TOP > 国内特許検索 > IV族クラスレートの製造方法 > 明細書

明細書 :IV族クラスレートの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-155698 (P2016-155698A)
公開日 平成28年9月1日(2016.9.1)
発明の名称または考案の名称 IV族クラスレートの製造方法
国際特許分類 C01B  33/02        (2006.01)
FI C01B 33/02 Z
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 11
出願番号 特願2015-033516 (P2015-033516)
出願日 平成27年2月24日(2015.2.24)
発明者または考案者 【氏名】大橋 史隆
【氏名】野々村 修一
【氏名】久米 徹二
【氏名】伴 隆幸
出願人 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000659、【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4G072
Fターム 4G072AA01
4G072AA02
4G072AA20
4G072BB09
4G072BB20
4G072GG03
4G072JJ08
4G072LL03
4G072MM36
4G072MM40
4G072UU02
4G072UU30
要約 【課題】膜状のクラスレートを安定して大量に製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明のクラスレートの製造方法は、ゲスト原子を収容している開口部5を有する容器3と、ホスト原子からなる基板2と、を反応容器1内に配置し、不活性ガスの雰囲気下で500℃以上の温度により0.5時間以上24時間以下の加熱時間で加熱して前駆体を生成する第一加熱工程と、容器3と基板2とを収容した状態で反応容器1を冷却する冷却工程と、基板2を、10-2Pa以下の陰圧下で300℃以上450℃以下の温度により1時間以上加熱する第二加熱工程とを備えている。本発明のクラスレート製造方法は、第一加熱工程において、基板2を、容器3の開口部5よりも低い位置に配置することを特徴とする。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
クラスレートの製造方法であって、
ゲスト原子を収容した開口部を有する容器と、IV族元素のホスト原子からなる基板と、を反応容器内に配置し、不活性ガスの雰囲気下で500℃以上の温度により0.5時間以上24時間以下の加熱時間で加熱する第一加熱工程と、
ゲスト原子を収容した前記容器とホスト原子からなる前記基板とが配置されている反応容器を冷却する冷却工程と、
前記基板を、10-2Pa以下の陰圧下で300℃以上450℃以下の温度により1時間以上加熱する第二加熱工程と、
を備えており、
第一加熱工程において、ホスト原子からなる前記基板を、前記容器の開口部よりも低い位置に配置することを特徴とするクラスレートの製造方法。
【請求項2】
前記冷却工程が徐冷工程であり、
当該徐冷工程の冷却速度が5℃/hr以上20℃/hr以下であることを特徴とする請求項1記載のクラスレートの製造方法。
【請求項3】
ホスト原子がシリコンであり、ゲスト原子がナトリウムであり、製造されるクラスレートがシリコンクラスレートであることを特徴とする請求項1または2に記載のクラスレートの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルマニウム、シリコン等のIV族元素をホスト原子としたIV族クラスレートを効率よく製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クラスレート(包摂化合物)は、ホスト原子によって形成される三次元的な籠状の構造の中にゲスト原子が内包されている化合物であり、従来の結晶構造物とは異なる特性を備えている。クラスレートは、その三次元的な構造の違いによって、I型(構造1、Type Iとも言う)からVIII型(構造8、TypeVIIIとも言う)に分類される。
【0003】
例えば、ホスト原子がシリコンであるシリコンクラスレートが、ナトリウムをゲスト原子として内包している場合、ナトリウムを多く含有するシリコンクラスレートは金属的性質を持つが、ナトリウムの含有量を低減したシリコンクラスレートは、半導体としてのバンドギャップ特性を明確に示すことが知られている。ナトリウムを内包するシリコンクラスレートを製造した場合には、主にI型とII型(構造2、TypeIIとも言う)の混合物からなるクラスレートが生成される。I型のシリコンクラスレートは、十二面体構造であるシリコン20と、十四面体構造であるシリコン24とで構成される立方晶構造を有している。II型のシリコンクラスレートは、十二面体構造であるシリコン20と、十六面体構造であるシリコン28とで構成される立方晶構造を有している。I型のシリコンクラスレートは、ナトリウム原子を一旦内包すると、その後の工程でナトリウム原子がほとんど除去されないという特性がある。これに対してII型のシリコンクラスレートは、加熱処理等を行うことによって、ナトリウムを除去して含有量を低減できることが知られている。そこで、半導体としての利便性を高めるために、II型のシリコンクラスレートを、膜状に高効率で製造する技術が求められている。
【0004】
また、ホスト原子がゲルマニウムで構成されているクラスレートは、ガリウムヒ素に近い特性を示すことから、太陽電池用の光吸収材料への応用が期待されている。その他にも、II型のIV族系クラスレートの中には、直接遷移型半導体として機能し、合金化により赤外から可視光領域において光の吸収特性を変化させることが可能なクラスレートが存在する。したがって、膜状のIV族クラスレートを効率よく製造することのできる、汎用性の高い技術が求められている。
【0005】
発明者は、これまで、膜状のシリコンクラスレートを製造する新規な方法を特許文献1に開示している。また、シリコンとゲルマニウムとをホスト原子とするII型クラスレートを製造する新規な方法を特許文献2に開示している。さらに、ゲルマニウムクラスレートを製造する新規な方法を特許文献3に開示している。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特許第5626896号公報
【特許文献2】特許第5641481号公報
【特許文献3】特開第2014-43599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明者によって上記特許および特許出願に開示された技術によって、膜状のシリコンクラスレートおよびゲルマニウムクラスレートを製造することが可能となった。しかしながら、時として、製造されるクラスレートが粉末状となり、膜状のクラスレートが製造できない場合があった。本発明はこのような従来の製造方法の問題点に鑑みてなされたものであって、均質な膜状のクラスレートをより安定して製造できる製造方法の提供を、解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、クラスレートの製造方法に関する。本発明のクラスレートの製造方法は、ゲスト原子を収容した開口部を有する容器と、IV族元素のホスト原子からなる基板と、を反応容器内に配置し、不活性ガスの雰囲気下で500℃以上の温度により0.5時間以上24時間以下の加熱時間で加熱する第一加熱工程と、ゲスト原子を収容した容器とホスト原子からなる基板とが配置されている反応容器を冷却する冷却工程と、前記基板を10-2Pa以下の陰圧下で300℃以上450℃以下の温度により1時間以上加熱する第二加熱工程と、を備えている。本発明のクラスレートの製造方法は、第一加熱工程において、ホスト原子からなる基板を、前記容器の開口部よりも低い位置に配置することを特徴とする。
【0009】
発明者らは、IV族元素のクラスレートが粉末状に形成される原因を調査した結果、第一加熱工程において、ホスト原子からなる基板をゲスト原子を収容した容器の開口部よりも低い位置に配置して加熱することで、加熱により蒸気となったゲスト原子をホスト原子に確実に供給することで、膜状のクラスレートを安定して製造できることを見いだして、本発明をなすに至った。
【0010】
さらに本発明のクラスレートの製造方法は、冷却工程が徐冷工程であり、この徐冷工程の冷却速度が5℃/hr以上20℃/hr以下であることが好ましい。5℃/hr以上20℃/hr以下という冷却速度は、通常の自然冷却よりも有意に遅い冷却速度であって、この間に好ましい構造のクラスレートの前駆体が形成される。
【0011】
本発明のクラスレートの製造方法は、ホスト原子がシリコンであり、ゲスト原子がナトリウムであり、製造されるクラスレートがシリコンクラスレートであることが、特に好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のクラスレートの製造方法は、第一加熱工程において、ホスト原子の基板を、ゲスト原子を収容した容器の開口部よりも低い位置に配置することで、ゲスト原子の蒸気とホスト原子とをより確実に反応させることができる。本発明の第一加熱工程に引き続き、第二加熱工程を行うことで、従来よりもクラスレートを膜状に安定して製造することが可能となる。
【0013】
さらに本発明のクラスレートの製造方法は、第一加熱工程と第二加熱工程との間の冷却工程を、冷却速度が5℃/hr以上20℃/hr以下である徐冷工程とすることで、膜状のクラスレートの製造が一層確実に行われる。
【0014】
本発明のクラスレートの製造方法によれば、膜状でII型の構造を有するクラスレートを、大量に製造することが可能となる。
【0015】
本発明のクラスレートの製造方法は、ホスト原子をシリコンとし、ゲスト原子をナトリウムとすることで、シリコンクラスレートを安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、クラスレートの好適な製造方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は、実施例で用いられるクラスレートの製造装置の縦断面図である。
【図3】図3は、実施例1と比較例の製造方法によって製造したシリコンクラスレートのX線回折パターンを示す図である。
【図4】図4(a)は比較例の製造方法で製造したシリコンクラスレートの表面を撮影した図面代用写真であり、図4(b)は実施例1の製造方法で製造したシリコンクラスレートの表面を光学顕微鏡によって撮影した結果を示す図面代用写真である。
【図5】図5は、実施例2の第一加熱工程と冷却工程の温度条件を示す図である。
【図6】図6は、実施例2の製造方法で製造したシリコンクラスレートをラマン分光法によって解析した結果を示す図である。
【図7】図7(a)は、実施例2の20℃/hrの冷却条件で製造したシリコンクラスレートの表面を撮影した図面代用写真であり、図7(b)は、10℃/hrの冷却条件で製造したシリコンクラスレートの表面を撮影した図面代用写真である。
【図8】図8は、実施例3の製造方法で製造したシリコンクラスレートをラマン分光法によって解析した結果を示す図である。
【図9】図9は、実施例3の製造方法で製造したシリコンクラスレートの表面を光学顕微鏡によって撮影した結果を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を、ホスト原子にシリコンを用い、ゲスト原子としてナトリウムを用いて、膜状のシリコンクラスレートを製造する製造方法として具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、膜状のシリコンクラスレートを製造する好適な製造方法を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態の好適なクラスレートの製造方法は、前処理工程と、第一加熱工程と、冷却工程と、第二加熱工程とを備えている。

【0018】
図1のステップ1(S1)に示す前処理工程では、最初に、シリコン基板の洗浄と、開口部を有する容器へのナトリウムの収容が行われる。好適な実施形態として、ナトリウムの蒸気が効率よく反応容器内に供給されるために、開口部は容器の上面全体となっている。以下においては、ナトリウムを収容している開口部を有する容器のことを、ナトリウム入り容器とも言う。洗浄されたシリコン基板と、ナトリウム入り容器とは、反応容器に収容される。

【0019】
図2に、シリコン基板2とナトリウム入り容器3とを収容した反応容器1の断面図を示す。シリコン基板2は、反応容器1内のナトリウム入り容器3の上面の開口部5よりも低い位置となるよう、反応容器1の底面付近に配置される。

【0020】
図1のステップ2(S2)に示す第一加熱工程では、反応容器1に収容されたシリコン基板2とナトリウム入り容器3とを、500℃以上の温度で0.5時間以上24時間以下の間加熱する。本実施形態の第一加熱工程によって、シリコン基板2の表面にナトリウムの蒸気が供給される。500℃未満の加熱ではその後の工程を行ってもクラスレートが生成されないことが確認されており、第一加熱工程では、500℃以上の温度による処理を行うことが必要である。

【0021】
図1のステップ3(S3)に示す冷却工程では、好ましくは徐冷が行われる。徐冷を行う場合、シリコン基板2とナトリウム入り容器3とを収容した状態で、反応容器1全体を5℃/hr以上20℃/hr以下の速度で冷却することが好ましい。この冷却工程は、第一加熱工程で蒸気となったナトリウムが、結露してシリコン基板と反応すると推定される工程である。しかしながら、シリコン基板2上にナトリウムが適量供給された場合、この冷却工程は徐冷ではなく通常の自然冷却工程とすることが可能である。

【0022】
図1のステップ4(S4)に示す第二加熱工程では、ここまでの工程によってクラスレートの前駆体が生成されているシリコン基板2を、10-2Pa以下の陰圧下で300℃以上450℃以下の温度に加熱する。加熱時間は1時間以上48時間以内に設定される。第二加熱工程の間に、シリコン基板2上の前駆体がナトリウムを内包するシリコンクラスレートに変化する。また第二加熱工程では、常に真空ポンプによる吸引を行って圧力を維持するために、ゲスト原子としてシリコンクラスレートに内包されていたナトリウム原子の一部または全部が除去される。その結果、ナトリウムの含有量が低減されたか、あるいはナトリウムが除去された、シリコンクラスレートが製造される。

【0023】
本実施形態のシリコンクラスレートの製造方法では、シリコン基板2を反応容器1内のナトリウム入り容器3の開口5よりも低い位置に配置し、且つ第一加熱工程と第二加熱工程との間に徐冷工程を設けることで、基板のほぼ全ての面上でII型の構造を有するシリコンクラスレートを製造することが可能となっている。

【0024】
以下に、本実施形態をより具体化した実施例1、2と、シリコン基板2をナトリウム入り容器3の開口部5よりも上に配置して実施例1と同一の加熱条件でシリコンクラスレートを製造した比較例とを示す。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
本実施例では、結晶面が111のシリコン基板2と、金属ナトリウム片とを用いて、シリコンクラスレートを製造した。ステップ1の前処理工程として、シリコン基板2の表面酸化膜を取り除いた。金属ナトリウム片は、上面全体が開口部5となっている容器3に収容した。そして、シリコン基板2とナトリウム入り容器3とを反応容器1に収容した。このときシリコン基板2は、ナトリウム入り容器3の開口部5よりも低い位置に配置されるように、反応容器1の底面に接するように配置された。
【実施例】
【0026】
ステップ2の第一加熱工程として、アルゴン雰囲気中で反応容器1を密閉し、温度575℃、処理時間は48時間、圧力10Pa以上の条件で加熱を行った。ステップ3の冷却工程では、徐冷を実施せず、シリコン基板2とナトリウム入り容器3とを収容した状態で反応容器1を自然に降温させた。自然降温には約6時間を要した。ステップ4の第二加熱工程として、シリコン基板2を、温度400℃、処理時間3時間、圧力10-2Pa以下で加熱したあと、自然に降温させた。
【実施例】
【0027】
(比較例)
実施例1と同一の、結晶面が111のシリコン基板2と、金属ナトリウム片とを原料として、シリコンクラスレートを製造した。比較例では、シリコン基板2とナトリウム入り容器3とを反応容器1に収容するときに、図示されない支持部材を用いることで、シリコン基板2をナトリウム入り容器3の開口部5よりも相対的に高い位置に配置した。その後、ステップ2の第一加熱工程からステップ4の第二加熱工程まで、実施例1と同一の条件を適用して、シリコンクラスレートを製造した。
【実施例】
【0028】
(実施例1で製造されたシリコンクラスレートと比較例のシリコンクラスレートの対比)
図3の上段(上から一段目のチャート)に、比較例の製造方法で製造したシリコン基板2上の化合物のX線回折パターンを示す。図3の中段(上から二段目のチャート)に、実施例1の製造方法で製造したシリコン基板2上の化合物のX線回折パターンを示す。図3の下部に示された棒グラフは、II型のシリコンクラスレートと、ダイヤモンド型シリコン(c-シリコン)の理論的なX線回折パターンである。実施例1の化合物からは、II型のシリコンクラスレートに由来する強いX線回折パターンが確認され、実施例1の化合物がIIの型シリコンクラスレートであることが確認された。また、実施例1の化合物では、原料のシリコン基板に由来する回折パターンが大幅に弱くなっているのに対して、比較例の製造方法で製造した化合物からは、原料であるシリコン基板のダイヤモンド構造に由来する回折パターンのピークが強く検出されており、実施例1のシリコン基板2の表面は、II型シリコンクラスレートによって比較例よりも厚く覆われていることが、定量的に明らかとなった。
【実施例】
【0029】
図4(a)に、比較例の方法で製造されたシリコンクラスレートの表面を光学顕微鏡によって撮影した結果を示す。図4(b)に、実施例1の方法で製造されたシリコンクラスレートの表面を光学顕微鏡によって撮影した結果を示す。実施例1の製造方法によって得られたシリコンクラスレートが、膜状に均一に形成されていることが図面代用写真によっても確認された。一方で、比較例の製造方法で得られたシリコンクラスレートが、基板上で不均一になっている部分があり、歩留りが実施例1と比較して低いことが判明した。
【実施例】
【0030】
実施例1の第一加熱工程では、反応容器1の底部に、上部よりも高密度なナトリウム蒸気が存在していたことが推定される。また、実施例1の冷却工程では、一旦蒸気となったナトリウムが結露して降下することによって、シリコン基板1とより効率よく反応したと考えられる。この結果、ナトリウム入り容器3の開口部5よりも下にシリコン基板2を配置した実施例1は、ナトリウム入りの容器3の開口部5よりも上にシリコン基板2を配置した比較例よりも、より効率よくシリコンクラスレートを製造することができたと考えられる。
【実施例】
【0031】
(実施例2)
本実施例によるクラスレートの製造方法では、ナトリウム入り容器3の開口部5よりも下にシリコン基板2を配置して第一加熱工程を行い、さらに冷却工程を徐冷工程とすることで、より安定してシリコンクラスレートを製造するための最適条件を特定した。本実施例のステップ1の前処理工程とステップ4の第二加熱工程とは実施例1と同一の構成であるので、重複説明を割愛する。
【実施例】
【0032】
ステップ2の第一加熱工程では、反応容器1を温度600℃まで1時間で昇温し、さらに600℃で1時間反応を行った。このときの圧力は10Pa以上とした。ステップ3の冷却工程を徐冷工程として、冷却速度を10℃/hrと20℃/hrの2段階に設定して反応容器1を100℃まで冷却して、より好ましいクラスレート製造条件を特定した。ここで、反応容器1を100℃まで冷却した後は、自然冷却を行っている。その後、ステップ4の第二加熱工程を行った。第二加熱工程の後は、シリコンクラスレートを自然に降温させた。
【実施例】
【0033】
図5に、本実施例の第一加熱工程と冷却工程で行った温度と時間との関係を示す。図6に、本実施例の製造方法で製造した化合物のラマン分光法による解析結果を示す。図6に示すように、冷却工程に、10℃/hrのより遅い冷却条件を適用して製造した化合物に、より強くII型のシリコンクラスレートに対応するピークが確認され、化合物がII型のシリコンクラスレートであることが確認された。また、20℃/hrのより速い冷却条件を適用して製造した化合物にもII型のシリコンクラスレートに対応するピークが確認された。この結果、本実施例の製造方法によってII型のシリコンクラスレートを製造することができることと、シリコンクラスレートを製造するための冷却工程の好ましい条件は、冷却速度が5℃/hr以上20℃/hr以下の場合であって、より好ましくは10℃/hrであることが確認された。
【実施例】
【0034】
図7に、本実施例の2段階の徐冷速度で製造したそれぞれのシリコンクラスレート表面を光学顕微鏡によって撮影した図面代用写真を示す。図7(a)は、20℃/hrのより速い冷却条件で製造したシリコンクラスレートの表面を撮影した写真である。図7(b)は、10℃/hrのより遅い冷却条件で製造したシリコンクラスレートの表面を撮影した写真である。10℃/hrのより遅い冷却条件によって得られたシリコンクラスレートのほうが、20℃/hrのより速い冷却条件によって得られたシリコンクラスレートよりもより均一な膜状であった。一方で、20℃/hrの冷却条件で得られたシリコンクラスレートは、基板上で一部不均一になっている部分があるものの、膜状になっている領域は従来よりも広いことが確認された。すなわち、従来は、膜状に合成したシリコンクラスレートに加えて、粉末状シリコンクラスレートもしくは、アモルファス物質がまばらに生成した。一方で20℃/hrの冷却条件で得られたシリコンクラスレートは、膜状の部分に加えて、アモルファス物質が合成されたが、膜状になっている領域は従来よりも広いことが確認された。また、10℃/hrのより遅い冷却条件によって得られたシリコンクラスレートは20℃/hrの冷却条件で得られたシリコンクラスレートと比較して膜状合成されたシリコンクラスレートの領域が増加した。なお5℃/hrのさらに遅い冷却条件によって得られたシリコンクラスレートは、膜状シリコンクラスレートの領域が従来よりも広いことが確認されたが、従来の方法で合成されたシリコンクラスレートに類似して、粉末状シリコンクラスレートおよびアモルファス物質が確認された。
【実施例】
【0035】
実施例2の冷却工程では、徐冷を行うことで一旦蒸気となったナトリウムが結露し、その状態を維持して長時間シリコン基板2とより効率よく反応したと考えられる。冷却工程を徐冷工程とすることで、より均一な薄膜状のシリコンクラスレートを製造することが可能となっている。
【実施例】
【0036】
(実施例3)
冷却工程の短縮を目的として、本実施例によるクラスレートの製造方法では、冷却工程の冷却速度をより速くしてシリコンクラスレートを製造した。ステップ1の前処理工程およびステップ4の第二加熱工程は実施例1および2と同一なので、重複説明を割愛する。ステップ2の第一加熱工程として、アルゴン雰囲気中で反応容器1を密閉し、温度580℃、処理時間は48時間、圧力10Pa以上の条件で加熱を行った。ステップ3の冷却工程では、シリコン基板2とナトリウム入り容器3とを収容した状態で反応容器1を2時間で室温まで急冷した。
【実施例】
【0037】
図8に、本実施例の急冷条件で製造した化合物のラマン分光法による解析結果を示す。500cm-1に、クラスレートに対応するピークが検出されており、ステップ2の冷却工程で急冷を行った場合であってもクラスレートが製造されたことが確認された。図9に本実施例の方法で製造したシリコンクラスレートを光学顕微鏡によって撮影した結果を示す。一部が粉末状となっているが、シリコンクラスレートの結晶が確認された。
【実施例】
【0038】
以上、実施例において本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば実施例では、冷却工程を10℃/hrと20℃/hrの2水準で実施する場合について説明したが、実施例2で説明したとおり、5℃/hrで行うと、膜状のシリコンクラスレートが得られることが確認されている。また、本実施例では、シリコン基板とナトリウムを用いてクラスレートを製造したが、他のIV族元素をホスト原子としても、本実施例の方法によってクラスレートの製造が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のクラスレートの製造方法は、好適な膜状のシリコンクラスレートを製造することができる。その結果得られたクラスレートは、太陽電地、熱電素子、超伝導材料として利用可能である。
図面
【図2】
0
【図1】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8