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明細書 :核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-132831 (P2016-132831A)
公開日 平成28年7月25日(2016.7.25)
発明の名称または考案の名称 核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法
国際特許分類 D01D   5/04        (2006.01)
D01F   9/00        (2006.01)
C12N  15/115       (2010.01)
FI D01D 5/04 ZNA
D01F 9/00 Z
C12N 15/00 H
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2015-006431 (P2015-006431)
出願日 平成27年1月16日(2015.1.16)
発明者または考案者 【氏名】水野 稔久
【氏名】小幡 亜希子
【氏名】市来 健太郎
【氏名】岩永 憲彦
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4B024
4L035
4L045
Fターム 4B024AA03
4B024AA11
4B024CA01
4B024CA11
4B024HA11
4B024HA20
4L035AA04
4L035BB02
4L035CC01
4L035DD13
4L045AA01
4L045BA34
4L045DA11
要約 【課題】
体液等の水環境での使用に耐えうる、機能を保持した核酸を担持した核酸内包繊維状物質を含む構造体を提供することにある。
【解決手段】
本発明は、水を溶媒とし、核酸共存下三次元ポリマーを作製し、このとき三次元ポリマーの架橋度を調整し、得られた溶液を電界紡糸することにより、あるいはその後の熱処理も施すことにより水に不溶の繊維状物質を作製し、この繊維状物質を用いて構造体を作製する工程を含む方法により得られうる核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法である。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
水を溶媒とし、核酸共存下三次元ポリマーを作製し、このとき三次元ポリマーの架橋度を調整し、得られた溶液を電界紡糸することにより、あるいはその後の熱処理も施すことにより、水に不溶の繊維状物質を作製し、この繊維状物質を用いて構造体を作製する工程を含む方法により得られうる核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法。
【請求項2】
水を溶媒とし、核酸共存下ポリγ—グルタミン酸と架橋剤から三次元ポリマーを作製し、このとき三次元ポリマーの架橋度を調整し、得られた溶液を電界紡糸することにより、あるいはその後の熱処理も施すことにより、水に不溶の繊維状物質を作製し、この繊維状物質を用いて構造体を作製する工程を含む方法により得られうる請求項1記載の核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法。
【請求項3】
水を溶媒とし、核酸共存下ポリカルボン酸と3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランから三次元ポリマーを作製し、このとき三次元ポリマーの架橋度を調整し、得られた溶液を電界紡糸することにより、あるいはその後の熱処理も施すことにより、水に不溶の繊維状物質を作製し、この繊維状物質を用いて構造体を作製する工程を含む方法により得られうる請求項1または請求項2記載の核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法。
【請求項4】
水を溶媒とし、核酸共存下ポリγ-グルタミン酸と3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランから三次元ポリマーを作製し、このとき三次元ポリマーの架橋度を調整し、得られた溶液を電界紡糸することにより、あるいはその後の熱処理も施すことにより水に不溶の繊維状物質を作製し、この繊維状物質を用いて構造体を作製する工程を含む方法により得られうる請求項1、請求項2または請求項3記載の核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法。
【請求項5】
水を溶媒とし、核酸共存下三次元ポリマーを作製し、電解紡糸して繊維状物質を作製し、この繊維状物質を用いて構造体を作製し、この繊維状物質及び/又はこの構造体を不溶化処理する工程を含む方法により得られうる請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸内包繊維状物質を含む構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸(DNA及び/又はRNA)は、一般に知られる遺伝情報を担う機能の他に、特異な立体構造をとることにより、特定分子と選択的に結合する機能(DNAアプタマー、RNAアプタマーとしての機能)、また、温和な条件のもと特定分子に対して化学反応を促進する触媒機能(DNAザイム、RNAザイムとしての機能)を有する。このような高機能を有するDNA及び/又はRNAを使用する環境を提供することが求められている。
【0003】
体液等水の存在する環境において高機能を有するDNA及び/又はRNAを使用する際、その水環境に存在する加水分解酵素(DNaseディーエヌアーゼ等)、メチル化酵素等から核酸(DNA及び/又はRNA)を保護する必要がある。従来は、核酸に対し機能を損なわない程度に化学構造を変化させた修飾核酸を用いる手法により、核酸の保護が行われてきた。
【0004】
DNAの機能に着目し、DNAのポリマー(合成高分子)への導入について述べた文献として以下のものがある。
【0005】
特許文献1は、DNAと水溶性高分子とカチオン性脂質を含むDNA複合体の製造方法であって、水とDNAと水溶性高分子との混合物を得る工程と、前記混合物にカチオン性脂質を加えて共沈させる工程とを有するDNA複合体の製造方法、及びDNA複合体を含むフイルムの製造方法を開示している。
【0006】
本文献は、一般的に海洋性生物に由来するDNAはフイルム化や紡糸が困難であり、またフイルム化しても膜厚が薄くその用途に制約があったことを受け、光学分割や気体分離といった分離機能を向上させたDNA複合体及びDNA複合体を含むフイルムを提供することを課題としており、本文献記載のDNA複合体を用いたフイルムでは、その膜強度が飛躍的に向上し、光学分割、気体分離の効率が向上するとしている。
【0007】
また、本文献はDNA複合体を、非プロトン性極性溶媒を含む溶媒に、溶解してフイルム又はファイバーを得ることを開示しており、DNA複合体を含む溶液を調製し、支持体上に層状に載せ、あるいは型内に充填して、溶媒成分を減圧乾燥などの手段にて除去することにより、フイルムなどの成形品を得ることが開示されている。しかし、本文献には他の成形品を得る手段は示唆されていない。
【0008】
電界紡糸について述べた文献として以下のものがある。
【0009】
特許文献2は、緑内障の治療において眼からの房水の排水を支援する処置に使用する、軟組織を維持するために提供される繊維マトリックスが開示されており、この繊維マトリックスはポリマー材料を含むことができ、電解紡糸法によって製造されることができるとしている。
【0010】
本文献は、緑内障の治療において眼から房水を排水するための空間の維持という軟組織における空間の維持を課題としている。しかし、本文献には軟組織における空間の維持以外の用途を示唆した記述はない。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2007-154094号公報
【特許文献2】特表2012-531274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
修飾核酸を利用する手法により、加水分解酵素(DNaseディーエヌアーゼ等)、メチル化酵素等からの核酸の保護が行われてきたが、修飾核酸はPCRを用いることで効率よく行うことが可能なSELEX法(高機能なDNA又はRNAを選出する方法)を使うことができない。本発明は、SELEX法などにより得られる高機能なDNA又はRNAを水環境に存在する加水分解酵素(DNaseディーエヌアーゼ等)、メチル化酵素等から保護する構成を提供することを、目的とする。
【0013】
特許文献1は、水とDNAと水溶性高分子との混合物を得る工程と、前記混合物にカチオン性脂質を加えて共沈させる工程と、を経てDNA複合体を得るとしている。そして、このDNA複合体を、非プロトン性極性溶媒を含む溶媒に溶解して、溶媒成分を減圧乾燥などの手段にて除去し、フイルムなどの成形品を得るとしている。本文献に記載のDNA複合体を含む成形品は、DNAと水溶性ポリマーから構成されるものであり、水環境下での使用を想定したものではない。本文献記載のDNA複合体を含む成形品は、水のない環境下において、光学分割、気体分離といった作用・機能を果たす構成である。
【0014】
また、特許文献1は、DNA複合体を、非プロトン性極性溶媒を含む溶媒に溶解して成形し、DNA複合体を含むフイルム又はファイバーを得るとしている。本文献記載の構成は、非プロトン性極性溶媒により失活しない特定のDNAを含む場合に有効な構成であるが、立体構造を保持しなければ機能を発揮しない核酸を内包することを考慮した構成ではない。
【0015】
特許文献1は、DNAにおける特定分子と選択的に結合する機能又は特定分子に対して化学反応を促進する触媒機能を想定した場合、DNAの機能活性の点で問題がある。すなわち、本文献は成形の一例としてフイルムを作製するとしている。DNA(核酸)と特定分子との選択的な結合又は特定分子との反応は、成形品を基質溶液に含浸して行われる。また、通常のSELEX法を介して選別された、特定分子と選択的に結合する、又は特定分子に対して化学反応を促進するDNAは水溶媒中での利用が想定されるため、それぞれにおいて対象となる基質溶液の溶媒は水系溶媒である。従って、成形品を水環境中に含浸した際に崩壊しないことが必要である。特許文献1は、核酸の機能活性を考慮した成形品の形状を示唆していない。
【0016】
特許文献2は、電界紡糸法により作製された繊維マトリックスが開示されているが、電界紡糸法は、緑内障を治療するために眼から房水を排水するための空間の維持といった軟組織における空間の維持を課題とした繊維の作製に用いられる。すなわち、本文献において、核酸(DNA及び/又はRNA)を導入したポリマーを紡糸し、内包核酸の機能を向上させる目的で電界紡糸法を用いる示唆はない。ゆえに、核酸の機能活性の調整に関して課題を残す。
【0017】
従って、本発明の課題は、核酸(DNA及び/又はRNA)が失活することなく内包されている、水環境での使用に耐えうる核酸内包繊維状物質を含む構造体を提供することにある。そして、水環境での使用において、水環境に存在する加水分解酵素(DNaseディーエヌアーゼ等)、メチル化酵素等から核酸(DNA及び/又はRNA)が保護される構成である核酸内包繊維状物質を含む構造体を提供することを本発明は課題とする。また、水環境での使用後、核酸の回収が容易である核酸内包繊維状物質を含む構造体を提供することを本発明は課題とする。さらに、核酸(DNA及び/又はRNA)が特定分子と選択的に結合する機能(DNAアプタマー、RNAアプタマーとしての機能)又は一種類又は数種類の特定分子に対して化学反応を促進する触媒機能(DNAザイム、RNAザイムとしての機能)といった機能を発揮することが可能である核酸内包繊維状物質を含む構造体を提供することを本発明は課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、核酸を三次元ポリマーに導入し極細の繊維に紡糸するという考えの下に、体液等の水環境での使用に耐えうる、核酸が特定分子と選択的に結合する機能又は特定分子に対して化学反応を促進する触媒機能を保持し、核酸を扱い易い繊維状物質に担持した、核酸内包繊維状物質を含む構造体を見出した。
【0019】
すなわち、請求項1に係る本発明は、水を溶媒とし、核酸共存下三次元ポリマーを作製し、このとき三次元ポリマーの架橋度を調整し、得られた溶液を電界紡糸することにより、水に不溶の繊維状物質を作製し、この繊維状物質を用いて構造体を作製する工程を含む方法により得られうる核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法である。
【0020】
水を溶媒とするとは、本発明における三次元ポリマーは、核酸共存下、水を溶媒とし合成されることをいう。有機溶媒中では、導入する核酸は立体構造が変化し失活する。本発明は、水を溶媒とする環境で、核酸(DNA及び/又はRNA)を導入した3次元ポリマーを作製する工程を経ることにより、本発明である核酸内包繊維状物質を含む構造体において核酸(DNA及び/又はRNA)の活性を保つことができる。
【0021】
核酸共存下三次元ポリマーを作製するとは、三次元ポリマーを生成する際、その網目構造の中に核酸が担持されることをいう。三次元ポリマーは架橋剤と、架橋剤と反応する官能基を有するポリマーと、から生成される。また、架橋剤と、架橋剤と反応する官能基を有するポリマーとを生成するモノマーと、から作製されてもよい。
【0022】
共存させる核酸として、16残基からなる1本鎖DNA(T30695、5’-GGGTGGGTGGGTGGGT-3’)といった、機能の確認されている種々の核酸(DNA及び/又はRNA)がある。SELEX法により選出された、様々な機能を持った核酸(DNA及び/又はRNA)を共存させるとしてもよい。本発明は、SELEX法などにより選出された高機能なDNA及び/又はRNAを機能させる環境を提供するものである。
【0023】
また、三次元ポリマーとして、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリ(2-スチレンスルホン酸)、ポリ(3-スチレンスルホン酸)、ポリ(4-スチレンスルホン酸)、ポリ(マレイン酸)、ポリ-L-α-グルタミン酸、ポリ-L-γ-グルタミン酸、ポリ-D-α-グルタミン酸、ポリ-D-γ-グルタミン酸、ポリ-L-α-アスパラギン酸、ポリ-L-β-アスパラギン酸、ポリ-D-α-アスパラギン酸、ポリ-D-β-アスパラギン酸、ポリガラクツロン酸、ヒアルロン酸、コロミン酸ナトリウム塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシ基を表面に持つポリイミンデンドリマー、カルボキシ基を表面に持つアミドアミンデンドリマーなど、及び上記ポリマーユニットを含む共重合体のようなポリカルボン酸と、架橋剤から形成させる三次元ポリマーがある。また、ポリ-L-リシン、ポリ-D-リシン、ポリ-L-オルニチン、ポリ-D-オルニチン、ポリ塩酸アリルアミン、ポリイミン、アミノ基を表面に持つポリイミンデンドリマー、アミノ基を表面に持つアミドアミンデンドリマーなど、及び上記ポリマーユニットを含む共重合体のようなポリアミン、と架橋剤から形成させる三次元ポリマーがある。
【0024】
架橋剤とは、ポリマーを網目構造とする反応点が2点以上ある分子をいい、架橋剤として、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランのようなエポキシド部位とトリアルコキシシリル部位を持つ誘導体あるいは活性エステル部位とトリアルコキシシリル部位を持つ誘導体がある。これらにテトラエトキシシランを添加し、ポリマーの網目構造を形成してもよい。
【0025】
三次元ポリマーの架橋度を調整するとは、核酸共存下三次元ポリマーを作製する工程における溶液の撹拌時間を調整することにより行われることをいう。撹拌時間を長時間にすると、三次元ポリマーの架橋度が上がり三次元ポリマーの不溶化が進む。水を溶媒とし、核酸共存下三次元ポリマーを作製する工程における溶液の撹拌時間は、3時間から6時間の撹拌時間が好ましく、より好ましくは6時間の撹拌時間である。撹拌時間は、三次元ポリマーや架橋剤を考慮して調整される。溶液の粘性が高まるほど長時間撹拌することは電解紡糸において好ましくないが、本発明の効果を損なわない範囲で行うことができる。
【0026】
核酸共存下三次元ポリマーを作製する工程における溶液の撹拌及びその後の工程である電界紡糸、あるいは熱処理などを通して、核酸共存三次元ポリマーの不溶化処理が行われる。水を溶媒とし、核酸共存下三次元ポリマーを作製する工程における溶液の撹拌時間を長時間とし、核酸共存三次元ポリマーの不溶化処理を行うものは、系を高温にする必要がないため、容易に熱により立体構造を変化させる核酸においても、核酸の水素結合が保たれて核酸の立体構造が保持され、核酸の機能を損なわない効果があるため望ましい。
【0027】
電界紡糸とは、ポリマー溶液をシリンジに入れ、シリンジのニードルとコレクター間に高電圧をかけながらポリマー溶液を射出させ、電圧がしきい値を超えると、電荷の反発力がポリマー液滴の表面張力に打ち勝って電荷を帯びた噴流が発生し、電場内で噴流は伸長して非常に細いファイバーを形成し、コレクター上にファイバーが集積され紡糸する技術をいう。電界紡糸により極細の繊維が形成される。
【0028】
電界紡糸することにより水に不溶の繊維状物質を作製するとは、本発明における核酸共存下三次元ポリマーの不溶化処理が、前記核酸共存下三次元ポリマーを作製する工程における溶液の撹拌及び電界紡糸、あるいはさらに熱処理を施すことにより行われることをいう。すなわち、電界紡糸において、ポリマー溶液が噴流を形成しファイバーとなる際、ポリマー溶液から溶媒が除去されポリマー溶液の濃度が増し、三次元ポリマーの架橋反応がさらに進み、水に不溶の構成となることをいう。上記過程での架橋度が足らない場合には、さらに熱処理により架橋度を高めることで水への不溶化が可能である。
【0029】
核酸を導入した三次元ポリマーを電界紡糸し極細の繊維を作製することにより、使用時系に存在する基質と核酸(DNA及び/又はRNA)の接触面は増し、内包する核酸における特定分子と選択的に結合する機能(DNAアプタマー、RNAアプタマーとしての機能)又は一種類又は二種類以上の特定分子に対して化学反応を促進する触媒機能(DNAザイム、RNAザイムとしての機能)といった機能が向上する。
【0030】
本発明における核酸内包繊維状物質は、核酸を導入した三次元ポリマーの架橋度を上げる不溶化処理を施すことにより、核酸内包繊維状物質内部に低分子のみを透過させ、高分子を透過させない性質を有する。水環境での使用において、水環境に存在する加水分解酵素(DNaseディーエヌアーゼ等)、メチル化酵素等から内包された核酸(DNA及び/又はRNA)が保護される構成である核酸内包繊維状物質を提供する。体液等、分解酵素等を含む環境において有用な構成である。
【0031】
繊維状物質を用いて構造体を作製するとは、繊維状物質を使用する形態に成形することをいう。電界紡糸により繊維状物質作製段階で成形する、または、繊維状物質を作製した後それを用いて成形するとしてもよい。本発明における核酸内包繊維状物質を含む構造体は、構造体は本質的に核酸内包繊維状物質からなり、核酸内包繊維状物質の他に発明の効果・作用に影響を与える要素の付加は認めないが、影響のない要素が含まれることをいう。または、核酸内包繊維状物質を含む構造体は、核酸内包繊維状物質のみからなるとしてもよい。構造体の形態の一例として不織布がある。本発明において、不織布は電界紡糸により形成された繊維が集積され得られる。
【0032】
本発明の核酸内包繊維状物質又は核酸内包繊維状物質を含む構造体は容易に扱うことができる。すなわち、核酸が特定分子と選択的に結合する機能(DNAアプタマー、RNAアプタマーとしての機能)又は特定分子に対して化学反応を促進する触媒機能(DNAザイム、RNAザイムとしての機能)を発揮したのち、本発明の核酸内包繊維状物質又は核酸内包繊維状物質を含む構造体は水に不溶のため、回収することが容易である。
【0033】
さらに、本発明に係る核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法により得られうる核酸内包繊維状物質よりなる構造体は、構造体を濾紙又は分離膜として用いることができ、特定物質に対するセンサーとしても機能する。
【0034】
本発明に係る核酸内包繊維状物質を含む構造体は、内包する核酸を、DNAのみ又はRNAのみ又はDNA及びRNAとすることができる。内包する核酸をDNA及びRNAとした場合、内包DNA及びRNAが触媒として関与する複数の反応を連結して行うことができる。
【0035】
さらに、水を溶媒とし、核酸(DNA及び/又はRNA)とタンパク質双方を共存下に三次元ポリマーを作製し、このとき三次元ポリマーの架橋度を調整し、得られた溶液を電界紡糸することにより、あるいはその後の熱処理も施すことにより水に不溶の繊維状物質を作製し、この繊維状物質を用いて構造体を作製する工程を含む方法により得られうる核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法としてもよい。共存させるタンパク質の例として、キモトリプシンがある。本発明者は、特願2014-143141においてタンパク質内包不織布の製造方法を創作している。
【0036】
請求項2に係る本発明は、水を溶媒とし、核酸共存下ポリγ—グルタミン酸と架橋剤から三次元ポリマーを作製し、このとき三次元ポリマーの架橋度を調整し、得られた溶液を電界紡糸することにより、あるいはその後の熱処理も施すことにより水に不溶の繊維状物質を作製し、この繊維状物質を用いて構造体を作製する工程を含む方法により得られうる核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法である。
【0037】
請求項3に係る本発明は、水を溶媒とし、核酸共存下ポリカルボン酸と3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランから三次元ポリマーを作製し、このとき三次元ポリマーの架橋度を調整し、得られた溶液を電界紡糸することにより、あるいはその後の熱処理も施すことにより水に不溶の繊維状物質を作製し、この繊維状物質を用いて構造体を作製する工程を含む方法により得られうる核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法である。
【0038】
また、請求項4に係る本発明は、水を溶媒とし、核酸共存下ポリγ-グルタミン酸と3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランから三次元ポリマーを作製し、このとき三次元ポリマーの架橋度を調整し、得られた溶液を電界紡糸することにより、あるいはその後の熱処理も施すことにより水に不溶の繊維状物質を作製し、この繊維状物質を用いて構造体を作製する工程を含む方法により得られうる核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法である。
【0039】
三次元ポリマーとして、ポリγ-グルタミン酸と架橋剤からなる三次元ポリマーがある。ポリγ-グルタミン酸の化学式を、以下式(1)に示す。
【0040】
【化1】
JP2016132831A_000003t.gif

【0041】
ポリγ-グルタミン酸は、生体適合性に優れる。また、ポリγ-グルタミン酸に架橋剤を添加し架橋度を調節することにより得られる三次元ポリマーは水溶媒中で適度に膨潤するため、内包した核酸を機能させる環境を提供できる。
捕捉させておくことができ、内包核酸と結合、反応させる基質の分子量に選択性を持たせることができる。
【0042】
三次元ポリマーとして、ポリカルボン酸又はポリアミンと架橋剤からなる三次元ポリマーがある。架橋剤として、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランがある。3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの化学式を、以下式(2)に示す。
【0043】
【化2】
JP2016132831A_000004t.gif

【0044】
請求項5に係る本発明は、水を溶媒とし、核酸共存下三次元ポリマーを作製し、電解紡糸して繊維状物質を作製し、この繊維状物質を用いて構造体を作製し、この繊維状物質及び/又はこの構造体を不溶化処理する工程を含む方法により得られうる核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法である。
【0045】
不溶化処理は、熱処理によるもの、電界紡糸におけるスピニングの際に起きるもの、水を溶媒とし核酸共存下三次元ポリマーを作製する工程における溶液の撹拌時間を長時間にするもの又はそれらの組み合わせにより行われる。不溶化処理により、三次元ポリマーを形成するポリマーにおける架橋剤と反応する官能基がさらに架橋剤と反応することにより、架橋度が上がり、水に不溶となる。熱処理は、内包された核酸が変性しない程度に行われる。三次元ポリマーの架橋度をあげ不溶化処理を施すことにより、系に存在する加水分解酵素等が内包された核酸を分解すること等を防御し、また、不溶化することにより繊維状物質及び/又は構造体の扱いが容易となる。
【0046】
本発明を、水を溶媒とし、核酸共存下ポリγ-グルタミン酸と3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランから三次元ポリマーを作製し、電解紡糸して繊維状物質を作製し、この繊維状物質を用いて構造体を作製し、この繊維状物質及び/又はこの構造体を不溶化処理する工程を含む方法により得られうる核酸内包繊維状物質を含む構造体の製造方法としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態において作成される、不織布の走査型電子顕微鏡により求められたナノファイバーの構造を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態において作成される、ヘミン結合DNAを内包した不織布の走査型電子顕微鏡により求められたナノファイバーの構造を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態において検討される、ヘミン結合DNAを内包した不織布の酸化酵素活性を評価した図である。ヘミン結合DNAの酸化酵素活性が不織布ナノファイバ-内部でも維持されていることにより、基質の酸化縮合が進み紫色に発色が見られた。
【発明を実施するための形態】
【0048】
(第1実施形態)
ポリγ-グルタミン酸500mg(和光純薬)と水酸化カルシウム128mg(和光純薬)を3.0mlの蒸留水に溶かし添加し室温で6時間撹拌を行った。この溶液を注射器に移し、シリンジポンプで溶液を押し出しながら電解紡糸を行うことにより、不織布とした。
なお、6時間と撹拌時間を十分にとることにより、その後の熱処理をすることなく、得られた不織布は水に不溶となった。その微細構造は、走査型電子顕微鏡により確認を行い、300nm程度の均一な直径を持つことが確認された(図1参照)。

【0049】
(第2実施形態)
核酸内包繊維状物質を含む構造体は、以下の方法により作成した。ポリγ-グルタミン酸500mg(和光純薬)と水酸化カルシウム128mg(和光純薬)を3.0mlの蒸留水に溶かし、その後3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン183mg(アルドリッチ社)を添加し、室温で2.5時間撹拌を行った。その後、ヘミン(東京化成)を1当量結合し4本鎖構造をとった添付配列表に開示するDNA(T30695、5’-GGGTGGGTGGGTGGGT-3’)13mgを1.0mlの10mM Tris・HCl緩衝液(pH8)に溶かして添加し、そのまま30分撹拌を続けることにより、ヘミン結合DNA含有前駆体溶液を得た。この溶液を注射器に移し、シリンジポンプで溶液を押し出しながら電解紡糸を行うことにより不織布とした。ただし、このままでは水系溶媒に溶解してしまうため、50℃で6時間加熱処理を行うことにより、目的とする水に不溶な核酸内包不織布を得た。その微細構造は、走査型電子顕微鏡により確認を行い、300nm程度の均一な直径を持つことが確認された(図2参照)。

【0050】
(第3実施形態)
ヘミン結合DNAを内包した不織布の酸化酵素活性に関しては、以下の方法で検討を行った。酸化反応の基質として、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリンナトリウム塩、4-アミノアンチピリンを選択し、それぞれを3.3mMずつ含む水溶液を、0.6cm四方に切ったヘミン結合DNAを内包した不織布へ、70μLスポットした。その後、過酸化水素を0-11.1mM含む水溶液をスポットした。その結果、不織布のナノファイバー内部に固定化されたヘミン結合DNAが酸化酵素としての活性を維持しているために、N-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリンナトリウム塩と4-アミノアンチピリンが不織布のファイバー内部に存在するヘミン結合DNAに到達し、これらの間の酸化縮合が起こることにより、紫色の発色(555nmに最大吸収波長)が見られた(図3参照)。ちなみに、ヘミン結合DNAを内包していない不織布では、過酸化水素によるN-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリンナトリウム塩と4-アミノアンチピリンの酸化縮合はみられなかった。また、酸化酵素として働く蛋白質であるペルオキシダ-ゼを用いることにより、過酸化水素によるN-エチル-N-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3-メチルアニリンナトリウム塩と4-アミノアンチピリンの酸化縮合が進むことは先行文献により報告されている(Chem. Pharm. Bull. 30, 2492(1982))。

【0051】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は前記実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
医療分野における臨床検査において濾紙又は分離膜、酵素反応を利用した臨床検査キットの形態で利用できる。また、生活に必要な衣類(衣服、カーテン等)に機能を持たせた形態で利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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