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明細書 :水素化合物分解水素回収装置及びその方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-177387 (P2014-177387A)
公開日 平成26年9月25日(2014.9.25)
発明の名称または考案の名称 水素化合物分解水素回収装置及びその方法
国際特許分類 C01B   3/22        (2006.01)
FI C01B 3/22 Z
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2013-054039 (P2013-054039)
出願日 平成25年3月15日(2013.3.15)
発明者または考案者 【氏名】野村 信福
【氏名】豊田 洋通
【氏名】向笠 忍
【氏名】中原 真也
出願人 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100092200、【弁理士】、【氏名又は名称】大城 重信
【識別番号】100110515、【弁理士】、【氏名又は名称】山田 益男
【識別番号】100153497、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 信男
審査請求 未請求
テーマコード 4G140
Fターム 4G140DA03
4G140DA04
4G140DA05
4G140DB04
要約 【課題】水素化合物の反応加熱時の熱や環境廃熱を再利用して高効率に水素化合物から水素ガスを安定的に回収し、他の化合物を回収できる実用プラントとしてシステム構成が可能な水素化合物の水素回収装置及びその方法を提供する。
【解決手段】水素化合物を水素化合物貯留タンク2から廃熱により加熱して水素分解装置3に供給して液中プラズマで分解し、分解された水素を含むガスと分解液を水素化合物貯留タンク2に戻し、水素化合物貯留タンクで水素を含むガスと反応生成物を分離する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
水素化合物を分解して水素を回収する水素化合物分解水素回収装置であって、
前記水素化合物を貯留する水素化合物貯留タンク、前記水素化合物を分解して水素を生成する水素発生装置、前記水素化合物貯留タンクから前記水素発生装置に前記水素化合物を供給する水素化合物供給経路、前記水素発生装置から分解した分解液を前記水素化合物貯留タンクに戻す戻り経路、前記水素発生装置で発生した水素を回収する水素回収手段とからなることを特徴とする水素化合物分解水素回収装置。
【請求項2】
前記水素発生装置に供給する前記水素化合物を加温する加温手段を有する請求項1に記載の水素化合物分解水素回収装置。
【請求項3】
前記加温手段が、前記水素化合物貯留タンクから前記水素発生装置への水素化合物供給経路と前記戻り回路間に設けた熱交換器を含み、前記水素発生装置に供給する水素化合物と該水素発生装置から排出される発生ガス及び又は分解液とを熱交換して、前記水素発生装置の廃熱で該水素発生装置に供給する水素化合物を加温する請求項2に記載の水素化合物分解水素回収装置。
【請求項4】
前記加温手段が、前記水素化合物貯留タンクから前記水素発生装置への水素化合物供給経路の途中に高温媒体が貯留している恒温槽を設けてなり、該高温槽内を前記水素化合物供給経路が通過することにより高温媒体と熱交換することにより加温されるようにしてなる請求項1~3の何れかに記載の水素化合物分解水素回収装置。
【請求項5】
前記水素発生装置が、前記水素化合物を入れる反応容器と、該反応容器内の液中にプラズマを発生させる液中プラズマ発生手段とからなり、前記水素化合物の液中にプラズマを発生させることにより前記水素化合物を分解し、水素を発生させるものである請求項1~4の何れかに記載の水素化合物分解水素回収装置。
【請求項6】
前記水素回収手段は、前記水素発生装置から分解した水素を含むガスを前記水素化合物貯留タンクに供給して、該水素化合物貯留タンクを介して水素を回収するようにしてなる請求項1~5の何れかに記載の水素化合物分解水素回収装置。
【請求項7】
前記水素回収手段は、前記水素化合物貯留タンク内のガスを抽出して塩素成分を除去する塩素除去手段、該塩素除去手段を通過したガスから水素以外のガスを分離して水素を通過させる水素分離手段、分離された水素を貯蔵する水素貯蔵手段を有する請求項5に記載の水素化合物分解水素回収装置。
【請求項8】
前記水素化合物が液状廃棄物又は固形廃棄物を液体に混ぜて流動化したものである請求項1~7の何れかに記載の水素化合物分解水素回収装置。
【請求項9】
水素化合物を分解して水素を回収する水素化合物分解水素回収方法であって、液状水素化合物又は固体水素化合物を破砕して液体に混ぜてなる水素化合物を水素化合物貯留タンクから水素発生装置に供給し、前記水素発生装置で分解されたガスと分解液のうち少なくとも分解液を前記水素化合物貯留タンクに戻し、該分解液を新しい水素化合物と混合して前記水素発生装置に循環させると共に、前記水素発生装置で分解されたガスから水素を分離回収して水素貯蔵手段に貯蔵するようにしてなることを特徴とする水素化合物分解水素回収方法。
【請求項10】
前記水素発生装置に供給する前記水素化合物を加温するようにしてなる請求項9に記載の水素化合物分解水素回収方法。
【請求項11】
前記水素化合物の加温は、前記水素化合物貯留タンクから前記水素発生装置への水素化合物供給経路と該水素発生装置で分解した水素を含むガス及び又は分解液を前記水素化合物貯留タンクに戻す戻り経路での熱交換と、前記水素化合物貯留タンクに前記水素発生装置からの水素を含むガスと処理液を戻すことにより行うことからなり、水素発生装置の廃熱で行う請求項9又は10に記載の水素化合物分解水素回収方法。
【請求項12】
前記水素化合物の加温は、水素化合物が前記水素化合物貯留タンクから前記水素発生装置への水素化合物供給経路の途中に高温媒体が貯留している恒温槽内を前記水素が通過することにより高温媒体と熱交換することにより行う請求項9~11の何れかに記載の水素化合物分解水素回収方法。
【請求項13】
前記水素発生装置での水素化合物の分解は、反応容器内の液状の水素化合物内に液中プラズマを発生させることにより行う請求項9~12の何れかに記載の水素化合物分解水素回収方法。
【請求項14】
前記水素化合物貯留タンクで、前記水素発生装置で分解後のガスと反応生成物が分離され、該反応生成物は沈殿物として回収し、前記ガスは前記水素化合物貯留タンクの気層部から抽出し、該ガスから水素を分離するようにした請求項9~13の何れかに記載の水素化合物分解水素回収方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、廃油等の液状廃棄物、ごみや産業廃棄物などの固形廃棄物等の水素化合物を分解して水素を回収する装置及び方法であって、特に水素を高効率に取り出す水素化合物分解水素回収装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実用的な水素発生方法として、例えばメタン等の化石燃料ガスに水蒸気を混合し、高温で化学反応させて水素と一酸化炭素を得る水蒸気改質法が広く知られている。この水蒸気改質法はコストが低いという利点がある反面、一酸化炭素や二酸化炭素を大量に発生する欠点がある。また、メタンや天然ガスをプラズマで分解して水素とカーボンブラックを製造することが提案されている(特許文献1、2)。特許文献1,2に記載の発明は、メタンガス等の気体中の電極間でプラズマを発生させる気相プラズマによるものであり、プラズマのエネルギー密度を上げることは困難であり、反応速度に限界がある。しかも、プラズマは高温状態で発生するために取り扱いが不便であり、メタンガス等を高温で反応させるために安全を維持することは困難である。
【0003】
この問題を解決する方法として、本発明者らは、水素化合物を含む液体中にプラズマを発生させて水素化合物を分解し、効率的に水素を発生させて水素を回収する方法を提案した(特許文献3)。該方法は、液中でプラズマを発生するため、巨視的には低温且つ低圧であり、取り扱いやすく安全であり、且つ一酸化炭素や二酸化炭素を大量に発生させることなく、クリーンエネルギーの要請にも合致するものである。水素化合物として、炭化水素廃棄物、例えば使用済みの食用油やエンジンオイル等の廃棄物も使用でき、その場合水素製造と同時に廃棄物処理を行なうことができるという利点がある。また炭化水素を含む廃棄物を使用することによって、水素を発生させると共にフラーレンやカーボンナノチューブ等の炭素化合物を同時に合成させることができ、廃棄物を有価なものに変換再利用できるという利点がある。
しかしながら、この方法は、廃棄物を連続的に処理して水素ガスを抽出する実用プラントとしてのシステム構成はいまだ提案されていない。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第2711368号公報
【特許文献2】特許第2867182号公報
【特許文献3】特許第4710048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、水素化合物を連続的に分解でき、高効率に水素化合物から水素ガスを安定的に回収し、他の化合物を炭化物として回収できる実用プラントとしてシステム構成が可能な水素化合物の水素回収装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する請求項1に記載の本発明の水素化合物分解水素回収装置は、水素化合物を分解して水素を回収する水素化合物分解水素回収装置であって、
前記水素化合物を貯留する水素化合物貯留タンク、前記水素化合物を分解して水素を生成する水素発生装置、前記水素化合物貯留タンクから前記水素発生手段に前記水素化合物を供給する水素化合物供給経路、前記水素発生装置から分解した水素を含むガスと分解液を前記水素化合物貯留タンクに戻す戻り経路、前記廃棄物貯留タンクから水素を回収する水素回収手段とからなることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の水素化合物分解水素回収装置において、前記水素発生装置に供給する前記水素化合物を加温する加温手段を有することを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の水素化合物分解水素回収装置において、前記加温手段が、前記水素化合物貯留タンクから前記水素発生装置への水素化合物供給経路と前記戻り回路間に設けた熱交換器を含み、前記水素発生装置に供給する水素化合物と該水素発生装置から排出される発生ガス及び又は分解液とを熱交換して、前記水素発生装置の廃熱で該水素発生装置に供給する水素化合物を加温することを特徴とするものである。
請求項4に係る発明は、請求項1~3の何れかに記載の水素化合物分解水素回収装置において、前記加温手段が、前記水素化合物貯留タンクから前記水素発生装置への水素化合物供給経路の途中に高温媒体が貯留している恒温槽を設けてなり、該高温槽内を前記水素化合物供給経路が通過することにより高温媒体と熱交換することにより加温されるようにしてなることを特徴とするものである。
【0008】
請求項5に係る発明は、請求項1~4の何れかに記載の水素化合物分解水素回収装置において、前記水素発生装置が、前記水素化合物を入れる反応容器と、該反応容器内の液中にプラズマを発生させる液中プラズマ発生手段とからなり、前記水素化合物の液中にプラズマを発生させることにより前記水素化合物を分解し、水素を発生させるものであることを特徴とするものである。
請求項6に係る発明は、請求項1~5の何れかに記載の水素化合物分解水素回収装置において、前記水素回収手段は、前記水素発生装置から分解した水素を含むガスを前記水素化合物貯留タンクに供給して、該水素化合物貯留タンクを介して水素を回収するようにしてなることを特徴とするものである。
また、請求項7に係る発明は、請求項5に記載の水素化合物分解水素回収装置において、前記水素回収手段は、前記水素化合物貯留タンク内のガスを抽出して塩素成分を除去する塩素除去手段、該塩素除去手段を通過したガスから水素以外のガスを分離して水素を通過させる水素分離手段、分離された水素を貯蔵する水素貯蔵手段を有することを特徴とするものである。
さらに、請求項8に係る発明は、請求項1~7の何れかに記載の水素化合物分解水素回収装置において、前記水素化合物が液状廃棄物又は固形廃棄物を液体に混ぜて流動化したものであることを特徴とするものである。
【0009】
上記課題を解決する請求項9に係る本発明の水素化合物分解水素回収方法は、水素化合物を分解して水素を回収する水素化合物分解水素回収方法であって、液状水素化合物又は固体水素化合物を破砕して液体に混ぜてなる水素化合物を水素化合物貯留タンクから水素発生装置に供給し、前記水素発生装置で分解されたガスと分解液のうち少なくとも分解液を前記水素化合物貯留タンクに戻し、該分解液を新しい水素化合物と混合して前記水素発生装置に循環させると共に、前記水素発生装置で分解されたガスから水素を分離回収して水素貯蔵手段に貯蔵するようにしてなることを特徴とするものである。
請求項10に係る発明は、請求項9に記載の水素化合物分解水素回収方法において、前記水素発生装置に供給する前記水素化合物を加温するようにしてなることを特徴とするものである。
請求項11に係る発明は、請求項9又は10に記載の水素化合物分解水素回収方法において、前記水素化合物の加温は、前記水素化合物貯留タンクから前記水素発生装置への水素化合物供給経路と該水素発生装置で分解した水素を含むガス及び又は分解液を前記水素化合物貯留タンクに戻す戻り経路での熱交換と、前記水素化合物貯留タンクに前記水素発生装置からの水素を含むガスと処理液を戻すことにより行うことからなり、水素発生装置の廃熱で行うことを特徴とするものである。
【0010】
請求項12に係る発明は、請求項9~11の何れかに記載の水素化合物分解水素回収方法において、前記水素化合物の加温は、水素化合物が前記水素化合物貯留タンクから前記水素発生装置への水素化合物供給経路の途中に高温媒体が貯留している恒温槽内を前記水素が通過することにより高温媒体と熱交換することにより行うことを特徴とするものである。
また、請求項13に係る発明は、請求項9~12の何れかに記載の水素化合物分解水素回収方法において、前記水素発生装置での水素化合物の分解は、反応容器内の液状の水素化合物内に液中プラズマを発生させることにより行うことを特徴とするものである。
さらに、請求項14に係る発明は、請求項9~13の何れかに記載の水素化合物分解水素回収方法において、前記水素化合物貯留タンクで、前記水素発生装置で分解後のガスと反応生成物が分離され、該反応生成物は沈殿物として回収し、前記ガスは前記水素化合物貯留タンクの気層部から抽出し、該ガスから水素を分離するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び請求項9の本発明の水素化合物分解水素回収装置及びその方法によれば、水素貯留タンクから水素発生装置に供給する液状の水素化合物を水素発生装置に供給し、分解後の分解液を水素貯留タンクに戻して新しい水素化合物と混合して水素発生装置に循環させるので、エルルギー効率を高めることができると共に、連続的な水素製造が可能である。
また、水素化合物は液状に限らず固体水素化合物も分解できるので、廃油等の液状水素化合物に限らず、ゴミや固形産業廃棄物等も固形水素化合物も分解して水素を生成することが可能となり、廃油やゴミ処理型の水素ステーションの実現が期待できる。
【0012】
請求項2及び請求項10の発明によれば、水素発生装置に供給する水素化合物を予め加温手段により加温するので、水素発生装置での分解効率を高めることができる。
請求項3の構成によれば、水素発生装置の廃熱を利用して加温するので、エネルギー効率を高めて水素発生装置での分解効率を高めることができる。そして、水素貯留タンクは発電所や化学プラント等で環境に排出される廃熱を利用して加温することも可能であり、水素生成効率を飛躍的に高めることができる。
請求項4、12の構成によれば、恒温槽を介して水素化合物を水素発生装置に供給するので、水素化合物を常に一定温度で加熱して水素発生装置に供給でき、水素発生装置で効率よく安定して水素を生成することができる。
請求項5、13の構成によれば、液中にプラズマを発生させて水素化合物を分解するので、高温・高圧であるプラズマが液中で発生するため巨視的には低温かつ低圧であり、取扱い易く安全であり、かつ効率的に水素を発生させることができる。
請求項6の発明によれば、水素発生装置で分解された水素ガスを水素化合物貯留タンクを介して回収するので、分解生成後の高温の水素ガスを水素化合物貯留タンク内に貯留されている水素化合物の加温にさらに利用することができ、廃熱を回収して熱効率を高めることができる。
【0013】
請求項7、14の発明によれば、確実に分解ガスから水素を分離し、水素貯蔵手段に貯蔵することができ、効率的に分解水素を回収できると共に、反応生成物も回収することができる。例えば炭化水素を含む廃棄物を使用することによって、水素を発生させると共にフラーレンやカーボンナノチューブ等の炭素化合物を同時に合成させることができ、廃棄物を有価なものに変換再利用できる実用プラントを構成できる。
請求項8の発明によれば、水素化合物は液状廃棄物に限らず固形廃棄物も流動化させて、水素化合物貯留タンクと水素発生装置を循環させて効率的に分解させて水素を製造回収することができる。
請求項11の発明によれば、水素発生装置で分解された水素ガス及び又は分解液の廃熱を水素化合物供給経路と水素化合物貯留タンクで二重に回収して水素化合物を加温することができ、エネルギー効率をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る水素化合物分解水素回収装置の実施形態を示す概略図である。
【図2】その水素発生装置の実施形態を示す概略図である。
【図3】実験装置の概略図である。
【図4】水素化合物を反応容器に供給前に加温した場合と加温しなかった場合における排出液体温度と気体生成速度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を基に本発明に係る水素化合物分解水素回収装置の実施形態を図面を基に詳細に説明する。
本発明で水素を分解回収する原料となる水素化合物として、例えば、廃油や潤滑油、種々の液状産業廃棄物等の液状廃棄物が採用できると共に、またゴミ等の有機廃棄物や種々の固形廃棄物等が採用できる。固形廃棄物の場合は後述する水素発生装置と水素化合物貯留タンク間を循環できるように、適宜の大きさに破砕して水等の液体と混ぜて流量化して、液中プラズマにより分解できるようにする。

【0016】
図1は本実施形態に係る水素化合物分解水素回収装置の概略を示し、主な構成として、水素化合物供給タンク1、水素化合物貯留タンク2、廃熱利用の加温手段としての熱交換器3、水素発生装置としての反応器4、塩素除去手段を構成する脱塩素タンク5、水素分離手段を構成する差圧フイルター6、水素貯留手段9、電源10とから構成されている。水素化合物供給タンク1は、分解して水素を取り出す原材料としての水素化合物の形態、例えば、種々の産業廃棄物、ゴミ、廃油、潤滑油、塗料、プラスチック等によって最適な形状・構造のものが採用できるが、固形物の場合は、粉砕して水と混ぜて液状にして、水素化合物貯留タンク2に配管12を介して、適宜供給できるようにする。

【0017】
水素化合物貯留タンク2は、密閉構造となって図の実施形態では、内部が複数個の隔壁21で区画され、液が該隔壁間を流通できるように構成されている。水素化合物貯留タンク2には、該タンク内に水素化合物を供給する供給配管12、内部に貯留されている水素化合物を吸引して後述する反応器に供給する配管13、反応器でプラズマ処理された分解生成物の気液を反応器4から水素化合物貯留タンク2内に戻すための配管17、及び水素化合物貯留タンクの上部の気層部分に連結されて気層部分のガスを脱塩素タンク5に供給する配管18がそれぞれ接続されている。水素化合物貯留タンク2への各配管の配置関係は、図1に示すように、供給配管12と配管13の配置と、配管17と配管18との配置はなるべく離隔した区画に配置するのが望ましい。また、水素化合物貯留タンクの底部には、炭化物等の沈殿物を回収する排出バルブ22が適宜設けられている。水素化合物貯留タンク2には、稼働中一定量の水素化合物が貯留され、後述するように反応器4と循環経路を形成している。また、水素化合物貯留タンクは、例えば工場廃熱等で適宜加温できるようにして、水素発生装置に供給する水素化合物を所定温度に加熱して供給することによって、水素分解効率をより高めることができる。

【0018】
反応器4は、水素発生装置の主要部を構成するものであり、たとえば本発明者らが先に提供した前記特許文献3に記載されている図2に示すような液中でプラズマを発生させて水素化合物を分解して水素を発生させる水素発生装置を採用することができるが、それに限らず種々の形態の反応器を採用できる。

【0019】
図2に示す反応器4は、液状の水素化合物を入れる反応容器40と、該反応容器内の液中にプラズマを発生させる液中プラズマ発生手段とから構成されている。該液中プラズマ発生手段は、本実施形態では液体中に気泡を発生させる気泡発生手段としての超音波発生装置41と、前記液体に電磁波を照射する電磁波発生装置42とから構成されている。これらの電磁波発生装置42及び超音波発生装置41には電源が接続され、図1に示す実施形態では電源装置10として蓄電池が設けられ、該蓄電池にソーラパネル11を接続し、太陽光発電の電力を利用できるようにしている。

【0020】
反応容器としては、処理すべき対象物質の種類や処理量にあわせて適宜選択でき、大量に処理するための大型処理槽であってもよく、あるいは高速で連続的に処理するために液体が処理に必要な時間だけの通過時間を有する配管であってもよい。反応容器内は、減圧状態にすることよって、プラズマが発生しやすくなり、望ましい。
なお、気泡発生手段としては、超音波発生装置以外に、真空ポンプなどの減圧手段によって反応容器内を減圧して気泡を発生させる手段や、液体中に加熱手段を設けて気泡を発生させる手段を用いることもできる。

【0021】
本実施形態では、超音波発生装置41によって反応容器内の液体に超音波を照射することによって、液体中に多数の気泡43が発生する。そして、この気泡が発生している箇所に電磁波を照射するように、電磁波発生装置42が設けられている。気泡に照射する電磁波としては、発生させようとするプラズマの種類や強度等によって、周波数や出力を選択すればよいが、主に10MHz以上の高周波や2GHz以上のマイクロ波を用いる。超音波により高温高圧になっているところに電磁波を重畳することによって気泡中に高エネルギーのプラズマが発生する。このプラズマは既に気泡中に封じ込まれており、局所的には高温高圧のプラズマが発生しているが、熱容量の大きな液体中に閉じ込められており巨視的にみれば低温である。したがって装置の外部や装置に接触するものを加熱することがない。このようにして発生したプラズマは高温高圧であってエネルギー密度が高く、しかも取り扱いが容易である。

【0022】
反応器4の反応容器40には、水素化合物を供給する配管15が接続され、水素化合物貯留タンク2に貯留されている水素化合物を配管13を介してポンプ20により吸い上げ、配管14に吐出して熱交換器3に配管15により水素化合物を供給するように設けられている。従って、本実施形態では、配管13、ポンプ20、配管14、熱交換器3、供給管15で、水素発生装置に水素化合物を供給する水素化合物供給経路を形成している。

【0023】
また、反応容器40には、分解されたガス及び分解液を水素化合物貯留タンク2に戻すための配管16が接続され、該配管が熱交換器3、配管17を介して水素化合物貯留容器2に接続されている。従って、反応容器から水素化合物貯留タンク2に戻す高温の分解ガス及び分解液と、反応容器に供給される水素化合物が共に熱交換器3を通過することにより、熱交換が行われてプラズマによる発生熱を再利用して反応容器に供給する水素化合物を加熱するようにしている。即ち、本実施形態では、配管16、熱交換器3、配管17が戻り経路を形成している。配管17の水素化合物貯留タンクでの出口端は、図1に示すように水素化合物貯留タンクの底部近傍に開口するようにすることによって、ガスは液中を通ってヘッドスペースの気層部に移動するので、その間に熱交換を行い水素化合物を加温する効果を奏する。
反応容器内で水素化合物が炭化水素化合物である場合、液中プラズマで分解されて水素ガスその他の塩素などのガス(気体)と炭素(固体)となり、図1の実施形態では流れがあるため、ガスと固体と分解されなかった液体が混じって流れていき、水素化合物貯留タンク2で分離される。

【0024】
なお、反応容器40から、分解処理されたガス及び反応生成物を含む液を水素化合物貯留タンク2に戻す経路して、図1では単に一つの配管として図示しているが、図2に示すように、反応容器40の気層部に連結された分解ガス排出配管45と反応容器の底部に連結された分解液排出管46を別途に設け、それぞれを熱交換器3を介して水素化合物貯留タンクに連結して、ガスと反応液を別々の経路で戻すようにする。流れが遅い場合は、気体だけが上部に上がっていくので、分解ガス排出配管45を介して直接又は水素化合物貯留を介して水素回収手段に排出される。

【0025】
また、他の方法として、水素化合物が炭化水素を含むものである場合は、容器の液中で発生したプラズマによりカーボンナノチューブ等のニューカーボンが合成されるので、発生した水素を合成したニューカーボンに吸着させて、液と共に排出させて水素化合物貯留タンクに戻すようにしてもよい。その場合は、図1に示すように1個の排出管のみで水素化合物貯留タンクに排出可能である。ニューカーボンに吸着された水素は水素化合物貯留タンク内でニューカーボンから分離される。
このように、本実施形態では、プラズマ反応容器の廃熱を有効に利用して廃棄物を加温することにより、また環境廃熱を有効利用することにより、分解液を飽和温度近くまで加熱することが可能となり、エネルギーコストを低減させ、水素生成効率を大幅に向上させることができる。

【0026】
なお、図2に示す反応器4における反応容器40には、予め反応容器内を減圧にするための真空ポンプ44が接続されていると共に、容器内に不活性ガスを供給するために、アルゴンガス供給手段30と窒素ガス供給手段31が連結されている。
不活性ガスは、流量計計34により流量を確認しながら制御弁32、33を調整して、適量のアルゴンガスまたは窒素ガスを反応容器内に供給するようにしている。このようにして、反応容器内を不活性ガス雰囲気下で減圧することにより、プラズマが発生しやすくかつ反応を促進するようにしている。

【0027】
以上のようにして、反応容器40において、液中プラズマにより水素化合物を液中プラズマにより分解することにより、水素を発生させると共に炭素を含む化合物の場合は同時に炭素化合物が合成される。

【0028】
分解後の発生ガスと反応生成物は、水素化合物貯留タンク2に戻されて分離され、炭化物は沈殿物としてタンクの下方に設けられたバルブ22を開放することによって回収される。一方、水素を含む発生ガスは、水素化合物貯留タンク2の気層部分から回収されて脱塩素タンク5内に貯留されている水酸化カリウム内を通過させ、水酸化カリウムと反応させて塩化カリウムを生成させることにより、塩素を除去する。なお、塩素除去法はこの実施形態に限らず、種々の方法が任意に採用できる。

【0029】
以上のようにして、塩素を除去したガスは、次に水素のみを通過させる水素分離手段である差圧フイルター6を通過することにより、アセチレンガス等の水素以外のガスが除去され、水素のみが通過し、水素貯留手段9に貯留する。水素貯留手段としては、触媒として水素を吸着する水素吸着合金やカーボンナノファイバー等の水素吸着物質に水素を吸着させるか、または気体のまま高圧ボンベ内に貯蔵、又は液化貯蔵等の公知の手段が採用できる。

【0030】
以上のように、本発明での望ましい一実施形態によれば、RF帯の液中プラズマの分解効率を上げるため、様々な廃熱を利用して廃棄物を加温し、効率を向上させると共に特にプラズマ反応容器前後で熱交換が行われ、プラズマによる発生熱を再利用することによりシステム効率が大幅に向上する構成にしたものである。
そして、本実施形態の水素化合物分解水素回収装置によれば、反応容器及び水素化合物貯留タンクを水素化合物供給経路及び戻り経路によって連結し、かつ反応容器の前後に熱交換器を設けたので、反応器の廃熱を利用できると共に、発電所や化学プラント等で環境に排出される低品位の廃熱も利用して水素化合物貯留タンク内の水素化合物を加温可能であり、それらを利用して分解処理前の水素化合物を加温することにより、従来の水素製造方法よりも大幅に高効率に水素を生成できる。そのため、廃熱を何ら利用しない場合の水素生成効率は電気分解の同程度以下であるが、廃熱利用し処理液の温度を上昇させると、従来の水電気分解を大幅に上回る効率で水素製造が可能となる。液温の飽和温度近くまで加熱出来るとき、水素生成効率は電気分解の効率を超えることができる。

【0031】
なお、上記実施形態では、水素化合物貯留タンクから熱交換器3を介して反応容器40に水素化合物を供給しているが、後述する実験装置のように、水素化合物貯留タンクの下流側に、所定温度の加熱媒体を貯留した恒温槽を設け、該恒温槽内を供給経路の配管が通過するようにすることによって水素化合物を一定温度に安定して加温することができ、より分解効率を高めることができる。

【0032】
実験例:
水素化合物を反応容器に供給する前に加温することによる分解効率の影響を確認するために次のような実験を行った。
実験装置の概要を図3に示す。水素化合物液体にはn-ドデカンを使用した。液中プラズマ発生装置の反応容器50内に水素化合物液体をいれ2.45GHzのマイクロ波を供給することによって、液中にプラズマが発生し水素化合物液体が分解される。該液体は、液保持タンク51からポンプ52によって反応容器内へ供給される前に恒温槽55内に設置された銅管56内に通過させて恒温槽内に貯留されている高温水と熱交換されて加温された。反応容器50内でプラズマによって生成した気体は液体と共に反応容器外へ排出され、気液分離器60で液体と分離された。分離された気体が水上置換により回収された。分離された液体は、液保持タンク51内をアスピレーターによって減圧することにより活性炭フィルター65を強制的に通過させて液保持タンク51へと送られて戻された。液体の流量は反応容器流入ホース57ならびにバイパスホース53、気液分離器60からの液体排出ホース59に接続された3つのバルブ61~63によって調整され,ほぼ一定に保たれた。反応容器50に供給される液体温度と排出される液体温度は熱電対を用いて測定した。

【0033】
上記実験装置において、反応容器50に供給する水素化合物液体を加温した場合と加温しない場合における反応容器からの排出液体温度に対する気体生成速度を測定した。その結果、図4に示す結果が得られた。図4のグラフにおいて恒温槽55で加温されていない場合と100℃に加温されている場合とを区別して示している。排出液体温度が100℃より低いのは、恒温槽での液体が十分加温されていないのと反応容器へ供給されるまでに熱損失が生じるためである。加温されている場合の気体生成速度の平均は、されていない場合のそれに比べて33%増加している。

【0034】
また、反応容器50からの気体の排出過程でアスピレーターによって強制排出させると、さらに気体生成速度は上昇した。実験結果の一例を表1に示す。生成気体に占める水素の割合は60%前後であった。アルカリ水電解法による水素製造におけるエネルギー効率は約80%とされているので、水から水素1molを生成させるのに必要なエンタルピは286kJ/molから、アルカリ水電解法のエネルギー効率を約80%とすると356kJ/molとなる。アルカリ水電解法における供給エネルギー当りの水素生成体積量は0.23Nm3/kWhと見積られる。この値と本実験における単位マイクロ波出力エネルギー当りの水素生成量は表1から0.34Nm3/kWhとなるので、電気分解の約1.5倍の量の水素が発生する。この値はマイクロ波出力を基に求められているが、マグネトロンのエネルギー効率は高品位なもので約75%とされている。このように、水素生成効率はアルカリ水電解法よりも水素製造装置に供給される水素化合物を加温する本手法が優れていることが確認できた。
【表1】
JP2014177387A_000003t.gif

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、廃油や種々の産業廃棄物等の液状や固形物の種々の形態の水素化合物を連続的に分解でき、かつ水素化合物の分解熱や環境に排出される種々の廃熱を再利用して水素化合物を加温し分解効率を高めて、高効率に水素化合物から水素ガスのみを安定的に回収し、他の化合物を炭化物として回収できる実用プラントとしてシステム構成が可能であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0036】
1 水素化合物供給タンク
2 水素化合物貯留タンク
3 熱交換器
4 反応器(水素発生装置)
5 脱塩素タンク
6 差圧フイルター
9 水素貯留手段
10 電源
11 ソーラパネル
12~19 配管
20 ポンプ
21 隔壁
22 バルブ
30 アルゴンガス供給手段
31 窒素ガス供給手段
32、33 バルブ
34 流量計
40、50 反応容器
41 超音波発生装置
42 電磁波発生装置
43 気泡
44 真空ポンプ
45 分解ガス排出管
46 分解液排出管
51 液保持タンク
52 ポンプ
53 バイパスホース
55 恒温槽
56 銅管
57 反応容器流入ホース
59 液体排出ホース
60 気液分離器
61、62、63 バルブ
65 フイルター
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図1】
3