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明細書 :新規ハロゲン化水素塩

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6011974号 (P6011974)
公開番号 特開2014-218456 (P2014-218456A)
登録日 平成28年9月30日(2016.9.30)
発行日 平成28年10月25日(2016.10.25)
公開日 平成26年11月20日(2014.11.20)
発明の名称または考案の名称 新規ハロゲン化水素塩
国際特許分類 C07D 277/22        (2006.01)
FI C07D 277/22 CSP
請求項の数または発明の数 6
全頁数 21
出願番号 特願2013-097755 (P2013-097755)
出願日 平成25年5月7日(2013.5.7)
審査請求日 平成28年3月1日(2016.3.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】牧 昌次郎
【氏名】丹羽 治樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
審査官 【審査官】黒川 美陶
参考文献・文献 特開2009-184932(JP,A)
特開2010-215795(JP,A)
調査した分野 C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】
JP0006011974B2_000019t.gif
[式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素又は炭素数1~3のアルキル基であり、R3はそれぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、nは0~3の整数であり、mは0~4の整数である]、又は、
下記一般式(II):
【化2】
JP0006011974B2_000020t.gif
[式中、R4及びR5はそれぞれ独立して水素又は炭素数1~3のアルキル基であり、R6及びR7はそれぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、p及びqはそれぞれ独立して0~4の整数である]で表される化合物のハロゲン化水素塩。
【請求項2】
前記一般式(I)又は前記一般式(II)で表される化合物の塩酸塩又は臭化水素酸塩であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化水素塩。
【請求項3】
前記一般式(I)中のR1及びR2、並びに、前記一般式(II)中のR4及びR5が、炭素数1~3のアルキル基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハロゲン化水素塩。
【請求項4】
前記一般式(I)中のR1及びR2、並びに、前記一般式(II)中のR4及びR5が、メチル基であることを特徴とする請求項3に記載のハロゲン化水素塩。
【請求項5】
前記一般式(I)で表される化合物のハロゲン化水素塩であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のハロゲン化水素塩。
【請求項6】
下記化学式(III):
【化3】
JP0006011974B2_000021t.gif
で表される化合物の塩酸塩又は臭化水素酸塩であることを特徴とする請求項5に記載のハロゲン化水素塩。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化水素塩、特には、水溶性に優れ、ホタル生物発光系における発光基質として利用可能なハロゲン化水素塩に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生物発光系の中でも、ホタルの発光系は、発光効率に優れた系として知られている。該ホタルの発光系においては、発光基質であるホタルルシフェリンが、発光酵素のホタルルシフェラーゼと、アデノシン三リン酸(ATP)及びマグネシウムイオン(Mg2+)の存在下、励起状態のオキシルシフェリンに変換され、該オキシルシフェリンが基底状態へと失活する際に波長が約560nmの黄緑色の蛍光が発せられる。
【0003】
また、昨今、かかるホタルの発光系の発光基質の類似体として、多彩な発光波長を実現する化合物が合成されている。例えば、下記特許文献1には、ホタルルシフェリンのフェノール性水酸基を2級又は3級アミノ基で置換したルシフェリン誘導体が開示されている。また、下記特許文献2及び3には、ホタルルシフェリンと類似の分子構造を有するルシフェラーゼの発光基質が開示されている。
【0004】
これらのホタルルシフェリン類似体の中でも、長波長の光、特には、波長が650nm以上の赤色の光を発する発光基質は、長波長光は生体内での透過率が高いため、生体内深部の病巣を可視化するための標識材料として有望であり、例えば、和光純薬工業株式会社から商品名「アカルミネ」として、長波長光を発するホタルルシフェリン類似体が市販されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2007-91695号公報
【特許文献2】特開2009-184932号公報
【特許文献3】国際公開第2013/027770号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、本発明者らは、更に検討を進め、ホタルルシフェリンと類似の分子構造を有しつつ、分子構造内に2つの芳香環を有する化合物がホタル生物発光系における発光基質として機能し、更に、長波長の光を発することを見出している。
【0007】
しかしながら、上記ホタル発光系の発光基質類似体は、多彩な発光波長を実現できるものの、水溶性が低く、特に、生体内深部の可視化に有用な650nm以上の波長の光を発する発光基質で顕著である。一般に、マウスやラット等の実験動物の生体内への投与においては、発光基質は10~15mg/ml程度の溶解度を有することが必要であるが、上記の長波長光を発する発光基質は、水への溶解度が約0.1mg/mlであり、実用性に問題が有った。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、水溶性に優れ、ホタル生物発光系における発光基質として利用可能な新規物質を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定の分子構造を有し、ホタル生物発光系における発光基質として機能する水に難溶性の発光基質を、ハロゲン化水素で塩化することで、ホタル生物発光系における発光能を保持しつつ、水溶性が大幅に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明によれば、下記一般式(I):
【化1】
JP0006011974B2_000002t.gif
[式中、R1及びR2はそれぞれ独立して水素又は炭素数1~3のアルキル基であり、R3はそれぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、nは0~3の整数であり、mは0~4の整数である]、又は、
下記一般式(II):
【化2】
JP0006011974B2_000003t.gif
[式中、R4及びR5はそれぞれ独立して水素又は炭素数1~3のアルキル基であり、R6及びR7はそれぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、p及びqはそれぞれ独立して0~4の整数である]で表される化合物のハロゲン化水素塩が提供され、該ハロゲン化水素塩は、水溶性に優れ、ホタル生物発光系における発光基質として機能する。
【0011】
本発明のハロゲン化水素塩は、好ましくは前記一般式(I)又は前記一般式(II)で表される化合物の塩酸塩又は臭化水素酸塩である。この場合、ハロゲン化水素塩の水溶性が特に優れる。
【0012】
本発明のハロゲン化水素塩の他の好適例においては、前記一般式(I)中のR1及びR2、並びに、前記一般式(II)中のR4及びR5が、炭素数1~3のアルキル基である。ここで、前記一般式(I)中のR1及びR2、並びに、前記一般式(II)中のR4及びR5は、メチル基であることが更に好ましい。この場合、ハロゲン化水素塩の発光効率が特に優れる。
【0013】
本発明のハロゲン化水素塩の中でも、前記一般式(I)で表される化合物のハロゲン化水素塩が好ましく、下記化学式(III):
【化3】
JP0006011974B2_000004t.gif
で表される化合物の塩酸塩又は臭化水素酸塩が特に好ましい。この場合、ハロゲン化水素塩の水溶性、発光効率、生体内深部の可視化、入手容易性が特に優れる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水溶性に優れ、ホタル生物発光系における発光基質として利用可能な新規ハロゲン化水素塩を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】アカルミネのIRスペクトルを示す。
【図2】アカルミネ塩酸塩のIRスペクトルを示す。
【図3】アカルミネのUVスペクトルを示す。
【図4】アカルミネ塩酸塩のUVスペクトルを示す。
【図5】アカルミネ、アカルミネ塩酸塩及びアカルミネ臭化水素酸塩の発光強度を示す。
【図6】アカルミネ、アカルミネ塩酸塩及びアカルミネ臭化水素酸塩の発光スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のハロゲン化水素塩は、上記一般式(I)又は一般式(II)で表される化合物のハロゲン化水素塩であり、好ましくは下記一般式(IV):
【化4】
JP0006011974B2_000005t.gif
[式中、X1はハロゲン元素であり、R1及びR2はそれぞれ独立して水素又は炭素数1~3のアルキル基であり、R3はそれぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、nは0~3の整数であり、mは0~4の整数であり、aは0を超え且つ2以下である]、又は、
下記一般式(V):
【化5】
JP0006011974B2_000006t.gif
[式中、X2はハロゲン元素であり、R4及びR5はそれぞれ独立して水素又は炭素数1~3のアルキル基であり、R6及びR7はそれぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、p及びqはそれぞれ独立して0~4の整数であり、bは0を超え且つ2以下である]で表される。本発明のハロゲン化水素塩は、ハロゲン化水素が付加しているため、水溶性に優れ、また、分子構造がホタルルシフェリンと類似しているため、ホタル生物発光系における発光基質として利用できる。

【0017】
<一般式(I)で表される化合物のハロゲン化水素塩、一般式(IV)で表されるハロゲン化水素塩>
上記一般式(IV)中、X1はハロゲン元素であり、該ハロゲン元素として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、これらの中でも、水溶性の観点から、塩素及び臭素が好ましい。即ち、一般式(I)で表される化合物のハロゲン化水素塩及び一般式(IV)で表されるハロゲン化水素塩としては、塩酸塩及び臭化水素酸塩が好ましい。

【0018】
上記一般式(I)及び(IV)中、R1及びR2は水素又は炭素数1~3のアルキル基であり、R1及びR2は同一でも異なってもよい。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基が挙げられる。なお、R1及びR2としては、発光効率の観点から、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。

【0019】
上記一般式(I)及び(IV)中、R3は炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、R3が複数存在する場合、各R3は同一でも異なってもよい。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
また、上記一般式(I)及び(IV)中、R3はベンゼン環の置換基であり、該置換基の数を示すmは0~4の整数である。なお、本発明においては、合成の容易性の観点から、mが0であること、即ち、ベンゼン環に置換基R3が存在しないことが好ましい。

【0020】
上記一般式(I)及び(IV)中、nはビニレン単位(-CH=CH-)の繰り返し数を示し、0~3の整数である。nの数が大きい程、発光波長が長くなるため、生体内深部の可視化の観点から、nは2又は3であることが好ましく、入手容易性の観点から、nは2であることが好ましい。

【0021】
上記一般式(IV)中、aはハロゲン化水素(HX1)の平均付加数を示し、0を超え且つ2以下であり、好ましくは1である。なお、一般式(I)で表される化合物のハロゲン化水素塩及び一般式(IV)で表されるハロゲン化水素塩においては、分子中の2つの窒素原子にハロゲン化水素が付加し得る。

【0022】
上記一般式(I)で表される化合物のハロゲン化水素塩(特には、上記一般式(IV)で表されるハロゲン化水素塩)は、以下のようにして合成することができる。例えば、特開2009-184932号公報(上記特許文献2)に記載のように、出発物質として4-ジメチルアミノシンナミックアルデヒド等のアルデヒドを使用し、カルベトキシメチレントリフェニルホスフォランと反応させてエチルエステル体を得、次いで、該エチルエステル体を水酸化ナトリウム水溶液中でカルボキシル体に変換する。一方、D-システイン-S-トリチル化合物を塩化水素、1,4-ジオキサン溶液中で反応させて、メチルエステル体を準備し、次いで、該メチルエステル体を前記カルボキシル体とを反応させて、アミド体を生成させる。次いで、該アミド体をトリフェニルホスフィンオキシド及びトリフルオロメタンスルホン酸無水物によって環化させて複素環を生成させ、チアゾリン体を得る。次いで、チアゾリン体のメチルエステル部分を加水分解して、チアゾリン環を有するカルボキシル体(即ち、上記一般式(I)で表される化合物)を得る。次いで、チアゾリン環を有するカルボキシル体とハロゲン化水素(塩化水素、臭化水素等)を反応させて、一般式(I)で表される化合物のハロゲン化水素塩(特には、上記一般式(IV)で表されるハロゲン化水素塩)を得ることができる。また、出発物質を適宜変更したり、種々の置換基を導入する等して、或いは、他の合成経路を利用して、所望のハロゲン化水素塩を得ることができる。なお、チアゾリン環を有するカルボキシル体とハロゲン化水素との反応において、反応温度は、特に限定されず、また、ハロゲン化水素の使用量も目的に応じて変更できるが、好ましくは、ハロゲン化水素をチアゾリン環を有するカルボキシル体に対して過剰量使用することが好ましい。
また、カルボキシル体として市販の商品名「アカルミネ」(和光純薬工業株式会社製、黒金化成株式会社からも入手可、上記化学式(III)で表される化合物)を使用し、該アカルミネとハロゲン化水素を反応させて、上記化学式(III)で表される化合物のハロゲン化水素塩を得ることもできる。

【0023】
<一般式(II)で表される化合物のハロゲン化水素塩、一般式(V)で表されるハロゲン化水素塩>
上記一般式(V)中、X2はハロゲン元素であり、該ハロゲン元素として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、これらの中でも、水溶性の観点から、塩素及び臭素が好ましい。即ち、一般式(II)で表される化合物のハロゲン化水素塩及び一般式(V)で表されるハロゲン化水素塩としては、塩酸塩及び臭化水素酸塩が好ましい。

【0024】
上記一般式(II)及び(V)中、R4及びR5は水素又は炭素数1~3のアルキル基であり、R4及びR5は同一でも異なってもよい。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基が挙げられる。なお、R4及びR5としては、発光効率の観点から、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。

【0025】
上記一般式(II)及び(V)中、R6及びR7は炭素数1~8のアルキル基又は炭素数2~8のアルケニル基であり、R6及びR7はそれぞれ同一でも異なってもよい。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、オクテニル基等が挙げられる。
また、上記一般式(II)及び(V)中、R6及びR7は各ベンゼン環の置換基であり、該置換基の数を示すp及びqは0~4の整数であり、p及びqはそれぞれ同一でも異なってもよい。なお、本発明においては、合成の容易性の観点から、p及びqが0であること、即ち、各ベンゼン環に置換基R6及びR7が存在しないことが好ましい。

【0026】
上記一般式(V)中、bはハロゲン化水素(HX2)の平均付加数を示し、0を超え且つ2以下であり、好ましくは1である。なお、一般式(II)で表される化合物のハロゲン化水素塩及び一般式(V)で表されるハロゲン化水素塩においては、分子中の2つの窒素原子にハロゲン化水素が付加し得る。

【0027】
上記一般式(II)で表される化合物のハロゲン化水素塩(特には、上記一般式(V)で表されるハロゲン化水素塩)は、以下のようにして合成することができる。例えば、出発物質として4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニルボロン酸を使用し、4-ヨード安息香酸エチルと反応させてビフェニルエチルエステル体を得、次いで、該ビフェニルエチルエステル体を水酸化ナトリウム水溶液中でカルボキシル体に変換する。一方、D-システインメチルエステル塩酸塩をトリフェニルメタノールと反応させて、D-システイン-S-トリチル化合物のメチルエステル体を準備し、次いで、該メチルエステル体を前記カルボキシル体をと反応させて、アミド体を生成させる。次いで、該アミド体をトリフェニルホスフィンオキシド及びトリフルオロメタンスルホン酸無水物によって環化させて複素環を生成させ、チアゾリン体を得る。次いで、チアゾリン体のメチルエステル部分を加水分解して、チアゾリン環を有するカルボキシル体(即ち、上記一般式(II)で表される化合物)を得る。次いで、チアゾリン環を有するカルボキシル体とハロゲン化水素(塩化水素、臭化水素等)を反応させて、一般式(II)で表される化合物のハロゲン化水素塩(特には、上記一般式(V)で表されるハロゲン化水素塩)を得ることができる。また、出発物質を適宜変更したり、種々の置換基を導入する等して、或いは、他の合成経路を利用して、所望のハロゲン化水素塩を得ることができる。なお、チアゾリン環を有するカルボキシル体とハロゲン化水素との反応において、反応温度は、特に限定されず、また、ハロゲン化水素の使用量も目的に応じて変更できるが、好ましくは、ハロゲン化水素をチアゾリン環を有するカルボキシル体に対して過剰量使用することが好ましい。

【0028】
上述した一般式(I)又は一般式(II)で表される化合物のハロゲン化水素塩の中でも、水溶性、発光効率、合成の容易性の観点から、上記一般式(I)で表される化合物のハロゲン化水素塩が好ましい。

【0029】
また、一般式(I)で表される化合物のハロゲン化水素塩の中でも、水溶性、発光効率、生体内深部の可視化、入手容易性の観点から、上記化学式(III)で表される化合物の塩酸塩及び臭化水素酸塩が好ましく、下記一般式(VI):
【化6】
JP0006011974B2_000007t.gif
[式中、aは0を超え且つ2以下である]で表される塩酸塩、及び、
下記一般式(VII):
【化7】
JP0006011974B2_000008t.gif
[式中、aは0を超え且つ2以下である]で表される臭化水素酸塩が特に好ましい。なお、一般式(VI)及び一般式(VII)中、aは塩化水素(HCl)又は臭化水素(HBr)の平均付加数を示し、0を超え且つ2以下であり、好ましくは1である。

【0030】
本発明のハロゲン化水素塩は、発光甲虫ルシフェラーゼ、アデノシン三リン酸(ATP)及びマグネシウムイオン(Mg2+)の存在する系に添加することによって、発光甲虫ルシフェラーゼにより酸化して発光する。なお、本発明のハロゲン化水素塩は、ATP及びMg2+と共に発光検出キットとして提供することもでき、また、該発光検出キットには、他の発光基質や適切なpHに調整した溶液を含めてもよい。

【0031】
本発明のハロゲン化水素塩を発光系に応用する場合、好適な発光強度を得るためには、本発明のハロゲン化水素塩を1μM以上の濃度で使用することが好ましく、5μM以上の濃度で使用することが更に好ましい。また、発光系のpHは、好ましくは4~10、より好ましくは6~8であり、必要に応じて、pHを安定化するために、リン酸カリウム、トリス塩酸、グリシン、HEPES等の緩衝剤を使用してもよい。

【0032】
また、本発明のハロゲン化水素塩は、ホタル発光甲虫ルシフェラーゼ発光系において、種々の酸化酵素によって発光させることができる。ルシフェラーゼは、北アメリカ産ホタル(Photinus pyralis)、鉄道虫(Railroad worm)等から単離されており、いずれも使用できる。また、使用可能な酸化酵素としては、ヒカリコメツキムシルシフェラーゼ、イリオモテボタルルシフェラーゼ、フラビン含有モノオキシゲナーゼ等も挙げられる。

【0033】
本発明のハロゲン化水素塩を発光基質とする生物発光は、発光系にコエンザイムA(CoA)、ピロリン酸又はマグネシウムイオン(Mg2+)が存在すると、その発光が増強される。これらの化合物の発光増強効果は、発光系におけるCoA、ピロリン酸又はMg2+の濃度がそれぞれ5μM以上において顕著であり、濃度の増加にしたがって発光が増強される。

【0034】
ホタル生物発光系を測定/検出に使用するためには、酵素の失活を防止してプラトーな発光挙動を示すように、発光を安定化させることが好ましく、例えば、発光系にマグネシウムイオンを存在させることが好ましく、マグネシウムイオンとピロリン酸を共存させることが更に好ましい。なお、マグネシウムイオン単独の場合、発光安定化の観点から、発光系のマグネシウムイオン濃度は、0.5mM以上が好ましく、濃度の増加に従って発光の安定性が向上する。また、ピロリン酸マグネシウムを使用する場合、発光安定化の観点から、発光系のピロリン酸マグネシウム濃度は、10μM以上が好ましく、100μM以上が更に好ましい。なお、ピロリン酸とマグネシウムイオンとの割合は、当量比でなくてもよい。また、好適なマグネシウム塩としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機酸塩、酢酸マグネシウム等の有機酸塩が挙げられる。また、好適なピロリン酸塩として、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のピロリン酸塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属のピロリン酸塩、鉄のピロリン酸塩が挙げられる。

【0035】
本発明のハロゲン化水素塩は、生物学的測定/検出における発光標識として利用でき、例えば、アミノ酸、ポリペプチド、タンパク質、核酸等を標識するために使用できる。なお、本発明のハロゲン化水素塩をこれらの物質に結合させる方法は、当業者に周知であり、例えば、当業者に周知の方法を使用して、目的の物質のカルボキシル基やアミノ基に対して本発明のハロゲン化水素塩を結合させることができる。

【0036】
また、本発明のハロゲン化水素塩は、発光基質の発光によって発光甲虫ルシフェラーゼ活性を検出することを利用した測定/検出に利用することができる。例えば、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した細胞又は動物に対して本発明のハロゲン化水素塩を投与することにより、インビボにおける標的遺伝子又はタンパク質の発現などを測定/検出することができる。なお、波長の長い光は、光透過性が高く、組織透過性も高い。従って、本発明のハロゲン化水素塩の中でも、長波長の発光を有するハロゲン化水素塩は、生体内深部を可視化するための標識材料として有用である。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0038】
(1)機器分析及び測定装置
pH測定:東洋濾紙株式会社製pH試験紙UNIVを使用して測定した。また、pHメータとして、堀場社製pH/ION METER F-23を使用して測定した。
【実施例】
【0039】
1H核磁気共鳴スペクトル(1H NMR):日本電子社製Lambda-270型装置(270MHz)を使用して測定した。“1H NMR(測定周波数,測定溶媒):δケミカルシフト値(水素の数,多重度,スピン結合定数)”と記載した。ケミカルシフト値(δ)はテトラメチルシラン(δ=0)を内部基準とし、ppで表記した。多重度は、s(単一線)、d(二重線)、t(三重線)、q(四重線)、m(多重線あるいは複雑に重なったシグナル)で表示し、幅広いシグナルは、brと記した。スピン結合定数(J)は、Hzで記載した。
【実施例】
【0040】
(2)クロマトグラフィー
分析用薄層クロマトグラフィー(TLC):E.Merck社製のTLCプレート、シリカゲル60F254(Art.5715)厚さ0.25mmを使用した。TLC上の化合物の検出はUV照射(254nm又は365nm)及び発色剤に浸した後に加熱して発色させることによって行った。発色剤としてはp-アニスアルデヒド(9.3ml)と酢酸(3.8ml)をエタノール(340ml)に溶解し、濃硫酸(12.5ml)を添加したものを使用した。
【実施例】
【0041】
分取用薄層クロマトグラフィー(PTLC):E.Merck社製のTLCプレート、シリカゲル60F254(Art.5744)厚さ0.5mmを用いるか、又はE.Merck社製の薄層クロマトグラフィー用シリカゲル60GF254(Art.7730)を20cm×20cmのガラスプレート上に、厚さ1.75mmに調整したものを使用して行った。
【実施例】
【0042】
シリカゲルカラムクロマトグラフィー:E.Merck社製のシリカゲル60F254(Art.7734)を使用して行った。
【実施例】
【0043】
(3)基本操作
反応溶液の冷却は、冷媒を満たしたジュワー瓶に反応容器を浸して行った。室温から4℃では、氷水、4℃から-90℃では、液体窒素-アセトンを冷媒として用いた。反応後の抽出溶液の乾燥は、飽和食塩水にて洗浄後、無水硫酸ナトリウム又は無水硫酸マグネシウムを加えることで行った。反応後の中和を樹脂で行ったものについては、オルガノ株式会社製陽イオン交換樹脂アンバーライトIR120B NA又は陰イオン交換樹脂アンバーライトIRA400 OH AGを使用した。溶液の減圧濃縮は、アスピレーターの減圧下(20~30mmHg)、ロータリーエバポレーターを使用して行った。痕跡量の溶媒の除去は、液体窒素浴で冷却したトラップを装着させた真空ポンプ(約1mmHg)を使用して行った。溶媒の混合比は全て体積比で表した。
【実施例】
【0044】
<ビフェニル型発光基質の合成>
(ビフェニル誘導体(2)の合成)
4-ヨード安息香酸エチル(250 μl, 1.5 mmol)とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(100 mg, 5%)、炭酸カリウム(539.0 mg, 3.8 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(6 ml)に溶解し、アルゴン雰囲気下にした。4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニルボロン酸(1)(315.0 mg, 1.9 mmol)を加え、90℃で14時間加熱攪拌した。更に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(27 mg, 2%)、炭酸カリウム(125.0 mg, 0.90 mmol)、4-(N,N-ジメチルアミノ)フェニルボロン酸(1)(97.0 mg, 0.58 mmol)を加え、24時間攪拌した。反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[酢酸エチル]にて不溶物を除去した後、減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン-酢酸エチル(4:1)→(0:1)]にて精製し、ビフェニル誘導体(2)(229.0 mg, 0.85 mmol, 56%)を白色固体として得た。
【化8】
JP0006011974B2_000009t.gif
【実施例】
【0045】
・ビフェニル誘導体(2)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ1.40(3H, t, J=6.9 Hz), 3.00(6H, s), 4.38(2H, q , J=6.9 Hz), 6.79(2H, d, J=9.2 Hz), 7.55(2H, d, J=9.2 Hz), 7.61(2H, d, J=8.0 Hz), 8.05(2H, d, J=8.6 Hz)
【実施例】
【0046】
(カルボン酸(3)の合成)
ビフェニル誘導体(2)(148.0 mg, 0.54 mmol)をエタノール(6 ml)に溶解し、1M水酸化ナトリウム水溶液(6 ml)を加えて4時間還流した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液(9 ml)を加え中和した後、濾過し水で洗浄し、カルボン酸(3)(122.0 mg, 0.50 mmol, 92%)を黄色個体として得た。
【化9】
JP0006011974B2_000010t.gif
【実施例】
【0047】
・カルボン酸(3)の同定結果
1H NMR(500 MHz, DMSO-D6):δ2.91(6H, s), 6.77(2H, d, J=6.9 Hz), 7.54(2H, d, J=7.5 Hz), 7.49(2H, d, J=7.5 Hz), 7.89(2H, d, J=7.5 Hz)
【実施例】
【0048】
(システイン保護体(5)の合成)
D-システインメチルエステル塩酸塩(4)(308 mg, 1.8 mmol)とトリフェニルメタノール(515 mg, 1.98 mmol)とにトリフルオロ酢酸(TFA)(1.5 ml)を加え溶解させた。室温で2時間撹拌した後、減圧濃縮し、陰イオン交換樹脂IRA400 OH AGを用いて中和した。樹脂をろ過し、得られた溶液を減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー[シリカゲル 30 g;ヘキサン-酢酸エチル(1:1)]にて精製し、システイン保護体(5)(658 mg, 1.7 mmol, 97%)を薄黄色油状として得た。
【化10】
JP0006011974B2_000011t.gif
【実施例】
【0049】
・システイン保護体(5)の同定結果
1H NMR(270 MHz, CDCl3):δ2.47(1H, dd, J=8.1, 13 Hz), 2.60(1H, dd, J=5.1, 13 Hz), 3.21(1H, dd, J=5.1, 8.1 Hz), 3.66(3H, s), 7.18-7.32(9H, complex), 7.40-7.54(6H, complex)
【実施例】
【0050】
(アミド体(6)の合成)
カルボン酸(3)(15.0 mg, 0.062 mmol)及びシステイン保護体(5)(31.2 mg, 0.082 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(2 ml)に溶解した。この溶液に4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)(21.6 mg, 0.073 mmol)を加え、この混合物を室温で3時間攪拌した。その後、ジクロロメタン(20 ml×3)で抽出し、有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン-酢酸エチル(2:1)]にて精製し、アミド体(6)(32.9 mg, 0.054 mmol, 87%)を透明油状として得た。
【化11】
JP0006011974B2_000012t.gif
【実施例】
【0051】
・アミド体(6)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ2.75(2H, complex), 3.01(6H, s), 3.75(3H, s), 4.85(1H, dd, J=12.6, 4.6 Hz), 6.81(2H, d, J=8.6 Hz), 7.15-7.34(9H, complex), 7.35-7.42(6H, complex), 7.55(2H, d, J=8.6 Hz), 7.63(2H, d, J=8.0 Hz), 7.78(2H, d, J=8.0 Hz)
【実施例】
【0052】
(環化体(7)の合成)
アミド体(6)(14.0 mg, 0.023 mmol)とトリフェニルホスフィンオキシド(19.0 mg, 0.068 mmol)をアルゴン雰囲気下、ジクロロメタン(1.5 ml)に溶解させ、無水トリフルオロメタンスルホン酸(50 μl, 0.29 mmol)を加え、2.5時間撹拌した。その後、ジクロロメタン(20 ml×2)で抽出し、有機層を飽和食塩水(30 ml)にて洗浄した。更に、有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー[20 cm×20 cm×1.75 mm×1枚;ヘキサン-酢酸エチル(1:1)]にて精製し、環化体(7)(7.0 mg, 0.020 mmol, 86%)を黄色固体として得た。
【化12】
JP0006011974B2_000013t.gif
【実施例】
【0053】
・環化体(7)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ3.00(6H, s), 3.61-3.73(2H, complex), 3.83(3H, s), 5.29(1H, t, J=9.2 Hz), 6.79(2H, d, J=6.3 Hz), 7.54(2H, d, J=5.9 Hz), 7.59(2H, d, J=4.6 Hz), 7.87(2H, d, J=4.6 Hz)
【実施例】
【0054】
(ビフェニル型発光基質(8)の合成)
環化体(7)(7.7 mg, 0.023 mmol)をテトラヒドロフラン(THF):蒸留水(2:1, 2 ml)に溶解した。この溶液に水酸化リチウム一水和物(2.0 mg, 0.047 mmol)を加え、室温で30分撹拌した。反応混合物に酢酸エチル(30 ml)を加え、生成物を水(20 ml×2)で抽出した。更に、水層を合わせ、1M塩酸を加え酸性にした後、酢酸エチル(20 ml×2)で抽出した。その後、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、ビフェニル型発光基質(8)(4.0 mg, crude)を赤色固体として得た。
【化13】
JP0006011974B2_000014t.gif
【実施例】
【0055】
・ビフェニル型発光基質(8)の同定結果
1H NMR(500 MHz, CDCl3):δ3.01(6H, s), 3.73(2H, m), 5.34(1H, t, J=9.2 Hz), 6.80(2H, d, J=8.0 Hz), 7.55(2H, d, J=8.6 Hz), 7.62(2H, d, J=8.5 Hz), 7.86(2H, d, J=8.0 Hz)
【実施例】
【0056】
(実施例1)
<塩の生成>
アカルミネ(黒金化成株式会社製、Lot No.0022)1mgと、以下の酸又は塩基の水溶液50μlを混合し、室温で1時間静置させた。
【化14】
JP0006011974B2_000015t.gif
【実施例】
【0057】
・塩基:
ターシャリブチルナトリウム(tBuONa)(6.6×10-2 M(mol/l))
ターシャリブチルカリウム(tBuOK)(6.6×10-2 M(mol/l))
アンモニウム-メタノール(NH3 in MeOH)(6.6×10-2 M(mol/l))
水酸化リチウム(LiOH)(6.6×10-2 M(mol/l))
トリエチルアミン(Et3N)(0.1M(mol/l))
【実施例】
【0058】
・酸:
リン酸(H3PO4)(6.6×10-2 M(mol/l))
塩酸(HCl)(6.6×10-2 M(mol/l))
臭化水素酸(HBr)(6.6×10-2 M(mol/l))
トリフルオロ酢酸(CF3COOH)(0.1M(mol/l))
酢酸(CH3COOH)(0.1M(mol/l))
硫酸(H2SO4)(6.6×10-2 M(mol/l))
【実施例】
【0059】
続いて、不溶物を沈殿させるため、遠心分離を13,000rpmで、3分間行った。上澄み液を採取し、アカルミネの塩化物溶液を得た。
【実施例】
【0060】
<溶解度測定>
上記のようにして得た上澄み液(飽和溶液)25μlを、純水で100倍に希釈し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量測定を行った(n=3)。結果を表1に示す。
【実施例】
【0061】
【表1】
JP0006011974B2_000016t.gif
【実施例】
【0062】
酸性水溶液及び塩基水溶液から調製したアカルミネの塩はすべて、アカルミネ(塩調製前)より溶解度の改善が見られたが、その中でも特に塩化水素及び臭化水素の水溶液から調製した塩は、50倍以上溶解度が改善した。
なお、アカルミネの塩酸塩及び臭化水素酸塩については、水溶液の色がアカルミネの塩酸塩及び臭化水素酸塩に由来する濃赤色で不透明であり、沈殿が形成されているかどうかの判別が難しく、溶液が飽和していない可能性がある。そのため、塩酸塩及び臭化水素酸塩については、測定した溶解度よりも高い可能性がある。
【実施例】
【0063】
<物質測定>
IR測定及びUV測定により、生成した物質がアカルミネの塩であることを確認した。
【実施例】
【0064】
・IR測定
アカルミネ(黒金化成株式会社製)のみ(媒質なし)及びアカルミネ塩酸塩に対し、IR測定を行った。測定機器としては、Thermo Scientific社製のNicolet 6700を使用し、試料1mg以下をATR法により測定した。アカルミネのIRスペクトルを図1に、アカルミネ塩酸塩のIRスペクトルを図2に示す。
【実施例】
【0065】
図1と図2との比較から、アカルミネとアカルミネの塩酸塩とで、IRの指紋領域(1300~650cm-1)が異なることが分かる。また、アカルミネでは、1550cm-1、アカルミネの塩酸塩では、1750cm-1に吸収が見られ、これらは分子構造中のカルボン酸(-COOH)に由来し、アカルミネでは、分子内のジメチルアミノ基(-NMe2基)により脱プロトン化された-COO-の吸収が見られるのに対し、アカルミネの塩酸塩ではHClにより脱プロトン化されることなく、COOHの吸収が見られるためと考えられる。
【実施例】
【0066】
・UV測定
アカルミネ(黒金化成株式会社製)及びアカルミネ塩酸塩に対し、UV測定を行った。測定機器としては、Varian社製のCary 50を使用し、1.0×10-5 Mの基質溶液を用い、セルホルダー温度を25℃とし、UV測定用石英セル(光路長は1cm)を使用した。アカルミネのUVスペクトルを図3に、アカルミネ塩酸塩のUVスペクトルを図4に示す。
【実施例】
【0067】
図3と図4との比較から、アカルミネは320nmと490nmに2つの吸収極大を有するのに対し、アカルミネの塩酸塩は460nmに1つの吸収極大を有し、スペクトルが異なることが分かる。
【実施例】
【0068】
<発光測定>
アカルミネ(500μM)、並びに、実施例で得たアカルミネの塩酸塩(500μM)及びアカルミネの臭化水素酸塩(500μM)を用いて、発光強度及び発光スペクトルの測定を行った。
【実施例】
【0069】
・発光強度測定
pH8.0で0.5Mのリン酸カリウム緩衝液(KPB溶液)を20μl、各発光基質の溶解液を20μl、発光基質を分解する酵素である0.01mg/mlのphotinus pyralis(Promega社製)を20μl、0.2mMのMg-ATPを40μl混合し、発光強度測定装置(ATTO株式会社製、AB-2270)で180秒間発光測定を行った。結果を図5に示す。
【実施例】
【0070】
図5から、アカルミネの塩酸塩及び臭化水素酸塩は、アカルミネと発光強度がほぼ同程度であることが分かる。なお、アカルミネの総発光量を100とした場合に、アカルミネの塩酸塩の総発光量は91、アカルミネの臭化水素酸塩の総発光量は81であった。
【実施例】
【0071】
・発光スペクトル測定
pH8.0で0.5Mのリン酸カリウム緩衝液(KPB溶液)を5μl、各発光基質の溶解液を5μl、発光基質を分解する酵素である0.1mg/mlのphotinus pyralis(Promega社製)を5μl、0.2mMのMg-ATPを10μl混合し、発光スペクトル測定装置(ATTO株式会社製、AB-1850)で180秒間発光スペクトルを測定した。結果を図6に示す。
【実施例】
【0072】
図6から、アカルミネの発光スペクトルにおける発光極大は675nmで、アカルミネの塩酸塩の発光スペクトルにおける発光極大は675nmで、アカルミネの臭化水素酸塩の発光スペクトルにおける発光極大は680nmであり、アカルミネの塩酸塩及び臭化水素酸塩は、アカルミネと発光スペクトルがほぼ同じであることが分かる。
【実施例】
【0073】
(実施例2)
<塩の生成>
上記のように合成して得たビフェニル型発光基質(8)1mgと、以下の酸又は塩基の水溶液50μlを混合し、室温で1時間静置させた。
【化15】
JP0006011974B2_000017t.gif
【実施例】
【0074】
・塩基:
ターシャリブチルナトリウム(tBuONa)(6.2×10-2 M(mol/l))
ターシャリブチルカリウム(tBuOK)(6.2×10-2 M(mol/l))
アンモニウム-メタノール(NH3 in MeOH)(6.2×10-2 M(mol/l))
【実施例】
【0075】
・酸:
リン酸(H3PO4)(6.2×10-2 M(mol/l))
塩酸(HCl)(6.2×10-2 M(mol/l))
臭化水素酸(HBr)(6.2×10-2 M(mol/l))
【実施例】
【0076】
続いて、不溶物を沈殿させるため、遠心分離を13,000rpmで、3分間行った。上澄み液を採取し、ビフェニル型発光基質(8)の塩化物溶液を得た。
【実施例】
【0077】
<溶解度測定>
上記のようにして得た上澄み液(飽和溶液)100μlを、純水で100倍に希釈し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量測定を行った(n=3)。結果を表2に示す。
【実施例】
【0078】
【表2】
JP0006011974B2_000018t.gif
【実施例】
【0079】
酸性水溶液及び塩基水溶液から調製したビフェニル型発光基質(8)の塩はすべて、ビフェニル型発光基質(8)(塩調製前)より溶解度の改善が見られたが、その中でも特に塩化水素及び臭化水素の水溶液から調製した塩は、20倍以上溶解度が改善した。
なお、ビフェニル型発光基質(8)の塩酸塩及び臭化水素酸塩については、水溶液の色がビフェニル型発光基質(8)の塩酸塩及び臭化水素酸塩に由来する濃黄色により濃く不透明であり、沈殿が形成されているかどうかの判別が難しく、溶液が飽和していない可能性がある。そのため、塩酸塩及び臭化水素酸塩については、測定した溶解度よりも高い可能性がある。
【実施例】
【0080】
上記の実施例の結果からも明らかなように、アカルミネは、他の塩では水溶性の向上は充分でなく、塩酸塩、臭化水素酸塩等のハロゲン化水素塩についてのみ水溶性が著しく向上した。更に、その塩酸塩、臭化水素酸塩の水溶性のレベルが、実用上要求されるレベル(溶解度が10mg/ml)を充足していた。なお、アカルミネに関して、塩の中で塩酸塩、臭化水素酸塩等のハロゲン化水素塩のみ水溶性が著しく向上し、実用上価値のあることを見出したのは初めてである。また、ハロゲン化水素(塩化水素、臭化水素)塩として調製すると、アカルミネだけでなくビフェニル型発光基質についても、溶解度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明のハロゲン化水素塩は、水溶性に優れ、ホタル生物発光系における発光基質として利用できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5