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明細書 :移植用靱帯の固定具および移植用靱帯の固定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-213093 (P2014-213093A)
公開日 平成26年11月17日(2014.11.17)
発明の名称または考案の名称 移植用靱帯の固定具および移植用靱帯の固定方法
国際特許分類 A61B  17/56        (2006.01)
A61B  17/04        (2006.01)
A61F   2/08        (2006.01)
A61F   2/38        (2006.01)
FI A61B 17/56
A61B 17/04
A61F 2/08
A61F 2/38
請求項の数または発明の数 7
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2013-094700 (P2013-094700)
出願日 平成25年4月26日(2013.4.26)
発明者または考案者 【氏名】高橋 学
【氏名】高橋 敏明
【氏名】田中 宏文
出願人 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
【識別番号】398067487
【氏名又は名称】田中技研株式会社
個別代理人の代理人 【識別番号】100115255、【弁理士】、【氏名又は名称】辻丸 光一郎
【識別番号】100129137、【弁理士】、【氏名又は名称】中山 ゆみ
【識別番号】100154081、【弁理士】、【氏名又は名称】伊佐治 創
【識別番号】100183058、【弁理士】、【氏名又は名称】李 京佳
審査請求 未請求
テーマコード 4C097
4C160
Fターム 4C097AA07
4C097AA21
4C097BB01
4C097CC05
4C160LL27
4C160LL28
4C160LL29
4C160LL30
4C160LL59
要約 【課題】構造が簡単で、かつ、移植用靱帯を骨貫通孔内に安定に固定できる固定具を提供する。
【解決手段】骨貫通孔内に固定される移植用靱帯を、前記骨貫通孔の開口部で固定するための固定具であって、前記骨貫通孔開口部との接触面に垂直な方向から傾斜している傾斜貫通孔21を、一対以上有し、一つの傾斜貫通孔21と、対となるもう一つの傾斜貫通孔21とは、傾斜方向が互いに逆向きであり、かつ、互いに異なる平面内に存在する状態で交差していることを特徴とする固定具20。
【選択図】図2
特許請求の範囲 【請求項1】
骨貫通孔内に固定される移植用靱帯を、前記骨貫通孔の開口部で固定するための固定具であって、
前記骨貫通孔開口部との接触面に垂直な方向から傾斜している傾斜貫通孔を、一対以上有し、
一つの前記傾斜貫通孔と、対となるもう一つの前記傾斜貫通孔とは、傾斜方向が互いに逆向きであり、かつ、互いに異なる平面内に存在する状態で交差していることを特徴とする固定具。
【請求項2】
前記傾斜貫通孔において、前記骨貫通孔開口部との接触面に垂直な方向からの傾斜角度が、10~80度の範囲である請求項1記載の固定具。
【請求項3】
前記傾斜貫通孔において、傾斜方向の幅が、前記骨貫通孔開口部との接触面に垂直な方向から見て、3mm以下である請求項1または2記載の固定具。
【請求項4】
前記傾斜貫通孔の内径が、0.5~3mmの範囲である請求項1から3のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項5】
一つの前記傾斜貫通孔と、対となるもう一つの前記傾斜貫通孔との間の距離が、前記傾斜貫通孔の内径に対して1.1~3倍の範囲である請求項1から4のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項6】
前記傾斜貫通孔を、複数対有する請求項1から5のいずれか一項に記載の固定具。
【請求項7】
骨貫通孔内に固定される移植用靱帯を、前記骨貫通孔の開口部で固定する方法であって、
前記移植用靱帯の少なくとも一方の末端が、二本以上に分かれており、
請求項1から6のいずれか一項に記載の固定具を使用し、
前記移植用靱帯の前記二本以上に分かれた末端のうち、一本を、一つの前記傾斜貫通孔に通し、もう一本を、対となるもう一つの前記傾斜貫通孔に通し、
前記一本の末端およびもう一本の末端を結ぶとともに、前記固定具を前記骨貫通孔の開口部に引っ掛けて固定することを特徴とする、移植用靱帯の固定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、移植用靱帯の固定具および移植用靱帯の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
靱帯は、複数の骨を互いに結合して関節を形作る組織である。靱帯が事故等により断裂した場合、靱帯の種類によっては自然治癒することもあるが、膝の前十字靱帯等では、自然治癒することはほとんどない。このような場合、断裂した靱帯に代わる新たな靱帯を、断裂した靱帯がもとあった場所またはその付近に移植する手術(靱帯再建術)を行う必要がある(特許文献1~3等)。
【0003】
移植用靱帯の関節(骨組織)への固定は、例えば、前記移植用靱帯に緊張をかけた状態で、前記移植用靱帯を、糸の縫合、ワイヤーの締結等により前記骨組織に固定することで行うことができる。しかし、関節の手術においてこれらの操作を行うことは、視野が狭いために、非常に困難である。そこで、前記移植用靱帯を関節(骨組織)に固定するための固定具が用いられる。
【0004】
図16および17に、移植用靱帯(再建靱帯)を関節(骨組織)に固定するための固定具を用いた、膝の前十字靱帯の再建術の一例を、模式的に示す。図16は、前記固定具の構造を模式的に示す図である。図示のとおり、この固定具160は、貫通孔161を複数有する。図17は、固定具160により、移植用靱帯を膝関節に移植して固定した状態を表す正面図である。また、移植用靱帯は、図示のとおり、移植腱111と、その両端に接続された人工靱帯112とからなる。人工靱帯112は、例えば、縫合糸等により形成することができる。移植腱111は、例えば、患者自身から採取した腱を束ねて太くしたものを用いる。さらに、この膝関節には、図示のとおり、大腿骨121および脛骨122には、それぞれ、貫通孔が穿たれている。この2つの貫通孔は、それらの間に関節内部(大腿骨121と脛骨122との間隙)を介して同心に配置されている。大腿骨121の貫通孔は、人工靱帯112を収容する人工靱帯収容部124と、移植腱111を収容する移植腱収容部125とを有する。人工靱帯収容部124と移植腱収容部125とは、同心に配置されて連結され、大腿骨121の貫通孔を形成する。また、脛骨122の貫通孔は、人工靱帯112を収容する人工靱帯収容部123と、移植腱111を収容する移植腱収容部126とを有する。人工靱帯収容部123と移植腱収容部126とは、同心に配置されて連結され、脛骨122の貫通孔を形成する。移植腱111は、その一端が、大腿骨121の移植腱収容部125に挿入(収容)され、他端が脛骨122の移植腱収容部126に挿入(収容)されて、大腿骨121と脛骨122とを連結している。大腿骨121側の人工靱帯112の端は、それに接続された固定具160によって、人工靱帯収容部124の大腿骨外側開口部に固定されている。同様に、脛骨122側の人工靱帯112の端は、それに接続された固定具160によって、人工靱帯収容部123の脛骨外側開口部に固定されている。なお、図17においては、図示の簡略化のために、皮膚、筋肉、軟骨等は図示を省略している。また、移植腱111および人工靱帯112(移植用靱帯)は、実際は、大腿骨121および脛骨122に隠れているため見えないが、図示の明確化のために実線で示している。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-271429号公報
【特許文献2】特開2002-272756号公報
【特許文献3】特開2012-024276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の固定具は、その貫通孔の構造から、糸の縫合、ワイヤーの締結等により前記骨組織に固定する(例えば、糸を結ぶ)際に、糸のすべりまたは弛み等が生じる恐れがある。このため、従来の固定具では、前記移植用靱帯に適正な緊張を掛けることがきわめて困難であり、移植用靱帯を安定して固定することができない恐れがある。以下に、具体的に説明する。
【0007】
図18(a)~(c)に、従来の固定具を用いた移植用靱帯固定方法の一例を示す。なお、図18において、図17と同一の構成要素は、同一の符号で示している。すなわち、まず、移植腱111の両端に接続された人工靱帯112にそれぞれ固定具160が接続された移植用靱帯を準備する。つぎに、図18(a)に示すように、この移植用靱帯の一端を、膝関節内部から、大腿骨の孔125および124内部に通す。さらに、図18(b)に示すように、前記移植用靱帯の他端を、脛骨の孔126および123内部に通し、両端の固定具160を、それぞれ、大腿骨121および脛骨122の孔から外に引っ張り出す。そして、図18(c)に示すように、固定具160を、大腿骨121および脛骨122の孔の開口部にひっかけて固定する。この方法では、図18(b)で固定具160を引っ張り出す分、人工靱帯112の長さが余りやすい。このため、図18(c)の固定状態で、人工靱帯112が緩んでしまい、移植用靱帯を骨貫通孔に安定に固定できない恐れがある。具体的には、例えば、図18(c)に示すように、人工靱帯112の緩みにより、移植腱111が下方にずり落ちて移植腱収容部125の上端に隙間ができる場合がある。この状態では、膝関節を動かした場合等に、移植腱111が、移植腱収容部125および126の内部で上下にずれる。これにより、移植腱111と骨貫通孔内面との密接度が低くなり、移植腱111の骨組織に対する癒合に必要な時間が長くなる恐れがある。この人工靱帯112の緩みを防ぐためには、例えば、脛骨122の孔の開口部に固定具160を引っかけたまま、大腿骨121側から他端の人工靱帯112を引っ張って、人工靱帯112を緊張させる必要がある。しかし、その方法では、移植腱111の位置が所定の位置からずれやすくなる。このため、移植腱111と骨貫通孔内との密接度が低くなり、移植腱111骨組織に対する癒合に必要な時間が長くなるという前述の問題を解決できない恐れがある。
【0008】
このため、特許文献3では、構造を改良した固定具を用い、移植用靱帯(再建靱帯)を強固に固定することを提案している。しかし、特許文献3の固定具は、構造が複雑で製造工程数が多い。
【0009】
そこで、本発明は、構造が簡単で、かつ、移植用靱帯を骨貫通孔内に安定に固定できる固定具および移植用靱帯の固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の固定具は、骨貫通孔内に固定される移植用靱帯を、前記骨貫通孔の開口部で固定するための固定具であって、前記骨貫通孔開口部との接触面に垂直な方向から傾斜している傾斜貫通孔を、一対以上有し、一つの前記傾斜貫通孔と、対となるもう一つの前記傾斜貫通孔とは、傾斜方向が互いに逆向きであり、かつ、互いに異なる平面内に存在する状態で交差していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の移植用靱帯の固定方法は、骨貫通孔内に固定される移植用靱帯を、前記骨貫通孔の開口部で固定する方法であって、前記移植用靱帯の少なくとも一方の末端が、二本以上に分かれており、前記本発明の固定具を使用し、前記移植用靱帯の前記二本以上に分かれた末端のうち、一本を、一つの前記傾斜貫通孔に通し、もう一本を、対となるもう一つの前記傾斜貫通孔に通し、前記一本の末端およびもう一本の末端を結ぶとともに、前記固定具を前記骨貫通孔の開口部に引っ掛けて固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の固定具は、構造が簡単であることにより、簡便に製造可能であり、製造コストが低い。また、本発明の固定具および本発明の移植用靱帯の固定方法によれば、移植用靱帯を骨貫通孔内に安定に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の固定具の例を、従来の固定具と共に示す写真である。
【図1B】図1Aの固定具の構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の固定具の一例を示す斜視図および断面図である。
【図3】図2の固定具の上面図、底面図、正面図、背面図、右側面図および左側面図である。
【図4】図1A(b)および図1B(b)に示した本発明の固定具の構造を模式的に示す斜視図および断面図である。
【図5】図4の固定具の上面図、底面図、正面図、背面図、右側面図および左側面図である。
【図6】図1A(c)および図1B(c)に示した本発明の固定具の構造を模式的に示す斜視図および断面図である。
【図7】図6の固定具の上面図、底面図、正面図、背面図、右側面図および左側面図である。
【図8】図1A(d)および図1B(d)に示した本発明の固定具の構造を模式的に示す斜視図および断面図である。
【図9】図8の固定具の上面図、底面図、正面図、背面図、右側面図および左側面図である。
【図10】移植用靱帯の構造の一例を示す模式図である。
【図11A】本発明の固定具の使用方法(本発明の移植用靱帯の固定方法)の一例を模式的に示す工程図である。
【図11B】図11Aに続く工程の一例を模式的に示す工程図である。
【図12】本発明の固定具における傾斜貫通孔の傾斜角度の一例を模式的に示す断面図である。
【図13】本発明の固定具の傾斜貫通孔における、傾斜方向の幅の例を模式的に示す断面図である。
【図14】本発明の固定具における、一つの傾斜貫通孔と、対となるもう一つの傾斜貫通孔との間の距離の例を模式的に示す上面図である。
【図15】実施例(本発明の固定具)および比較例(従来の固定具)において、変位距離と、縫合糸が破断または解けるまでの荷重との関係を示すグラフである。
【図16】従来の固定具の一例を示す模式図である。
【図17】図16の固定具の使用方法を例示する模式図である。
【図18】図16の固定具の使用方法を模式的に例示する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について例を挙げて説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。

【0015】
図1Aの写真に、本発明の固定具の例を、従来の固定具と共に示す。図1A(a)は、図16に示した従来の固定具であり、図1A(b)~(d)は、それぞれ、本発明の固定具の一例である。また、図1Bの斜視図に、図1Aの固定具の構造を模式的に示す。図1B(a)~(d)は、それぞれ、図1A(a)~(d)の固定具の模式図である。図1A(b)~(d)および図1B(b)~(d)に示す本発明の固定具の構造の説明は、後述する。

【0016】
図2および3に、本発明の固定具の構造の、図1Aおよび図1Bとは別の一例を、模式的に示す。図2(a)は斜視図であり、図2(b)は、図2(a)のA-A’方向に見た断面図である。また、図3(a)は平面図(上面図)であり、図3(b)は底面図であり、図3(c)は正面図であり、図3(d)は背面図であり、図3(e)は右側面図であり、図3(f)は左側面図である。図示のとおり、この固定具20は、一対の傾斜貫通孔以外には貫通孔を有さない単純な構造である。より具体的には、図2および3の固定具20は、図示のとおり、骨貫通孔開口部との接触面(図示の固定具20では、その上面または底面)に垂直な方向から傾斜している傾斜貫通孔21を、一対有する。図示のとおり、一つの傾斜貫通孔21と、対となるもう一つの傾斜貫通孔21とは、傾斜方向が互いに逆向きであり、かつ、互いに異なる平面内に存在する状態で交差している。

【0017】
図4および5に、本発明の固定具の構造の、図2および図3とは別の一例を、模式的に示す。この固定具の構造は、図1A(b)および図1B(b)に示す固定具と同一である。図4(a)は斜視図であり、図4(b)は、図4(a)のB-B’方向に見た断面図である。また、図5(a)は平面図(上面図)であり、図5(b)は底面図であり、図5(c)は正面図であり、図5(d)は背面図であり、図5(e)は右側面図であり、図5(f)は左側面図である。図示のとおり、この固定具40は、図2および3の固定具20よりも左右に長く、左右の端部に、それぞれ、骨貫通孔開口部との接触面(図示の固定具40では、その上面または底面)に垂直な貫通孔42を有する。これら以外は、図示の固定具40は、図2および3に示した固定具20と同様である。すなわち、一対の傾斜貫通孔41は、図2および3の傾斜貫通孔21と同様、骨貫通孔開口部との接触面に垂直な方向から傾斜している。一つの傾斜貫通孔41と、対となるもう一つの傾斜貫通孔41とは、傾斜方向が互いに逆向きであり、かつ、互いに異なる平面内に存在する状態で交差している。

【0018】
図6および7に、本発明の固定具の構造の、さらに別の一例を、模式的に示す。この固定具の構造は、図1A(c)および図1B(c)に示す固定具と同一である。図6(a)は斜視図であり、図6(b)は、図6(a)のC-C’方向に見た断面図である。また、図7(a)は平面図(上面図)であり、図7(b)は底面図であり、図7(c)は正面図であり、図7(d)は背面図であり、図7(e)は右側面図であり、図7(f)は左側面図である。図示のとおり、この固定具60は、傾斜貫通孔61を二対有する。これ以外は、図示の固定具60は、図2および3に示した固定具20と同様である。すなわち、傾斜貫通孔61は、図2および3の傾斜貫通孔21と同様、骨貫通孔開口部との接触面に垂直な方向から傾斜している。一つの傾斜貫通孔61と、対となるもう一つの傾斜貫通孔61とは、傾斜方向が互いに逆向きであり、かつ、互いに異なる平面内に存在する状態で交差している。

【0019】
図8および9に、本発明の固定具の構造の、さらに別の一例を、模式的に示す。この固定具の構造は、図1A(d)および図1B(d)に示す固定具と同一である。図8(a)は斜視図であり、図8(b)は、図8(a)のD-D’方向に見た断面図である。また、図9(a)は平面図(上面図)であり、図9(b)は底面図であり、図9(c)は正面図であり、図9(d)は背面図であり、図9(e)は右側面図であり、図9(f)は左側面図である。図示のとおり、この固定具80は、図4および5の固定具40が有する傾斜貫通孔41に代えて、固定具80の長手方向に傾斜した傾斜貫通孔81を一対有する。これ以外は、図示の固定具80は、図4および5に示した固定具40と同様である。より具体的には、図8および9の固定具80は、図示のとおり、骨貫通孔開口部との接触面(図示の固定具80では、その上面または底面)に垂直な方向から傾斜している傾斜貫通孔81を、一対有する。一対の傾斜貫通孔81は、それぞれ、固定具80の長手方向に傾斜している。一つの傾斜貫通孔81と、対となるもう一つの傾斜貫通孔81とは、傾斜方向が互いに逆向きであり、かつ、互いに異なる平面内に存在する状態で交差している。また、骨貫通孔開口部との接触面(図示の固定具80では、その上面または底面)に垂直な貫通孔82は、図4および5の貫通孔42と同様である。

【0020】
本発明の固定具において、前記傾斜貫通孔の数は、特に限定されない。例えば、前記傾斜貫通孔は、図2~5および8~9のように一対でもよいが、図6~7のように二対でもよいし、または三対以上でもよい。傾斜貫通孔を複数対有していれば、移植用靱帯をより安定に固定可能であり好ましい。

【0021】
また、本発明の固定具は、例えば図4~9のように、前記傾斜貫通孔以外の孔を有していてもよいし、図2~3のように、前記傾斜貫通孔以外の孔を有していなくてもよい。例えば、図4~9のように、骨貫通孔開口部との接触面に垂直な貫通孔42または82を有していれば、貫通孔42または82に糸を通して保管することにより、保管時の紛失防止に役立つ。

【0022】
本発明の固定具の形状は、図1A~図9では、ほぼ方形または矩形であるが、これに限定されず、例えば、円形、楕円形等、どのような形状でも良い。また、本発明の固定具の形状は、生体への損傷を極力小さくするために、図1A~図9に示すとおり、縁および角が尖っておらず、丸みを帯びていることが好ましい。

【0023】
また、図2~9では、図示したとおり、傾斜貫通孔の縁(21a、41a、61aまたは81a)が、尖っておらず、丸みを帯びている。傾斜貫通孔の縁が、このように尖っておらず、丸みを帯びていれば、尖った部分による縫合糸等の破損を軽減または防止できるため好ましい。

【0024】
また、本発明の固定具において、前記傾斜貫通孔の内壁の形状は、特に限定されず、例えば、滑り止めの凹凸等を有していてもよい。しかし、本発明の固定具は、前記傾斜貫通孔の内壁が滑り止めの凹凸等を有していなくても、縫合糸等に対し、十分大きな摩擦力が得られるため、前記縫合糸等に適切な緊張をかけ、安定に固定することができる。本発明の固定具は、このように、構造が簡単でも移植用靱帯を安定に固定できる。そして、本発明の固定具は、前述のとおり、構造が簡単であることにより、簡便に製造可能であり、製造コストが低いという利点を有する。

【0025】
また、本発明の固定具の材質も、特に限定されないが、例えば、生体材料として用いられる金属、合成樹脂等が挙げられる。前記金属としては、例えば、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、チタンおよびチタン合金、セラミックス等が挙げられる。前記合成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、高分子ポリエチレン等が挙げられる。本発明の固定具の機械的強度、弾性、人体に対する安全性等の観点から、前記材質は、チタン合金等が好ましい。

【0026】
つぎに、本発明の固定具の使用方法(本発明の移植用靱帯の固定方法)の例について、図10、図11Aおよび図11Bを用いて説明する。なお、以下において、図11Aおよび図11Bを、まとめて「図11」という。

【0027】
図10は、本発明の固定具により骨貫通孔内に固定される移植用靱帯の構造を模式的に表す平面図である。図示のとおり、この移植用靱帯110は、移植腱111と、その両端に接続された人工靱帯112とから形成されている。図示のとおり、両人工靱帯112は、それぞれ、符号112aおよび112bで表す二本の縫合糸から形成される。移植腱111は、例えば、患者自身から採取した腱を束ねて太くしたものを用いる。なお、本発明の固定具により骨貫通孔内に固定される移植用靱帯の構造は、これに限定されず、例えば、一般的に移植用靱帯として用いられる任意の構造であっても良い。例えば、人工靱帯112において、縫合糸の数は、図10のように二本には限定されず、その他の任意の本数(例えば四本等)でも良い。また、人工靱帯112は、縫合糸以外の材質により形成されていても良く、または、それらの末端に、さらに縫合糸等が接続されて形成されていても良い。

【0028】
図11に、本発明の固定具を用いた移植用靱帯の固定方法について模式的に例示する。なお、図11中において、図10、17および18と同様の構成要素は、同一の符号で表している。

【0029】
まず、図11(a)左側の図に示すとおり、移植腱111と、その両端に接続された人工靱帯112とからなる移植用靱帯(図10の移植用靱帯110と同一)を、骨貫通孔内に通す。その状態で、移植腱111を、移植腱収容部125および126内の適正な位置に配置する。図11(a)は、膝関節内に移植用靱帯を通した状態を表しており、人工靱帯112の末端に固定具160が接続されていないこと以外は、図18(b)と同様である。なお、移植用靱帯を骨貫通孔内に通す方法は限定されず、例えば、図18(a)~(b)と同様でも良いし、その他の一般的な靱帯再建術に準じても良い。より具体的には、例えば、固定具160を用いない以外は図18(a)~(b)と同様であっても良い。また、例えば、図18(a)~(b)と全く同じ方法で骨貫通孔内に人工靱帯を通し、図18(b)の状態とした後に、両端の固定具160を取り外しても良い。

【0030】
一方、図11(a)右側の図に示すように、本発明の固定具を準備する。図示の固定具20は、図2および3に示した固定具20と同一である。

【0031】
つぎに、図11(b)~(e)に示すように、固定具20を人工靱帯112に連結して前記骨貫通孔の開口部に固定する。すなわち、まず、図11(b)に示すように、人工靱帯112を形成する二本の縫合糸112aおよび112bのうち、112aを、一つの傾斜貫通孔21に通す。一方、もう一本の縫合糸112bを、対となるもう一つの傾斜貫通孔21に通す。その状態で、固定具20を、大腿骨121の孔の開口部(大腿骨121の外表面)まで移動させる。図11(c)の断面図に、縫合糸112aを傾斜貫通孔21に通した状態の断面を示す。図示のとおり、縫合糸112aは、傾斜貫通孔21の左上および右下の両側から、それぞれ傾斜貫通孔の縁(縁)21aに押しつけられ、縁21aとの間の摩擦力により、緊張がかかっている。なお、縫合糸112bも、傾斜貫通孔21に通したことにより、同様の状態となっている。さらに、図11(d)に示すとおり、縫合糸112aおよび112bを固定具20中心部の上で交差させ、その状態で、縫合糸112aおよび112bのそれぞれを、固定具20の中心側に向かって引く。以下、図11(d)における縫合糸112aおよび112bの状態を「仮結び」ということがある。図11(e)の断面図に、この仮結び状態での、縫合糸112aおよびそれを通した傾斜貫通孔21の断面を示す。図示のとおり、この状態では、仮結びにより、図11(c)よりも、縫合糸112aにかけられた緊張が高まっている。縫合糸112bについても同様である。これにより、縫合糸112aおよび112bが、適正な緊張を保った状態で固定され、固定具20に対する位置がずれたり脱落したりすることを防止でき、かつ、人工靱帯112の張力設定のばらつきが押さえられる。さらに、図11(f)に示すように、縫合糸112aおよび112bを、もう一度、またはさらに複数回、固定具20中心部の上で交差させ、それぞれ固定具20の中心側に向かって引く。これにより、縫合糸112aおよび112bを結んで(本結び)、完全に固定する。なお、本発明の固定具は、仮結びの状態でも、人工靱帯(縫合糸等)に強い緊張をかけ、移植用靱帯を安定に固定できる。このため、本発明の移植用靱帯の固定方法においては、本結びをせず、仮結びのみにより移植用靱帯を固定してもよい。しかし、本結びをすれば、移植用靱帯をいっそう強固かつ安定に固定できるため好ましい。

【0032】
また、人工靱帯112が複数対(すなわち四本以上)の縫合糸から形成されるとともに、固定具が(例えば図6~7に示した固定具60のように)複数対の傾斜貫通孔を有し、それぞれの縫合糸を、複数対の傾斜貫通孔のそれぞれに通しても良い。それぞれを、固定具60における複数対の傾斜貫通孔61のそれぞれに通しても良い。このようにすれば、人工靱帯112および固定具を、さらに強固に固定することも可能である。

【0033】
図11(b)~(f)は、大腿骨121側の固定具20について示したが、脛骨122側の固定具20も、同様にして脛骨の孔の開口部に固定することができる。脛骨122側の固定具20および大腿骨121側の固定具20は、どちらを先に固定しても良い。一方の固定具20を固定した後、他方の固定具20を固定する際には、図11(b)の状態で縫合糸112aおよび112bを引っ張って適正な緊張を掛けることが好ましい。このとき、先に固定した固定具20が、骨貫通孔開口部に引っかかってその位置で止まるため、移植腱111を適正な位置に保ったまま、移植用靱帯(移植腱111および人工靱帯112)に適正な緊張を掛けることができる。縫合糸112aおよび112bを引っ張るときの引っ張り力は、特に限定されないが、例えば、4kg重前後(40N前後)であっても良いし、適宜、それよりも弱い力または強い力でも良い。

【0034】
以上のようにして、大腿骨121側および脛骨122側の両方の骨貫通孔開口部(大腿骨121および脛骨122の外表面)に、それぞれ固定具20を固定できる。すなわち、図11(g)に示すとおり、移植腱111と、その両端に接続された人工靱帯112とからなる移植用靱帯を、骨貫通孔の開口部で固定具20により固定することができる。これにより、前記移植用靱帯を、前記骨貫通孔内に、安定に固定できる。

【0035】
図16~18に示したように従来の固定具160を用いた場合、本発明の固定具のように、傾斜貫通孔により人工靱帯112に緊張をかけて(例えば、図11(c)および(e)のように)固定することができない。このため、移植腱111を適切な位置に配置し、かつ、人工靱帯112に適正な緊張を掛けるためには、例えば、固定具160を押さえる術者と、人工靱帯112を結んで固定する術者との複数の術者の手が必要となる。術者一人では、固定具160を押さえることと、人工靱帯112を結んで固定することを同時に行うことが困難である。このため、図18(b)~(c)で説明したように、人工靱帯112の長さが余り、緩んでしまう恐れがある。しかし、本発明の固定具によれば、図11で説明したように、人工靱帯112に適正な緊張を掛けた状態で、人工靱帯112を傾斜貫通孔の小径側に挟みこんで固定することができる。このため、術者一人の手でも、移植腱111を適切な位置に配置し、かつ、人工靱帯112に適正な緊張を掛けた状態で移植用靱帯を固定することが容易である。特に、本発明の固定具では、前記仮結びの状態(例えば図11(d))で手を離しても、人工靱帯の位置がずれにくい(人工靱帯が緩みにくい)ため、その後の本結びも行いやすい。

【0036】
本発明の固定具を用いれば、例えば、図11に示したように、従来の固定具を用いた場合(例えば図18)と比較して、人工靱帯112の長さが余りにくいため、人工靱帯112が緩みにくい。これにより、移植腱111を、所定の位置に、骨貫通孔との密接度が高い状態で安定に固定できる。したがって、移植腱111の骨組織に対する癒合も早く進みやすい。

【0037】
また、図11では、大腿骨側および脛骨側の両側に本発明の固定具を用いる場合について説明した。しかし、本発明は、これに限定されない。例えば、大腿骨側および脛骨側のいずれか片方(例えば大腿骨側)にのみ本発明の固定具を用い、他方には、本発明の固定具以外の他の固定具(例えば、図16~18に示した従来の固定具等)を用いても良い。この場合、前記他の固定具は、例えば、あらかじめ、一方の人工靱帯の端に(例えば図18に示すように)固定しておくことが好ましい。その状態で、前記他の固定具を骨貫通孔の開口部(例えば脛骨側開口部)に引っ掛け、他方の人工靱帯を引っ張って適正な緊張を掛けることができる。そのようにして移植用靱帯(人工靱帯)に適正な緊張を掛けた状態で、図11(b)~(c)で説明したように、本発明の固定具を、骨貫通孔開口部(骨の外表面)まで移動させる。このようにすることで、図18(b)~(c)に示したように人工靱帯の長さが余って緩むことを防止できるので、移植用靱帯を骨貫通孔内に安定に固定するという本発明の効果を奏することができる。本発明の固定具を、骨貫通孔開口部(骨の外表面)まで移動させた後は、図11(c)~(d)で説明したようにして、人工靱帯(縫合糸)を本発明の固定具の傾斜貫通孔により挟みこみ、強固に固定する。

【0038】
なお、本発明の固定具の前記傾斜貫通孔において、前記骨貫通孔開口部との接触面に垂直な方向からの傾斜角度(図12の断面図に示す角度θ)は、特に限定されないが、例えば10~80度の範囲、好ましくは50~70度の範囲である。前記傾斜角度が大きいほど、前記傾斜貫通孔内に通した縫合糸等に、摩擦力による緊張をかけやすい。ただし、前記傾斜角度が大き過ぎると、穿孔加工が困難になったり、縫合糸等を通しにくくなったり、縫合糸等にかかる緊張が大きくなりすぎたりする場合がある。

【0039】
また、前記傾斜貫通孔において、傾斜方向の幅(図13(a)の断面図における、上下の縁21a間の距離d)が、骨貫通孔開口部との接触面(同図では、固定具20の上面または底面)に垂直な方向から見て、前記傾斜貫通孔に通す縫合糸等の直径未満であることが好ましい。前記傾斜方向の幅が前記縫合糸等の直径未満であれば、傾斜貫通孔の縁との摩擦力により前記縫合糸等に緊張をかけやすいためである。図13(b)の断面図は、前記傾斜方向の幅(上下の縁21a間の距離d)が、縫合糸112aの直径未満である例である。図示のとおり、縫合糸112aは、傾斜貫通孔21の左上および右下の両側から、それぞれ縁21aに押しつけられ、縁21aとの間の摩擦力により、緊張がかかっている。また、図13(c)の断面図は、前記傾斜方向の幅(上下の縁21a間の距離d)が、縫合糸112aの太さを超える例である。この例では、図示のとおり、縫合糸112aが傾斜貫通孔21の縁21aに押しつけられないため、縁21aとの間の摩擦力が生じず、緊張をかけることができない。また、前記傾斜方向の幅は、ゼロまたはマイナスであることが好ましい。このような状態であれば、必ず、前記傾斜方向の幅が前記縫合糸等の直径未満となるので、傾斜貫通孔の縁との摩擦力により前記縫合糸等に緊張をかけやすいためである。図13(d)の断面図は、前記傾斜方向の幅がゼロ(d=0)の例である。図13(e)の断面図は、前記傾斜方向の幅がマイナス(d<0)の例である。

【0040】
本発明において、移植用靱帯の、前記傾斜貫通孔に通す部分(図11では、縫合糸112a、112b、112cおよび112d)の直径は、特に限定されず、例えば、一般的に用いられる縫合糸等と同様で良い。前記傾斜貫通孔において、傾斜方向の幅(図13(a)の断面図における、上下の縁21a間の距離d)は、前述のとおり、骨貫通孔開口部との接触面(同図では、固定具20の上面または底面)に垂直な方向から見て、前記縫合糸等の直径未満であることが好ましい。すなわち、前記傾斜方向の幅の絶対値の好適値は、用いる縫合糸等の直径により異なる。

【0041】
本発明の固定具において、前記縫合糸等の直径に対し、前記傾斜貫通孔の内径が小さすぎなければ、前記縫合糸等を通しやすい。また、前記縫合糸等の直径に対し、前記傾斜貫通孔の内径が大きすぎなければ、前記傾斜貫通孔の縁との摩擦により、前記縫合糸等に緊張をかけやすい。前記傾斜貫通孔の内径は、前記縫合糸等の直径に対し、例えば1.1~3倍の範囲である。

【0042】
また、本発明の固定具において、一つの前記傾斜貫通孔と、対となるもう一つの前記傾斜貫通孔との間の距離(図14の平面図におけるw)は、特に限定されないが、好ましくは、前記傾斜貫通孔に通す縫合糸等の直径の1倍以上である。

【0043】
本発明の固定具の長径は、特に限定されないが、例えば、骨貫通孔開口部(具体的には、例えば、前記人工靱帯収容部123または124開口部)の孔寸法(直径)に対応させて、例えば3.0~20.0mm、好ましくは3.0~15.0mm、より好ましくは8.0~12.0mmである。本発明の固定具の短径は、特に限定されないが、例えば1.5~12.0mm、好ましくは2.0~5.5mm、より好ましくは2.0~4.0mmである。

【0044】
本発明の固定具の厚みも特に限定されないが、前記傾斜貫通孔の内径に対し、例えば1.1~5倍の範囲である。前記傾斜貫通孔の内径に対する前記固定具の厚みの倍率の好適範囲は、前記骨貫通孔開口部との接触面に垂直な方向からの傾斜角度(図12の断面図に示す角度θ)の値によっても異なる。

【0045】
本発明の固定具の大きさは、前記のとおり、特に限定されないが、例えば、特許文献3の固定具等と比較して小さくしやすい。これにより、例えば、患部の切開寸法を小さくすることができ、低侵襲で患者への負担が少ない施術が可能である。また、本発明の固定具の形状も、前記のとおり、特に限定されないが、例えば、特許文献3の固定具等と比較して従来の固定具に近い形状とすることができる。これにより、従来の固定具を用いた場合と同様の施術法をとりやすく、術者にとって施術が行いやすいとともに、患者にもなじみやすい。

【0046】
なお、図1Aに示した写真において、図1(b)の固定具は、幅(短径)4.0mm、長さ(長径)10.0mm、厚み2.5mmである。図1(c)の固定具は、幅(短径)5.0mm、長さ(長径)7.0mm、厚さ1.8mmである。また、図1(d)の固定具は、幅(短径)4.0mm、長さ(長径)10.0mm、厚み2.5mmである。図1(a)に示した従来の固定具は、幅(短径)3.9mm、長さ(長径)12.2mm、厚み1.5mmである。

【0047】
さらに、本発明の固定具を用いた靱帯移植(靱帯再建術)において、骨貫通孔の構造等は、特に限定されない。例えば、人工靱帯収容部の太さは、移植腱収容部と同じ太さでも良いが、図11に示すように、人工靱帯収容部123および124の方が移植腱収容部125および126よりも細く形成されていることが好ましい。このようにすれば、より、骨の損傷が少ない状態(低侵襲)で靱帯移植を行うことができるため、移植用靱帯をさらに安定に固定可能であり、治癒もさらに早くすることができる。人工靱帯収容部123および124の太さは、移植腱111の太さよりも小さいと、移植腱111が人工靱帯収容部123および124内部にずれ込みにくいため、より好ましい。また、図11では、靱帯移植用の孔123、124、125および126をそれぞれ1本のみ穿ったが、同様の孔をもう1本穿ち、それぞれの孔に1本ずつ(すなわち、合計2本)の移植用靱帯を移植しても良い。大腿骨および脛骨に穿つ孔の位置は、例えば、一般的な靱帯再建術と同様にして適宜決定することができる。前十字靱帯の再建術の場合、移植用靱帯が1本よりも2本の方が、術後の膝関節の安定性(例えば、回旋安定性)等の観点から、より好ましい。

【0048】
孔123、124、125および126の直径および長さ(深さ)は、特に限定されないが、例えば、以下のとおりである。すなわち、前十字靱帯再建術において、移植用靱帯が1本(すなわち、穿つ孔が1つ)の場合、脛骨外側の孔(人工靱帯収容部)123の直径は、例えば2.0~7.0mm、好ましくは2.2~5.0mm、より好ましくは2.4~4.5mmであり、具体的には、例えば、2.4mm、3mm、4.5mm等である。大腿骨外側の孔(人工靱帯収容部)124の直径は、例えば2.0~7.0mm、好ましくは2.2~5.0mm、より好ましくは2.4~4.5mmであり、具体的には、例えば、2.4mm、3mm、4.5mm等である。大腿骨内側の孔(移植腱収容部)125の直径は、例えば4.0~12.0mm、好ましくは5.0~10.0mm、より好ましくは6.0~10.0mmであり、具体的には、例えば、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm等である。脛骨内側の孔(移植腱収容部)126の直径は、例えば4.0~12.0mm、好ましくは5.0~10.0mm、より好ましくは6.0~10.0mmであり、具体的には、例えば、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm等である。大腿骨内側の孔(移植腱収容部)125の長さ(深さ)は、例えば10~40mm、好ましくは15~30mm、より好ましくは20~25mmであり、具体的には、例えば、20mm、25mm等である。また、大腿骨に穿った孔の全長(すなわち、孔124および125の長さの合計)は、例えば25~80mm、好ましくは30~60mm、より好ましくは30~50mmであり、具体的には、例えば、30mm、40mm等である。脛骨内側の孔126の長さ(深さ)は、例えば10~40mm、好ましくは15~30mm、より好ましくは20~25mmであり、具体的には、例えば、20mm、25mm等である。また、脛骨に穿った孔の全長(すなわち、孔123および126の長さの合計)は、例えば25~80mm、好ましくは30~60mm、より好ましくは30~50mmであり、具体的には、例えば、30mm、40mm等である。

【0049】
また、前十字靱帯再建術において、移植用靱帯が2本(すなわち、穿つ孔が2つ)の場合、脛骨外側の孔123の直径は、例えば2.0~6.0mm、好ましくは2.4~5.0mm、より好ましくは2.4~4.5mmであり、具体的には、例えば、2.4mm、3mm、4.5mm等である。大腿骨外側の孔124の直径は、例えば2.0~6.0mm、好ましくは2.4~5.0mm、より好ましくは2.4~4.5mmであり、具体的には、例えば、2.4mm、3mm、4.5mm等である。大腿骨内側の孔125の直径は、例えば3~8mm、好ましくは4~7mm、より好ましくは5~6mmであり、具体的には、例えば、5mm、6mm、7mm、8mm等である。脛骨内側の孔126の直径は、例えば3~8mm、好ましくは4~7mm、より好ましくは5~6mmであり、具体的には、例えば、5mm、6mm、7mm、8mm等である。大腿骨内側の孔125の長さ(深さ)は、例えば10~40mm、好ましくは15~30mm、より好ましくは20~25mmであり、具体的には、例えば、20mm、25mm等である。また、大腿骨に穿った孔の全長(すなわち、孔124および125の長さの合計)は、例えば25~80mm、好ましくは30~60mm、より好ましくは30~50mmであり、具体的には、例えば、30mm、40mm等である。脛骨内側の孔126の長さ(深さ)は、例えば10~40mm、好ましくは15~30mm、より好ましくは20~25mmであり、具体的には、例えば、20mm、25mm等である。また、脛骨に穿った孔の全長(すなわち、孔123および126の長さの合計)は、例えば25~80mm、好ましくは30~60mm、より好ましくは30~50mmであり、具体的には、例えば、30mm、40mm等である。移植用靱帯が2本の場合、移植用靱帯が1本の場合と比較して移植腱が若干細くても良いため、それに対応して、孔125および126の直径が若干小さくても良い。

【0050】
本発明の固定具は、その構造により、手技による人工靱帯の固定がきわめて容易である。本発明によれば、例えば図11のように、移植用靱帯の両端を、大腿骨および脛骨の骨貫通孔開口部に、本発明の固定具で固定することにより、骨孔の直径を小さくし、骨孔閉塞の可能性を向上させることもできる。また、関節鏡視下手術等の視野が狭い条件下でも、移植用靱帯を、人工靱帯(縫合糸等)の緩みがない状態で固定することができる。すなわち、本発明の固定具によれば、例えば、整形外科領域の間接鏡視下手術において、前十字靱帯再建術での移植用靭帯を骨貫通孔内に強固に固定することができ、骨組織の侵襲も少なくすることができる。ただし、これらの説明は例示であり、本発明は、これらに限定されない。例えば、本発明の固定具は、前十字靱帯再建術に限定されず、任意の関節において、移植用靱帯の固定に用いることができる。
【実施例】
【0051】
図1A(b)に示した本発明の固定具(田中技研株式会社製)を実施例の固定具として用い、図1A(a)に示した従来の固定具(スミス・アンド・ネフュー社製)を比較例の固定具として用いて縫合糸引張り試験を行った。
【実施例】
【0052】
試験用縫合糸として、Arthrex社製FiberWire 2/7 metric(商品名)を用いた。この縫合糸2本を、図11で説明した方法により、仮結びまたは本結びで実施例または比較例の固定具に固定した。この縫合糸を、Instron社製油圧サーボ式引張圧縮試験機(最大容量100kN)およびロードセル5kNを用いて変位速度1mm/minで下側(固定具から見て、結び目と反対側)に引張り、縫合糸が破断するか、または結び目が解けるまで引っ張った。各引っ張り試験は、同一の条件で、それぞれ3回ずつ行った。
【実施例】
【0053】
図15のグラフに、前記引っ張り試験の結果を示す。各グラフにおいて、横軸が変位量(mm)、縦軸が荷重(N)である。図15左上のグラフは、比較例の固定具を仮結びした場合の前記引っ張り試験の結果を示すグラフである。図15右上のグラフは、実施例の固定具を仮結びした場合の前記引っ張り試験の結果を示すグラフである。図15左下のグラフは、比較例の固定具を本結びした場合の前記引っ張り試験の結果を示すグラフである。図15右下のグラフは、実施例の固定具を本結びした場合の前記引っ張り試験の結果を示すグラフである。
【実施例】
【0054】
図15左上のグラフに示すとおり、比較例の固定具を仮結びした場合、最大荷重約40~70N程度で結び目が解けてしまった。また、比較例の固定具は、変位量が大きくなると、糸の滑りにより、荷重が急激に低下してしまったことが分かる。これに対し、実施例の固定具を仮結びした場合は、同図右上のグラフに示すとおり、最大荷重約100~140Nまで結び目が解けなかった。すなわち、実施例の固定具は、比較例の固定具に対し、仮結びの場合の耐荷重性(耐滑り性)が2~3倍高かった。さらに、実施例の固定具は、変位量が大きくなっても、荷重の減少幅が小さく、高荷重が保持されていた。この試験結果が示すように、本発明の固定具では、仮結びの状態で手を離しても、人工靱帯の位置がずれにくい(人工靱帯が緩みにくい)ため、その後の本結びも行いやすい。
【実施例】
【0055】
また、本結びの場合、比較例の固定具では、図15左下のグラフに示すとおり、最大荷重が約250~300N程度で、それ以上には荷重が上昇しなかった。これに対し、実施例の固定具を本結びした場合は、同図右下のグラフに示すとおり、最大荷重が約400N以上に上昇した。すなわち、実施例の固定具は、耐荷重性が、比較例の固定具よりも約2~3割、またはそれ以上高かった。また、比較例の固定具では、変位量が10mmを超えたあたりから、糸の滑りにより、荷重が増加しないか、または減少する傾向が見られた。これに対し、実施例の固定具では、変位量が10mmを超えて糸の滑りが生じても、さらに荷重が増大し、高荷重を保っていた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上、説明したとおり、本発明によれば、構造が簡単で、かつ、移植用靱帯を骨貫通孔内に安定に固定できる固定具および移植用靱帯の固定方法を提供することができる。本発明は、膝の前十字靱帯再建術に代表されるあらゆる靱帯移植術に利用することができ、医療分野での利用可能性は多大である。
【符号の説明】
【0057】
20、40、60、80 固定具
21、41、61、81 傾斜貫通孔
42、82 貫通孔
21a、41a、61a、81a 傾斜貫通孔の縁
110 移植用靱帯
111 移植腱
112 人工靱帯
112a、112b 縫合糸
121 大腿骨
122 脛骨
123 脛骨の孔(人工靱帯収容部)
124 大腿骨の孔(人工靱帯収容部)
125 大腿骨の孔(移植腱収容部)
126 脛骨の孔(移植腱収容部)
160 固定具
161 固定具の孔(貫通孔)
図面
【図1B】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11A】
10
【図11B】
11
【図12】
12
【図13】
13
【図14】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図1A】
18
【図15】
19