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明細書 :セルロースナノファイバーおよびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-004151 (P2015-004151A)
公開日 平成27年1月8日(2015.1.8)
発明の名称または考案の名称 セルロースナノファイバーおよびその製造方法
国際特許分類 D01F   2/02        (2006.01)
FI D01F 2/02
請求項の数または発明の数 11
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2013-131448 (P2013-131448)
出願日 平成25年6月24日(2013.6.24)
発明者または考案者 【氏名】小野 努
【氏名】ムハマッド モニルッザマン
出願人 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001070、【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
審査請求 未請求
テーマコード 4L035
Fターム 4L035AA07
4L035AA09
4L035BB03
4L035BB06
4L035BB07
4L035BB16
4L035BB18
4L035BB19
4L035DD13
4L035DD20
4L035FF01
4L035FF05
要約 【課題】生産性に優れ、所望の長さおよびナノサイズの幅を有する紡糸された繊維(不織布状でないもの)が得られる、セルロースナノファイバーの製造方法を提供する。
【解決手段】(1)紡糸工程:(1A)セルロースのイオン液体溶液を含有する内相を二重管型マイクロノズルの内管吐出口から押し出すとともに、水を含有する外相を二重管型マイクロノズルの外管吐出口から押し出す押出ステップ、および(1B)前記押出ステップ(1A)により押し出された前記内相中のイオン液体を、前記押出ステップ(1A)により押し出された前記外相中の水に移行させることにより、前記内相中のセルロースを析出させてセルロースナノファイバーを形成させるステップ、を含む工程;および(2)洗浄工程:前記紡糸工程(1)により形成されたセルロースナノファイバーを回収して洗浄し、それに付着しているイオン液体を除去する工程;を含むことを特徴とする、セルロースナノファイバーの製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の紡糸工程(1)および洗浄工程(2)を含むことを特徴とする、セルロースナノファイバーの製造方法:
(1)紡糸工程:
(1A)セルロースのイオン液体溶液を含有する内相を二重管型マイクロノズルの内管吐出口から押し出すとともに、水を含有する外相を二重管型マイクロノズルの外管吐出口から押し出す押出ステップ、および
(1B)前記押出ステップ(1A)により押し出された前記内相中のイオン液体を、前記押出ステップ(1A)により押し出された前記外相中の水に移行させることにより、前記内相中のセルロースを析出させてセルロースナノファイバーを形成させるステップ、を含む工程;
(2)洗浄工程:前記紡糸工程(1)により形成されたセルロースナノファイバーを回収して洗浄し、それに付着しているイオン液体を除去する工程。
【請求項2】
前記イオン液体が式(I)で表されるものである、請求項1に記載の製造方法。
【化1】
JP2015004151A_000006t.gif
式(I)中、R1およびR2は独立してC1~C6アルキル基またはアリル基を表し、Xは、ハロゲン、擬ハロゲンまたはC1~C6カルボキシレートを表す。
【請求項3】
前記内相がさらに、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、および1-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種の内相用第2溶媒を含有する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記内相がさらに界面活性剤を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記界面活性剤がエステルエーテル型の非イオン性界面活性剤である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記外相がさらに、ケトン、アルコール、エーテル、エステル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミドおよびN,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1種の外相用第2溶媒を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記外相の流量(fo)が1000~50000μL/分であり、前記内相の流量(fi)が10~500μL/分であり、fiに対するfoの比率(Rf=fo/fi)が10~500である、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記内相の表面張力(懸滴法による測定値)が2~100mN/mである、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記紡糸工程(1)がさらに、前記析出ステップ(1B)により形成されるセルロースナノファイバーを、非延伸下または延伸下に引き取る引取ステップを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
平均断面径が5000nm以下、繊維長が1mm以上であり、未延伸であることを特徴とする、紡糸されたセルロースナノファイバー。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の製造方法により得られた、請求項10に記載のセルロースナノファイバー。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースナノファイバーの製造方法、より詳しくはセルロースのイオン液体溶液を用いる湿式紡糸法を応用したセルロースナノファイバーの製造方法、およびそれにより得られるセルロースナノファイバーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のナノテクノロジーの進展とともに、先端材料としてナノサイズのセルロースが注目されている。ナノサイズのセルロースは一般的に、アスペクト比やサイズによって、セルロースナノファイバー(CNF、幅4~100nm、長さ5μm以上)、セルロースナノウィスカー(CNW、幅10~50nm、長さ500nm程度)、セルロースナノクリスタル(CNC)などに分類される。
【0003】
このうちCNFの製造方法としては、たとえば、TEMPO(2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル)触媒酸化による方法が知られている(非特許文献1,2)。この方法では、セルロースミクロフィブリルの表面に露出している、セルロースを構成するグルコース単位のC6位の1級水酸基が全てカルボキシル基(ナトリウム塩)に変換され、水溶性のβ-(1→4)-ポリグルクロン酸へと変換される。その結果、セルロースミクロフィブリル間の無数の水素結合が切断され、幅3~4nmで長さが数μm以上のCNFを分離分散させることができる。他にも、硫酸処理、酵素加水分解、メカノケミカル処理などを用いて天然のセルロース繊維を分解することにより、CNFないしCNW、CNCを製造する方法が知られている。
【0004】
しかしながら、これらの方法により得られるCNFはいずれも、繊維として用いることのできる十分な長さを有するものではなく、用途はコンポジット材料の補強材などに限定される。
【0005】
一方で、イオン液体を用いることによりセルロースを溶解することができることも知られている。特許文献1には、セルロースを様々なイオン液体と混合して撹拌することによりセルロースのイオン液体溶液を調製できること、このような溶液をダイを通じてセルロースの非溶媒(水等)の中に押し出すことにより繊維等の様々な成形体を製造できること、たとえばセルロース溶液を注射器から水中へ押し出すことにより、繊維が融合した集塊状の生地が生成することなどが記載されている(特許請求の範囲、段落0015-0016、0022等)。
【0006】
また、特許文献2には、特定のイオン液体(イミダゾリウム陽イオンを有するもの)と、特定の窒素系有機溶媒(N,N-ジメチルアセトアミド等)またはジメチルスルホキシドとの混合溶媒が、イオン液体の粘度が低下し、セルロースへの浸透性が促進されることによって、セルロースの溶解速度を向上させることができる優れた溶媒となることが記載されている(特許請求の範囲、段落0024-0026等)。そして、この混合溶媒を用いて調製されるセルロース溶液を、イオン液体等を溶出しうる溶媒(凝固剤)中を通過させることで繊維やフィルムに成形することができること、たとえば、セルロース溶液をシリンジに入れ、押出機能を持つ紡糸機に固定し、孔径0.30mmφを有するノズルから常温のメタノール中に吐出し、1.2倍に延伸するなどの工程を経て繊維が得られることも記載されている(段落0036、0051等参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1および2には、そこに開示されている方法によって繊維幅がナノメートルオーダーのセルロース繊維が得られることは、記載も示唆もされていない。
さらに、特許文献3には、セルロースの有機溶媒溶液(たとえばトリフロロ酢酸)を用いたエレクトロスピニング法(ES法、電解紡糸法)により、直径が40~100nmのCNFが得られることが記載されている。
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載された製造方法では、CNF繊維同士が絡まり合ってできた不織布シート状の成形体は得られるものの、紡糸された直線状のCNF繊維は得られないため、用途が限定されてしまう。
【0009】
なお、出願人は、特許文献4において、脂肪族ポリエステル樹脂(例えばポリ乳酸)由来の疎水性のブロックと親水性高分子(例えばPEG)由来の親水性のブロックとを有する油溶性ジブロック共重合体が溶解した有機溶媒溶液(内相)を、界面活性剤が溶解した水溶液(外相)とともに線状に押し出し、内相中の有機溶媒を外相に拡散させることにより、前記油溶性ジブロック共重合体からなるナノファイバーを製造する方法を提案している。
【0010】
しかしながら、特許文献4で開示されている発明は、上記の特殊な重合体を有機溶媒に溶解させて、そのナノファイバーを調製することにとどまる。そのような手法を他の種類のナノファイバーの製造に応用したとき、特に一般的な有機溶媒ではなくイオン液体に原料を溶解させた溶液を内相としたときに成功するかどうかについては何も示唆されておらず、当業者といえども特許文献4の記載に基づいて予測することはできない。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2005-506401号公報
【特許文献2】特開2009-203467号公報
【特許文献3】特開2009-203467号公報
【特許文献4】国際公開WO2012/029710号
【0012】

【非特許文献1】木材学会誌 Vol.54, No.3, p.107-115 (2008)
【非特許文献2】高分子 58巻 2月号 p.90-91 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、生産性に優れ、所望の長さおよびナノサイズの幅(ナノメートルオーダーまたはそれに近い幅)を有する紡糸された繊維(不織布状でないもの)が得られる、セルロースナノファイバーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、セルロースをイオン液体に溶解させた溶液を内相とし、水を含有する外相とともに二重管型マイクロノズルから押し出し、内相中のイオン液体を外相に移行、拡散させてセルロースを凝集、析出させることによって、繊維幅がナノサイズ紡糸された繊維が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
すなわち、本発明は一つの側面においてセルロースナノファイバーの製造方法を提供し、もう一つの側面においてセルロースナノファイバー自体を提供する。かかる本発明は下記の事項を包含する。
【0016】
[1] 下記の紡糸工程(1)および洗浄工程(2)を含むことを特徴とする、セルロースナノファイバーの製造方法:
(1)紡糸工程:
(1A)セルロースのイオン液体溶液を含有する内相を二重管型マイクロノズルの内管吐出口から押し出すとともに、水を含有する外相を二重管型マイクロノズルの外管吐出口から押し出す押出ステップ、および
(1B)前記押出ステップ(1A)により押し出された前記内相中のイオン液体を、前記押出ステップ(1A)により押し出された前記外相中の水に移行させることにより、前記内相中のセルロースを析出させてセルロースナノファイバーを形成させるステップ、を含む工程;
(2)洗浄工程:前記紡糸工程(1)により形成されたセルロースナノファイバーを回収して洗浄し、それに付着しているイオン液体を除去する工程。
【0017】
[2] 前記イオン液体が式(I)で表されるものである、[1]に記載の製造方法。
【0018】
【化1】
JP2015004151A_000002t.gif
式(I)中、R1およびR2は独立してC1~C6アルキル基またはアリル基を表し、Xは、ハロゲン、擬ハロゲンまたはC1~C6カルボキシレートを表す。
【0019】
[3] 前記内相がさらに、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、および1-メチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種の内相用第2溶媒を含有する、[1]または[2]に記載の製造方法。
【0020】
[4] 前記内相がさらに界面活性剤を含有する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の製造方法。
[5] 前記界面活性剤がエステルエーテル型の非イオン性界面活性剤である、[4]に記載の製造方法。
【0021】
[6] 前記外相がさらに、ケトン、アルコール、エーテル、エステル、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミドおよびN,N-ジメチルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1種の外相用第2溶媒を含有する、[1]~[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
【0022】
[7] 前記外相の流量(fo)が1000~50000μL/分であり、前記内相の流量(fi)が10~500μL/分であり、fiに対するfoの比率(Rf=fo/fi)が10~500である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の製造方法。
【0023】
[8] 前記内相の表面張力(懸滴法による測定値)が2~100mN/mである、[1]~[7]のいずれか一項に記載の製造方法。
[9] 前記紡糸工程(1)がさらに、前記析出ステップ(1B)により形成されるセルロースナノファイバーを、非延伸下または延伸下に引き取る引取ステップを含む、[1]~[8]のいずれか一項に記載の製造方法。
【0024】
[10] 平均断面径が5000nm以下、繊維長が1mm以上であり、未延伸であることを特徴とする、紡糸されたセルロースナノファイバー。
[11] [1]~[9]のいずれかに記載の製造方法により得られた、[10]に記載のセルロースナノファイバー。
【発明の効果】
【0025】
本発明のセルロースナノファイバーの製造方法により、生産性に優れ、所望の長さおよびナノサイズの幅を有する直線状の繊維を効率的に製造することができるようになる。このようにして得られるセルロースナノファイバーには、繊維長が長いことや、生物由来で生分解性を有することなどを活かした、様々な用途が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】[a]本発明(実施例)で用いられる、二重管型マイクロノズル(10)およびシリンジ(21, 22)を備えたマイクロ流体デバイス(1)の概略図。枠線部:内相(100)中のイオン液体等が、外相(200)の水等に移行して拡散することにより、内相(100)中のセルロースが析出して凝集し、セルロースナノファイバー(300)が形成される。[b]二重管型マイクロノズル(10)の開口部の拡大平面図。内管吐出口(11)から内相(100)が押し出され、外管吐出口(12)から外相(200)が押し出される。
【図2】実施例1において、内相の流量を変化させたときに得られた生成物のSEM画像(左から、内相流量が30, 50, 100 μL/min)。
【図3】実施例2において、外相の組成および流速を変化させたときに得られた生成物のSEM画像。[1B]アセトン、外相流速:10,000 μL/min。[2B]アセトン/水(1:1)、外相流速:10,000 μL/min。[3B]水、外相流速:8,000 μL/min。[3C]水、外相流速:10,000 μL/min。
【図4】実施例3において、内相に界面活性剤(Tween 40)を添加したときに得られたセルロースナノファイバーのSEM画像。
【発明を実施するための形態】
【0027】
- セルロースナノファイバー -
本発明に係るセルロースナノファイバーは、十分な長手方向の長さ(繊維長)と、ナノサイズ、つまりナノメートルオーダーまたはそれに近い断面径(繊維幅)を有する、セルロースで構成される繊維である。このようなセルロースナノファイバーは、紡糸されたものとして、すなわち不織布状になっておらず、繊維長を活用できるようなものとして製品化することができる。

【0028】
本発明に係るセルロースナノファイバーは、本発明に係るセルロースナノファイバーの製造方法において、別途延伸処理を施さない未延伸の状態のものとして調製することができるが、必要であれば別途延伸処理を施すことで延伸した状態のものとして調製してもよい。すなわち、未延伸の状態で繊維幅がナノメートルオーダーである(析出ステップにおいて調整されたばかりの)本発明に係るセルロースナノファイバーを利用して、引取ステップにおいて延伸操作を加えることにより、さらに繊維幅を細くしたり、結晶配向度を高めたりするなど、性状が改変されたセルロースナノファイバーを調製することができる。

【0029】
セルロースナノファイバーの平均断面径(繊維幅)は、ナノメートルオーダー、つまり1μm(1000nm)未満またはそれに近い範囲で、用途に応じた適切な平均断面径を有するようにすればよく、特に限定されるものではない。本発明のセルロースナノファイバーの平均断面径は、未延伸の状態で通常は10~5000nm、好ましくは10~2000nm、より好ましくは50~500nmの範囲である。本発明に係る製造方法、好適には二重管型マイクロノズル装置を利用する製造方法において、当該装置が備える細孔(ノズル)の孔径や、そこから押し出される内相および外相の流速(それらの比率)を変化させることにより、セルロースナノファイバーの平均断面径を調節することができる。

【0030】
なお、本明細書における平均断面径は、断面径の数平均値を意味しており、たとえば走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、適切な数(たとえば、繊維同士の融合などの問題が起きていない50箇所)のセルロースナノファイバーの断面径を測定した結果に基づき算出することができる。

【0031】
一方、セルロースナノファイバーの長手方向の長さ(繊維長)は特に限定されるものではないが、従来の化学処理、酵素加水分解、メカノケミカル処理等により天然のセルロースのミクロフィブリルを分解することで調製されるセルロースナノファイバーと明らかに区別できる、通常1mm以上、好ましくは10mm以上、より好ましくは1000mm以上の長さを有するものとして調製することができる。

【0032】
- セルロースナノファイバーの製造方法 -
本発明に係るセルロースナノファイバーの製造方法は、以下に記載するような、所定の装置ならびに内相および外相を用いて、所定の製造工程により実施される。

【0033】
(装置)
本発明のセルロースナノファイバーの製造方法は、図1に示すような二重管型マイクロノズルを備えた装置(マイクロ流体デバイス)を使用して行うことが望ましい。ただし、本発明の製造方法は、この図に示した装置を使用して実施する形態に限定されるものではなく、従来のマイクロ流体デバイスやその他の装置を本発明の実施にとって好適なように改変した装置などを使用して実施してもよい。なお、本発明で用いる装置が備える二重管型マイクロノズルは、従来の中空糸を製造するために用いられるノズルに類似した構造を持つ。

【0034】
以下、図1[a]および[b]を参照しながら、本発明に用いることのできるマイクロ流体デバイス、およびそれを用いたときにセルロースナノファイバーが形成される様子について説明する。

【0035】
マイクロ流体デバイス(1)は、二重管型マイクロノズル(10)と、そこに連通する2つのマイクロ流路、すなわち内管および外管を備える。本発明ではこれらのマイクロ流路内での安定的な送液が重要である。マイクロ流路の末端にはそれぞれシリンジ(21)および(22)が連結されており、内管に連結されたシリンジ(21)には内相を充填し、外管に連結されたシリンジ(22)には外相を充填する。なお、これらのシリンジは、他の送液手段に置き換えることも可能である。二重管型マイクロノズル(10)には、内管吐出口(11)と、その周りを取り囲む外管吐出口(12)が設けられている。シリンジを操作することにより、内管吐出口(11)から内相(100)を、外管吐出口(12)から外相(200)を、それぞれ所定の速度で押し出すことができる。内管吐出口の口径(内管径)および外管吐出口の口径(外管径)は、目的とするセルロースナノファイバーの繊維幅や内相および外相の性状(粘度等)などに応じて調整することができるが、内管径は通常50~300μmであり、外管径は通常200~2000μmである。

【0036】
内管吐出口(11)から押し出された内相(100)および外管吐出口(12)から押し出された外相(200)は、前者が後者に取り囲まれるようにして、それぞれ層流状態で流れる。内相(100)中のイオン液体および必要に応じて添加される内相用第2溶媒(DMSO等)は、水に対する溶解性が比較的高いため、流れと共に内相(100)から外相(200)に移行して拡散してゆく。その結果、内相(100)中に溶解していたセルロースが析出し、セルロースナノファイバー(300)が形成される。

【0037】
(内相)
本発明では、セルロースのイオン液体溶液、好ましくはさらに内相用第2溶媒および/または界面活性剤が添加されたイオン液体溶液を、二重管型マイクロノズルの内管を流して押し出す内相として用いる。

【0038】
・セルロース
内相に配合するセルロースは、セルロースの精製品(再生セルロース)、たとえばセルロースパウダーのような市販品に由来するものであってもよいし、セルロースを含有する様々な物質、たとえば植物資源(パルプ、コットンリンター、木質バイオマス、草本性廃棄物等)や紙製品(古紙等)に由来するものであってもよい。

【0039】
内相中のセルロースの量は、内相の溶媒(イオン液体、またはイオン液体と内相用第2溶媒との混合溶媒)の種類、その溶媒にセルロースを溶解して調製される内相の粘度、本発明の製造方法において使用したときの紡糸性などを考慮しながら、適切な範囲で調節することができるが、たとえば、内相の溶媒に対して、通常0.1~5wt%の範囲、好ましくは1~3wt%の範囲で調整することができる。

【0040】
・イオン液体
内相に配合するイオン液体は、セルロースを溶解する能力を有し、かつ外相(水)に溶解する(つまり親水性である)ものであれば、特に限定されない。たとえば、特開2005-506401号公報(前記特許文献1)に記載されているイオン液体、すなわち、ピリジニウム型(所定の置換基およびピリジニウム骨格を有する陽イオン。以下「型」は同様の意味を表す。),ピリダジニウム型,ピリミジニウム型,ピラジニウム型,イミダゾリウム型,ピラゾリウム型,オキサゾリウム型,1,2,3-トリアゾリウム型,1,2,4-トリアゾリウム型,チアゾリウム型,ピペリジニウム型,ピロリジニウム型,キノリニウム型,またはイソキノリニウム型の陽イオンと、ハロゲン,擬ハロゲン,またはC1-C6カルボキシレートから選択される陰イオンとで構成されるイオン液体を用いることができる。セルロースを溶解する能力、水に対する溶解性、調製される溶液(内相)の粘度などを考慮しながら、適切なイオン液体を選択すればよい。イオン液体は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0041】
本発明で用いるのに好適なイオン液体の具体例として、前記イミダゾリウム型の陽イオンに対応する、式(I)で表されるイオン液体が挙げられる。

【0042】
【化2】
JP2015004151A_000003t.gif
式(I)中、R1およびR2は独立して、C1~C6アルキル基またはアリル基を表し、Xは、ハロゲン、擬ハロゲンまたはC1~C6カルボキシレートを表す。C1~C6アルキル基は、好ましくはC1~C4アルキル基である、R2としては、特にメチル基が好ましい。また、R1はたとえばエチル基が好ましく、Xはたとえばアセテートが好ましい。

【0043】
・内相用第2溶媒
必要に応じて内相に添加する内相用第2溶媒は、イオン液体の粘度を下げるための成分である。すなわち、セルロースを溶解するための内相の溶媒は、イオン液体と内相用第2溶媒とを含有する混合溶媒とすることができる。セルロースをイオン液体溶液に溶解させて調製される内相は一般的に粘度が高くなる傾向にあるので、ノズル(内管吐出口)から所定の流量で押し出される内相は、細孔を詰まらせるなどの問題を起こさず、かつセルロースナノファイバーの紡糸性を適切なものとするよう、粘度を適切な範囲に調整することが好ましい。

【0044】
上記のような機能を有する化合物としては、たとえば、ジメチルスルホキシド(DMSO)や、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、および1-メチル-2-ピロリドンなどの窒素系有機溶媒が挙げられる。これらの化合物は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0045】
内相用第2溶媒を用いる場合、その添加量は、内相用第2溶媒の種類および前述したような作用や、セルロースの配合量などを考慮しながら、適切な範囲で調節することができるが、たとえば、イオン液体:内相用第2溶媒の重量比が、通常95:5~20:80の範囲、好ましくは85:15~25:75の範囲で調整される。

【0046】
・界面活性剤
必要に応じて内相に添加する界面活性剤は、イオン液体および必要に応じて用いられる内相用第2溶媒(DMSO等)を外相の水に拡散させやすくするための成分である。このような界面活性剤を用いることにより、析出するセルロースナノファイバーの形状をクリアにする、すなわち繊維幅のそろった直線状のセルロースナノファイバーを得やすくすることができる。

【0047】
イオン液体等を外相の水に拡散させるための補助剤としての機能を有する化合物であれば、界面活性剤の種類は特に限定されるものではないが、たとえば、ノニオン(非イオン)性界面活性剤が好ましい。ノニオン性界面活性剤には、エステルエーテル型、エーテル型、エステル型のものなどが包含されるが、中でもエステルエーテル型のものが好ましい。界面活性剤は、いずれか1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

【0048】
エステルエーテル型のノニオン性界面活性剤は、一般的に多価アルコールの脂肪酸エステルにエチレンオキシド(EO)を付加することで得られる化合物であり、たとえば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(東京化成工業株式会社、商品名「Tween20」)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミタート(同「Tween40」)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアラート(同「Tween60」)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(同「Tween80」)、ポリオキシエチレンソルビタントリオレアート(同「Tween85」)が挙げられる。

【0049】
エーテル型のノニオン性界面活性剤としては、炭素数10~18の高級アルコールにエチレンオキシドを付加重合することにより得られる化合物(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、たとえば、ジエチレングリコールモノドデシルエーテル、エチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノセチルエーテル(n≒23、なおnはエチレンオキシドのユニット数、以下同じ)、ポリエチレングリコールモノドデシルエーテル(n≒25)、ポリエチレングリコールモノ-4-オクチルフェニルエーテル(n≒10)、テトラエチレングリコールモノドデシルエーテル、トリエチレングリコールモノドデシルエーテルが挙げられる。また、アルキルフェノールにEOを付加重合して得られる化合物(ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル)、たとえばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルや、ポリプロピレングリコールにエチレンオキシドを付加重合して得られる化合物(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)も、エーテル型のノニオン性界面活性剤として挙げられる。

【0050】
エステル型のノニオン性界面活性剤としては、グリセリン、ソルビタン、シュガー、プロピレングリコール等の高級アルコールの脂肪酸エステルが挙げられる。
界面活性剤を内相に添加する場合、その量は、界面活性剤の種類および前述したような作用を考慮しながら、適切な範囲で調節することができる。たとえば、ノニオン性界面活性剤、好ましくはエステルエーテル型のノニオン性界面活性剤を用いる場合、その添加量は、内相の溶媒(イオン液体、またはイオン液体と内相用第2溶媒との混合溶媒)に対して、通常0.5~6.0wt%の範囲、好ましくは1.0~5.0wt%の範囲で調整することができる。

【0051】
・内相の調製方法
内相は、セルロース(セルロースを含有する原料)およびイオン液体を、必要に応じてさらに内相用第2溶媒および界面活性剤を加えた上で混合することにより調製することができる。各成分の配合量は前述したような範囲で調節することができ、内相の性状はその配合組成によって調整することができる。イオン液体は、あらかじめ水分を極力除去しておくことが好ましい。セルロースの原料は、必要に応じてあらかじめ適切なサイズに微細化、粉末化しておいてもよい。混合は、一般的な撹拌装置を用いた撹拌や、超音波照射装置を用いた超音波振動などによって行えばよい。

【0052】
セルロースのイオン液体への溶解は室温で行うことができるが、反応を促進するために、イオン液体の沸点以下、かつセルロースの分子構造の劣化や重合度の低下を引き起こさない温度範囲、たとえば120℃以下の範囲で、加熱してもよい。他にも必要に応じて、セルロースの溶解速度を向上させるための手法(たとえばマイクロ波照射)を併用してもよい。

【0053】
・表面張力
ノズル(内管吐出口および外管吐出口)から内相および外相を押し出す際に必要となる圧力や、セルロースナノファイバーの紡糸性を適切なものとするよう、また、内相中のイオン液体を紡糸後に速やかに取り除けるよう、それぞれの表面張力、特に内相の表面張力を適切な範囲で調製することが好ましい。表面張力は、イオン液体に、内相用第2溶媒および/または界面活性剤を添加することにより低下させることができる。内相(セルロースを溶解させていない状態のとき)の表面張力は、通常2~100mN/m、好ましくは3~30mN/mの範囲で調整される。

【0054】
なお、本発明における表面張力は、セルロースナノファイバーが調製される温度環境、たとえば室温(25℃)において、一般的な測定手法である懸滴法による表面張力測定、たとえばセルロースのイオン液体溶液のように比較的粘度の高い物質を試料とすることにも適していると考えられるKRUSS社製品「DSA10-MK2」によって測定される値である。

【0055】
(外相)
本発明では、水、または水と外相用第2溶媒との混合溶媒を、二重管型マイクロノズル装置の外管を流して押し出す外相として用いる。

【0056】
・外相用第2溶媒
必要に応じて外相に添加される外相用第2溶媒は、水に対する相溶性のある溶媒であって、水と同様に、イオン液体および必要に応じて内相に添加される内相用第2溶媒(DMSO等)を移行させて溶解することができ、かつセルロースに対しては貧溶媒(凝固液)となるものであれば、特に限定されるものではない。このような溶媒としては、たとえば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール;フラン、ジオキサンなどのエーテル;酢酸メチルなどのエステル、さらに内相用第2溶媒としても用いられるジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドが挙げられる。

【0057】
水と外相用第2溶媒との混合溶媒を外相として用いた場合、水のみを外相と用いた場合とは性状の異なるセルロースナノファイバーが得られる場合がある。たとえば、イミダゾリウム型のイオン液体とDMSOの混合溶媒にセルロースを溶解させて内相とするとき、水のみを外相とした場合は直線状のセルロースナノファイバーが形成されるのに対し、水とアセトンを1:1(v:v)で混合した溶媒を外相とした場合はリボンのように捻れたセルロースナノファイバーが形成される。水と外相用第2溶媒との混合割合は、イオン液体および必要に応じて内相に添加される内相用第2溶媒のそれぞれに対する溶解性を考慮しながら、所望の性状のセルロースナノファイバーが得られるよう、適切な範囲で調整すればよい。イオン液体の種類によっては(後述する実施例で用いられているイミダゾリウム型のイオン液体など)、外相を水だけとするよりも、水と他の溶媒(アセトンなど)の混合溶媒とした方が移行しやすい場合がある。たとえば、外相として水とアセトンの混合溶媒を用いる場合は、水:アセトンの体積比(v:v)が、通常60:40~5:95の範囲、好ましくは50:50~20:80の範囲で調整することができる。アセトンが多すぎる場合、たとえばアセトンのみを外相とする場合は、セルロースナノファイバーが得られなくなる。

【0058】
(製造工程)
本発明のセルロースナノファイバーの製造方法は、以下に記載するような紡糸工程(1)および洗浄工程(2)を含み、必要に応じてその他の工程をさらに含んでいてもよい。

【0059】
(1)紡糸工程
紡糸工程(1)は、押出ステップ(1A)および析出ステップ(1B)を含み、必要に応じてさらに引取ステップ(1C)を含んでいてもよい。これらのステップ(1A)、(1B)および(1C)は、通常は連続的に、同時進行で(並行的に)行われる。

【0060】
(1A)押出ステップ
押出ステップ(1A)は、セルロースのイオン液体溶液を含有する内相を二重管型マイクロノズルの内管吐出口から押し出すとともに、水を含有する外相を二重管型マイクロノズルの外管吐出口から押し出すステップである。

【0061】
二重管型マイクロノズルの内管吐出口および外管吐出口は、具体的には、図1に示すような構造を有する。内相および外相は、図1に示すような装置が備えるシリンジまたはそれに代わるデバイスにより、内管吐出口および外管吐出口から押し出すことができる。

【0062】
・流量
押出ステップ(1A)において押し出される内相および外相それぞれの流量(単位時間あたりに押し出される体積)およびそれらの比率(流量比)を変化させることにより、得られるセルロースナノファイバーの性状(断面径、形状など)を調節することができる。内相の流量(fi)および外相の流量(fo)は、所望のセルロースナノファイバーが調製できれば特に限定されるものではなく、内相および外相の配合組成なども考慮しながら、適切に調整することができる。通常は、foがfiよりも大きくなるよう設定されるが、fiが一定の値以上でないとセルロースナノファイバーがうまく調製できない場合がある。また、一般的には、fiに対するfoの比率(Rf=fo/fi)が高いほど、析出ステップ(1B)におけるイオン液体等の水等への移行速度も速くなるため、得られるセルロースナノファイバーの断面径は細くなり、リボン状ではなく径の揃った直線状のセルロースナノファイバーが得られやすくなる傾向にある。たとえば、外相の流量(fo)は通常1000~50000μL/分、好ましくは2000~20000μL/分、たとえば5000~10000μL/分であり、内相の流量(fi)は、通常10~500μL/分、好ましくは50~200μL/分、たとえば100μL/分であり、fiに対するfoの比率(Rf=fo/fi)は、通常10~500、好ましくは20~200、たとえば50~100の範囲で調整される。このような流量での押し出しは、マイクロ流体デバイスおよびシリンジ等における設定を通じて行うことができる。なお、上記のような外相の流量(fo)および内相の流量(fi)は、それぞれ、細孔(開口部)の断面積で割ることにより、その地点での流速に換算することも可能である。

【0063】
(1B)析出ステップ
析出ステップ(1B)は、前記押出ステップ(1A)により押し出された前記内相中のイオン液体を、前記押出ステップ(1A)により押し出された前記外相中の水に移行させることにより、前記内相中のセルロースを析出させてセルロースナノファイバーを形成させるステップを含むステップである。

【0064】
ここで、内相の溶媒がイオン液体と内相用第2溶媒との混合溶媒である場合は、この析出ステップにおいて、イオン液体とともに内相用第2溶媒も外相に移行する。また、外相が水と、水に対する相溶性にある溶媒との混合溶媒である場合は、この析出ステップにおいて、イオン液体、またはイオン液体および内相用第2溶媒が、外相中の水とともに水に対する相溶性にある溶媒にも移行する。

【0065】
内相中のイオン液体等が外相中の水等に移行するにつれて、内相中に溶解していたセルロースが析出して樹脂化し、そのセルロースからなる繊維が形成される。なお、「移行」には、内相中のイオン液体等が、外相中の水等に、飽和溶解度に達するまで自然と溶解させる「拡散」の作用によるものと、必要に応じて添加される界面活性剤の働きにより飽和溶解度を上昇させて、より多くの内相中のイオン液体等が外相中の水等に溶解させる「抽出」の作用によるものとがあるが、どちらの作用によるものであってもよい。

【0066】
(1C)引取ステップ
必要に応じて設けてもよい引取ステップ(1C)は、前記析出ステップ(1B)により形成されるセルロースナノファイバーを、非延伸下または延伸下に引き取る(巻き取る)ステップである。用途を考慮したときにセルロースナノファイバーを引き取った方が好都合であれば、このような引き取りステップを設ければよい。析出ステップ(1B)における初期の析出物を引き取ることにより、繊維化を連続的に進行させることができ、所望の長さの直線状のセルロースナノファイバーを得ることができる。一方で、セルロースナノファイバーを引き取る必要がなければ、析出したセルロースナノファイバーはそのまま、続く洗浄工程(2)のために回収されるまで、内相・外相混合液中に留めておけばよい。

【0067】
本発明の製造方法では、別途延伸処理を行わなくてもナノメートルオーダーの繊維幅を有するセルロース繊維を製造することができるため、この工程において延伸しながら引き取る必要はないが、さらに繊維幅を狭くしたり、結晶配向性を高めたりしたいなど、所望に応じて延伸しながら引き取るようにしてもよい。押出ステップ(1A)における内相の押出速度(流量)よりも速い速度で繊維を巻き取ることにより、その繊維を延伸することができる。この工程における巻き取りの操作は、公知の湿式紡糸法で用いられているような手法に準じて、適切な手法およびそのための装置ないし器具を用いて行えばよい。

【0068】
(2)洗浄工程
洗浄工程(2)は、前記紡糸工程(1)により形成されたセルロースナノファイバーを回収して洗浄し、それに付着しているイオン液体を除去する工程である。内相のイオン液体に内相用第2溶媒および/または界面活性剤が添加されている場合は、この洗浄工程において、イオン液体とともに内相用第2溶媒および/または界面活性剤も除去するようにする。イオン液体等の除去が不十分だと、製造されたセルロースナノファイバーが可塑化したり、部分的にまたは完全にセルロースナノファイバー同士が融合したりする問題が起きるので、イオン液体等はセルロースナノファイバーから可能な限り除去することが望ましい。

【0069】
洗浄のための手法は、セルロースナノファイバーに付着しているイオン液体を除去することができるものであれば特に限定されるものではないが、極力セルロースナノファイバーを傷付けない手法が好ましい。たとえば、回収されたセルロースナノファイバーを、十分な量の水、エタノール等のイオン液体が溶解する洗浄溶媒中で、十分な時間、撹拌するようにすればよい。必要に応じて、洗浄溶媒中にイオン液体が検出されなくなるまで、このような洗浄ステップを複数回行ってもよい。洗浄ステップ後は、セルロースナノファイバーを回収して乾燥すればよい。

【0070】
- セルロースナノファイバーの用途 -
本発明のセルロースナノファイバーは、生物由来で生分解性のあるセルロースで形成され、かつナノメートルオーダーの繊維幅と十分に長い繊維長を有するという特性を活用することができる、多様な用途を有する。そのようなセルロースナノファイバーの用途は特に限定されるものではないが、一例として、セルロースナノファイバーが有する高比表面積とSlip-Flow効果による、高機能フィルターへの利用が挙げられる。また、従来のセルロースナノファイバーコンポジット材料よりも繊維長が長いため、セルロース本来の強度を活かした大幅な強度向上をもたらすコンポジット化材料として利用することもできる。
【実施例】
【0071】
[実施例1]
(内相および外相の調製)
80℃のオーブン中で12時間乾燥させた市販のセルロースパウダー0.37gを、イオン液体である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート([emim][OAc]、純度≧95%)1.0gと混合し、密封したバイアル中で室温で撹拌して溶解させた。十分に透明で均一な溶液になったところで,ジメチルスルホキシド(DMSO)1.5gを加えて粘度を下げ、内相とした。なお、内相中の混合溶媒の比率は、[emim][OAc]:DMSO=40:60(w:w)であり、この混合溶媒に対するセルロースの濃度は1.5wt%である。一方で、水:アセトン=1:1(v:v)の混合溶媒を調製し、外相とした。
【実施例】
【0072】
(セルロースナノファイバーの調製)
セルロースナノファイバーの調製には、室温(25℃)に置かれた、図1に示すような二重管型マイクロノズル装置(内管径130μm、外管径200μm)を使用した。上記のようにして調製した内相および外相それぞれをシリンジに充填し、当該装置のノズルに形成されている内管吐出口および外管吐出口から押し出した。外相の流量を5,000μL/分としたまま、内相の流量を30,50および100μL/分の3通りに変化させて実験を行った。
【実施例】
【0073】
つづいて、上記のような操作による生成物を、水を入れたバイアルに回収し、振盪機で一晩、200rpmの一定の回転速度で撹拌した。この生成物を回収し、さらにエタノール中に24時間撹拌しながら浸漬した後、洗浄溶媒中のイオン液体が分光法で検出されなくなるまで、繰り返し水およびエタノールで洗浄した。
【実施例】
【0074】
このような工程後の各実験における生成物のSEM画像を図2に示す。内相の流量を100μL/分にしたときに、比較的径の揃った繊維状のセルロースナノファイバーが得られた。
【実施例】
【0075】
なお、上記の条件において、内相の混合溶媒に対するセルロールの濃度を1.5wt%よりも高くすると微細流路がふさがれてしまい、1.5wt%よりも低くするとセルロース繊維が得られなかった。
【実施例】
【0076】
[実施例2]
外相の組成および外相の流量を表1に示すように変化させながら、実施例1と同様にして実験を行った。内相の組成は実施例1と同じであり、内相の流量は100μL/分とした。実験1B、2B、3Bおよび3Cにおける生成物のSEM画像を図3に示す。なお、実験2Aの内相および外相の条件は実施例1のものに一致する。
【実施例】
【0077】
【表1】
JP2015004151A_000004t.gif
【実施例】
【0078】
[実施例3]
実施例1の内相の組成にさらに界面活性剤(Tween40)を0.1gを加えて調製された内相(このとき、混合溶媒に対する界面活性剤の濃度は4wt%である。)および実施例1と同じ組成の外相を用いて、内相の流量を100μL/分、外相の流量も10,000μL/分とし、それ以外は実施例1と同様にして実験を行った。この実験における生成物のSEM画像を図4に示す。界面活性剤を添加することにより、より形状のクリアなセルロースナノファイバーを調製することが可能となった。
【実施例】
【0079】
[参考例1]
実施例1において、洗浄操作を行わなかったときの生成物のSEM画像を図5に示す。混合溶媒および界面活性剤の残存により、生成した繊維等が融合している様子が示されている。
【実施例】
【0080】
[参考例2]
表2に示す(混合)溶媒からなる内相の表面張力を、懸滴法に準じた測定装置(KRUSS社「DSA10-MK2」)を用いて、室温(25℃)で測定した。結果は表2に示す通りである。
【実施例】
【0081】
【表2】
JP2015004151A_000005t.gif
【符号の説明】
【0082】
1:マイクロ流体デバイス
10:二重管型マイクロノズル
11:内管吐出口
12:外管吐出口
21:内管連結用シリンジ
22:外管連結用シリンジ
100:内相
200:外相
300:セルロースナノファイバー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3