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明細書 :蒸気インジェクタおよびヒートポンプ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-218937 (P2014-218937A)
公開日 平成26年11月20日(2014.11.20)
発明の名称または考案の名称 蒸気インジェクタおよびヒートポンプ装置
国際特許分類 F04F   5/04        (2006.01)
F25B  43/00        (2006.01)
F25B   1/00        (2006.01)
FI F04F 5/04 Z
F25B 43/00 L
F25B 1/00 396B
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2013-098752 (P2013-098752)
出願日 平成25年5月8日(2013.5.8)
発明者または考案者 【氏名】阿部 豊
【氏名】武内 孝一郎
【氏名】鈴木 裕
出願人 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
【識別番号】307009034
【氏名又は名称】株式会社WELCON
個別代理人の代理人 【識別番号】100089118、【弁理士】、【氏名又は名称】酒井 宏明
審査請求 未請求
テーマコード 3H079
Fターム 3H079AA14
3H079AA23
3H079BB10
3H079CC03
3H079DD02
3H079DD15
3H079DD16
3H079DD24
要約 【課題】吐出圧がより高い蒸気インジェクタおよびこれを用いたヒートポンプ装置を提供すること。
【解決手段】冷媒の液流と前記冷媒の蒸気流とを導入する導入部と、前記液流の進行方向に向かって内部断面積が縮小する形状を有し、内部において噴流状の前記液流と前記蒸気流とを混合して冷媒流を形成する混合部と、前記混合部の出力側に形成されたスロート部と、前記スロート部から前記冷媒流の進行方向に向かって内部断面積が拡大する形状を有し、圧力が高められた前記冷媒流を吐出部から吐出するディフューザ部と、を備え、前記スロート部の内部断面積は、前記スロート部の内部断面積を減少させたときに前記ディフューザ部の吐出部から吐出される前記冷媒流の吐出圧が非線形的に増加する臨界断面積より小さい断面積であることを特徴とする蒸気インジェクタ。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
冷媒の液流と前記冷媒の蒸気流とを導入する導入部と、
前記液流の進行方向に向かって内部断面積が縮小する形状を有し、内部において噴流状の前記液流と前記蒸気流とを混合して冷媒流を形成する混合部と、
前記混合部の出力側に形成されたスロート部と、
前記スロート部から前記冷媒流の進行方向に向かって内部断面積が拡大する形状を有し、圧力が高められた前記冷媒流を吐出部から吐出するディフューザ部と、
を備え、
前記スロート部の内部断面積は、前記スロート部の内部断面積を減少させたときに前記ディフューザ部の吐出部から吐出される前記冷媒流の吐出圧が非線形的に増加する臨界断面積より小さい断面積であることを特徴とする蒸気インジェクタ。
【請求項2】
前記スロート部の内部断面積は、前記スロート部の内部断面積の変化に対する前記冷媒流の吐出圧の変化を表す曲線の1階微分係数が0より小さい、または2階微分係数が0より大きい内部断面積であることを特徴とする請求項1に記載の蒸気インジェクタ。
【請求項3】
前記スロート部の内部断面積をA、前記導入部における前記液流の質量流量、流速をそれぞれmw0、uw0、前記導入部における前記蒸気流の質量流量、流速をそれぞれms0、us0、前記スロート部における前記冷媒流の質量流量、流速をそれぞれm、u、前記混合部、前記スロート部、前記ディフューザ部における圧力損失係数をそれぞれζ、ζ、ζ、前記液流の密度をρ、前記冷媒流の前記吐出部における吐出圧をPとすると、以下の式(1)が成り立つことを特徴とする請求項1または2に記載の蒸気インジェクタ。
【数1】
JP2014218937A_000005t.gif

【請求項4】
前記スロート部の内部断面は円形であり、該内部断面の直径は2mm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタ。
【請求項5】
前記内部断面の直径は1mm以下であることを特徴とする請求項4に記載の蒸気インジェクタ。
【請求項6】
前記混合部において、前記液流が導入される領域の断面積をAW0、前記蒸気流が導入される領域の断面積をAs0とすると、As0/Aw0は、7以上30以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタ。
【請求項7】
前記As0/Aw0は、10以上20以下であることを特徴とする請求項6に記載の蒸気インジェクタ。
【請求項8】
前記混合部の内部から外気に連通するように形成されたドレイン管をさらに備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタ。
【請求項9】
前記ドレイン管には逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項8に記載の蒸気インジェクタ。
【請求項10】
前記冷媒は水または代替フロンであることを特徴とする請求項1~9のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタ。
【請求項11】
冷媒を圧縮する圧縮器と、
前記冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記冷媒の蒸気流と、前記冷媒の液流とが導入され、圧力が高められた冷媒流を前記ディフューザ部の吐出部から吐出する請求項1~10のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタと、
を備えることを特徴とするヒートポンプ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気インジェクタおよびこれを用いたヒートポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エジェクタを用いた冷凍サイクルが開示されている(例えば特許文献1、非特許文献1参照)。この冷凍サイクルでは、膨張弁を用いた冷凍サイクルにおいては膨張弁で渦として損失していたエネルギーを、エジェクタによりコンプレッサの仕事として回収することにより、COPを向上させた高効率冷凍サイクルが実現されているとされている。
【0003】
一方、小型の蒸気インジェクタとして、スロート部の内径が6.0mmのものが開示されている(例えば非特許文献2参照)。この蒸気インジェクタによれば、入力された蒸気の圧力と比較してより高い吐出圧が得られている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第3219108号公報
【0005】

【非特許文献1】武内他、「世界初エジェクタサイクル冷凍機の開発」、デンソーテクニカルレビュー、vol.14(2009年12月)、第65~75頁
【非特許文献2】Y.Abe et al.,” Model development of turbulent dispersion force for advanced two-fluid model in consideration of bubble-liquid phase interactions”, Proceedings of the 18th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-18) ICONE18-29517, 2010.
【非特許文献3】奈良林他、「蒸気インジェクタの高性能化に関する研究(第1報、作動メカニズムの定式化と特性解析)」、日本機械学会論文集B編、第62巻 第597号、1996年(平成8年)5月、第1833頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した冷凍サイクル等のヒートポンプ装置への応用を考慮すると、COP等で表されるエネルギー効率の向上のために、吐出圧がより高い蒸気インジェクタが求められている。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、吐出圧がより高い蒸気インジェクタおよびこれを用いたヒートポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る蒸気インジェクタは、冷媒の液流と前記冷媒の蒸気流とを導入する導入部と、前記液流の進行方向に向かって内部断面積が縮小する形状を有し、内部において噴流状の前記液流と前記蒸気流とを混合して冷媒流を形成する混合部と、前記混合部の出力側に形成されたスロート部と、前記スロート部から前記冷媒流の進行方向に向かって内部断面積が拡大する形状を有し、圧力が高められた前記冷媒流を吐出部から吐出するディフューザ部と、を備え、前記スロート部の内部断面積は、前記スロート部の内部断面積を減少させたときに前記ディフューザ部の吐出部から吐出される前記冷媒流の吐出圧が非線形的に増加する臨界断面積より小さい断面積であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記スロート部の内部断面積は、前記スロート部の内部断面積の変化に対する前記冷媒流の吐出圧の変化を表す曲線の1階微分係数が0より小さい、または2階微分係数が0より大きい内部断面積であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記スロート部の内部断面積をA、前記導入部における前記液流の質量流量、流速をそれぞれmw0、uw0、前記導入部における前記蒸気流の質量流量、流速をそれぞれms0、us0、前記スロート部における前記冷媒流の質量流量、流速をそれぞれm、u、前記混合部、前記スロート部、前記ディフューザ部における圧力損失係数をそれぞれζ、ζ、ζ、前記液流の密度をρ、前記冷媒流の前記吐出部における吐出圧をPとすると、以下の式(1)が成り立つことを特徴とする。
【数1】
JP2014218937A_000003t.gif

【0011】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記スロート部の内部断面は円形であり、該内部断面の直径は2mm以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記内部断面の直径は1mm以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記混合部において、前記液流が導入される領域の断面積をAW0、前記蒸気流が導入される領域の断面積をAs0とすると、As0/Aw0は、7以上30以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記As0/Aw0は、10以上20以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記混合部の内部から外気に連通するように形成されたドレイン管をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記ドレイン管には逆止弁が設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記冷媒は水または代替フロンであることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るヒートポンプ装置は、冷媒を圧縮する圧縮器と前記冷媒を凝縮する凝縮器と、前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記冷媒の蒸気流と、前記冷媒の液流とが導入され、圧力が高められた冷媒流を前記ディフューザ部の吐出部から吐出する上記発明の蒸気インジェクタと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吐出圧がより高い蒸気インジェクタおよびこれを用いたヒートポンプ装置を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施の形態1に係る蒸気インジェクタの模式的な構成図である。
【図2】図2は、図1の導入部および混合部の要部拡大図である。
【図3】図3は、蒸気インジェクタの作動特性予測モデルを説明する図である。
【図4】図4は、スロート部の内径と吐出圧との関係を示す図である。
【図5】図5は、図4に示す曲線の1階微分係数を示す図である。
【図6】図6は、図4に示す曲線の2階微分係数を示す図である。
【図7】図7は、導入部における蒸気流の圧力と吐出圧との関係を示す図である。
【図8】図8は、安定動作時および不安定動作時における導入される蒸気流の圧力およびドレイン管内の圧力を示す図である。
【図9】図9は、実施の形態2に係るヒートポンプ装置のブロック図である。
【図10】図10は、実施の形態3に係るヒートポンプ装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明に係る蒸気インジェクタおよびヒートポンプ装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法や寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。

【0022】
本発明者らは、吐出圧がより高い蒸気インジェクタを実現するために鋭意検討したところ、スロート部の面積が所定値以下になると、吐出されるジェット液流の吐出圧が急激に増大することを初めて発見し、本発明に想到したものである。

【0023】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る蒸気インジェクタの模式的な構成図である。図1に示すように、蒸気インジェクタ10は、導入部1と、混合部2と、スロート部3と、ディフューザ部4と、ドレイン管5と、逆止弁6とを備えている。以下、蒸気インジェクタ10の構成および動作について説明する。

【0024】
導入部1は、冷媒の液流W1を導入するノズル状の液流導入部1aと、液流導入部1aの両側に形成された、冷媒の蒸気流S1を導入する蒸気流導入部1bとを有する。液流W1はノズル状の液流導入部1aによって噴流状となって導入される。なお、用いる冷媒は、水や代替フロン等、ヒートポンプ装置で使用できる冷媒であれば特に限定はされない。

【0025】
混合部2は、図1の紙面下方である液流の進行方向に向かって内部断面積が縮小する形状を有している。本実施の形態1では混合部2は断面円形であるが、断面が矩形などの他の形状でもよい。混合部2は、内部において液流と蒸気流とを混合し、気液混合状態にある冷媒流を形成する部分である。ここで、蒸気流は液流によって急激に冷却されて凝縮し、その体積が大幅に減少するため、混合部2内部では負圧が生じる。これによって導入される蒸気流の流速も高まる。

【0026】
図2は、図1の導入部1および混合部2の要部拡大図である。図2に示すように、蒸気流導入部1bから導入された蒸気流S1は、液流導入部1aから導入された噴流状の液流W1の外周側から液流W1と合流し、混合される。なお、符号C1は、混合部2において、液流W1を導入し蒸気流S1と混合する領域を示している。この領域C1の断面積をAw0とする。また、符号C2は、蒸気流S1を導入し液流W1と混合する領域を示している。この領域C2の断面積をAs0とする

【0027】
図1に戻る。スロート部3は、混合部2の出力側であってかつディフューザ部4の入力側に形成されている。本実施の形態1ではスロート部3は断面円形であるが、断面が矩形などの他の形状でもよい。スロート部3は混合部2からディフューザ部4にわたる部分で内部断面積が最も小さい部分である。したがって、冷媒流はスロート部3を通過する際に流速が最も高くなる。

【0028】
ディフューザ部4は、スロート部3から冷媒流の進行方向に向かって内部断面積が拡大する形状を有している。本実施の形態1ではディフューザ部4は断面円形であるが、断面が矩形などの他の形状でもよい。ディフューザ部4の内部断面積は拡大しているため、冷媒流は流速が低くなるとともに圧力が高められる。その結果、ディフューザ部4は、圧力が高められた冷媒流を、吐出部4aから冷媒流F1として吐出する。

【0029】
ドレイン管5は、混合部2の内部から外部に連通するように形成されている。ドレイン管5には逆止弁6が設けられている。ドレイン管5は、混合部2内の余分な蒸気を排気する機能を有する。このように余分な蒸気を排気することによって蒸気インジェクタ10の動作の安定性が高くなる。なお、蒸気インジェクタ10の動作時には、上述したように混合部2内部で負圧が生じる。逆止弁6は、負圧によって混合部2内部に外気が流入しないように機能することによって、蒸気インジェクタ10の動作の安定性を高める。

【0030】
蒸気インジェクタ10は、たとえば、2以上の構成部材(たとえば板状の構成部材)からなる一組の構成部材のそれぞれに、導入部1、混合部2、スロート部3、ディフューザ部4、およびドレイン管5を複数に分割した形状の溝または穴を形成し、溝または穴を形成した一組の構成部材を接合することによって形成しても良い。このとき、導入部1、混合部2、スロート部3、ディフューザ部4、およびドレイン管5のそれぞれは、一組の構成部材を接合したときに、各構成部材に形成された溝または穴が組み合わさることによって形成される。なお、構成部材の構成材料はたとえば樹脂材料などでもよいが、構成部材を金属製等とし、一組の構成部材の接合を拡散接合等により行うことによって、冷媒流F1の吐出圧が高くてもそれに耐えうる十分な接合強度が得られる。構成部材を構成する金属材料としては、ステンレス材料等の断熱性が高いものが好ましい。

【0031】
ここで、本実施の形態1に係る蒸気インジェクタ10では、スロート部3の内部断面積は、所定の臨界断面積よりも小さく設定されている。これによって、ディフューザ部4の吐出部4aから吐出される冷媒流の吐出圧が高くなっている。

【0032】
以下、冷媒流の吐出圧が高くなる原理を、蒸気インジェクタの作動特性予測モデル(非特許文献3参照)に基づいて説明する。図3は、蒸気インジェクタの作動特性予測モデルを説明する図である。図3において、符号「0」は液流W1と蒸気流S1とを混合する領域の始点を示している(図2の領域C1、C2参照)。符号「1」はスロート部3を示す。符号「D」はディフューザ部4の吐出部4aを示している。これらの符号は以下の式において適宜変数の添え字として使用する。

【0033】
このモデルでは、まず、蒸気流S1はスロート部3で全量凝縮すると仮定する。また、蒸気流S1は臨界流となって混合部2に導入されると仮定し、臨界圧力から蒸気流S1の流速を算出する。さらに、流動構造や冷媒流の界面挙動は考慮しないこととする。

【0034】
まず、混合部2(「0」-「1」間)の液流W1、蒸気流S1、冷媒流F1に対して質量保存則の式、エネルギー保存則の式、運動量保存側の式を適用する。さらに、ディフューザ部4(「1」-「D」間)の冷媒流F1にベルヌイの式を適用する。これによって下記の式(1)が導かれる。なお、ここでは冷媒を水とした。すなわち、液流および蒸気流に関するパラメータの値としては、水流、水蒸気流の値を使用した。

【0035】
【数2】
JP2014218937A_000004t.gif
ここで、式(1)では、スロート部3の内部断面積をA、導入部1における液流W1の質量流量、流速をそれぞれmw0、uw0、導入部1における蒸気流S1の質量流量、流速をそれぞれms0、us0、スロート部3における冷媒流F1の質量流量、流速をそれぞれm、u、混合部2、スロート部3、ディフューザ部4における圧力損失係数をそれぞれζ、ζ、ζ、液流W1の密度をρ、冷媒流F1の吐出部4aにおける吐出圧をPとしている。また、式(1)を導出する際には、Aw0を7.54×10-7とし、As0を5.42×10-6とした。このとき、As0/Aw0は約7.2である。また、導入部1における液流W1の温度Tw0を20℃とし、ζを0.37とした。

【0036】
式(1)において、ζを0.05、ζを0.1、ζを0.15とし、mw0を1.27×10-2kg/sとし、導入部1における蒸気流S1の圧力Pを0.10MPa、0.13MPa、または0.15MPaとした場合に、スロート部3の内径Dを6.0mmから300μmまで変化させたときの吐出圧Pの変化を算出した。ここで、1気圧は0.1024MPaである。なお、スロート部3は断面円形とする。このとき、内部断面積Aに対して、π(D/2)=Aが成り立つ。

【0037】
図4は、スロート部3の内径Dと吐出圧Pとの関係を示す図である。図5は、図4に示す曲線の1階微分係数を示す図である。図6は、図4に示す曲線の2階微分係数を示す図である。図4~6を導出する際には、Dの値を0.01mm刻みで変化させて計算を行った。図4に示すように、いずれの圧力Pの値についても、内径Dを6.0mmから減少させても、吐出圧Pは略一定であった。しかし、いずれの圧力Pの値についても、内径Dが約1.0mmを臨界値として、内径Dが臨界値より小さい値(たとえば600μm)では吐出圧Pが非線形的に急激に増加することが式(1)の解析から確認された。また、図5に示すように、図4に示す内径Dと圧力Pとの関係を示す曲線の1階微分係数は、内径Dが1.0mmよりも大きいときはほぼ0である。しかし、約1.0mmを臨界値として、内径Dが臨界値より小さい値では0より小さくなり、その後急激に減少する。さらに、図6に示すように、図4に示す内径Dと圧力Pとの関係を示す曲線の2階微分係数は、内径Dが1.0mmよりも大きいときはほぼ0である。しかし、約1.0mmを臨界値として、内径Dが臨界値より小さい値では0より大きくなり、その後急激に増大する。

【0038】
そこで、本実施の形態1に係る蒸気インジェクタ10では、スロート部3の内径D、または内部断面積Aを、吐出圧Pが増加する臨界値(内径または断面積)より小さい内径または断面積とすることによって、従来なし得なかった高い吐出圧を実現している。このような臨界値より小さい内径または断面積では、スロート部3の内径Dまたは内部断面積Aの変化に対する、吐出圧Pの変化を表す曲線(すなわち、図4に示す曲線)の1階微分係数が0より小さくなっている。また、2階微分係数は0より大きくなっている。したがって、このような1階または2階の微分係数が0から変化する内径Dまたは内部断面積Aとすることによって、高い吐出圧Pが実現される。

【0039】
なお、上記の図4、5、6では、内径Dが臨界値よりも大きい場合は、吐出圧Pは略一定であり、その変化を示す曲線の1階および2階の微分係数はほぼ0である。したがって、臨界値は、1階または2階の微分係数が0から変化する値として定義することができる。一方、内径Dが臨界値よりも大きい場合に、吐出圧Pが略一定ではなく、その変化を示す曲線の1階および2階微分係数が0ではない場合もある。そのような場合は、2階微分係数が、内径Dまたは内部断面積Aの減少に応じて10%以上上昇する値を、臨界値として定義してもよい。たとえば、内径Dを1.0mmから0.9mmに減少させたときに、2階微分係数が1.0から1.1に、10%上昇した場合には、内径Dの臨界値は1.0mmと定義してもよい。

【0040】
また、吐出圧Pが増加する臨界値(内径または断面積)は、式(1)に含まれる各パラメータの値によって変化する。したがって、各パラメータの値を勘案して、スロート部3の内径Dまたは内部断面積Aを臨界値より小さくなるように設定すれば、本発明の効果としての高い吐出圧Pを得ることができる。たとえば、冷媒が水ではなく他の冷媒の場合は、水に関するパラメータを、使用する冷媒に関するパラメータに置き換えて、スロート部3の内径Dまたは内部断面積Aを設定すればよい。

【0041】
つぎに、式(1)において、スロート部3の内部断面積Aを2.83×10-7(内径Dとしては600μm)とし、mw0を1.27×10-2kg/s、1.43×10-2kg/s、または1.59×10-2kg/sとした場合に、導入部1における蒸気流S1の圧力Pを変化させたときの吐出圧Pの変化を算出した。

【0042】
図7は、導入部1における蒸気流S1の圧力Pと吐出圧Pとの関係を示す図である。図7に示すように、圧力Pを高めるほど吐出圧Pを高くすることができることを式(1)の解析から確認した。

【0043】
つぎに、樹脂材料を用いて蒸気インジェクタを実際に作製し、その動作を実証する実験を行った。作製した蒸気インジェクタは、7種類である。すなわち、図1に示す実施の形態1の構成のもので、As0/Aw0を36.2としたもの(サンプル1)、逆止弁を設けない以外はサンプル1と同じ構成のもの(サンプル2)、逆止弁およびドレイン管を設けない以外はサンプル1と同じ構成のもの(サンプル3)である。また、図1に示す実施の形態1の構成のもので、As0/Aw0を7.2としたもの(サンプル4)、逆止弁を設けない以外はサンプル1と同じ構成のもの(サンプル5)、逆止弁およびドレイン管を設けない以外はサンプル1と同じ構成のもの(サンプル6)である。また、図1に示す実施の形態1の構成に、さらにAs0/Aw0を可変にできる機構を設けたもの(サンプル7)である。このような可変機構は、液流導入部1aの混合部2への突出量を変更できるように構成することで実現できる。

【0044】
なお、サンプル1~7の共通の構成としては、混合部2の長さを22.5mmとし、混合部2の、スロート部3の反対側の内径を3.4mmとし、液流W1を導入する断面積Aw0を1.94m(内径としては1.57mm)とし、スロート部3の内径Dを600μmとし、ディフューザ部4の長さを14.4mmとし、ディフューザ部4の吐出部4aの内径を2.0mmとした。また、ドレイン管5については内径を0.45mmとした。

【0045】
また、本実験においても、冷媒として水を用い、以下のように実験条件を調整可能な実験系を用いた。まず、導入部における蒸気流の圧力Pは0.11MPa~0.15MPaの範囲で調整可能である。また、導入部において、液流の温度Tw0は11.9℃~26℃の範囲、蒸気流の温度Ts0は101.4℃~111.2℃の範囲で調整可能である。また、導入部における液流の流速mw0は1.59ml/s~2.20ml/s(なお、液流の密度はたとえば958kg/mである)の範囲で調整可能である。また、導入する液流または蒸気流の溶存酸素量DOまたはDOは0.8mg/l~8.0mg/lの範囲で調整可能である。

【0046】
(実験1)
サンプル3(As0/Aw0=36.2、ドレイン管および逆止弁無し)の蒸気インジェクタを用いて、はじめに、Tw0=12.6℃の液流を導入したところ、蒸気インジェクタ内の混合部およびスロート部に水の液体が静的に蓄積した。この状態で、つぎに、P=0.11MPa、Ts0=102.3℃の蒸気流を導入した。すると、混合部において液体の流動が生じ、ディフューザ部の吐出部から冷媒流が吐出され、蒸気インジェクタの動作が確認された。

【0047】
(実験2)
サンプル4(As0/Aw0=7.2、ドレイン管および逆止弁有り)の蒸気インジェクタを用いて、はじめに、Tw0=24.5℃、mw0=1.59ml/s、DO=1.64mg/lの液流を導入し、つぎに、蒸気流を導入した。すると、混合部において液体の流動が生じ、ディフューザ部の吐出部から冷媒流が吐出され、蒸気インジェクタの動作が確認されたが、動作が不安定になる場合があった。

【0048】
図8は、安定動作時および不安定動作時における導入される蒸気流の圧力およびドレイン管内の圧力を示す図である。横軸は測定開始時からの経過時間である。図8において、Pinはドレイン管内の圧力を示し、Pは蒸気流の圧力を示している。また、「Stable」は蒸気インジェクタが安定動作状態にあることを意味し、「Unstable」は蒸気インジェクタが不安定動作状態にあることを意味する。

【0049】
図8に示すように、安定動作時にはPinがPよりも低く、混合部内が負圧になっていた。一方、不安定動作時にはPがPinよりも低く、混合部内が正圧となっており、かつPの値が不安定であり、安定した蒸気流の導入が行われない状態であることが確認された。

【0050】
(実験3-1、3-2、3-3)
サンプル7(As0/Aw0可変、ドレイン管および逆止弁有り)の蒸気インジェクタを用いて、はじめに、Tw0=21.7℃、mw0=1.91ml/s、DO=2.4mg/lの液流を導入し、つぎに、P=0.13MPa、DO=3.5mg/lの蒸気流を導入する実験を行った。なお、As0/Aw0については、4.4、15.1、または38.3に設定した。

【0051】
すると、蒸気インジェクタは、As0/Aw0=4.4およびAs0/Aw0=38.3の場合は動作せず、As0/Aw0=15.1の場合はディフューザ部の吐出部から高い吐出圧の冷媒流が吐出され、蒸気インジェクタの動作が確認された。

【0052】
本発明者らがさらに実験を行ったところ、As0/Aw0の値としては、7以上30以下の範囲にある場合が蒸気インジェクタの動作上好ましく、10以上20以下である場合が、安定動作上さらに好ましい。

【0053】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係るヒートポンプ装置のブロック図である。図9に示すように、ヒートポンプ装置100は、実施の形態1に係る蒸気インジェクタ10と、圧縮器20と、凝縮器30と、蒸発器40と、気液分離器50とを備えている。これらの要素は、冷媒を循環させる流路としての配管によって接続されている。

【0054】
ヒートポンプ装置100の動作を説明する。圧縮器20は、外部からの電力Pによって、気液分離器50から供給された冷媒蒸気を圧縮する。一方、凝縮器30は圧縮された冷媒蒸気の熱を熱H1として放熱するとともに冷媒蒸気を凝縮し、冷媒液とする。蒸発器40は、気液分離器50から供給された冷媒液に外部から吸熱した熱H2を与えて冷媒を蒸発させる。

【0055】
蒸気インジェクタ10は、蒸発器40から供給された冷媒の蒸気流と、凝縮器30から供給された冷媒の液流とが導入され、圧力が高められた冷媒流をディフューザ部4の吐出部4a(図1参照)から吐出する。気液分離器50は、吐出された冷媒流に含まれる冷媒の液体と蒸気とを分離し、冷媒蒸気を圧縮器20に供給するとともに、冷媒液を蒸発器40に供給する。

【0056】
このヒートポンプ装置100では、膨張弁を用いたヒートポンプ装置においては膨張弁で渦として損失していたエネルギーを蒸気インジェクタ10により回収できる。さらに、このヒートポンプ装置100では、蒸気インジェクタ10によって圧縮器20の負担が軽減されるので、所望の動作状態を実現するために外部から与えるべき電力Pの電力量を低減することができる。これによって、このヒートポンプ装置100は、COPを向上させた高効率ヒートポンプ装置として機能する。このヒートポンプ装置100は、空気調和装置、冷凍装置、給湯装置など、ヒートポンプ装置を使用する各種装置に使用することができ、これによって高効率装置が実現される。

【0057】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3に係るヒートポンプ装置のブロック図である。図10に示すように、ヒートポンプ装置200は、実施の形態1に係る蒸気インジェクタ10と、圧縮器20と、凝縮器30と、蒸発器40と、気液分離器50と、膨張弁60と、ポンプ70とを備えている。これらの要素は、冷媒を循環させる流路としての配管によって接続されている。

【0058】
このヒートポンプ装置200では、蒸気インジェクタ10は、圧縮器20から供給された冷媒の蒸気流と、気液分離器50からポンプPで圧力が高められた状態で供給された冷媒の液流とが導入され、圧力が高められた冷媒流をディフューザ部4の吐出部4a(図1参照)から吐出する。凝縮器30は、蒸気インジェクタ10から圧力が高められた冷媒流を供給され、その熱を熱H1として放熱するとともに冷媒流を凝縮する。気液分離器50は、凝縮器30からの冷媒流に含まれる冷媒の液体と蒸気とを分離し、冷媒蒸気を膨張弁60に供給するとともに、冷媒液をポンプPに供給する。膨張弁60は、冷媒蒸気を低温、低圧の冷媒液とする。蒸発器40は、膨張弁60によって低温、低圧にされた冷媒液に外部から吸熱した熱H2を与えて冷媒を蒸発させる。圧縮器20は、外部からの電力Pによって、蒸発器40から供給された冷媒蒸気を圧縮する。

【0059】
このヒートポンプ装置200では、蒸気インジェクタ10は圧縮器20による冷媒の圧縮を補助して凝縮器30に所望の圧力の冷媒を供給するようにしている。その結果、所望の動作状態を実現するために外部から与えるべき電力Pの電力量を低減することができる。これによって、このヒートポンプ装置200は、COPを向上させた高効率ヒートポンプ装置として機能する。このヒートポンプ装置200は、空気調和装置、冷凍装置、給湯装置など、ヒートポンプ装置を使用する各種装置に使用することができ、これによって高効率装置が実現される。

【0060】
なお、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 導入部
1a 液流導入部
1b 蒸気流導入部
2 混合部
3 スロート部
4 ディフューザ部
4a 吐出部
5 ドレイン管
6 逆止弁
10 蒸気インジェクタ
20 圧縮器
30 凝縮器
40 蒸発器
50 気液分離器
60 膨張弁
70 ポンプ
100、200 ヒートポンプ装置
C1、C2 領域
F1 冷媒流
H1、H2 熱
P 電力
S1 蒸気流
W1 液流
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9