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明細書 :α-ドーソン型ポリ酸の製造方法およびその方法により製造されたα-ドーソン型ポリ酸、α-ドーソン型ポリ酸化合物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-214072 (P2014-214072A)
公開日 平成26年11月17日(2014.11.17)
発明の名称または考案の名称 α-ドーソン型ポリ酸の製造方法およびその方法により製造されたα-ドーソン型ポリ酸、α-ドーソン型ポリ酸化合物
国際特許分類 C01B  25/45        (2006.01)
FI C01B 25/45 Z
請求項の数または発明の数 10
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2013-095003 (P2013-095003)
出願日 平成25年4月30日(2013.4.30)
発明者または考案者 【氏名】西原 禎文
【氏名】加藤 智佐都
【氏名】井上 克也
【氏名】綱島 亮
出願人 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001427、【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
審査請求 未請求
要約 【課題】簡易な方法、かつ短時間で、異性体を選択的に製造することができるα-ドーソン型ポリ酸の製造方法およびその方法により製造されたα-ドーソン型ポリ酸、α-ドーソン型ポリ酸化合物を提供することを目的とする。
【解決手段】下記式(1)で表されるα-ドーソン型ポリ酸の製造方法であって、
金属酸塩とヘテロ原子を含む無機酸とを、還流条件下において溶媒中で反応させることを特徴とするα-ドーソン型ポリ酸の製造方法。
(化1)
[α-An- (1)
(式中、Aはリン、ケイ素、硫黄、ゲルマニウム、ヒ素、セレン及びアンチモンから選ばれるヘテロ原子を示し、Mはタングステン、バナジウム、ニオブ、モリブテン、及びタンタルから選ばれる金属原子を示し、Oは酸素原子を示す。また、n、x、y、zは1以上の整数を示す。)
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)で表されるα-ドーソン型ポリ酸の製造方法であって、
金属酸塩とヘテロ原子を含む無機酸とを、還流条件下において溶媒中で反応させることを特徴とするα-ドーソン型ポリ酸の製造方法。
(化1)
[α-An- (1)
(式中、Aはリン、ケイ素、硫黄、ゲルマニウム、ヒ素、セレン及びアンチモンから選ばれるヘテロ原子を示し、Mはタングステン、バナジウム、ニオブ、モリブテン、及びタンタルから選ばれる金属原子を示し、Oは酸素原子を示す。また、n、x、y、zは1以上の整数を示す。)
【請求項2】
前記溶媒中における金属酸塩/無機酸のモル比率が1/5であることを特徴とする請求項1に記載のα-ドーソン型ポリ酸の製造方法。
【請求項3】
前記溶媒のpHが2以下であることを特徴とする請求項2に記載のα-ドーソン型ポリ酸の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒中における前記金属酸塩の濃度が0.924mol/l以上1.36mol/l以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のα-ドーソン型ポリ酸の製造方法。
【請求項5】
還流時間が90分以上120分以下であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のα-ドーソン型ポリ酸の製造方法。
【請求項6】
前記溶媒が、極性溶媒または有機溶媒であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のα-ドーソン型ポリ酸の製造方法。
【請求項7】
前記ヘテロ原子がリンであるとともに、前記金属原子がタングステンであり、前記α-ドーソン型ポリ酸が下記式(2)で表されることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のα-ドーソン型ポリ酸の製造方法。
(化2)
[α-P18626- (2)
【請求項8】
前記金属酸塩がタングステン酸リチウムであり、前記無機酸がリン酸であることを特徴とする請求項7に記載のα-ドーソン型ポリ酸の製造方法。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の方法により製造されたα-ドーソン型ポリ酸。
【請求項10】
請求項9に記載のα-ドーソン型ポリ酸を有することを特徴とするα-ドーソン型ポリ酸化合物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸触媒等として使用できるα-ドーソン型ポリ酸の製造方法およびその方法により製造されたα-ドーソン型ポリ酸、α-ドーソン型ポリ酸化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ酸(ポリオキソメタレート)は、金属原子を中心としたオキソ酸が脱水縮合した化合物の総称であり、金属原子の相違によって種々の多面体構造を形成する。
【0003】
このポリ酸は、還元性、耐熱性、構造安定性、有機溶媒への可溶性等の特性を有するため、近年、触媒、電子(電池・電極)材料、抗ウイルス剤、バクテリア剤、発光素子等への適用が検討・実現化されている。
【0004】
また、このポリ酸は、金属原子や配位子の種類、クラスター形状によって、ドーソン型、ケギン型、アンダーソン型等の種類に分類される。
【0005】
ドーソン型ポリ酸には、異性体(α体、β体)が存在するが、α体とβ体が混在したドーソン型ポリ酸の製造方法として、例えば、ドーソン型ポリ酸のアンモニウム塩を合成した後、その溶液に塩化リチウムを加えて再結晶を行うことにより、ドーソン型ポリ酸化合物(ドーソン型ポリ酸のリチウム塩)を合成する方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
また、上記異性体を選択的に製造する方法が開示されている。より具体的には、3日間の還流を行った後、冷却を行い、冷却から数日後にα体の結晶体を析出させて、α体を合成する方法が開示されている。(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0007】

【非特許文献1】S.V.Kiselev,V.F.Chuvaev, Zhurnal Neorganicheskoi Khimii, 1983, 28(1), 118
【非特許文献2】I.M.Mbomekalle, Y.W.Lu, B.Keita, L.Nadjo, Inorg.Chem.Commun., 2004, 7, 86
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記非特許文献1に記載の製造方法においては、上記異性体の選択的な製造方法が記載されておらず、また、製造工程数が多いため、ドーソン型ポリ酸の製造に多大な時間が必要になるという問題があった。
【0009】
また、上記非特許文献2に記載の製造方法においては、異性体の選択的な製造方法は記載されているものの、8日以上の日数が必要であるという問題があった。
【0010】
従って、ケギン型、及びアンダーソン型のポリ酸に関しては、製品化されているにもかかわらず、ドーソン型のポリ酸については、未だ製品化に至っていない。
【0011】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、簡易な方法、かつ短時間で、異性体を選択的に製造することができるα-ドーソン型ポリ酸の製造方法およびその方法により製造されたα-ドーソン型ポリ酸、α-ドーソン型ポリ酸化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のα-ドーソン型ポリ酸の製造方法は、下記式(1)で表されるα-ドーソン型ポリ酸の製造方法であって、金属酸塩とヘテロ原子を含む無機酸とを、還流条件下において溶媒中で反応させることを特徴とする。
【0013】
(化1)
[α-An- (1)
(式中、Aはリン、ケイ素、硫黄、ゲルマニウム、ヒ素、セレン及びアンチモンから選ばれるヘテロ原子を示し、Mはタングステン、バナジウム、ニオブ、モリブテン、及びタンタルから選ばれる金属原子を示し、Oは酸素原子を示す。また、n、x、y、zは1以上の整数を示す。)
【0014】
同構成によれば、簡易な方法、かつ短時間(1~2日)で、α-ドーソン型ポリ酸を選択的に製造することができる。
【0015】
また、本発明のα-ドーソン型ポリ酸は、様々な有機溶媒に可溶であるため、幅広い用途に使用可能なα-ドーソン型ポリ酸を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な方法、かつ短時間(1~2日)で、α-ドーソン型ポリ酸を選択的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るα-ドーソン型ポリ酸([α-P18626-)のX線構造解析図である。
【図2】本発明の実施形態に係るα-ドーソン型ポリ酸化合物(Li[α-P1862])のX線構造解析図(側面図)である。
【図3】本発明の実施例における反応溶液の31P-NMRデータのグラフである。
【図4】本発明の実施例における結晶体の31P-NMRデータのグラフである。
【図5】本発明の実施例における結晶体のLi-NMRデータのグラフである。
【図6】本発明の実施例における結晶体のIRスペクトルデータのグラフである。
【図7】本発明の実施例におけるα-ドーソン型ポリ酸化合物(Li[α-P1862])のX線構造解析図(上面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。

【0019】
本発明のα-ドーソン型ポリ酸の製造方法は、金属酸塩(LiWO等のタングステン酸塩)とヘテロ原子を含む無機酸(例えば、HPO等のリン酸)とを、還流条件下において、水等の溶媒中で反応させることにより、α-ドーソン型ポリ酸を製造する方法である。

【0020】
本発明のα-ドーソン型ポリ酸は、ヘテロ原子と金属原子が酸素原子を介して配位した構造を有し、下記式(2)により表される。

【0021】
(化1)
[α-An- (2)
(式中、Aはリン、ケイ素、硫黄、ゲルマニウム、ヒ素、セレン及びアンチモンから選ばれるヘテロ原子を示し、Mはタングステン、バナジウム、ニオブ、モリブテン、及びタンタルから選ばれる金属原子を示し、Oは酸素原子を示す。また、n、x、y、zは1以上の整数を示す。)

【0022】
例えば、本発明の製造方法により製造される、ヘテロ原子がリン、金属原子がタングステンであるα-ドーソン型ポリ酸([α-P18626-)のX線構造解析図を図1に示す。

【0023】
α-ドーソン型ポリ酸においては、平面視において、結晶構造の上方に位置する3つのタングステンと下方に位置する3つのタングステンが重なるように配置されている。

【0024】
また、上記α-ドーソン型ポリ酸の塩(α-ドーソン型ポリ酸化合物)を形成する対カチオン(カウンターカチオン)としては、特に限定されず、例えば、プロトンやリチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン等の第一族元素の陽イオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等の第二族元素の陽イオン、アンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン等のアンモニウムカチオン、遷移金属イオン、ランタノイドイオン等が使用できる。これらの対カチオンは1種類または2種類以上を用いることができる。

【0025】
例えば、上述の図1に示すα-ドーソン型ポリ酸に、対カチオンとしてリチウムを使用したα-ドーソン型ポリ酸化合物(Li[α-P1862])のX線構造解析図を図2に示す。

【0026】
次に、本発明のα-ドーソン型ポリ酸の製造方法について説明する。

【0027】
まず、水等の溶媒に、金属酸塩(例えば、LiWO等のタングステン酸塩)を溶解して、溶媒中に金属酸イオン(例えば、WO2-等のタングステン酸イオン)を生成させた後、溶媒にリン酸等のヘテロ原子を含む無機酸を加えて溶解する。

【0028】
ここで、溶媒中における金属酸塩の濃度は、α-ドーソン型ポリ酸の収率を向上させるとの観点から、0.924mol/l以上1.36mol/l以下であることが好ましい。

【0029】
また、α体を選択的に合成するとの観点から、溶媒中における金属酸塩/無機酸の比率(モル比率)は、1/5が好ましい。

【0030】
また、反応溶液の水素イオン指数(pH)がポリ酸の構造決定に重要であるとの観点から、溶媒中における無機酸の濃度は、6.47mol/l程度であることが好ましい。

【0031】
なお、金属酸塩と無機塩が溶解した溶媒のpHは、2以下であることが好ましい。このようなpHに設定することにより、α-ドーソン型ポリ酸化合物の製造効率が向上する。

【0032】
また、本発明のα-ドーソン型ポリ酸は、選択する対カチオンに依存して、水やエタノール等の極性溶媒のみならず、アセトン等の有機溶媒にも可溶であるという優れた特性を有する。特に、対カチオンとしてリチウムイオンを使用することにより、ベンゼンやトリクロロメタン(クロロホルム)といった低極性溶媒にも可溶となり、優れた溶媒可溶性を示す。

【0033】
α-ドーソン型ポリ酸を製造する際の溶媒としては、例えば、水、エタノール、メタノール等の極性溶媒や、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶媒を使用することができる。

【0034】
次に、所定の条件下において、上記溶媒の還流を行うことにより、溶液中のプロトンと金属酸(例えば、タングステン酸)の酸素による脱水縮合反応が起こり、α-ドーソン型ポリ酸が製造される。

【0035】
ここで、時間効率及びコスト効率の観点から、還流時間は、90分以上120分以下が好ましい。これは、120分よりも長い場合は、α-ドーソン型ポリ酸の収率に変化がなくなる傾向にあるため、製造効率(時間効率、コスト効率)が低下するという不都合が生じる場合があるためである。

【0036】
次に、製造したα-ドーソン型ポリ酸を使用して、α-ドーソン型ポリ酸化合物を製造する方法について説明する。

【0037】
まず、上述の還流後、α-ドーソン型ポリ酸が溶解した溶液を所定の温度(例えば、60℃)まで冷却する。次いで、α-ドーソン型ポリ酸が溶解した溶液に対カチオン源(例えば、塩化リチウム)を加えて溶解する。

【0038】
ここで、溶液中における対カチオン源の濃度は、溶液中に存在するドーソン型ポリ酸を全て析出させるとの観点から、8.23mol/l以上11.0mol/l以下であることが好ましい。

【0039】
次に、所定の条件下において、上記溶液の還流を行うことにより、α-ドーソン型ポリ酸と対カチオンが結合して、α-ドーソン型ポリ酸化合物が製造される。

【0040】
ここで、α-ドーソン型ポリ酸化合物の純度と収率を向上させるとの観点から、還流時間は、60分以下が好ましい。

【0041】
そして、反応溶液を室温まで冷却して濾過を行った後、再結晶等による精製を行うことにより、粉末状のα-ドーソン型ポリ酸化合物を得ることができる。

【0042】
以上に説明した様に、本発明においては、簡易な方法、かつ短時間(1~2日)で、α-ドーソン型ポリ酸を選択的に製造することができる。

【0043】
また、上述のごとく、本発明のα-ドーソン型ポリ酸は、様々な有機溶媒に可溶であるため、幅広い用途に使用可能なα-ドーソン型ポリ酸を提供することができる。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これらの実施例を本発明の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【実施例】
【0045】
(実施例)
(α-ドーソン型ポリ酸の作製)
マグネチックスターラーを備えた丸底フラスコ(容積:50ml)に、溶媒である水12ml、タングステン酸リチウム(LiWO、AlfaAesar(株)製)7.64g(0.030mol)を加えて溶解させ、10分間、攪拌した。
【実施例】
【0046】
次に、この水に、85%のリン酸(HPO、和光純薬工業(株)製)16g(0.14mol)を徐々に加えた。なお、タングステン酸リチウムとリン酸が溶解した水のpHは、1であった。
【実施例】
【0047】
次に、100℃で、2時間、還流を行い、60℃まで冷却することにより、α-ドーソン型ポリ酸([α-P18626-)を作製した。
【実施例】
【0048】
(反応溶液の31P-NMR分析)
次に、フーリエ変換核磁気共鳴装置(JEOL(株)製、商品名:EX—400)を使用して、反応溶液の31P-NMR分析を行った。
【実施例】
【0049】
なお、溶媒として重水素を使用するとともに、基準物質として85%のリン酸重水溶液(外部基準0.00ppm)を使用し、積算回数128回の条件下で、室温により測定を行った。以上の結果を図3に示す。
【実施例】
【0050】
得られたスペクトルピークについて、α-ドーソン型ポリ酸(α体)に帰属するピーク(-12.9ppm付近の位置に相当)の積分値と、β-ドーソン型ポリ酸(β体)に帰属するピーク(-11.4ppm付近、及び-12.2ppm付近の位置に相当)の積分値の比を算出したところ、図3に示すように、α体:β体=7.8:1であった。即ち、本実施例においては、β体の8倍程度のα体が生成していることが判る。
【実施例】
【0051】
(α-ドーソン型ポリ酸化合物の作製)
次に、上述の還流後、反応溶液を60℃まで冷却し、この反応溶液に対カチオン源である塩化リチウム(LiCl、和光純薬工業(株)製)10g(0.235mol)を加えて溶解させた。
【実施例】
【0052】
次に、1時間、還流を行った後、反応溶液を室温まで冷却して濾過を行い、白色粉末状のα-ドーソン型ポリ酸化合物(Li[α-P1862])を得た。
【実施例】
【0053】
なお、得られた白色粉末を100mlのメタノールに溶解して再結晶し、更に、塩化リチウム(LiCl、和光純薬工業(株)製)4.17g(0.098mol)を溶解させた水を使用して再結晶を行った。
【実施例】
【0054】
その後、濾過を行うことにより、α-ドーソン型ポリ酸化合物(Li[α-P1862])の結晶体を得た。なお、得られた結晶体の収量は6.8g(1.41mmol)であり、収率は87%であった。
【実施例】
【0055】
(結晶体の31P-NMR分析)
次に、フーリエ変換核磁気共鳴装置(JEOL(株)製、商品名:EX-400)を使用して、結晶体の31P-NMR分析を行った。
【実施例】
【0056】
なお、溶媒として重水素を使用するとともに、基準物質として85%のリン酸重水溶液(外部基準0.00ppm)を使用し、積算回数128回の条件下で、室温により測定を行った。以上の結果を図4に示す。
【実施例】
【0057】
得られたスペクトルピークについて、α-ドーソン型ポリ酸化合物(α体)に帰属するピーク(-12.9ppmの位置に相当)の積分値と、β-ドーソン型ポリ酸化合物(β体)に帰属するピーク(-11.4ppm、及び-12.2ppmに相当)の積分値の比を算出したところ、図4に示すように、α体:β体=33.8:1であった。即ち、本実施例においては、約97%という高純度で、α体の単離に成功したことが判る。
【実施例】
【0058】
(結晶体のLi-NMR分析)
次に、フーリエ変換核磁気共鳴装置(JEOL(株)製、商品名:AL-400)を使用して、結晶体のLi-NMR分析を行った。
【実施例】
【0059】
なお、溶媒として重水素を使用するとともに、基準物質として0.3Mの塩化リチウム/メタノール溶液(外部基準0.00ppm)を使用し、積算回数32回の条件下で、室温により測定を行った。以上の結果を図5に示す。
【実施例】
【0060】
図5に示すように、0.006ppmのみにピークが現れたことから、結晶体中にリチウムイオン(対カチオン)が存在し、存在するリチウムイオンの全てが溶媒和(水和)していることが判る。
【実施例】
【0061】
(結晶体のIRスペクトル分析)
次に、測定装置として、赤外分光計(日本分光(株)製、JASCO FT/IR-660plus)を使用し、KBr錠剤(120mg)と測定する試料を1000回すりつぶして、加圧することにより、KBrディスクを作製し、これを測定することにより行った。結晶体のIRスペクトルデータを図6に示す。
【実施例】
【0062】
図6に示すように、791cm-1付近、及び951cm-1付近に、W-O-W伸縮に由来するピークが検出され、980cm-1付近に、W=O伸縮に由来するピークが検出された。また、1090cm-1付近に、P-O伸縮に由来するピークが検出された。
【実施例】
【0063】
このことから、結晶体において、α-ドーソン型ポリ酸([α-P18626-)が存在することを確認した。
【実施例】
【0064】
(単結晶X線解析)
次に、得られた結晶体の単結晶X線解析を行い、結晶体中にα-ドーソン型ポリ酸化合物(Li[α-P1862])のみが存在することを確認した。
【実施例】
【0065】
なお、単結晶X線解析は、測定装置(Bruker社製、CCD APEX II)を使用し、MoKα(波長:0.71Å)を使用することにより行った。得られたα-ドーソン型ポリ酸化合物(Li[α-P1862])の結晶構造を図2、及び図7に示す。なお、図2は、α-ドーソン型ポリ酸化合物の結晶構造を示す側面図であり、図7は、α-ドーソン型ポリ酸化合物の結晶構造を示す上面図である。
【実施例】
【0066】
また、得られた結晶の単位格子パラメータを以下に示す。
【実施例】
【0067】
単位格子の寸法:a=b=15.2104Å、c=56.2396Å、α=β=γ=90°、V=11268Å
【実施例】
【0068】
図2、図7より、上面視において、上方に位置する3つのタングステンと下方に位置する3つのタングステンが重畳していることが判り、このことから、結晶体中にα-ドーソン型ポリ酸化合物(Li[α-P1862])のみが存在することが判る。
【実施例】
【0069】
(溶媒溶解性試験)
次に、作製した結晶体の、表1に示す各溶媒への溶解度(kg/l)を検討した。以上の結果を表1に示す。
【実施例】
【0070】
【表1】
JP2014214072A_000002t.gif
【実施例】
【0071】
表1に示すように、本実施例のα-ドーソン型ポリ酸化合物(Li[α-P1862])は、水やエタノール等の極性溶媒のみならず、アセトン等の有機溶媒にも可溶であり、特に、水、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、メタノール、エタノール、及びアセトンに対して、優れた溶解性を有することが判る。また、ベンゼンやトリクロロメタン(クロロホルム)といった低極性溶媒にも可溶である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上説明したように、本発明は、酸触媒等として使用できるα-ドーソン型ポリ酸およびその方法により製造されたα-ドーソン型ポリ酸、α-ドーソン型ポリ酸化合物の製造方法に適している。
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図1】
4
【図2】
5
【図7】
6