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明細書 :多官能基を末端基とするポリエチレングリコール

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6198222号 (P6198222)
公開番号 特開2015-024980 (P2015-024980A)
登録日 平成29年9月1日(2017.9.1)
発行日 平成29年9月20日(2017.9.20)
公開日 平成27年2月5日(2015.2.5)
発明の名称または考案の名称 多官能基を末端基とするポリエチレングリコール
国際特許分類 C08G  65/333       (2006.01)
A61K  47/34        (2017.01)
A61K  47/60        (2017.01)
FI C08G 65/333
A61K 47/34
A61K 47/60
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2013-156668 (P2013-156668)
出願日 平成25年7月29日(2013.7.29)
審査請求日 平成28年6月10日(2016.6.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】長崎 幸夫
【氏名】池田 豊
【氏名】松田 康平
個別代理人の代理人 【識別番号】110000741、【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
審査官 【審査官】福山 則明
参考文献・文献 国際公開第2013/089182(WO,A1)
Bioconjugate Chemistry,1991年,Vol. 2, No. 1,pp. 38-43
日本バイオマテリアル学会シンポジウム2012予稿集,2012年,第374頁
第23回バイオ・高分子シンポジウム,2013年 7月24日,第121-122頁
Bioconjugate Chemistry,2013年10月17日,Vol. 24,pp. 1824-1827
調査した分野 A61K 47/00-47/69
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(I)で表される多官能基を末端基とするポリエチレングリコール。
【化1】
JP0006198222B2_000005t.gif
式中、A1はX(CH2CH2O)nCH2CH2Yを表し、
A2はC(=O)A1を表すか、または水素もしくはCH3を表し、かつ、
Xは-NH-もしくは-NHCH2-または-O-を表し、
YはOHもしくはアセチルオキシもしくはクロロアセチルオキシもしくはベンジルオキシカルボニルオキシもしくはt-ブトキシカルボニルオキシもしくはトリチルオキシまたはSHもしくはピリジルジスルフィドまたはN3またはCOOHもしくはハロゲン化されていてもよいC1-C6アルキルオキシカルボニルまたはマレイミド基を表し、
nは5~5000の整数を表し、A2がC(=O)A1を表すとき各nは同一または異なることができる。
【請求項2】
少なくとも1つの反応しうるアミノ基を分子中に有する生物活性物質と反応しうる請求項1に記載の多官能基を末端基とするポリエチレングリコールを反応体とする生物活性物質を修飾するためのポリエチレングリコール化作用剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、多官能基をα、ω-末端基とするポリエチレングリコールに関し、より具体的には、一方の官能基を保持したままタンパク質等の生物活性物質をポリエチレングリコールで効果的に修飾できるポリエチレングリコール誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品候補となるタンパク質の生体内での動態を改善する技術としてポリエチレングリコール化(PEG化:PEGylation)が有用であり、これまでにいくつものPEG化タンパク質が医薬品として上市されてきた。なかでもタンパク質に結合した際に分岐型となる枝分かれPEGは近年特に注目され新規の医薬品開発が困難な昨今の状況においても新規のPEG化医薬品開発に貢献している(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、PEG化に伴いタンパク質の活性が大きく損なわれ開発に至らなかったタンパク質も多い。
【0003】
現在広く用いられているPEG化の技術は、活性エステルを末端基とするPEGをタンパク質のアミノ基と反応させ、アシル化によりPEG化タンパクを調製する方法である。このPEG化の技術では、アミド結合によりアミノ基の塩基性は大きく変化してしまうため、しばしばタンパク質活性の大幅な減少を招いてしまう。そのため、アミノ基の塩基性を維持したままPEG化タンパク質を調製する技術の確立が望まれている。これまでにアルデヒド末端の還元アミノ化などによりアミノ基を残存させる研究が行われているが、反応条件の厳しさ、反応効率の悪さ及び副生成物の問題などから、医薬品としての効果が期待されながらも現状のPEG化技術では開発に至らなかったタンパク質も数多く存在する。そこで本発明者等は中性付近の温和な条件で効率よく反応し、これまでとは全く異なる結合様式にてタンパク質、その他の生物活性物質のアミノ基をアルキル化によってPEG化する技術の開発し、その技術内容を特許文献1で開示した。かようなアルキル化は、2本のPEG鎖を分子中の置換基とし、2つのホルミル基を両末端基とするアルキル基を用いることにより効果的な分岐型となる枝分かれPEG化可能にする。
【0004】
他方、ドラッグデリバリーシステムやバイオセンサー表面の開発にこれまで広く利用しうるPEG化作用剤として下記に示すに官能基を末端基とするポリエチレングリコールも開発され、市販されているものもある。これらは、例えば、バイオセンサー等の表面を一方の官能基を利用してPEG化し、もう一方の官能基を利用して当該表面をさらに修飾することが可能である。
【0005】
【化1】
JP0006198222B2_000002t.gif

【0006】
しかし、これらの二官能基を末端基とするポリエチレングリコールも、それらを用いるPEG化により多くのタンパク質が活性を失う結果をもたらす。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】WO2013/089182
【0008】

【非特許文献1】Bioconjugate Chem.1995,Vol.6,p.62-69
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、タンパク質、また、その他の生物活性物質を効果的にPEG化できると同時に、PEG化薬物等のさらなる修飾を可能にする手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
2つのホルミル基を両末端基とするアルキル基を形成しうる化合物に、予め、2つ異なる官能基を末端基とするPEG鎖をその一方の官能基を介して結合せしめ、その後、当該化合物のホルミル化処理等を実施することにより、当該ホルミル基の反応性に悪影響を及ぼすことなく、PEG鎖の他方の官能基を利用可能な状態で保持した当該アルキル基が製造できることを見出した。
【0011】
したがって、本発明は前記課題を解決するための手段として、こうして製造される化合物を提供する。具体的には、下記式(I)で表される多官能基を末端基とするポリエチレングリコールまたはその保護形態物を提供する。
【0012】
【化2】
JP0006198222B2_000003t.gif

【0013】
式中、A1はX(CHCHO)CHCHYを表し、
A2はC(=O)A1を表すか、または水素もしくはCHを表し、かつ、
Xは-NH-または-O-を表し、
YはOH、CH、SH、N、COOHまたはマレイミド基を表し、
nは5~5000の整数を表し、A2がC(=O)A1を表すとき各nは同一または異なることができる。
【0014】
式(I)で表されるポリエチレングリコールは、分子中の2つのホルミル基を介して少なくとも1個のアミノ基を有するタンパク質をはじめとする生物活性物質、バイオセンサー表面を穏和、かつ、選択的にPEG化できる効果を奏する。
【0015】
したがって、本発明は別の態様として、タンパク質をはじめとする生物活性物質、バイオセンサー表面を修飾するための式(I)で表されるポリエチレングリコールまたは化合物の使用も提供する。
【0016】
以下、本発明をより具体的に説明する。
【0017】
本発明にいう、「保護形態物」とは、式(I)における官能基Yが、必要により、保護または活性化された形態にある物質を意味する。かような保護または活性化された形態は、OHにあっては、アセチル、クロロアセチル、ベンジルオキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、トリチル基により保護された形態、SHにあっては、ピリジルジスルフィド体、COOHにあっては、ハロゲン化されていてもよいC-Cアルカノール、ハロゲンとのエステル形態、スクシンイミド体、酸無水物であることができる。
【0018】
本願発明に関して、PEG化とは、タンパク質、ペプチドまたは非ペプチド分子の1以上のポリエチレングリコール(PEG)鎖の共有結合を介する修飾を意味する。かようPEG化は、理論に拘束されるものではないが、前記式(I)で表される多官能基を末端基とするポリエチレングリコールにおける分子中の2つのホルミル基(またはアルデヒド基)が一緒になって、少なくとも1つの反応しうるアミノ基を有する化合物、例えば、生物活性物質である、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、その他の低分子有機化合物の1つのアミノ基と反応して環構造を有するアミン化合物を形成するように進行するものと理解されている。反応しうるアミノ基とは、かような2つのアルデヒド基と反応できる状態にあるアミノ基を意味し、該当する生理活性物質の分子の如何なる位置またはバイオセンサー表面に存在するものであっても制限することなく包含される。このようなアミノ基は、該当する分子中、或は、当該表面上に固定ないし共有結合された状態にあることができる。また、生物活性物質は、医療用、例えば、治療用または診断用タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(siRNA、アプタマー等)であることができる。タンパク質は、糖タンパク質、リポタンパク質を包含する概念として使用しており、それらには、天然由来のもの、遺伝子操作による組換え由来のもの、融合タンパク質が包含される。
【0019】
生理活性物質としては、医療用、例えば、治療用または診断用タンパク質またはペプチドが好ましく、酵素(例えば、アスパラギナーゼ、アデノシンデアミナーゼ等)、サイトカイン(例えば、インターロイキン1、2、6、等、インターフェロンα、β、γ、腫瘍壊死因子、リンホトキシン、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、上皮増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、等)、可溶性受容体タンパク質(例えば、腫瘍壊死因子受容体、各種インターロイキン受容体、チロシンキナーゼ受容体等由来)、ホルモン(例えば、インスリン、ヒト成長ホルモン等)、抗体(例えば、抗癌用、抗アレルギー用および抗感染症用抗体)ならびにこれらの活性フラグメント等を挙げることができる。
【0020】
式(I)における各nは、一般的に、本発明の目的に沿う限りいかなる整数であることもでき、限定されるものでないが、一般に、5~5000、好ましくは8~3000、より好ましくは12~100、特に好ましくは20~700であることができる。
【0021】
式(I)で表されるポリエチレングリコールは、典型的には、後述する実施例に示され反応スキームに従う方法またはそれに準じる方法により製造できる。また、そこに記載される中間体(例えば、反応スキーム中のジカルボン酸:化合物2またはモノカルボン酸:化合物3)の、式(I)におけるX(CHCHO)CHCHYに対応する、式H-X(CHCHO)CHCHY(式中、XおよびYは式(I)で定義したのと同義である)で表される化合物またはYが保護された形態にある化合物のアミド化またはエステル化反応により製造できる。かようなアミド化またはエステル化には、一般的なアミド化またはエステル化に常用されている反応条件が使用できる。
【0022】
こうして製造された式(I)の多官能基を末端基とするポリエチレングリコールは、そのジホルミル基を介して、アミノ基を分子内に有する遊離化合物または材料表面上もしくは材料チップ等に固定化されたアミノ基と反応して当該分子または表面をホルミル基以外の一定の官能基を末端基とするPEGにより修飾できる。このような反応は、例えば、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)の如き反応溶媒中で、必要があれば、緩衝化された溶液中、冷却温度(例えば、4℃)~100℃、好ましくは、4~37℃の温度で、目的の反応が完了するまで反応せしめることにより、達成することができる。具体的な当該反応条件は、特許文献1の例2または例5に記載の条件を参照できる(特許文献1は、ここに引用することによって、その内容のすべてが本明細書に取り込まれる)。
【0023】
したがって、本発明の多官能基を末端基とするポリエチレングリコールは、ジホルミル基以外の官能基に、悪影響を及ぼすことのない、穏和な反応条件によりタンパク質等のアミノ基を選択的、かつ効果的に修飾することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、限定されるものでないが、本発明関して、具体例を挙げながらさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0025】
例1:製造例
本発明に従う、多官能基を末端基とするポリエチレングリコールは次の反応スキームにより製造した。
【実施例】
【0026】
【化3】
JP0006198222B2_000004t.gif
【実施例】
【0027】
(1)化合物3は(Journal of Heterocyclic Chemistry, 26(2), 451-2; 1989)に記載の方法に従い合成した。化合物3(67.2mg)に塩化チオニル1ml,塩化メチレン0.5mlを加え60℃で2時間反応させた。反応液をエバポレーターで濃縮し、残留物を塩化メチレン(1ml)に溶解させ塩化メチレン(1ml)とピリジン(1ml)に溶解させたNHO(CO)105SH(SH-050-PA)(300mg)に氷冷下で加えた。その後室温で二日間反応させた。反応ご溶媒をエバポレーションで除き、残留物をイソプロパノールで再沈し、ベンゼンにより凍結乾燥し化合物4を得た。(収率75%)
GPC:Mn=4184;Mw=4998:Mw/Mn=1.190
MALDI-TOF MS:理論値[M+H] 4994.021;実験値 4994.835
NMR H NMR(CDCl,400MHz) 5.66(4H),3.83‐3.45(372H m),3.38(2H),3.35(2H),3.10(2H),2.65(8H),1.58(2H)。
【実施例】
【0028】
(2)化合物4(200mg)をアセトン(2.5mL)、水(2.5mL)、アセト二トリル(2mL)に溶解させ、N-メチルモルホリンN-オキシド(72mg)、マイクロカプセル化四酸化オスミウム(14mg)を加えた。室温にて48時間振とうさせた。反応後、ろ過により四酸化オスミウムを取り除き、エバポレートし反応物を濃縮した。続いて、冷凍庫で冷した2-プロパノール(200mL)で再沈殿を行った。遠心分離により反応物を分離させ、上澄み液を除いた。反応物をメタノールに溶かし200mLナスフラスコに回収し、エバポレーターにて反応物を濃縮させ、再び再沈殿を行った。再沈殿は3回行った。3回目のエバポレーターが終了後、1,4-ジオキサン5mLに反応物を溶解させ、凍結乾燥を行った。得られ化合物5(120mg)を水(500μL)とメタノール(2000μL)に溶解させ過ヨウ素酸ナトリウム(14mg)を加え、25分間攪拌した。反応後、ジクロロメタンを用いて抽出し、硫酸ナトリウムにより脱水し、エバポレーターにより反応物を濃縮した。1,4-ジオキサン5mLに反応物を溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、化合物6を得た。化合物4からの収率30%
MALDI TOF-MS:理論値[M+H] 5058.021;実験値 5055.122
H NMR(CDCl,400MHz) 9.73(4H),3.83‐3.56(372H,m),3.44(2H),3.32(2H),3.10(2H),2.92(4H),2.72(4H),1.58(2H)。
【実施例】
【0029】
(3)化合物6(25mg)を0.15Mの炭酸カリウム水溶液中で15分間撹拌し反応させた後1M塩酸水溶液によりpH1にした。その後、ジクロロメタンを用いて抽出し、硫酸ナトリウムにより脱水し、エバポレーターにより反応物を濃縮した。1,4-ジオキサン5mLに反応物を溶解させ、凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、化合物7を収率58%
で得た。
H NMR(CDCl,400MHz),9.79(2H),3.83-3.53(372H,m),3.30(2H),3.10(1H),2.70(2H),2.67(2H),2.32(2H),1.58(2H)。
MALDI TOF-MS:理論値[M+Na] 4953.893;実験値 4954.801
IR 1646.91cm-1にアルデヒド 3462.56cm-1にアミドのピークを確認した。またエルマン試験によりチオールの存在を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の多官能基を末端基とするポリエチレングリコールは、一方の官能基であるジホルミル基を介して生物活性物質のアミノ基をPEG化でき、もう一方の官能基はその後利用できる形態にあるので、生物活性物質をさらなる機能性を付与できる形態でPEG化するのに利用できる。したがって、医薬製造業等で利用できる。