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明細書 :蒸気インジェクタおよびヒートポンプ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6195235号 (P6195235)
公開番号 特開2014-218939 (P2014-218939A)
登録日 平成29年8月25日(2017.8.25)
発行日 平成29年9月13日(2017.9.13)
公開日 平成26年11月20日(2014.11.20)
発明の名称または考案の名称 蒸気インジェクタおよびヒートポンプ装置
国際特許分類 F04F   5/04        (2006.01)
F25B   1/00        (2006.01)
FI F04F 5/04 Z
F25B 1/00 389A
請求項の数または発明の数 20
全頁数 27
出願番号 特願2013-098872 (P2013-098872)
出願日 平成25年5月8日(2013.5.8)
審査請求日 平成28年5月6日(2016.5.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
【識別番号】307009034
【氏名又は名称】株式会社WELCON
発明者または考案者 【氏名】阿部 豊
【氏名】武内 孝一郎
【氏名】鈴木 裕
個別代理人の代理人 【識別番号】100089118、【弁理士】、【氏名又は名称】酒井 宏明
審査官 【審査官】所村 陽一
参考文献・文献 特開平04-347400(JP,A)
実開昭59-123700(JP,U)
米国特許第05262091(US,A)
調査した分野 F04F 5/04
F25B 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
冷媒の液流と前記冷媒の蒸気流とを導入する導入部と、
前記液流の進行方向に向かって内部断面積が縮小する形状を有し、内部において噴流状の前記液流と前記蒸気流とを混合して冷媒流を形成する混合部と、
前記混合部の出力側に形成されたスロート部と、
前記スロート部から前記冷媒流の進行方向に向かって内部断面積が拡大する形状を有し、圧力が高められた前記冷媒流を吐出部から吐出するディフューザ部と、
を備えた複数の単位蒸気インジェクタと、
前記各単位蒸気インジェクタの各導入部に前記冷媒の液流および蒸気流のそれぞれを供給するための液流路および蒸気流路と、
を備える蒸気インジェクタであって、
当該蒸気インジェクタは、一組の構成部材が接合して形成されており、
前記一組の構成部材のそれぞれには、前記導入部、前記混合部、前記スロート部、および前記ディフューザ部を複数に分割した形状の溝または穴が形成されており、前記導入部、前記混合部、前記スロート部、および前記ディフューザ部は、前記一組の構成部材を接合したときに前記溝または前記穴によって形成される
ことを特徴とする蒸気インジェクタ。
【請求項2】
前記一組の構成部材は、板状であって、積層した状態で互いに接合されており、
前記複数の単位蒸気インジェクタのうち少なくとも2以上が、前記板状構成部材の主表面に沿って配列していることを特徴とする請求項に記載の蒸気インジェクタ。
【請求項3】
前記板状構成部材の主表面に沿って配列した前記単位蒸気インジェクタの各前記導入部を連通する流路が形成されていることを特徴とする請求項に記載の蒸気インジェクタ。
【請求項4】
前記一組の構成部材は、板状であって、積層した状態で互いに接合されており、
前記複数の単位蒸気インジェクタのうち少なくとも2以上が、前記板状構成部材の積層方向に沿って配列していることを特徴とする請求項のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタ。
【請求項5】
前記板状構成部材の積層方向に沿って配列した前記単位蒸気インジェクタの各前記導入部を連通する流路が形成されていることを特徴とする請求項に記載の蒸気インジェクタ。
【請求項6】
前記一組の構成部材は、積層した状態で互いに接合されており、
前記複数の単位蒸気インジェクタは、前記構成部材の積層方向に沿って延在していることを特徴とする請求項に記載の蒸気インジェクタ。
【請求項7】
前記一組の構成部材は拡散接合により接合していることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタ。
【請求項8】
前記単位蒸気インジェクタは、前記スロート部の内部断面積が、前記スロート部の内部断面積を減少させたときに前記ディフューザ部の吐出部から吐出される前記冷媒流の吐出圧が非線形的に増加する臨界断面積より小さい断面積であることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタ。
【請求項9】
前記スロート部の内部断面積は、前記スロート部の内部断面積の変化に対する前記冷媒流の吐出圧の変化を表す曲線の1階微分係数が0より小さい、または2階微分係数が0より大きい内部断面積であることを特徴とする請求項に記載の蒸気インジェクタ。
【請求項10】
前記スロート部の内部断面積をA、前記導入部における前記液流の質量流量、流速をそれぞれmw0、uw0、前記導入部における前記蒸気流の質量流量、流速をそれぞれms0、us0、前記スロート部における前記冷媒流の質量流量、流速をそれぞれm、u、前記混合部、前記スロート部、前記ディフューザ部における圧力損失係数をそれぞれζ、ζ、ζ、前記液流の密度をρ、前記冷媒流の前記吐出部における吐出圧をPとすると、以下の式(1)が成り立つことを特徴とする請求項またはに記載の蒸気インジェクタ。
【数1】
JP0006195235B2_000004t.gif

【請求項11】
前記スロート部の内部断面は円形であり、該内部断面の直径は2mm以下であることを特徴とする請求項10のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタ。
【請求項12】
前記内部断面の直径は1mm以下であることを特徴とする請求項11に記載の蒸気インジェクタ。
【請求項13】
前記混合部において、前記液流が導入される領域の断面積をA、前記蒸気流が導入される領域の断面積をAとすると、As0/Aw0は、7以上30以下であることを特徴とする請求項12のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタ。
【請求項14】
前記As0/Aw0は、10以上20以下であることを特徴とする請求項13に記載の蒸気インジェクタ。
【請求項15】
前記混合部の内部から外気に連通するように形成されたドレイン管をさらに備えることを特徴とする請求項1~14のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタ。
【請求項16】
前記ドレイン管には逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項15に記載の蒸気インジェクタ。
【請求項17】
前記導入部は、液流導入部と、蒸気流導入部と、前記液流導入部と前記蒸気流導入部との間に介在する断熱層とを有することを特徴とする請求項1~16のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタ。
【請求項18】
前記冷媒は水または代替フロンであることを特徴とする請求項1~17のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタ。
【請求項19】
冷媒の液流と前記冷媒の蒸気流とを導入する導入部と、
前記液流の進行方向に向かって内部断面積が縮小する形状を有し、内部において噴流状の前記液流と前記蒸気流とを混合して冷媒流を形成する混合部と、
前記混合部の出力側に形成されたスロート部と、
前記スロート部から前記冷媒流の進行方向に向かって内部断面積が拡大する形状を有し、圧力が高められた前記冷媒流を吐出部から吐出するディフューザ部と、
を備えた複数の単位蒸気インジェクタと、
前記各単位蒸気インジェクタの各導入部に前記冷媒の液流および蒸気流のそれぞれを供給するための液流路および蒸気流路と、
を備え、
前記単位蒸気インジェクタは、前記スロート部の内部断面積が、前記スロート部の内部断面積を減少させたときに前記ディフューザ部の吐出部から吐出される前記冷媒流の吐出圧が非線形的に増加する臨界断面積より小さい断面積であることを特徴とする蒸気インジェクタ。
【請求項20】
冷媒を圧縮する圧縮器と、
前記冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、
前記冷媒の蒸気流と、前記冷媒の液流とが導入され、圧力が高められた冷媒流を前記ディフューザ部の吐出部から吐出する請求項1~19のいずれか一つに記載の蒸気インジェクタと、
を備えることを特徴とするヒートポンプ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気インジェクタおよびこれを用いたヒートポンプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エジェクタを用いた冷凍サイクルが開示されている(例えば特許文献1、非特許文献1参照)。この冷凍サイクルでは、膨張弁を用いた冷凍サイクルにおいては膨張弁で渦として損失していたエネルギーを、エジェクタによりコンプレッサの仕事として回収することにより、COPを向上させた高効率冷凍サイクルが実現されているとされている。
【0003】
一方、小型の蒸気インジェクタとして、スロート部の内径が6.0mmのものが開示されている(例えば非特許文献2参照)。この蒸気インジェクタによれば、入力された蒸気の圧力と比較してより高い吐出圧が得られている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第3219108号公報
【0005】

【非特許文献1】武内他、「世界初エジェクタサイクル冷凍機の開発」、デンソーテクニカルレビュー、vol.14(2009年12月)、第65~75頁
【非特許文献2】Y.Abe et al.,” Model development of turbulent dispersion force for advanced two-fluid model in consideration of bubble-liquid phase interactions”, Proceedings of the 18th International Conference on Nuclear Engineering (ICONE-18) ICONE18-29517, 2010.
【非特許文献3】奈良林他、「蒸気インジェクタの高性能化に関する研究(第1報、作動メカニズムの定式化と特性解析)」、日本機械学会論文集B編、第62巻 第597号、1996年(平成8年)5月、第1833頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献2に開示されるように蒸気インジェクタを小型化すると、それだけ冷媒の吐出量も少なくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型でありがながら吐出量が多い蒸気インジェクタおよびこれを用いたヒートポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る蒸気インジェクタは、冷媒の液流と前記冷媒の蒸気流とを導入する導入部と、前記液流の進行方向に向かって内部断面積が縮小する形状を有し、内部において噴流状の前記液流と前記蒸気流とを混合して冷媒流を形成する混合部と、前記混合部の出力側に形成されたスロート部と、前記スロート部から前記冷媒流の進行方向に向かって内部断面積が拡大する形状を有し、圧力が高められた前記冷媒流を吐出部から吐出するディフューザ部と、を備えた複数の単位蒸気インジェクタと、前記各単位蒸気インジェクタの各導入部に前記冷媒の液流および蒸気流のそれぞれを供給するための液流路および蒸気流路と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、当該蒸気インジェクタは、一組の構成部材が接合して形成されており、前記一組の構成部材のそれぞれには、前記導入部、前記混合部、前記スロート部、および前記ディフューザ部を複数に分割した形状の溝または穴が形成されており、前記導入部、前記混合部、前記スロート部、および前記ディフューザ部は、前記一組の構成部材を接合したときに前記溝または前記穴によって形成されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記一組の構成部材は、板状であって、積層した状態で互いに接合されており、前記複数の単位蒸気インジェクタのうち少なくとも2以上が、前記板状構成部材の主表面に沿って配列していることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記板状構成部材の主表面に沿って配列した前記単位蒸気インジェクタの各前記導入部を連通する流路が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記一組の構成部材は、板状であって、積層した状態で互いに接合されており、前記複数の単位蒸気インジェクタのうち少なくとも2以上が、前記板状構成部材の積層方向に沿って配列していることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記板状構成部材の積層方向に沿って配列した前記単位蒸気インジェクタの各前記導入部を連通する流路が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記一組の構成部材は、積層した状態で互いに接合されており、前記複数の単位蒸気インジェクタは、前記構成部材の積層方向に沿って延在していることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記一組の構成部材は拡散接合により接合していることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記単位蒸気インジェクタは、前記スロート部の内部断面積が、前記スロート部の内部断面積を減少させたときに前記ディフューザ部の吐出部から吐出される前記冷媒流の吐出圧が非線形的に増加する臨界断面積より小さい断面積であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記スロート部の内部断面積は、前記スロート部の内部断面積の変化に対する前記冷媒流の吐出圧の変化を表す曲線の1階微分係数が0より小さい、または2階微分係数が0より大きい内部断面積であることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記スロート部の内部断面積をA、前記導入部における前記液流の質量流量、流速をそれぞれmw0、uw0、前記導入部における前記蒸気流の質量流量、流速をそれぞれms0、us0、前記スロート部における前記冷媒流の質量流量、流速をそれぞれm、u、前記混合部、前記スロート部、前記ディフューザ部における圧力損失係数をそれぞれζ、ζ、ζ、前記液流の密度をρ、前記冷媒流の前記吐出部における吐出圧をPとすると、以下の式(1)が成り立つことを特徴とする。
【数1】
JP0006195235B2_000002t.gif

【0019】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記スロート部の内部断面は円形であり、該内部断面の直径は2mm以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記内部断面の直径は1mm以下であることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記混合部において、前記液流が導入される領域の断面積をA、前記蒸気流が導入される領域の断面積をAとすると、As0/Aw0は、7以上30以下であることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記As0/Aw0は、10以上20以下であることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記混合部の内部から外気に連通するように形成されたドレイン管をさらに備えることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記ドレイン管には逆止弁が設けられていることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記導入部は、液流導入部と、蒸気流導入部と、前記液流導入部と前記蒸気流導入部との間に介在する断熱層とを有することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る蒸気インジェクタは、上記発明において、前記冷媒は水または代替フロンであることを特徴とする。
【0027】
本発明に係るヒートポンプ装置は、冷媒を圧縮する圧縮器と、前記冷媒を凝縮する凝縮器と、前記冷媒を蒸発させる蒸発器と、前記冷媒の蒸気流と、前記冷媒の液流とが導入され、圧力が高められた冷媒流を前記ディフューザ部の吐出部から吐出する上記発明の蒸気インジェクタと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、小型でありがながら吐出量が多い蒸気インジェクタおよびこれを用いたヒートポンプ装置を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、実施の形態1に係る蒸気インジェクタの模式的な斜視図である。
【図2】図2は、図1の板状構成部材の平面図である。
【図3】図3は、図1の蒸気インジェクタの要部断面図である。
【図4】図4は、冷媒の流れを説明する図である。
【図5】図5は、導入部の別の態様を説明する要部断面図である。
【図6】図6は、変形例1に係る蒸気インジェクタの内部構成を説明する模式図である。
【図7】図7は、図6の板状構成部材の平面図である。
【図8】図8は、図6の板状構成部材の平面図である。
【図9】図9は、図6の板状構成部材の斜視図である。
【図10】図10は、変形例2に係る蒸気インジェクタの内部構成を説明する模式図である。
【図11】図11は、図10の板状構成部材の平面図である。
【図12】図12は、図10の板状構成部材の平面図である。
【図13】図13は、変形例3に係る蒸気インジェクタの内部構成を説明する模式図である。
【図14】図14は、図13の板状構成部材の平面図である。
【図15】図15は、図13の板状構成部材の平面図である。
【図16】図16は、変形例4に係る蒸気インジェクタの構成を説明する模式図である。
【図17】図17は、図16の板状構成部材およびノズルの構成を説明する模式図である。
【図18】図18は、変形例5に係る蒸気インジェクタの内部構成を説明する模式図である。
【図19】図19は、図18の板状構成部材の平面図である。
【図20】図20は、図18の板状構成部材の平面図である。
【図21】図21は、変形例6に係る蒸気インジェクタの内部構成を説明する模式図である。
【図22】図22は、実施の形態2に係るヒートポンプ装置のブロック図である。
【図23】図23は、実施の形態3に係るヒートポンプ装置のブロック図である。
【図24】図24は、蒸気インジェクタの作動特性予測モデルを説明する図である。
【図25】図25は、スロート部の内径と吐出圧との関係を示す図である。
【図26】図26は、図25に示す曲線の1階微分係数を示す図である。
【図27】図27は、図25に示す曲線の2階微分係数を示す図である。
【図28】図28は、導入部における蒸気流の圧力と吐出圧との関係を示す図である。
【図29】図29は、作製した単位蒸気インジェクタの構成を模式的に示す図である。
【図30】図30は、安定動作時および不安定動作時における導入される蒸気流の圧力およびドレイン管内の圧力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、図面を参照して本発明に係る蒸気インジェクタおよびヒートポンプ装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する構成要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。

【0031】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る蒸気インジェクタの模式的な斜視図である。この蒸気インジェクタ100は、複数(本実施の形態1では5)の板状構成部材101、102、103、104、105で構成されている。これらの一組の板状構成部材101、102、103、104、105は、積層した状態で互いに接合されている。板状構成部材101、105は積層構造の蒸気インジェクタ100の最上層または最下層を構成している。

【0032】
板状構成部材101には、外部から冷媒の液流W1を供給する冷媒液供給口101aと冷媒の蒸気流S1を外部に排出する冷媒蒸気排出口101bとが形成されている。板状構成部材105には、液流W1を外部に排出する冷媒液排出口105aと外部から蒸気流S1を供給する冷媒蒸気供給口105bとが形成されている。また、蒸気インジェクタ100の側面には冷媒流F1を吐出する冷媒流吐出口106が形成されている。

【0033】
図2は、板状構成部材102の平面図である。図2において、斜線部は板状構成部材102の主表面であり、板状構成部材102の主表面には複数の溝および穴が形成されている。これらの溝および穴は、板状構成部材101の、板状構成部材102と対向する主表面、板状構成部材102、103、104の両主表面、および板状構成部材105の、板状構成部材104と対向する主表面にも形成されている。これらの溝および穴は、後述する単位蒸気インジェクタの導入部、混合部、スロート部、およびディフューザ部を2分割した形状の溝または穴を含み、板状構成部材101、102、103、104、105の対向する主表面が接合することによって、これらの溝または穴が組み合わさって、複数の単位蒸気インジェクタ、および単位蒸気インジェクタに対して、冷媒液および冷媒蒸気の供給または排出を行うための流路が形成される。

【0034】
具体的には、図2に示すように、板状構成部材102には、冷媒液供給口102aと、冷媒蒸気排出口102bと、冷媒液排出口102cと、冷媒蒸気供給口102dとが形成されている。また、板状構成部材102と板状構成部材103との接合により、3つの単位蒸気インジェクタ10と、冷媒液流路102eと、冷媒蒸気流路102fと、冷媒流合流流路102gとが形成される。冷媒液供給口102aは図1に示す冷媒液供給口101aと連通している。冷媒蒸気排出口102bは図1に示す冷媒蒸気排出口101bと連通している。冷媒液排出口102cは図1に示す冷媒液排出口105aと連通している。冷媒蒸気供給口102dは図1に示す冷媒蒸気供給口105bと連通している。また、冷媒液供給口102aと冷媒液排出口102cとは、冷媒液流路102eを介して連通している。冷媒蒸気排出口102bと冷媒蒸気供給口102dとは、冷媒蒸気流路102fとを介して連通している。

【0035】
単位蒸気インジェクタ10は、板状構成部材101、102の主表面に沿って配列している。また、単位蒸気インジェクタ10は、1組の板状構成部材101、102、103、104、105を接合することによって各板状構成部材間に形成されるので、板状構成部材101、102、103、104、105の積層方向にも沿って配列している。蒸気インジェクタ100では、主表面に沿って3個、積層方向に沿って4個の単位蒸気インジェクタが形成されている。したがって、蒸気インジェクタ100は、合計で12個の単位蒸気インジェクタが集積されたものである。なお、主表面または積層方向に沿って配列される単位蒸気インジェクタの数をそれぞれN、Mとすると、蒸気インジェクタ100の場合はN=3、M=4であるが、Nが1でMが2以上、Nが2以上でMが1、またはN、Mとも2以上であってもよい。

【0036】
各単位蒸気インジェクタ10は、導入部1と、混合部2と、スロート部3と、ディフューザ部4とを備えている。以下、単位蒸気インジェクタ10の構成および動作について説明する。

【0037】
導入部1は、ノズル状の液流導入部1aと、蒸気流導入部1bとを有する。液流導入部1aは、外部から、冷媒液供給口101a、冷媒液供給口102aおよび冷媒液流路102eを介して供給された冷媒の液流W1を導入する。蒸気流導入部1bは、液流導入部1aの両側に形成され、冷媒蒸気供給口105b、冷媒蒸気供給口102dおよび冷媒蒸気流路102fを介して供給された蒸気流S1を導入する。液流W1はノズル状の液流導入部1aによって噴流状となって導入される。なお、用いる冷媒は、水や代替フロン等、ヒートポンプ装置で使用できる冷媒であれば特に限定はされない。

【0038】
図3は、蒸気インジェクタ100の要部断面図であって、図2のA-A線に対応する断面における断面を示している。このように、液流導入部1aおよび蒸気流導入部1bは板状構成部材101と板状構成部材102とを接合したときに、対向する主表面に形成された溝が組み合わさることによって形成される。

【0039】
図2に戻る。混合部2は、図2の紙面右方である液流の進行方向に向かって内部断面積が縮小する形状を有している。本実施の形態1では混合部2は断面矩形であるが、断面が円形などの他の形状でもよい。混合部2は、内部において液流と蒸気流とを混合し、気液混合状態にある冷媒流を形成する部分である。ここで、蒸気流は液流によって急激に冷却されて凝縮し、その体積が大幅に減少するため、混合部2内部では負圧が生じる。これによって導入される蒸気流の流速も高まる。

【0040】
図2に示すように、液流導入部1aから導入された蒸気流S1は、蒸気流導入部1bから導入された噴流状の液流W1の外周側から液流W1と合流し、混合される。

【0041】
スロート部3は、混合部2の出力側であってかつディフューザ部4の入力側に形成されている。本実施の形態1ではスロート部3は断面矩形であるが、断面が円形などの他の形状でもよい。スロート部3は混合部2からディフューザ部4にわたる部分で内部断面積が最も小さい部分である。したがって、冷媒流はスロート部3を通過する際に流速が最も高くなる。

【0042】
ディフューザ部4は、スロート部3から冷媒流の進行方向に向かって内部断面積が拡大する形状を有している。本実施の形態1ではディフューザ部4は断面矩形であるが、断面が円形などの他の形状でもよい。ディフューザ部4の内部断面積は拡大しているため、冷媒流は流速が低くなるとともに圧力が高められる。その結果、ディフューザ部4は、圧力が高められた冷媒流を、吐出部4aから冷媒流F1として吐出する。

【0043】
冷媒流合流流路102gは、各単位蒸気インジェクタ10のディフューザ部の吐出部に連通しており、吐出された各冷媒流F1を合流させる。冷媒流吐出口106は合流された冷媒流F1を蒸気インジェクタ100の外部に吐出する。

【0044】
図4は、冷媒の流れを説明する図である。図4に示すように、冷媒の液流W1は、冷媒液供給口101aから供給された後、板状構成部材102に形成された冷媒液供給口から、板状構成部材101と板状構成部材102との接合により形成された各単位蒸気インジェクタに供給される。各単位蒸気インジェクタに供給されなかった液流は冷媒液排出口から排出され、板状構成部材103に形成された冷媒液供給口から、板状構成部材102と板状構成部材103との接合により形成された各単位蒸気インジェクタに供給される。すなわち、隣接する板状構成部材の冷媒液供給口と冷媒液排出口とは連通しており、板状構成部材の積層方向に沿って配列した単位蒸気インジェクタの各導入部を連通する流路を形成している。以下、同様に、各板状構成部材の接合により形成された各単位蒸気インジェクタに液流が供給され、未使用の液流は板状構成部材105の冷媒液排出口105aから外部に排出される。

【0045】
同様に、冷媒の蒸気流S1は、冷媒蒸気供給口105bから供給された後、板状構成部材104に形成された冷媒蒸気供給口から、板状構成部材105と板状構成部材104との接合により形成された各単位蒸気インジェクタに供給される。各単位蒸気インジェクタに供給されなかった蒸気流は冷媒蒸気排出口から排出され、板状構成部材103に形成された冷媒蒸気供給口から、板状構成部材104と板状構成部材103との接合により形成された各単位蒸気インジェクタに供給される。以下、同様に、各板状構成部材の接合により形成された各単位蒸気インジェクタに蒸気流が供給され、未使用の蒸気流は板状構成部材101の冷媒蒸気排出口101bから外部に排出される。

【0046】
この蒸気インジェクタ100は、上述したように12個の単位蒸気インジェクタが集積されたものであり、各単位蒸気インジェクタが吐出する冷媒流のすべてを合流させた冷媒流を吐出する。したがって、この蒸気インジェクタは、小型でありながら、かつ吐出量が多いものである。

【0047】
なお、図5は、導入部の別の態様を説明する要部断面図である。図5に示すように、導入部1´は、図2、3に示す導入部1と置き換えて使用できるものであって、液流導入部1aと、蒸気流導入部1bとの間に介在する断熱層1cを有するものである。断熱層1cはたとえば2つの壁部の間に空気を充填させた層または真空とした層として構成することができる。

【0048】
導入部1において液流W1が蒸気流S1によって加熱されると、混合部2における蒸気流S1を液流W1によって急激に冷却して凝縮する効果が減少する。これに対して、導入部1´においては、断熱層1cによって、液流W1が蒸気流S1によって加熱されることが防止または抑制されるので、上記凝縮効果の減少が防止または抑制される。

【0049】
なお、上記板状構成部材101、102、103、104、105の構成材料はたとえば樹脂材料などでもよいが、これらを金属製等とし、一組の板状構成部材の接合を拡散接合等により行うことによって、冷媒流F1の吐出量が多く、吐出厚が高くてもそれに耐えうる十分な接合強度が得られる。板状構成部材を構成する金属材料としては、ステンレス材料等の断熱性が高いものが好ましい。

【0050】
また、上記単位蒸気インジェクタ10において、混合部2の内部から外気に連通するように形成されたドレイン管をさらに備えるようにしてもよい。ドレイン管は、混合部2内の余分な蒸気を排気する機能を有する。このように余分な蒸気を排気することによって単位蒸気インジェクタ10の動作の安定性が高くなる。また、ドレイン管には逆止弁が設けられていてもよい。単位蒸気インジェクタ10の動作時には、上述したように混合部2内部で負圧が生じる。逆止弁は、負圧によって混合部2内部に外気が流入しないように機能することによって、単位蒸気インジェクタ10の動作の安定性を高める。

【0051】
以下、実施の形態1の変形例1~6に係る上記インジェクタについて説明する。

【0052】
(変形例1)
図6は、変形例1に係る蒸気インジェクタの内部構成を説明する模式図である。図6(a)は蒸気インジェクタ100Aを示し、図6(b)、(c)、(d)はその構成要素である板状構成部材102A、103A、101Aを示している。蒸気インジェクタ100Aは、複数の板状構成部材102A、103Aの組の間に板状構成部材101Aを配置したものが複数組積層された構成を有する。これらの板材構成部材は、たとえば金属製であり、拡散接合により接合される。

【0053】
図7は、図6の板状構成部材102Aの平面図である。図7において、クロスハッチが施された領域は溝を示している。なお、板状構成部材103Aも板状構成部材102Aと同様の構成を有している。図7に示すように、板状構成部材102Aには、板状構成部材102Aを貫通するように、冷媒液流路102Aeと、冷媒蒸気流路102Afと、冷媒流合流流路102Agと、冷媒流吐出口106Aとが形成されている。また、板状構成部材102Aは、単位蒸気インジェクタ10Aの導入部1A、混合部2A、スロート部3A、およびディフューザ部4Aを構成するための溝を有している。板状構成部材102Aと板状構成部材103Aとの接合により単位蒸気インジェクタ10Aが形成される。なお、板状構成部材102Aと板状構成部材103Aとは、互いの溝が組み合うように積層させても良いし、一方の板状構成部材の溝が形成された主表面と、一方の板状構成部材の溝が形成されていない主表面とが対向するように積層させても良い。

【0054】
各単位蒸気インジェクタ10Aは、導入部1Aと、混合部2Aと、スロート部3Aと、ディフューザ部4Aとを備えている。導入部1Aは、ノズル状の液流導入部1Aaと、蒸気流導入部1Abとを有する。液流導入部1Aaは、外部から、冷媒液流路102Aeを介して供給された冷媒の液流を導入する。蒸気流導入部1Abは、液流導入部1Aaの両側に形成され、冷媒蒸気流路102Afを介して供給された蒸気流を導入する。単位蒸気インジェクタ10Aの具体的構成および動作は単位蒸気インジェクタ10と略同様である。

【0055】
図8は、図6の板状構成部材101Aの平面図である。図8に示すように、板状構成部材101Aには、冷媒液流路101Aeと、冷媒蒸気流路101Afと、冷媒流合流流路101Agと、冷媒流吐出口106Aとが形成されている。板状構成部材101Aは、板状構成部材102Aと板状構成部材103Aとの間に挟まれて、各単位蒸気インジェクタ10Aの蒸気流導入部1Abへの冷媒蒸気の流路を確保するためのスペーサの役目を果たしている。

【0056】
図9は、図6の板状構成部材102Aの斜視図であって、溝の構成を理解しやすくするために板状構成部材102Aを切断して示している。

【0057】
(変形例2)
図10は、変形例2に係る蒸気インジェクタの内部構成を説明する模式図である。図10(a)は蒸気インジェクタ100Bを示し、図10(b)、(c)、(d)はその構成要素である板状構成部材102B、103B、101Bを示している。蒸気インジェクタ100Bは、複数の板状構成部材102B、103Bの組の間に板状構成部材101Bを配置したものが複数組積層された構成を有する。これらの板材構成部材は、たとえば金属製であり、拡散接合により接合される。

【0058】
図11は、図10の板状構成部材102Bの平面図である。図11において、クロスハッチが施された領域は溝を示している。なお、板状構成部材103Bも板状構成部材102Bと同様の構成を有している。図11に示すように、板状構成部材102Bには、板状構成部材102Bを貫通するように、冷媒液流路102Beと、冷媒蒸気流路102Bfと、冷媒流合流流路102Bgと、冷媒流吐出口106Bとが形成されている。また、板状構成部材102Bは、単位蒸気インジェクタ10Bの導入部1B、混合部2B、スロート部3B、およびディフューザ部4Bを構成するための溝を有している。板状構成部材102Bと板状構成部材103Bとの接合により単位蒸気インジェクタ10Bが形成される。なお、板状構成部材102Bと板状構成部材103Bとは、互いの溝が組み合うように積層させても良いし、一方の板状構成部材の溝が形成された主表面と、一方の板状構成部材の溝が形成されていない主表面とが対向するように積層させても良い。

【0059】
各単位蒸気インジェクタ10Bは、導入部1Bと、混合部2Bと、スロート部3Bと、ディフューザ部4Bとを備えている。導入部1Bは、ノズル状の液流導入部1Baと、蒸気流導入部1Bbとを有する。液流導入部1Baは、外部から、冷媒液流路102Beを介して供給された冷媒の液流を導入する。蒸気流導入部1Bbは、液流導入部1Baの両側に形成され、冷媒蒸気流路102Bfを介して供給された蒸気流を導入する。単位蒸気インジェクタ10Bの具体的構成および動作は単位蒸気インジェクタ10と略同様である。

【0060】
図12は、図10の板状構成部材101Bの平面図である。図12に示すように、板状構成部材101Bには、冷媒液流路101Beと、冷媒蒸気流路101Bfと、冷媒流合流流路101Bgと、冷媒流吐出口106Bとが形成されている。板状構成部材101Bは、板状構成部材102Bと板状構成部材103Bとの間に挟まれて、各単位蒸気インジェクタ10Bの蒸気流導入部1Bbへの冷媒蒸気の流路を確保するためのスペーサの役目を果たしている。

【0061】
ここで、板状構成部材102Bには、さらに、液流導入部1Baと、蒸気流導入部1Bbとの間に介在する貫通溝1Bcが形成されている。このような貫通溝1Bcは板状構成部材101Bにも形成されている。さらに、この貫通溝1Bcは冷媒液流路102Beと冷媒蒸気流路102Bfとの間にも介在するように形成されている。この貫通溝1Bcは、液流導入部1Baと、蒸気流導入部1Bbとの間、および冷媒液流路102Beと冷媒蒸気流路102Bfとの間を断熱する断熱層としての空気層を形成する。これによって、混合前に液流が蒸気流によって加熱されることが防止または抑制されるので、混合部2Bにおける凝縮効果の減少が防止または抑制される。なお、貫通溝1Bc内は真空としてもよい。

【0062】
(変形例3)
図13は、変形例3に係る蒸気インジェクタの内部構成を説明する模式図である。図13(a)は蒸気インジェクタ100Cを示し、図13(b)、(c)、(d)はその構成要素である板状構成部材102C、103C、101Cを示している。蒸気インジェクタ100Cは、複数の板状構成部材102C、103Cの組の間に板状構成部材101Cを配置したものが複数組積層された構成を有する。これらの板材構成部材は、たとえば金属製であり、拡散接合により接合される。

【0063】
図14は、図13の板状構成部材102Cの平面図である。図14において、クロスハッチが施された領域は溝を示している。なお、板状構成部材103Cも板状構成部材102Cと同様の構成を有している。図14に示すように、板状構成部材102Cには、板状構成部材102Cを貫通するように、冷媒液流路102Ceと、冷媒蒸気流路102Cfと、冷媒流合流流路102Cgと、冷媒流吐出口106Cとが形成されている。また、板状構成部材102Cは、単位蒸気インジェクタ10Cの導入部1C、混合部2C、スロート部3C、およびディフューザ部4Cを構成するための溝を有している。板状構成部材102Cと板状構成部材103Cとの接合により単位蒸気インジェクタ10Cが形成される。なお、板状構成部材102Cと板状構成部材103Cとは、互いの溝が組み合うように積層させても良いし、一方の板状構成部材の溝が形成された主表面と、一方の板状構成部材の溝が形成されていない主表面とが対向するように積層させても良い。

【0064】
各単位蒸気インジェクタ10Cは、導入部1Cと、混合部2Cと、スロート部3Cと、ディフューザ部4Cとを備えている。導入部1Cは、ノズル状の液流導入部1Caと、蒸気流導入部1Cbとを有する。液流導入部1Caは、外部から、冷媒液流路102Ceを介して供給された冷媒の液流を導入する。蒸気流導入部1Cbは、液流導入部1Caの両側に形成され、冷媒蒸気流路102Cfを介して供給された蒸気流を導入する。単位蒸気インジェクタ10Cの具体的構成および動作は単位蒸気インジェクタ10と略同様である。なお、この単位蒸気インジェクタ10Cでは、液流の進行方向の側面から蒸気流が混合される。図14において、符号1Caaは混合する際に液流が導入される断面積を示し、符号1Cbaは混合する際に蒸気流が導入される断面積を示している。

【0065】
図15は、図13の板状構成部材101Cの平面図である。図15に示すように、板状構成部材101Cには、冷媒液流路101Ceと、冷媒蒸気流路101Cfと、冷媒流合流流路101Cgと、冷媒流吐出口106Cとが形成されている。板状構成部材101Cは、板状構成部材102Cと板状構成部材103Cとの間に挟まれて、各単位蒸気インジェクタ10Cの蒸気流導入部1Cbへの冷媒蒸気の流路を確保するためのスペーサの役目を果たしている。

【0066】
ここで、板状構成部材102Cにも、板状構成部材102Bと同様に、液流導入部1Caと、蒸気流導入部1Cbとの間に介在する貫通溝1Ccが形成されている。このような貫通溝1Ccは板状構成部材101Cにも形成されている。さらに、この貫通溝1Ccは冷媒液流路102Ceと冷媒蒸気流路102Cfとの間にも介在するように形成されている。この貫通溝1Ccは、液流導入部1Caと、蒸気流導入部1Cbとの間、および冷媒液流路102Ceと冷媒蒸気流路102Cfとの間を断熱する断熱層としての空気層を形成する。これによって、混合前に液流が蒸気流によって加熱されることが防止または抑制されるので、混合部2Cにおける凝縮効果の減少が防止または抑制される。なお、貫通溝1Cc内は真空としてもよい。

【0067】
(変形例4)
図16は、変形例4に係る蒸気インジェクタの内部構成を説明する模式図である。図16(a)は蒸気インジェクタ100Dを示し、図16(b)、(c)、(d)はその構成要素である板状構成部材102D、ノズル110D、板状構成部材103Dを示している。蒸気インジェクタ100Dは、複数の板状構成部材102D、103Dの組が複数組積層された構成を有する。これらの板材構成部材は、たとえば金属製であり、拡散接合により接合される。

【0068】
図17は、図16の板状構成部材およびノズルの構成を説明する模式図である。図17(a)は板状構成部材102Dを示し、図17(b)、(c)はそれぞれ背面図、側面図を示し、図17(d)、(e)、(f)はそれぞれA-A線断面、B-B線断面、C-C線断面を示し、図17(g)はノズル110Dを示している。図17において、クロスハッチが施された領域は溝を示している。なお、板状構成部材103Dも板状構成部材102Dと同様の構成を有している。

【0069】
図17に示すように、板状構成部材102Dには、板状構成部材102Dを貫通するように、冷媒液流路102Deと、冷媒蒸気流路102Dfと、冷媒流合流流路102Dgと、冷媒流吐出口106Dとが形成されている。また、板状構成部材102Dは、単位蒸気インジェクタ10Dの混合部2D、スロート部3D、およびディフューザ部4Dを構成するための溝を有している。さらに、板状構成部材102Dは、ノズル110Dを嵌めるための溝102Dhを有している。ノズル110Dを溝102Dhに嵌めた状態で板状構成部材102Dと板状構成部材103Dとの接合により単位蒸気インジェクタ10Dが形成される。このとき、ノズル110Dは板状構成部材103D側に形成された、溝102Dhと同様の溝にも嵌まる。

【0070】
各単位蒸気インジェクタ10Dは、導入部1Dと、混合部2Dと、スロート部3Dと、ディフューザ部4Dとを備えている。導入部1Dは、ノズル状の液流導入部1Daと、蒸気流導入部1Dbとを有する。液流導入部1Daは、外部から、冷媒液流路102Deを介して供給された冷媒の液流を導入する。蒸気流導入部1Dbは、液流導入部1Daを取り囲むように形成され、冷媒蒸気流路102Dfを介して供給された蒸気流を導入する。単位蒸気インジェクタ10Dの具体的構成および動作は単位蒸気インジェクタ10と略同様である。

【0071】
ここで、ノズル110Dを溝102Dhに嵌めた状態で板状構成部材102Dと板状構成部材103Dとを接合したとき、ノズル110Dによって導入部1Dの液流導入部1Daが形成され、混合部2Dの冷媒蒸気流路102Dfにおいてノズル110Dの周囲を囲む溝が蒸気流導入部1Dbとなる。蒸気インジェクタ100Dは、ノズル110Dが溝102Dh内を移動し、かつ所望の位置に固定されることができるような機構を有している。ノズル110Dの位置を溝102Dhの長手方向に対して移動させることによって、導入部1Dにおける液流導入部1Daと蒸気流導入部1Dbとの断面積比を変化させることができる。

【0072】
(変形例5)
図18は、変形例5に係る蒸気インジェクタの内部構成を説明する模式図である。図18(a)は蒸気インジェクタ100Eを示し、図18(b)、(c)、(d)、(e)はその構成要素である板状構成部材102E、103E、104E、101Eを示している。蒸気インジェクタ100Eは、複数の板状構成部材102E、103E、104E、101Eの組が複数組積層された構成を有する。これらの板材構成部材は、たとえば金属製であり、拡散接合により接合される。

【0073】
図19は、図18の板状構成部材103Eの平面図である。図19において、クロスハッチが施された領域は溝を示している。なお、板状構成部材104Eも板状構成部材103Eと同様の構成を有している。図19に示すように、板状構成部材103Eには、板状構成部材103Eを貫通するように、冷媒液流路103Eeと、冷媒蒸気流路103Efと、冷媒流合流流路103Egと、冷媒流吐出口106Eとが形成されている。また、板状構成部材103Eは、単位蒸気インジェクタ10Eの導入部1E、混合部2E、スロート部3E、およびディフューザ部4Eを構成するための溝を有している。さらに、板状構成部材103Eには、蒸気流導入部1Ecを構成するための、板状構成部材103Eを貫通する楔型の貫通孔が形成されている。

【0074】
図20は、図18の板状構成部材102Eの平面図である。なお、板状構成部材101Eも板状構成部材102Eと同様の構成を有している。図20に示すように、板状構成部材102Eには、冷媒液流路102Eeと、冷媒蒸気流路102Efと、冷媒流合流流路102Egと、冷媒流吐出口106Eとが形成されている。また、板状構成部材102Eは、冷媒蒸気流路102Efと連通する、蒸気流導入部1Ecを構成するための溝と、スロート部3Eを構成する溝と、冷媒蒸気を逃がす流路102Ehを構成するための溝とを有している。なお、冷媒蒸気を逃がす流路102Ehを構成するための溝は無くても良い。

【0075】
板状構成部材102E、103E、104E、および101Eの接合により単位蒸気インジェクタ10Eが形成される。なお、接合したときに、板状構成部材103Eに形成された、蒸気流導入部1Ecを構成するための貫通孔と、板状構成部材102Eに形成された、蒸気流導入部1Ecを構成するための溝とは連通する。なお、板状構成部材104E、板状構成部材101Eにも同様の貫通孔と溝とが形成されており、これらは接合したときに連通する。

【0076】
各単位蒸気インジェクタ10Eは、導入部1Eと、混合部2Eと、スロート部3Eと、ディフューザ部4Eとを備えている。導入部1Eは、ノズル状の液流導入部1Eaと、蒸気流導入部1Eb、1Ecとを有する。液流導入部1Eaは、外部から、冷媒液流路103Eeを介して供給された冷媒の液流を導入する。蒸気流導入部1Ebは、液流導入部1Eaの両側に形成され、冷媒蒸気流路103Efを介して供給された蒸気流を導入する。

【0077】
さらに、蒸気流導入部1Ecは、液流導入部1Eaの上下に形成され、冷媒蒸気流路から、板状構成部材102E、101Eに形成された蒸気流導入部1Ecを構成する溝(図20参照)を通り、板状構成部材103E、104Eに形成された蒸気流導入部1Ecを構成する貫通孔(図19参照)をさらに通って供給された蒸気流を導入する。すなわち、各単位蒸気インジェクタ10Eでは、液流導入部1Eaの左右両側、および上下両側の四方から、蒸気流が導入される。なお、板状構成部材102E、101Eに形成された蒸気流導入部1Ecを構成する溝を通ったが板状構成部材103E、104Eに形成された蒸気流導入部1Ecを構成する孔を通らなかった冷媒蒸気は流路102Ehから冷媒流吐出口106Eに逃がされる。

【0078】
単位蒸気インジェクタ10Eのその他の具体的構成および動作は単位蒸気インジェクタ10と略同様である。この単位蒸気インジェクタ10Eでは、液流導入部1Eaの四方に形成された蒸気流導入部1Eb、1Ecから冷媒蒸気を導入するので、より効率的に冷媒蒸気を導入することができる。

【0079】
(変形例6)
図21は、変形例6に係る蒸気インジェクタの内部構成を説明する模式図である。この蒸気インジェクタ200は、構成部材201、202、203、204、205で構成されている。構成部材201、202、203、204、205を積層して接合することによって、構成部材201、202、203、204、205の積層方向に沿って延在する9個の単位蒸気インジェクタ10Gが形成される。各単位蒸気インジェクタ10Gは、導入部1Gと、混合部2Gと、スロート部3Gと、ディフューザ部4Gとを備えている。導入部1Gは、ノズル状の液流導入部1Gaと、蒸気流導入部1Gbとを有する。これらの構成部材は、たとえば金属製であり、拡散接合により接合される。

【0080】
構成部材201は、断面矩形状の貫通孔である冷媒液流路200eを有している。また、構成部材201は、冷媒液流路200eと、ノズルである構成部材205によって形成される導入部1Gの液流導入部1Gaと連通する連通孔200e1と、を有する。構成部材202には円錐状の貫通孔である混合部2Gが形成されている。また、構成部材201、202、205が接合したときに、構成部材201と構成部材202とによって冷媒蒸気流路200fが形成される。また、構成部材205が混合部2Gに挿通され、構成部材205と混合部2Gとの隙間に蒸気流導入部1Gbが形成される。

【0081】
また、構成部材203には円錐状の貫通孔であるディフューザ部4Gが形成されている。構成部材202と構成部材203とが接合したときに、構成部材202と構成部材203との接合面の位置にスロート部3Gが形成される。また、構成部材203と構成部材204とが接合したときに、冷媒流合流流路200gと、冷媒流吐出口206とが形成される。

【0082】
このように、単位蒸気インジェクタは、積層して接合する構成部材の積層方向に沿って延在するように形成されてもよい。

【0083】
(実施の形態2)
図22は、本発明の実施の形態2に係るヒートポンプ装置のブロック図である。図22に示すように、ヒートポンプ装置1000は、実施の形態1に係る蒸気インジェクタ100と、圧縮器20と、凝縮器30と、蒸発器40と、気液分離器50とを備えている。これらの要素は、冷媒を循環させる流路としての配管によって接続されている。

【0084】
ヒートポンプ装置1000の動作を説明する。圧縮器20は、外部からの電力Pによって、気液分離器50から供給された冷媒蒸気を圧縮する。一方、凝縮器30は圧縮された冷媒蒸気の熱を熱H1として放熱するとともに冷媒蒸気を凝縮し、冷媒液とする。蒸発器40は、気液分離器50から供給された冷媒液に外部から吸熱した熱H2を与えて冷媒を蒸発させる。

【0085】
蒸気インジェクタ100は、蒸発器40から供給された冷媒の蒸気流と、凝縮器30から供給された冷媒の液流とが導入され、圧力が高められた冷媒流を冷媒流吐出口106(図1参照)から吐出する。気液分離器50は、吐出された冷媒流に含まれる冷媒の液体と蒸気とを分離し、冷媒蒸気を圧縮器20に供給するとともに、冷媒液を蒸発器40に供給する。

【0086】
このヒートポンプ装置1000では、膨張弁を用いたヒートポンプ装置においては膨張弁で渦として損失していたエネルギーを蒸気インジェクタ100により回収できる。さらに、このヒートポンプ装置1000では、蒸気インジェクタ100によって圧縮器20の負担が軽減されるので、所望の動作状態を実現するために外部から与えるべき電力Pの電力量を低減することができる。これによって、このヒートポンプ装置1000は、COPを向上させた高効率ヒートポンプ装置として機能する。このヒートポンプ装置1000は、空気調和装置、冷凍装置、給湯装置など、ヒートポンプ装置を使用する各種装置に使用することができ、これによって高効率装置が実現される。

【0087】
(実施の形態3)
図23は、本発明の実施の形態3に係るヒートポンプ装置のブロック図である。図23に示すように、ヒートポンプ装置2000は、実施の形態1に係る蒸気インジェクタ100と、圧縮器20と、凝縮器30と、蒸発器40と、気液分離器50と、膨張弁60と、ポンプ70とを備えている。これらの要素は、冷媒を循環させる流路としての配管によって接続されている。

【0088】
このヒートポンプ装置2000では、蒸気インジェクタ100は、圧縮器20から供給された冷媒の蒸気流と、気液分離器50からポンプ70で圧力が高められた状態で供給された冷媒の液流とが導入され、圧力が高められた冷媒流を冷媒流吐出口106から吐出する。凝縮器30は、蒸気インジェクタ100から圧力が高められた冷媒流を供給され、その熱を熱H1として放熱するとともに冷媒流を凝縮する。気液分離器50は、凝縮器30からの冷媒流に含まれる冷媒の液体と蒸気とを分離し、冷媒蒸気を膨張弁60に供給するとともに、冷媒液をポンプ70に供給する。膨張弁60は、冷媒蒸気を低温、低圧の冷媒液とする。蒸発器40は、膨張弁60によって低温、低圧にされた冷媒液に外部から吸熱した熱H2を与えて冷媒を蒸発させる。圧縮器20は、外部からの電力Pによって、蒸発器40から供給された冷媒蒸気を圧縮する。

【0089】
このヒートポンプ装置2000では、蒸気インジェクタ100は圧縮器20による冷媒の圧縮を補助して凝縮器30に所望の圧力の冷媒を供給するようにしている。その結果、所望の動作状態を実現するために外部から与えるべき電力Pの電力量を低減することができる。これによって、このヒートポンプ装置2000は、COPを向上させた高効率ヒートポンプ装置として機能する。このヒートポンプ装置2000は、空気調和装置、冷凍装置、給湯装置など、ヒートポンプ装置を使用する各種装置に使用することができ、これによって高効率装置が実現される。

【0090】
ところで、上述した冷凍サイクル等のヒートポンプ装置への応用を考慮すると、COP等で表されるエネルギー効率の向上のために、吐出圧がより高い蒸気インジェクタを用いることが好ましい。本発明者らは、吐出圧がより高い蒸気インジェクタを実現するために鋭意検討したところ、スロート部の面積が所定値以下になると、吐出されるジェット液流の吐出圧が急激に増大することを初めて発見した。

【0091】
たとえば、本実施の形態1に係る蒸気インジェクタ100において、単位蒸気インジェクタ10におけるスロート部3の内部断面積を、所定の臨界断面積よりも小さく設定することによって、ディフューザ部4の吐出部4aから吐出される冷媒流の吐出圧が高くなる。

【0092】
以下、冷媒流の吐出圧が高くなる原理を、蒸気インジェクタの作動特性予測モデル(非特許文献3参照)に基づいて説明する。図24は、蒸気インジェクタの作動特性予測モデルを説明する図である。図24において、符号「0」は液流W1と蒸気流S1とを混合する領域の始点を示している。符号C1は、液流W1を導入し蒸気流S1と混合する領域を示している。この領域C1の断面積をAw0とする。また、符号C2は、蒸気流S1を導入し液流W1と混合する領域を示している。この領域C2の断面積をAs0とする。符号「1」はスロート部3を示す。符号「D」はディフューザ部4の吐出部4aを示している。これらの符号は以下の式において適宜変数の添え字として使用する。

【0093】
このモデルでは、まず、蒸気流S1はスロート部3で全量凝縮すると仮定する。また、蒸気流S1は臨界流となって混合部2に導入されると仮定し、臨界圧力から蒸気流S1の流速を算出する。さらに、流動構造や冷媒流の界面挙動は考慮しないこととする。

【0094】
まず、混合部2(「0」-「1」間)の液流W1、蒸気流S1、冷媒流F1に対して質量保存則の式、エネルギー保存則の式、運動量保存側の式を適用する。さらに、ディフューザ部4(「1」-「D」間)の冷媒流F1にベルヌイの式を適用する。これによって下記の式(1)が導かれる。なお、ここでは冷媒を水とした。すなわち、液流および蒸気流に関するパラメータの値としては、水流、水蒸気流の値を使用した。

【0095】
【数2】
JP0006195235B2_000003t.gif
ここで、式(1)では、スロート部3の内部断面積をA、導入部1における液流W1の質量流量、流速をそれぞれmw0、uw0、導入部1における蒸気流S1の質量流量、流速をそれぞれms0、us0、スロート部3における冷媒流F1の質量流量、流速をそれぞれm、u、混合部2、スロート部3、ディフューザ部4における圧力損失係数をそれぞれζ、ζ、ζ、液流W1の密度をρ、冷媒流F1の吐出部4aにおける吐出圧をPとしている。また、式(1)を導出する際には、Aw0を7.54×10-7とし、As0を5.42×10-6とした。このとき、As0/Aw0は約7.2である。また、導入部1における液流W1の温度Tw0を20℃とし、ζを0.37とした。

【0096】
式(1)において、ζを0.05、ζを0.1、ζを0.15とし、mw0を1.27×10-2kg/sとし、導入部1における蒸気流S1の圧力Pを0.10MPa、0.13MPa、または0.15MPaとした場合に、スロート部3の内径Dを変化させたときの吐出圧Pの変化を算出した。ここで、1気圧は0.1024MPaである。なお、スロート部3は断面円形とする。このとき、内部断面積Aに対して、π(D/2)=Aが成り立つ。

【0097】
図25は、スロート部3の内径Dと吐出圧Pとの関係を示す図である。図26は、図25に示す曲線の1階微分係数を示す図である。図27は、図25に示す曲線の2階微分係数を示す図である。図25~27を導出する際には、Dの値を0.01mm刻みで変化させて計算を行った。図25に示すように、いずれの圧力Pの値についても、内径Dを6.0mmから減少させても、吐出圧Pは略一定であった。しかし、いずれの圧力Pの値についても、内径Dが約1.0mmを臨界値として、内径Dが臨界値より小さい値(たとえば600μm)では吐出圧Pが非線形的に急激に増加することが式(1)の解析から確認された。また、図26に示すように、図25に示す内径Dと圧力Pとの関係を示す曲線の1階微分係数は、内径Dが1.0mmよりも大きいときはほぼ0である。しかし、約1.0mmを臨界値として、内径Dが臨界値より小さい値では0より小さくなり、その後急激に減少する。さらに、図27に示すように、図25に示す内径Dと圧力Pとの関係を示す曲線の2階微分係数は、内径Dが1.0mmよりも大きいときはほぼ0である。しかし、約1.0mmを臨界値として、内径Dが臨界値より小さい値では0より大きくなり、その後急激に増大する。

【0098】
そこで、単位蒸気インジェクタ10において、スロート部3の内径D、または内部断面積Aを、吐出圧Pが増加する臨界値(内径または断面積)より小さい内径または断面積とすることによって、従来なし得なかった高い吐出圧を実現することができる。このような臨界値より小さい内径または断面積では、スロート部3の内径Dまたは内部断面積Aの変化に対する、吐出圧Pの変化を表す曲線(すなわち、図25に示す曲線)の1階微分係数が0より小さくなっている。また、2階微分係数は0より大きくなっている。したがって、このような1階または2階の微分係数が0から変化する内径Dまたは内部断面積Aとすることによって、高い吐出圧Pが実現される。

【0099】
なお、上記の図25、26、27では、内径Dが臨界値よりも大きい場合は、吐出圧Pは略一定であり、その変化を示す曲線の1階および2階の微分係数はほぼ0である。したがって、臨界値は、1階または2階の微分係数が0から変化する値として定義することができる。一方、内径Dが臨界値よりも大きい場合に、吐出圧Pが略一定ではなく、その変化を示す曲線の1階および2階微分係数が0ではない場合もある。そのような場合は、2階微分係数が、内径Dまたは内部断面積Aの減少に応じて10%以上上昇する値を、臨界値として定義してもよい。たとえば、内径Dを1.0mmから0.9mmに減少させたときに、2階微分係数が1.0から1.1に、10%上昇した場合には、内径Dの臨界値は1.0mmと定義してもよい。

【0100】
また、吐出圧Pが増加する臨界値(内径または断面積)は、式(1)に含まれる各パラメータの値によって変化する。したがって、各パラメータの値を勘案して、スロート部3の内径Dまたは内部断面積Aを臨界値より小さくなるように設定すれば、高い吐出圧Pを得ることができる。たとえば、冷媒が水ではなく他の冷媒の場合は、水に関するパラメータを、使用する冷媒に関するパラメータに置き換えて、スロート部3の内径Dまたは内部断面積Aを設定すればよい。

【0101】
つぎに、式(1)において、スロート部3の内部断面積Aを2.83×10-7(内径Dとしては600μm)とし、mw0を1.27×10-2kg/s、1.43×10-2kg/s、または1.59×10-2kg/sとした場合に、導入部1における蒸気流S1の圧力Pを変化させたときの吐出圧Pの変化を算出した。

【0102】
図28は、導入部1における蒸気流S1の圧力Pと吐出圧Pとの関係を示す図である。図28に示すように、圧力Pを高めるほど吐出圧Pを高くすることができることを式(1)の解析から確認した。

【0103】
なお、このようにスロート部3の内径D、または内部断面積Aを小さくすると、単位蒸気インジェクタ10の吐出量は少なくなるが、本実施の形態1に係る蒸気インジェクタ100のように、複数の単位蒸気インジェクタ10を集積した構成とすることによって、小型であり、高い吐出圧を実現しつつ、吐出量の量を多くすることができる。

【0104】
つぎに、樹脂材料を用いて蒸気インジェクタを実際に作製し、その動作を実証する実験を行った。図29は、作製した単位蒸気インジェクタ(サンプル1)の構成を模式的に示す図である。なお、サンプル1では図29に示すようにドレイン管5および逆止弁6を設けた。サンプル1のAs0/Aw0は36.2とした。また、その他に6種類のサンプルを作製した。すなわち、逆止弁を設けない以外はサンプル1と同じ構成のもの(サンプル2)、逆止弁およびドレイン管を設けない以外はサンプル1と同じ構成のもの(サンプル3)である。また、図27に示す構成のもので、As0/Aw0を7.2としたもの(サンプル4)、逆止弁を設けない以外はサンプル1と同じ構成のもの(サンプル5)、逆止弁およびドレイン管を設けない以外はサンプル1と同じ構成のもの(サンプル6)である。また、図29に示す構成に、さらにAs0/Aw0を可変にできる機構を設けたもの(サンプル7)である。このような可変機構は、液流導入部1aの混合部2への突出量を変更できるように構成することで実現できる。

【0105】
なお、サンプル1~7の共通の構成としては、混合部2の長さを22.5mmとし、混合部2の、スロート部3の反対側の内径を3.4mmとし、液流W1を導入する断面積Aw0を1.94m(内径としては1.57mm)とし、スロート部3の内径Dを600μmと、ディフューザ部4の長さを14.4mmとし、ディフューザ部4の吐出部4aの内径を2.0mmとした。また、ドレイン管5については内径を0.45mmとした。

【0106】
また、本実験においても、冷媒として水を用い、以下のように実験条件を調整可能な実験系を用いた。まず、導入部における蒸気流の圧力Pは0.11MPa~0.15MPaの範囲で調整可能である。また、導入部において、液流の温度Tw0は11.9℃~26℃の範囲、蒸気流の温度Ts0は101.4℃~111.2℃の範囲で調整可能である。また、導入部における液流の流速mw0は1.59ml/s~2.20ml/s(なお、液流の密度はたとえば958kg/mである)の範囲で調整可能である。また、導入する液流または蒸気流の溶存酸素量DOまたはDOは0.8mg/l~8.0mg/lの範囲で調整可能である。

【0107】
(実験1)
サンプル3(As0/Aw0=36.2、ドレイン管および逆止弁無し)の蒸気インジェクタを用いて、はじめに、Tw0=12.6℃の液流を導入したところ、蒸気インジェクタ内の混合部およびスロート部に水の液体が静的に蓄積した。この状態で、つぎに、P=0.11MPa、Ts0=102.3℃の蒸気流を導入した。すると、混合部において液体の流動が生じ、ディフューザ部の吐出部から冷媒流が吐出され、蒸気インジェクタの動作が確認された。

【0108】
(実験2)
サンプル4(As0/Aw0=7.2、ドレイン管および逆止弁有り)の蒸気インジェクタを用いて、はじめに、Tw0=24.5℃、mw0=1.59ml/s、DO=1.64mg/lの液流を導入し、つぎに、蒸気流を導入した。すると、混合部において液体の流動が生じ、ディフューザ部の吐出部から冷媒流が吐出され、蒸気インジェクタの動作が確認されたが、動作が不安定になる場合があった。

【0109】
図30は、安定動作時および不安定動作時における導入される蒸気流の圧力およびドレイン管内の圧力を示す図である。横軸は測定開始時からの経過時間である。図30において、Pinはドレイン管内の圧力を示し、Pは蒸気流の圧力を示している。また、「Stable」は蒸気インジェクタが安定動作状態にあることを意味し、「Unstable」は蒸気インジェクタが不安定動作状態にあることを意味する。

【0110】
図30に示すように、安定動作時にはPinがPよりも低く、混合部内が負圧になっていた。一方、不安定動作時にはPがPinよりも低く、混合部内が正圧となっており、かつPの値が不安定であり、安定した蒸気流の導入が行われない状態であることが確認された。

【0111】
(実験3-1、3-2、3-3)
サンプル7(As0/Aw0可変、ドレイン管および逆止弁有り)の蒸気インジェクタを用いて、はじめに、Tw0=21.7℃、mw0=1.91ml/s、DO=2.4mg/lの液流を導入し、つぎに、P=0.13MPa、DO=3.5mg/lの蒸気流を導入する実験を行った。なお、As0/Aw0については、4.4、15.1、または38.3に設定した。

【0112】
すると、蒸気インジェクタは、As0/Aw0=4.4およびAs0/Aw0=38.3の場合は動作せず、As0/Aw0=15.1の場合はディフューザ部の吐出部から高い吐出圧の冷媒流が吐出され、蒸気インジェクタの動作が確認された。

【0113】
本発明者らがさらに実験を行ったところ、As0/Aw0の値としては、7以上30以下の範囲にある場合が蒸気インジェクタの動作上好ましく、10以上20以下である場合が、安定動作上さらに好ましい。

【0114】
なお、上記実施の形態では、2枚の板状の構成部材を接合することによって、単位上記インジェクタおよび冷媒流合流部の構成を形成するようにしているが、たとえば2以上の板状または非板状の構成部材を接合することによって、単位上記インジェクタおよび冷媒流合流部の構成が形成されるように、各構成部材の形状を設計してもよい。

【0115】
また、上記実施の形態では、蒸気インジェクタは、一組の構成部材が接合して形成されているが、本発明はこれに限定されず、他の方法によって形成してもよい。

【0116】
また、上記実施の形態で、複数の単位蒸気インジェクタは、その混合部、スロート部、およびディフューザ部のサイズ(内部断面積や長さ、角度)が、複数の単位蒸気インジェクタ間で互いに同一でもよいし、互いに異なるものが含まれていてもよい。各単位蒸気インジェクタのサイズが互いに同じである構成では、ある動作条件においてより吐出量を多くかつ吐出圧を高くすることができる。一方、互いにサイズが異なる単位蒸気インジェクタが含まれている構成では、各単位蒸気インジェクタの最適動作条件が互いにずれるようにサイズを設計しておけば、動作条件が変化した場合でも、その動作条件で動作する単位蒸気インジェクタが含まれるようにできる。その結果、広い動作条件で動作する蒸気インジェクタを実現することができる。

【0117】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0118】
1、1´ 導入部
1a 液流導入部
1b 蒸気流導入部
2 混合部
3 スロート部
4 ディフューザ部
4a 吐出部
5 ドレイン管
6 逆止弁
10 単位蒸気インジェクタ
20 圧縮器
30 凝縮器
40 蒸発器
50 気液分離器
100 蒸気インジェクタ
101、102、103、104、105 板状構成部材
101a、102a 冷媒液供給口
101b、102b 冷媒蒸気排出口
102c、105a 冷媒液排出口
102d、105b 冷媒蒸気供給口
102e 冷媒液流路
102f 冷媒蒸気流路
102g 冷媒流合流流路
106 冷媒流吐出口
1000、2000 ヒートポンプ装置
C1、C2 領域
F1 冷媒流
H1、H2 熱
P 電力
S1 蒸気流
W1 液流
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28
【図30】
29