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明細書 :電気泳動可視化装置、電気泳動槽、電気泳動可視化システム、電気泳動可視化方法、分離対象混合物の分析方法、分離対象混合物の分離方法および分離物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-238266 (P2014-238266A)
公開日 平成26年12月18日(2014.12.18)
発明の名称または考案の名称 電気泳動可視化装置、電気泳動槽、電気泳動可視化システム、電気泳動可視化方法、分離対象混合物の分析方法、分離対象混合物の分離方法および分離物の製造方法
国際特許分類 G01N  27/447       (2006.01)
FI G01N 27/26 301C
G01N 27/26 325B
請求項の数または発明の数 19
出願形態 OL
全頁数 23
出願番号 特願2013-119320 (P2013-119320)
出願日 平成25年6月5日(2013.6.5)
発明者または考案者 【氏名】村上 聡
【氏名】森 勇介
【氏名】安達 宏昭
出願人 【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100115255、【弁理士】、【氏名又は名称】辻丸 光一郎
【識別番号】100129137、【弁理士】、【氏名又は名称】中山 ゆみ
【識別番号】100154081、【弁理士】、【氏名又は名称】伊佐治 創
審査請求 未請求
要約 【課題】 電気泳動像をリアルタイムで可視化できて、短時間に分析可能である電気泳動可視化装置、電気泳動可視化システムおよび電気泳動可視化方法を提供する。
【解決手段】
光源1と、集光レンズ5と、結像レンズ6と、スクリーン7とを有し、
光源1から射出された光2を、固定相8に照射し、
照射光を、固定相8への照射前または照射後に、集光レンズ5で集光し、
固定相8への照射および前記集光後の光を、結像レンズ6に照射して固定相8の像を結び、
結像レンズ6により結んだ像をスクリーン7により可視化する、
電気泳動可視化装置であって、
さらに、結像レンズ6における結像面を、最良像面に対し、結像レンズ6に照射される光の光軸方向にずらすためのデフォーカス手段を有することを特徴とする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
光源と、集光レンズと、結像レンズと、スクリーンとを有し、
前記光源から射出された光を、電気泳動の固定相に照射し、
前記照射光を、前記固定相への照射前または照射後に、前記集光レンズで集光し、
前記固定相への照射および前記集光後の光を、前記結像レンズに照射して前記固定相の像を結び、
前記結像レンズにより結んだ像を前記スクリーンにより可視化する、
電気泳動可視化装置であって、
さらに、前記結像レンズにおける結像面を、最良像面に対し、前記結像レンズに照射される光の光軸方向にずらすためのデフォーカス手段を有することを特徴とする、電気泳動可視化装置。
【請求項2】
さらに、前記固定相の相対位置を、前記固定相に照射される光の光軸に対して垂直方向にずらすためのスライド手段を有することを特徴とする請求項1記載の電気泳動可視化装置。
【請求項3】
前記光源が、半導体発光素子であることを特徴とする請求項1または2記載の電気泳動可視化装置。
【請求項4】
さらに、コリメートレンズを含み、
前記コリメートレンズにより、前記光源から射出された光を平行光化し、
前記コリメートレンズと前記集光レンズとの間に前記固定相を配置して前記平行光を照射する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の電気泳動可視化装置。
【請求項5】
前記コリメートレンズに代えて、光を平行光化する鏡を有する請求項4記載の電気泳動可視化装置。
【請求項6】
前記集光レンズに代えて、集光機能を備えた鏡を有する請求項1から5のいずれか一項に記載の電気泳動可視化装置。
【請求項7】
前記結像レンズに代えて、結像機能を備えた鏡を有する請求項1から6のいずれか一項に記載の電気泳動可視化装置。
【請求項8】
前記電気泳動における固定相の像をリアルタイムで可視化することが可能である請求項1から7のいずれか一項に記載の電気泳動可視化装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電気泳動可視化装置において、前記固定相を格納して固定するための電気泳動槽であり、
前記照射光を透過させるための開口部を有し、
前記開口部の横幅が約85mm以上であり、高さが約75mm以上である電気泳動槽。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電気泳動可視化装置と、
前記スクリーンにより可視化された画像を撮像し、データとして取得する画像取得手段と、
取得した前記画像を処理する画像処理手段とを有することを特徴とする電気泳動可視化システム。
【請求項11】
光源から光を射出する光射出工程と、
電気泳動の固定相に前記光を照射する光照射工程と、
前記固定相を透過する前または透過した後の前記光を集光する集光工程と、
前記光照射工程および前記集光工程後の光を用いて前記固定相の像を結ぶ結像工程と、
前記固定相の像を可視化する可視化工程とを含む、
電気泳動可視化方法であって、
さらに、前記結像工程において、結像面を、最良像面に対し、前記結像レンズに照射される光の光軸方向にずらすデフォーカス工程を含むことを特徴とする電気泳動可視化方法。
【請求項12】
さらに、前記固定相の前記平行光に対する相対位置を、前記固定相に照射される前記平行光の光軸に対して垂直方向にずらすスライド工程を有することを特徴とする請求項11記載の電気泳動可視化方法。
【請求項13】
前記光源が、半導体発光素子であることを特徴とする請求項11または12記載の電気泳動可視化方法。
【請求項14】
さらに、前記光源から射出された光を平行光化する平行光化工程を含み、
前記平行光を前記固定相に照射し、
前記集光工程において、前記固定相を透過した後の前記光を集光することを特徴とする請求項11から13のいずれか一項に記載の電気泳動可視化方法。
【請求項15】
さらに、前記スクリーンにより可視化された画像を撮像し、データとして取得する画像取得工程と、
取得した前記画像を処理する画像処理工程とを有することを特徴とする請求項11から14のいずれか一項に記載の電気泳動可視化方法。
【請求項16】
前記電気泳動における固定相の像をリアルタイムで可視化することが可能である請求項11から15のいずれか一項に記載の電気泳動可視化方法。
【請求項17】
分離対象混合物の分析方法であって、
前記分離対象混合物を電気泳動の固定相中で分離する分離工程と、
前記固定相の像を、請求項11から16のいずれか一項に記載の電気泳動可視化方法により可視化する電気泳動可視化工程とを含むことを特徴とする分析方法。
【請求項18】
分離対象混合物の分離方法であって、
前記分離対象混合物を電気泳動の固定相中で分離する分離工程と、
前記固定相の像を、請求項11から16のいずれか一項に記載の電気泳動可視化方法により可視化する電気泳動可視化工程とを含むことを特徴とする分離方法。
【請求項19】
分離対象混合物を分離して分離物を製造する方法であって、
前記分離方法が、請求項18記載の分離方法であることを特徴とする製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動可視化装置、電気泳動槽、電気泳動可視化システム、電気泳動可視化方法、分離対象混合物の分析方法、分離対象混合物の分離方法および分離物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、核酸等の分離方法としては、PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)等の電気泳動法が広く一般に用いられている。電気泳動後の、混合物の分離状態は、例えば、電気泳動ゲルを、クーマシーブリリアントブルーや臭化エチジウム等の染色剤で染色して観察することができる(非特許文献1等)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Meyer, T.S., Lambert, B.L., "Use of Coomassie brilliant blue R250 for the electrophoresis of microgram quantities of parotid saliva proteins on acrylamide-gel strips", Biochim. Biophys. Acta 107, 144-145 (1965)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の方法は、電気泳動および染色に時間がかかるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、前記電気泳動における固定相の像(以下、単に「電気泳動像」ということがある)をリアルタイムで可視化できて、短時間に分析可能である電気泳動可視化装置、電気泳動槽、電気泳動可視化システム、電気泳動可視化方法、分離対象混合物の分析方法、分離対象混合物の分離方法および分離物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の電気泳動可視化装置は、
光源と、集光レンズと、結像レンズと、スクリーンとを有し、
前記光源から射出された光を、電気泳動の固定相に照射し、
前記照射光を、前記固定相への照射前または照射後に、前記集光レンズで集光し、
前記固定相への照射および前記集光後の光を、前記結像レンズに照射して前記固定相の像を結び、
前記結像レンズにより結んだ像を前記スクリーンにより可視化する、
電気泳動可視化装置であって、
さらに、前記結像レンズにおける結像面を、最良像面に対し、前記結像レンズに照射される光の光軸方向にずらすためのデフォーカス手段を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の電気泳動槽は、前記本発明の電気泳動可視化装置において、前記固定相を格納して固定するための電気泳動槽であり、
前記照射光を透過させるための開口部を有し、
前記開口部の横幅が約85mm以上であり、高さが約75mm以上である電気泳動槽である。
【0008】
本発明の電気泳動可視化システムは、
前記本発明の電気泳動可視化装置と、
前記スクリーンにより可視化された画像を撮像し、データとして取得する画像取得手段と、
取得した前記画像を処理する画像処理手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の電気泳動可視化方法は、
光源から光を射出する光射出工程と、
電気泳動の固定相に前記光を照射する光照射工程と、
前記固定相を透過する前または透過した後の前記光を集光する集光工程と、
前記光照射工程および前記集光工程後の光を用いて前記固定相の像を結ぶ結像工程と、
前記固定相の像を可視化する可視化工程とを含む、
電気泳動可視化方法であって、
さらに、前記結像工程において、結像面を、最良像面に対し、前記結像レンズに照射される光の光軸方向にずらすデフォーカス工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明による、分離対象混合物の分析方法は、
前記分離対象混合物を電気泳動の固定相中で分離する分離工程と、
前記固定相の像を、前記本発明の電気泳動可視化方法により可視化する電気泳動可視化工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明による、分離対象混合物の分離方法は、
前記分離対象混合物を電気泳動の固定相中で分離する分離工程と、
前記固定相の像を、前記本発明の電気泳動可視化方法により可視化する電気泳動可視化工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明による、分離物の製造方法は、
分離対象混合物を分離して分離物を製造する方法であって、
前記分離方法が、前記本発明の分離方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電気泳動可視化装置、電気泳動槽、電気泳動可視化システム、電気泳動可視化方法、分離対象混合物の分析方法、分離対象混合物の分離方法および分離物の製造方法によれば、電気泳動像をリアルタイムで可視化できて、短時間に分析可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の装置の別の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の装置のさらに別の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の装置のさらに別の一例を示す模式図である。
【図5】シュリーレン法により可視化した電気泳動ゲルの画像の一例を示す写真である。
【図6】本発明により可視化した電気泳動ゲルの画像の例を示す写真である。
【図7】本発明による画像処理の一例を示す写真である。
【図8】本発明による画像処理の別の一例を示す写真である。
【図9】本発明により可視化した電気泳動ゲルの画像の別の例を示す写真である。
【図10】本発明により可視化した電気泳動ゲルの画像の例を、従来法と対比して示す写真である。
【図11】本発明により可視化した電気泳動ゲルの画像の経時変化の例を示す写真である。
【図12】本発明により可視化した電気泳動ゲルの画像のさらに別の例を示す写真である。
【図13】分離対象混合物を本発明により分離して得た分離物を電気泳動し、染色した電気泳動ゲルの画像を示す写真である。
【図14】図14(a)は、一般的な電気泳動槽の構造の一例を模式的に示す正面図であり、図14(b)は、本発明の電気泳動槽の構造の一例を模式的に示す正面図である。
【図15】図15は、図14(b)の電気泳動槽の構造を示す図であり、図15(a)は正面図、図15(b)は平面図(上面図)、図15(c)は側面図である。
【図16】シュリーレン法による電気泳動可視化装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について例をあげてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。

【0016】
本発明者らは、まず、混合物の電気泳動による分離状態をリアルタイムで可視化して観察し、短時間に分析するための方法として、シュリーレン法に着目した。図16に、前記シュリーレン法を実施するための装置の一例を示す。図示のとおり、この装置は、光源1と、コリメートレンズ4と、集光レンズ5と、結像レンズ6と、スクリーン7と、ナイフ20とを含む。光源1から射出した光2を、コリメートレンズ4で平行光化する。コリメートレンズ4と集光レンズ5との間に、電気泳動ゲル8を、前記平行光の光軸3に対し垂直に配置し、前記平行光を照射する。電気泳動ゲル8を透過した後の前記平行光を、集光レンズ5で集光する。集光レンズ5により集光した光の焦点付近に、ナイフ20のエッジを配置する。ナイフ20のエッジを透過した光を、結像レンズ6に照射して電気泳動ゲル8の像を結び、その像をスクリーン7に照射して可視化する。電気泳動ゲル8中に、他の部分と屈折率の異なる部分があるときは、その部分を透過した光は、屈折してナイフ20のナイフエッジにさえぎられるように曲げられるか、または反対方向に曲げられる。そのため、電気泳動ゲル8中における前記屈折率の異なる部分が、他の部分と比較して暗くまたは明るく見える。このようにして、電気泳動ゲル8中における、混合物の分離状態を観察できる。

【0017】
前記シュリーレン法によれば、前述のとおり、ナイフエッジを用いることにより、電気泳動の固定相(以下、単に「固定相」という場合がある。具体的には、例えばゲル等があげられる。)中の屈折率差の検出感度が向上する。しかし、固定相そのものに、分離対象の混合物またはその分離物に由来しない屈折率差があると、可視化された像に明るさのムラが生じ、前記混合物または分離物由来の屈折率差の検出の障害となる。前記ナイフを外すと、固定相自体の屈折率差に由来する前記明るさムラは解消されるが、前記混合物または分離物由来の屈折率差の検出感度が低下する。

【0018】
本発明者らは、この課題に着目し、固定相自体の屈折率差に由来する明るさムラを解消し、かつ、分離対象の混合物またはその分離物由来の屈折率差を高感度で検出するために検討を重ねた。その結果、本発明者らは、本発明に到達した。なお、本発明において、電気泳動における固定相の像(電気泳動像)は、固定相に被分離物質(例えば、タンパク質、核酸等)が吸着された状態の像でもよいし、吸着されていない状態の像でもよい。また、本発明において、電気泳動像は、被分離物質が固定相上において分離された状態の像でもよいし、分離されていない状態の像でもよい。例えば、固定相上における被分離物質の展開(分離)が進行していない場合において、前記固定相上の、前記被分離物質が吸着されていない部分の像を、「電気泳動像」として観察することがある。

【0019】
本発明の電気泳動可視化装置は、さらに、前記固定相の相対位置を、前記固定相に照射される光の光軸に対して垂直方向にずらすためのスライド手段を有することが好ましい。

【0020】
本発明の電気泳動可視化装置において、前記光源が、半導体発光素子であることが好ましい。

【0021】
本発明の電気泳動可視化装置は、さらに、コリメートレンズを含み、前記コリメートレンズにより、前記光源から射出された光を平行光化し、前記コリメートレンズと前記集光レンズとの間に前記固定相を配置して前記平行光を照射することが好ましい。

【0022】
本発明の電気泳動可視化装置は、前記コリメートレンズに代えて、光を平行光化する鏡を有していてもよい。

【0023】
本発明の電気泳動可視化装置は、前記集光レンズに代えて、集光機能を備えた鏡を有していてもよい。

【0024】
本発明の電気泳動可視化装置は、前記結像レンズに代えて、結像機能を備えた鏡を有していてもよい。

【0025】
本発明の電気泳動可視化方法は、さらに、前記固定相の前記平行光に対する相対位置を、前記固定相に照射される前記平行光の光軸に対して垂直方向にずらすスライド工程を有することが好ましい。

【0026】
本発明の電気泳動可視化方法において、前記光源が、半導体発光素子であることが好ましい。

【0027】
本発明の電気泳動可視化方法は、さらに、前記光源から射出された光を平行光化する平行光化工程を含み、前記平行光を前記固定相に照射し、前記集光工程において、前記固定相を透過した後の前記光を集光することが好ましい。

【0028】
本発明の電気泳動可視化方法は、さらに、前記スクリーンにより可視化された画像を撮像し、データとして取得する画像取得工程と、取得した前記画像を処理する画像処理工程とを有することが好ましい。

【0029】
なお、本発明の電気泳動可視化方法を実施するための装置等は、特に限定されないが、本発明の電気泳動可視化装置または本発明の電気泳動可視化システムが好ましい。

【0030】
[実施形態1]
図1に、本発明の電気泳動可視化装置の一例を、模式的に示す。図示のとおり、この電気泳動可視化装置は、光源1と、コリメートレンズ4と、集光レンズ5と、結像レンズ6と、スクリーン7とを含む。光源1から射出した光2を、コリメートレンズ4で平行光化する。コリメートレンズ4と集光レンズ5との間に、固定相8を、前記平行光の光軸3に対し垂直に配置し、前記平行光を照射する。固定相8を透過した後の前記平行光を、集光レンズ5で集光する。集光した光を、結像レンズ6に照射して固定相8の像を結び、その像をスクリーン7に投影して可視化する。なお、図1の電気泳動可視化装置に、さらに、スクリーン7により可視化された画像を撮像し、データとして取得する画像取得手段(図示せず)と、取得した前記画像を処理する画像処理手段(図示せず)とを加え、本発明の電気泳動可視化システムを構築してもよい。前記画像取得手段は、特に制限されず、例えば、適宜なカメラ等であってもよい。図1において、結像レンズ6およびスクリーン7が、前記画像取得手段(カメラ)の一部であってもよい。また、前記画像処理手段も特に制限されず、例えば、コンピュータ(PC等)に適宜な画像処理プログラムをインストールしたものでよく、さらに、モニター等を含んでいてもよい。

【0031】
なお、固定相8は、例えば、電気泳動槽に格納された状態であってもよい。本発明において、「電気泳動槽」は、固定相の入れ物をいい、具体的には、例えば、前記固定相を格納して固定するための電気泳動槽であり、前記照射光を透過させるための開口部を有する。本発明において、電気泳動槽は、特に限定されず、例えば、一般的な電気泳動槽と同じであってもよい。しかし、本発明の電気泳動可視化装置に用いる電気泳動槽は、前記照射光を透過させるための開口部が、一般的な電気泳動槽よりも大きい前記本発明の電気泳動槽であることが、前記固定相の像をさらに可視化しやすいため好ましい。図14の正面図に、一般的な電気泳動槽および本発明の電気泳動槽の構造の一例を模式的に示す。図14(a)は、一般的な電気泳動槽を正面から見た構造の一例の模式図である。図示のとおり、この電気泳動槽100は、そのほぼ中心部に、前記照射光を透過させるための開口部101が設けられている。電気泳動槽100の下部にはホルダ102が、上部にはストッパ103がそれぞれ設けられており、ホルダ102で前記固定相の上部を挟むとともに、ストッパ103で前記固定相の下部を挟んで固定することができる。ホルダ102の右端とストッパ103の右端、および、ホルダ102の左端とストッパ103の左端は、それぞれ、フレーム(枠)104で連結されている。開口部101は、左右をフレーム104で、下方をホルダ102で、上方をストッパ103で、それぞれ囲まれている。一方、図104(b)は、本発明の電気泳動槽を正面から見た構造の一例の模式図である。また、図15に、図14(b)の電気泳動槽200の正面図、平面図(上面図)および側面図を示す。図15(a)が正面図であり、図15(b)が平面図(上面図)であり、図15(c)が側面図である。図示のとおり、この電気泳動槽200は、開口部101に代えて開口部201を、ホルダ102に代えてホルダ202を、ストッパ103に代えてストッパ203を、フレーム104に代えてフレーム204を、それぞれ有する。本発明の電気泳動槽200の開口部201は、一般的な電気泳動槽100の開口部101と比較して、幅Wおよび高さhが大きくなっている。また、本発明の電気泳動槽200のフレーム204は、一般的な電気泳動槽100のフレーム104と比較して、幅が狭くなっている。なお、図15においては、各部の寸法を、数値(mm)で表しているが、これらは一例に過ぎず、本発明の電気泳動槽は、これに限定されない。また、図14(b)および図15の構造は、本発明の電気泳動槽の構造の一例であり、本発明の電気泳動槽の構造は、これに限定されない。

【0032】
本発明の電気泳動槽は、前記開口部の幅(横幅)が約85mm以上であり、高さが約75mm以上である。本発明の電気泳動槽は、このように、前記開口部の寸法が大きいことにより、前記透過光が透過しやすい。これにより、電気泳動像が、より鮮明となり、電気泳動像をリアルタイムで可視化することが、さらに行いやすくなる。本発明の電気泳動槽における前記開口部の横幅は、好ましくは約90mm以上であり、上限は特に限定されないが、例えば450mm以下、好ましくは300mm以下、より好ましくは150mm以下である。本発明の電気泳動槽における前記開口部の高さは、好ましくは約90mm以上であり、上限は特に限定されないが、例えば450mm以下、好ましくは300mm以下、より好ましくは150mm以下である。また、本発明の電気泳動槽においては、前記開口部の枠(図14(b)および図15では、フレーム204)の幅がなるべく小さいことが、前記枠(フレーム)が影を作りにくいため、電気泳動像が、より鮮明となり、電気泳動像をリアルタイムで可視化することが、さらに行いやすく好ましい。ただし、電気泳動槽の強度の観点からは、前記開口部の枠(フレーム)の幅は、小さすぎない方がよい。本発明の電気泳動槽において、前記開口部の枠(フレーム)の幅は、特に限定されないが、例えば約10~約15mm、好ましくは約12~約13mmである。

【0033】
光源1とコリメートレンズ4との間には、例えば、偏光子(図示せず)を配置して偏光状態を規定してもよい。また、例えば、光源1から射出される光が、既に規定された偏光である場合(例えば、光源1が、既知で特定の偏光を発する発光ダイオード、レーザー等である場合)等は、前記偏光子を用いなくてもよい。また、例えば、結像レンズ6とスクリーン7との間、または、前記撮影手段(撮像装置)の光入射光付近に、検光子を配置し、固定相8上の混合物の分離物(例えば、タンパク質バンド)の検出感度を向上させてもよい。例えば、前記偏光子および前記検光子の透過軸を、パラレル(平行)またはクロスニコル(直交)の関係に配置することで、それぞれ、明視野または暗視野に相当する2種類の観察モードを得ることができる。例えば、この2種類の観察モードを適宜選択することで、最適の観察を行える。なお、偏光を用いた観察の場合、前記分離物(タンパク質バンド等)が、固定相との屈折率差のみならず、偏光を擾乱する性質を十分に有していることが、前記分離物の観察がしやすいため好ましい。

【0034】
図1の電気泳動可視化装置は、さらに、デフォーカス手段(図示せず)を有する。前記デフォーカス手段により、結像レンズ6における結像面を、最良像面に対し、結像レンズ6に照射される光の光軸方向にずらすことができる。なお、本発明において、「結像面」は、前記結像レンズ上において前記固定相の像が結ばれる面、すなわち、前記結像レンズの受光面をいう。また、「最良像面」は、前記固定相を透過した後で、かつ集光された後の光が、最も焦点の合った像を結ぶ面をいう。

【0035】
前記デフォーカス手段(デフォーカス工程)は、特に限定されず、例えば、集光レンズ5、固定相8、および結像レンズ6の少なくとも一つを、それらを透過する光の光軸方向に移動させる手段(工程)であってもよい。

【0036】
図5に、シュリーレン法により可視化した電気泳動ゲルの画像を例示する。同図において、左側の図が、その一例であり、右側の図は、別の一例である。図示のとおり、背景光(観測しようとする光以外の光)のムラにより、画像の明るさにムラが生じ、混合物およびその分離物(同図では、タンパク質)とゲルとの屈折率差検出の障害となっている。

【0037】
一方、ナイフ(ナイフエッジ)を外すことで、背景光由来の明るさムラは解消されるが、電気泳動ゲルの屈折率差の検出感度が大きく低下する。なお、以下において、ナイフ(ナイフエッジ)を用いないシュリーレン法(シュリーレン現象の観察)を、「シャドウグラフ法」という。本発明者らは、シャドウグラフ法において、デフォーカスを行うと、固定相(例えば、電気泳動ゲル)の屈折率差の検出感度が向上することを見出し、本発明に到達した。

【0038】
図6に、シャドウグラフ法により可視化した電気泳動ゲルの画像を例示する。同図は、タンパク質混合物を電気泳動ゲル上で分離した様子を示す画像(写真)である。同図において、上図(フォーカス:適正)は、前記結像レンズの結像面(受光面)を、最良像面に合わせたときの画像である。左下図(フォーカス:遠い)および右下図(フォーカス:近い)は、デフォーカスを行ったときの図であり、すなわち、本発明により可視化した電気泳動ゲルの画像である。図示のとおり、フォーカス(焦点)をずらすこと(デフォーカス)によって、ゲルの屈折率差の検出感度が向上し、タンパク質のバンドの存在を強調させることができる。なお、図6における「フォーカス:近い」とは、結像レンズをスクリーンに近づけたとき、すなわち,光学系における物体である固定相とスクリーンとの距離が、最良像面を構成するときに比べて大きいときをいう。「フォーカス:遠い」は、逆に、前記距離が、最良像面を構成するときに比べて小さいときをいう。

【0039】
また、本発明の電気泳動可視化装置は、ナイフ(ナイフエッジ)を用いない(シャドウグラフ法の)装置であることにより、前記集光レンズにより集光された光の焦点を、ナイフエッジに正確に合わせる必要がない。このため、光学部品に求められる面精度や位置精度の条件が緩和され、装置の小型化と低価格化にもつながる。

【0040】
ただし、デフォーカスを行うと、固定相(ゲル等)の屈折率差の検出感度は向上するが、像がぼける(分解能が低下する)。このため、本発明では、前述の画像処理手段または画像処理工程により、前記電気泳動像の分解能を向上させてもよい。これにより、電気泳動像の分解能と屈折率差の検出感度とを両立させることができる。前記画像処理手段は、特に限定されないが、例えば、コンピュータに適宜な画像処理プログラムをインストールしたものでよい。また、前記画像処理工程は、特に限定されないが、例えば、元画像(スクリーン上に投影した画像、またはそれをカメラで撮影した画像)に、(1)輝度調整処理、(2)フィルタ処理(フィルタリング)、および(3)着色処理を、前記順序で行ってもよい。図7の写真に、その一例を示す。なお、同図は、グレースケールで示しているが、実際の着色処理は、任意の色でカラー着色し、さらに画像を鮮明にしてもよい。また、このようにして高画質化後の画像を元に、例えば図8のように、バンドと思われる部分のみを抽出した画像を生成させてもよい。抽出範囲の設定は、例えば、オペレータが任意に指示することができる。

【0041】
なお、電気泳動像の分解能及び屈折率差の検出感度をさらに向上させるためには、例えば、以下のようにしてもよい。すなわち、まず、前記デフォーカス工程において、電気泳動像(固定相の画像)に対するデフォーカスを一定時間の周期で繰り返すと、例えば図6のような固定相の明暗の変化が、前記デフォーカスの周期に同期して繰り返される。この、既知の周期(前記一定時間の周期)で明暗の変化を繰り返す画像を、電気泳動像として注視する。そして、前記明暗の変化を繰り返す画像の中から、明暗変化が特定の空間方向で発生し、かつ適当なしきい値のコントラストを超える画像のみを選択する。そのように選択した画像のみに対し前記画像処理工程を実施することで、背景ノイズの除去及びバンド中心の位置づけが可能である。すなわち、この一連の処理は、時空間のフィルタとして働き、バンドを強調させることに貢献する。このようにして、分解能及び屈折率差の検出感度がさらに向上した電気泳動像を得ることができる。

【0042】
本発明では、このような画像処理によって、泳動方向に経時変化する画像成分に対し、泳動バンドの強調および抽出の一方または両方を行うことができる。これにより、固定相(例えばゲル)の汚れや不均一さによって画像に発生するノイズを抑圧することができる。さらに、前記画像処理工程における画像処理は、これらの処理に限定されず、任意である。

【0043】
なお、本発明において、前記固定相は、特に限定されず、一般的な電気泳動法と同様でもよく、例えば、電気泳動ゲル等があげられる。前記電気泳動ゲルは、特に限定されないが、例えば、ポリアクリルアミドゲル、アガロースゲル等があげられる。

【0044】
本発明の電気泳動可視化装置において、前記光源は、特に限定されない。例えば、前記光源は、ランプとピンホールとを組み合わせたもの、またはレーザー等を適宜用いてもよい。前記光源は、半導体発光素子を用いることが、前記光源および前記電気泳動可視化装置の小型化およびコスト低減の観点から好ましい。前記半導体発光素子は、LED(発光ダイオード)、LD(半導体レーザー)、SLD(スーパールミネッセントダイオード)等があげられ、LEDが特に好ましい。前記光源の発光領域のサイズは、特に制限されないが、例えば、光軸と垂直方向の径が数100μm程度またはそれ以下である。前記光源の発光領域のサイズは、検出感度の観点からは、大きすぎないことが好ましく、光の可干渉性に基づくノイズの発生を防止するためには、小さすぎないことが好ましい。前記光源の発光領域は、より具体的には、例えば、光軸と垂直方向の径が50~80μmである。

【0045】
本発明の電気泳動可視化装置(電気泳動可視化方法)は、前述のとおり、さらに、前記固定相の相対位置を、前記固定相に照射される光の光軸に対して垂直方向にずらすためのスライド手段(スライド工程)を有することが好ましい。このようにすれば、例えば、固定相(電気泳動ゲル)の幅が広いか、または面積が大きくて、全領域を同時に観察することが難しい場合でも、数回に分けて撮影し、コンピュータ(PC等)上で合成処理して1枚の写真(観察像)に仕上げることもできる。なお、このような撮影方法を「パノラマ撮影」ということがある。幅が広いか、または面積が大きい固定相の全体を一度に観察しようとすると、電気泳動可視化装置全体の大型化、光学部品の高コスト化につながるおそれがあるが、前記パノラマ撮影が可能であれば、電気泳動可視化装置全体の小型化およびコスト低減に寄与する。なお、前記パノラマ撮影のために、例えば、固定相(電気泳動ゲル)を挟んで保持しているガラス板等に、目印を設けてもよい。前記目印は、特に制限されないが、例えば、十字型の目印(「トンボ」などということがある)でもよい。

【0046】
前述のとおり、電気泳動ゲルを染色して観察する方法は、電気泳動および染色に時間がかかるという問題がある。これに対し、本発明の電気泳動可視化装置または電気泳動可視化方法によれば、電気泳動を行いながら、リアルタイムで電気泳動像を可視化し、観察できるため、電気泳動における分離パターン観察までの時間を短縮できる。また、例えば、前記画像処理手段(画像処理工程)により、電気泳動像を電気泳動方向に引き伸ばせば、固定相上の分離物(タンパク質バンド等)の分離状態がさらに観察しやすくなることにより、さらに電気泳動時間を短縮することも可能である。例えば、オペレータが、泳動画像に特有のパターンに着目し、電気泳動実施中にパターン認識を行い、解析の補助となる情報を本発明の電気泳動可視化装置に対し提供してもよい。また、前記画像取得手段および画像処理手段を有する本発明の電気泳動可視化システムを用いれば、例えば、目的とする分離物(特定のマーカーのタンパク質または核酸バンド等)が分離されたところで、自動的に電気泳動を停止させ、その後、電気泳動像を取得(撮像)して画像処理することも可能である。

【0047】
さらに、本発明によれば、下記(1)~(5)のような効果を得ることも可能である。ただし、これらは例示であって、本発明を何ら限定しない。

(1)電気泳動像の記録・解析が容易
電気泳動像をPCに取り込んで観察すれば、電子ファイルとしての記録や画像処理ソフトウェアによる解析が容易に行える。
(2)染色特性に影響されない観察が可能
前記混合物またはその分離物と、前記固定相との屈折率差を可視化することにより、クーマシーブリリアントブルー、銀等で染色できないタンパク質(またはタンパク質以外の物質)でも、前記屈折率差があれば観察可能である。また,無染色のまま前記分離物(バンド)が観察できるので、固定相(ゲル)からの前記分離物(バンド)切り出しの際に無染色のままバンドを切り出すことができ、染色剤付加による影響を受けずに質量解析などの分析が行える。
(3)従来の電気泳動との並列処理が可能
本発明によれば、従来の電気泳動法における分離物の検出(例えば、前記クーマシーブリリアントブルー等で染色する方法)に何ら影響を与えずに電気泳動状態を観察することもできる。したがって、本発明による観察(電気泳動可視化)を行う一方、従来の方法での観察結果を同時に得ることもできる。
(4)光軸ズレの許容度が大きい
本発明は、前記のとおり、シャドウグラフ法による観察であるため、シュリーレン法に比べて、光軸ズレの許容度が大きい。したがって、本発明の電気泳動可視化装置は、周囲環境の変動、外からの機械的ストレス、経年的劣化等によって光軸ズレが生じても、シュリーレン法の装置に比べ、観察像の劣化がほとんどない。
(5)低グレードの光学部品が使用可能
本発明の電気泳動可視化装置は、前記のとおり、シャドウグラフ法により観察するため、シュリーレン法の装置に比べて、低い面精度、表面品質(例えば、キズ、ブツ等)の光学部品を用いても、観察像の劣化がほとんどない。このことは、装置のコスト低減につながる。

【0048】
本発明の電気泳動可視化装置、電気泳動可視化システム、または電気泳動可視化方法の使用目的は特に限定されず、例えば、前記本発明の分析方法に用いても良いし、前記本発明の分離対象混合物の分離方法または分離物の製造方法に用いても良い。

【0049】
例えば、タンパク質を含む混合物を分離して、目的物(分離物)であるタンパク質を得たい場合、前記タンパク質に対して染色剤の付加などの処理を行わず、また、ドデシル硫酸ナトリウムの添加も行わないNative-PAGEにより、なるべく天然に近い状態で得ることが好ましい。しかし、従来の電気泳動像の観察方法では、未染色タンパク質の電気泳動の場合、目的のタンパク質のバンドがどこにあるか分からないため、天然状態での分離が困難である。これに対し、前記本発明の分離対象混合物の分離方法または分離物の製造方法によれば、前記本発明の電気泳動可視化方法を用いることにより、未染色タンパク質の電気泳動等であっても、目的のタンパク質のバンドの位置が分かりやすく、分離しやすい。したがって、前記本発明の分離対象混合物の分離方法または分離物の製造方法によれば、染色、変性等による変質がなく、かつ、純度(精製度)が高いタンパク質を得ることも可能である。ただし、この説明は例示に過ぎず、前記本発明の分離対象混合物の分離方法または分離物の製造方法を何ら限定しない。例えば、前記本発明の分離対象混合物の分離方法または分離物の製造方法において、電気泳動方法、固定相等は、Native-PAGEに限定されず、任意である。また、分離対象混合物および分離物も、タンパク質に限定されず、どのような物質でも良い。

【0050】
[実施形態2]
つぎに、本発明の別の一実施形態について説明する。

【0051】
図2に、本実施形態の電気泳動可視化装置の構造を、模式的に示す。同図において、図1と同様の部分には、同一の符号を付している。図2に示すとおり、この装置の構成は、コリメートレンズ4が集光レンズ5を兼ねることと、半反射鏡(ハーフミラー)9および反射鏡10をさらに有すること以外は、図1の装置と同様である。なお、コリメートレンズ4、固定相8および反射鏡10は、それらの面が、光2の光軸3にほぼ垂直になるように配置されている。光源1から射出された光2は、ハーフミラー9を透過し、コリメートレンズ4および固定相8を前記順序で透過し、反射鏡10により反射される。その反射光は、固定相8および集光レンズ5(コリメートレンズ4)を前記順序で透過し、半反射鏡(ハーフミラー)9により反射される。その反射光を、結像レンズ6に照射して固定相8の像を結び、その像をスクリーン7に投影して可視化する。この装置は、光2を反射鏡10により反射して再利用するため、理論上、光路長を図1の半分にすることができる。したがって、装置の小型化および省スペース化が可能となる。また、光2が、固定相(ゲル)8を2回透過するため、実施例1の装置と比較して、電気泳動像可視化の感度を増加することも可能である。

【0052】
[実施形態3]
つぎに、本発明のさらに別の一実施形態について説明する。

【0053】
図3に、本実施形態の電気泳動可視化装置の構造を、模式的に示す。同図において、図1と同様の部分には、同一の符号を付している。図3に示すとおり、この装置の構成は、反射鏡11、12および13をさらに有し、光2の光路が折り曲げられていること以外は、図1の装置と同様である。反射鏡11は、光源1とコリメートレンズ4との間に配置され、光源1からの射出光を反射鏡11で反射させてコリメートレンズ4に入射させる。反射鏡12は、固定相8と集光レンズ5との間に配置され、固定相8を透過した光を、反射鏡12で反射させて集光レンズ5に入射させる。反射鏡13は、集光レンズ5と結像レンズ6との間に配置され、集光レンズ5を透過した光を、反射鏡13で反射して結像レンズ6に入射させる。これら以外は、図1の装置と同様にして動作させることができる。本実施形態の装置は、図示のように、反射鏡11、12および13を有することで、光路が折り曲げられ、コンパクト化されているため、図1の装置と比較して省スペース化が可能である。

【0054】
[実施形態4]
つぎに、本発明のさらに別の一実施形態について説明する。

【0055】
図4に、本実施形態の電気泳動可視化装置の構造を、模式的に示す。同図において、図2と同様の部分には、同一の符号を付している。図4に示すとおり、この装置の構成は、反射鏡14および15をさらに有し、光2の光路が折り曲げられていること以外は、図2の装置と同様である。反射鏡14は、半反射鏡(ハーフミラー)9とコリメートレンズ4(集光レンズ5を兼ねる)との間に配置されている。これにより、半反射鏡9を透過した光を反射鏡14で反射させてコリメートレンズ4に入射させること、および、集光レンズ5(コリメートレンズ4と同一)を透過した光を反射鏡14で反射させて半反射鏡9に入射させることが可能である。反射鏡15は、コリメートレンズ4(集光レンズ5を兼ねる)と固定相8との間に配置されている。これにより、コリメートレンズ4を透過して平行光化された光を、反射鏡15により反射して固定相8に入射させること、および、反射鏡10により反射されて固定相8を再透過した光を、反射鏡10で反射して集光レンズ5(コリメートレンズ4と同一)に入射させることが可能である。これら以外は、図2の装置と同様にして動作させることができる。この装置は、光路が折り曲げられ、コンパクト化されているため、図2の装置と比較してさらに省スペース化が可能である。

【0056】
なお、図1~4の電気泳動可視化装置は例示であって、適宜変更が可能である。例えば、レンズと、曲率のある鏡(特に、凹面鏡、凸面鏡など)は、光を屈折させるという点で同じ機能を有する。したがって、本発明の電気泳動可視化装置においては、レンズに代えて、鏡を用いることもできる。よって、前記全ての実施形態(図1~4の全て)の装置において、レンズに代えて、同様の機能を有する鏡を用いてもよい。
【実施例】
【0057】
[実施例1]
図1の構成を有する装置を用いて、実際に、SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミド電気泳動)によりタンパク質の電気泳動を行い、前記実施形態1で説明したように電気泳動像を可視化して、前記図6~8に示す像が得られた。同様にして、図9に示す電気泳動像が得られた。図示のとおり、本実施例により得られた電気泳動像では、タンパク質のバンドが明確に観察できる。
【実施例】
【0058】
図10に、非特許文献1(Meyer & Lambert)の方法によって可視化した電気泳動像と、本実施例による電気泳動像とを対比して示す。同図において、左側の図(写真)が、非特許文献1の方法による電気泳動像であり、泳動開始からクーマシーブリリアントブルーで染色して観察可能となるまで、約200分を要した。一方、図10における右側の図(写真)は、泳動開始から約20分で得られた本実施例の電気泳動像である。これらの図から分かるとおり、本実施例によれば、非特許文献の方法と比較して、電気泳動像の観察に要する時間を大幅に短縮することが可能であった。なお、これらの図(写真)は、目視しやすくするために処理(加工)済である。また、参考のために、図11に、本実施例による電気泳動像の経時変化を示す。同図中に示す時間は、電気泳動時間である。
【実施例】
【0059】
さらに、本実施例では、Native-PAGEによる未変性タンパク質の電気泳動、および、TBE-PAGE(トリスヒドロキシアミノメタン・ホウ酸・エチレンジアミン四酢酸・ポリアクリルアミド電気泳動)による核酸(DNA)の電気泳動も行い、バンドを明確に観察することができた。図12(A)に、Native-PAGEの電気泳動像を示し、図12(B)に、TBE-PAGEによる核酸の電気泳動像を示す。それぞれ、図の上部において、バンドが観察できる。特に、DNA-PAGEでは、バンドが明確であった。
【実施例】
【0060】
[実施例2]
・タンパク質混合物(分子量マーカー)からの各構成タンパク質成分の分離、分取と、分取後の純度確認
図1の構成を有する装置を用いて、アクリルアミド濃度12.5%の平板ゲルによるSDS-PAGEにより、以下のタンパク質6種を含むタンパク質混合物(タンパク質電気泳動用分子量マーカー、GE Healthcare社製)の電気泳動を行い、前記実施形態1で説明したように電気泳動を可視化して、図10の電気泳動写真の一番右のレーンに示す電気泳動像により、前記タンパク質の各バンドが明確に観察できた。

1.フォスフォリラーゼb(Phosphorylase b, MW:97キロダルトン)
2.アルブミン(Albumin, MW:66キロダルトン)
3.オボアルブミン(Ovalbumin, MW:45キロダルトン)
4.カルボニックアンヒドラーゼ(Carbonic anhydrase, MW:30キロダルトン)
5.トリプシンインヒビター(Trypsin inhibitor, MW:20.1キロダルトン)
6.ラクトアルブミン(α-Lactalbumin, MW:14.4キロダルトン)
【実施例】
【0061】
視認できたバンドについてガラスゲル板上にマジックペンでマーキングした。その後、前記ゲル板のもう片方を外し、露出したゲル板をカミソリでマーキングを頼りにカットし、各バンドを分取した。それぞれのゲルを破砕し、タンパク質を抽出し、分取したものを得た。
【実施例】
【0062】
図13の電気泳動写真に示すとおり、前記分取したものの純度を確認するために、もう一度、アクリルアミド濃度12.5%でSDS-PAGE、クーマシーブリリアントブルーで染色して観察した。すなわち、同図に示すレーンは、左から順に、前記混合物から純化したフォスフォリラーゼb、アルブミン、オボアルブミン、およびカルボニックアンヒドラーゼを示し、いちばん右のレーンは、前述のとおり、前記混合物(タンパク質電気泳動用分子量マーカー)を示す。図13に示すとおり、前記分取した各バンドは、混合物(タンパク質電気泳動用分子量マーカー)において対応する各バンドと一致していることを確認した。
【実施例】
【0063】
以上、実施例1および2の結果から、本発明の電気泳動可視化装置を用いることにより、各バンドを明確に観察することができた。また、本発明は、無染色で電気泳動中のバンドを高い精度で視認でき、それをゲルから無染色で切り出すことが出来るので、蛋白質の分離精製の技術としても本発明の電気泳動可視化装置は応用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上、説明したとおり、本発明の電気泳動可視化装置、電気泳動可視化システムまたは電気泳動可視化方法によれば、電気泳動像をリアルタイムで可視化できて、短時間に分析可能である。本発明は、例えば、タンパク質、核酸等の電気泳動の観察に有用であり、また、それ以外の任意の混合物および分離物にも使用できるため、種々の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 光源
2 光
3 光軸
4 コリメートレンズ
5 集光レンズ
6 結像レンズ
7 スクリーン
8 固定相(電気泳動ゲル)
9 半反射鏡(ハーフミラー)
10、11、12、13、14、15 反射鏡
20 ナイフ
100、200 電気泳動槽
101、201 開口部
102、202 ホルダ
103、203 ストッパ
104、204 枠(フレーム)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図14】
4
【図15】
5
【図16】
6
【図5】
7
【図6】
8
【図7】
9
【図8】
10
【図9】
11
【図10】
12
【図11】
13
【図12】
14
【図13】
15