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明細書 :鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6210484号 (P6210484)
公開番号 特開2015-006150 (P2015-006150A)
登録日 平成29年9月22日(2017.9.22)
発行日 平成29年10月11日(2017.10.11)
公開日 平成27年1月15日(2015.1.15)
発明の名称または考案の名称 鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドの製造方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 13
全頁数 24
出願番号 特願2013-133163 (P2013-133163)
出願日 平成25年6月25日(2013.6.25)
審査請求日 平成28年6月21日(2016.6.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304024430
【氏名又は名称】国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】藤本 健造
【氏名】中村 重孝
【氏名】橋本 浩寿
【氏名】小林 聡
個別代理人の代理人 【識別番号】110000523、【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
【識別番号】100127133、【弁理士】、【氏名又は名称】小板橋 浩之
審査官 【審査官】坂崎 恵美子
参考文献・文献 特表2004-501615(JP,A)
日本化学会 季年会講演予稿集,2013年 3月,Vol.93, No.3,p.980
Program & Abstracts International Symposium on Nucleic Acids Chemistry,2013年11月,Vol.40th,p.398-399
Journal of the American Chemical Society,2013年10月,Vol.135,p.16161-16167
調査した分野 C12N 15/09
C12Q 1/68
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
第1のオリゴヌクレオチド(ODN1)と第2のオリゴヌクレオチド(ODN2)とがハイブリダイズしてなる二重鎖オリゴヌクレオチド(ただし、
ODN2は、ODN1とハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB1)を有し、このHYB1に隣接して、ODN1とハイブリダイズしない塩基配列(NHYB1)を有し、
ODN2は、HYB1の塩基配列中に、光応答性修飾塩基を有し、
ODN1は、ODN2の光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置に光架橋可能な塩基を有しておらず、
二重鎖オリゴヌクレオチドは、ODN2のNHYB1の領域においては一本鎖となっている。)と、
第3のオリゴヌクレオチド(ODN3)(ただし、
ODN3は、ODN2のHYB1及びNHYB1にハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB2)を連続して有し、
ODN3は、ODN2の光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置に光架橋可能な塩基を有している。)とを、水溶液中で、光照射して、光架橋させる工程、
を含む、ODN1とODN2の二重鎖が鎖交換されてODN3とODN2の二重鎖となった、鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドの製造方法であって、
光応答性修飾塩基が、核酸塩基の塩基部分として、次の式I:
【化1】
JP0006210484B2_000020t.gif
(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
N-は、Nの一価基を表す。)
で表される人工塩基を有する光応答性修飾塩基である、方法
【請求項2】
第1のオリゴヌクレオチド(ODN1)と第4のオリゴヌクレオチド(ODN4)とがハイブリダイズしてなる二重鎖オリゴヌクレオチド(ただし、
ODN4は、ODN1とハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB1)を有し、このHYB1に隣接して、ODN1とハイブリダイズしない塩基配列(NHYB1)を有し、
二重鎖オリゴヌクレオチドは、ODN4のNHYB1の領域においては一本鎖となっている。)と、
第5のオリゴヌクレオチド(ODN5)(ただし、
ODN5は、ODN4のHYB1及びNHYB1にハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB2)を連続して有し、
ODN5は、HYB1にハイブリダイズ可能な塩基配列中に、光応答性修飾塩基を有し、
ODN4は、ODN5の光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置に光架橋可能な塩基を有している。)とを、水溶液中で、光照射して、光架橋させる工程、
を含む、ODN1とODN4の二重鎖が鎖交換されてODN5とODN4の二重鎖となった、鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドの製造方法であって、
光応答性修飾塩基が、核酸塩基の塩基部分として、次の式I:
【化2】
JP0006210484B2_000021t.gif
(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
N-は、Nの一価基を表す。)
で表される人工塩基を有する光応答性修飾塩基である、方法
【請求項3】
光応答性修飾塩基と光架橋可能な塩基が、シトシン、ウラシル、チミン、シュードウラシル及びシュードチミンからなる群から選択された1種以上の塩基である、請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置が、光応答性修飾塩基の5’末端側に隣接する塩基と相補的な位置である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ODN1とハイブリダイズしない塩基配列(NHYB1)が、ODN1とハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB1)の5’末端側又は3’末端側に隣接している、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
光照射が、366nmの波長を含む光の光照射である、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
光照射が、0.01~30秒間の光照射である、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
鎖交換反応前の二重鎖オリゴヌクレオチドのいずれかの1本の鎖に、蛍光発光色素分子を結合させ、残る1本の鎖に、該蛍光発光色素分子を消光可能となる位置で蛍光消光分子を結合させて、
鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドが製造されたことが、蛍光発光によって検出可能である、請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ODN2のHYB1の塩基配列が、光応答性修飾塩基の位置を除いて、ODN1と相補的な塩基配列であり、
ODN3のHYB2の塩基配列が、光応答性修飾塩基と相補的な位置、及び光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置を除いて、ODN2と相補的な塩基配列である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
ODN4のHYB1の塩基配列が、ODN1と相補的な塩基配列であり、
ODNのHYB2の塩基配列が、光応答性修飾塩基と相補的な位置を除いて、ODNと相補的な塩基配列である、請求項に記載の方法。
【請求項11】
第1のオリゴヌクレオチド(ODN1)と第2のオリゴヌクレオチド(ODN2)とがハイブリダイズしてなる二重鎖オリゴヌクレオチド(ただし、
ODN2は、ODN1とハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB1)を有し、このHYB1に隣接して、ODN1とハイブリダイズしない塩基配列(NHYB1)を有し、
ODN2は、HYB1の塩基配列中に、光応答性修飾塩基を有し、
ODN1は、ODN2の光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置に光架橋可能な塩基を有しておらず、
二重鎖オリゴヌクレオチドは、ODN2のNHYB1の領域においては一本鎖となっており、
光応答性修飾塩基が、核酸塩基の塩基部分として、次の式I:
【化3】
JP0006210484B2_000022t.gif
(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
N-は、Nの一価基を表す。)
で表される人工塩基を有する光応答性修飾塩基である。)。
【請求項12】
二重鎖オリゴヌクレオチドのいずれかの1本の鎖に、蛍光発光色素分子を結合させ、残る1本の鎖に、該蛍光発光色素分子を消光可能となる位置で蛍光消光分子を結合させた、請求項11に記載の二重鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項13】
二重鎖オリゴヌクレオチドのいずれかの1本の鎖が、担体に固定されてなる、請求項11~12のいずれかに記載の二重鎖オリゴヌクレオチド。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学の分野の基本的な技術に、二重鎖核酸の鎖交換反応技術がある。この鎖交換反応技術は、多くの応用があり、例えば、SNPsの検出や、DNA結合タンパクの検出などを効率的に行うために用いられる。そのために、鎖交換反応技術は、分子生物学の基礎研究だけではなく、例えば、医療分野における診断や治療、あるいは治療薬や診断薬等の開発や製造、工業及び農業分野における酵素や微生物等の開発や製造に使用される極めて重要な技術である。特に、最近では、テーラーメイド治療への期待が高まるにしたがって、より簡易に遺伝子診断を行うための技術として注目されている。
【0003】
このようなDNAの鎖交換反応は、詳細な解析(非特許文献1:Winfree E et al,J.Am.Chem.Soc.2009,131,pp17303-17314)が行われ、高い精度でシミュレーションすることが可能となっている。このような解析から、鎖交換反応にはある程度の時間を必要とすることがわかっている。そして、鎖交換反応に要する時間の長さは、鎖交換反応を応用を広げるうえで、大きな制約となっている。
【0004】
そこで、鎖交換反応の高速化のための手法が検討されてきた。例えば、カチオン性高分子を導入する手法(非特許文献2:Maruyama A et al,Chem.Eur.J.2001,7,pp176-180)が報告されている。しかし、カチオン性高分子を用いる場合はbufferに制限が生じ生体内に近い条件では使用できないという、大きな制約が生じるという問題がある。
【0005】
あるいは、例えば、PNAなどの電荷を持たない骨格(非特許文献3:Oliver S et al,Bioorg.Med.Chem.2008,16,pp34-39)を用いることによる鎖交換反応の高速化が報告されている。しかし、このように骨格にPNAを使用しなければならないのであれば、天然の核酸配列を使用できないという、大きな制約が生じるという問題がある。
【0006】
本発明者の研究グループによって、光応答性人工ヌクレオチドが開発され、特許出願が行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】国際公開公報WO2009/066447号
【0008】

【非特許文献1】Winfree E et al,J.Am.Chem.Soc.2009,131,pp17303-17314
【非特許文献2】Maruyama A et al,Chem.Eur.J.2001,7,pp176-180
【非特許文献3】Oliver S et al,Bioorg.Med.Chem.2008,16,pp34-39
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように鎖交換反応の高速化のための手法が求められている。本発明の目的は、高速化された鎖交換反応の方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鎖交換反応の高速化を鋭意研究してきたところ、鎖交換反応前の二重鎖、あるいは一重鎖のなかに、ビニルカルバゾール構造を有する光応答性の人工塩基をあらかじめ導入しておき、この光応答性の修飾塩基に光照射して、所定の光架橋を形成させることによって、鎖交換反応が著しく高速化されることを見いだして、本発明に到達した。本発明によれば、鎖交換反応は著しく高速化されて、極めて短時間で、鎖交換された二重鎖を新たに得ることができる。
【0011】
したがって、本発明は、次の(1)~にある。
(1)
第1のオリゴヌクレオチド(ODN1)と第2のオリゴヌクレオチド(ODN2)とがハイブリダイズしてなる二重鎖オリゴヌクレオチド(ただし、
ODN2は、ODN1とハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB1)を有し、このHYB1に隣接して、ODN1とハイブリダイズしない塩基配列(NHYB1)を有し、
ODN2は、塩基配列中に、光応答性修飾塩基を有し、
ODN1は、ODN2のHYB1の光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置に光架橋可能な塩基を有しておらず、
二重鎖オリゴヌクレオチドは、ODN2のNYYB1の領域においては一本鎖となっている。)と、
第3のオリゴヌクレオチド(ODN3)(ただし、
ODN3は、ODN2のHYB1及びNHYB1にハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB2)を連続して有し、
ODN3は、ODN2の光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置に光架橋可能な塩基を有している。)とを、水溶液中で、光照射して、光架橋させる工程、
を含む、ODN1とODN2の二重鎖が鎖交換されてODN3とODN2の二重鎖となった、鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドの製造方法。
(2)
第1のオリゴヌクレオチド(ODN1)と第4のオリゴヌクレオチド(ODN4)とがハイブリダイズしてなる二重鎖オリゴヌクレオチド(ただし、
ODN4は、ODN1とハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB1)を有し、このHYB1に隣接して、ODN1とハイブリダイズしない塩基配列(NHYB1)を有し、
二重鎖オリゴヌクレオチドは、ODN4のNYYB1の領域においては一本鎖となっている。)と、
第5のオリゴヌクレオチド(ODN5)(ただし、
ODN5は、ODN4のHYB1及びNHYB1にハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB2)を連続して有し、
ODN5は、塩基配列中に、光応答性修飾塩基を有し、
ODN4は、ODN5の光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置に光架橋可能な塩基を有している。)とを、水溶液中で、光照射して、光架橋させる工程、
を含む、ODN1とODN4の二重鎖が鎖交換されてODN5とODN4の二重鎖となった、鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドの製造方法。
【0012】
(3)
光応答性修飾塩基が、核酸塩基の塩基部分として、次の式I:
【化1】
JP0006210484B2_000002t.gif
(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
N-は、Nの一価基を表す。)
で表される人工塩基を有する光応答性修飾塩基である、(1)~(2)のいずれかに記載の方法。
【0013】
(4)
光応答性修飾塩基と光架橋可能な塩基が、シトシン、ウラシル、チミン、シュードウラシル及びシュードチミンからなる群から選択された1種以上の塩基である、(3)に記載の方法。
(5)
光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置が、光応答性修飾塩基の5’末端側に隣接する塩基と相補的な位置である、(3)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)
ODN1とハイブリダイズしない塩基配列(NHYB1)が、ODN1とハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB1)の5’末端側又は3’末端側に隣接している、(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)
光照射が、366nmの波長を含む光の光照射である、(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
(8)
光照射が、0.01~30秒間の光照射である、(1)~(7)のいずれかに記載の方法。
(9)
光照射が、0~70℃の範囲の温度で行われる、(1)~(8)のいずれかに記載の方法。
(10)
鎖交換反応前の二重鎖オリゴヌクレオチドのいずれかの1本の鎖に、蛍光発光色素分子を結合させ、残る1本の鎖に、該蛍光発光色素分子を消光可能となる位置で蛍光消光分子を結合させて、
鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドが製造されたことが、蛍光発光によって検出可能である、(1)~(9)のいずれかに記載の方法。
【0014】
さらに、本発明は次の(11)~にもある。
(11)
ODN2が、HYB1の塩基配列中に、光応答性修飾塩基を有している、(1)に記載の方法。
(12)
ODN2のHYB1の塩基配列が、光応答性修飾塩基の位置を除いて、ODN1と相補的な塩基配列であり、
ODN3のHYB2の塩基配列が、光応答性修飾塩基と相補的な位置、及び光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置を除いて、ODN2と相補的な塩基配列である、(1)又は(11)に記載の方法。
(13)
ODN5が、HYB2の塩基配列中に、光応答性修飾塩基を有している、(2)に記載の方法。
(14)
ODN4のHYB1の塩基配列が、ODN1と相補的な塩基配列であり、
ODN4のHYB2の塩基配列が、光応答性修飾塩基と相補的な位置を除いて、ODN5と相補的な塩基配列である、(2)又は(13)に記載の方法。
【0015】
さらに、本発明は、上述した方法の工程を含む、二重鎖オリゴヌクレオチドを鎖交換する方法にもある。さらに、本発明は、上述した方法の工程を含む、オリゴヌクレオチドを検出する方法にもある。
【0016】
さらに、本発明は次の(21)~にもある。
(21)
第1のオリゴヌクレオチド(ODN1)と第2のオリゴヌクレオチド(ODN2)とがハイブリダイズしてなる二重鎖オリゴヌクレオチド(ただし、
ODN2は、ODN1とハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB1)を有し、このHYB1に隣接して、ODN1とハイブリダイズしない塩基配列(NHYB1)を有し、
ODN2は、塩基配列中に、光応答性修飾塩基を有し、
ODN1は、ODN2のHYB1の光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置に光架橋可能な塩基を有しておらず、
二重鎖オリゴヌクレオチドは、ODN2のNYYB1の領域においては一本鎖となっている。)。
(22)
ODN2が、HYB1の塩基配列中に、光応答性修飾塩基を有している、(21)に記載の二重鎖オリゴヌクレオチド。
【0017】
(23)
光応答性修飾塩基が、核酸塩基の塩基部分として、次の式I:
【化2】
JP0006210484B2_000003t.gif
(ただし、式I中、Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、C2~C7のアルコキシカルボニル基、又は水素であり、
N-は、Nの一価基を表す。)
で表される人工塩基を有する光応答性修飾塩基である、(21)~(22)のいずれかに記載の二重鎖オリゴヌクレオチド。
【0018】
(24)
光応答性修飾塩基と光架橋可能な塩基が、シトシン、ウラシル、チミン、シュードウラシル及びシュードチミンからなる群から選択された1種以上の塩基である、(23)に記載の二重鎖オリゴヌクレオチド。
(25)
光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置が、光応答性修飾塩基の5’末端側に隣接する塩基と相補的な位置である、(23)~(24)のいずれかに記載の二重鎖オリゴヌクレオチド。
(26)
ODN1とハイブリダイズしない塩基配列(NHYB1)が、ODN1とハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB1)の5’末端側又は3’末端側に隣接している、(21)~(25)のいずれかに記載の二重鎖オリゴヌクレオチド。
(27)
二重鎖オリゴヌクレオチドのいずれかの1本の鎖に、蛍光発光色素分子を結合させ、残る1本の鎖に、該蛍光発光色素分子を消光可能となる位置で蛍光消光分子を結合させた、(21)~(26)のいずれかに記載の二重鎖オリゴヌクレオチド。
(28)
二重鎖オリゴヌクレオチドのいずれかの1本の鎖が、担体に固定されてなる、(21)~(27)のいずれかに記載の二重鎖オリゴヌクレオチド。
(29)
二重鎖オリゴヌクレオチドが、折り返された1本のオリゴヌクレオチド鎖によって形成されたものである、(21)~(28)のいずれかに記載の二重鎖オリゴヌクレオチド。
【0019】
さらに、本発明は、上記のODN1とODN2とODN3とからなるキットにもある。また、本発明は、上記のODN1とODN4とODN5とからなるキットにもある。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鎖交換反応は著しく高速化されて、秒単位という極めて短時間で、鎖交換反応を行って、鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドを新たに得ることができる。また、本発明による鎖交換反応の高速化は、その原理を光架橋反応においているものであるために、特殊なバッファを使用する等などの制約がない。本発明によれば、重要な要素技術でありながら、従来はその所要時間の長さから応用が限られていた鎖交換反応技術を、遺伝子診断その他の応用に、広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、光架橋を介した鎖交換反応の速度解析の変性PAGE解析結果を示す図である。
【図2】図2は、光照射時間によるクロスリンク体の変化を示すグラフである。
【図3】図3は、蛍光測定による鎖交換反応の速度解析の結果を示すグラフである。
【図4】図4は、光架橋の有無による鎖交換反応のグラフを対比した図である。
【図5】図5は、光架橋を介した鎖交換反応の速度解析の変性PAGE解析結果を表す図である。
【図6】図6は、光照射時間によるクロスリンク体の変化を示すグラフである。
【図7】図7は、蛍光測定による鎖交換反応の速度解析の結果のグラフである。
【図8】図8は、光架橋の有無による鎖交換反応のグラフの比較である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
具体的な実施の形態をあげて、以下に本発明を詳細に説明する。本発明は、以下にあげる具体的な実施の形態に限定されるものではない。
[鎖交換反応の概要]
本発明によれば、二重らせんを形成した二重鎖オリゴヌクレオチドの鎖の1本を、外部から添加した一本鎖のオリゴヌクレオチドの鎖と速やかに交換して、新しい二重鎖オリゴヌクレオチドを得ることができる。すなわち、本発明は、速やかな鎖交換反応によって、新しい組み合わせの二重鎖オリゴヌクレオチドを速やかに製造する方法である。本発明による高速化の原理は、オリゴヌクレオチド鎖に光応答性修飾塩基を導入して、光架橋を行うことによって、新しく製造される二重鎖オリゴヌクレオチドの生成が、熱力学的に有利なものとなるように導くことにある。

【0023】
鎖交換後に得られる新しい組み合わせの二重鎖オリゴヌクレオチドにおいて、光架橋が形成されているためには、鎖交換前の二重鎖オリゴヌクレオチドの鎖に、光応答性修飾塩基を導入しておいてもよく、外部から添加する一本鎖のオリゴヌクレオチドの鎖に、光応答性修飾塩基を導入しておいてもよく、その両方に導入しておいてもよい。

【0024】
[鎖交換前の二重鎖オリゴヌクレオチドに光応答性修飾塩基が導入された態様]
したがって、本発明の好適な実施の一態様は、第1のオリゴヌクレオチド(ODN1)と第2のオリゴヌクレオチド(ODN2)とがハイブリダイズしてなる二重鎖オリゴヌクレオチド(ただし、ODN2は、ODN1とハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB1)を有し、このHYB1に隣接して、ODN1とハイブリダイズしない塩基配列(NHYB1)を有し、ODN2は、塩基配列中に、光応答性修飾塩基を有し、ODN1は、ODN2のHYB1の光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置に光架橋可能な塩基を有しておらず、二重鎖オリゴヌクレオチドは、ODN2のNYYB1の領域においては一本鎖となっている。)と、第3のオリゴヌクレオチド(ODN3)(ただし、ODN3は、ODN2のHYB1及びNHYB1にハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB2)を連続して有し、ODN3は、ODN2の光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置に光架橋可能な塩基を有している。)とを、水溶液中で、光照射して、光架橋させる工程、を含む、ODN1とODN2の二重鎖が鎖交換されてODN3とODN2の二重鎖となった、鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドの製造方法、にある。

【0025】
好適な実施の態様において、ODN2が、HYB1の塩基配列中に、光応答性修飾塩基を有しているものとすることができる。また、好適な実施の態様において、ODN2のHYB1の塩基配列が、光応答性修飾塩基の位置を除いて、ODN1と相補的な塩基配列であり、ODN3のHYB2の塩基配列が、光応答性修飾塩基と相補的な位置、及び光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置を除いて、ODN2と相補的な塩基配列であるものとすることができる。

【0026】
[外部から添加する一本鎖のオリゴヌクレオチドの鎖に光応答性修飾塩基が導入された態様]
したがって、本発明の好適な実施の一態様は、第1のオリゴヌクレオチド(ODN1)と第4のオリゴヌクレオチド(ODN4)とがハイブリダイズしてなる二重鎖オリゴヌクレオチド(ただし、ODN4は、ODN1とハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB1)を有し、このHYB1に隣接して、ODN1とハイブリダイズしない塩基配列(NHYB1)を有し、二重鎖オリゴヌクレオチドは、ODN4のNYYB1の領域においては一本鎖となっている。)と、第5のオリゴヌクレオチド(ODN5)(ただし、ODN5は、ODN4のHYB1及びNHYB1にハイブリダイズ可能な塩基配列(HYB2)を連続して有し、ODN5は、塩基配列中に、光応答性修飾塩基を有し、ODN4は、ODN5の光応答性修飾塩基が光架橋可能な位置に光架橋可能な塩基を有している。)とを、水溶液中で、光照射して、光架橋させる工程、を含む、ODN1とODN4の二重鎖が鎖交換されてODN5とODN4の二重鎖となった、鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドの製造方法、にある。

【0027】
好適な実施の態様において、ODN5が、HYB2の塩基配列中に、光応答性修飾塩基を有しているものとすることができる。また、好適な実施の態様において、ODN4のHYB1の塩基配列が、ODN1と相補的な塩基配列であり、ODN4のHYB2の塩基配列が、光応答性修飾塩基と相補的な位置を除いて、ODN5と相補的な塩基配列であるものとすることができる。

【0028】
[オリゴヌクレオチド鎖の長さ等]
本発明の好適な実施の態様において、鎖交換に使用されるオリゴヌクレオチドの長さには特に制約はない。例えば、鎖交換されるオリゴヌクレオチド鎖のHYB1の塩基配列の長さが、4~40000塩基、10~10000塩基、10~1000塩基、10~100塩基などとすることができる。塩基配列が長い場合においても、本発明による光架橋は、熱力学的な原理から、鎖交換反応を有効に高速化する。本発明で1本のオリゴヌクレオチド鎖に導入される光応答性修飾塩基の数は、1個に限られるものではなく、例えば、1個以上、例えば、1~l00個、1~10個、1~5個とすることができる。したがって、塩基配列が長い場合に、高速化の程度を、所望の程度にまで高めるために、複数の光応答性修飾塩基をオリゴヌクレオチド鎖に導入して、複数箇所で光架橋を形成させることも、本発明の範囲内である。また、鎖交換されるオリゴヌクレオチド鎖のNHYB1の長さも特に制約はないが、このNHYB1の領域は、二重鎖から露出する一本鎖部分となって、外部から添加した一本鎖オリゴヌクレオチドが最初に付着する部分となるので、その役割を果たす程度の長さがあれば十分であり、例えば、NHYB1の塩基配列の長さが、4~24塩基、4~16塩基、6~12塩基などとすることができる。ODN2又はODN4のオリゴヌクレオチド鎖において、NHYB1の塩基配列は、HYB1の塩基配列の5’末端側又は3’末端側に隣接して位置しており、いずれの位置とするかについては、当業者が適宜選択することができる。好適な実施の態様において、例えば、NHYB1の塩基配列は、ODN2又はODN4のオリゴヌクレオチド鎖において、HYB1の塩基配列の5’末端側に隣接させることができる。

【0029】
[光応答性修飾塩基]
光応答性修飾塩基としては、上記原理を実現可能な光応答性修飾塩基であれば使用することができるが、好適に使用可能な光応答性修飾塩基としては、次式I:

【0030】
【化3】
JP0006210484B2_000004t.gif

【0031】
で表される人工塩基を挙げることができる。この人工塩基が、オリゴヌクレオチド中でジエステル結合したヌクレオチドの塩基部分として、天然の核酸塩基の塩基部分に置換されて、導入されている。

【0032】
Raは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、さらに好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基は、好ましくはC2~C7、さらに好ましくはC2~C6、さらに好ましくはC2~C5、さらに好ましくはC2~C4、さらに好ましくはC2~C3、特に好ましくはC2のものを使用することができる。

【0033】
R1及びR2は、それぞれ独立に、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、又は水素であり、さらに好ましくは、シアノ基、アミド基、カルボキシル基、又はアルコキシカルボニル基である。アルコキシカルボニル基は、好ましくはC2~C7、さらに好ましくはC2~C6、さらに好ましくはC2~C5、さらに好ましくはC2~C4、さらに好ましくはC2~C3、特に好ましくはC2のものを使用することができる。

【0034】
上記のN-は、Nの一価基を表し、この部分が五単糖の1位にグリコシド結合して、人工塩基として導入されている。すなわち、次式II:

【0035】
【化4】
JP0006210484B2_000005t.gif

【0036】
で表されるリボヌクレオチド、または、次式III:

【0037】
【化5】
JP0006210484B2_000006t.gif

【0038】
で表されるデオキシリボヌクレオチドが、リン酸ジエステル結合によって、オリゴヌクレオチドの塩基配列中に導入されて、次式IV:

【0039】
【化6】
JP0006210484B2_000007t.gif

【0040】
で表される核酸(ただし、Rbは、式Iの基が塩基部分として導入されたリボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドが、リン酸ジエステル結合によって塩基配列中に導入されたオリゴヌクレオチドの鎖を表す)となっている。なお、1本のオリゴヌクレオチドの鎖に導入される式Iの人工塩基の数は、1個に限られるものではない。

【0041】
上記ビニルカルバゾール構造を有する光応答性の人工塩基(光応答性修飾塩基)を導入したオリゴヌクレオチドと、それに相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとをハイブリダイズさせて二重らせんを形成させて、形成した二重らせんに光照射を行うと、ハイブリダイズした相手方のオリゴヌクレオチドの配列中において、光反応性の人工塩基と相補的に対応して塩基対となるべき塩基から1塩基分だけ3’末端側にある塩基と、光架橋を形成する。

【0042】
この光応答性の人工塩基が光架橋を形成可能である相手方の塩基は、ピリミジン環を有する塩基である。一方で、この光応答性の人工塩基は、プリン環を有する塩基とは光架橋を形成しない。すなわち、この光応答性の人工塩基は、例えば、シトシン、ウラシル、及びチミン、さらにシュードウラシル及びシュードチミンに対して光架橋を形成し、一方で、グアニン及びアデニンに対しては光架橋を形成しないという、強い特異性を有している。したがって、本発明においては、それぞれの1本鎖オリゴヌクレオチドの相補的な関係は、光応答性の人工塩基に関して、この条件を満たすようになっている。一方、ハイブリダイズした相手方のオリゴヌクレオチドの配列中において、この光応答性の人工塩基と塩基対となるべき塩基の位置にある塩基については、相補鎖による2重らせんの形成を妨げない限りは、特段の制約がなく、どのような塩基であってもよく、例えば、核酸塩基として、シトシン、ウラシル、チミン、グアニン及びアデニン、あるいはさらにシュードウラシル及びシュードチミンのいずれであっても使用することができる。

【0043】
[鎖交換反応の条件]
本発明による鎖交換反応の高速化は、その原理が光化学反応にあるので、後述する光照射の条件を妨げない限り、鎖交換反応において使用される公知の条件を、特に制限無く使用することができる。例えば、溶液としては、水溶液を使用することができ、公知の塩類、公知の緩衝液、を所望により使用することができる。このような緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、トリス緩衝液、クエン酸緩衝液、カコジル酸緩衝液、等をあげることができる。このような塩類としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等を挙げることができ、例えば、NaCl、KCl、CaCl2、MgCl2等をあげることができるが、これらに限られるものではない。また、例えば、溶液のpHは、鎖交換反応に使用される公知のpHを使用することができ、例えば、pH5.0~pH8.0、pH6.0~pH7.5等とすることができる。また、鎖交換反応に先立って、二重鎖オリゴヌクレオチドを用意するために、適宜、アニーリング等を行ってもよい。また、本発明の鎖交換反応は、広汎な条件下で行うことができることから、この鎖交換反応をPCRのプロセスと組み合わせて、PCRで使用される条件下で行うこともできる。

【0044】
[光照射]
光架橋を形成させるための光照射は、一般に330~370nmの範囲、好ましくは330~360nmの波長を含む光を使用することができる。また、好適な実施の態様において、366nmの波長を含む光、特に好ましくは、366nmの単波長のレーザー光を使用することができる。鎖交換反応に有利に、光架橋反応を進行させるために、例えば、0~70℃の範囲の温度、例えば0~40℃の範囲の温度、例えば20~40℃の範囲の温度で、光照射を行うことができる。この光架橋は、光反応を使用しているために、光照射時のpH、塩濃度などに特段の制約がない点で有利である。この光架橋の形成は、光照射によって極めて迅速に進行するために、光照射の時間は、極めて短時間で十分であり、例えば、0.01~30秒間、0.01~20秒間、0.05~10秒間、0.1~10秒間、0.1~5秒間、0.1~1秒間などの光照射時間とすることができる。光照射によって生じる光架橋は、共有結合であって、十分に安定であり、例えば、二重鎖オリゴヌクレオチドが完全に解離してしまうような強い変性条件下においても、切断されることはない。この光架橋によって、鎖交換反応が、熱力学的に有利となり、迅速に進行する。

【0045】
[鎖交換反応の検出]
鎖交換反応によって、開始時に存在した二重鎖オリゴヌクレオチドが消耗して、新しい組み合わせの二重鎖オリゴヌクレオチドが生成したことは、公知の手段によって検出することができる。例えば、分子量の変化があればPAGE等の手段でそれを検出してもよく、いずれかの鎖を公知の手段で標識しておいて、PAGE等と組み合わせて検出してもよい。好適な実施の態様において、蛍光発光色素分子と蛍光消光分子とを用いた検出を行うことができる。例えば、鎖交換反応前の二重鎖オリゴヌクレオチドのいずれかの1本の鎖に、蛍光発光色素分子を結合させ、残る1本の鎖に、該蛍光発光色素分子を消光可能となる位置で蛍光消光分子を結合させれば、鎖交換反応前の二重鎖オリゴヌクレオチドは蛍光発光しない。しかし、鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドが製造されると、蛍光発光色素分子は蛍光消光分子から離れて、蛍光発光可能となる。蛍光発光分子が鎖交換反応によって一本鎖として遊離するようにしてもよく、蛍光発光分子が鎖交換反応によって二重鎖として残るようにしてもよい。また、このような蛍光発光分子や蛍光消光分子を含めて、所望の標識の部位をいずれかのオリゴヌクレオチドの鎖に結合させて使用する態様もまた、本発明の範囲内である。さらに、このような検出を容易にするために、いずれかのオリゴヌクレオチドの鎖を、担体や固定基板に結合させて使用する態様もまた、本発明の範囲内である。また、上記のように鎖交換反応を検出することによって、鎖交換反応が可能な、二重鎖オリゴヌクレオチド、あるいは外部の一本鎖オリゴヌクレオチドが存在することを検出するということができる。したがって、本発明は、高速化された鎖交換反応によって、二重鎖オリゴヌクレオチド、あるいは外部の一本鎖オリゴヌクレオチドを、検出する方法にもある。
【実施例】
【0046】
以下に実施例をあげて、本発明を詳細に説明する。本発明は、以下に例示する実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例で使用するODN1等の番号付けは、実施例以外で使用するODN1等の番号付けとは異なるものである。
【実施例】
【0047】
CNVK含有ODNの合成]
次の式V:
【実施例】
【0048】
【化7】
JP0006210484B2_000008t.gif
【実施例】
【0049】
で表されるヌクレオチド(CNVK)を塩基配列中に有するODN(オリゴデオキシリボヌクレオチド)を製造するために、次のスキーム1(Scheme1)にしたがって合成を行った。合成は、特許文献1(国際公開公報WO2009/066447号)に開示された手順にしたがって行った。
【実施例】
【0050】
【化8】
JP0006210484B2_000009t.gif
【実施例】
【0051】
上記のように合成した光応答性人工核酸3-cyanovinylcarbazole nucleotideのアミダイト体をアセトニトリルで100 mMに調整し、DNA/RNAシンセサイザー(Applied Biosystems社製、ABI3400)にてODN(オリゴヌクレオチド)を合成した。合成したODN配列を以下の表1に示す。合成後、28%アンモニア水を用いて55℃で8時間脱保護を行った。その後、HPLCにて精製を行い、質量分析により目的配列であることを確認した。
【実施例】
【0052】
【表1】
JP0006210484B2_000010t.gif
【実施例】
【0053】
CNVKを組み込んだODNによる鎖交換反応の変性PAGE解析]
上記で製造したODN1、ODN2、ODN3を使用して、次のスキーム2(Scheme2)に示す鎖交換反応を行って、その進行を変性PAGE解析で確認した。この実施例で使用するODN1、ODN2、ODN3の番号付けは、本明細書の「課題を解決するための手段」や「発明を実施するための形態」におけるODN1、ODN2、ODN3にそれぞれ相当する。
【実施例】
【0054】
【化9】
JP0006210484B2_000011t.gif
Scheme 2
【実施例】
【0055】
13塩基長のODN1は、21塩基長のODN2の3’末端側と相補性ある配列を有しており、二重らせんを形成している。表1のODN2のCNVKは、スキーム2のなかではXと記載した。二重らせんの中で、ODN2のCNVK(X)に対しては、ODN1のAが位置している(スキーム2の上段の図参照)。21塩基長のODN3は、ODN2と相補性ある配列を有しており、上記のODN2の5’末端側の相補的配列に塩基対を形成して付着する。ODN2に付着したODN3は、ODN3-ODN2間の塩基対を適宜形成する。このODN3-ODN2間の塩基対は、熱力学的な原理にしたがって、ODN1-ODN2間の塩基対と、あたかも線ファスナーのように、可逆的に置換してゆく(スキーム2の中段の左側の図参照)。可逆的な置換が、Xの5’末端側に隣接する塩基(上記ODN2においてはT)と相補的な位置にある塩基に至ったときに、すなわちXの5’末端側に隣接する塩基と相補的な位置にODN3のTが配置されたときに、366nmの光照射を行うと、ODN2のXと、Xの5’末端側に隣接する塩基と相補的な位置にあるODN3のTとが、光連結される(スキーム2の中段の右側の図参照)。このようにXとTの光連結を介して、ODN2とODN3とが共有結合的に結合されると、この点において、ODN1-ODN2間の塩基対と、ODN3-ODN2間の塩基対との置換は、可逆的ではないものとなり、ODN1-ODN2間の塩基対が、ODN3-ODN2間の塩基対へ置換される反応が、速やかに進行して、結果としてODN1とODN2の二重らせんは、ODN3とODN2の二重らせんに鎖交換される(スキーム2の下段の図参照)。ただし、ODN2のXと連結したODN3のTの相補的な位置にはTがあり、ODN3とODN2の二重らせんは、1箇所だけミスマッチがある。
【実施例】
【0056】
このようなスキーム2の反応を、具体的には次のように行った。
500nM ODN1と500nM ODN2をバッファー(100mM NaCl,50mMカコジル酸ナトリウム)中で70℃で5分間加熱した後、37℃もしくは25℃で1時間以上放置し、アニーリングを行った。その後、ODN3を最終濃度が500nMとなるように加え、すぐUV-LED照射機を用い、366nmのUV照射を37℃もしくは25℃で行った。光照射時間は0,0.1,0.5,1,2,5,10,15秒(s)行った。それぞれのサンプルを変性PAGEによる解析を行い、光架橋を介した鎖交換反応の速度解析を行った。その結果を図1に示す。
【実施例】
【0057】
図1は、光架橋を介した鎖交換反応の速度解析の変性PAGE解析結果を示す図である。この変性PAGE解析の結果より、鎖交換反応中に光照射を行うことにより、光照射後にクロスリンク体(上記のODN2とODN3のクロスリンク体)のバンドが出現していることが確認できた。鎖交換前はCNVKのターゲット塩基の位置(すなわち、CNVKの5’末端側に隣接する塩基と相補的な位置)にはアデニン(A)が来ており、光照射を行ってもクロスリンク体は出現しないが、鎖交換反応が起こると、ターゲット塩基の位置にチミン(T)が来るため、クロスリンク体が出現する。そのためクロスリンク体の出現により鎖交換反応の速度の解析を行うことが出来る。光照射時間によるクロスリンク体の割合変化を図2にまとめた。
【実施例】
【0058】
図2は、光照射時間によるクロスリンク体の変化を示すグラフである。全てのODNがクロスリンク体(上記のODN2とODN3のクロスリンク体)となった場合を、100%とした。CNVKを組み込み、光照射を行うことによって、5秒間で約70%以上(25℃)及び75%以上(37℃)の鎖交換反応が進行していた。また、0.5秒間の光照射によっても、55%から65%以上(25℃)、60%から72%以上(37℃)の鎖交換反応が進行していた。25℃よりも37℃のほうが鎖交換反応の進行は早い傾向にあったが、25℃であっても極めて迅速に鎖交換反応が進行していた。
【実施例】
【0059】
CNVKを組み込んでいないODNによる鎖交換反応の蛍光解析]
次の表2に示すODN4、ODN5、ODN6を使用して、実験を行った。これらのODNを使用して、次のスキーム3(Scheme3)に示す鎖交換反応を行った。
【実施例】
【0060】
【表2】
JP0006210484B2_000012t.gif
【実施例】
【0061】
【化10】
JP0006210484B2_000013t.gif
Scheme 3
【実施例】
【0062】
13塩基長のODN4は、5’末端に蛍光色素分子(Cy3)(F)を有しており、21塩基長のODN5は、3’末端に蛍光消光分子(Dabcyl)(Q)を有している。ODN5は、上記のODN2においてXであった位置にTが位置しており、ODN4との配列の相補性は、完全である。これらが二重らせんを形成することによって、蛍光色素分子部位と、蛍光消光分子部位とが近接している場合には、蛍光は観察されない(Scheme3の上段の図参照)。21塩基長のODN3は、ODN5と相補性の塩基配列を有しており、蛍光色素分子及び蛍光消光分子のいずれも有していない。Scheme 2と同様に、ODN3がODN5に付着して(Scheme3の中段の左側の図参照)、熱力学的な原理によって、ODN4-ODN5の塩基対が、ODN3-ODN5の塩基対によって、可逆的に置換されていく(Scheme3の中段の右側の図参照)。この置換が完全に進行すると、ODN3とODN5との二重らせんが形成されて、ODN4が離脱し、蛍光色素分子部位は、蛍光消光分子部位から隔離されて、蛍光発光可能となる(Scheme3の下段の図参照)。ただし、ODN3とODN5の二重らせんは、1箇所だけ、TとTが相補的な位置に置かれており、ミスマッチがある。
【実施例】
【0063】
このスキーム3にしたがった実験を、具体的には次のように行った。
500nM ODN4と500nM ODN5をバッファー(100mM NaCl,50mMカコジル酸ナトリウム)中で70℃で5分間加熱した後、37℃もしくは25℃で1時間以上放置し、アニーリングを行った。その後、ODN3を最終濃度が500nMとなるように加え、蛍光分光光度計を用い、Cy3の蛍光強度の変化を測定した。その結果を図3に示す。
【実施例】
【0064】
図3は、蛍光測定による鎖交換反応の速度解析の結果を示すグラフである。全てのODNがODN3とODN5の二重らせんとなった場合を、鎖交換率100%とした。図3の左図は0秒から300秒までの変化を示したグラフであり、このうち0秒から120秒までの変化を拡大して右図のグラフとして示した。CNVKを用いていないスキーム3の鎖交換反応では、ODN3投入の後に鎖交換反応が70%超に進行するには、約300秒を要した。
【実施例】
【0065】
[光架橋による、鎖交換反応の加速の検討]
光架橋の有無による鎖交換反応の比較を図4にまとめた。図4は、光架橋の有無による鎖交換反応のグラフを対比した図である。ここからわかるように、光架橋した場合は、光架橋しない場合と比較して、5秒間で70%以上の鎖交換反応が進行しており、25℃と37℃のいずれの温度であっても、鎖交換反応の進行の圧倒的な加速が確認された。
【実施例】
【0066】
鎖交換反応の立ち上がりの近似曲線の傾きからそれぞれの初速を求め光架橋により、おおよそ何倍加速しているのかを求めた。このように求めた光架橋による鎖交換反応の加速率の対比の結果を、次の表3に示す。
【実施例】
【0067】
【表3】
JP0006210484B2_000014t.gif
【実施例】
【0068】
このように、25℃の際には、光架橋があることで鎖交換反応が56倍加速しており、37℃の際も、光架橋があることで鎖交換反応が70倍と大きく加速していることが分かった。
【実施例】
【0069】
[3本目のODN鎖にCNVKを導入した系による鎖交換反応の変性PAGE解析]
鎖交換反応の開始時点において、形成されている二重らせんにはCNVKが導入されておらず、遊離のODNにCNVKが導入されている実験系を使用して、鎖交換反応を解析した。実験には、次の表4に示すODN1、ODN6、ODN7を使用した。これらのODNを使用して、次のスキーム4(Scheme4)に示す鎖交換反応を行った。この実施例で使用するODN1、ODN6、ODN7の番号付けは、本明細書の「課題を解決するための手段」や「発明を実施するための形態」におけるODN1、ODN4、ODN5にそれぞれ相当する。
【実施例】
【0070】
【表4】
JP0006210484B2_000015t.gif
【実施例】
【0071】
【化11】
JP0006210484B2_000016t.gif
Scheme4
【実施例】
【0072】
13塩基長のODN1は、21塩基長のODN6の3’末端側と相補性ある配列を有しており、二重らせんを形成している。二重らせんの形成に参加していない3本目のODN鎖である、21塩基長のODN7は、ODN6と相補性ある配列を有しており、配列中にCNVK(X)を有している(スキーム4の上段の図参照)。ODN7がODN6の5’末端側の相補的配列に塩基対を形成して付着すると、ODN7-ODN6間の塩基対は、熱力学的な原理にしたがって、ODN1-ODN6間の塩基対と、あたかも線ファスナーのように、可逆的に置換してゆく(スキーム4の中段の左側の図参照)。可逆的な置換が、ODな7のXに至ったときに、すなわちXが、相補的な位置にある塩基の3’末端側に隣接する塩基(ODN6におけるT)と、光連結可能な位置に配置されたときに、366nmの光照射を行うと、ODN7のXと、相補的な位置にある塩基の3’末端側に隣接する塩基(ODN6におけるT)とが、光連結される(スキーム4の中段の右側の図参照)。XとTの光連結を介して、ODN6とODN7とが共有結合的に結合されると、ODN1-ODN6間の塩基対が、ODN7-ODN6間の塩基対へ置換される反応が、速やかに進行して、結果としてODN1とODN6の二重らせんは、ODN7とODN6の二重らせんに鎖交換される(スキーム4の下段の図参照)。
【実施例】
【0073】
このスキーム3にしたがった実験を、具体的には次のように行った。
500nM ODN1と500nM ODN6をバッファー(100mM NaCl,50mMカコジル酸ナトリウム)中で70℃で5分間加熱した後、37℃もしくは25℃で1時間以上放置し、アニーリングを行った。その後、ODN7を最終濃度が500nMとなるように加え、すぐUV-LED照射機を用い、366nmのUV照射を37℃もしくは25℃で行った。光照射時間は0,0.1,0.5,1,5,10,15秒行った。それぞれのサンプルを変性PAGEによる解析を行い、光架橋を介した鎖交換反応の速度解析を行った。その結果を図5に示す。
【実施例】
【0074】
図5は、光架橋を介した鎖交換反応の速度解析の変性PAGE解析結果を表す図である。この変性PAGE解析の結果より、光照射後にクロスリンク体のバンドが出現していることが確認できた。鎖交換反応中に光照射を行うことにより、クロスリンク体のバンドが出現している。鎖交換によってCNVKを含むODNが二本鎖を形成し、チミンと架橋することによってクロスリンク体のバンドが出現する。そのため、クロスリンク体の出現により鎖交換反応の速度の解析を行うことができる。光照射時間によるクロスリンク体の割合変化を図6に示す。
【実施例】
【0075】
図6は、光照射時間によるクロスリンク体の変化を示すグラフである。5秒間の光照射により反応はほぼ定常状態に達していた。光架橋により鎖交換反応が高速に進行していることがわかった。25℃よりも37℃のほうが鎖交換反応の進行は早い傾向にあった。
【実施例】
【0076】
CNVKを組み込んでいないODNによる鎖交換反応の蛍光解析]
次の表5に示すODN4、ODN5、ODN8を使用して、実験を行った。これらのODNを使用して、次のスキーム5(Scheme5)に示す鎖交換反応を行った。
【実施例】
【0077】
【表5】
JP0006210484B2_000017t.gif
【実施例】
【0078】
【化12】
JP0006210484B2_000018t.gif
Scheme5
【実施例】
【0079】
このスキーム5では、スキーム3において使用したODN4、ODN5、ODN3に代えて、ODN4、ODN5、ODN8を使用して、同様の手順で反応を行っている。ODN8は、ODN3の塩基配列の1箇所でTがAに置換した配列を有しており、その結果、ODN5とODN8の二重鎖には、ODN5とODN3の二重鎖に存在していたミスマッチがない。
【実施例】
【0080】
この実験は、具体的には次の手順で行った。
500nM ODN4と500nM ODN5をバッファー(100mM NaCl,50mMカコジル酸ナトリウム)中で70℃で5分間加熱した後、37℃もしくは25℃で1時間以上放置し、アニーリングを行った。その後、ODN8を最終濃度が500nMとなるように加え、蛍光分光光度計を用い、Cy3の蛍光強度の変化を測定した。その結果を図7に示す。
【実施例】
【0081】
図7は、蛍光測定による鎖交換反応の速度解析の結果のグラフである。図7の左図のグラフの上側の曲線が37℃、下側の曲線が25℃の結果である。図7の右図は、左図の横軸の0~120秒の範囲を拡大したグラフである。CNVKを用いていない鎖交換反応では25℃では、約300秒で60%近い鎖交換反応が、37℃の場合は30秒で80%近い鎖交換反応が進行していた。光架橋の有無による鎖交換反応の比較を図8にまとめた。
【実施例】
【0082】
図8は、光架橋の有無による鎖交換反応のグラフの比較である。図8の左図は25℃、右図は37℃の結果であり、いずれのグラフでも上側の曲線が光架橋ありの場合、下側の曲線が光架橋なしの場合である。光架橋した場合では、秒単位での鎖交換反応の進行が確認され。光架橋していないものとでは圧倒的な加速が確認された。そこで、鎖交換反応の立ち上がりの近似曲線の傾きからそれぞれの初速を求め光架橋により、おおよそ何倍加速しているのかを求めた。光架橋による鎖交換反応の加速率を、次の表6に示す。
【実施例】
【0083】
【表6】
JP0006210484B2_000019t.gif
【実施例】
【0084】
この結果から、25℃の際には、光架橋により鎖交換反応が10倍加速しており、37℃の際も13倍と大きく加速していることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、鎖交換反応は著しく高速化されて、秒単位という極めて短時間で、鎖交換反応を行って、鎖交換された二重鎖オリゴヌクレオチドを新たに得ることができる。本発明は産業上有用な発明である。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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