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明細書 :カーボンナノチューブ分散剤、その製造方法、カーボンナノチューブ分散液、及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5881019号 (P5881019)
公開番号 特開2014-172968 (P2014-172968A)
登録日 平成28年2月12日(2016.2.12)
発行日 平成28年3月9日(2016.3.9)
公開日 平成26年9月22日(2014.9.22)
発明の名称または考案の名称 カーボンナノチューブ分散剤、その製造方法、カーボンナノチューブ分散液、及びその製造方法
国際特許分類 C08G  77/388       (2006.01)
C01B  31/02        (2006.01)
C08L  83/08        (2006.01)
C08K   3/04        (2006.01)
C08G  77/06        (2006.01)
B01F  17/54        (2006.01)
B01F  17/52        (2006.01)
B01J  13/00        (2006.01)
FI C08G 77/388
C01B 31/02 101F
C08L 83/08
C08K 3/04
C08G 77/06
B01F 17/54
B01F 17/52
B01J 13/00 B
請求項の数または発明の数 9
全頁数 17
出願番号 特願2013-045756 (P2013-045756)
出願日 平成25年3月7日(2013.3.7)
審査請求日 平成27年5月14日(2015.5.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】金子 芳郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査官 【審査官】山村 周平
参考文献・文献 特表2009-522203(JP,A)
特開2010-262290(JP,A)
特開2009-149881(JP,A)
特表2007-515502(JP,A)
特開2006-045392(JP,A)
特開2005-120333(JP,A)
Tomoyuki Arake,Kazuhiro Shikinaka,Takuo Sugioka,Hironobu Hashimoto,Yasutaka Sumida,Yoshiro Kaneko,Dispersion of multi-walled carbon nanotube using soluble polysilsesquioxane containing alkylammonium side chains and triiodide counterions,Polymer,2013年 8月24日,Vol.54,p5643-5647
調査した分野 C08G 77/00-77/62
C08L 83/00-83/16
C08K 3/00-13/08
B01F 17/00-17/56
B01J 13/00-13/22
C01B 31/00-31/36
C07F 7/02-7/21
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
構造式が下記の化学式1で表されることを特徴とするラダー型ポリシルセスキオキサン。
【化1】
JP0005881019B2_000014t.gif

【請求項2】
構造式が下記の化学式2で表されることを特徴とするラダー型ポリシルセスキオキサン。
【化2】
JP0005881019B2_000015t.gif

【請求項3】
請求項1又は2に記載のラダー型ポリシルセスキオキサンを含有することを特徴とするカーボンナノチューブ分散剤。
【請求項4】
分散媒と、
前記分散媒中に分散したカーボンナノチューブと、
前記カーボンナノチューブの表面に吸着された請求項3に記載のカーボンナノチューブ分散剤と、
を有することを特徴とするカーボンナノチューブ分散液。
【請求項5】
構造式が下記の化学式3で表されるラダー型ポリシルセスキオキサンの対アニオンを塩化物イオンからヨウ化物イオンに変換する工程と、
次に、前記対アニオンを前記ヨウ化物イオンから三ヨウ化物イオンに変換する工程と、
を有することを特徴とするラダー型ポリシルセスキオキサンの製造方法。
【化3】
JP0005881019B2_000016t.gif

【請求項6】
構造式が下記の化学式4で表されるラダー型ポリシルセスキオキサンの対アニオンを塩化物イオンからヨウ化物イオンに変換する工程と、
次に、前記対アニオンを前記ヨウ化物イオンから三ヨウ化物イオンに変換する工程と、
を有することを特徴とするラダー型ポリシルセスキオキサンの製造方法。
【化4】
JP0005881019B2_000017t.gif

【請求項7】
前記対アニオンを前記ヨウ化物イオンから三ヨウ化物イオンに変換する工程は、対アニオンが前記ヨウ化物イオンとなったラダー型ポリシルセスキオキサンを、アルコール中でヨウ素と混合する工程を有することを特徴とする請求項5又は6に記載のラダー型ポリシルセスキオキサンの製造方法。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の方法によりラダー型ポリシルセスキオキサンを製造する工程を有することを特徴とするカーボンナノチューブ分散剤の製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載のカーボンナノチューブ分散剤が溶解した溶液にカーボンナノチューブを加える工程と、
次に、前記溶液に超音波を照射する工程と、
を有することを特徴とするカーボンナノチューブ分散液の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ分散剤、その製造方法、カーボンナノチューブ分散液、及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう)は1991年の発見以来、導電性、熱伝導性、機械的強度等の優れた特性を持つことから、多くの分野で注目されてきた。しかしながら、CNTは各種溶媒中に分散しにくく、このことがCNTの応用への障壁となっていた。CNTの凝集の主な原因は、CNT間の非共有結合性相互作用であり、具体的にはファンデルワールス力、π-πスタッキング、疎水性相互作用などが挙げられる。CNTの特性は凝集することで著しく低下するため、CNTを分散媒中に分散させる方法がこれまでにも各種提案されてきた。その1つとして、共有結合を利用してCNTを化学修飾する方法がある(非特許文献1参照)。しかしながら、CNTの化学修飾法は、炭素同士の結合の一部を切断するため、CNTの特性を劣化させる原因になる。
【0003】
従って、CNTを分散させる際には、共有結合を利用しない方法で行うことが望ましい。このような方法として、界面活性剤などに代表される分散剤をCNTの表面に非共有結合性相互作用により吸着させる方法が知られている。例えばCNTをドデシル硫酸ナトリウムなどの低分子界面活性剤を含有する水溶液に添加する方法(特許文献1参照)がある。しかし、これら低分子界面活性剤を使用した際には薄膜形成能が低く、薄膜化を容易にするために重合性のモノマーやポリマーを更に添加する必要がある。一方、CNT表面にポリマーを吸着させる方法も知られており、具体的にはポリ-m-フェニレンビニレン-co-ジオクトキシ-p-フェニレンビニレンをCNT表面に吸着させる方法(特許文献2参照)も提案されている。この手法では、有機溶媒中にCNTを孤立に分散させることが可能である。さらに、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン系化合物を用い、アミド系の極性有機溶媒中に分散させる方法(例えば特許文献3参照)、ポリビニルピロリドンによりアミド系極性有機溶媒中に分散させる方法(例えば特許文献4参照)、アルコール系有機溶媒中に分散させる方法(例えば特許文献5参照)なども提案されている。
【0004】
しかしながら、以上の技術において用いられる分散剤は全て有機化合物であり、無機化合物を基盤とする材料をCNTの分散剤として用いた知見は明らかにされていない。無機化合物に比べて耐久性や力学強度に劣る有機化合物からなる分散剤によりCNTを分散させても、力学強度等のCNTの特性を十分に生かしきれない。このことから、無機化合物を基盤とするCNT分散剤の開発は重要な課題である。
【0005】
耐久性や力学強度に優れるシロキサン結合を主鎖骨格とする無機高分子としてポリシルセスキオキサンが知られる。しかしながら、高分子量のポリシルセスキオキサンは三次元網目構造体となりやすく不溶化してしまい、可溶性の高分子量ポリシルセスキオキサンの合成例は少ない。このことから、この無機高分子を用いたCNTの溶媒中への分散化に関する報告はこれまでなされていなかった。
【0006】
一方で本発明者らは、アミノ基含有有機トリアルコキシシランを塩酸等の水溶液中で加熱し、溶媒を蒸発させながら重縮合を進行させる手法により、分子量1万以上の可溶性ラダー型ポリシルセスキオキサン(以下、「PSQ」という)が合成できることを報告している(特許文献6、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平6-228824号公報
【特許文献2】特開2000-44216号公報
【特許文献3】特開2005-75661号公報
【特許文献4】特開2005-162877号公報
【特許文献5】特開2008-24522号公報
【特許文献6】特許第4555962号公報
【0008】

【非特許文献1】Science, vol.282, p.95-98, 1998年
【非特許文献2】Chemistry of Materials,vol.16,p.3417-3423,2004年
【非特許文献3】Polymer, vol.46, p.1828-1833, 2005年
【非特許文献4】International Journal of Polymer Science, Article ID 684278, 2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、CNTを分散媒中に適切に分散させることができる無機化合物を基盤とするCNT分散剤、その製造方法、CNT分散液、及びその製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、上記の特許文献6、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4等に記載されたPSQの対アニオンを三ヨウ化物イオンに変換したラダー型PSQが、CNTの分散剤として機能することを見出した。
【0011】
本発明に係る第1のラダー型ポリシルセスキオキサンは、構造式が下記の化学式1で表されることを特徴とする。
【0012】
【化1】
JP0005881019B2_000002t.gif

【0013】
本発明に係る第2のラダー型ポリシルセスキオキサンは、構造式が下記の化学式2で表されることを特徴とする。
【0014】
【化2】
JP0005881019B2_000003t.gif

【0015】
本発明に係るカーボンナノチューブ分散剤は、上記第1又は第2のラダー型ポリシルセスキオキサンを含有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るカーボンナノチューブ分散液は、分散媒と、前記分散媒中に分散したカーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブの表面に吸着された上記のカーボンナノチューブ分散剤と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る第1のラダー型ポリシルセスキオキサンの製造方法は、構造式が下記の化学式3で表されるラダー型ポリシルセスキオキサンの対アニオンを塩化物イオンからヨウ化物イオンに変換する工程と、次に、前記対アニオンを前記ヨウ化物イオンから三ヨウ化物イオンに変換する工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
【化3】
JP0005881019B2_000004t.gif

【0019】
本発明に係る第2のラダー型ポリシルセスキオキサンの製造方法は、構造式が下記の化学式4で表されるラダー型ポリシルセスキオキサンの対アニオンを塩化物イオンからヨウ化物イオンに変換する工程と、次に、前記対アニオンを前記ヨウ化物イオンから三ヨウ化物イオンに変換する工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
【化4】
JP0005881019B2_000005t.gif

【0021】
本発明に係るカーボンナノチューブ分散剤の製造方法は、上記の第1又は第2の方法によりラダー型ポリシルセスキオキサンを製造する工程を有することを特徴とする。
【0022】
本発明に係るカーボンナノチューブ分散液の製造方法は、上記のカーボンナノチューブ分散剤が溶解した溶液にカーボンナノチューブを加える工程と、次に、前記溶液に超音波を照射する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、簡易な処理でCNTを分散媒中に適切に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1、第2の実施形態の処理の概要を示す図である。
【図2】第1の実験におけるラダー型PSQ(PSQ-I)のEDX測定結果を示す図である。
【図3】第1の実験におけるラダー型PSQ(PSQ-I3)のUV-Visスペクトルを示す図である。
【図4】第1の実験におけるラダー型PSQ(PSQ-I3)を分散剤に用いたMWCNTの1-ペンタノール分散液の動的光散乱測定結果を示す図である。
【図5】第2の実験におけるラダー型PSQ(PSQ-(I32)を分散剤に用いたMWCNTの1-ペンタノール分散液の動的光散乱測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者は、無機化合物を基盤とする材料によってCNTを分散媒中に分散させるため、鋭意に研究した結果、上記の化学式3又は化学式4で表される、塩化物イオンを対アニオンとするラダー型PSQの対アニオンを三ヨウ化物イオンに変換したものが、1-ペンタノールや1-ブタノール等のアルコール中でCNTを分散させることを見出した。

【0026】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。

【0027】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るCNT分散剤は、構造式が上記の化学式1で表されるラダー型PSQを含有している。このラダー型PSQは3-アミノプロピル基を側鎖に有している。つまり、このラダー型PSQはアンモニウム基を有している。また、このラダー型PSQの対アニオンは三ヨウ化物イオンからなる。

【0028】
このCNT分散剤は、次のようにして製造することができる。

【0029】
先ず、上記の化学式3で表されるアンモニウム基含有ラダー型PSQを準備する。つまり、3-アミノプロピル基を側鎖に有し、対アニオンが塩化物イオンからなるラダー型PSQ(以下、「PSQ-Cl」ともいう)を準備する。そして、PSQ-Clを精製水に溶解して水溶液を作製する。次いで、この水溶液を、予めヨウ化カリウム(KI)水溶液で処理されたアニオン交換樹脂のカラムに通すことによって、対アニオンを塩化物イオンからヨウ化物イオンに変換する。イオン変換後の水溶液を濃縮し、この濃縮液を凍結乾燥することでヨウ化物イオンを対アニオンとするラダー型PSQ(以下、「PSQ-I」ともいう)を得る。その後、アルコール中でPSQ-Iをヨウ素(I2)と混合することによって、対アニオンをヨウ化物イオンから三ヨウ化物イオンに変換する。アルコールとしては、例えば1-ペンタノール、1-ブタノール等を用いることができる。

【0030】
このような方法により、上記の化学式1で表されるアンモニウム基含有ラダー型PSQ(以下、「PSQ-I3」ともいう)を含有するCNT分散剤を製造することができる。

【0031】
そして、第1の実施形態に係るCNT分散剤は、後述の実験でも裏付けられているように、CNTを1-ペンタノール、1-ブタノール等のアルコール中で容易に分散することが可能であり、樹脂等へのナノ分散も期待できる。このようなCNTが分散した樹脂(複合材料)は、高強度構造材料分野、エネルギー分野、エレクトロニクス分野での利用が期待される。

【0032】
なお、アルコール中でのPSQ-IとI2との混合の後に、PSQ-I3をアルコールから抽出した場合には、PSQ-I3を密閉容器等内で保存することが好ましい。これは、PSQ-I3はPSQ-I及びI2と平衡状態にあり、かつI2が揮発性であるため、徐々にPSQ-Iの割合が増加し、PSQ-I3の割合が減少してしまうからである。

【0033】
次に、第1の実施形態に係るCNT分散剤を用いてCNT分散液を製造する方法について説明する。

【0034】
先ず、第1の実施形態に係るCNT分散剤が溶解した溶液を準備する。この溶液としては、CNT分散剤を1-ペンタノール、1-ブタノール等のアルコールに溶解させたものを用いることができる。従って、上記の方法で対アニオンがヨウ化物イオンから三ヨウ化物イオンに変換されたラダー型PSQが溶解した溶液をそのまま用いることができる。次いで、この溶液にCNTを加え、超音波を照射する。CNTとしては、例えば多層CNT(以下、「MWCNT」ともいう)を用い、MWCNT:PSQ-I3の質量比を、例えば1:9~5:5とする。また、超音波を照射する時間は、例えば2時間程度とする。

【0035】
このような方法により、CNT分散液を製造することができる。

【0036】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るCNT分散剤は、構造式が上記の化学式2で表されるラダー型PSQを含有している。このラダー型PSQは3-(2-アミノエチル)アミノプロピル基を側鎖に有している。つまり、このラダー型PSQもアンモニウム基を有している。また、このラダー型PSQの対アニオンも三ヨウ化物イオンからなる。

【0037】
このCNT分散剤は、次のようにして製造することができる。

【0038】
先ず、上記の化学式4で表されるアンモニウム基含有ラダー型PSQを準備する。つまり、3-(2-アミノエチル)アミノプロピル基を側鎖に有し、対アニオンが塩化物イオンからなるラダー型PSQ(以下、「PSQ-(Cl)2」ともいう)を準備する。そして、PSQ-(Cl)2を精製水に溶解して水溶液を作製する。次いで、第1の実施形態と同様にして、対アニオンを塩化物イオンからヨウ化物イオンに変換し、その後、対アニオンをヨウ化物イオンから三ヨウ化物イオンに変換する。

【0039】
このような方法により、上記の化学式2で表されるアンモニウム基含有ラダー型PSQ(以下、「PSQ-(I32」ともいう)を含有するCNT分散剤を製造することができる。

【0040】
そして、第2の実施形態に係るCNT分散剤も、後述の実験でも裏付けられているように、CNTを1-ペンタノール、1-ブタノール等のアルコール中で容易に分散することが可能であり、樹脂等へのナノ分散も期待できる。このようなCNTが分散した樹脂(複合材料)は、高強度構造材料分野、エネルギー分野、エレクトロニクス分野での利用が期待される。

【0041】
第1、第2の実施形態の処理を図1に模式的に表す。
【実施例】
【0042】
次に、本発明者が行った実験について説明する。なお、この実験における条件等は、本発明の実施可能性等を確認するために採用した例であり、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【実施例】
【0043】
(第1の実験)
第1の実験では、先ず、上記の化学式3で表される0.7333g(5 mmol unit)のラダー型PSQ(PSQ-Cl)を30mLの精製水に溶解した。また、予め50mLの1mol/L KI水溶液で処理した後に精製水で洗浄したアニオン交換樹脂(約50mL、樹脂名:Amberlite IRA-900J)のカラムを準備した。そして、PSQ-Clの水溶液をカラムに通した。更に、150mLの精製水をこのカラムに流し込むことで生成物の水溶液を回収し、得られた水溶液をロータリーエバポレーターで10mLまで濃縮した。その後、濃縮液を凍結乾燥することで0.9010gのヨウ化物イオンを対アニオンとするラダー型PSQ(PSQ-I)を得た。そして、PSQ-Iの一部を採取し、Philips製のXL-30 E-SEMを用いてエネルギー分散型X線分析(EDX)を行った。
【実施例】
【0044】
図2に、PSQ-IのEDXの結果を示す。図2に示すように、塩素(Cl)由来のピークは完全に消失し、ヨウ素(I)由来のピークが観測された。更に、ケイ素(Si)とヨウ素との原子数比が約1:1であった。これらの結果から、下記の化学式5で表される構造の化合物、すなわちPSQ-Iの形成が確認された。
【実施例】
【0045】
【化5】
JP0005881019B2_000006t.gif
【実施例】
【0046】
次に、5.0mLの1-ペンタノールに0.0426g(0.1680mmol)のI2を加えて溶解させ、溶液を作製した。その後、この溶液に0.0200gのPSQ-Iを加えて室温で撹拌し溶解させることで、三ヨウ化物イオンを対アニオンとするラダー型PSQ(PSQ-I3)の溶液を調製した。そして、このPSQ-I3の溶液の一部を採取し、JASCO製のV-630を用いてUV-Vis測定を行った。
【実施例】
【0047】
図3に、PSQ-I3のUV-Visスペクトルを示す。図3に示すように、292nm及び360nm付近に吸収ピークが確認され、三ヨウ化物イオンが存在していることが確認された。
【実施例】
【0048】
次に、5.0mLのPSQ-I3の1-ペンタノール溶液にMWCNTを加えて2時間超音波処理を行い、MWCNTの分散液を調製した。MWCNTとしては、東京化成工業株式会社製、直径が約10nm、長さが約1μm~2μmのものを用いた。そして、この分散液の一部を採取し、50倍に希釈してJASCO製のV-630を用いたUV-Vis測定を行った。
【実施例】
【0049】
表1に、MWCNTの1-ペンタノール分散液の750nmの波長における吸光度を示す。PSQ-I3の1-ペンタノール溶液の吸光度が0.00であったのに対して(Run 1)、MWCNTの1-ペンタノール分散液の吸光度は0.39であり(Run 2)、1-ペンタノール中にMWCNTが分散していることが確認された。更に、この分散液では、24時間静置しても750nmにおける吸光度の減少があまり見られず(Run 3)、安定してMWCNTが分散していることが分かった。
【実施例】
【0050】
【表1】
JP0005881019B2_000007t.gif
【実施例】
【0051】
更に、このMWCNTの1-ペンタノール分散液の分散性を評価するために、孔径が7μmのろ紙(桐山ガラス株式会社製、直径21mm)を用いてろ過を行い、ろ紙の上部に残存する生成物(残渣)の質量を算出した。表2に、超音波処理を行った後の静置時間及び残渣の質量を示す。表2に示すように、超音波処理を行ってから2時間後までは、ろ紙を通過するほどの分散性を有していることが確認された(Runs 11~13)。
【実施例】
【0052】
【表2】
JP0005881019B2_000008t.gif
【実施例】
【0053】
PSQ-I3を分散剤に用いたMWCNTの1-ペンタノール分散液の動的光散乱測定を行ったところ、図4に示すように、数平均粒径が120.3±34.8nmであった。このことから、大きな凝集体が存在しないことが確認できた。
【実施例】
【0054】
次に、MWCNTを分散させるアルコールの種類について検討を行った。ここでは、表3に示す種々のアルコールを用いたことを除き、上述の評価と同様の処理を行い、750nmにおける吸光度及びろ過による残渣の質量に基づいて、超音波処理直後の分散性を評価した。1-ペンタノール(Run 21)以外でも、1-ブタノールを用いて同様な処理を行うことでMWCNT分散液が調製できることが確認できた(Run 22)。その一方で、1-プロパノール(Run 23)、エタノール(Run 24)、メタノール(Run 25)を用いた場合は、残渣の質量が大きく、高度な分散性を有していないことが分かった。また、1-ヘキサノールを用いた場合には、PSQ-I3を溶解することができなかったため、MWCNTの分散性の評価を行うことができなかった。
【実施例】
【0055】
【表3】
JP0005881019B2_000009t.gif
【実施例】
【0056】
MWCNTを分散させるために好ましいPSQ-I3の質量を明らかにするために、1-ペンタノールの容量及びMWCNTの質量を一定にして、表4に示すように、PSQ-I及びI2の質量を変化させ、超音波処理直後の分散性を評価した。その結果、MWCNT/PSQ-Iの比が高くなるにつれて残渣の質量が増加し、分散性が低下していることが分かった。しかしながら、MWCNT:PSQ-I=5:5においても、残渣の質量は比較的低く、この比においても、ある程度MWCNTが分散していることが確認された。
【実施例】
【0057】
【表4】
JP0005881019B2_000010t.gif
【実施例】
【0058】
PSQ-I3の代わりに、PSQ-I3と同様に三ヨウ化物イオンを形成するKI/I2混合物の1-ペンタノール溶液を用いて、表5に示すように、MWCNTの分散性を評価した。その結果、超音波処理直後のUV-Visスペクトルによる750nmの波長での吸光度が0.44であり、更に、ろ過による残渣の質量が小さかった。このことから、この時点においては、MWCNTが分散していることが分かった(Run 42)。しかし、24時間静置したところ、目視で沈殿が観察でき、UV-Vis測定からもMWCNTが1-ペンタノール中に分散していないことが確認できた。このことより、KI/I2混合物の1-ペンタノール溶液中では、一時的にMWCNTを分散できるものの、長時間安定に分散性を維持することは困難であることが示唆された。
【実施例】
【0059】
【表5】
JP0005881019B2_000011t.gif
【実施例】
【0060】
また、PSQ-Iを用いてMWCNTの分散性の検討を行った(Run 43)。PSQ-Iは1-ペンタノール等のアルコールに不溶であるため溶媒には水を用いた。その結果、超音波処理直後及び24時間静置後のいずれにおいても、750nmの波長での吸光度は高い値であり、MWCNTが分散しているように見えた。しかし、この分散液をろ過したところ、残渣の質量が大きかったことから、孔径が7μmのろ紙を通過するような分散性は得られないことが確認された。すなわち、MWCNTの分散には三ヨウ化物イオン及びPSQ構造の両方が重要な要素であることが、以上の実験より明らかにされた。
【実施例】
【0061】
(第2の実験)
第2の実験では、上記の化学式3で表されるアンモニウム基含有ラダー型PSQの代わりに上記の化学式4で表されるアンモニウム基含有ラダー型PSQを用い、第1の実験と同様にして、ヨウ化物イオンを対アニオンとするラダー型PSQ(以下、「PSQ-(I)2」ともいう)を得た。PSQ-(I)2の構造は下記の化学式6で表される。
【実施例】
【0062】
【化6】
JP0005881019B2_000012t.gif
【実施例】
【0063】
次に、5.0mLの1-ペンタノールに0.0496g(0.1956mmol)のI2を加えて溶解させ、溶液を作製した。その後、この溶液に0.0200gのPSQ-(I)2を加えて室温で撹拌し溶解することで、三ヨウ化物イオンを対アニオンとするラダー型PSQ(PSQ-(I32)を調製した。そして、PSQ-(I32の1-ペンタノール溶液にMWCNTを加えて2時間超音波処理を行い、MWCNTの分散液を調製した。
【実施例】
【0064】
表6に、MWCNTの1-ペンタノール分散液(50倍に希釈)の750nmの波長における吸光度、及び孔径が7μmのろ紙を用いてろ過を行ったときの残渣の質量を示す。超音波処理直後のMWCNTの1-ペンタノール分散液の吸光度は0.28であり、1-ペンタノール中にMWCNTが分散していることが確認された(Run 51)。更に、この分散液は、24時間静置しても吸光度の減少があまり見られず、安定してMWCNTが分散していることが分かった。更に、ろ過による残渣の質量が小さかったことからも、MWCNTが高度に分散していることが示唆された。
【実施例】
【0065】
【表6】
JP0005881019B2_000013t.gif
【実施例】
【0066】
更に、PSQ-(I32を分散剤に用いたMWCNTの1-ペンタノール分散液の動的光散乱測定を行ったところ、図5に示すように、数平均粒径が204.2±76.11nmであった。このことから、大きな凝集体が存在しないことが確認できた。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4