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明細書 :タウタンパク質のリン酸化が亢進された非ヒトモデル動物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6210752号 (P6210752)
公開番号 特開2015-002713 (P2015-002713A)
登録日 平成29年9月22日(2017.9.22)
発行日 平成29年10月11日(2017.10.11)
公開日 平成27年1月8日(2015.1.8)
発明の名称または考案の名称 タウタンパク質のリン酸化が亢進された非ヒトモデル動物の製造方法
国際特許分類 A01K  67/027       (2006.01)
FI A01K 67/027
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2013-130358 (P2013-130358)
出願日 平成25年6月21日(2013.6.21)
審査請求日 平成28年5月23日(2016.5.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
発明者または考案者 【氏名】▲柳▼下 聡介
【氏名】鈴木 正彦
【氏名】淡路 健雄
【氏名】吉川 圭介
【氏名】丸山 敬
【氏名】鈴木 星也
個別代理人の代理人 【識別番号】100107515、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 浩一
【識別番号】100107733、【弁理士】、【氏名又は名称】流 良広
【識別番号】100115347、【弁理士】、【氏名又は名称】松田 奈緒子
審査官 【審査官】飯室 里美
参考文献・文献 Neuroscience Letters, 2010, Vol.474, p.173-177
Journal of the Neurological Sciences, 2009, Vol.285, Suppl.1, S274, Abstract Number:P022-TH-01
調査した分野 A01K 67/027
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
非ヒト動物に間歇的低酸素負荷を施す工程を含み、
前記間歇的低酸素負荷を施す工程が、飼育環境下における酸素濃度を1分間で5体積%~10体積%まで下げる処理と、2分間で通常の飼育環境下における酸素濃度まで戻す処理とを交互に繰り返す工程であり、
前記間歇的低酸素負荷を施された非ヒト動物の大脳皮質及び海馬におけるタウタンパク質のリン酸化が亢進されることを特徴とするタウタンパク質のリン酸化が亢進された非ヒトモデル動物の製造方法。
【請求項2】
間歇的低酸素負荷を施す工程が、1日あたり6時間~10時間である請求項1に記載の非ヒトモデル動物の製造方法。
【請求項3】
間歇的低酸素負荷を施す時間帯が、非ヒト動物の睡眠時間帯である請求項1から2のいずれかに記載の非ヒトモデル動物の製造方法。
【請求項4】
製造期間が、3日間~30日間である請求項1から3のいずれかに記載の非ヒトモデル動物の製造方法。
【請求項5】
非ヒト動物がマウスである請求項1から4のいずれかに記載の非ヒトモデル動物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、タウタンパク質のリン酸化が亢進された非ヒトモデル動物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タウタンパク質は、中枢神経細胞に存在し、脳の神経ネットワークを構成する神経軸索の機能に必須のタンパク質である。前記タウタンパク質が原因となる神経変性疾患は、タウオパチーと称される。前記タウオパチーの1つであるアルツハイマー病に対しては、アミロイドβタンパク質を標的とした治療薬開発が続けられているが難航しているのが現状であり、近年、タウタンパク質を標的とした治療薬開発が注目を浴びている。しかしながら、理想的なモデル動物が乏しいという問題がある。
【0003】
これまでに、タウタンパク質のリン酸化が亢進されたモデル動物としては、遺伝子改変や、侵襲性の高い手術を伴う手法により製造されたモデル動物が提案されている。しかしながら、これらは、費用及び時間を要するという問題があり、また、生理的な条件下での解析ができないという問題がある。
また、類似のモデル動物として麻酔を投与することにより作製されたモデル動物も提案されているが、こちらも生理的な条件下とは言えず、また、行動解析実験を行うことができないという問題がある。
また、絶食刺激によりタウタンパク質のリン酸化が亢進されたモデルマウスも提案されている(例えば、特許文献1参照)が、こちらも生理的な条件下での解析ができず、また、長期間で発症するような疾患のモデルとすることはできないという問題がある。
【0004】
したがって、生理的な条件に近い条件で、簡便かつ効率良く製造することができ、かつ短期間で発症する疾患及び長期間で発症する疾患のいずれのモデルの製造にも使用可能であるタウタンパク質のリン酸化が亢進された非ヒトモデル動物の製造方法の速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2000-253774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、生理的な条件に近い条件で、簡便かつ効率良く製造することができ、かつ短期間で発症する疾患及び長期間で発症する疾患のいずれのモデルの製造にも使用可能であるタウタンパク質のリン酸化が亢進された非ヒトモデル動物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 非ヒト動物に間歇的低酸素負荷を施す工程を含むことを特徴とするタウタンパク質のリン酸化が亢進された非ヒトモデル動物の製造方法である。
<2> 間歇的低酸素負荷を施す工程が、1日あたり6時間~10時間である前記<1>に記載の非ヒトモデル動物の製造方法である。
<3> 間歇的低酸素負荷を施す工程が、飼育環境下における酸素濃度を5体積%~10体積%とする前記<1>から<2>のいずれかに記載の非ヒトモデル動物の製造方法である。
<4> 間歇的低酸素負荷を施す工程が、飼育環境下における酸素濃度を1分間で5体積%~10体積%まで下げる処理と、2分間で通常の飼育環境下における酸素濃度まで戻す処理とを交互に繰り返す前記<1>から<3>のいずれかに記載の非ヒトモデル動物の製造方法である。
<5> 非ヒト動物がマウスである前記<1>から<4>のいずれかに記載の非ヒトモデル動物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、生理的な条件に近い条件で、簡便かつ効率良く製造することができ、かつ短期間で発症する疾患及び長期間で発症する疾患のいずれのモデルの製造にも使用可能であるタウタンパク質のリン酸化が亢進された非ヒトモデル動物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、試験例1-1で使用したチャンバーの概要を示す概略図である。
【図2】図2は、試験例1-1におけるチャンバー内の酸素濃度の変化、及びマウスの血中酸素飽和度の変化の様子の代表的な実験データの一例のグラフである。
【図3A】図3Aは、試験例1-1から1-4の海馬のウエスタンブロッティングの結果を示す図である。
【図3B】図3Bは、試験例1-1から1-4の海馬のウエスタンブロッティングにおけるリン酸化タウタンパク質のバンドを数値化したグラフである。
【図3C】図3Cは、試験例1-1から1-4の大脳皮質のウエスタンブロッティングの結果を示す図である。
【図3D】図3Dは、試験例1-1から1-4の大脳皮質のウエスタンブロッティングにおけるリン酸化タウタンパク質のバンドを数値化したグラフである。
【図4A】図4Aは、試験例2-1から2-4の海馬のウエスタンブロッティングの結果を示す図である。
【図4B】図4Bは、試験例2-1から2-4の海馬のウエスタンブロッティングにおけるリン酸化タウタンパク質のバンドを数値化したグラフである。
【図4C】図4Cは、試験例2-1から2-4の大脳皮質のウエスタンブロッティングの結果を示す図である。
【図4D】図4Dは、試験例2-1から2-4の大脳皮質のウエスタンブロッティングにおけるリン酸化タウタンパク質のバンドを数値化したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(非ヒトモデル動物の製造方法)
本発明の非ヒトモデル動物の製造方法は、非ヒト動物に間歇的低酸素負荷を施す工程(以下、「間歇的低酸素負荷工程」と称することがある)を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
本発明の非ヒトモデル動物の製造方法によれば、タウタンパク質のリン酸化が亢進された非ヒトモデル動物を製造することができる。

【0011】
<間歇的低酸素負荷工程>
前記間歇的低酸素負荷工程は、非ヒト動物に間歇的低酸素負荷を施す工程である。

【0012】
-非ヒト動物-
前記非ヒト動物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌなどが挙げられる。これらの中でも、マウスが好ましい。
前記非ヒト動物の週齢、月齢、乃至年齢としては、特に制限はなく、目的とする疾患に応じて適宜選択することができる。

【0013】
-間歇的低酸素負荷-
前記間歇的低酸素負荷とは、飼育環境下における酸素濃度を、通常の飼育環境下における酸素濃度よりも低い酸素濃度とする処理(以下、「低酸素処理」と称することがある)と、通常の飼育環境下における酸素濃度まで戻す処理(以下、「通常処理」と称することがある)とを交互に繰り返し行うことをいう。
前記通常の飼育条件下における酸素濃度とは、20体積%~21体積%をいう。

【0014】
--酸素濃度--
前記低酸素処理における酸素濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5体積%~10体積%が好ましく、5体積%~8体積%がより好ましく、5体積%~6体積%が特に好ましい。前記酸素濃度が5体積%未満であると、非ヒト動物が眠らなくなることがあり、生理的な条件とは言えなくなり、また、本発明の製造方法を長期間施すことが困難となることがある。前記酸素濃度が10体積%を超えると、タウタンパク質のリン酸化の効率が低下することがある。一方、前記酸素濃度が前記好ましい範囲内であると、本発明の製造方法が短期間(例えば、マウスでは3日間~5日間)のみならず、長期間(例えば、マウスでは25日間~30日間)にわたっても非ヒト動物が生存することができ、かつ、タウタンパク質のリン酸化の効率にも優れ、様々なタウタンパク質を原因とする疾患に応じた非ヒトモデル動物を得ることができる点で、有利である。

【0015】
前記低酸素処理と、前記通常処理とを繰り返す態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1分間で所定の酸素濃度まで下げる低酸素処理と、2分間で通常の環境下における酸素濃度まで戻す通常処理とを交互に繰り返す態様が、生理的な条件により近い条件を実現できる点で、好ましい。
仮に通常処理に戻さずに、低酸素処理を維持したままの条件に非ヒト動物をさらした場合には、非ヒト動物がその環境に慣れてしまう可能性がある。その場合、特に負荷を長期化させた場合に、間歇的低酸素負荷に比して、その効果が減弱することがある。また、低酸素処理を維持した非ヒト動物と、間歇的低酸素負荷を施した非ヒト動物とを比べた場合に、後者の方が、より生理的と考えられるという点も、好ましい理由として挙げられる。

【0016】
前記低酸素処理における酸素濃度を下げる速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低酸素処理の終了時間に目的とする低酸素濃度となる速度とすることが好ましい。
前記通常処理における酸素濃度を戻す速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常処理の終了時間に通常の飼育環境下における酸素濃度となる速度とすることが好ましい。

【0017】
--酸素濃度の調節方法--
前記間歇的低酸素負荷工程における酸素濃度を調節する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非ヒト動物をチャンバーに入れ、該チャンバーへ、切り替え手段(以下、切り替え装置と称することもある)により、不活性ガス、又は通常の空気を送り込む方法が挙げられる(例えば、図1参照)。
前記不活性ガスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、窒素ガス、水素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどが挙げられる。これらの中でも、コスト面で、窒素ガスが好ましい。
前記不活性ガス、又は前記空気の流入量としては、特に制限はなく、目的とする酸素濃度に応じて適宜選択することができる。
前記チャンバー内の酸素濃度のモニターする方法としては、特に制限はなく、公知のモニターを適宜選択してモニターすることができ、例えば、S/5コンパクトモニター(GE Healthcare社製)などが挙げられる。

【0018】
--時間--
前記間歇的低酸素負荷工程の1日あたりの時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、6時間~10時間が好ましく、7時間~9時間がより好ましく、8時間が特に好ましい。前記間歇的低酸素負荷工程の1日あたりの時間が6時間未満であると、タウタンパク質のリン酸化の効率が劣ることがあり、10時間を超えると、本来非ヒト動物が起きている時間帯にかかることがあり、生理的な条件に近いとは言えなくなることがある。
前記間歇的低酸素負荷を施す時間帯としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、非ヒト動物の睡眠時間帯とすることが好ましい。
なお、前記間歇的低酸素負荷を施さない時間帯は、通常の飼育環境下で飼育すればよい。

【0019】
-期間-
本発明の製造方法の期間(以下、「製造期間」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的とする疾患に応じて適宜選択することができ、例えば、3日間~30日間とすることができる。
本発明の製造方法によれば、短期間でも長期間でもタウタンパク質のリン酸化が亢進された非ヒトモデル動物を製造することができるので、例えば、アルツハイマー病のように時間をかけて発症する疾患や、パンチドランカーのように短期間で発症する疾患などのモデルの製造方法として好適に用いることができる。

【0020】
-タウタンパク質のリン酸化の確認-
本発明の製造方法により、非ヒト動物のタウタンパク質のリン酸化が亢進(以下、増加とも称する)されたか否かを確認する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、後述する試験例に示すように、間歇的低酸素負荷を行った後の非ヒトモデル動物から脳組織を摘出し、大脳皮質、海馬などを分離し、該大脳皮質、海馬などから調製したサンプルについて、リン酸化タウタンパク質特異的抗体(AT8、INNOGENTICS社製)を用いたウエスタンブロッティング法により確認することができる。

【0021】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、飼育工程などが挙げられる。
前記飼育工程は、前記間歇的低酸素負荷工程前に非ヒトモデル動物を飼育する工程である。前記飼育工程における飼育条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0022】
以下、試験例を挙げて、本発明を説明するが、本発明は、以下の試験例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0023】
(試験例1-1)
以下のようにして、間歇的低酸素負荷を非ヒト動物に対して施し、脳組織内のタウタンパク質のリン酸化のレベルを調べた。
前記非ヒト動物として、生後10週齢の雄マウス(系統名:C57BL/6J)を用いた(n=3)。
【実施例】
【0024】
アクリル製の10Lチャンバーを用意し、この中に前記マウスを3匹入れた。なお、前記チャンバーには、マウスを最大12匹入れることができる。
前記チャンバーは、切り替え装置により、チャンバー内に、窒素ガス、又は圧縮空気(室内空気)を送り込むことができる(図1参照)。図1中、矢印は、前記窒素ガス、又は前記室内空気の流れを示す。
前記チャンバーを用い、以下の条件にて、間歇的低酸素負荷を前記マウスに施し、飼育した。
-条件-
(1) チャンバー内に窒素ガスを11L/分間で1分間送り込み、チャンバー内の酸素濃度が5体積%となるようにする(低酸素処理)。
(2) 次いで、室内空気を13L/分間で2分間送り込み、チャンバー内の酸素濃度が21体積%となるようにする(通常処理)。
(3) 前記(1)(1分間かけて酸素濃度を5体積%とする)及び(2)(2分間かけて酸素濃度を21体積%とする)の3分間の繰り返しを、1日8時間(午前9時~午後5時)行う。
(4) 前記8時間(午前9時~午後5時)以外は、マウスを飼育ケージに戻し、通常の飼育環境に置く。
(5) 前記(1)~(4)を5日間継続する。
【実施例】
【0025】
前記条件の(1)及び(2)の3分間の繰り返しを行った際のチャンバー内の酸素濃度の変化、及びマウスの血中酸素飽和度の変化の様子の代表的な実験データの一例を図2に示す。図2中、実線は、「チャンバー内酸素濃度」を示し、点線は、「マウスの血中酸素飽和度」を示す。
なお、前記チャンバー内の酸素濃度は、S/5コンパクトモニター(GE Healthcare社製)でモニターした。また、マウスの血中酸素飽和度は、MouseOx (STARR Life Science社製)により測定した。
【実施例】
【0026】
<マウス脳の解析>
前記5日間の処置を行った後のマウスから脳組織を摘出し、大脳皮質、及び海馬を分離した。分離後の大脳皮質、及び海馬は、直ちにドライアイスにて急冷し、解析までは-80℃にて保管した。
解析の際には、凍結させていた大脳皮質、及び海馬を、Tris緩衝液(タンパク分解酵素阻害剤、ホスファターゼ阻害剤を含む)中にて破砕し、32,000×gで遠心した後の上清を解析サンプルとした。
解析は、ウエスタンブロッティング法によって行い、リン酸化タウタンパク質特異的抗体(AT8、INNOGENTICS社製)を用いて、大脳皮質、及び海馬の各組織内のリン酸化タウタンパク質の量を評価した。前記AT8は、タウタンパク質の特定のリン酸化部位(202番目のセリン、及び205番目のスレオニン。前記202番目、及び205番目は、ヒト型タウタンパク質に存在する6種類のアイソフォームのうち、最も長いアイソフォーム(全441アミノ酸残基;NCBIにおけるアクセッション番号は、NP_005901.2)に従っている)を認識する抗体であり、アルツハイマー病をはじめとしてタウオパチーの研究でよく解析されている部位である。また、リン酸化の有無に依存しない抗体(JM、国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センター分子基盤研究部の高島明彦氏から供与して頂いたもの)を用いて、タウタンパク質の量(総タウタンパク質の量)も評価した。結果を図3Aから3Dに示す。
なお、前記リン酸化の有無に依存しない抗体としては、Tau-5(BIOSOURCE社製)を用いることもできる。
【実施例】
【0027】
(試験例1-2)
試験例1-1において、条件(1)及び(2)を以下のように変更した以外は、試験例1-1と同様にして試験した。結果を図3Aから3Dに示す。
-条件-
(1) チャンバー内に窒素ガスを8L/分間で1分間送り込み、チャンバー内の酸素濃度が8体積%となるようにする(1分間かけて酸素濃度を8体積%とする)。
(2) 次いで、室内空気を11L/分間で2分間送り込み、チャンバー内の酸素濃度が21体積%となるようにする(2分間かけて酸素濃度を21体積%とする)。
【実施例】
【0028】
(試験例1-3)
試験例1-1において、条件(1)及び(2)を以下のように変更した以外は、試験例1-1と同様にして試験した。結果を図3Aから3Dに示す。
-条件-
(1) チャンバー内に窒素ガスを6.5L/分間で1分間送り込み、チャンバー内の酸素濃度が10体積%となるようにする(1分間かけて酸素濃度を10体積%とする)。
(2) 次いで、室内空気を11L/分間で2分間送り込み、チャンバー内の酸素濃度が21体積%となるようにする(2分間かけて酸素濃度を21体積%とする)。
【実施例】
【0029】
(試験例1-4)
対照として、試験例1-1において、条件(1)から(3)を行わなかった(即ち、マウスをチャンバーに移すのみとし、チャンバー内の酸素濃度は、21体積%とした)以外は、試験例1-1と同様にして試験した。結果を図3Aから3Dに示す。
【実施例】
【0030】
図3Aは、海馬におけるタウタンパク質(以下、「総タウ」と称することがある)及びリン酸化タウタンパク質(以下、「リン酸化タウ」と称することがある)を検出したウエスタンブロッティングの結果を示す図である。図3Bは、前記AT8でラベルされたリン酸化タウタンパク質のバンドを数値化したグラフである。
図3Cは、大脳皮質における「総タウ」及び「リン酸化タウ」を検出したウエスタンブロッティングの結果を示す図である。図3Dは、前記AT8でラベルされたリン酸化タウタンパク質のバンドを数値化したグラフである。
図3Aから3D中、「対照」は前記試験例1-4の結果を示し、「5%」は前記試験例1-1の結果を示し、「8%」は前記試験例1-2の結果を示し、「10%」は前記試験例1-3の結果を示す。
【実施例】
【0031】
図3Aから3Dの結果から、低酸素処理において、酸素濃度を5体積%、8体積%、及び10体積%にする刺激を繰り返すことにより、タウタンパク質のリン酸化の増加が確認された。また、低酸素処理において、酸素濃度を5体積%、8体積%、及び10体積%にする刺激を繰り返すことにより、タウタンパク質のリン酸化は、海馬、及び大脳皮質の両方で確認された。
大脳皮質においては、低酸素処理において、酸素濃度を8体積%及び10体積%とした場合よりも、5体積%とした場合のほうがタウタンパク質のリン酸化が多く認められた。
これらの結果から、低酸素処理において、酸素濃度を5体積%~10体積%とした場合においてタウタンパク質のリン酸化を起こすことができるが、海馬、及び大脳皮質の双方で効率的にタウタンパク質のリン酸化を起こすには、前記低酸素処理における酸素濃度は5体積%が最適であると考えられた。
【実施例】
【0032】
(試験例2-1)
試験例1-1の条件(5)において、5日間継続としていた点を7日間継続に変更した以外は、試験例1-1と同様にして試験した。結果を図4Aから4Dに示す。
【実施例】
【0033】
(試験例2-2)
試験例1-1の条件(5)において、5日間継続としていた点を14日間継続に変更した以外は、試験例1-1と同様にして試験した。結果を図4Aから4Dに示す。
【実施例】
【0034】
(試験例2-3)
試験例1-1の条件(5)において、5日間継続としていた点を28日間継続に変更した以外は、試験例1-1と同様にして試験した。結果を図4Aから4Dに示す。
【実施例】
【0035】
(試験例2-4)
対照として、試験例2-1において、条件(1)から(3)を行わなかった(即ち、マウスをチャンバーに移すのみとし、チャンバー内の酸素濃度は、21体積%とした)以外は、試験例2-1と同様にして試験した。結果を図4Aから4Dに示す。
【実施例】
【0036】
図4Aは、海馬におけるタウタンパク質(以下、「総タウ」と称することがある)及びリン酸化タウタンパク質(以下、「リン酸化タウ」と称することがある)を検出したウエスタンブロッティングの結果を示す図である。図4Bは、前記AT8でラベルされたリン酸化タウタンパク質のバンドを数値化したグラフである。
図4Cは、大脳皮質における「総タウ」及び「リン酸化タウ」を検出したウエスタンブロッティングの結果を示す図である。図4Dは、前記AT8でラベルされたリン酸化タウタンパク質のバンドを数値化したグラフである。
図4Aから4D中、「対照」は前記試験例2-4の結果を示し、「7日」は前記試験例2-1の結果を示し、「14日」は前記試験例2-2の結果を示し、「28日」は前記試験例2-3の結果を示す。
【実施例】
【0037】
図4Aから4Dの結果から、非ヒトモデル動物の製造期間を5日間よりも長くした場合においてもタウタンパク質の増加が確認され、本発明の方法は、長期にわたっても適用できることが示された。
また、海馬では製造期間の増加に伴ってリン酸化タウの増加が認められた。一方、大脳皮質では、製造期間7日間で増加したリン酸化タウの量がそのまま維持されているように見受けられた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の非ヒトモデル動物の製造方法は、マウスのみならず、ラット、ハムスター、イヌなどにも幅広く適用することができる。また、本発明の非ヒトモデル動物の製造方法は、非ヒト動物の状態をモニタリングする必要はなく、飼育条件下における酸素濃度を調節することにより、タウタンパク質のリン酸化が亢進された非ヒトモデル動物を作製することができるので、タウタンパク質のリン酸化に関する疾患に対する薬剤のスクリーニングに用いる非ヒトモデル動物を低コストで、大量に製造することができる。
また、本発明の非ヒトモデル動物の製造方法は、タウタンパク質と、神経変性疾患との関連について、生理的な条件に近い条件下での解析を可能にし、特に行動解析と組み合わせながら、タウタンパク質を標的とした新たな治療薬の開発及び研究にも好適に利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3A】
2
【図3B】
3
【図3C】
4
【図3D】
5
【図4A】
6
【図4B】
7
【図4C】
8
【図4D】
9