の電子接点に接続された増幅器を有する構成を採用したことにより、微弱な信号(入力電圧)を効果的に増幅することができる。
【0034】
本発明の一態様に係る多点プローブの製造方法によれば、電子接点シートを、その一端から他端に向けて、前記複数の電子接点が露出するように巻回した後に、全体に第2の絶縁素材を被覆し、その後、前記複数の電子接点及び複数のパッド上の第2の絶縁素材を除去する構成を採用したので、確実に絶縁された多点プローブを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態に係る多点プローブの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示した多点プローブを、説明のために巻回されていた電子接点シートを巻き戻した状態を示す模式図である。
【図3】本発明の多点プローブの他の電子接点配置を説明するための摸式図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る多点プローブの一例を示す斜視図である。
【図5】本発明の多点プローブの電子接点材料に用いることができる組成物又は導電性材料を示すものであって、(a)はDEMEBFを構成する分子に覆われたカーボンナノチューブがポリロタキサンに分散されてなる組成物を示す写真であり、(b)は(a)で示した組成物を光架橋して得られたシートの写真であり、(c)は(a)で示した組成物を光架橋すると共に、約50μm程度の線幅の微細構造をパターニングしたものの光学顕微鏡写真である。
【図6】高分解断面透過電子顕微鏡像(TEM像)であり、(a)は本発明の多点プローブの電子接点材料に用いることができるカーボンナノチューブのTEM像であり、(b)はイオン液体なしで、カーボンナノチューブとポリロタキサンとを水中で混合し、ジェットミルで細分化を行いながら撹拌して得られたポリロタキサンで覆われたカーボンナノチューブのTEM像であり、(c)は図1(a)で示した組成物の作製条件と同じ条件で得られたカーボンナノ材料あるいは組成物のTEM像である。
【図7】本発明の多点プローブの電子接点材料に用いることができる組成物(又は導電性材料)の面抵抗とそのカーボンナノチューブ含有量依存性を示すグラフである。
【図8】本発明の多点プローブの電子接点材料に用いることができる組成物(又は導電性材料)の電気容量とその周波数依存性を示すグラフである
【図9】本発明の多点プローブの電子接点材料に用いることができる導電性材料の製造方法を説明するためのフロー図である。
【図10】本発明の多点プローブの電子接点材料に用いることができる導電性材料の製造方法の応用例を示すフロー図である。
【図11】カーボンナノチューブの分散性を調べた結果を示す写真であり、(A)はカーボンナノチューブを脱イオン水に入れ、1週間撹拌した後の状態を示す写真であり、(B)は、カーボンナノチューブとDEMEBFとを脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌した後の状態を示す写真であり、(C)はカーボンナノチューブを脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌し、その後、ジェットミルで処理した後の状態を示す写真であり、(D)はカーボンナノチューブとDEMEBF60mgとを脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌し、その後、ジェットミルで処理した後の状態を示す写真であり、(E)カーボンナノチューブとDEMEBFとミクロフィブリル化セルロースとを脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌して得られたペーストを、その後、ジェットミルで処理した後の状態を示す写真である。
【図12】本発明の一実施形態に係る多点プローブアレイの一例を示す斜視図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る多点プローブアレイの製造工程のフロー図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係る多点プローブの一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を適用した多点プローブ及びそれを構成する電子接点シート、多点プローブアレイ並びに多点プローブの製造方法について、図面を用いてその構成を説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。また、本発明の多点プローブ、電子接点シート、多点プローブアレイは本発明の効果を損ねない範囲で以下に記載していない層などの構成要素を備えてもよい。

【0037】
(多点プローブ)
図1は、本発明の一実施形態に係る多点プローブの一例を示す斜視図である。図2は図1に示した多点プローブを、説明のために巻回されていた電子接点シートを巻き戻した状態を示す模式図である。図1及び図2に示すのは、芯材を備えた構成の多点プローブである。
なお、多点プローブの説明の中で、本発明の一実施形態に係る電子接点シートについても説明する。

【0038】
多点プローブ100は、シート状の絶縁基材1に、互いに離間して配置する複数の電子接点2と、各電子接点2に接続された複数の配線3(3a,3b,3c)と、各配線3に接続され、外部回路(不図示)に接続された複数のパッド4とを有する電子接点シート10を、その一端10aから他端10bに向けて巻回することにより多層に積層して構成された管状の積層体10Aからなる多点プローブであって、電子接点2はシート状の絶縁基材1で覆われることなく露出し、配線3は、最上層の配線3a以外(すなわち、図1における符号3b、3cで示す配線)は少なくともその一部がシート状の絶縁基材に覆われるように積層されている。なお、図1に示す多点プローブでは、複数のパッドを備えた構成を示したが、これらのパッドは本発明の多点プローブに必須の構成要素ではない。

【0039】
図1及び図2に示す多点プローブ100は、さらに軸状の芯材20を備え、電子接点2が芯材20の外周面20aに巻回された構成であるが、軸状の芯材20を備えない構成でもよい。軸状の芯材は多点プローブに着脱自在に備えた構成として、適当なタイミング例えば、装着後に芯材を抜いて使用してもよい。多点プローブが芯材を有さない構成とすることにより、よりフレキシブルな多点プローブを実現できる。また、芯材を抜いた構成で生体内に使用する場合、振動によって生体が損傷を受けることを低減することができる。
また、図1に示す多点プローブでは、軸状の芯材として棒状のものを示したが、シート状の絶縁基材を巻回することができる構成であれば、棒状に限らず、フレキシブルなものでもよく、また、温度等の条件によって硬さが変化するものでもよい。
図14(a)及び(b)に、フレキシブルな軸状の芯材を用いた多点プローブの例の一部を示す。かかる多点プローブの応用例としては、カテーテルや内視鏡などがある。

【0040】
電子接点シート10は、シート状の絶縁基材1の一方の面1aに、複数の電子接点2と、複数の配線3と、複数のパッド4とを有してなる。

【0041】
多点プローブ100は、絶縁基材1の一方の面1aに配線3を備えた電子接点シート10が巻回されているため、配線が形成された層(シート)が積層された配線構造を構成している。かかる多層配線構造を従来の方法で作製しようとすると非常に手間がかかるが、本発明の多点プローブでは、巻回するだけで多層配線構造が形成されている。配線が形成された層(シート)の巻回数を多くするほど、総配線数を多くすることでき、その結果、配置できる電子接点数を多くすることができる。そうして電子接点を表面に多数ならべることにより、高密度の電子接点配置が可能となり、それによって、高空間分解能で電気信号検出、電気的刺激付与等が可能となる。

【0042】
シート状の絶縁基材1は、巻回可能な可撓性を有する絶縁材料からなるものであり、具体的には例えば、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、パラキシリレン系等の高分子材料が挙げられる。また、絶縁基材1にシリコンゴム等のエラストマーを用いることでフレキシブルな芯材との組み合わせで、フレキシブルな多点プローブを実現することができる。
その厚さは限定するものではないが、例えば、1μm~20μmのものを用いることができる。例えば、厚さ1μmのシート状の絶縁基材を用いれば、30回巻回しても、積層された多層のシートの厚さは30μm程度となる。

【0043】
シート状の絶縁基材1の形状は特に制限はないが、複数の電子接点2が露出するように、シート状の絶縁基材(すなわち、電子接点シート)を巻回できる必要がある。
例えば、矩形のシート状の絶縁基材の、巻回される一端と他端との間の側端に沿って複数の電子接点が配置する場合には、複数の電子接点を露出されるために、管状の積層体10Aの軸線(図示する構成の場合、芯材20の軸線に一致)に対して傾斜するように巻回する。

【0044】
図1及び図2に示す例では、シート状の絶縁基材1は、芯材20に巻回が開始される一端(開始端)から所定の範囲に第1の矩形部1bを有し、その先に、芯材20の一端20b側の縁部1cが芯材20の一端20bから他端20cに向けて後退するように形成され、開始端の反対側の端(他端)1dにパッド4を配置する第2の矩形部(他端の近傍)1eを有する形状である。縁部1cの対向する側の縁部1fは第1の矩形部1bの縁部から後退することなく形成されている。
また、図1及び図2に示す例では、複数の電子接点2はその縁部1cに沿って配置され、また、複数のパッド4はその第2の矩形部(他端の近傍)1eにおいてその他端1dに沿って配置されている。
図1及び図2に示す例のように、シート状の絶縁基材1が芯材20の一端20b側の縁部1cが芯材20の一端20bから他端20cに向けて後退するように形成された領域を有し、その縁部1cに沿って複数の電子接点2が配置する構成の電子接点シート10とすることにより、芯材20の軸線に対して特に傾斜させずに巻回するだけで、複数の電子接点2は露出することとなる。

【0045】
電子接点2は、多点プローブの用途に応じて例えば、その対象に接触して電気信号を検出し、また、電気的刺激を付与等するインターフェースとなる。
電子接点2は、シート状の絶縁基材1の、芯材20に巻回される面の反対側の面1aにおいて互いに離間して配置し、その個数に特に制限はなく、外周面の面積が大きい芯材を用いることにより多数の電子接点を配置できる。
電子接点2は、10~200μmの間隔で配置することが好ましく、各電子接点2の径は、5~100μmであることが好ましい。その形状は特に制限はなく、例えば、丸型、角型等のものとすることができる。

【0046】
電子接点2の配置は特に制限はなく、例えば、電子接点シート10の一端側の縁部1cに沿って配置された構成としてもよく、そして図1に示すように、管状の積層体10Aの軸線(図示する構成の場合、芯材20の軸線に一致)を基準として螺旋状に配置された構成としてもよいし、また、図3に示すように、縁部に沿って段違いで2列に配置する構成や、3列以上に配置する構成であってもよい。

【0047】
また、電子接点2の材料としては、金、白金等の腐食しにくい金属材料を用いることが好ましい。
また、電子接点2の材料としてカーボンナノチューブ(CNT)等のフレキシブルなナノ材料を用いてもよい。
例えば、親水性のイオン液体を構成する分子と水溶性高分子とで二重に被覆されたカーボンナノ材料が水溶性高分子媒体中に分散され、該水溶性高分子が架橋されてなるゲル状の導電性材料(導電ゲル)を用いてもよい。この導電ゲルについては後述する。

【0048】
配線3は、対応する電子接点2とパッド4とを接続するものであり、電子接点2と同様に、シート状の絶縁基材1の、芯材20に巻回される面の反対側の面1aにおいて互いに離間して配置する。
配線3は、5~200μmの間隔で配置することが好ましく、その幅は、2~100μmであることが好ましい。
また、配線3の材料としては、金、白金等の腐食しにくい金属材料を用いることが好ましい。

【0049】
配線3は、幅(巻回方向の長さ)が広いシート状の絶縁基材1を用いることにより、多数の配線を配置することができる。非常に幅広のシート状の絶縁基材1を用いて、配線数を増やしたとしても巻回することにより、それらの配線を芯材の外周面に集積することができるので、多点プローブ全体のサイズは大型化せずに済む。

【0050】
図1及び図2に示す例では、配線3は、電子接点2を起点として所定範囲にわたり芯材20の軸線方向に沿って延びている。すなわち、配線3は、電子接点2を起点として芯材20の軸線方向に沿って縁部1f側まで延びている。その先では、角度を変えて第2の矩形部1dに配置するパッド4まで延びている。
配線3が芯材20の軸線方向に沿って延びる構成は、配線が芯材の軸線方向に対して傾斜して配置する構成に比べて配線の長さが短く重畳回数が少なくなり、クロストークを低減することができる。

【0051】
パッド4は、対応する配線3に接続され、当該多点プローブの用途に応じて電気信号の計測器や電圧印加装置等の外部回路に接続されるものであり、電子接点2及び配線3と同様に、シート状の絶縁基材1の、芯材20に巻回される面の反対側の面1aにおいて互いに離間して配置する。
パッド4は、50~1000μmの間隔で配置することが好ましく、パッド4の幅は、20~500μmであることが好ましい。その形状は特に制限はなく、例えば、丸型、角型等である。また、パッドを複数段に千鳥配置することで、実装を容易にする構成も取ることができる。

【0052】
パッド4は、図2に示すように、電子接点シート10の他端10bの近傍(第2の矩形部1eの位置)においてその他端10bに沿って配置された構成としてもよい。この構成では、電子接点シート10の他端10bは巻回後にプローブの最表面に残る部分であるために、電子接点シートで覆われることがないため、高密度で配置することができ、その結果、多数の電子接点を配置することが可能になる。これに対して、例えば、電子接点シート10の一端10aと他端10bとの間に位置する、シート状の絶縁基材1の縁部1fに沿ってパッドが配置する構成では、この縁部1fは巻回により電子接点シートが覆い重なっていくために、芯材10の棒の外周の長さ程度にしかパッドを配置することができない。そのため、多数のパッドを形成することができず、その結果、高密度で電子接点を配置することができない。

【0053】
また、パッド4の材料としては、金、白金等の腐食しにくい金属材料を用いることができる。
また、パッド4の材料として電子接点2と同様に、カーボンナノチューブ(CNT)等のフレキシブルなナノ材料を用いてもよく、上記ゲル状の導電性材料(導電ゲル)を用いてもよい。

【0054】
芯材20は、軸状であり、電子接点シートを巻回して固定することができれば、その形状に制限はないが、巻回及び固定のしやすさの観点からは円柱状であることが好ましい。また、電気信号を検出又は電気的刺激を付与する対象に刺入される先端部は図1及び図2に示すように、刺入しやすさの観点から先細りの形状を有していることが好ましい。

【0055】
芯材20の径及び長さに特に制限はなく、用途に応じて選択することができる。
芯材20の材料としては限定するものではないが、例えば、ステンレススチール、タングステン、チタン等の剛性を有する金属や、ポリアセタール等のエンジニアリングプラスチック、シリコンゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート等の柔軟性を有する樹脂を用いることができる。

【0056】
電子接点シート10は、シート状の絶縁基材1の一方の面1aに、複数の電子接点2及び複数のパッド4が露出するように、第1の絶縁素材(不図示)を被覆した構成としてもよい。
第1の絶縁素材の材料としては限定するものではないが、例えば、パリレン(登録商標)、サイトップ(登録商標)を用いることができる。パリレンは例えばCVD法により、また、サイトップはディッピングにより、被覆することができる。
この第1の絶縁素材の被覆層の厚さとしては、1~10μmであることが好ましい。

【0057】
電子接点シート10は、シート状の絶縁基材1の上記一方の面1aの裏側の面に、第1のシールド導電膜(不図示)を形成した構成としてもよい。この構成では、多層配線構造における層間の配線の間のクロストークが低減される。
第1のシールド導電膜の材料としては限定するものではないが、例えば、金を挙げることができる。
この第1のシールド導電膜の厚さとしては、0.02~0.2μmであることが好ましい。

【0058】
電子接点シート10は、図4に示すように、シート状の絶縁基材1の上記一方の面1aに、第2のシールド導電膜6を形成した構成としてもよい。この構成では、多層配線構造における層間の配線の間のクロストークが低減される。
第2のシールド導電膜の材料としては限定するものではないが、例えば、金を挙げることができる
この第2のシールド導電膜の厚さとしては、0.02~0.2μmであることが好ましい。この第2の導電膜は配線と同時に形成することが可能である。

【0059】
第1のシールド導電膜及び第2のシールド導電膜を両方備える構成としてもよい。

【0060】
電子接点シート10は、シート状の絶縁基材1の一方の面1aに、複数の電子接点2に接続された増幅器を有してもよい。

【0061】
電子接点シート10を芯材20の外周面20aに巻回するに際しては、電子接点シート10の一端10aをエポキシ接着剤やアクリレート接着剤を用いて芯材20の外周面20aに固定して巻回を開始し、その後例えば、1周巻回するごとに接着剤を用いて、電子接点シート10のおもて面と裏面とを接着して、巻回を続け、最後に電子接点シート10の他端10bの裏面を接着剤を用いて電子接点シート10のおもて面に接着して巻回を完了する。

【0062】
本発明の多点プローブは、芯材20の外周面20aに電子接点シート10を巻回後、全体に第2の絶縁素材を被覆し、その後、複数の電子接点及び複数のパッド上の第2の絶縁素材を除去してそれらを露出させた構成であってもよい。
第2の絶縁素材の材料としては限定するものではないが、例えば、パリレン(登録商標)、サイトップ(登録商標)を用いることができる。
第2の絶縁素材で全体を被覆する構成により、巻回した電子接点シートの段差が覆われるので、対象に多点プローブを刺入しやすくなる。
複数の電子接点及び複数のパッド上の第2の絶縁素材を除去する方法としては例えば、レーザーを用いる方法がある。

【0063】
本発明の多点プローブは、脳や脊髄等の生体組織の電気信号の検出や生体組織への電気的刺激の付与に用いることができるが、その他神経細胞や筋細胞との信号授受、カルシウムイオンやグルコースの濃度計測等の用途に用いることもできる。また、適用対象としては生体に限らない。例えば、超音波センサー、光センサー等のセンサーや、発光素子、超音波素子等の素子に用いることができる。これらのセンサーをカテーテルや内視鏡の表面に組み込むことで、検査や治療の適用範囲を拡大することが可能である。

【0064】
(ゲル状の導電性材料(導電ゲル))
上述の通り、本発明の多点プローブ、電子接点及び多点プローブアレイを構成する電子接点の材料として、親水性のイオン液体を構成する分子と水溶性高分子とで二重に被覆されたカーボンナノ材料が水溶性高分子媒体中に分散され、該水溶性高分子が架橋されてなるゲル状の導電性材料(導電ゲル)を用いることができる。

【0065】
本明細書においてイオン液体とは、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、常温を含む幅広い温度域で溶融状態を呈する塩である。
親水性のイオン液体としては、従来から知られた各種のイオン液体のうち、親水性のイオン液体を使用することができ、例えば、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(DEMEBF)を挙げることができる。

【0066】
本明細書においてカーボンナノ材料とは、カーボン原子で構成され、ナノメートルサイズで構造化している構成要素(例えば、1本のCNT)が通常、その構成要素のカーボン原子同士がファンデルワールス力でくっついているもの、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー(炭素繊維のうち、径が10nm以下のもの)、カーボンナノホーン、フラーレンをいう。10nm以下の微細なカーボンナノ材料であれば、水中で良好な分散性を発揮する。

【0067】
カーボンナノ材料は同じ種類のものだけが用いられていてもよいし、複数の種類のものが用いられていてもよい。

【0068】
カーボンナノチューブは、炭素原子が六角網目状に配列したグラフェンシートが単層で又は多層で円筒状に丸まった構造を有するものであるが(単層ナノチューブ(SWNT)、2層ナノチューブ(DWNT)、多層ナノチューブ(MWNT)と呼ばれる)、カーボンナノ材料として用いることができるカーボンナノチューブは特に制限はなく、SWNT、DWNT、MWNTのいずれでも構わない。また、カーボンナノチューブは一般にレーザーアブレーション法、アーク放電、熱CVD法、プラズマCVD法、気相法、燃焼法などで製造できるが、どのような方法で製造したカーボンナノチューブでも構わない。また、複数の種類のカーボンナノチューブを用いても構わない。

【0069】
カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブ間のファンデルワールス力によって凝集しやすく、通常、複数本のカーボンナノチューブがバンドル(束)を形成したり、凝集体を形成して存在する。しかし、イオン液体の存在下で、そのバンドルもしくは凝集体にせん断力を加えて細分化する(カーボンナノチューブの絡み合いを低減する)ことができる。十分に細分化を行うことにより、カーボンナノチューブ同士をくっつけているファンデルワールス力を弱めて一本一本のカーボンナノチューブに分離すると共に、一本一本のカーボンナノチューブにイオン液体を吸着させることができ、その結果、イオン液体の分子が覆った単体のカーボンナノチューブを含む、カーボンナノチューブとイオン液体とからなる組成物を得ることできる。
なお、細分化工程において用いるせん断力を付与する手段は特に限定されるものではなく、ボールミル、ローラーミル、振動ミルなどのせん断力を付与することができる湿式粉砕装置を使用することができる。

【0070】
カーボンナノチューブとイオン液体とを混ぜ、上記細分化工程を行うことにより、からみ合いが減少したカーボンナノチューブの表面に「カチオン-π」相互作用により結合したイオン液体の分子がイオン結合を介してカーボンナノチューブを結びつけることによりゲル状組成物になると考えられているが(特許文献2)、後述するように、このゲル状組成物を、例えば、生理食塩水やエタノール等でリンスすることにより、カーボンナノチューブの表面に1層のイオン液体の分子の層を形成することができ、さらに、水と水溶性高分子とを混ぜることにより、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブが水溶性高分子媒体中に分散されてなる組成物を作製することができる。

【0071】
本明細書において水溶性高分子(媒体)としては、水に溶解でき、あるいは、分散できる高分子であれば特に制限はなく、水中で架橋できるものであればより好ましい。例えば、以下の例を挙げることができる。
1.合成高分子
(1)イオン性
ポリマクリル酸(アニオン性)
ポリスチレンスルホン酸(アニオン性)
ポリエチレンイミン(カチオン性)
MPCポリマー(両性イオン)
(2)非イオン性
ポリビニルピロリドン(PVP)
ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニル鹸化物)
ポリアクリルアミド(PAM)
ポリエチレンオキシド(PEO)
2.天然系高分子(多くは多糖類)
デンプン
ゼラチン
ヒアルロン酸
アルギン酸
デキストラン
タンパク質(例えば水溶性コラーゲンなど)
3.半合成高分子(例えばセルロースを可溶化したもの)
カルボキシメチルセルロース(CMC)
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)
メチルセルロース(MC)、等のセルロース誘導体
水溶性キトサン(「2.天然系高分子」に分類することもできる)

【0072】
また、水溶性高分子の具体的な化合物としては、例えば、ポリロタキサンを挙げることができる。ポリロタキサンは、環状分子(回転子:rotator)の開口部が直鎖状分子(軸:axis)によって串刺し状に包接されてなる擬ポリロタキサンの両末端(直鎖状分子の両末端)に、環状分子が遊離しないように封鎖基を配置して成る。例えば、環状分子としてα-シクロデキストリン、直鎖状分子としてポリエチレングリコールを用いたポリロタキサンを用いることができる。

【0073】
また、水溶性高分子媒体としては架橋剤と反応する基を有する化合物であれば、架橋により強固な膜を形成することから、より好ましい。
当該組成物又は導電性材料を用いて、微細な形状のパターンを形成するには、水溶性高分子が光架橋性であることが好ましい。

【0074】
カーボンナノ材料を包み込むイオン液体の分子の層は単分子層であってもよい。カーボンナノ材料の表面とイオン液体の分子とは「カチオン-π」相互作用により結合するが、イオン液体の分子同士の間の結合がその「カチオン-π」相互作用による結合よりも小さい、カーボンナノ材料とイオン液体との組み合わせを選択することにより、カーボンナノ材料を包み込むイオン液体の分子の層を単分子層とすることが可能となる。
例えば、カーボンナノ材料としてカーボンナノチューブ、イオン液体としてN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(DEMEBF)を選択することにより、カーボンナノチューブを包み込むDEMEBFの分子の層を単分子層とすることができる。さらに、水溶性高分子として例えば、ポリロタキサンを選択すると、DEMEBFの単分子層の上に5nm程度の薄いポリロタキサンの層を形成することができる。こうして得られる組成物はカーボンナノチューブの分散濃度を高密度とすることができ、高い導電性材料とすることができる。かかる導電性材料で作製した電子接点等の導電部材では、薄いDEMEBF分子層及びポリロタキサン層を介してカーボンナノチューブ間を電子が移動して電流が流れる。

【0075】
当該導電性材料において、カーボンナノ材料の表面とイオン液体の分子とは「カチオン-π」相互作用によって強く結合しているために、カーボンナノ材料の表面と結合しているイオン液体の分子は水溶性高分子媒体の外に出てこない。なお、カーボンナノ材料の表面と結合していないイオン液体の分子は、例えば、生理食塩水やエタノールによる濯ぎによって除去することができる。

【0076】
当該導電性材料によれば、含有するカーボンナノ材料がイオン液体の分子と水溶性高分子とによって二重に被覆されているので、生体内に適用してもカーボンナノ材料が生体内の細胞に実質的に触れることがない。また、高い柔軟性を有するので、生体内の臓器等の表面に対して追従性に優れ、臓器等との間に極めて良好な界面を形成できる。さらにまた、高い導電率を有するものとすることができる。

【0077】
当該導電性材料は、親水性のイオン液体とカーボンナノ材料と水とを混合して、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノ材料が分散する第1の分散系を得る第1の工程と、第1の分散系と水溶性高分子と水とを混合して、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノ材料と水溶性高分子とが分散する第2の分散系を得る第2の工程と、を備える製造方法によって製造することができる。

【0078】
第1の工程において、カーボンナノ材料にせん断力を加えて細分化してもよい。
これにより、カーボンナノ材料のバンドル又は凝集がより解けた状態で親水性のイオン液体で覆うことができる。

【0079】
第2の工程の後に、水溶性高分子を架橋させて、カーボンナノ材料が水溶性高分子媒体中に分散され、該水溶性高分子が架橋されてなる組成物を作製する工程をさらに備えてもよい。これにより、成形性や加工性が向上する。
カーボンナノ材料に結合していない前記イオン液体を構成する分子を除去するために濯ぎ工程をさらに備えてもよい。これにより、成形性や加工性が向上する。
この濯ぎ工程は例えば、生理食塩水、エタノール、ゲルを破壊しない液体によって行うことができる。この濯ぎ工程はいずれの段階で行ってもよい。

【0080】
なお、当該導電性材料は、本発明の効果を損なわない範囲で他の物質を含むことができる。また、当該導電性材料の製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲で他の工程を含むことができる。

【0081】
当該導電性材料を実施例に基づいて具体的に説明する。但し、これらの実施例はあくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示するためのものであって、本発明はこれによって限定されるものではない。

【0082】
図5(a)は、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(DEMEBF)を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブがポリロタキサンに分散されてなる組成物であって、紫外線(UV)硬化前のものの状態を示す写真である。得られた組成物は、ゲル状であることがわかる(なお、本明細書において「ゲル状」とは、流動性を有する液状に対して、流動性を失った状態、もしくは、流動性をほぼ失っている状態を意味する)。
この組成物の作製は、市販のカーボンナノチューブ(MWNT、長さ10μm、径5nm)30mgと、親水性のイオン液体である、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(DEMEBF)60mgと混合し、磁気スターラーを用いて700rpm以上の回転数で1週間、25℃で脱イオン水中で撹拌した。得られた懸濁液を、高圧ジェットミルホモジナイザー(60MPa;Nano-jet pal, JN10, Jokoh)によって処理して、黒い物質を得た。得られたCNTゲルを含む溶液を生理食塩水で濯いだ後に、光架橋剤(Irgacure2959、長瀬産業株式会社製)1mgと、ポリロタキサンゲル(「光架橋性環動ゲル」、アドバンストソフトマテリアルズ株式会社製)1000mgとを混合し、上記組成物を作製した。

【0083】
図5(b)は、図5(a)で示した組成物を、5分間、紫外線(波長:365nm)を照射して硬化して得られたシートの写真である。
得られたシートのヤング率は10kPaよりも低かった。シリコンのヤング率は100GPa程度であり、従来のプラスチックフィルムのヤング率は1~5GPaであるから、非常に柔らかいことがわかる。また、脳のヤング率は1~2kPaであり、心臓の筋肉細胞のヤング率は~100kPaであるから、本発明の一実施形態の組成物又は導電性材料は、臓器と同程度あるいはそれ以上の高い柔らかさを有することがわかった。このため、臓器の表面に高い追従性を有し、臓器との間に極めて良好な界面を形成できる。

【0084】
図5(c)は、超微細デジタル型UV露光システム(「デジタル露光装置」、ピーエムティー株式会社製)を用いて、光架橋を行うと共に、約50μm程度の線幅の微細構造をパターニングしたものの光学顕微鏡写真である。当該組成物又は当該導電性材料は、このように、微細加工が可能な材料である。
光架橋材料の種類を変えることで様々な波長で架橋できるので、UVには限定されない。

【0085】
図6は、高分解断面透過電子顕微鏡像(TEM像)であり、(a)は本発明で用いることができるカーボンナノチューブ((MWNT、長さ10μm、径5nm)のTEM像、(b)はイオン液体なしで、カーボンナノチューブ((MWNT、長さ10μm、径5nm)30mgと、ポリロタキサン(「光架橋性環動ゲル」、アドバンストソフトマテリアルズ株式会社製)100mgとを水中で混合し、ジェットミルで細分化を行いながら撹拌して得られた、ポリロタキサンで覆われたカーボンナノチューブのTEM像、(c)は図1(a)で示した組成物の作製条件と同じ条件で得られた組成物のTEM像である。
高分解断面透過電子顕微としては、HF-2000Cold-FE TEM(80kV、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。

【0086】
図6(a)に示すように、用いたカーボンナノチューブは3層又は4層からなっていたことがわかる。
図6(b)に示すように、単体のカーボンナノチューブにポリロタキサンが被覆しているが、その被覆層の層厚は不均一であることがわかる。これに対して、図6(c)に示すように、単体のカーボンナノチューブを被覆するポリロタキサン層の層厚が非常に均一であり、図6(b)に示すものとは明確に異なることわかる。
この被覆層の層厚の均一性の違いは、後者がカーボンナノチューブを覆っていた親水性イオン液体DEMEBFの分子が剥がされて、ポリロタキサンがカーボンナノチューブを覆いなおしたのではなく、カーボンナノチューブを覆っていた親水性イオン液体DEMEBFの分子の層の上にポリロタキサンが覆ったものであることを示している。カーボンナノチューブを覆っていた親水性イオン液体DEMEBFの分子が剥がされて、ポリロタキサンがカーボンナノチューブを覆ったのであれば、図6(c)も図6(b)と同様に被覆層の層厚は不均一になるはずである。また、カーボンナノチューブとDEMEBFの分子との結合が水素結合にも匹敵する高いカチオン-π相互作用で結合しているので、カーボンナノチューブを覆っていた親水性イオン液体DEMEBFの分子は上記の工程では剥がされないと考えられる。

【0087】
図6に示すように、当該導電性材料の製造方法によれば、カーボンナノチューブの表面をイオン液体の分子を介して均一に生体適合性材料で被覆することが可能となる。

【0088】
図7は、当該組成物(CNT-gel)の面抵抗、及び、面抵抗のカーボンナノチューブ含有量依存性を示すグラフである。比較のために、従来の生理食塩水を主成分とするゲル(Saline-based gel)の面抵抗についても点線で示した。
当該組成物(CNT-gel)は、図5(a)で示した組成物の作製条件と同じ条件で得られた組成物である。大きさは1cm角、厚みは1mmであった。
生理食塩水を主成分とするゲル(Saline-based gel)は、300mgのロタキサンゲルに1mgの光架橋剤を入れて、100mlの生理食塩水で溶かし、その後にUVにより光架橋することにより得た。大きさは1cm角、厚みは1mmであった。
図7に示すように、組成物の面抵抗は、従来のゲルに比べて、2桁~3桁以上低いことがわかった。

【0089】
図8は、当該組成物(CNT-rotaxane gel)の電気容量、及び、電気容量の周波数依存性を示すグラフである。比較のために、ポリアクリルアミドゲル(Poly-acrylamide gel)、生理食塩水含有ポリアクリルアミドゲル(Saline poly-acrylamide gel)、生理食塩水含有ロタキサンゲル(Saline-rotaxane gel)についても示した。
当該組成物(CNT-rotaxane gel)は、図5(a)で示した組成物の作製条件と同じ条件で得られた組成物である。大きさは1cm角、厚みは1mmであった。
ポリアクリルアミドゲル(Poly-acrylamide gel)は、300mgのポリアクリルアミドに1mgの光架橋剤を入れて、100mlの生理食塩水で溶かし、その後にUVにより光架橋することにより得た。大きさは1cm角、厚みは1mmであった。
生理食塩水含有ポリアクリルアミドゲル(Saline poly-acrylamide gelは、300mgのポリアクリルアミドに1mgの光架橋剤を入れて、100mlの生理食塩水で溶かし、その後にUVにより光架橋することにより得た。大きさは1cm角、厚みは1mmであった。
生理食塩水含有ロタキサンゲル(Saline-rotaxane gel)は、300mgのロタキサンゲルに1mgの光架橋剤を入れて、100mlの生理食塩水で溶かし、その後にUVにより光架橋することにより得た。大きさは1cm角、厚みは1mmであった。
図8に示すように、当該組成物の電気容量は、比較例のゲルよりも高いことがわかった。

【0090】
電気信号を容量結合で検出する際、その大きさは電子接点の表面積に比例する。当該組成物で電子接点を形成して、その電子接点を使って容量結合で電気信号を検出する場合、当該組成物は従来の金属電子接点に比べると格段に柔らかく、電子接点は生体組織にぴったりとくっつくことができるために実質的な接触面積が大きくなる。そのため、電気信号を得るための実質的な容量の検出感度は従来の金属電子接点に比べて非常に高く、より小型の電子接点であっても高い検出能力を有するものとなる。
また、当該組成物又は導電性材料は、カーボンナノ材料を含むものであり、カーボンナノ材料特に、カーボンナノチューブは高い比表面積を有するものなので、この点からも高い信号検出能力を有するものである。また、当該組成物又は導電性材料を用いて作製した電子接点の導電率は、Au電子接点の導電率より低いが、信号を容量でとる場合には導電率ではなく、実効的な表面積が大きいことが重要である。

【0091】
以下では、カーボンナノ材料としてカーボンナノチューブを、イオン液体としてN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム テトラフルオロボレート(DEMEBF)を、また、水溶性高分子としてポリロタキサンを用いた場合を例にとって、当該導電性材料の製造方法について、図9を用いて説明する。
(1)第1の工程
まず、カーボンナノチューブとDEMEBFと水とを混合し、撹拌して、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブが分散する第1の分散系を得る。
第1の分散系を、生理食塩水、エタノール、ゲルを破壊しない液体等によって濯ぐ工程を行って、カーボンナノチューブに結合していないDEMEBFを除去してもよい。
この分散系においては、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノチューブが水に分散されており、カーボンナノチューブとイオン液体の量に依存して、他に、イオン液体を構成する分子に十分に覆われていない又は全く覆われていないカーボンナノチューブ(バンドル化されているカーボンナノチューブも含む)やイオン液体を構成する分子が含有されている場合がある。
この工程において、ジェットミル等により、カーボンナノチューブにせん断力を加えて細分化するのが好ましい。この工程により、カーボンナノチューブは、ファンデルワールス力でバンドル化していた1本1本のカーボンナノチューブが解けて、バンドル化(凝集)の程度が低減し、1本1本のカーボンナノチューブにまで解くことも可能となるからである。

【0092】
図11は、カーボンナノチューブの分散性を調べた結果を示すものである。(A)は、カーボンナノチューブ30mgを25℃の脱イオン水に入れ、磁気スターラーを用いて700rpm以上の回転数で1週間撹拌した後の状態、(B)は、カーボンナノチューブ30mgと、DEMEBF60mgとを25℃の脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌した後の状態、(C)は、カーボンナノチューブ30mgを25℃の脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌し、その後、高圧ジェットミルホモジナイザー(60MPa;Nano-jet pal, JN10, Jokoh)で処理した後の状態、(D)は、カーボンナノチューブ30mgと、DEMEBF60mgとを25℃の脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌し、その後、高圧ジェットミルホモジナイザーで処理した後の状態、(E)カーボンナノチューブ30mgと、DEMEBF60mgと、ミクロフィブリル化セルロース(10%セルロース含有の水溶液100mg、「セリッシュ(商品名)」、Daicel Chemical Industries社製)とを25℃の脱イオン水に入れ、同様にして1週間撹拌して得られたペーストを、その後、高圧ジェットミルホモジナイザーで処理した後の状態、を示すものであり、撹拌を終えてから1週間後に撮影した写真である。なお、「セリッシュ(商品名)」は、高度に精製した純植物繊維を原料とし、特殊な処理方法でミクロフィブリル化したセルロースナノファイバーであり、原料の繊維はこの処理によって数万本に引き裂かれ、繊維の太さは0.1-0.01μmまで微細化されている。

【0093】
(D)及び(E)は、水の中でカーボンナノチューブが高い分散性を示していることがわかる。高い分散性を得るには、せん断力を加えてバンドル化されているカーボンナノチューブを細分化することが好ましいことがわかる。

【0094】
(2)第2の工程
次に、上記第1の分散系とポリロタキサン(「光架橋性環動ゲル」、アドバンストソフトマテリアルズ株式会社製)と水とを混合し、撹拌して、イオン液体を構成する分子に覆われたカーボンナノ材料と水溶性高分子とが分散する第2の分散系を得る。
第2の分散系を、生理食塩水、エタノール、ゲルを破壊しない液体等によって濯ぐ工程を行って、カーボンナノチューブに結合していないDEMEBFを除去してもよい。
なお、図9に示すように、得られた組成物を架橋する場合には架橋剤も混合することができる。これによって、得られた第2の分散系は図9に示すようなゲル状の物質である。

【0095】
(3)架橋工程
次に、ポリロタキサンを架橋して、DEMEBFを構成する分子に覆われたカーボンナノチューブがポリロタキサン媒体中に分散され、該ポリロタキサンが架橋されてなる組成物(導電性材料)を得る。
得られた組成物(導電性材料)を生理食塩水、エタノール、ゲルを破壊しない液体等によって濯ぐ工程を行って、カーボンナノチューブに結合していないDEMEBFを除去してもよい。

【0096】
以上の工程により、当該組成物(導電性材料)を得ることができる。

【0097】
次に、上記第2の分散系を用いて、当該組成物(導電性材料)からなるシートや、当該組成物(導電性材料)からなる微細な線幅のラインを形成する工程の一例について説明する。

【0098】
図10(a)に示すように、上記第2の分散系をガラス基板にキャスト(流延)する。次いで、図10(b)に示すように、所望の厚さ(図の例では50μm)のスペーサーシートを介してガラス基板上にカバーガラスを載せる。

【0099】
次に、シートを作製する場合は、図10(c)に示すように、例えば、紫外線(365nm)露光装置を用いて露光することにより、50μm厚のシートを得ることができる。また、微細な線幅のラインを形成する場合は、図10(d)に示すように、例えば、デジタル型の紫外線(365nm)露光装置を用いて露光することにより、例えば、50μm幅のラインを形成することができる。

【0100】
(多点プローブアレイ)
図12は、本発明の一実施形態に係る多点プローブアレイの一例を示す斜視図である。
多点プローブアレイ200は、上記した多点プローブ100がベース基板30上に離間して複数立設されたものである。図5においては、多点プローブ100は6本立設することができるが、図においては便宜上、1本しか描いていない。

【0101】
多点プローブ100は、パッドに外部回路を接続しやすいように、電子接点シート10の他端10bの近傍を巻回しない構成としている。多点プローブ100は、芯材20の他端20cがベース基板30に設けられた溝部32に差し込むことによって立設される。
ベース基板30の材料はジルコニア等の加工性のあるセラミクスやガラスエポキシが好適であるが、単結晶シリコン基板やガラス基板を用いることも可能である。このベース基板には多点プローブ100を精密に位置決めする溝32が複数設けられている。この溝32に多点プローブ100を嵌め込み、電子接点シート10の他端に形成されたパッドがベース基板30側に向くようにして、ベース基板30上にパッドと対応して形成された実装端子(図示せず)と位置合わせされた状態で電気的に接続する。この実装端子はベース基板30上に形成された配線を通じて、ベース基板30に固定された電気コネクタ31に電気的に接続される。
また、ベース基板30上に配線や電気コネクタ31を形成することなく、電子接点シート10のパッドとフレキシブルケーブルと直接接続しても良い。この場合は、電子接点シート10の端部は、パッドがベース基板から上面を向くように巻回しされた状態で接着固定される。

【0102】
(多点プローブの製造方法)
以下に、本発明の一実施形態に係る多点プローブの製造方法の一例について説明する。
まず、所定の形状を有するシート状の絶縁基材を準備する。具体的には例えば、市販のポリイミドフィルム、またはポリエチレンナフタレートフィルムを準備する。
次に、シート状の絶縁基材の一方の面に、公知の回路作成技術を用いて、複数の電子接点と、各電子接点に接続された複数の配線と、各配線に接続された複数のパッドとを形成する。公知の回路作成技術としては例えば、フレキシブルプリント基板作成技術が挙げられる。
次に、回路が形成された基板に、電子接点及びパッドを露出するように第1の絶縁素材からなる層を形成する。
次に、電子接点シートの一端を例えば、シアノアクリレート系接着剤を用いて芯材の外周面に固定して巻回を開始し、その後例えば、1周巻回するごとに例えば、エポキシ接着剤を用いて、電子接点シートのおもて面と裏面とを接着し、巻回を続け、最後に電子接点シートの他端の裏面を例えば、同じくエポキシ接着剤を用いて電子接点シートのおもて面に接着して巻回を完了する。
次に、パリレン等の第2の絶縁素材を全体に被覆し、電子接点及びパッド上の第2の絶縁素材をレーザー等を用いて除去して、電子接点及びパッドを露出させる。
概略以上の工程によって、多点プローブを製造することができる。

【0103】
(多点プローブアレイの製造方法)
図13に示す製造工程のフロー図を用いて、本発明の一実施形態に係る多点プローブアレイの製造方法の一例について説明する。本製造方法の一部の工程を、多点プローブの製造方法に適用してもよいし、また、上述した多点プローブの製造方法の一部の工程を、以下の多点プローブアレイの製造方法に適用してもよい。
まず、平坦なガラス基板等のサポート基板に、ポリイミドフィルム等のシート状の絶縁基材を貼る((a)工程)。
次に、シート状の絶縁基材の一方の面に、例えば、CVDでパリレン等を用いた平坦化層を形成する((b)工程)。
次に、その平坦化層の上に、マスク蒸着によって、複数の電子接点と、各電子接点に接続された複数の配線と、各配線に接続された複数のパッドとを形成して電子接点シートを作製する((c)工程)。
次に、回路が形成された電子接点シート全体を第1の絶縁素材で被覆し((d)工程)、その後、電子接点及びパッド上の第1の絶縁素材を除去する((e)工程)。
次に、シート状の絶縁基材(電子接点シート)を、別のサポート基板に反転して転写し((f)工程)、先のサポート基板に貼着されていた側の面の一端に例えば、シアノアクリレート系接着剤等の接着剤を塗布する((g)工程)。
次に、電子接点シートのその接着剤を塗布した部分に芯材を固定し((h)工程)、芯材に電子接点シートを巻回し、最後に電子接点シートの他端の裏面を、同じくエポキシ接着剤を用いて電子接点シートのおもて面に接着して巻回を完了する((i)工程)。
次に、パリレン等の第2の絶縁素材を全体に被覆し、電子接点及びパッド上の第2の絶縁素材をレーザー等で除去して、電子接点及びパッドを露出させて、多点プローブを製造する。
次に、その多点プローブを、ベース基材の溝に固定する((j)工程)。
次に、多点プローブのパッドをベース基材の端子に実装する((k)工程)。
概略以上の工程によって、多点プローブアレイを製造することができる。

【0104】
以上、本発明の望ましい実施態様を説明したが、本発明はこの実施態様に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0105】
1 シート状の絶縁基材
1a 一方の面
1c 縁部
2 電子接点
3、3a、3b、3c 配線
4 パッド
10 電子接点シート
10a 一端
10b 他端
20 芯材
20a 外周面
20b 一端
20c 他端
30 ベース基板
100 多点プローブ
200 多点プローブアレイ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図7】
4
【図8】
5
【図5】
6
【図6】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
12
【図14】
13