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明細書 :シルセスキオキサン構造を有するイオン液体及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-221737 (P2014-221737A)
公開日 平成26年11月27日(2014.11.27)
発明の名称または考案の名称 シルセスキオキサン構造を有するイオン液体及びその製造方法
国際特許分類 C07F   7/18        (2006.01)
C08G  77/28        (2006.01)
C07C 311/48        (2006.01)
H01B   1/06        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07F 7/18 Y
C08G 77/28
C07C 311/48 CSP
H01B 1/06 Z
H01B 13/00 Z
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 9
出願番号 特願2013-101422 (P2013-101422)
出願日 平成25年5月13日(2013.5.13)
発明者または考案者 【氏名】金子 芳郎
出願人 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査請求 未請求
テーマコード 4H006
4H039
4H049
4J246
5G301
Fターム 4H006AA01
4H006AA02
4H006AB78
4H006AB90
4H006AC90
4H006BA52
4H039CA92
4H039CD40
4H049VN01
4H049VP10
4H049VQ36
4H049VQ86
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS36
4H049VT50
4H049VU26
4H049VW02
4J246AA03
4J246BA12X
4J246BA120
4J246BB02X
4J246BB020
4J246BB022
4J246CA120
4J246CB02
4J246FA061
4J246FA131
4J246FA421
4J246FA621
4J246FB301
4J246FB302
4J246GA01
4J246GB02
4J246GB12
4J246GC13
4J246GC15
4J246GC55
4J246HA65
4J246HA67
4J246HA68
5G301CA30
5G301CD10
5G301CE10
要約 【課題】容易に製造することができるSQ構造を有するイオン液体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】TMTESPACにTFSI水溶液を加え、撹拌する。例えば、TFSI水溶液の濃度は0.5mol/Lとし、TMTESPACに対するTFSIのモル比(TFSIの量(mol)/TMTESPACの量(mol))は1.5とする。また、例えば撹拌は室温で2時間行う。その後、この水溶液から相分離した粘性のある生成物をデカンテーションにより単離し、水で洗浄する。更に、減圧下での乾燥を行う。続いて、メタノールに溶解させる。そして、例えば60℃の開放系で蒸発乾燥し、更に150℃のオーブンで加熱する。メタノールへの溶解及びその後の加熱は、減圧乾燥後にも生成物中に僅かに含まれる水を取り除くための処理である。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
構造式が下記の化学式1で表されることを特徴とするイオン液体。
【化1】
JP2014221737A_000004t.gif

【請求項2】
トリフルオロメタンスルホンイミド水溶液を触媒として、四級アンモニウム塩含有有機トリアルコキシシランのゾル-ゲル反応を生じさせる工程を有することを特徴とするイオン液体の製造方法。
【請求項3】
前記四級アンモニウム塩含有有機トリアルコキシシランは、トリメチル[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリドであることを特徴とする請求項2に記載のイオン液体の製造方法。
【請求項4】
前記ゾル-ゲル反応を生じさせる工程の後に、前記ゾル-ゲル反応後に含まれる水分を除去する工程を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のイオン液体の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シルセスキオキサン構造を有するイオン液体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イオン液体は、不揮発性、難燃性、イオン導電性、高い熱安定性などの特徴を有することから、キャパシタ、リチウムイオン電池、色素増感太陽電池、燃料電池等の電解質としての利用が期待されている(非特許文献1参照)。
【0003】
イオン液体の定義として「室温付近(100℃以下)に融点(Tm)を有する塩であり、イオンのみからなる液体」が一般的に受け入れられている(非特許文献2参照)。しかし、必ずしも100℃以下にTmがあるものに限定されるわけではなく、非晶質なイオン液体においては、Tmは存在せず、ガラス転移点(Tg)のみを示すものも報告されている。例えば、非晶質なイオン液体である1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートは、-85℃にTgを示すがTmは存在しない(非特許文献3参照)。これは、かさ高い置換基の影響によるものと考えられるが、このようなイオン液体はTg以上で流動性を示す、いわゆる「液体」となる。また、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオンとリン酸誘導体アニオン([(MeO)(R)PO2])からなるイオン液体も、Tmを示さずTgのみが観測されることが報告されている(非特許文献4参照)。このため、イオン液体を「室温付近(100℃以下)で『液体』の状態を示す、カチオン及びアニオンのみから構成される『塩』」と定義することもできる。
【0004】
イオン液体に用いられるカチオンには、四級アンモニウムやイミダゾリウム、ピリジニウムなどがあり、一方アニオンとしては、臭化物イオンやトリフラートなどのハロゲン系、テトラフェニルボレートなどのホウ素系、ヘキサフルオロホスフェートなどのリン系などがある。
【0005】
一般に、無機イオン同士からなる塩には、室温でイオン液体になるものは比較的少なく、多くのイオン液体はカチオン及びアニオンの両方又は一方が有機イオンから構成されている。しかし、無機成分(例えばシロキサン(Si-O-Si)結合を骨格とする材料)をより多く含むイオン液体の開発は、耐久性や耐熱性、難燃性の向上が予想され、より安全な電解質としての利用が期待される。例えば、自動車用途でのリチウムイオン電池やキャパシタ用の電解質においては、事故の際に被害を最小限に食い止めるためにも難燃性の性質が非常に重要となる。以上の背景より、最近、Si-O-Si結合骨格材料であるかご型オクタシルセスキオキサン(以下、シルセスキオキサンを「SQ」ともいう)の側鎖にカルボキシレートアニオン、対イオンにイミダゾリウムカチオンを有するものが室温付近にTmをもつイオン液体の性質を示すことが報告されている(非特許文献5参照)。
【0006】
しかしながら、かご型オクタSQイオン液体は、多段階の反応および煩雑な精製過程を要することから、SQ構造を有するイオン液体のより簡便な合成手法の開拓が求められている。
【0007】
一方でこれまでに本発明者らは、SQの原料となるアミノ基含有有機トリアルコキシシランを酸水溶液中で加水分解/縮合反応(ゾル-ゲル反応)することにより、はしご型ポリSQ(特許文献1、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8)やかご型オリゴSQ(非特許文献9)などの規則的な構造をもつ溶媒に可溶なカチオン性SQが得られることを報告している。さらに、シアノ基含有有機トリアルコキシシランを塩基水溶液中でゾル-ゲル反応することによっても、溶媒に可溶なアニオン性はしご型ポリSQが合成できることを見出している(非特許文献10)。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特許第4555962号公報
【0009】

【非特許文献1】石川正司著,未来エネルギー社会をひらくキャパシタ,ケイ・ディー・ネオブック,3章,p.83-88,2007年
【非特許文献2】最先端材料システムOne Point イオン液体,高分子学会編,共立出版,2012年
【非特許文献3】T. Nishida et al., Journal of Fluorine Chemistry, vol.120, p.135-141, 2003年
【非特許文献4】H. Ohno et al., Green Chemistry, vol.10, p.44-46, 2008年
【非特許文献5】Y. Chujo et al., Journal of the American Chemical Society, vol.132, p.17649-17651, 2010年
【非特許文献6】Y. Kaneko et al., Chemistry of Materials, vol.16, p.3417-3423, 2004年
【非特許文献7】Y. Kaneko et al., Polymer, vol.46, p.1828-1833, 2005年
【非特許文献8】Y. Kaneko et al., International Journal of Polymer Science, Article ID 684278, 2012年
【非特許文献9】Y. Kaneko et al., Journal of Materials Chemistry, vol.22, p.14475-14478, 2012年
【非特許文献10】Y. Kaneko et al., Polymer, vol.53, p.6021-6026, 2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、容易に製造することができるSQ構造を有するイオン液体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、上記の従来の手法は、反応中にイオンになり得る置換基をもつ有機トリアルコキシシランであれば、規則構造を有するイオン性SQの合成に適用できるため、種々の有機トリアルコキシシランを用いてゾル-ゲル反応を検討することで、イオン液体となるSQの合成も可能ではないかとの考えに至った。そして、本発明者らによって既に報告されたカチオン性SQ(特許文献1、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)の合成手法におけるモノマーを四級アンモニウム塩含有有機トリアルコキシシランに、酸触媒をトリフルオロメタンスルホンイミド(TFSI:(CF3SO22NH)水溶液にすることで、SQ骨格をもつイオン液体が得られることを見出した。
【0012】
本発明に係るイオン液体は、構造式が下記の化学式1で表されることを特徴とする。
【0013】
【化1】
JP2014221737A_000003t.gif

【0014】
本発明に係るイオン液体の製造方法は、トリフルオロメタンスルホンイミド水溶液を触媒として、四級アンモニウム塩含有有機トリアルコキシシランのゾル-ゲル反応を生じさせる工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、SQ構造を有するイオン液体を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】イオン液体の製造方法を示す図である。
【図2】 1H NMR(核磁気共鳴)スペクトル測定の結果を示す図である。
【図3】EDX(エネルギー分散型X線分析)の結果を示す図である。
【図4】 29Si NMRスペクトル測定の結果を示す図である。
【図5】XRD(X線回折)測定の結果を示す図である。
【図6】試料の流動性の変化を示す図である。
【図7】DSC(示差走査熱量)測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者は、SQ骨格を有するイオン液体を合成するため、鋭意に研究した結果、本発明者らによって既に発明されたイオン性SQの合成手法において、モノマーに四級アンモニウム塩含有有機トリアルコキシシラン、触媒に超強酸であるTFSI水溶液を用いてゾル-ゲル反応するという簡易な手段により、室温付近にTgを示す非晶質なSQイオン液体を合成できることを見出した。

【0018】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。本発明の実施形態に係るイオン液体の構造式は上記の化学式1で表される。つまり、このイオン液体は、3-(トリメチルアンモニウム)プロピル基を側鎖に有している。また、このイオン液体の対イオンはTFSIアニオン((CF3SO22-)からなる。

【0019】
このイオン液体は、次のようにして製造することができる。図1は、イオン液体の製造方法を示す図である。

【0020】
先ず、原料(モノマー)として、四級アンモニウム塩含有有機トリアルコキシシランを準備する。四級アンモニウム塩含有有機トリアルコキシシランとしては、例えばトリメチル[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド(TMTESPAC)を用いる。また、触媒として、TFSI水溶液を準備する。次いで、TMTESPACにTFSI水溶液を加え、撹拌する。例えば、TFSI水溶液の濃度は0.5mol/Lとし、TMTESPACに対するTFSIのモル比(TFSIの量(mol)/TMTESPACの量(mol))は1.5とする。また、例えば撹拌は室温で2時間行う(図1中(a))。その後、この水溶液から相分離した粘性のある生成物をデカンテーションにより単離し、水で洗浄する(図1中の(b))。更に、減圧下での乾燥を行う(図1中の(c))。続いて、メタノールに溶解させる(図1中の(d))。そして、例えば60℃の開放系で蒸発乾燥し(図1中の(e))、更に150℃のオーブンで加熱する(図1中の(f))。メタノールへの溶解及びその後の加熱は、減圧乾燥後にも生成物中に僅かに含まれる水を取り除くための処理である。

【0021】
このような方法により、四級アンモニウム塩含有有機トリアルコキシシランのゾル-ゲル反応が生じ、上記の化学式1で表されるイオン液体を製造することができる。

【0022】
そして、このイオン液体は、後述の実験でも裏付けられているように、Si-O-Si結合を骨格とし、従来のイオン液体よりも耐久性、耐熱性及び難燃性を向上することができる。従って、より高い安全性が求められる用途でのキャパシタ、リチウムイオン電池、色素増感太陽電池、燃料電池等の電解質に極めて好適である。
【実施例】
【0023】
次に、本発明者が行った実験について説明する。なお、この実験における条件等は、本発明の実施可能性等を確認するために採用した例であり、本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
(第1の実験)
第1の実験では、先ず、ガラス容器中で0.9181g(3.0mmol)のTMTESPACに9.0mLの(4.5mmol)0.5mol/L TFSI水溶液を加え、室温で2時間撹拌した。その後、水溶液から相分離した粘性のある生成物をデカンテーションにより単離し、10mLの水で10回洗浄後、減圧乾燥した。更に、生成物中に僅かに含まれる水を取り除くために、2mLのメタノールを加えて溶解し、開放系で溶媒が蒸発するまで加熱(約60℃)した。その後、150℃のオーブンで2時間加熱することでSQイオン液体を得た(収量:1.0412g、2.40mmol unit、収率:80%)。そして、SQイオン液体の一部を採取し、JEOL製のECX-400 spectrometerによる1H 核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定、Philips製のXL-30 E-SEMによるエネルギー分散型X線分析(EDX)、JEOL製のECX-400 spectrometerによる29Si NMRスペクトル測定、大塚電子製のDLS-8000 spectrophotometerによる静的光散乱による分子量測定、及びX’Pert Pro diffractometer(PANalytical製)によるX線回折(XRD)測定による構造解析を行った。
【実施例】
【0025】
図2に、1H NMRスペクトル測定の結果を示す。図2に示すように、モノマーであるTMTESPAC中のエトキシ基(-CH2CH3)及びTFSI触媒中のスルホンイミド基(-NH)由来のピークが消失していた。このことから、生成物中に原料が残存していないことが確認された。
【実施例】
【0026】
図3に、EDXの結果を示す。図3に示すように、塩素(Cl)由来のピーク(2.6keV及び2.8keV付近)が観測されず、更にケイ素(Si)及び硫黄(S)の元素数比が約1:2(1.00:2.04)であった。このことから、生成物は等モルの四級アンモニウムカチオン及びTFSIアニオンから構成されていることが確認された。
【実施例】
【0027】
図4に、29Si NMRスペクトル測定の結果を示す。図4に示すように、3つのシロキサン結合を有するSi原子を表すT3ピーク(-67.1ppm)及び2つのシロキサン結合を有するSi原子を表すT2ピーク(-59.5ppm)が観測された。更に静的光散乱測定によるジムプロット法により、重量平均分子量(Mw)は1800と算出された。すなわち、この生成物はモノマー同士がシロキサン結合によってつながったオリゴマーであることが示唆された。
【実施例】
【0028】
図5に、XRD測定の結果を示す。図5に示すように、回折ピークが観測されず、非晶質であることが確認された。以上の結果より、生成物は非晶質なオリゴSQであることが確認された。
【実施例】
【0029】
以上の測定により生成物が非晶質なオリゴSQであることが確認されたので、次に、この生成物がイオン液体の性質を示すことを確認するために、以下の操作を行い目視観察した。先ず、生成物の入ったサンプル瓶を水平な状態で100℃のオーブン中で加熱し、その後、室温に戻した。次に、5℃おきに一定の温度にしてあるウォーターバス中でこのサンプル瓶を傾けた状態で15分間静置した。この操作を各温度で行ったところ、図6に示すように、約35℃以上で生成物が流動性を示すことが確認された。
【実施例】
【0030】
また、上記のようにして作製したSQイオン液体のDSC(示差走査熱量)測定も行った。この結果を図7に示す。-100℃~150℃の範囲で生成物のDSC測定を行ったところ、図7に示すように、13.5℃付近に吸熱ピークが観測された。昇温過程においてベースラインが下にシフトしていることから、この吸熱ピークはTgに由来することが示唆された。また、Tmは観測されなかった。これは、生成物が非晶質であるためである。
【実施例】
【0031】
合成に用いたモノマー(TMTESPAC)及び触媒(TFSI)はいずれも固体であり、更にDSC測定より100℃付近に水の蒸発に由来するピークが見られなかったことから、生成物は、他の媒体へ溶解した、いわゆる「溶液」ではないことが確認された。以上の結果より、今回得られた生成物はイオン液体であることが示唆された。
【実施例】
【0032】
また、Tg(13.5℃)と目視観察で流動性を示した温度(約35℃)に違いが生じた理由として、このSQイオン液体は、高粘性であることからTg以上の温度においてもすぐに流動性を示すことができなかったためと考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図7】
5
【図6】
6