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明細書 :可撓性基板へのグラフェン転写方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-132610 (P2016-132610A)
公開日 平成28年7月25日(2016.7.25)
発明の名称または考案の名称 可撓性基板へのグラフェン転写方法
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
C23C  16/01        (2006.01)
C23C  16/26        (2006.01)
FI C01B 31/02 101Z
C23C 16/01
C23C 16/26
請求項の数または発明の数 1
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2015-010454 (P2015-010454)
出願日 平成27年1月22日(2015.1.22)
発明者または考案者 【氏名】カリタ ゴラップ
【氏名】種村 眞幸
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
4K030
Fターム 4G146AA01
4G146AB07
4G146AC16B
4G146AC20B
4G146AD08
4G146AD22
4G146BA11
4G146BA31
4G146BC09
4G146BC23
4G146BC25
4G146BC26
4G146BC34B
4G146BC43
4G146CB03
4G146CB11
4G146CB12
4G146CB15
4G146CB34
4G146CB37
4K030AA09
4K030AA16
4K030AA17
4K030BA27
4K030CA02
4K030DA08
4K030FA10
要約 【課題】有機溶媒を使用することなく、可撓性基板へのグラフェン転写プロセスにおいて、簡単、かつ効果的な転写方法を提供する。
【解決手段】金属基板14上にCVD法によりグラフェン膜を形成した後、この金属基板14を可撓性基板16上に低温ホットプレス法により固着させた後、金属基板を除去し、さらに金属残渣を溶剤により除去した後、乾燥させることを特徴とする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
金属基板上にCVD法によりグラフェン膜を形成した後、
この金属基板を可撓性基板上に低温ホットプレス法により固着させた後、
金属基板を除去し、さらに金属残渣を溶剤により除去した後、
乾燥させる
ことを特徴とする可撓性基板へのグラフェン転写方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性基板へグラフェンを転写する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラフェンは、炭素原子が六角形に繋がった平面構造であって化学的に安定しており、透明で、かつバリスティック伝導性、大電流密度耐性、等の優れた電気特性を持つことから、透明電極あるいは高移動度のFETなどの電子デバイスに利用可能な材料として注目されている。
【0003】
グラフェン膜としては単層、二層、あるいは数~数十層のものが知られている。
【0004】
グラフェン膜の製造方法としては、テープを用い、グラファイトから基板にグラフェンを転写する方法が知られている。
【0005】
しかしながら、この方法では大面積のグラフェン膜の作製が困難であり、大面積化に向けて、炭化ケイ素(SiC)から選択的にSiを除く方法、あるいはCVD(化学気相成長)法が採用されている。
【0006】
CVD法によりグラフェン膜を形成する方法として、キャリアガスとしてアルゴンガスを流しながら、炭素源、特に樟脳を熱分解させ、加熱したNi等の基板上に、20~35層のグラフェン積層体を形成することが知られている(特許文献1参照)。
【0007】
樟脳の供給量が少なく、基板温度が高いとグラフェン積層体を合成できるとしている。
【0008】
金属基板上へのCVD法による単層あるいは数層のグラフェン形成の大面積化の研究もなされ、メタンガスの流量を多くした大気圧中で、銅箔上に六角形状ドメインの層数の少ないグラフェン膜が形成されること(非特許文献1参照)、一方、同じく金属箔上に、低メタン分圧で、大きなサイズの六角形状ドメインの単層グラフェン膜が形成されることも知られている。
【0009】
このグラフェンドメイン群をmm幅の大きさに成長させることにより11000cm-1-1という大きなキャリア移動度が得られることが確認されている(非特許文献2参照)。
【0010】
ドメイン状とは、基板表面に島状(アイランド状)の単結晶グラフェン膜(ドメイン)が複数個独立して存在している状態を示す。
【0011】
しかし、上記従来の方法では、六角形等の規則正しい形状の多数層からなるグラフェンが安定的に得られなかった。
【0012】
このため、金属基板からプラスチック等の樹脂基板へ転写する場合には、何度も転写作業を繰り返さなければならず、煩雑であるばかりか、転写品質が良くなかった。
【先行技術文献】
【0013】

【特許文献1】特許第4804272号公報
【0014】

【非特許文献1】A. W. Robertson, J. H. Warner, Nano Lett. 2011, 11, 1182-1189.
【非特許文献2】Z. Yan, J. Lin, Z. Peng, Z. Sun, Y. Zhu, L. Li, C. Xiang, E. L. Samuel,C. Kittrell, and J. M. Tour, ACS Nano 2012,6, 9110.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は上記欠点に鑑み、有機溶媒を使用することなく、可撓性基板へグラフェンを、簡単、かつ効果的に転写する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、金属基板にCVD法によりグラフェン膜を形成した後、この金属基板を、有機溶媒を使用することなく、可撓性基板に低温ホットプレス法により固着させ、金属基板を除去し、さらに金属残渣を溶剤により除去した後、乾燥させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るグラフェン転写方法を示す模式図である。
【図2】同、各工程を示す画像写真であり、(a)はセルロース・アセテート基板をアセトン溶液に浸漬させた状態、(b)はセルロース・アセテート基板へのグラフェン膜形成工程、を示す。
【図3】(a)(b)はグラフェン膜のラマンスペクトル、(c)はグラフェン膜とセルロース・アセテート基板の特徴を示すグラフである。
【図4】グラフェン膜の顕微鏡写真画像であり、(a) は中央部、(b)は端部、(c) はセルロース・アセテート基板に形成されたグラフェン膜、を示す。
【図5】原子間力顕微鏡による写真画像であり、セルロース・アセテート基板を被覆した(a) は基板、(b)はグラフェン膜を示す。
【図6】(a)は2端子プローブ法により測定したセルロース・アセテート基板上に形成したグラフェン膜の電流-電圧 (i-v) 特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明に係るグラフェン転写方法の実施形態について説明する。

【0019】
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限り、変更、修正、改良を加え得るものである。

【0020】
円筒状容器内でキャリアガスを流す方向の上流側に昇華あるいは蒸発させる原料を配置し、下流側に金属基板を配置する。

【0021】
すなわち、本発明の転写方法においては、上流側に炭素源の化合物、下流側に金属基板を配置させる。

【0022】
上流側を加熱して前記炭素源の化合物を蒸気化し、加熱された下流側に少なくともアルゴンと水素とを含むキャリアガスにより前記蒸気を導き、下流側において、前記化合物を金属基板上で熱分解させることにより、金属基板の表面にドメイン形状のグラフェンあるいは金属基板全体に連続したグラフェン膜を形成する。

【0023】
本発明において、金属基板がキャリアガスの流れる方向に対して、10°~80°傾斜していることが好ましく、キャリアガスの導入側(金属基板表面側)と反対側の、炭素化合物の蒸気の少ない金属基板裏面に、グラフェンを形成することがより好ましい。

【0024】
一方、炭素原子の量を減らすことにより、金属基板表面側にドメイン形状のグラフェンを成長させることもできる。

【0025】
すなわち、基板面近傍のガス圧がグラフェン形状を左右する。

【0026】
キャリアガスとして、アルゴンガスに対する水素ガスの流量比が0.020~0.20であり、容器内減圧でも良いが、大気圧であることがより好ましい。

【0027】
金属基板としては、少なくともその表面に、Cu、Fe、Co、Niのいずれかまたはそれらの合金、またはそれらの化合物、炭化ケイ素、あるいは白金その他の貴金属が形成されていることが好ましい。

【0028】
なお、金属基板は600℃~1100℃に加熱することが好ましい。

【0029】
金属基板に形成されるグラフェンは、六角形、円形、リボン形状のドメイン構造であることが好ましく、あるいは金属基板面全域に連続した膜であってもよい。

【0030】
その後、このグラフェン形成された金属基板を、有機溶媒を使用することなく、可撓性基板に低温ホットプレス法により固着させる。

【0031】
その後、金属基板を除去し、さらに金属残渣を溶剤により除去する。

【0032】
最後に、乾燥させる。
【実施例1】
【0033】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
まず、大気圧CVD法によりグラフェン膜を、炭素源としての樟脳を用いて金属基板14である銅箔上に、形成させる。
【実施例1】
【0035】
本例において、グラフェン膜は、アルゴンと水素それぞれの流量を98 sccm と2.5 sccmとした混合ガスを用いて1020 ℃で形成した。
【実施例1】
【0036】
この転写プロセスにより、金属基板14上に形成されたグラフェン膜は、可撓性基板16であるCellulose acetate(セルロース・アセテート:以下「CA」という。)、ポリ塩化ビニルまたはポリテトラフルオロエチレン基板上に、約200℃でホットプレス法により、固着させる。
【実施例1】
【0037】
本例において、炭素源として、植物由来の樟脳の固体粉末を使用しており、樟脳の分子構造はグラフェン12の成長に影響し、炭素の六員環、炭化水素、および酸素を含む化合物であるため、約200℃での加熱により容易に昇華する。
【実施例1】
【0038】
図1に示すように、グラフェン膜は、CA基板上に転写される。
【実施例1】
【0039】
このように、CA、またはポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレンは低いガラス転移温度 (ガラス転移点)であり、ホットプレス中にグラフェンを固着することができる。
【実施例1】
【0040】
その後、硝酸鉄溶液(10 mg/mlのFe(NO3)3)中に、積層されたCA/グラフェン/銅が浸漬される。
【実施例1】
【0041】
銅のエッチングが完了すると、グラフェンは、CA基板表面に固着された状態となる。
【実施例1】
【0042】
ただし、この手順では硝酸鉄溶液中に、銅の残渣が、グラフェン/CA 基板上に残る。
【実施例1】
【0043】
金属基板を除去し、さらに残渣である金属不純物は、使用し易い希薄硝酸溶液によって除去する。
【実施例1】
【0044】
本例において、希薄硝酸溶液は10%希釈 HNOであり、他の無機酸を使用することも可能である。
【実施例1】
【0045】
最後に、このようにして得られた形成物を、純水で数回洗浄し、真空チャンバー内で乾燥させる。
【実施例1】
【0046】
グラフェン膜を確認するため、電子顕微鏡・光学顕微鏡観察およびラマン分光を行った。
【実施例1】
【0047】
本例において、電子顕微鏡はVHX-500を使用した。
【実施例1】
【0048】
また、ラマン分光解析は、532nm固体レーザー励起子エネルギーとNRS-3300レーザーラマン分光光度計を使用して行った。
【実施例1】
【0049】
また、電子顕微鏡解析については、日立社製S-4300を使用した。
【実施例1】
【0050】
また、原子間力顕微鏡解析は、JSPM-5200走査型プローブ顕微鏡を使用した。
【実施例1】
【0051】
また、CA基板上のグラフェン薄膜のシート抵抗は、RT-70V/RG-7C(Napson社製)を使用して4端子プローブ法により測定した。
【実施例1】
【0052】
その測定、解析結果を以下に説明する。
【実施例1】
【0053】
図2(a)に示すように、アセトン溶液下ではCA基板が溶解する。
【実施例1】
【0054】
ホットプレス法による対象基板は、成形温度に大きく影響されるため、CA基板の成形温度を、その分子量によって約125-215℃とし、CA基板にグラフェン膜を形成させた。
【実施例1】
【0055】
ホットプレスの押圧は、試験基板のアタッチメントに影響され易いため、同一アタッチメントにて繰返し行った。
【実施例1】
【0056】
その後、銅はグラフェン膜を変形させることなく鉄硝酸溶液によりエッチングされる。
【実施例1】
【0057】
このグラフェン膜は当初のCA基板よりも黒くなった。
【実施例1】
【0058】
このプロセスは、複数グラフェン膜層毎の基板への転写にも採用可能である。
【実施例1】
【0059】
図3に示すように、ラマン拡散ピークは、Gと2Dの2カ所、それぞれ1584と2695cm-1にて観察された。
【実施例1】
【0060】
単層および数層グラフェンに対応する、I/I2Dピーク強度比は、様々な位置で異なることが判明した。
【実施例1】
【0061】
CA基板表面へ転写されたグラフェン膜のラマンスペクトルを調べた。
【実施例1】
【0062】
CA基板として使用される材料は、857、1670、2972cm-1で最も顕著なラマン特性が表れた。
【実施例1】
【0063】
この転写グラフェン試料では、CAラマンピークの一つであるGピークは、1590cm-1で観測された。
【実施例1】
【0064】
しかし、CA基板にはない、グラフェンの強大な2Dピークを観察することができた。
【実施例1】
【0065】
CA基板を被覆した全域で、グラフェンのラマンピークを観察できた。
【実施例1】
【0066】
この実証プロセスでは、CVD(化学気相成長)法により銅箔上に形成された、グラフェン膜を、CA基板上に、単層および数層転写できた。
【実施例1】
【0067】
図4に示すように、光学顕微鏡観察によれば、変形しないグラフェン膜が保持されたCA基板は、ポリテトラフルオロエチレン支持層に転写したグラフェン膜に類似している。
【実施例1】
【0068】
また、結晶粒界のいくつかは転写されたグラフェン膜の端部に表れる。
【実施例1】
【0069】
グラフェン膜の連続性は、CA基板上の導電層としての応用、またはろ過の目的のためには、重要となる。
【実施例1】
【0070】
図4(c)に示すように、グラフェン膜に気孔は確認できなかった。
【実施例1】
【0071】
図5に示すように、表面粗さ約24nmの グラフェン膜が得られた。
【実施例1】
【0072】
他の基板と同様、CA基板にはCVD法により成形したグラフェン膜の典型的な小さなしわを確認できた。
【実施例1】
【0073】
CAの形態変化により、良好なグラフェン膜を確認できた。
【実施例1】
【0074】
図6に示すように、2端子プローブ法による電流電圧曲線は、高バイアス電圧(20 V) でも飽和しない典型的なi-v曲線形状である。
【実施例1】
【0075】
このi-v曲線形状は、その他様々なグラフェン転写基板と類似の電気特性を示している。
【実施例1】
【0076】
グラフェン膜基板抵抗を3KΩ/Sqとして4端子プローブ法により測定したところ、CA基板は水滴を直ぐに吸水するという高親水性であり、グラフェン膜を形成したCA基板の接触角は78oであった。
【実施例1】
【0077】
この大きな接触角は、グラフェン膜転写後のCA基板の疎水性を表している。
【実施例1】
【0078】
このように、CAまたはポリ塩化ビニルの可撓性基板へのホットプレス法による成形において、CVD法による大面積グラフェン膜の転写を実証することができた。
【実施例1】
【0079】
CA基板上のグラフェン膜は連続しており、また高導電性であり、電子デバイスとして効果的である。
【実施例1】
【0080】
本発明に係る転写方法は、有機溶剤を使用しない成形基板材料上へのグラフェン転写に効果的である
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の転写方法によって得られたグラフェンは透明電極あるいは電子デバイス等に利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
12 グラフェン
14 金属基板
16 可撓性基板



図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5