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明細書 :マイクロ波照射によりナノ銀粒子を担持させるナノ銀担持方法、及びその義歯

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-227345 (P2014-227345A)
公開日 平成26年12月8日(2014.12.8)
発明の名称または考案の名称 マイクロ波照射によりナノ銀粒子を担持させるナノ銀担持方法、及びその義歯
国際特許分類 A61K   6/04        (2006.01)
A61C  13/00        (2006.01)
FI A61K 6/04
A61C 13/00
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2013-105663 (P2013-105663)
出願日 平成25年5月17日(2013.5.17)
発明者または考案者 【氏名】高橋 昌平
【氏名】上川 善昭
【氏名】西 恭宏
【氏名】永山 知宏
【氏名】受川 悟
出願人 【識別番号】513124569
【氏名又は名称】株式会社愛歯
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
【識別番号】508278941
【氏名又は名称】株式会社ピカパワー
個別代理人の代理人 【識別番号】100177220、【弁理士】、【氏名又は名称】小木 智彦
審査請求 未請求
テーマコード 4C089
Fターム 4C089AA06
4C089BA08
4C089BC05
4C089BC12
4C089BE02
4C089CA03
4C089CA10
要約 【課題】義歯に銀イオンをコーティングすることで抗菌効果を発揮する技術に対しても、より優れた抗菌効果を有し、特に、日常、飲食物を咀嚼する行為が連続して行われる義歯に適用することを考慮し、咀嚼行為が連続しても、抗菌効果を持続する手段を提供する。
【解決手段】フィチン酸、ポリアクリル酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び酢酸銀により生成された常温の銀水溶液中に、義歯を浸漬した状態でマイクロ波照射を行うことにより、ナノ銀粒子を離散して義歯に担持させる。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
常温の銀水溶液中に対象物を浸漬し、マイクロ波を照射することにより、ナノ銀を離散して担持させることを特徴とする、ナノ銀担持方法。
【請求項2】
前記銀水溶液は、フィチン酸、ポリアクリル酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸銀により生成されたものである請求項1に記載のナノ銀担持方法。
【請求項3】
前記対象物が義歯である請求項1又は2に記載のナノ銀担持方法。
【請求項4】
常温の銀水溶液に浸漬した義歯に、マイクロ波を照射することにより、ナノ銀粒子を離散して担持させたことを特徴とする、義歯。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波照射によりナノ銀粒子を担持させるナノ銀担持方法、及びその義歯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、マイクロ波照射によりターゲット物体に銀イオンをコーティングする技術が知られている(例えば、特許文献1)。該特許文献1に記載の発明は、抗菌性、防汚性、防臭性が持続する抗菌コーティング可能な銀イオン定着物の提供を目的の一つとしたものである([0010]参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特許第4324639号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載の発明は、ターゲット物体に銀イオンをコーティングすることで、抗菌効果を発揮するものである。しかしながら、この技術よりも、より簡単に銀イオンを義歯にコーティングし、かつ、より優れた抗菌効果を有する発明が望まれていた。
【0005】
特に、日常、飲食物を咀嚼する行為が連続して行われる義歯に適用することを考慮し、咀嚼行為が連続しても、抗菌効果を持続する発明が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1に、常温の銀水溶液中に対象物を浸漬し、マイクロ波を照射することにより、ナノ銀を離散して担持させることを特徴とする、ナノ銀担持方法。
第2に、上記第1のナノ銀担持方法であって、前記銀水溶液は、フィチン酸、ポリアクリル酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸銀により生成されたものである。
第3に、上記第1のナノ銀担持方法であって、前記対象物が義歯であるナノ銀担持方法。
第4に、常温の銀水溶液に浸漬した義歯に、マイクロ波を照射することにより、ナノ銀粒子を離散して担持させたことを特徴とする、義歯。
【0007】
ここで、「マイクロ波を照射」する際は、義歯に対し、出力500Wで30秒から90秒、望ましくは60秒程度で、義歯の表と裏の両面に対して、それぞれ行う。
【0008】
「離散して担持させる」とは、コーティングのように膜形成をするのではなく、粒子を分散させて担持させることを示すものである。
【0009】
前記銀水溶液は、フィチン酸、ポリアクリル酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び、酢酸銀を含有する安全性の高い銀水溶液500ミリリットルに、アルコール製剤50ミリリットル~150ミリリットル、望ましくは100ミリリットルを混合したものを用いることにより、担持したナノ銀粒子の接合力の向上を図っている。
【発明の効果】
【0010】
義歯に、ナノ銀粒子を離散して担持することにより、優れた抗菌効果を有し、また、咀嚼行為が連続しても、抗菌効果を持続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ナノ銀粒子を担持状態の説明図で、(a)は層状にコーティングした形態を示し、(b)は離散して担持した形態を示す。
【図2】担持したナノ銀粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した結果を示す写真である。
【図3】試験片表面に付着したC.albicansのCFU/mlについて、観察した結果を示す写真である。
【図4】試験片表面の低真空SEMによって観察した結果を示す写真である。
【図5】試験片表面に付着したC.albicansのCFU/mlの片対数グラフである。
【図6】口腔内における臨床試験の方法を説明するための図である。
【図7】耐摩耗試験について、培養1時間の結果を示す写真である。
【図8】耐摩耗試験について、培養4時間の結果を示す写真である。
【図9】耐摩耗試験について、培養8時間の結果を示す写真である。
【図10】耐摩耗試験について、加工片に付着したCFU/mlについての結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)銀水溶液の準備
まず、フィチン酸、ポリアクリル酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、及び、酢酸銀を含有する食品添加物からなる安全性の高い銀水溶液を、500ミリリットル準備する。次に、アルコール製剤を100ミリリットル量り、銀水溶液500ミリリットルと充分に撹拌する。
処理を施す際には、銀水溶液とアルコール製剤が混合した水溶液を400ミリリットルを準備し、常温状態の20℃前後に設定する。
アルコール製剤は蒸発するので、処理前に都度、水溶液400ミリリットルに対し、10%程度加え、充分に撹拌する。
ここで、テフロン(登録商標)製の容器を用いることで、ナノ銀の付着を低減するようにしている。

【0013】
(2)義歯の浸漬
充分に撹拌した銀水溶液を、容器に移した状態で、該銀水溶液に義歯を浸漬する。
この際、浸漬した義歯と銀水溶液面との距離が5mm以上~25mm以下となる
ように設定する。
なお、義歯を2つ入れる場合には、義歯同士が重ならないようにする。

【0014】
(3)マイクロ波の照射
銀水溶液に義歯を浸漬した容器を、マイクロ波照射器に入れ、ナノ銀粒子の粒子径を制御する為に、出力500Wで30秒から90秒、望ましくは60秒程度に設定し、マイクロ波を照射する。
照射後、マイクロ波照射器から容器を取り出す。
義歯を、一度取り出した後、表裏を逆にして、銀水溶液に再び浸漬する。
再度、同じ条件にてマイクロ波を照射する。
マイクロ波の照射によって、ナノ銀粒子を義歯の表裏に離散的に担持させることができる。
ここで、マイクロ波の照射は、銀水溶液が常温状態(20℃前後)であることを確認した上で、水溶液の上昇温度を60℃以下に保っている為、照射の際に義歯が変形することを防ぐことができる。
このように、マイクロ波の照射が常温で行われるので、図1に示すように、義歯の表面に、銀が薄膜を形成するのではなく(図1(a))、ナノ銀粒子となって、離散的に義歯の表面に担持する(図1(b))。これは、図2の担持したナノ銀粒子について、走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した結果からも明らかである。

【0015】
(4)義歯の後処理
義歯を、容器から取り出す。
取り出した義歯は、流水下で軽くすすいだ後、水気をよく切る。

【0016】
(5)耐水抗菌持続性試験(ISO22196)
上記でフィチン酸、ポリアクリル酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸銀を
含有する安全性の高い銀水溶液について、ISO22196によって試験した結果を
[表1]に示す。

【0017】
【表1】
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【0018】
上記結果から、カンジダ菌のみではなく、黄色ブドウ球菌、大腸菌に対する抗菌効果が確認できる。

【0019】
(6)24時間後および3ヶ月後の耐水抗菌持続性試験(ISO22196)
上記でフィチン酸、ポリアクリル酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸銀を含有する安全性の高い銀水溶液について、ISO22196によって3ヶ月試験した結果を[表2]に示す。

【0020】
【表2】
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【0021】
24時間後のデータでは、未処理試験片の生菌数は、10の6乗オーダーであるのに対し、抗菌処理試験片の生菌数は「検出されず」、3ヶ月後のデータでは、未処理試験片の生菌数は、10の7乗オーダーであるのに対し、抗菌処理試験片の生菌数は「検出されず」、その結果、抗菌効果が持続していることが確認できた。

【0022】
(7)ナノ銀粒子の分布状態確認試験
図2に、マイクロ波照射を、a)未処理、b)1分処理、c)2分処理した場合の、Co合金上に担持したナノ銀粒子について、走査型電子顕微鏡によって観察した結果を示す。
図2によると、a)未処理の場合はナノ銀粒子が存在せず、b)1分処理の場合は粒子径が約30nmのナノ銀粒子が点在して見られ、c)2分処理の場合は粒子径が
約50nmのナノ銀粒子が1分処理の場合より多くの数が点在して見られた。
この結果から、マイクロ波の照射時間を増やすと、担持量、粒子径が増大することが確認できる。図2の各写真において、右下の目盛りは、1目盛りあたり200ナノメートルを示しており、10個の目盛り全部(フルオーダー)で2.00マイクロメートルを示している。

【0023】
(8)カンジダ培養試験
C.albicansまたはC.glabrata懸濁液(約5×10cells/ml)を、滅菌マイクロプレートを用いて、抗菌処理試験片及び未処理試験片について、室温で撹拌培養した(1、3、8、12時間後の培養結果の写真を図3に示す)。
PBS(リン酸緩衝生理食塩水)洗浄後、新しい滅菌マイクロプレートに、抗菌処理片及び未処理片を移した後、界面活性剤で洗浄処理し、抗菌処理片及び未処理片に付着した真菌細胞を完全に剝離した。
剥離後、クロモアガー・カンジダ培地に塗布し、37℃で24時間培養し、CFU(Colony forming unit;コロニー形成単位)数を測定した。
図3に、抗菌処理試験片及び未処理試験片の表面に付着したC.albicansのCFU/mlについての結果を示す。培養時間が長くなるに従って、C.albicansの付着が促進されることが確認できるが、抗菌処理片は、未処理片に比べて、付着が抑制できることが確認できる。
図4に、抗菌処理試験片及び未処理試験片の表面に付着した低真空SEM観察像を示す。
図5に、抗菌処理試験片及び未処理試験片の表面C.albicansのCFU/mlの片対数グラフを示す。
図3~5から、ナノ銀粒子は、カンジダの義歯材料への付着を抑制することが確認でき、義歯へのナノ銀粒子の適用が有効であることが示された。

【0024】
(9)口腔内における臨床的試験
担持されたナノ銀粒子は、義歯材料表面で抗菌作用を持つ事が、前記の試験で確認された。そこで、臨床を目的にナノ銀粒子を用いて口腔カンジダ症の抑制を検証する為に、口腔内に装着した義歯床表面で抗菌作用を持つ事を確認する試験を行った。試験の具体的な方法は、図6に示す。(1)義歯の後縁より5mm部分を正中(義歯の中央線)より、3ヶ所に5mm程度の穴をあける。(2)この穴に入る直径5mmのレジンチップを作製する。ここで、2枚が上述の抗菌処理を行い、1枚を未処理とする。(3)この3枚のレジンチップを義歯本体に埋め込んで、(4)当該義歯を口腔内に装着して、所定期間経過後(7日間)に、細菌数を測定する。

【0025】
この方法で、上顎の口蓋を覆う義歯を装着した試験協力者5名について、臨床的試験をした。ここでは、7日間口腔内に装着後、3枚の試験片を取り出し、表面に付着したカンジダ菌を剥離させて培養し、その数(CFU/ml)を検索した。
その結果を、[表3]に示す。

【0026】
【表3】
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【0027】
上記の結果から、7日間使用後、抗菌効果が持続することが確認された。

【0028】
(10)介護施設での試験
熊本県、鹿児島県、北海道に存在する介護施設において、試験協力者の方に、ナノ銀粒子を離散して担持させた義歯を使用してもらった。
使用後、アンケートを収集した結果を[表4]に示す。
また、試験終了後、義歯を観察した結果、ぬめり、白い斑点の付着がないことが確認できた。
【表4】
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【0029】
(11)耐摩耗試験
C.albicans標準株の機械的ブラッシングによる影響を調べた。
試験片は、ブラッシング無し、10回、50回、100回、500回、1000回で、適切な加圧をして表面をブラッシングしたものを用意した。
各試験片は、耐磨耗試験用として使用。マイクロプレート(2ml/well)を用いて、室温で、1時間、4時間、8時間について、10倍希釈塗布下で各々培養した。
寒天培地に塗布し、36℃で24時間培養し、各培地を写真撮影した。
この写真として、図7に、C.albicans標準株の培養1時間後の結果、図8にC.albicans標準株の培養4時間後の結果、図9に、C.albicans標準株の培養8時間後の結果を示す。さらに、図10に、耐摩耗試験について、加工片に付着したCFU/mlについての結果を示す。当該グラフにより、実際のナノ銀粒子の付着量を計測することにより、ブラッシングの回数が増えるに従って、ナノ銀粒子の付着量は減少するが、抗菌効果としては持続されていることが示される。この図10において、ブラッシング回数に応じた各時間の結果は、次の通りであった。
ブラッシング回数0回は、1時間0.5CFU/ml、4時間14.3CFU/ml、8時間8.3CFU/ml、濃度0.2637であった。
ブラッシング回数10回は、1時間0.5CFU/ml、4時間8.8CFU/ml、8時間21.0CFU/ml、濃度0.1809であった。
ブラッシング回数50回は、1時間0.0CFU/ml、4時間9.5CFU/ml、8時間24.8CFU/mlであった。
ブラッシング回数100回は、1時間1.0CFU/ml、4時間12.0CFU/ml、8時間20.0CFU/ml、濃度0.1636であった。
ブラッシング回数500回は、1時間1.0CFU/ml、4時間11.3CFU/ml、8時間23.0CFU/mlであった。
ブラッシング回数1000回は、1時間1.0CFU/ml、4時間6.3CFU/ml、8時間23.8CFU/ml、濃度0.0735であった。
ブラッシング回数10000回は、濃度0.0257であった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
9