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明細書 :複合体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5900927号 (P5900927)
公開番号 特開2014-237904 (P2014-237904A)
登録日 平成28年3月18日(2016.3.18)
発行日 平成28年4月6日(2016.4.6)
公開日 平成26年12月18日(2014.12.18)
発明の名称または考案の名称 複合体
国際特許分類 D06M  15/333       (2006.01)
D06M  15/19        (2006.01)
D06M 101/06        (2006.01)
FI D06M 15/333
D06M 15/19
D06M 101:06
請求項の数または発明の数 12
全頁数 21
出願番号 特願2013-119861 (P2013-119861)
出願日 平成25年6月6日(2013.6.6)
審査請求日 平成27年4月3日(2015.4.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】内田 哲也
【氏名】岩畔 史明
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100107917、【弁理士】、【氏名又は名称】笠原 英俊
審査官 【審査官】佐藤 玲奈
参考文献・文献 米国特許出願公開第2009/0192264(US,A1)
特開2009-144262(JP,A)
特開2004-091996(JP,A)
特開2010-180507(JP,A)
特開2005-105436(JP,A)
特開昭62-236830(JP,A)
調査した分野 D06M 13/00 - D06M 15/715
D06M 101/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
セルロースナノファイバーと、
セルロース以外の高分子化合物の結晶化物により形成され、セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部に接合した高分子部分と、
を含んでなり、
セルロースナノファイバーが貫通するように複数の該高分子部分が形成されるものである、複合体。
【請求項2】
前記高分子部分がセルロースナノファイバーの連続方向に沿って周期的に形成されており、
前記高分子部分が複数の周期にわたり形成された該連続方向に沿った領域である形成領域に存するセルロースナノファイバーの表面積Sのうち前記高分子部分により覆われた面積Scが表面積Sに対してなす比率(Sc/S)が0.6以上である、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
セルロースナノファイバーの連続方向に対して垂直な断面における前記高分子部分の断面形状が該連続方向の位置に応じて変化するものである、請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記高分子部分の各々が、セルロースナノファイバーの連続方向に対して垂直な断面における断面積がセルロースナノファイバーの一端から他端に向かう方向に進むにつれて該連続方向の第1の位置まで単調増加する断面積増加部分と、第1の位置又は第1の位置よりも他端側に存する第2の位置から他端に向かう方向に進むにつれて該断面積が単調減少する断面積減少部分と、を有してなるものである、請求項1乃至3のいずれか1に記載の複合体。
【請求項5】
セルロースナノファイバーと、
セルロース以外の高分子化合物の結晶化物により形成され、セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部に接合した高分子部分と、
を含んでなり、
該高分子部分がセルロースナノファイバーの連続方向に沿って周期的に形成されており、
該高分子部分が複数の周期にわたり形成された該連続方向に沿った領域である形成領域に存するセルロースナノファイバーの表面積Sのうち該高分子部分により覆われた面積Scが表面積Sに対してなす比率(Sc/S)が0.6以上である、複合体。
【請求項6】
セルロースナノファイバーと、
セルロース以外の高分子化合物の結晶化物により形成され、セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部に接合した高分子部分と、
を含んでなり、
セルロースナノファイバーの連続方向に対して垂直な断面における該高分子部分の断面形状が該連続方向の位置に応じて変化するものである、複合体。
【請求項7】
セルロースナノファイバーと、
セルロース以外の高分子化合物の結晶化物により形成され、セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部に接合した高分子部分と、
を含んでなり、
該高分子部分がセルロースナノファイバーに螺旋状に巻回したものである、複合体。
【請求項8】
前記高分子化合物がポリビニルアルコールである、請求項1乃至7のいずれか1に記載の複合体。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1に記載の複合体を含んでなる、フィラー。
【請求項10】
樹脂と、請求項1乃至8のいずれか1に記載の複合体と、を含んでなる、樹脂組成物。
【請求項11】
セルロースナノファイバーと、
セルロース以外の高分子化合物の結晶化物により形成され、セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部に接合した高分子部分と、
を含んでなる複合体の製造方法であって、
該高分子化合物の溶液とセルロースナノファイバーとを接触させる溶液接触ステップと、
溶液接触ステップの後に該溶液中の該高分子化合物の溶解量を低下させ、セルロースナノファイバーの表面に該高分子化合物を結晶として析出させる析出ステップと、
を含むものである、製造方法。
【請求項12】
前記溶液中の前記高分子化合物の溶解度が、前記溶液の温度が低い方が低下するものであり、
前記析出ステップは、前記溶液を降温することで前記溶解量を低下させるものである、請求項11に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体に関し、より詳細には、セルロースナノファイバーを含む複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースナノファイバーは、木材等のセルロース系原料を解繊処理することにより得られるナノオーダー(例えば、幅:3nm~5μm、長さ:数百nm~数百μm程度)のセルロース繊維である。かかるセルロースナノファイバーは、高強度(2~3GPa程度)、高弾性率(約100GPa)及び低密度(1.46~1.63g/cm程度)等といった性質を有することから、樹脂に混合することで物性(例えば、曲げ強度及び弾性率等の機械的強度)を向上させるための樹脂用の充填剤(フィラーと呼ばれることもある)として利用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、「セルロースナノファイバーは、樹脂や、硬化剤との反応性や樹脂中での分散性が低いため、樹脂にセルロースナノファイバーを加えると、セルロースナノファイバーと樹脂との間の界面で、接着強度が落ちるという問題がある。それにより、セルロースナノファイバーの補強効果が発現せず、逆に曲げ強度等の機械的強度が低下する原因となる。」(特許文献1の段落番号0004)という問題が指摘されており、この解決方法として、「セルロースナノファイバーを変性剤等によって変性処理し、セルロースナノファイバーにカルボキシル基等の置換基を導入させ、樹脂中での分散性を向上させようとする」(特許文献1の段落番号0005)ことがなされていることが開示されている。
また、セルロースナノファイバーの樹脂中での分散性を向上させるため、相溶化剤(マレイン酸変性低分子量ポリオレフィンなど)を添加することも検討されてきた。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2012-229350号公報(例えば、要約、発明の詳細な説明中の段落番号0001~0015等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に記載のセルロースナノファイバーを変性剤等によって変性処理しセルロースナノファイバーにカルボキシル基等の置換基を導入する方法は、「変性化剤によって変性される変性セルロースナノファイバーは、十分に置換することが難しく、置換基度も低いものとなる。また、セルロースナノファイバーの変性化剤として用いられるTEMPOが樹脂組成物中に残存すると、環境の点からも好ましくない。」(特許文献1の段落番号0007)といった問題を有する。
さらに、相溶化剤を添加する方法は、セルロースナノファイバーとそれが分散する高分子マトリックス(主に熱可塑性ポリマーにより形成される)との界面に低分子化合物よりなる相溶化剤の層が形成されることにより、セルロースナノファイバーの物性を十分発揮した補強効果を得ることができない問題があった(該界面に相溶化剤の層が介在することで、応力がセルロースナノファイバーにうまく伝わらず、応力をセルロースナノファイバーが十分負担できない。)。
そこで、本発明では、かかる従来技術の問題を解決すべく、配合される樹脂中での分散性を向上させることができる新規なセルロースナノファイバー含有物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、セルロースナノファイバーが配合される樹脂中でのセルロースナノファイバーの分散性を向上させるべく鋭意研究を行った結果、セルロースナノファイバー同士が凝集しやすい性質(分子間にはたらく凝集力)をセルロースナノファイバーが有することから、配合された樹脂中で凝集しうまく分散しないことを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明では、セルロースナノファイバーの表面を別の高分子化合物によって被覆することによりセルロースナノファイバー同士の凝集力を弱め、配合された樹脂中でセルロースナノファイバーをうまく分散させるものである。
【0007】
本発明の複合体(以下、「本複合体」という)は、セルロースナノファイバーと、セルロース以外の高分子化合物により形成され、セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部に接合した高分子部分と、を含んでなる複合体である。
【0008】
また、本複合体には、以下(1)~(6)の態様が含まれる。
(1)前記高分子部分がセルロースナノファイバーの連続方向に沿って周期的に形成されており、前記高分子部分が複数の周期にわたり形成された該連続方向に沿った領域である形成領域に存するセルロースナノファイバーの表面積Sのうち前記高分子部分により覆われた面積Scが表面積Sに対してなす比率(Sc/S)が0.6以上である、上記複合体。
(2)セルロースナノファイバーの連続方向に対して垂直な断面における前記高分子部分の断面形状が該連続方向の位置に応じて変化するものである、上記本複合体。
(3)セルロースナノファイバーが貫通するように複数の前記高分子部分が形成されるものである、上記本複合体。
(4)前記高分子部分の各々が、セルロースナノファイバーの連続方向に対して垂直な断面における断面積がセルロースナノファイバーの一端から他端に向かう方向に進むにつれて該連続方向の第1の位置まで単調増加する断面積増加部分と、第1の位置又は第1の位置よりも他端側に存する第2の位置から他端に向かう方向に進むにつれて該断面積が単調減少する断面積減少部分と、を有してなるものである、上記(3)の複合体。
(5)前記高分子部分がセルロースナノファイバーに螺旋状に巻回したものである、上記本複合体。
(6)前記高分子化合物がポリビニルアルコールである、上記複合体。
【0009】
また、本発明は樹脂に添加するフィラー(以下、「本フィラー」という)を提供する。本フィラーは、上記複合体(本複合体)を含んでなるフィラーである。
また、本発明は樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」という)を提供する。本樹脂組成物は、樹脂と、本複合体と、を含んでなる、樹脂組成物である。
【0010】
そして、本発明は本複合体の製造方法(以下、「本製造方法」という)を提供する。
本製造方法は、セルロースナノファイバーと、セルロース以外の高分子化合物により形成され、セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部に接合した高分子部分と、を含んでなる複合体(本複合体)の製造方法であって、該高分子化合物の溶液とセルロースナノファイバーとを接触させる溶液接触ステップと、溶液接触ステップの後に該溶液中の該高分子化合物の溶解量を低下させ、セルロースナノファイバーの表面に該高分子化合物を析出させる析出ステップと、を含むものである、製造方法である。
【0011】
また、本製造方法には、以下(a)~(d)の態様が含まれる。
(a)溶液接触ステップが、セルロースナノファイバーを分散媒に分散させたファイバー分散液を調製するファイバー分散液調製ステップと、ファイバー分散液調製ステップにより調製されたファイバー分散液と前記高分子化合物とを混合するファイバー分散液混合ステップと、を有してなるものである、本製造方法。
(b)前記分散媒が前記高分子化合物を溶解可能なものであり、ファイバー分散液混合ステップにおいて前記分散媒と同じものである溶媒を混合し、前記高分子化合物を該溶媒に溶解させるものである、上記(a)の製造方法。
(c)析出ステップが撹拌下で行われるものである、本製造方法。
(d)析出ステップが無撹拌で行われるものである、本製造方法。
これら本製造方法により製造され得る複合体は、セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部に高分子部分が接合された新規な複合体である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実験操作を示すフローチャートである。
【図2】CeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)中のセルロースナノファイバーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】実験操作を示すフローチャートである。
【図4】実施例3で作製した再分散液(J)中の固体の走査型電子顕微鏡写真(a)、透過型電子顕微鏡写真(b)及び構造模式図(c)である。
【図5】実施例3で作製した再分散液(J)中に存する固体を破壊したものの走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例6で作製した再分散液(J)中の固体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例7で作製した再分散液(J)中の固体の走査型電子顕微鏡写真(a)及び構造模式図(b)である。
【図8】実験操作を示すフローチャートである。
【図9】複合体フィルムの弾性率を示すグラフである。
【図10】複合体フィルムの降伏強さを示すグラフである。
【図11】実施例7で作製した再分散液(J)中の固体(数珠様の結晶)の一部拡大構造模式図である。
【図12】セルロースナノファイバーの表面のうち前記高分子部分により覆われた面積がセルロースナノファイバーの表面積に対してなす比率を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本複合体は、セルロースナノファイバーと、該セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部に接合した高分子部分と、を含んでなる。
本複合体においては高分子部分がセルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部に接合し覆うことにより、セルロースナノファイバー同士が凝集する作用を弱め、本複合体が樹脂に配合された際にセルロースナノファイバーが樹脂中でうまく分散するものである。
また、前述の通りセルロースナノファイバー同士は凝集力が強いため一度乾燥させると再び分散させることが困難であったため、これまではセルロースナノファイバーを水中に分散させた状態で保持する必要があった。しかしながら、本複合体同士は凝集力が弱いため乾燥させた後に再び分散させることができるので、本複合体は乾燥した状態でも取り扱うことができ、保管、運搬及び使用が容易である。

【0014】
本複合体を構成するセルロースナノファイバーは、木材等のセルロース系原料を解繊処理することにより得られる繊維状のセルロースを用いることができ、セルロースの繊維の幅(繊維の長手方向に対して垂直方向の寸法)は好ましくは5μm以下、より好ましくは500nm以下、最も好ましくは50nm以下であり(幅の下限は特にないが、通常は3nm以上)、長さ(繊維の長手方向に沿った寸法)は特に制限はないが、通常は数百nm~数百μmである。そして、本発明に使用するセルロースナノファイバーは脱リグニン処理を必須とするものではないが、脱リグニン処理されたものを好適に使用することができる。

【0015】
本複合体を構成する高分子部分は、セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部(セルロースナノファイバーの表面の全部であってもよい)に接合して該少なくとも一部を覆うことでセルロースナノファイバー同士が凝集する作用を弱めるものである(該少なくとも一部が高分子部分によって覆われずセルロースナノファイバー表面の該少なくとも一部が露出している場合に比しセルロースナノファイバー同士の凝集力を弱める。)。このため高分子部分を形成する高分子化合物としては、セルロースナノファイバーの表面に該高分子化合物の高分子部分が形成されることで凝集力が弱まるような化合物(セルロース以外の化合物)を選択することが好ましい。かかる高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、6,6-ポリアミド、6-ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル等を用いることができる。
また、本複合体を構成する該高分子部分の厚み(セルロースナノファイバーの表面に対し垂直方向の寸法)はあまり大きいとそれ自身のサイズが大きすぎてセルロースナノファイバーの添加効果が小さくなり、あまり小さいと高分子部分で覆った効果が表れなくなるので、これらを両立する範囲とされてもよく、通常、下限として好ましくは3nm以上、より好ましくは8nm以上、最も好ましくは10nm以上であり、上限として好ましくは数十μm以下、より好ましくは数μm以下、最も好ましくは1μm以下である。

【0016】
本複合体においては、前記高分子部分がセルロースナノファイバーの連続方向に沿って周期的に形成されており、前記高分子部分が複数の周期にわたり形成された該連続方向に沿った領域である形成領域に存するセルロースナノファイバーの表面積Sのうち前記高分子部分により覆われた面積Scが表面積Sに対してなす比率(Sc/S)が0.6以上であってもよい。
高分子部分は、セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部に接合して該少なくとも一部を覆うことでセルロースナノファイバー同士が凝集する作用を弱めて本複合体が樹脂に配合された際に樹脂中で良好な分散状態を形成するものであるので、高分子部分が覆う該少なくとも一部がセルロースナノファイバーの表面全体に対する割合が大きい方が凝集作用を弱め良好な分散状態を得ることができる。このため図12に一例を示したように、高分子部分501がセルロースナノファイバー521の連続方向Lに沿って周期的(周期P)に形成されている場合、高分子部分501が複数の周期Pにわたり形成された連続方向Lに沿った領域である形成領域Qに存するセルロースナノファイバー521の表面積Sのうち高分子部分501により覆われた面積Scが表面積Sに対してなす比率(Sc/S)が大きい方がセルロースナノファイバー521の表面の多くの割合を高分子部分501が覆うのでセルロースナノファイバー521の凝集力を減少させ本複合体の良好な分散状態を得ることができる。比率(Sc/S)は好ましくは0.6以上であり、より好ましくは0.7以上であり、最も好ましくは0.9以上である(上限は1である)。

【0017】
本複合体においては、セルロースナノファイバーの連続方向に対して垂直な断面における前記高分子部分の断面形状が該連続方向の位置に応じて変化するものであってもよい。
かかる複合体であれば樹脂と混合した際(樹脂の母相に本複合体が分散した状態で樹脂が固化する)、樹脂部分に対しセルロースナノファイバーの連続方向に沿って本複合体を引き抜こうとすると、高分子部分が樹脂部分を変形させなければ引き抜けないため、本複合体による強力な補強効果を得ることができる。このような強力な補強効果により、本複合体を樹脂に添加するフィラーとして用いると樹脂組成物の物性(例えば、曲げ強度及び弾性率等)を大幅に向上させることができる。

【0018】
本複合体においては、セルロースナノファイバーが貫通するように複数の前記高分子部分が形成されるもの(以下、「串刺本複合体」という)であってもよい。
このように複数の前記高分子部分をセルロースナノファイバーが貫通するような形態(即ち、セルロースナノファイバーが複数の高分子部分を串刺しにしたような形態)をとることで、セルロースナノファイバーの表面を前記高分子部分が確実に覆うことができるので、セルロースナノファイバーの凝集力を減少させ本複合体が樹脂に配合された際に樹脂中で良好な分散状態を得ることができる。

【0019】
串刺本複合体の場合、前記高分子部分の各々が、セルロースナノファイバーの連続方向に対して垂直な断面における断面積がセルロースナノファイバーの一端から他端に向かう方向に進むにつれて該連続方向の第1の位置まで単調増加する断面積増加部分と、第1の位置又は第1の位置よりも他端側に存する第2の位置から他端に向かう方向に進むにつれて該断面積が単調減少する断面積減少部分と、を有してなるもの(以下、「断面積増加部分減少部分具備本複合体」という)であってもよい。
このような断面積増加部分と断面積減少部分とが存することにより、本複合体を樹脂と混合した際、樹脂部分に対し本複合体をセルロースナノファイバーの連続方向に沿った両方向(樹脂部分に対して本複合体を該他端側から該一端側に向かう方向と該一端側から該他端側に向かう方向との両方向)のいずれに引き抜く場合でも断面積増加部分又は断面積減少部分が樹脂部分を拡げる(抵抗が大きい)ようになることから該一端と該他端との間の樹脂部分を効果的に補強できる。

【0020】
本複合体においては、前記高分子部分がセルロースナノファイバーに螺旋状に巻回したものであってもよい。
セルロースナノファイバーに前記高分子部分が螺旋状に巻き付くような形態をとることにより、本複合体を樹脂と混合した際、樹脂部分と本複合体との接触面積が増加することに加え、樹脂部分に対し本複合体をセルロースナノファイバーの連続方向に沿った方向に引き抜く場合に前記高分子部分が連続する方向を横切るように本複合体が移動する(真っ直ぐな軸部(本複合体のセルロースナノファイバーが相当)の外周面に雄ねじ(本複合体の螺旋状の前記高分子部分が相当)が螺刻されたボルト(本複合体が相当)をねじ込んだ後に該ボルトを回転させることなく軸部の長手方向に引き抜くのに似た状態(抵抗が大きい))ことになることから該一端と該他端との間の樹脂部分を効果的に補強することができる。

【0021】
本複合体においては、前記高分子化合物がポリビニルアルコールであってもよい。
高分子部分を形成する高分子化合物をポリビニルアルコールとすれば、セルロースナノファイバーの表面を覆うように高分子部分をうまく形成でき、セルロースナノファイバー同士の凝集作用を弱め、樹脂中での良好な分散状態を得ることができる。また、セルロースナノファイバーの表面に高分子部分が強固に接合することができ(ポリビニルアルコールとセルロースとは親和性が高い)、本複合体が樹脂に混合された際に高い補強効果を発揮できる。
この前記高分子化合物としてのポリビニルアルコールは、結晶化するものであれば分子量の制限無く広く用いることができるが、けん化度は好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上である。

【0022】
本複合体は種々の用途に用いることができるが、上述の通り、樹脂に添加するフィラー(本フィラー)として用いることができ、その場合には本複合体においてはセルロースナノファイバーの表面を前記高分子部分が覆うことでセルロースナノファイバーの凝集力を減少させ、樹脂に混合された際に良好な分散状態を得ることができることから樹脂組成物の物性(例えば、曲げ強度及び弾性率等)を大幅に向上させることができる。
本フィラーを添加する樹脂としては、様々なものが考えられるが、例えば、ポリビニルアルコール、6,6-ポリアミド、6-ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル等としてもよく、とりわけ本複合体を構成する高分子部分を形成する前記高分子化合物と同じ樹脂又は該高分子化合物を含む樹脂とすれば本複合体との親和性が強いことから本複合体を樹脂中に一層良好に分散させると共に樹脂と本複合体との間が強固に結合するため効果的に樹脂組成物を補強することができる。
また、フィラーとして樹脂へ添加される樹脂に対する本複合体の量の割合はあまり小さいとフィラーの効果が小さくなるし、逆にあまり大きいと分散性が低下するので、これらを両立する範囲とされてもよく、通常、下限として好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、最も好ましくは0.005重量%以上であり、上限として好ましくは50重量%以下、より好ましくは10重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。

【0023】
本樹脂組成物は、樹脂と本複合体とを含んでなるものであり、本複合体においてはセルロースナノファイバーの表面を前記高分子部分が覆うことでセルロースナノファイバーの凝集力を減少させ、樹脂に混合された際に良好な分散状態を得ることができることから樹脂組成物の物性(例えば、曲げ強度及び弾性率等)を大幅に向上させることができる。
本樹脂組成物を構成する樹脂としては、様々なものが考えられるが、例えば、ポリビニルアルコール、6,6-ポリアミド、6-ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル等としてもよく、とりわけ本複合体を構成する高分子部分を形成する前記高分子化合物と同じ樹脂又は該高分子化合物を含む樹脂とすれば本複合体との親和性が強いことから本複合体を一層良好に分散させると共に樹脂と本複合体との間が強固に結合するため効果的に樹脂組成物を補強することができる。
また、樹脂に混合される樹脂に対する本複合体の量の割合は、あまり小さいと本複合体の添加効果が小さくなるし、逆にあまり大きいと分散性が低下するので、これらを両立する範囲とされてもよく、通常、下限として好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、最も好ましくは0.005重量%以上であり、上限として好ましくは50重量%以下、より好ましくは10重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。

【0024】
本製造方法は、セルロースナノファイバーと、セルロース以外の高分子化合物により形成され、セルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部に接合した高分子部分と、を含んでなる複合体(本複合体)の製造方法であり、溶液接触ステップと析出ステップとを含む。
溶液接触ステップは、高分子部分を形成する高分子化合物の溶液とセルロースナノファイバーとを接触させる。析出ステップは、溶液接触ステップによりセルロースナノファイバーと接触した高分子化合物溶液中の高分子化合物の溶解量を低下させて、セルロースナノファイバーの表面に高分子化合物を析出させる。このようにセルロースナノファイバーの表面に高分子化合物を析出させることでセルロースナノファイバーの表面に接合した高分子部分を形成し本複合体を製造する。
このため溶液接触ステップに供される高分子化合物の溶液は、析出ステップにおいて高分子化合物の溶解量を低下させることでセルロースナノファイバーの表面に高分子化合物を所望程度に析出させることができるようにされる。
析出ステップにおいて高分子化合物溶液中の高分子化合物の溶解量を低下させる方法としては様々な方法を採用することができるが、例えば、高分子化合物溶液中の高分子化合物の溶解度が高分子化合物溶液の温度によって変化する場合には溶解度が低下するように温度を変化させる方法(例えば、温度が低い方が溶解度が低下する場合であれば高分子化合物溶液を冷却して降温する方法)、高分子化合物溶液中の高分子化合物の溶解度を低下させる添加物を添加する方法(例えば、貧溶媒を添加する方法)、高分子化合物溶液中の溶媒を除去する方法(例えば、溶媒を留去する方法)、そしてこれらの方法を併用する方法等を挙げることができる。
セルロースナノファイバーの表面のうち高分子部分が接合し覆う面積の割合(セルロースナノファイバーの表面のうち高分子部分が接合し覆う該少なくとも一部の割合)及び高分子部分の厚み(セルロースナノファイバーの表面に対し垂直方向の寸法)を増加させるには、析出ステップにおけるセルロースナノファイバーに対する高分子化合物溶解量の低下分を増加させればよい(具体的には、例えば、析出ステップの高分子化合物溶液中におけるセルロースナノファイバーに対する高分子化合物量を増加させればよい。)。なお、該割合及び該厚みを減少させるには、析出ステップにおけるセルロースナノファイバーに対する高分子化合物溶解量の低下分を減少させればよい(具体的には、例えば、析出ステップの高分子化合物溶液中におけるセルロースナノファイバーに対する高分子化合物量を減少させればよい。)。

【0025】
本製造方法においては、溶液接触ステップが、セルロースナノファイバーを分散媒に分散させたファイバー分散液を調製するファイバー分散液調製ステップと、ファイバー分散液調製ステップにより調製されたファイバー分散液と前記高分子化合物とを混合するファイバー分散液混合ステップと、を有してなるもの(以下、「分散状態混合本製造方法」という。)であってもよい。
ファイバー分散液調製ステップにおいてセルロースナノファイバーを分散させたファイバー分散液を調製し、その後、ファイバー分散液混合ステップにおいてファイバー分散液(ファイバー分散液調製ステップにて調製されたもの)と前記高分子化合物とを混合するので、予めファイバー分散液中でセルロースナノファイバーを十分に分散させた後にその状態において高分子化合物溶液とセルロースナノファイバーとを接触させることができ(ファイバー分散液に高分子化合物が溶解することで高分子化合物溶液となり、この高分子化合物溶液とセルロースナノファイバーとが接触する)、高分子化合物溶液をセルロースナノファイバーにむらが少ない状態で接触させ、セルロースナノファイバーの表面にむらが小さい状態で高分子部分を形成できる。
ファイバー分散液を形成する分散媒としては、セルロースナノファイバーとの親和性が高くセルロースナノファイバーを安定して分散させることができることからは好ましくは極性溶媒であり、セルロースナノファイバーの表面に析出する高分子の形態を制御できる点(セルロースナノファイバーの表面に高分子部分を接合させつつ、所定の形態の本複合体を得る)からより好ましくは水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン等を例示でき、最も好ましくは1,3-ブタンジオールである。ファイバー分散液(wd(g))中のセルロースナノファイバーの量(wf(g))の割合(wf/wd)はあまり小さいと分散媒の分離回収の費用が増加するし、あまり大きいとセルロースナノファイバーを安定して分散させることができなくなるので、これらを両立する範囲とされてもよく、通常、下限として好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.001重量%以上、最も好ましくは0.01重量%以上であり、上限として好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、最も好ましくは0.5重量%以下である。
ファイバー分散液混合ステップにおいてファイバー分散液と前記高分子化合物とが混合された混合物中のセルロースナノファイバーの含有量の割合はあまり少ないと廃液量が増加し、あまり多いとセルロースナノファイバーが凝集するので、これらを両立する範囲とされてもよく、通常、下限として好ましくは0.0001重量%以上、より好ましくは0.0005重量%以上、最も好ましくは0.001重量%以上であり、上限として好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、最も好ましくは0.05重量%以下である。そして、ファイバー分散液混合ステップにおいてファイバー分散液と前記高分子化合物とが混合された混合物中の高分子化合物の含有量はあまり少ないとセルロースナノファイバーを十分覆うことが不可能になり、あまり多いとセルロースナノファイバーを核材とせずに結晶化するので、これらを両立する範囲とされてもよく、通常、下限として好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.0025重量%以上、最も好ましくは0.005重量%以上であり、上限として好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、最も好ましくは0.25重量%以下である。

【0026】
分散状態混合本製造方法の場合、前記分散媒が前記高分子化合物を溶解可能なものであり、ファイバー分散液混合ステップにおいて前記分散媒と同じものである溶媒を混合し、前記高分子化合物を該溶媒に溶解させるものであってもよい。
こうすることでファイバー分散液混合ステップにおいて、ファイバー分散液と、前記高分子化合物と、ファイバー分散液を形成する前記分散媒と同じものである溶媒(前記高分子化合物を溶解する)と、を混合するので、溶媒に高分子化合物の一部(該一部の残部はファイバー分散液の分散媒に溶解される)が円滑に溶解されて高分子化合物溶液を形成すると共に該形成された高分子化合物溶液とファイバー分散液とが円滑に混合されることから、ファイバー分散液と高分子化合物とを円滑かつ迅速に混合することができる。
なお、ここに用いる互いに同じ分散媒及び溶媒としては、前記高分子化合物を溶解させ、析出ステップにおいてセルロースナノファイバーの表面に前記高分子化合物を所望のように析出させることができるものを広く用いることができるが、セルロースナノファイバーとの親和性が高くセルロースナノファイバーを安定して分散させることができることからは好ましくは極性溶媒であり、セルロースナノファイバーの表面に析出する高分子の形態を制御できる点(セルロースナノファイバーの表面に高分子部分を接合させつつ、所定の形態の本複合体を得る)からより好ましくは水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン等を例示でき、最も好ましくは1,3-ブタンジオールである。
また、ファイバー分散液混合ステップにおいてファイバー分散液と前記高分子化合物と該溶媒とが混合された混合物中のセルロースナノファイバーの含有量の割合はあまり少ないと溶媒を含む廃液量が増加し、あまり多いとセルロースナノファイバーが凝集するので、これらを両立する範囲とされてもよく、通常、下限として好ましくは0.0001重量%以上、より好ましくは0.0005重量%以上、最も好ましくは0.001重量%以上であり、上限として好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、最も好ましくは0.05重量%以下である。また、ファイバー分散液混合ステップにおいてファイバー分散液と前記高分子化合物とが混合された混合物中の高分子化合物の含有量はあまり少ないとセルロースナノファイバーを十分覆うことが不可能になり、あまり多いとセルロースナノファイバーを核材とせずに結晶化するので、これらを両立する範囲とされてもよく、通常、下限として好ましくは0.0005重量%以上、より好ましくは0.0025重量%以上、最も好ましくは0.005重量%以上であり、上限として好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、最も好ましくは0.25重量%以下である。

【0027】
本製造方法においては、析出ステップが撹拌下で行われるものであってもよい。
こうすることでセルロースナノファイバーが貫通するように複数の前記高分子部分が形成されると共に、前記高分子部分の各々が、セルロースナノファイバーの連続方向に対して垂直な断面における断面積がセルロースナノファイバーの一端から他端に向かう方向に進むにつれて該連続方向の第1の位置まで単調増加する断面積増加部分と、第1の位置又は第1の位置よりも他端側に存する第2の位置から他端に向かう方向に進むにつれて該断面積が単調減少する断面積減少部分と、を有してなるものである本複合体をうまく形成することができる。後述の通り、析出ステップを無撹拌で行うと前記高分子部分がセルロースナノファイバーに螺旋状に巻回した形態の本複合体が生成するが、析出ステップの撹拌を増加させると断面積増加部分及び断面積減少部分が成長する。特に、前記高分子部分の各々が略球形(即ち、第1の位置と第2の位置がほぼ一致し、断面積増加部分が半球形状を略有すると共に断面積減少部分が半球形状を略有することで、断面積増加部分と断面積減少部分とによって1の略球形が形成される)のものを形成でき、かかる略球形の前記高分子部分とすれば、本複合体を樹脂に添加するフィラー(本フィラー)として用いる際、該連続方向に互いに隣接する略球形の前記高分子部分同士の間に樹脂がうまく入り込むことによって補強効果をうまく奏することができる。

【0028】
本製造方法においては、析出ステップが無撹拌で行われるものであってもよい。
こうすることで前記高分子部分がセルロースナノファイバーに螺旋状に巻回した形態の本複合体を形成でき、このような本複合体を樹脂と混合すれば、樹脂部分と本複合体との接触面積が増加することに加え、樹脂部分に対し本複合体をセルロースナノファイバーの連続方向に沿った方向に引き抜く場合に前記高分子部分が連続する方向を横切るように本複合体が移動する(真っ直ぐな軸部(本複合体のセルロースナノファイバーが相当)の外周面に雄ねじ(本複合体の前記高分子部分が相当)が螺刻されたボルト(本複合体が相当)をねじ込んだ後に該ボルトを回転させることなく軸部の長手方向に引き抜くのに似た抵抗が大きな状態)ことになることから該一端と該他端との間の樹脂部分を効果的に補強することができる。

【0029】
本製造方法により製造され得る複合体は、前記高分子部分がセルロースナノファイバーの表面の少なくとも一部を覆うことにより、セルロースナノファイバー同士が凝集する作用を弱め、樹脂に配合された際にセルロースナノファイバーが樹脂中でうまく分散しうまく補強効果を発揮するものである。
また、本製造方法により製造され得る複合体は、凝集力が弱いため乾燥させ再び分散させることができるので、乾燥した状態でも取り扱うことができるので、保管、運搬及び使用が容易である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げる。しかしながら、これら実施例によって本発明は何ら制限されるものではない。
【実施例】
【0031】
(実施例1)セルロースナノファイバー分散液の調製
セルロースナノファイバー(CeNF)として、ここではダイセルファインケム株式会社製の商品名「セリッシュ」(登録商標)の型番「KY100G」(固形分10%、CeNFの水分散物)を用いた。
以下、実験操作を図1のフローチャートを参照しつつ説明する。
上述の商品名「セリッシュ」(登録商標)の型番「KY100G」(固形分10%)であるCeNF含有組成物(A)を3g(即ち、固形分は0.3g)と、200gの蒸留水(B)と、をビーカーに入れ、超音波洗浄器(BRANSON社製、型番2510J-MT)を用いて超音波を1時間照射することで十分に混合した(s11)。
混合(s11)の後、7日間静置した(s13)。
静置(s13)の後、該ビーカー101中の上澄み液をCeNFが3×10-2g含まれるように分取した(s15)。このs11にてCeNF含有組成物(A)に蒸留水(B)を混合し、7日間静置(s13)後、上澄み液を分取(s15)した目的は、水に完全に分散した状態のCeNFを得るためであり、超音波照射後静置し凝集状態のものを沈殿させて分散状態の上澄み液を用いたものである。なお、s15における上澄み液の分取量は次のようにして計算した。予め、風袋であるシャーレの重量w1(g)を量り、次いで、該シャーレに、静置(s13)した後の該ビーカー101中の上澄み液を適量入れ、該シャーレを含む全体の重量w2(g)を量った。その後、該シャーレを4時間真空乾燥(60℃)し、上澄み液に含まれる水を完全にとばし、該シャーレを含む全体の重量w3(g)を量った。(w3-w1)/(w2-w1)×100にて上澄み液中のCeNFの濃度Ccを算出し(ここでは具体的にはCc=9.8×10-2重量%)、分取(s15)すべき上澄み液の量W(g)=3×10-2g/Cc(ここでは具体的にはW=30.6g)を分取した。
分取(s15)した上澄み液W(g)と、30mlの1,3-ブタンジオール(C)と、を100mlのナスフラスコ103に入れた。
ナスフラスコ103を40℃のウォーターバス中で減圧蒸留(s17)し水を留去することで、ファイバー分散液たるCeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)を調製した。上述のようにCeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)には、CeNF3×10-2gと1,3-ブタンジオール30mlとが含まれているが、この場合、ファイバー分散液たるCeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)(wd(g))中のセルロースナノファイバーの量(wf(g))の割合(wf/wd)は9.8×10-2重量%である。
CeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)中のCeNFを走査型電子顕微鏡観察(SEM観察)した。このときの観察用試料は次のように作製した。SEM用の試料台に導電性テープで雲母板を固定し、そのへき開面上にCeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)を滴下した。デシケーター内で乾燥後、イオンコーター(株式会社エイコー社製、型番IB-3)を用いて2mAで15分間、表面に金コーティングを行った。その後、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製の型番JSM-6320F)を用いて加速電圧5kVで観察を行った。得られたSEM写真を図2に示す。図2から、CeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)中においてもCeNFはうまく分散していることが明らかになった。そして、CeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)中のCeNFの太さは53nm±8nm(標準偏差)であった。
【実施例】
【0032】
(実施例2)結晶化溶液の調製
ここではポリビニルアルコール(PVA)として、シグマアルドリッチジャパン合同会社製のポリビニルアルコール(けん化度99%以上、平均分子量89000~98000)を用いた。
以下、実験操作を図3のフローチャートを参照しつつ説明する。
実施例1で調製したCeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)0.0972gと、上述のポリビニルアルコール(E)0.0005gと、溶媒として1,3-ブタンジオール(F)4.9023gと、を容器107(ここでは試験管)に入れて混合(s19)し、結晶化溶液(G)を調製した。
CeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)(ファイバー分散液)とポリビニルアルコール(E)(前記高分子化合物)と1,3-ブタンジオール(F)(溶媒)とが混合された結晶化溶液(G)(混合物)5g中のセルロースナノファイバーの含有量0.0001gの割合は0.002重量%である。また、結晶化溶液(G)(混合物)5g中のポリビニルアルコール(E)(前記高分子化合物)の含有量0.0005gの割合は0.01重量%である。
【実施例】
【0033】
(実施例3)ポリビニルアルコールの結晶化(撹拌無)
図3のフローチャートに示すように、実施例2で調製した結晶化溶液(G)をオイルバス中で加熱し185℃まで昇温(s21)することで結晶化溶液(G)中のPVAを完全に溶解させた。
昇温(s21)された結晶化溶液(G)は、その後、オイルバス中で冷却し冷却速度5℃/時間で撹拌をせずに142℃まで降温(s23)した。降温(s23)の過程において、結晶化溶液(G)が157.5℃にて白濁した(PVAの結晶化開始)。なお、結晶化溶液(G)に比しCeNFを含まない点が異なるのみのPVAの1,3-ブタンジオール溶液を同様に昇温(s21)及び降温(s23)したところ、154.0℃にて白濁(PVAの結晶化開始)したことから(CeNFが存しない場合よりもCeNFが存する場合の方が高い温度からPVAが結晶化している。)、結晶化溶液(G)中のPVA結晶化においてCeNFが結晶核として機能していることが明らかになった。また、降温(s23)過程においてセルロースナノファイバー単位質量当たりのポリビニルアルコール(前記高分子化合物)の溶解量低下量は0.0005(gPVA)/0.0001g(gCeNF)=5(gPVA/gCeNF)であった。
降温(s23)の後、ここでは吸引濾過(濾材としてはMillpore社製のIsopore GTTP2500を用いた。以下s25における濾材は同じものを用いた。)により固液分離(s25)することで、1,3-ブタンジオールを除去し、分離された固体(H)に蒸留水(I)を加えて混合(s27)し再分散液(J)を調製した(1,3-ブタンジオールから蒸留水への溶媒置換)。
【実施例】
【0034】
(実施例4)再分散液(J)中の固体の電子顕微鏡観察
実施例3で作製した再分散液(J)中の固体を走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した。具体的な手順は次の通りである。
まず、SEM用の試料台に導電性テープで雲母板を固定し、そのへき開面上に再分散液(J)の懸濁液を滴下した。デシケーター内で乾燥後、イオンコーター(株式会社エイコー社製、型番IB-3)を用いて2mAで15分間、表面に金コーティングを行った。その後、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製の型番JSM-6320F)を用いて加速電圧5kVで観察を行った。図4(a)に得られたSEM写真を示す。
また、カーボン膜の厚さが15~20nmに作製されたイーエムジャパン株式会社製の商品名「カーボン20支持膜」に再分散液(J)の懸濁液を白金線ループを用いて乗せ、デシケーター内で乾燥させた。その後、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製の型番JEM-2000EX II)を用いて加速電圧200kVで観察を行った。図4(b)に得られたTEM写真を示す。
図4(a)のSEM写真及び図4(b)のTEM写真のいずれにおいても繊維状の結晶が観察された。この繊維状の結晶は、太さが503±35nmでありもとのCeNFの太さ(53nm±8nm)よりも増加していると共に、左巻きのロープ様の構造を有しているように見られた。これらのことから、このようなロープ様の繊維状結晶は、図4(c)(CeNFの中心で切断した断面)に模式的に示すようにCeNFを芯とし、その芯を中心にPVAの帯が螺旋状に巻き付くように形成されCeNFが覆われていることが推察された。
【実施例】
【0035】
(実施例5)ロープ様の繊維状結晶の構造確認
再分散液(J)中に存する固体が、図4(c)に模式的に示したようにCeNFを芯とし、その芯の長手方向に沿って芯をPVAが取り囲む構造であるか否かを確認するため、ロープ様の繊維状結晶を破壊し観察した。具体的には、実施例3で作製した再分散液(J)懸濁液に超音波洗浄器(BRANSON社製、型番2510J-MT)で8時間超音波照射した。超音波照射後の試料を、実施例4の走査型電子顕微鏡(SEM)観察と同様にSEM観察を行った。図5に得られたSEM写真を示す。図5に示すように、試料の破壊された部分の中心に太さ約60nmの繊維が確認できた。この繊維はCeNFの太さ(53nm±8nm)と同程度であることから、図5に観察された繊維はCeNFであり、再分散液(J)中の固体は図4(c)に模式的に示したようにCeNFを芯とし、その芯の長手方向に沿って芯をPVAが螺旋状に取り囲む構造であることがわかった。
【実施例】
【0036】
(実施例6)増量実施例(結晶化溶液調製及びPVA結晶化(無撹無))
上記の実施例2及び実施例3の操作を増量して行った。
図3のフローチャートを参照しつつ説明する。
実施例1で調製したCeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)0.972gと、上述のポリビニルアルコール(E)0.005gと、溶媒として1,3-ブタンジオール(F)49.023gと、を容器(ここでは実施例2における試験管に替えて100mlのナスフラスコを用いた)に入れて混合(s19)し、結晶化溶液(G)を調製した。CeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)(ファイバー分散液)とポリビニルアルコール(E)(前記高分子化合物)と1,3-ブタンジオール(F)(溶媒)とが混合された結晶化溶液(G)(混合物)50g中のセルロースナノファイバーの含有量0.001gの割合は0.002重量%である。また、結晶化溶液(G)(混合物)50g中のポリビニルアルコール(E)(前記高分子化合物)の含有量0.005gの割合は0.01重量%である。
その後、結晶化溶液(G)をオイルバス中で加熱し185℃まで昇温(s21)することで結晶化溶液(G)中のPVAを完全に溶解させた。
昇温(s21)された結晶化溶液(G)は、その後、オイルバス中で冷却し冷却速度5℃/時間で撹拌をせずに142℃まで降温(s23)した。降温(s23)過程においてセルロースナノファイバー単位質量当たりのポリビニルアルコール(前記高分子化合物)の溶解量低下量は0.005(gPVA)/0.001(gCeNF)=5(gPVA/gCeNF)であった。
降温(s23)の後、ここでは吸引濾過により固液分離(s25)することで、1,3-ブタンジオールを除去し、分離された固体(H)に蒸留水(I)を加えて混合(s27)し再分散液(J)を調製した(1,3-ブタンジオールから蒸留水への溶媒置換)。
得られた再分散液(J)中の固体を実施例4と同様に走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。図6に得られたSEM写真を示す。図6に示された固体のSEM写真は、実施例4のSEM写真と同様の組織を示しており、実施例4と実施例6とは同じ形態の結晶(ロープ様の繊維状結晶)が得られることが明らかになった。
【実施例】
【0037】
(実施例7)増量実施例(結晶化溶液調製及びPVA結晶化(撹拌有))
図3のフローチャートを参照しつつ説明する。
実施例1で調製したCeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)0.972gと、上述のポリビニルアルコール(E)0.005gと、溶媒として1,3-ブタンジオール(F)49.023gと、を容器(100mlのナスフラスコ)に入れて混合(s19)し、結晶化溶液(G)を調製した。CeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)(ファイバー分散液)とポリビニルアルコール(E)(前記高分子化合物)と1,3-ブタンジオール(F)(溶媒)とが混合された結晶化溶液(G)(混合物)中のセルロースナノファイバーの含有量の割合は上述の実施例6に同じである。
その後、結晶化溶液(G)をオイルバス中で加熱し185℃まで昇温(s21)することで結晶化溶液(G)中のPVAを完全に溶解させた。
昇温(s21)された結晶化溶液(G)は、その中に撹拌子を入れ、マグネティックスターラーにて撹拌しつつ、オイルバス中で冷却し冷却速度5℃/時間で142℃まで降温(s23)した。なお、降温(s23)中の撹拌は、CeNFが凝集したり沈殿しない程度とすることが必要であり、具体的には、ここでは東京理化器械株式会社製の強力マグネチックスターラー(商標「EYELA」、型番「RCX-1000S」、撹拌速度調節つまみ「4」として撹拌した)を用い、上記の撹拌子としてはフットボール型(太さ10mm、長さ20mm)のものを用いた。降温(s23)過程においてセルロースナノファイバー単位質量当たりのポリビニルアルコール(前記高分子化合物)の溶解量低下量は上述の実施例6に同じである。
降温(s23)の後、ここでは吸引濾過により固液分離(s25)することで、1,3-ブタンジオールを除去し、分離された固体(H)に蒸留水(I)を加えて混合(s27)し再分散液(J)を調製した(1,3-ブタンジオールから蒸留水への溶媒置換)。
得られた再分散液(J)中の固体を実施例4と同様に走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。図7(a)に得られたSEM写真を示す。図7(a)のSEM写真は、CeNFを芯として芯の長手方向に沿って球状の結晶が連続的に形成された形態を示しており、図7(b)に模式的に示すような球状のPVA結晶がCeNFによって連結された数珠様の結晶が得られた。このように降温(s23)時の撹拌の有無により、図4及び図6に示すようなロープ様の繊維状結晶(撹拌無し)と、図7に示すような数珠様の結晶(撹拌有り)と、を自由につくり分けることができる。
【実施例】
【0038】
(実施例8)溶液キャスト法による複合体フィルムの作製
図8のフローチャートを参照しつつ説明する。
まず、ポリビニルアルコール(シグマアルドリッチジャパン合同会社製、けん化度99%以上、平均分子量89000~98000)の水溶液を作製した。具体的には、ポリビニルアルコール(K)0.25gと蒸留水(L)20gと撹拌子108とを100mlのナスフラスコ111に入れ、オイルバス中で還流下95℃で1時間撹拌しつつ加熱しポリビニルアルコール(K)を完全に溶解させた(s31)。加熱溶解(s31)の後、室温まで放冷した(s33)。放冷(s33)の後、撹拌子108を取り出したPVA水溶液に再分散液(J)を注入した。なお、再分散液(J)の注入量は、注入された再分散液(J)中のCeNF分が2.5×10-4gとなるように定められたが、具体的には、前述のs15における上澄み液の分取量を決定するのと同様に決定された。詳細には、予め、風袋であるシャーレの重量w1(g)を量り、次いで、該シャーレに再分散液(J)を適量入れ、該シャーレを含む全体の重量w2(g)を量った。その後、該シャーレを4時間真空乾燥(60℃)し、再分散液(J)に含まれる水を完全にとばし、該シャーレを含む全体の重量w3(g)を量った。(w3-w1)/(w2-w1)×100にて再分散液(J)中のCeNFの濃度Ccを算出し、注入すべき再分散液(J)の量W(g)=2.5×10-4g/Ccを算出した。PVA水溶液に再分散液(J)を注入した後、超音波洗浄器(BRANSON社製、型番2510J-MT)により1時間超音波を照射することで、PVA水溶液に再分散液(J)が十分分散するよう混合した(s35)。PVA水溶液に再分散液(J)を混合(s35)した後、混合液をスクリュー管に移し、毎分2000回転で30分間遠心分離することで脱泡した(s37)。脱泡(s37)の後、脱泡した溶液(PVA水溶液と再分散液(J)との混合物)をテフロンシャーレ113に注入し(s39)、これを70℃の乾燥機中で乾燥(s41)させた。乾燥(s41)の後、テフロンシャーレ113から複合体フィルム115を取り出した。なお、ここの再分散液(J)として実施例6で作製した再分散液(J)(ロープ様の繊維状結晶を含有)を用いた場合を実施例8aといい、ここの再分散液(J)として実施例7で作製した再分散液(J)(数珠様の結晶を含有)を用いた場合を実施例8bという。複合体フィルム115においては、実施例8a、8bいずれもポリビニルアルコール(樹脂)0.25gへ添加される複合体の量2.5×10-4gの割合が0.1重量%であった。
【実施例】
【0039】
(実施例9)複合体フィルムの引張試験
実施例8(8a、8b)で作製した複合体フィルム115から主表面が20mm×5mmの長方形状をなす短冊状試験片を切り出した。5mm×5mmの正方形状の濾紙を一対準備し、一対の正方形状の濾紙のうち一方をその一辺が短冊状試験片の主表面がなす長方形の一対の短辺のうち一辺に沿うよう貼り付けると共に一対の正方形状の濾紙のうち他方をその一辺が短冊状試験片の主表面がなす長方形の一対の短辺のうち他辺に沿うよう貼り付けることで、短冊状試験片を用いて有効長10mm(20mm-2×5mm)の引張用試料を作製した。その後、引張用試料を40℃で8時間熱真空乾燥して引張用試料が含んでいる水分を除去した。乾燥後の引張用試料を引張試験機(株式会社今田製作所製、型番SV-201NA)を用いて毎分4mmの速度で引張試験を行い、弾性率及び降伏応力を算出した。なお、複合体フィルムの原料としてPVA水溶液に再分散液(J)を加えた効果を評価するため、再分散液(J)を加えないPVA水溶液を原料として形成したフィルムからつくられた引張用試料(図9及び図10には「PVA」と示す)と、再分散液(J)に替えてCeNF(ダイセルファインケム株式会社製の商品名「セリッシュ」(登録商標)の型番「KY100G」)をPVA水溶液に添加(具体的には、上述のCeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)をそれに含まれるCeNF分が2.5×10-4gとなる量を量りとり添加した。なお、CeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)中のCeNF濃度については前述のs15における上澄み液の分取量を決定する際のCeNFの濃度Ccと同様に決定された。)したものを原料として形成したフィルムからつくられた引張用試料(図9及び図10には「分散セリッシュ/PVA」と示す)と、についても同様に引張試験を行った。また、図9及び図10には、実施例8aの結果を「ロープ状繊維/PVA」として表し、実施例8bの結果を「数珠状繊維/PVA」として表した。
図9の弾性率は、実施例8aの「ロープ状繊維/PVA」にて向上した。図10の降伏応力は、実施例8aの「ロープ状繊維/PVA」及び実施例8bの「数珠状繊維/PVA」のいずれにおいても向上し、とりわけ実施例8bの「数珠状繊維/PVA」では顕著に向上した。
【実施例】
【0040】
以上の通り、実施例3で作製した再分散液(J)中の固体(図4(a)、図4(b)。ロープ様の繊維状結晶)、実施例6で作製した再分散液(J)中の固体(図6。ロープ様の繊維状結晶)、そして実施例7で作製した再分散液(J)中の固体(図7。数珠様の結晶)は、セルロースナノファイバーCeNFと、セルロース以外の高分子化合物(ここではポリビニルアルコールPVA)により形成され、セルロースナノファイバーCeNFの表面の少なくとも一部に接合した高分子部分(図4(c)、図7(b)において「PVA」として示す)と、を含んでなる複合体である。
そして、実施例3で作製した再分散液(J)中の固体(図4(a)、図4(b)。ロープ様の繊維状結晶)、実施例6で作製した再分散液(J)中の固体(図6。ロープ様の繊維状結晶)、そして実施例7で作製した再分散液(J)中の固体(図7。数珠様の結晶)のいずれも、前記高分子部分(図4(c)、図7(b)の「PVA」)がセルロースナノファイバーCeNFの連続方向に沿って周期的に形成されており、前記高分子部分が複数の周期にわたり形成された該連続方向に沿った領域である形成領域Qに存するセルロースナノファイバーCeNFの表面積Sのうち前記高分子部分(図4(c)、図7(b)の「PVA」)により覆われた面積Scが表面積Sに対してなす比率(Sc/S)が0.6以上である(ここでは、ほぼ1である)。
【実施例】
【0041】
さらに、実施例3で作製した再分散液(J)中の固体(図4(a)、図4(b)。ロープ様の繊維状結晶)、実施例6で作製した再分散液(J)中の固体(図6。ロープ様の繊維状結晶)、そして実施例7で作製した再分散液(J)中の固体(図7。数珠様の結晶)のいずれも、セルロースナノファイバーCeNFの連続方向に対して垂直な断面における前記高分子部分(図4(c)、図7(b)の「PVA」)の断面形状が該連続方向の位置に応じて変化するものである。
実施例7で作製した再分散液(J)中の固体(図7。数珠様の結晶)は、セルロースナノファイバーCeNFが貫通するように複数の前記高分子部分(図7(b)の「PVA」)が形成されるものである。
実施例7で作製した再分散液(J)中の固体(図7。数珠様の結晶)においては、図11に示す通り、前記高分子部分501の各々が、セルロースナノファイバー521の連続方向に対して垂直な断面における断面積がセルロースナノファイバー521の一端521aから他端521bに向かう方向(図11中、左から右へ向かう方向)に進むにつれて該連続方向の第1の位置(図11中、点V)まで単調増加する断面積増加部分501aと、第1の位置又は第1の位置よりも他端側に存する第2の位置(図11中、点V。即ち、ここでは第2の位置は第1の位置に存する)から他端521bに向かう方向に進むにつれて該断面積が単調減少する断面積減少部分501bと、を有してなるものである。なお、ここでは断面積増加部分501aと断面積減少部分501bとにより前記高分子部分501の各々は1の球状をほぼなしている(断面積増加部分501aが半球形状をなし、断面積減少部分501bも半球形状をなしている。)。
【実施例】
【0042】
実施例3で作製した再分散液(J)中の固体(図4(a)、図4(b)。ロープ様の繊維状結晶)と、実施例6で作製した再分散液(J)中の固体(図6。ロープ様の繊維状結晶)と、は前記高分子部分PVAがセルロースナノファイバーCeNFに螺旋状に巻回した形態を有するものである。
実施例3で作製した再分散液(J)中の固体(図4(a)、図4(b)。ロープ様の繊維状結晶)、実施例6で作製した再分散液(J)中の固体(図6。ロープ様の繊維状結晶)、そして実施例7で作製した再分散液(J)中の固体(図7。数珠様の結晶)のいずれも、前記高分子化合物がポリビニルアルコールPVAである。
実施例3で作製した再分散液(J)中の固体(図4(a)、図4(b)。ロープ様の繊維状結晶)、実施例6で作製した再分散液(J)中の固体(図6。ロープ様の繊維状結晶)、そして実施例7で作製した再分散液(J)中の固体(図7。数珠様の結晶)のいずれも樹脂を補強するための樹脂添加用フィラー(充填剤)として使用することができ、このようなロープ様の繊維状結晶及び数珠様の結晶の一方又は両方を樹脂に添加することで補強された樹脂組成物を形成できる。
【実施例】
【0043】
図1及び図3にて示される複合体の製造方法(実施例1、実施例2、実施例3、実施例6、実施例7)は、セルロースナノファイバーCeNFと、セルロース以外の高分子化合物(ポリビニルアルコールPVA)により形成され、セルロースナノファイバーCeNFの表面の少なくとも一部に接合した高分子部分(図4(c)、図7(b)において「PVA」として示す)と、を含んでなる複合体の製造方法であって、該高分子化合物(ポリビニルアルコールPVA)の溶液とセルロースナノファイバーCeNFとを接触させる溶液接触ステップ(ここでは分取(s15)した上澄み液と1,3-ブタンジオール(C)とをナスフラスコ103に入れ、ナスフラスコ103中から減圧蒸留(s17)により水を留去することによりCeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)を調製し、その後、CeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D)とポリビニルアルコール(E)と1,3-ブタンジオール(F)を容器107中で混合(s19)する操作)と、溶液接触ステップの後に該溶液中の該高分子化合物(ポリビニルアルコールPVA)の溶解量を低下させ、セルロースナノファイバーCeNFの表面に該高分子化合物(ポリビニルアルコールPVA)を析出させる析出ステップ(ここでは降温(s23))と、を含むものである、製造方法である。
【実施例】
【0044】
そして図1及び図3にて示される複合体の製造方法(実施例1、実施例2、実施例3、実施例6、実施例7)は、溶液接触ステップがセルロースナノファイバーCeNFを分散媒(ここでは1,3-ブタンジオール(C))に分散させたファイバー分散液(ここではCeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D))を調製するファイバー分散液調製ステップ(ここでは分取(s15)した上澄み液と1,3-ブタンジオール(C)とをナスフラスコ103に入れ、ナスフラスコ103中から減圧蒸留(s17)により水を留去する操作)と、ファイバー分散液調製ステップにより調製されたファイバー分散液(CeNF-1,3-ブタンジオール分散液(D))と前記高分子化合物(ポリビニルアルコール(E))とを混合するファイバー分散液混合ステップ(容器107中で混合(s19)し結晶化溶液(G)を調製する操作)と、を有してなるものである。
そして図1及び図3にて示される複合体の製造方法(実施例1、実施例2、実施例3、実施例6、実施例7)は、前記分散媒(1,3-ブタンジオール(C))が前記高分子化合物(ポリビニルアルコール(E))を溶解可能なものであり、ファイバー分散液混合ステップ(容器107中で混合(s19)し結晶化溶液(G)を調製する操作)において前記分散媒(1,3-ブタンジオール(C))と同じものである溶媒(ここでは1,3-ブタンジオール(F))を混合し、前記高分子化合物(ポリビニルアルコール(E))を該溶媒(1,3-ブタンジオール(F))に溶解させるものである。
【実施例】
【0045】
実施例7においては析出ステップが撹拌下で行われるものであり、実施例3及び実施例6においては析出ステップが無撹拌で行われるものである。
実施例3で作製した再分散液(J)中の複合体(図4(a)、図4(b)。ロープ様の繊維状結晶)、実施例6で作製した再分散液(J)中の複合体(図6。ロープ様の繊維状結晶)、そして実施例7で作製した再分散液(J)中の複合体(図7。数珠様の結晶)のいずれも、高分子部分がセルロースナノファイバーCeNFの表面の少なくとも一部に接合し覆うことにより、セルロースナノファイバーCeNF同士が凝集する作用を弱め、樹脂に配合された際に樹脂中でうまく分散するものである。
【符号の説明】
【0046】
101 ビーカー
103 ナスフラスコ
107 容器
108 撹拌子
111 ナスフラスコ
113 テフロンシャーレ
115 複合体フィルム
501 高分子部分
521 セルロースナノファイバー
Q 形成領域
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図8】
2
【図11】
3
【図12】
4
【図2】
5
【図4】
6
【図5】
7
【図6】
8
【図7】
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【図9】
10
【図10】
11