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明細書 :水素発生装置及び水素発生方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6230039号 (P6230039)
公開番号 特開2014-169210 (P2014-169210A)
登録日 平成29年10月27日(2017.10.27)
発行日 平成29年11月15日(2017.11.15)
公開日 平成26年9月18日(2014.9.18)
発明の名称または考案の名称 水素発生装置及び水素発生方法
国際特許分類 C01B   3/04        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
B01J  23/68        (2006.01)
FI C01B 3/04 A
B01J 35/02 J
B01J 23/68 M
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2013-042860 (P2013-042860)
出願日 平成25年3月5日(2013.3.5)
審査請求日 平成28年2月12日(2016.2.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
発明者または考案者 【氏名】三澤 弘明
【氏名】上野 貢生
【氏名】ショウ ギョクケイ
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
審査官 【審査官】浅野 昭
参考文献・文献 特表2011-500966(JP,A)
国際公開第2011/027830(WO,A1)
国際公開第2011/111845(WO,A1)
特開2011-116581(JP,A)
特開2004-237267(JP,A)
特開2011-020902(JP,A)
特開2003-146602(JP,A)
調査した分野 B01J 21/00-38/74
C01B 3/00-6/34
C25B 11/00-11/18
H01L 31/00-31/20
H01L 51/42-51/48
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
チタン酸ストロンチウム或いは酸化チタンである光触媒材料を含む基板と、
前記基板の一方の面に沿って複数領域に分離して配置され、プラズモン共鳴吸収性を有する金属体と、
前記基板の前記一方の面と反対側の他方の面に配置された水素発生触媒と、
前記基板を前記金属体と前記水素発生触媒とともに収容し、前記基板の両面に接触させた状態で水溶液を保持可能な容器と、
を備え
前記容器は、内部を隔てる隔壁を有し、前記隔壁の中央に前記基板を保持し、
前記容器の内部において、前記隔壁を隔てた前記基板の前記一方の面側に前記一方の面に接触させるように第1の水溶液が保持され、
前記容器の内部において、前記隔壁を隔てた前記基板の前記他方の面側に前記他方の面に接触させるように第2の水溶液が保持される、
ことを特徴とする水素発生装置。
【請求項2】
前記金属体は、金を含む、
ことを特徴とする請求項に記載の水素発生装置。
【請求項3】
前記水素発生触媒は、白金を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水素発生装置。
【請求項4】
チタン酸ストロンチウム或いは酸化チタンである光触媒材料を含む基板と、前記基板の一方の面に沿って複数領域に分離して配置され、プラズモン共鳴吸収性を有する金属体と、前記基板の前記一の面と反対側の他方の面に配置された水素発生触媒と、前記基板を前記金属体と前記水素発生触媒とともに収容し、前記基板の両面に接触させた状態で水溶液を保持可能な容器とを備える水素発生装置を用意し、
前記容器には、内部を隔てる隔壁が設けられ、前記隔壁の中央に前記基板が保持され、
前記容器の内部において、前記隔壁を隔てた前記基板の前記一方の面側に前記一方の面に接触させるように第1の水溶液を保持し、
前記容器の内部において、前記隔壁を隔てた前記基板の前記他方の面側に前記他方の面に接触させるように第2の水溶液を保持し、
前記基板の前記一の面に向けて光を照射する、
ことを特徴とする水素発生方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水素発生装置及び水素発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模で環境問題およびエネルギー問題が顕在化されつつあり、光触媒および太陽電池などの光エネルギー変換系の構築に関する研究が注目されている。その中でも、水素や過酸化水素などの貯蔵可能な化学エネルギーが現在注目されている。このような光エネルギーを化学エネルギーに変換する人工光合成系においては、半導体を用いた光触媒が数多く研究されており、効率を高めるために可視光の変換効率の高い光触媒の研究が盛んに行われてきている(例えば、下記特許文献1,2参照)。
【0003】
また、下記特許文献3には、酸化チタンを含む半導体基板の表面の中央部に金属微細構造体が配列され、その半導体基板の裏面の全面に導電層が形成され、半導体基板を収容する容器内の金属微細構造体の配置領域が電解質溶液によって満たされた構造の光電変換装置が開示されている。このような光電変換装置によれば、可視光及び近赤外光照射に基づいてプラズモン共鳴波長において光電流が観測される。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-256901号公報
【特許文献2】特開2006-302695号公報
【特許文献3】国際公開2011/027830号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1,2記載の従来の光触媒を用いて水の酸化還元反応を発生させる場合には、過電圧が発生し可視光の効率の良いエネルギー変換が困難な傾向にあった。一方、上記特許文献3記載の光電変換装置によれば、可視光及び近赤外光照射に応じて水の酸化還元反応を誘起させて酸素や過酸化水素を発生させることが可能ではあるが、その場合には光電変換装置に電気化学測定装置を接続して外部から電圧を印加する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、外部装置を必要とせずに水の酸化還元反応を効率的に誘起させることが可能な水素発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の水素発生装置は、光触媒材料を含む基板と、基板の一方の面に沿って複数領域に分離して配置された金属体と、基板の一方の面と反対側の他方の面に配置された水素発生触媒と、を備える。
【0008】
このような水素発生装置によれば、基板の両面に水を接触させた状態で金属体が配置された基板上の一方の面に光を照射することにより、基板の一方の面において水を酸化させて酸素を発生させるとともに、基板の他方の面において水を還元させて水素を発生させることができる。この場合、金属体の微細構造によって決まるプラズモン共鳴の波長域において水の光電気分解が効率よく行われると同時に、水素発生触媒によっても水の還元反応が効率的に行われる。これにより、外部装置による電圧の印加を必要とせずに水の酸化還元反応を効率的に発生させることができる。
【0009】
基板を金属体と水素発生触媒とともに収容し、基板の両面に接触させた状態で水溶液を保持可能な容器をさらに備える、ことが好ましい。このような容器を備えれば、水溶液を基板の両面に容易に接触させることができ、水の酸化還元反応をより効率的に発生させることができる。
【0010】
また、光触媒材料は、チタン酸ストロンチウム、或いは酸化チタンであってもよい。この場合、プラズモン共鳴吸収によって励起させた電子を電子伝導帯に効率的に遷移させることができ、水の酸化還元反応をより活性化させることができる。
【0011】
また、金属体は、金を含むものでもよい。この場合、基板の金属体が配置された面において光に対するプラズモン共鳴吸収性を高めることができる。その結果、水の酸化還元反応をより効率的に発生させることができる。
【0012】
さらに、水素発生触媒は、白金を含むものでもよい。このような水素発生触媒を備えれば、基板の水素発生触媒が配置された面において水の還元反応を活発化することができ、外部装置による電圧の印加を必要とせずに水の酸化還元反応を効率的に発生させることができる。
【0013】
本発明の水素発生方法は、光触媒材料を含む基板と、基板の一方の面に沿って複数領域に分離して配置された金属体と、基板の一の面と反対側の他方の面に配置された水素発生触媒とを備える水素発生装置を用意し、基板の両面に水溶液を接触させて保持し、基板の一方の面に向けて光を照射することを特徴としている。
【0014】
このような水素発生方法によれば、基板の両面に水を接触させた状態で金属体が配置された基板上の一方の面に光を照射することにより、基板の一方の面において水を酸化させて酸素を発生させるとともに、基板の他方の面において水を還元させて水素を発生させることができる。この場合、金属体の微細構造によって決まるプラズモン共鳴の波長域において水の光電気分解が効率よく行われると同時に、水素発生触媒によっても水の還元反応が効率的に行われる。これにより、外部装置による電圧の印加を必要とせずに水の酸化還元反応を効率的に発生させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外部装置を必要とせずに水の酸化還元反応を効率的に誘起させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好適な一実施形態に係る水素発生装置1の側面図である。
【図2】図1の光触媒5の構造を示す断面図である。
【図3】図2の光触媒5の表面の電子顕微鏡写真を示す図である。
【図4】図3に示す金属体のサイズ分布を示すグラフである。
【図5】図1の水素発生装置1における光Lの照射時間に対する水素生成量の関係を示すグラフである。である。
【図6】図1の水素発生装置1における光Lの照射時間に対する水素及び酸素の生成量の関係を示すグラフである。
【図7】図2の光触媒5の表面5aにおける入射光Lの波長に対する吸光特性を示すグラフである。
【図8】図1の水素発生装置1において入射光Lの波長範囲を様々変更した場合の光Lの照射時間に対する水素生成量の関係を示すグラフである。
【図9】図1の水素発生装置1に照射する入射光Lの強度の波長特性を示すグラフである。
【図10】図1の水素発生装置1において入射光Lの照射時間に対する水素及び酸素の生成量の関係を示すグラフである。
【図11】図1の水素発生装置1において水溶液7aのphに対する水素及び酸素の生成率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る水素発生装置及び水素発生方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。

【0018】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る水素発生装置1の側面図である。この水素発生装置1は、様々な波長の入射光を捕集して、その光を局在化させて増幅させることが可能な光アンテナとしての機能を有する金属微細構造と光触媒とを組み合わせて利用することにより、広範囲の波長領域の光エネルギーを水の酸化還元反応によって化学エネルギーに変換する光電気化学セルである。

【0019】
同図に示すように、水素発生装置1は、略円柱状の密閉容器3と、密閉容器3の内部に収容された光触媒5とにより構成されている。密閉容器3は、その内部中央に隔壁3cを有し、隔壁3cを隔てた一方の底面3a側に水溶液7aを保持し、隔壁3cを隔てた他方の底面3b側に水溶液7bを保持する。そして、光触媒5は、その両面5a,5bを密閉容器3の円形状の底面3a,3bにそれぞれ対向させるように、密閉容器3内の隔壁3cの中央部に固定されている。これにより、光触媒5は、その一方の面5aを水溶液7aに浸され(接触され)、また、その他方の面5bを水溶液7bに浸された(接触された)状態で密閉容器3内に保持されることになる。密閉容器3は、その底面3aの中央に窓部3dが設けられ、外部から照射された可視光領域或いは近赤外光領域の波長を含む入射光Lを、窓部3dを透過させることにより光触媒5の一方の面5aに向けて入射させることが可能に構成されている。さらに、密閉容器3の側面の底面3a側には排気口3eが設けられ、水溶液7a内での酸化反応によって発生した酸素を外部に取り出し可能にされ、密閉容器3の側面の底面3b側には排気口3fが設けられ、水溶液7b内での還元反応によって発生した水素を外部に取り出し可能にされている。

【0020】
図2は、光触媒5の詳細構造を示す断面図、図3は、図1の光触媒5の表面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す図、図4は、図3に示す金属体のサイズの分布を示すグラフである。

【0021】
光触媒5は、図2に示すように、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)或いは酸化チタン(TiO)等の光触媒材料を含む基板9と、基板9の表面9a上に沿って複数領域に分離して配列された複数の金属体11と、基板9の表面9aの反対側の裏面9b上に沿って分離して配置された水素発生触媒13を含んでいる。この基板9の表面9aが光触媒5の面5aに対応し、基板9の裏面9bが光触媒5の面5bに対応する。

【0022】
基板9は、例えば、0.01wt%でニオブがドープされたチタン酸ストロンチウム基板、或いはアナターゼ型酸化チタン基板であり、可視光の照射に対して水素及び酸素生成に関して活性な光触媒材料によって構成される。この基板9のサイズは例えば10mm×10mmである。そして、その基板9の表面9a上には複数の金属体11が複数領域に分離して点在するように配置されている(図3)。図4に示すように、金属体11は、その径が10nm~100nmの範囲であり、平均径が例えば52nmの略円形状の金属膜である。

【0023】
このような基板9上の金属体11は、次にようにして形成される。すなわち、基板9の表面9aにスパッタリングにより金属体11を3nmの厚さで成膜し、その後、基板9の表面9aを窒素雰囲気下の800°Cの温度で所定時間(例えば、1時間)アニール処理を施して、複数領域に分離された金属体11を形成する。このような処理により、基板9の表面9a上で金属原子は温度上昇に伴って拡散し、表面拡散長の範囲内で粒径サイズが膜厚に対応してある程度制御された略円形状のアイランドが形成される。

【0024】
なお、金属体11の材料としては金(Au)が好適に用いられる。これは、金属体11が基板9表面を拡散しやすくアイランドが容易に形成されるためである。また、スパッタリングした金属体11をアニール処理することは、アイランド構造を容易に作成できる点で好適である。ここで、金属体11の材料としては、金以外にも、サイズや形状により様々な波長の入射光に対してプラズモン共鳴吸収性を有する金属材料であってもよい。このような金属材料としては、銀、銅、白金、アルミニウム及びこれらの合金等の金属材料が挙げられる。プラズモン共鳴吸収性とは、入射光と共鳴してその光を局在化して電場を増強させ、いわゆる局在表面プラズモンと言われる現象を引き起こす性質である。金属体11の材料としてこのような金属材料を使用することで、光触媒5の表面5aにおける可視光領域及び近赤外光領域における応答波長を、金属体11のサイズ及び形状によって制御することができる。

【0025】
さらに、基板9の裏面9bには水素発生触媒13が分離して配置されている。この水素発生触媒13の材料としては、水素発生の過電圧を大幅に下げる働きを有する助触媒である白金(Pt)が好適に用いられる。この水素発生触媒13は、白金をスパッタリングすることにより例えば平均径0.8nmで複数に分離されて裏面9b上に形成される。

【0026】
上記構成の水素発生装置1には、水溶液7bとして、濃度0.1M、ph1.0の塩酸(HCl)溶液が収容され、水溶液7aとして、濃度0.1M、ph13.0の水酸化カリウム(KOH)溶液が収容される。或いは、水溶液7bとして硫酸溶液又は硝酸溶液、水溶液7aとして水酸化ナトリウム溶液を使用してもよい。

【0027】
次に、上述した構成の水素発生装置1を用いた水素発生方法について詳述する。まず、水素発生装置1を用意し、密閉容器3内に水溶液7a,7bを注入することによって、光触媒5の面5a,5bそれぞれに水溶液7a,7bを接触させた状態で密閉容器3内に水溶液7a,7bを保持させる。そして、密閉容器3の窓部3dから光触媒5の面5aに向けて可視光領域或いは近赤外領域の波長を含む光Lを入射させる。

【0028】
その結果、光触媒5の面5a(基板9の表面9a)において金属体11によるプラズモン増強により金の電子が励起され基板9の光触媒材料の電子伝導帯に移動させられ、その電子により光触媒5の面5b(基板9の裏面9b)において水溶液7b中の水の還元反応が引き起こされる。この水の還元反応は、下記化学式;
2e+2H→H
で表されるような反応であり、このような反応により水溶液7b中の光触媒5の面5b近傍で水素が生成され、排気口3fから排出される。

【0029】
また、同時に、電子の移動により光触媒5の面5a側にホールが生成され、そのホールが基板9の光触媒材料の表面準位にトラップされる。そして、そのホールにより水溶液7a中の水酸化物イオンの酸化反応が引き起こされる。この水の酸化反応は、下記化学式;
4h+4OH→O+2H
で表されるような反応であり、このような反応により水溶液中7aの光触媒5の面5a近傍で酸素が生成され、排気口3eから排出される。

【0030】
以上説明した水素発生装置1及びそれを用いた水素発生方法によれば、光触媒5の両面5a,5bのそれぞれに水溶液7a,7bを接触させた状態で金属体11が配置された光触媒5の表面5aに光を照射することにより、光触媒5の表面5aにおいて水溶液7aを酸化させて酸素を発生させるとともに、光触媒5の裏面5bにおいて水溶液7bを還元させて水素を発生させることができる。この場合、金属体11の微細構造によって決まるプラズモン共鳴の波長域において水の光電気分解が効率よく行われると同時に、水素発生触媒13によっても水の還元反応が効率的に行われる。これにより、外部装置による電圧の印加を必要とせずに、太陽光等の可視光成分或いは近赤外光成分を含む光の照射だけで、水の酸化還元反応を効率的に発生させることができる。さらに、太陽エネルギーの波長帯域にプラズモン共鳴波長が一致するように金属体11の構造を制御すれば、太陽エネルギーを効率的に化学エネルギーに変換することができ、反応中心波長が680nm程度である植物の光合成にも劣らないシステムの構築が可能である。

【0031】
また、水素発生装置1は、光触媒5の両面5a,5bのそれぞれに接触させた状態で水溶液7a,7bを保持可能な密閉容器3を備えるので、水溶液7a,7bにおける酸化還元反応をより効率的に発生させることができる。

【0032】
また、水素発生装置1では、基板9の材料としてチタン酸ストロンチウム或いは酸化チタンが用いられているので、プラズモン共鳴吸収によって励起させた電子を電子伝導帯に効率的に遷移させることができ、水溶液7a,7bにおける酸化還元反応をより活性化させることができる。また、光触媒5に形成された金属体11は金を材料としているので、基板9の面9aにおいて光に対するプラズモン共鳴吸収性を高めることができる。その結果、水溶液7a,7bにおける酸化還元反応をより効率的に発生させることができる。さらに、水素発生触媒13は白金によって形成されているので、基板9の面9bにおいて水溶液7bの還元反応を活発化することができ、外部装置による電圧の印加を必要とせずに水溶液7a,7bの酸化還元反応を効率的に発生させることができる。

【0033】
以下、本実施形態にかかる水素発生装置1の特性測定結果を示す。

【0034】
まず、図5は、光Lの照射時間に対する水素生成量の関係を示すグラフである。このとき、基板9としてニオブドープチタン酸ストロンチウム基板を使用し、金からなる金属体11を800°Cで1時間アニール処理を施すことにより形成し、白金からなる水素発生触媒13をそれぞれ30秒、40秒、50秒、60秒の間スパッタリングすることにより生成した複数種類の光触媒5を用意した。さらに、金属体11を含まない光触媒(w/o Au)、及び水素発生触媒13を含まない光触媒(w/o Pt)も用意した。これらの複数種類の光触媒を収容した水素発生装置1に対して、キセノンランプを用いて波長450nm~850nmの可視光領域及び近赤外光領域を含む光Lを照射し、発生した水素量を比較した。この結果から、水素発生量は40秒ほど白金をスパッタリングしたものが最も多く、以下、50秒スパッタリングしたもの、30秒スパッタリングしたもの、60秒スパッタリングしたものの順に水素発生量が多かった。さらに、それぞれの光触媒5を使用したものにおいては、照射時間と水素発生量の関係はほぼ比例関係であった。一方、水素発生触媒13を含まない光触媒に関しては、それを含む光触媒5に比較して水素発生量が低下し、金属体11を含まない光触媒に関しては、他の光触媒に比較して極端に水素発生量が低下することが分かった。このことからも、金属体11及び水素発生触媒13の組み合わせが水の酸化還元反応を効果的に活性化させていることが分かった。さらに、水素発生触媒13の構成も水の酸化還元反応に影響していることも分かった。

【0035】
また、図6は、光Lの照射時間に対する水素及び酸素の生成量の関係を示すグラフである。このとき、基板9としてニオブドープチタン酸ストロンチウム基板を使用し、金からなる金属体11を800°Cで1時間アニール処理を施すことにより形成し、白金からなる水素発生触媒13を40秒の間膜厚0.8nmでスパッタリングすることにより生成した一種類の光触媒5を用意した。この光触媒5を収容した水素発生装置1に対して、キセノンランプを用いて波長450nm~850nmの可視光領域及び近赤外光領域を含む光Lを照射し、発生した水素量及び酸素量を測定した。この結果から、水素発生量と酸素発生量の関係は、全ての照射時間において化学量論比である2:1に近いことが分かった。これにより、水素発生装置1で引き起こされる反応は化学量論的にも水の酸化還元反応であることが明らかにされた。

【0036】
また、図7は、光触媒5の表面5aにおける入射光Lの波長に対する吸光特性を示すグラフであり、図8は、入射光Lの波長範囲を様々変更した場合の光Lの照射時間に対する水素生成量の関係を示すグラフである。このとき、基板9としてニオブドープチタン酸ストロンチウム基板を使用し、金からなる金属体11を800°Cで1時間アニール処理を施すことにより形成し、白金からなる水素発生触媒13を40秒の間膜厚0.8nmでスパッタリングすることにより生成した一種類の光触媒5を用意した。このように、光触媒5の表面5aの吸光特性(すなわち、プラズモン共鳴スペクトル)が波長ピーク約610nmであり波長450nm~950nmの範囲で分布している場合において、波長範囲450-850nm、550-850nm、650-850nm、及び750-850nmの入射光Lをそれぞれ水素発生装置1に照射し、それに応じて発生した水素生成量を測定した。この結果より、照射時間に関わらず入射光Lの波長範囲が広がるにしたがって、水素の発生量が増加することが分かった。また、それぞれの水素発生量の測定結果の差分から、入射光Lの波長範囲450-550nm(Δλ1)、波長範囲550-650nm(Δλ2)、波長範囲650-750nm(Δλ3)、及び波長範囲750nm-850nm(Δλ4)の光成分に対する水素生成量A1,A2,A3,A4を評価した(図8)。また、図7には、評価されたそれぞれの水素生成量A1,A2,A3,A4を棒グラフであわせて示した。その結果、波長範囲Δλ1、Δλ2、Δλ3、Δλ4における水素生成量A1,A2,A3,A4は、それぞれ、基本的には、光触媒5の吸光特性(プラズモン共鳴スペクトル)の該当波長範囲Δλ1、Δλ2、Δλ3、Δλ4の積分値に対応していることが判明した。このことから、光触媒5による水分解による水素の生成が、可視光の吸収によって誘起されていることが証明された。

【0037】
さらに、図6及び図8の測定結果において使用した光触媒5と同一構成の光触媒5を対象にして、照射する入射光Lの波長帯域を変更して測定を行った。図9には、照射する入射光Lの強度の波長特性を示すグラフであり、実線に入射光Lの波長特性を、点線に光触媒5の表面5aにおける入射光Lの波長に対する吸光特性(すなわち、プラズモン共鳴スペクトル)を、それぞれ示している。図9に示すように、入射光Lとしては、波長範囲550-650nm、中心波長600nm、照射強度0.7W/cm2の光を照射した。

【0038】
上記の測定条件において、まず、照射時間と水素及び酸素の発生量との関係を測定した。図10は、入射光Lの照射時間に対する水素及び酸素の生成量の関係を示すグラフである。この結果から、図6に示した測定結果と同様に、水素発生量と酸素発生量の関係は、全ての照射時間において化学量論比である2:1に近いことが分かった。これにより、照射光の波長を狭帯域化した場合でも、水素発生装置1で引き起こされる反応は化学量論的にも水の酸化還元反応であることが明らかにされた。

【0039】
次に、光触媒5の裏面5b側の水溶液7bをph1.0で固定した状態で、表面5a側の水溶液7aのphを13.0~10.0の範囲で変化させた場合の水素及び酸素の生成率(時間当たりの生成量)を測定した(図11)。その結果、水溶液7aのphが上昇するほど(強アルカリ性であるほど)水素及び酸素の生成率は急激に上昇することが明らかにされた。

【0040】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、水素発生装置1には窓部3dが設けられて、窓部3dを介して入射光を光触媒5の表面5aに入射させるように構成されているが、それに加えて密閉容器3の窓部4dの反対側に(例えば、底面3bに)さらに窓部を設けて、光触媒5bの裏面5bに外部から光を入射可能に構成されていてもよい。このような構造によれば、外部から紫外光を光触媒5bの裏面5bに入射することにより、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム等を含む基板9を励起させて水素を発生させることが可能になり、表面5aに可視光或いは近赤外光、裏面5bに紫外光を同時入射させればより効率的に水素を発生させることができる。
【符号の説明】
【0041】
1…水素発生装置、3…密閉容器、5…光触媒、5a…表面、5b…裏面、7a,7b…水溶液、9…基板、9a…表面、9b…裏面、11…金属体、13…水素発生触媒、L…光。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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