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明細書 :抗癌剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6154231号 (P6154231)
公開番号 特開2015-020986 (P2015-020986A)
登録日 平成29年6月9日(2017.6.9)
発行日 平成29年6月28日(2017.6.28)
公開日 平成27年2月2日(2015.2.2)
発明の名称または考案の名称 抗癌剤
国際特許分類 A61K  31/555       (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
FI A61K 31/555
A61P 35/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 12
出願番号 特願2013-151507 (P2013-151507)
出願日 平成25年7月22日(2013.7.22)
審査請求日 平成28年7月6日(2016.7.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
発明者または考案者 【氏名】人見 穣
【氏名】岩本 勇次
個別代理人の代理人 【識別番号】100076406、【弁理士】、【氏名又は名称】杉本 勝徳
【識別番号】100117097、【弁理士】、【氏名又は名称】岡田 充浩
審査官 【審査官】参鍋 祐子
参考文献・文献 特開2013-023474(JP,A)
特表2004-520380(JP,A)
特開2005-041869(JP,A)
特表2003-501432(JP,A)
日本化学会第93春季年会(2013)講演予稿集II,2013年 3月,p.219,1 B1-01
日本化学会第93春季年会(2013)講演予稿集II,2013年 3月,p.219,1 B1-05
Cancer. Res.,2005年,Vol.65(3),pp.948-956
Peptite Science 2012,The Japanese Peptide Society,2013年 3月,pp.279-282
Angew. Chem. Int. Ed.,2012年,Vol.51,pp.3448-3452
調査した分野 A61K 31/555
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で表される金属錯体を有効成分として含有する抗癌剤。
【化1】
JP0006154231B2_000012t.gif
(式中Mは鉄、マンガン又はコバルトの何れかを表す。Xは対イオンを表す、nは1又は2を表す。)
【請求項2】
Mがマンガンであり、XがClO4-である請求項1に記載の抗癌剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、抗癌に関する。
【背景技術】
【0002】
シスプラチン(cis‐ジクロロジアンミン白金(II))、カルボプラチン(cis‐1,1‐シクロブタンジカルボキシラートジアンミン白金(II)、特許文献1を参照。)、ネダプラチン(シス‐O,O′-グリコラートジアンミン白金(II)、特許文献2を参照。)等の白金製剤は強い抗癌活性を有し、現在、肺癌、悪性リンパ腫などの多くの癌に対し、主要な抗癌剤として使用されている。なお、これら白金製剤は、DNAを構成する塩基部分と強く結合してDNAの複製を防ぐことにより、癌細胞を死滅させることが分かっている。
【0003】
しかし、従来からある白金製剤には次に掲げるような問題点があった。まず、原材料に白金を使用しているため、薬剤の価格が高くなってしまうという問題点があった。また、癌細胞の中には、白金製剤を投与してもDNAと結合することなく細胞外に排出してしまう白金製剤耐性癌が存在するとの問題点もあった。
【0004】
一方、発明者らは、従来から、特定構造を有する複素環化合物、これを配位子とする金属錯体、及び前記金属錯体の酸化触媒として使用について研究し、既に特許出願している(特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開昭49-48621号公報
【特許文献2】特開昭59-222497号公報
【特許文献3】国際出願番号 PCT/JP2013/062176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、白金などの高価な貴金属を使用せず安価であるとともに、従来からある白金製剤とは作用機序が異なる抗癌剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、前記金属錯体及びその類似化合物が水中で安定的に存在することができることから、抗癌剤として利用できるのではないかと推測し、鋭意研究を重ねた結果、前記金属錯体が癌細胞に対して優れた細胞毒性を有することを見出し、この発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、この発明の抗癌剤は、下記一般式(1)で表される金属錯体を有効成分として含有する抗癌剤である。
【0009】
【化1】
JP0006154231B2_000002t.gif

【0010】
(式中Mは鉄、マンガン又はコバルトの何れかを表す。Xは対イオンを表す、nは1又は2を表す。)
【0011】
中でもMがマンガン、XがClO4-であるものが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
この発明の抗癌剤は、貴金属であるプラチナを原料とせず、安価に製造することができる。また、この発明の抗癌剤の有効成分である金属錯体の配位は一般に置換活性であり、DNAを構成する塩基とは結合しない。そのため、白金製剤とは異なる作用機序によって、癌細胞を死滅させることができ、白金製剤が効力を発揮しない癌に対しても有効である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、この発明の抗癌剤を構成する複素環化合物あるH-dpaqH,esterの合成経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明は複素環化合物を配位子とする金属錯体有効成分とする抗癌剤に関する。そこで、これらについて以下に詳説する。なお、この発明は、以下の説明によって、如何なる意味においても限定されるものではなく、以下の例示以外についても、この発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更可能である。

【0015】
1.複素環化合物
(1)複素環化合物
この発明の抗癌剤を構成する複素環化合物は、下記一般式()で表される複素環化合物である。この複素環化合物を「H-dpaqH,ester」と略記する。また、「H-dpaqH,ester」の-OCH2CO2C2H5が水素原子に置換された化合物を「H-dpaqH,H」、「H-dpaqH,H」のキノリン部分の8位がニトロ基に置換された化合物を「H-dpaqNO2,H」と略記する。

【0016】
【化2】
JP0006154231B2_000003t.gif

【0017】
(2)複素環化合物の製造方法
この発明の抗癌剤を構成する複素環化合物である「H-dpaqH,ester」を製造する方法を以下に説明する。なお、前記複素環化合物は、下記の製造方法で得られるものには限定されない。

【0018】
この発明の抗癌剤を構成する複素環化合物は、下記一般式()で表される、6-ヒドロキシ-8-アミノキノリンのエーテル化物出発原料として用いる。

【0019】
【化3】
JP0006154231B2_000004t.gif

【0020】
なお、上記6-ヒドロキシ-8-アミノキノリンのエーテル化は、例えば下記の化学式及び化学式に示すようにして容易に得られる。具体的には、まず4-アミノ-3-ニトロフェノーから、デーブナー・フォン=ミラー(DOEBNER-von MILLER)キノリン合成法やスクラウプ(SKRAUP)キノリン合成法などの公知のキノリン合成法により6-ヒドロキシ-8-ニトロキノリを合成したのち、その6位の水酸基を酢酸エチルのハロゲン化物でエーテル化する。次に、下記の化学式に示すように、その8位のニトロ基をアミノ基に還元する。

【0021】
【化4】
JP0006154231B2_000005t.gif

【0022】
【化5】
JP0006154231B2_000006t.gif

【0023】
このようにして得れた一般式()で表される化合物を使用して、例えば、下記反応()、()を行う。

【0024】
【化6】
JP0006154231B2_000007t.gif

【0025】
【化7】
JP0006154231B2_000008t.gif

【0026】
ここで、X1、X2はハロゲン原子であり、何れもが臭素原子であるのが好ましい。なお、 反応()はアミノ基のアミド化反応であり、反応()はハロゲン化アルキルによるアミンのN-アルキル化反応である。

【0027】
ここで、反応()で使用するアミンは、2,2'-ジピコリルアミである

【0028】
なお、前記「H-dpaqH,ester」以外の複素環化合物、例えば、「H-dpaqH,H」、「H-dpaqNO2,H」、「H-dpaqOMe,H」については特許文献3に記載に従って合成すればよい。

【0029】
2.金属錯体
(1)金属錯体
この発明の抗癌剤の有効成分である金属錯体は、下記一般式()表されるものである。

【0030】
【化8】
JP0006154231B2_000009t.gif

【0031】
ここで、Mは鉄、マンガン又はコバルトの何れかを表し、中でも高活性であることからマンガンが好ましい。また、Xは対イオンを表し、具体的にはClO4-、Cl-、Br-、AcO-、TfO-、CF3CO2-、BF4-、ReO4-、AsF6-、SbF6-などが挙げられるが、中でも高活性であることからClO4-が好ましい。なお、n=1又は2である

【0032】
(2)金属錯体の製造方法
この発明の抗癌剤の有効成分である金属錯体は、この発明の複素環化合物を金属に配位させることによって得られ、その方法は公知の方法であれば特に限定することなく使用できる。

【0033】
例えば、溶剤中、錯体を形成し得る条件で前記複素環化合物と所定の金属イオンとを共存させればよく、具体的には、前記複素環化合物を、塩基性化合物とともに溶剤に溶解して、所定の金属イオン溶液を添加すれば、錯体の微結晶を形成できる。

【0034】
なお、前記溶剤としては、メタノール、アセトニトリルなどの極性有機溶剤が好適である。また、前記塩基性化合物としては、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミンなどが好ましい。さらに、錯体形成したあとに、メタノールなどの溶剤で洗浄することによっ高純度の金属錯体が得られる。

【0035】
3.抗癌剤
この発明の抗癌剤は、下記一般式(1)で表される金属錯体を有効成分として含むものであり、金属錯体単体又は公知の製剤用担体と組合せて、癌に罹ったヒト又はそれ以外の動物に投与するものである。なお、その構造、適用症例、投与形態等については以下に詳説する。

【0036】
【化9】
JP0006154231B2_000010t.gif

【0037】
ここでM、X、nについては、前記金属錯体と同じであるので説明を省略する。

【0038】
(1)適用症例
この発明の抗癌剤が適用される癌の種類は特に限定されるものではない。適用可能な癌の種類として、悪性黒色腫、悪性リンパ腫、消化器癌、肺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、尿管腫瘍、胆嚢癌、胆管癌、胆道癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、睾丸腫瘍、上顎癌、舌癌、口唇癌、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、甲状腺癌、脳腫瘍、カポジ肉腫、血管腫、白血病、真性多血症、神経芽腫、網膜芽腫、骨髄腫、膀胱腫、肉腫、骨肉腫、筋肉腫、皮膚癌、基底細胞癌、皮膚付属器癌、皮膚転移癌、皮膚黒色腫などが例示でき、悪性腫瘍だけではなく良性腫瘍にも適用できる。また、この発明の抗癌剤は、癌転移を抑制するために使用でき、術後の癌転移抑制剤としても使用できる。

【0039】
(2)投与形態等
この発明の抗癌剤は、種々の形態でヒト又は動物に投与することができ、その投与形態は特に限定されるものではない。具体的には、経口投与でもよいし、静脈内、筋肉内、皮下又は皮内等への注射、直腸内投与、経粘膜投与等の非経口投与でもよい。

【0040】
経口投与に適する製剤形態としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤などが例示でき、非経口投与に適する医薬組成物としては、注射剤、点滴剤、点鼻剤、噴霧剤、吸入剤、坐剤、又は軟膏、クリーム、粉状塗布剤、液状塗布剤、貼付剤等の経皮吸収剤等が例示できる。さらに、埋め込み用ペレットや公知の技術により持続性製剤としてもよい。なお、好ましい投与形態や製剤形態等は、患者の年齢、性別、体質、症状、処置時期等に応じて、医師が適宜選択すればよい。

【0041】
この発明の抗癌剤を錠剤、丸剤、散剤、粉剤、顆粒剤等の固形製剤とする場合には、前記金属錯体を、常法に従って適当な添加剤、例えば、乳糖、ショ糖、D-マンニトール、トウモロコシデンプン、合成もしくは天然ガム、結晶セルロース等の賦形剤、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等の結合剤、カルボシキメチルセルーロースカルシウム、カルボシキメチルセルーロースナトリウム、デンプン、コーンスターチ、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム等の滑沢剤、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム等の充填剤又は希釈剤等と適宜混合して製造することができる。錠剤等は、必要に応じて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール、酸化チタン等のコーティング剤を用いて、糖衣、ゼラチン、腸溶被覆、フイルムコーティング等を施してもよい。

【0042】
この発明の抗癌剤を注射剤、点眼剤、点鼻剤、吸入剤、噴霧剤、ローション剤、シロップ剤、液剤、懸濁剤、乳剤等の液状製剤とする場合には、前記金属錯体を、精製水、リン酸緩衝液等の適当な緩衝液、生理的食塩水、リンゲル溶液、ロック溶液等の生理的塩類溶液、カカオバター、ゴマ油、オリーブ油等の植物油、鉱油、高級アルコール、高級脂肪酸、エタノール等の有機溶媒等に溶解して、必要に応じてコレステロール等の乳化剤、アラビアゴム等の懸濁剤、分散助剤、浸潤剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油系、ポリエチレングリコール系等の界面活性剤、リン酸ナトリウム等の溶解補助剤、糖、糖アルコール、アルブミン等の安定化剤、パラベン等の保存剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖、グリセリン等の等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、吸着防止剤、保湿剤、酸化防止剤、着色剤、甘味料、フレーバー、芳香物質等を適宜添加することにより、滅菌された水溶液、非水溶液、懸濁液、リポソーム又はエマルジョン等として調製できる。この際、注射剤は、生理学的なpH、具体的にはpH6~8の範囲であることが好ましい。

【0043】
この発明の抗癌剤を、ローション剤、クリーム剤、軟膏等の半固形製剤とする場合には、前記金属錯体を脂肪、脂肪油、ラノリン、ワセリン、パラフィン、蝋、硬膏剤、樹脂、プラスチック、グリコール類、高級アルコール、グリセリン、水、乳化剤、懸濁化剤等と適宜混和することにより製造することができる。

【0044】
なお、この発明の抗癌剤は公知のDDS技術、例えば、この発明の抗癌剤をリポソームなどの運搬体に封入して、体内投与してもよい。この場合、標的部位の細胞を特異的に認識する運搬体などを利用すれば、この発明の造影剤を標的部位に効率よく運ぶことができる。

【0045】
(3)含有量、投与量等
の発明の抗癌剤に含まれる金属錯体の含有量は、投与形態、重篤度や目的とする投与量などによって任意に調整すればよい。また、この発明の抗癌剤の投与量は、例えば患者の年齢、性別、体重、症状、及び投与経路などの条件に応じて適宜医者が決定すればよい。

【0046】
なお、この発明の抗癌剤は、既知の化学療法、外科的治療法、放射線療法、温熱療法や免疫療法などと組合せてもよい。

【0047】
以下、この発明について実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、この発明の特許請求の範囲は、以下の実施例によって如何なる意味においても制限されない。
【実施例1】
【0048】
1.複素環化合物の製造
この発明の抗癌剤を構成する複素化合物であるH-dpaqH,esterを図1の合成経路に沿って合成した。なお、理解しやすくするため、以下の説明では、同じ化合物については図1と同じ記号を使用した。
【実施例1】
【0049】
(1)6-hydroxy-8-nitroquinoline(以下、化合物bと省略する。)の合成
反応容器に4-amino-3-nitrophenol 5.0 g (化合物a、32 mmol) 、濃塩酸 40 mL及び濃リン酸 15 gを加えて80℃まで加熱したのち、acrolein 6.5 mL (97 mmol) をゆっくりと加えた。4時間反応させたのち、反応液を室温まで放冷して、蒸留水を加え、Celite(Celite Corporation)で濾過した。濾液をアンモニア水で中和して、赤色の沈殿物を得た。その沈殿物を濾取して、真空乾燥し、赤色固体を得た(収量:3.0 g、収率:49%)。
【実施例1】
【0050】
(2)Ethyl[(8-nitroquino-6-yloxy)acetate] (以下、化合物cと省略する。)の合成
反応容器に化合物b 2.8 g (15 mmol)及びK2CO3 4.1 g (29 mmol) を加え、嫌気条件下にしたのち、脱水アセトン 100 mLを加えた。さらに、ethyl bromoacetate 3.7 g (22 mmol) を滴下し、室温で一晩撹拌した。反応液をCeliteで濾過して、濾液を濃縮してからアルミナカラムで精製し、淡黄色の固体を得た(収量: 1.0 g、収率:25%)。
【実施例1】
【0051】
(3)Ethyl[(8-aminoquino-6-yloxy)acetate] (以下、化合物dと省略する。)の合成
反応容器に化合物c 0.96 g (3.5mmol)及び10% Pd-C 0.096 gを加え、窒素雰囲気下にして、ジクロロメタン 40 mL及びエタノール 80 mLを加えて溶解したのち、水素雰囲気下で一晩撹拌した。反応液をCeliteで濾過して、濾液を濃縮し、淡黄色固体を得た(収量: 0.84 g 、収率: 98%)。
【実施例1】
【0052】
(4)H-dpaqH,ester(化合物e)の合成
反応容器に化合物d 0.80 g (3.3 mmol) 及びNa2CO3 0.41 g (3.9 mmol) を加え、窒素雰囲気下にして、脱水アセトニトリル 50 mLに溶解した。反応容器を撹拌しながら氷浴により0℃にし、bromoacetyl bromide 0.34 mL (3.9 mmol) を滴下した。滴下を始めてから20分後、生じた淡黄色固体をジクロロメタンに溶解した。反応液をCeliteで濾過して、濾液を濃縮し、オレンジ色の固体を得た。
【実施例1】
【0053】
反応容器に得られたN-acetylbromide-N-2-quinoline-2-carboxamide、 Na2CO3 0.41 g (3.9 mmol)及び2,2-dipicolylamine 0.78 g (3.9 mmol) を加え、窒素雰囲気下にして、脱水アセトニトリル 50 mLに溶解させたのち、一晩撹拌した。反応液をCeliteで濾過して、濾液を濃縮したのち、アルミナカラムで精製すると、淡黄色の固体を得た(収量: 0.95 g 、収率: 60%)。なお、この化合物は核磁気共鳴分光法(1H NMR及び13C NMR)、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR) の測定結果から同定した。その結果を以下に示す。
【実施例1】
【0054】
1H NMR (500 MHz, CDCl3): 1.30 (t, J = 7.2 Hz, CH2CH3, 3H), 2.84 (s, -CH3, 3H), 3.51 (s, CH2CO, 2H), 3.98 (s, CH2Py, 4H), 4.26 (q, J = 7.2 Hz, -CH2CH3, 2H), 4.73 (s, CH2, 2H), 6.78 (d, J = 2.6 Hz, Qu7, 1H), 7.15 (dd, J = 7.6, 5.2 Hz, Py5, 2H), 7.35 (d, J = 8.6 Hz, Qu3, 1H), 7.62 (dd, J = 7.6, 7.6 Hz, Py4, 2H), 7.96 (d, J = 8.6 Hz, Qu4, 1H), 7.97 (t, J = 7.6 Hz, Py3, 2H), 8.52 (d, J = 5.2 Hz, Py6, 2H), 8.59 (d, J = 2.6 Hz, Qu5, 1H), 11.66 (s, -NHCO-, 1H). 13C NMR (125 MHz, CDCl3): 14.4 (CH2CH3), 25.1 (CH3), 59.7 (-CH2CO-), 61.3 (-CH2Py), 61.6 (CH2CH3), 65.8 (-CH2-), 101.8 (Qu7), 108.5 (Qu5), 122.6 (Py5), 123.1 (Qu3), 123.3 (Py3), 127.0 (Qu9), 135.1 (Qu10), 135.2 (Qu8), 135.7 (Qu4), 136.8 (Py4), 149.3 (Py6), 155.0 (Qu2), 156.1 (Qu6), 158.5 (Py2), 169.0 (-CO-), 169.8 (-NHCO-). FT-IR (ATR): 3300 cm-1 (N-H (amido)), 1757 cm-1 (C=O (ester)), 1682 cm-1 (C=O (amido)).
【実施例2】
【0055】
2.金属錯体の製造
実施例1で製造した「H-dpaqH,ester」及び特許文献3に記載の方法で製造した「H-dpaqH,H」、「H-dpaqNO2,H」、「H-dpaqOMe,H」を使用して、この発明の金属錯体を製造した。
【実施例2】
【0056】
(1)[Mn(dpaqH,H)]ClO4の合成
H-dpaqH,H 100 mg (0.26 mmol) 及びtriethyleamine 40 μL (0.29 mmol) を脱水アセトニトリル2 mLに溶解し、Mn(ClO4)2・6H2O 110 mg (0.31 mmol) を脱水アセトニトリル 0.5 mLに溶解した溶液に窒素雰囲気下で滴下して、一晩撹拌した。生じた沈殿物をメンブレンフィルターで濾取して、真空乾燥し、淡黄色固体を得た(収量: 126 mg 、収率:90%)。なお、この化合物は元素分析装置、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR) 及び質量分析装置(エレクトロスプレー方式)の測定結果から同定した。その結果を以下に示す。
【実施例2】
【0057】
Anal. Calcd for [Mn(dpaqH,H)](ClO4)(H2O)0.8: C, 50.11; H, 3.95; N, 12.70. Found: C, 50.19; H, 3.81; N, 12.74. Selected IR frequencies (cm-1, FT-ATR): 1541 (CO). Electronic absorption spectrum in CH3CN (nm (M-1 cm-1)): 375 (4500), 262 (37100). Electronic absorption spectrum in MES buffer (pH 7.2, 5% DMSO) (nm (M-1 cm-1)): 309 (5300), 241 (23800). ESI-MS, positive mode: m/z 437.08 [Mn(dpaqH,H)]+.
【実施例2】
【0058】
(2)[Mn(dpaqNO2,H)]ClO4の合成
H-dpaqNO2,H 100 mg (0.23 mmol)及びtriethyleamine 34 μL (0.25 mmol) を脱水アセトニトリル3.5 mLに溶解し、Mn(ClO4)2・6H2O 99 mg (0.28 mmol) を脱水アセトニトリル 0.5 mLに溶解した溶液に窒素雰囲気下で滴下して、一晩撹拌した。生じた沈殿物をメンブレンフィルターで濾取して、真空乾燥し、オレンジ色の固体を得た (収量: 124 mg、収率:93%)。なお、この化合物は元素分析装置、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR) 及び質量分析装置(エレクトロスプレー方式)の測定結果から同定した。その結果を以下に示す。
【実施例2】
【0059】
Anal. Calcd for [Mn(dpaqNO2,H)](ClO4)(H2O)0.5: C, 46.76; H, 3.41; N, 14.22. Found: C, 47.03; H, 3.26; N, 13.92. Selected IR frequencies (cm-1, FT-ATR): 1533 (CO). Electronic absorption spectrum in CH3CN (nm (M-1 cm-1)): 428 (19100), 322 (3990), 262 (22900). Electronic absorption spectrum in MES buffer (pH 7.2, 5% DMSO) (nm (M-1 cm-1)): 380 (10100), 238 (12000). ESI-MS, positive mode: m/z 482.15 [Mn(dpaqNO2,H)]+.
【実施例2】
【0060】
(3)[Mn(dpaqOMe,H)]ClO4の合成
H-dpaqOMe,H 100 mg (0.24 mmol) 及びtriethyleamine 36 μL (0.26 mmol) を脱水アセトニトリル2 mLに溶解し、これをMn(ClO4)2・6H2O 103 mg (0.29 mmol) を脱水アセトニトリル 0.5 mLに溶解した溶液に窒素雰囲気下で滴下して、一晩撹拌した。生じた沈殿物をメンブレンフィルターで濾取して、真空乾燥し、黄色固体を得た(収量: 75 mg、収率:55%)。なお、この化合物は元素分析装置、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR) 及び質量分析装置(エレクトロスプレー方式)の測定結果から同定した。その結果を以下に示す。
【実施例2】
【0061】
Anal. Calcd for [Mn(dpaqOMe,H)](ClO4)(H2O)0.5: C, 50.06; H, 4.03; N, 12.16. Found: C, 50.22; H, 4.00; N, 12.35. Selected IR frequencies (cm-1, FT-ATR): 1549 (CO). Electronic absorption spectrum in CH3CN (nm (M-1 cm-1)): 405 (3320), 346 (2330), 264 (33200). Electronic absorption spectrum in MES buffer (pH 7.2, 5% DMSO) (nm (M-1 cm-1)): 334 (4270), 248 (29200). ESI-MS, positive mode: m/z 467.19 [Mn(dpaqOMe,H)]+.
【実施例2】
【0062】
(4)[Mn(dpaqH,ester)]ClO4の合成
H-dpaqH,ester 100 mg (0.21 mmol) 及びtriethyleamine 32 μL (0.25 mmol) を脱水エタノール50 mLに溶解して、Mn(ClO4)2・6H2O 90 mg (0.25 mmol) を脱水エタノール1 mLに溶解した溶液に窒素雰囲気下で滴下し、一晩撹拌した。生じた沈殿物をメンブレンフィルターで濾取して、真空乾燥し、淡黄色固体を得た(収量: 86 mg 、収率: 65%)。なお、この化合物は元素分析装置、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR) 及び質量分析装置(エレクトロスプレー方式)の測定結果から同定した。その結果を以下に示す。
【実施例2】
【0063】
ESI-MS, positive mode: m/z 539.14 [Mn(dpaqH,ester)]+. Selected IR frequencies (cm-1, FT-ATR): 1733 (CO (ester)), 1626 (CO (amido)).
【実施例3】
【0064】
3.細胞毒性評価
実施例2で得られた金属錯体の腫瘍細胞に対する活性(IC50)を、ヒト子宮頸癌由来の癌細胞であるHeLa細胞を使って測定した。なお、シスプラチン(cisplatin、和研薬製)を実験対照として使用した。具体的には以下のようにして測定した。
【実施例3】
【0065】
まず、HeLa細胞を10%ウシ胎児血清及び1%抗生物質、抗真菌剤を補足したDulbecco's Modified Eagle培地(DMEM)を含むフラスコに接種し、5%二酸化炭素雰囲気下、湿潤インキュベーター中、37℃で培養した。フラスコ内で培養細胞が、80%コンフルエントに達したら、フラスコ内の細胞をトリプシン処理して、細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した。
【実施例3】
【0066】
血球計算盤で緩衝液に含まれる細胞数を計数したのち、細胞培養に使用した培地を使用して、5×104細胞/mlの細胞懸濁液を調製した。滅菌96ウェルのマイクロプレートに前記の細胞懸濁液を100μL/ウェルとなるように加えて、37℃で24時間培養した。
【実施例3】
【0067】
次に、実施例2で得られた金属錯体及びシスプラチンの段階希釈水溶液(5%DMSOを含む。)を調製した。この段階希釈水溶液をマイクロプレートの各ウェルに20μLずつ添加し、24時間又は48時間前記の条件下で培養した。
【実施例3】
【0068】
全てのウェル中の培養液を除去したのち、MTT水溶液 (5 mg/mL) を各ウェルに10 μLずつ加えて、マイクロプレートの蓋を閉め、37℃で4時間保温した。蓋をはずして、2N 塩酸水溶液を1%含む2-プロパノール溶液 を100 μL/ウェルとなるように加えて、ホルマザンを溶解させた。
【実施例3】
【0069】
最後に、96 wellプレートリーダーで570 nmの吸光度を測定したのち、これを生存細胞数として評価し、50%細胞発育抑制濃度(IC50)を算出した。なお、IC50値の算出に当たっては、同様に実施した少なくとも5回以上の実験値の平均値を採用した。その結果を表に示す。
【実施例3】
【0070】
【表1】
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【実施例3】
【0071】
から、[Mn(dpaqH,ester)]ClO4はシスプラチン(cisplatin)よりも高い細胞毒性を有しており、優れた抗癌剤となる可能性が高いことが確認できた。また、シスプラチンには及ばないものの、[Mn(dpaqH,H)]ClO4 、[Mn(dpaqNO2,H)]ClO4及び[Mn(dpaqOMe,H)]ClO4も抗癌剤として使用できる可能性があることが確認できた。
図面
【図1】
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