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明細書 :錯視の分析装置、原画像のとおり知覚させるように錯視を加味した錯視加味画像生成装置、錯視の分析方法、原画像のとおり知覚させるように錯視を加味した錯視加味画像生成方法、および、プログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5622971号 (P5622971)
登録日 平成26年10月3日(2014.10.3)
発行日 平成26年11月12日(2014.11.12)
発明の名称または考案の名称 錯視の分析装置、原画像のとおり知覚させるように錯視を加味した錯視加味画像生成装置、錯視の分析方法、原画像のとおり知覚させるように錯視を加味した錯視加味画像生成方法、および、プログラム
国際特許分類 G06T   7/00        (2006.01)
FI G06T 7/00 130
請求項の数または発明の数 25
全頁数 63
出願番号 特願2014-514661 (P2014-514661)
出願日 平成25年9月30日(2013.9.30)
国際出願番号 PCT/JP2013/077190
国際公開番号 WO2014/051169
国際公開日 平成26年4月3日(2014.4.3)
優先権出願番号 2012216718
優先日 平成24年9月28日(2012.9.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成26年3月27日(2014.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】新井 仁之
【氏名】新井 しのぶ
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100089118、【弁理士】、【氏名又は名称】酒井 宏明
審査官 【審査官】伊藤 隆夫
参考文献・文献 国際公開第2012/067254(WO,A1)
特開2009-296039(JP,A)
新井 仁之,視覚の科学と数学 ウェーブレットで探る錯視の世界 第3回 視覚の非線形数理モデルと錯視発生のシミュレーション,数理科学,日本,株式会社サイエンス社,2008年10月 1日,第46巻 第10号,p.63-68
Hitoshi ARAI,A Nonlinear Model of Visual Information ProcessingBasedon Discrete Maximal Overlap Wavelets,Interdisciplinary InformationSciences,2005年 9月16日,Vol. 11, No. 2,p. 177-190
平井 豊祥,輪郭線間に生じる幾何学的錯視量の定量化 Formulation and Measurement of the Geometrical Optical Illusion Magnitude in Relation to the Effect of the Surround Lines Upon the Viewed Test-Line,計測自動制御学会論文集,日本,社団法人計測自動制御学会,2001年 7月31日,第37巻 第7号,p.675-680
新井 仁之,視覚の科学と数学 ウェーブレットで探る錯視の世界 最終回 色の知覚と錯視,数理科学,日本,株式会社サイエンス社,2009年 1月 1日,第47巻 第1号,p.75-79
新井 仁之,視覚の科学と数学 ウェーブレットで探る錯視の世界 第1回 視覚の数理モデルとウェーブレット,数理科学,日本,株式会社サイエンス社,2008年 8月 1日,第46巻 第8号,p.64-69
調査した分野 G06T 7/60
G06T 5/20
特許請求の範囲 【請求項1】
記憶部と制御部を少なくとも備えた錯視の分析装置であって、
上記記憶部は、
方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクを記憶するフィルタ記憶手段と、
画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
を備え、
上記制御部は、
上記画像データの色成分に対して、上記方位選択性ウェーブレット・フレームまたは上記方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する分解手段と、
上記分解手段により取得された上記サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する再構成手段と、
上記画像データと上記再構成画像データ間における、上記色成分の比または差を算出することにより錯視量を数値化する錯視量数値化手段と、
を備え、
上記分解手段は、
上記多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、上記分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように係数処理を行う係数処理手段を更に備え
上記係数処理手段は、
ヒトの色知覚のように輝度と色からなる色空間において、
上記画像データの色成分について、色の上記分解詳細係数と輝度の上記分解詳細係数から定めたエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、上記エネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように補正した上記係数処理を行うこと
を特徴とする錯視の分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の錯視の分析装置において、
上記係数処理手段は、
上記分解詳細係数の符号の違いによって別個の処理を行うこと
を特徴とする錯視の分析装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の錯視の分析装置において、
上記色成分は、
CIELAB色空間における、L*、a*、および、b*のいずれか一つであること
を特徴とする錯視の分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の錯視の分析装置において、
上記錯視量数値化手段は、
L*の値、a*の値、および、b*の値の、上記画像データと上記再構成画像データ間における差の二乗和の平方根である色差を用いて、上記錯視量として算出すること
を特徴とする錯視の分析装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の錯視の分析装置において、
上記係数処理手段は、
上記画像データのa*および/またはb*の色成分について、a*および/またはb*の上記分解詳細係数とL*における上記分解詳細係数から定めたエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、上記エネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように補正した上記係数処理を行うこと
を特徴とする錯視の分析装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つに記載の錯視の分析装置において、
上記係数処理手段は、
上記分解詳細係数のエネルギーが大きい場合にはS字曲線に、小さい場合にはN字曲線に、自動的に連続的な変化をする関数を用いて、上記係数処理を行うこと
を特徴とする錯視の分析装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つに記載の錯視の分析装置において、
上記係数処理手段は、
上記分解フェーズと上記合成フェーズの間において、上記分解詳細係数を正規化し、正規化された上記分解詳細係数である正規化分解詳細係数のノルムを上記エネルギーとして、当該正規化分解詳細係数に対して上記係数処理を行い、係数処理された上記正規化分解詳細係数に対して上記正規化の逆演算を行うこと
を特徴とする錯視の分析装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つに記載の錯視の分析装置において、
上記分解手段は、
上記方位性が水平方向、垂直方向、対角方向からなる双直交ウェーブレットフィルタ・バンク、または、上記方位性が多方向のかざぐるまフレームレットを用いて、上記多重解像度分解を行うこと
を特徴とする錯視の分析装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つに記載の錯視の分析装置において、
上記分解手段は、
上記多重解像度分解において、レベルによってかざぐるまフレームレットの次数を変えるなど別のフィルタ・バンクを用いてもよいこと
を特徴とする錯視の分析装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一つに記載の錯視の分析装置において、
上記分解手段による上記多重解像度分解は、
最大重複多重解像度分解、最大間引き多重解像度分解、または、一部間引き一部重複多重解像度分解であること
を特徴とする錯視の分析装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一つに記載の錯視の分析装置において、
上記制御部は、
上記画像データを編集して、編集した上記画像データについて上記分解手段により上記多重解像度分解が行われるよう制御する画像編集手段、
を更に備え、
上記錯視量数値化手段は、
編集された上記画像データから取得された上記再構成画像データと未編集の上記画像データとの間の比または差を上記錯視量として算出し、
上記画像編集手段は、
上記錯視量が小さくなるように繰り返し編集を行うこと
を特徴とする錯視の分析装置。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一つに記載の錯視の分析装置において、
上記制御部は、
上記画像データを編集して、編集した上記画像データについて上記分解手段により上記多重解像度分解が行われるよう制御する画像編集手段、
を更に備え、
上記錯視量数値化手段は、
編集された上記画像データと当該編集された上記画像データから取得された上記再構成画像データとの間の比または差を上記錯視量として算出し、
上記画像編集手段は、
上記錯視量が所定の数値となるように繰り返し編集を行うこと
を特徴とする錯視の分析装置。
【請求項13】
記憶部と制御部を少なくとも備えた錯視加味画像生成装置であって、
上記記憶部は、
方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクを記憶するフィルタ記憶手段と、
画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
を備え、
上記制御部は、
上記画像データに対して、上記方位選択性ウェーブレット・フレームまたは上記方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する分解手段と、
上記分解手段により取得された上記サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する再構成手段と、
を備え、
上記分解手段は、
上記多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、上記分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値を増強し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値をより小さく抑制するように係数処理を行う係数処理手段を更に備えたこと
を特徴とする錯視加味画像生成装置。
【請求項14】
請求項13に記載の錯視加味画像生成装置において、
上記係数処理手段は、
上記分解詳細係数の符号の違いによって別個の処理を行うこと
を特徴とする錯視加味画像生成装置。
【請求項15】
請求項13または14に記載の錯視加味画像生成装置において、
上記画像データの色成分は、
CIELAB色空間における、L*、a*、および、b*のいずれか一つであること
を特徴とする錯視加味画像生成装置。
【請求項16】
請求項15に記載の錯視加味画像生成装置において、
上記係数処理手段は、
上記画像データのa*および/またはb*の色成分について、a*および/またはb*の上記分解詳細係数とL*における上記分解詳細係数から定めたエネルギーが大きければ大きいほど小さな値を増強し、上記エネルギーが小さければ小さいほど小さな値をより小さく抑制するように補正した上記係数処理を行うこと
を特徴とする錯視加味画像生成装置。
【請求項17】
請求項13乃至16のいずれか一つに記載の錯視加味画像生成装置において、
上記係数処理手段は、
上記分解詳細係数のエネルギーが大きい場合にはN字曲線に、小さい場合にはS字曲線に、自動的に連続的な変化をする関数を用いて、上記係数処理を行うこと
を特徴とする錯視加味画像生成装置。
【請求項18】
請求項13乃至17のいずれか一つに記載の錯視加味画像生成装置において、
上記係数処理手段は、
上記分解フェーズと上記合成フェーズの間において、上記分解詳細係数を正規化し、正規化された上記分解詳細係数である正規化分解詳細係数のノルムを上記エネルギーとして、当該正規化分解詳細係数に対して上記係数処理を行い、係数処理された上記正規化分解詳細係数に対して上記正規化の逆演算を行うこと
を特徴とする錯視加味画像生成装置。
【請求項19】
請求項13乃至18のいずれか一つに記載の錯視加味画像生成装置において、
上記分解手段は、
上記方位性が水平方向、垂直方向、対角方向からなる双直交ウェーブレットフィルタ・バンク、または、上記方位性が多方向のかざぐるまフレームレットを用いて、上記多重解像度分解を行うこと
を特徴とする錯視加味画像生成装置。
【請求項20】
請求項13乃至19のいずれか一つに記載の錯視加味画像生成装置において、
上記分解手段は、
上記多重解像度分解において、レベルによってかざぐるまフレームレットの次数を変えるなど別のフィルタ・バンクを用いてもよいこと
を特徴とする錯視加味画像生成装置。
【請求項21】
請求項13乃至20のいずれか一つに記載の錯視加味画像生成装置において、
上記分解手段による上記多重解像度分解は、
最大重複多重解像度分解、最大間引き多重解像度分解、または、一部間引き一部重複多重解像度分解であること
を特徴とする錯視加味画像生成装置。
【請求項22】
記憶部と制御部を少なくとも備えた錯視の分析装置において実行される錯視の分析方法であって、
上記記憶部は、
方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクを記憶するフィルタ記憶手段と、
画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
を備え、
上記制御部において実行される、
上記画像データの色成分に対して、上記方位選択性ウェーブレット・フレームまたは上記方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する分解ステップと、
上記分解ステップにて取得された上記サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する再構成ステップと、
上記画像データと上記再構成画像データ間における、上記色成分の比または差を算出することにより錯視量を数値化する錯視量数値化ステップと、
を含み、
上記分解ステップは、
上記多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、上記分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように係数処理を行う係数処理ステップを更に含み、
上記係数処理ステップは、
ヒトの色知覚のように輝度と色からなる色空間において、
上記画像データの色成分について、色の上記分解詳細係数と輝度の上記分解詳細係数から定めたエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、上記エネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように補正した上記係数処理を行うこと
を特徴とする錯視の分析方法。
【請求項23】
記憶部と制御部を少なくとも備えた錯視加味画像生成装置において実行される錯視加味画像生成方法であって、
上記記憶部は、
方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクを記憶するフィルタ記憶手段と、
画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
を備え、
上記制御部において実行される、
上記画像データに対して、上記方位選択性ウェーブレット・フレームまたは上記方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する分解ステップと、
上記分解ステップにて取得された上記サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する再構成ステップと、
を含み、
上記分解ステップは、
上記多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、上記分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値を増強し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値をより小さく抑制するように係数処理を行う係数処理ステップを更に含むこと
を特徴とする錯視加味画像生成方法。
【請求項24】
記憶部と制御部を少なくとも備えた錯視の分析装置に錯視の分析方法を実行させるためのプログラムであって、
上記記憶部は、
方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクを記憶するフィルタ記憶手段と、
画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
を備え、
上記制御部において、
上記画像データの色成分に対して、上記方位選択性ウェーブレット・フレームまたは上記方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する分解ステップと、
上記分解ステップにて取得された上記サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する再構成ステップと、
上記画像データと上記再構成画像データ間における、上記色成分の比または差を算出することにより錯視量を数値化する錯視量数値化ステップと、
を実行させるためのプログラムであって、
上記分解ステップにおいて、
上記多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、上記分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように係数処理を行う係数処理ステップを更に実行させ、
上記係数処理ステップは、
ヒトの色知覚のように輝度と色からなる色空間において、
上記画像データの色成分について、色の上記分解詳細係数と輝度の上記分解詳細係数から定めたエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、上記エネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように補正した上記係数処理を行うこと
を実行させるためのプログラム。
【請求項25】
記憶部と制御部を少なくとも備えた錯視加味画像生成装置に錯視加味画像生成方法を実行させるためのプログラムであって、
上記記憶部は、
方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクを記憶するフィルタ記憶手段と、
画像データを記憶する画像データ記憶手段と、
を備え、
上記制御部において、
上記画像データに対して、上記方位選択性ウェーブレット・フレームまたは上記方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する分解ステップと、
上記分解ステップにて取得された上記サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する再構成ステップと、
を実行させるためのプログラムであって、
上記分解ステップにおいて、
上記多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、上記分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値を増強し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値をより小さく抑制するように係数処理を行う係数処理ステップを
更に実行させるためのプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、錯視の分析装置、錯視加味画像生成装置、錯視の分析方法、錯視加味画像生成方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、色の対比錯視を引き起こす図形等が発見されている(非特許文献1参照)。19世紀、フランス王立ゴブラン織製作所の染色研究部門監督の職にあった化学者シェブルールは、依頼された通りに配色してゴブラン織を製作しても異なって見えることに気付いた。シェブルール錯視などの錯視図形を見ると、色や輝度等が実際とは異なって知覚されたり、実際には存在しないものが見えたりする錯視現象が引き起こされる。
【0003】
また、非特許文献2に記載の方法では、ヒトの初期視覚情報処理の数理モデルとして、最大重複双直交ウェーブレットフィルタ・バンクを用いて、原画像に対して非線形処理を行うことが開示されている。また、ヒトの視覚皮質の単純細胞の数理モデルとして、かざぐるまウェーブレット・フレーム(非特許文献4参照)、単純かざぐるまフレームレット(非特許文献3参照)、かざぐるまフレームレットと呼ばれる方位選択性ウェーブレット・フレームが開発されており、画像解析等に利用されている。また、ヒトの視覚では、大脳皮質に色・輝度細胞があるという脳神経科学的な実験結果が報告されている(非特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】新井仁之著 「錯視図版集」三秀舎 2007年
【非特許文献2】Hitoshi Arai, “A Nonlinear Model of Visual Information Processing Based on Discrete Maximal Overlap Wavelets”,Interdisciplinary Information Sciences, Vol. 11, No.2, pp. 177~190 (2005).
【非特許文献3】Hitoshi Arai and Shinobu Arai,2D tight framelets with orientation selectivity suggested by vision science,JSIAM Letters Vol.1,pp.9~12 (2009).
【非特許文献4】Hitoshi Arai and Shinobu Arai,Finite discrete, shift-invariant, directional filterbanks for visual information processing, I:construction,Interdisciplinary Information Sciences,Vol. 13,No.2,pp.255~273 (2007).
【非特許文献5】E.N.Johnson,M.J.Hawken and R. Shapley,The spatial transformation of color in the primary visual cortex of the macaque monkey,Nature Neuroscience,Vol.4,No.4,pp.409~416 (2001).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来、画像が実際にはどのように見えるかは、その人の主観によるものであって、定量化できないという問題点を有していた。特に、自動車等に関する工業デザイナーや、建物等に関するインテリアデザイナー等の配色を施す者は、本人が意図した通りに顧客から見えるわけではないと気付いたとしても、従来は、職人的に経験上習得した技能に頼って、配色を調整するしかないという問題点を有していた。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、任意の画像について発生しうる錯視量を定量化あるいは錯視量を加味した画像を生成することができる、錯視の分析装置、錯視加味画像生成装置、錯視の分析方法、錯視加味画像生成方法、および、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本願発明者は、鋭意検討の結果、以下のように考えることで本発明を完成させた。すなわち、ヒトの視覚は、見たい部分をよく見ることができるような情報処理を本来行っている。ヒトは、さまざまな錯視を知覚するが、それは視覚情報処理の結果であると考えられる。ここで、もしも数理モデルがヒトの視覚情報処理に近いものであれば、数理モデルを実装した計算機も錯視を算出するはずである。そこで、本願発明者は、明暗の錯視や色の対比錯視をシミュレーションできた数理モデルを用いることにより、ヒトの視覚に近い情報処理を原画像に対して施して、ヒトの脳内で知覚される画像を作成し、それを原画像と対比することにより数値化できることを見出して、本願発明を完成させるに至った。また、同様の原理にて、ヒトの脳内で原画像のとおり知覚されるように、予めヒトの視覚情報処理で付加される錯視量を加味した画像(錯視加味画像)を得ることも可能となった。
【0008】
すなわち、本発明の錯視の分析装置は、記憶部と制御部を少なくとも備えた錯視の分析装置であって、上記記憶部は、方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクを記憶するフィルタ記憶手段と、画像データを記憶する画像データ記憶手段と、を備え、上記制御部は、上記画像データの色成分に対して、上記方位選択性ウェーブレット・フレームまたは上記方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する分解手段と、上記分解手段により取得された上記サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する再構成手段と、上記画像データと上記再構成画像データ間における、上記色成分の比または差を算出することにより錯視量を数値化する錯視量数値化手段と、を備え、上記分解手段は、上記多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、上記分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように係数処理を行う係数処理手段を更に備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記記載の錯視の分析装置において、上記係数処理手段は、上記分解詳細係数の符号の違いによって別個の処理を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記記載の錯視の分析装置において、上記色成分は、CIELAB色空間における、L、a、および、bのいずれか一つであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記記載の錯視の分析装置において、上記錯視量数値化手段は、Lの値、aの値、および、bの値の、上記画像データと上記再構成画像データ間における差の二乗和の平方根である色差を用いて、上記錯視量として算出することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記記載の錯視の分析装置において、上記係数処理手段は、上記画像データのaおよび/またはbの色成分について、aおよび/またはbの上記分解詳細係数とLにおける上記分解詳細係数から定めたエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、上記エネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように補正した上記係数処理を行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記記載の錯視の分析装置において、上記係数処理手段は、上記分解詳細係数のエネルギーが大きい場合にはS字曲線に、小さい場合にはN字曲線に、自動的に連続的な変化をする関数を用いて、上記係数処理を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記記載の錯視の分析装置において、上記係数処理手段は、上記分解フェーズと上記合成フェーズの間において、上記分解詳細係数を正規化し、正規化された上記分解詳細係数である正規化分解詳細係数のノルムを上記エネルギーとして、当該正規化分解詳細係数に対して上記係数処理を行い、係数処理された上記正規化分解詳細係数に対して上記正規化の逆演算を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記記載の錯視の分析装置において、上記分解手段は、上記方位性が水平方向、垂直方向、対角方向からなる双直交ウェーブレットフィルタ・バンク、または、上記方位性が多方向のかざぐるまフレームレットを用いて、上記多重解像度分解を行うことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記記載の錯視の分析装置において、上記分解手段は、上記多重解像度分解において、レベルによってかざぐるまフレームレットの次数を変えるなど別のフィルタ・バンクを用いてもよいことを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記記載の錯視の分析装置において、上記分解手段による上記多重解像度分解は、最大重複多重解像度分解、最大間引き多重解像度分解、または、一部間引き一部重複多重解像度分解であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記記載の錯視の分析装置において、上記制御部は、上記画像データを編集して、編集した上記画像データについて上記分解手段により上記多重解像度分解が行われるよう制御する画像編集手段、を更に備え、上記錯視量数値化手段は、編集された上記画像データから取得された上記再構成画像データと未編集の上記画像データとの間の比または差を上記錯視量として算出し、上記画像編集手段は、上記錯視量が小さくなるように繰り返し編集を行うことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記記載の錯視の分析装置において、上記制御部は、上記画像データを編集して、編集した上記画像データについて上記分解手段により上記多重解像度分解が行われるよう制御する画像編集手段、を更に備え、上記錯視量数値化手段は、編集された上記画像データと当該編集された上記画像データから取得された上記再構成画像データとの間の比または差を上記錯視量として算出し、上記画像編集手段は、上記錯視量が所定の数値となるように繰り返し編集を行うことを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、錯視加味画像生成装置に関するものであり、本発明の錯視加味画像生成装置は、記憶部と制御部を少なくとも備えた錯視加味画像生成装置であって、上記記憶部は、方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクを記憶するフィルタ記憶手段と、画像データを記憶する画像データ記憶手段と、を備え、上記制御部は、上記画像データに対して、上記方位選択性ウェーブレット・フレームまたは上記方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する分解手段と、上記分解手段により取得された上記サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する再構成手段と、を備え、上記分解手段は、上記多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、上記分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値を増強し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値をより小さく抑制するように係数処理を行う係数処理手段を更に備えたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の錯視加味画像生成装置は、上記記載の錯視加味画像生成装置において、上記係数処理手段は、上記分解詳細係数の符号の違いによって別個の処理を行うことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の錯視加味画像生成装置は、上記記載の錯視加味画像生成装置において、上記画像データの色成分は、CIELAB色空間における、L、a、および、bのいずれか一つであることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の錯視加味画像生成装置は、上記記載の錯視加味画像生成装置において、上記係数処理手段は、上記画像データのaおよび/またはbの色成分について、aおよび/またはbの上記分解詳細係数とLにおける上記分解詳細係数から定めたエネルギーが大きければ大きいほど小さな値を増強し、上記エネルギーが小さければ小さいほど小さな値をより小さく抑制するように補正した上記係数処理を行うことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の錯視加味画像生成装置は、上記記載の錯視加味画像生成装置において、上記係数処理手段は、上記分解詳細係数のエネルギーが大きい場合にはN字曲線に、小さい場合にはS字曲線に、自動的に連続的な変化をする関数を用いて、上記係数処理を行うことを特徴とする。
【0025】
また、本発明の錯視加味画像生成装置は、上記記載の錯視加味画像生成装置において、上記係数処理手段は、上記分解フェーズと上記合成フェーズの間において、上記分解詳細係数を正規化し、正規化された上記分解詳細係数である正規化分解詳細係数のノルムを上記エネルギーとして、当該正規化分解詳細係数に対して上記係数処理を行い、係数処理された上記正規化分解詳細係数に対して上記正規化の逆演算を行うことを特徴とする。
【0026】
また、本発明の錯視加味画像生成装置は、上記記載の錯視加味画像生成装置において、上記分解手段は、上記方位性が水平方向、垂直方向、対角方向からなる双直交ウェーブレットフィルタ・バンク、または、上記方位性が多方向のかざぐるまフレームレットを用いて、上記多重解像度分解を行うことを特徴とする。
【0027】
また、本発明の錯視加味画像生成装置は、上記記載の錯視加味画像生成装置において、上記分解手段は、上記多重解像度分解において、レベルによってかざぐるまフレームレットの次数を変えるなど別のフィルタ・バンクを用いてもよいことを特徴とする。
【0028】
また、本発明の錯視加味画像生成装置は、上記記載の錯視加味画像生成装置において、上記分解手段による上記多重解像度分解は、最大重複多重解像度分解、最大間引き多重解像度分解、または、一部間引き一部重複多重解像度分解であることを特徴とする。
【0029】
また、本発明は、錯視の分析方法に関するものであり、本発明の錯視の分析方法は、記憶部と制御部を少なくとも備えた錯視の分析装置において実行される錯視の分析方法であって、上記記憶部は、方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクを記憶するフィルタ記憶手段と、画像データを記憶する画像データ記憶手段と、を備え、上記制御部において実行される、上記画像データの色成分に対して、上記方位選択性ウェーブレット・フレームまたは上記方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する分解ステップと、上記分解ステップにて取得された上記サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する再構成ステップと、上記画像データと上記再構成画像データ間における、上記色成分の比または差を算出することにより錯視量を数値化する錯視量数値化ステップと、を含み、上記分解ステップは、上記多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、上記分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように係数処理を行う係数処理ステップを更に含むことを特徴とする。
【0030】
また、本発明は、錯視加味画像生成方法に関するものであり、本発明の錯視加味画像生成方法は、記憶部と制御部を少なくとも備えた錯視加味画像生成装置において実行される錯視加味画像生成方法であって、上記記憶部は、方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクを記憶するフィルタ記憶手段と、画像データを記憶する画像データ記憶手段と、を備え、上記制御部において実行される、上記画像データに対して、上記方位選択性ウェーブレット・フレームまたは上記方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する分解ステップと、上記分解ステップにて取得された上記サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する再構成ステップと、を含み、上記分解ステップは、上記多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、上記分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値を増強し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値をより小さく抑制するように係数処理を行う係数処理ステップを更に含むことを特徴とする。
【0031】
また、本発明は、プログラムに関するものであり、本発明のプログラムは、記憶部と制御部を少なくとも備えた錯視の分析装置に錯視の分析方法を実行させるためのプログラムであって、上記記憶部は、方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクを記憶するフィルタ記憶手段と、画像データを記憶する画像データ記憶手段と、を備え、上記制御部において、上記画像データの色成分に対して、上記方位選択性ウェーブレット・フレームまたは上記方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する分解ステップと、上記分解ステップにて取得された上記サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する再構成ステップと、上記画像データと上記再構成画像データ間における、上記色成分の比または差を算出することにより錯視量を数値化する錯視量数値化ステップと、を実行させるためのプログラムであって、上記分解ステップにおいて、上記多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、上記分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように係数処理を行う係数処理ステップを更に実行させることを特徴とする。
【0032】
また、本発明のプログラムは、記憶部と制御部を少なくとも備えた錯視加味画像生成装置に錯視加味画像生成方法を実行させるためのプログラムであって、上記記憶部は、方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクを記憶するフィルタ記憶手段と、画像データを記憶する画像データ記憶手段と、を備え、上記制御部において、上記画像データに対して、上記方位選択性ウェーブレット・フレームまたは上記方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する分解ステップと、上記分解ステップにて取得された上記サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する再構成ステップと、を実行させるためのプログラムであって、上記分解ステップにおいて、上記多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、上記分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値を増強し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値をより小さく抑制するように係数処理を行う係数処理ステップを更に実行させることを特徴とする。
【0033】
また、本発明は記録媒体に関するものであり、上記記載のプログラムを記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
この発明によれば、方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクと、画像データとを記憶し、画像データの色成分に対して、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得し、サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する場合に、多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように係数処理を行い、画像データと再構成画像データ間における、色成分の比または差を算出することにより錯視量を数値化する。これにより、本発明は、任意の画像について発生しうる錯視量を定量化することができる、という効果を奏する。より具体的には、従来、どの部分にどのくらいの錯視が発生しているかを把握するには感覚にたよる以外に方法がなかったが、本発明によれば、どの部分にどのくらいの錯視が発生しているかを客観的な数値として取得することができる。より具体的には、印刷、デザイン、映像、塗装等の色彩において、錯視量の発生箇所が把握できるとともに、デザイナーの技能にたよることなく、どの箇所に修正を施すべきかを客観的な指標で把握することができる。
【0035】
また、本発明によれば、上記分解詳細係数の符号の違いによって別個の処理を行ってもよいので、よりヒトの視覚に近い自然な処理を行うことができる、という効果を奏する。
【0036】
また、本発明によれば、上記色成分として、CIELAB色空間における、L、a、および、bのいずれか一つを用いる。これにより、本発明はヒトの感覚に近い自然な画像処理を行うことができる、という効果を奏する。
【0037】
また、本発明によれば、Lの値、aの値、および、bの値の、画像データと再構成画像データ間における差の二乗和の平方根である色差を用いて、錯視量として算出するので、色と輝度における錯視量を統合した合成スコアで、より総合的な感覚に近い錯視量を得ることができる、という効果を奏する。
【0038】
また、本発明によれば、上記画像データのaおよび/またはbの色成分について、aおよび/またはbの上記分解詳細係数とLにおける上記分解詳細係数から定めたエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、上記エネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように補正した上記係数処理を行う。これにより、輝度の効果と色の効果を協働させたヒトの視知覚にとって自然な画像処理を行うことができる、という効果を奏する。
【0039】
また、本発明によれば、上記分解詳細係数のエネルギーが大きい場合にはS字曲線に、小さい場合にはN字曲線に、自動的に連続的な変化をする関数を用いて、上記係数処理を行う。これにより、本発明は、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強する係数処理を、S字曲線からN字曲線に連続的に変化する関数を使った演算を用いて好適に実行することができる、という効果を奏する。より具体的には、周囲の刺激が大きい場合には分解詳細係数のばらつきを大きくし、周囲の刺激が小さい場合には分解詳細係数のばらつきを小さくする関数を用いることで、周囲の刺激が大きい場合には小さな刺激が弱められ、周囲の刺激が小さい場合には小さな刺激でも意識されるようになるので、画像ごとに適切な画像処理を自動的にすることができる。
【0040】
また、本発明によれば、上記分解フェーズと上記合成フェーズの間において、上記詳細分解係数を正規化し、正規化された上記分解詳細係数である正規化分解詳細係数のノルムを上記エネルギーとして、当該正規化分解詳細係数に対して上記係数処理を行い、係数処理された上記正規化分解詳細係数に対して上記正規化の逆演算を行う。これにより、本発明は、正規化により関数処理やエネルギー計算等において係数を扱い易くすることができる、という効果を奏する。
【0041】
また、本発明によれば、上記方位性が水平方向、垂直方向、対角方向からなる双直交ウェーブレットフィルタ・バンク、または、上記方位性が多方向のかざぐるまフレームレットを用いて、上記多重解像度分解を行う。これにより、本発明は、双直交ウェーブレットフィルタ・バンクを用いて簡易な計算を行ったり、かざぐるまフレームレットを用いて精密な計算を行ったりすることができる、という効果を奏する。
【0042】
また、本発明によれば、上記多重解像度分解において、レベルによってかざぐるまフレームレットの次数を変えるなど別のフィルタ・バンクを用いてもよい。これにより、ヒトの視覚の特性を考慮した画像処理を行うことができる、という効果を奏する。
【0043】
また、本発明によれば、上記多重解像度分解は、最大重複多重解像度分解、最大間引き多重解像度分解、または、一部間引き一部重複多重解像度分解であるので、好適な多重解像度分解を行って分解詳細係数を取得することができ、さらに高周波成分だけでなく、低周波成分も多重解像度的に処理されるので、自然な画像処理を行うことができるという効果を奏する。
【0044】
また、本発明によれば、画像データを編集して、編集した画像データについて多重解像度分解が行われるよう制御する場合において、編集された画像データから取得された再構成画像データと未編集の画像データとの間の比または差を錯視量として算出し、錯視量が小さくなるように繰り返し編集を行う。これにより、脳内の錯視量分を加味して結果として編集前の画像(初期画像)のように知覚されるような編集画像(出力用画像)を取得することができる。そして、このような出力用画像を、プリントアウト、印刷、表示、ペイント等のように出力することにより、それを見た人は、画像編集前の元の初期画像として脳内で知覚することになり、従来のような、職人的な技能に頼った配色の調整が不要になるという効果を奏する。
【0045】
また、本発明は、画像データを編集して、編集した画像データについて多重解像度分解が行われるよう制御する場合において、編集された画像データと当該編集された画像データから取得された再構成画像データとの間の比または差を錯視量として算出し、錯視量が所定の数値となるように繰り返し編集を行う。これにより、数値化された錯視量を指標として所望の錯視量となるよう編集し、錯視量が多い画像や錯視量の少ない画像等の任意の錯視量の画像を作成することができるという効果を奏する。
【0046】
また、本発明は、方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクと、画像データとを記憶し、画像データに対して、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得し、サブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する場合に、多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値を増強し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値をより小さく抑制するように係数処理を行うことにより、錯視を加味した画像を生成する。これにより、本発明は、任意の画像について、脳内の錯視量分を加味して、その画像のとおりに知覚されるような出力用画像を取得することができる。そして、このような出力用画像を、プリントアウト、印刷、表示、ペイント等のように出力することにより、それを見た人は、元の画像のまま脳内で知覚することになり、従来のような、職人的な技能に頼った配色の調整が不要になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本実施の形態が適用される本錯視分析装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】図2は、次数5のレベル3の最大重複かざぐるまフレームレット・フィルタに次数5のレベル1とレベル2の最大重複かざぐるまフレームレット・近似フィルタを循環相関積して得られるフィルタを示す図である。
【図3】図3は、次数7のレベル2(高周波数側)の最大重複かざぐるまフレームレット・フィルタにレベル1の最大重複かざぐるまフレームレット・近似フィルタを循環相関積したフィルタを示す図である。
【図4】図4は、次数7のレベル3(低周波数側)の最大重複かざぐるまフレームレット・フィルタにレベル1とレベル2の最大重複かざぐるまフレームレット・近似フィルタを循環相関積したフィルタを示す図である。
【図5】図5は、次数7、レベルkのかざぐるまフレームレットにおいて、近似部分をaで表し、詳細部分をd(1)~d(99)の記号(番号)で表した図である。
【図6】図6は、本実施の形態における錯視分析装置100の基本処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、最大重複多重解像度分解の分解フェーズおよび合成フェーズのフィルタ・バンクの一例を示す図である。
【図8】図8は、正規化を伴う分解詳細係数の係数処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、色の対比錯視画像の一例を示す図である。
【図10】図10は、図9にある原画像の内側四角部分(原画像AとBで共通)と、原画像Aの画像処理結果である処理画像Aの内側四角部分と、原画像Bの画像処理結果である処理画像Bの内側四角部分とを示す図である。
【図11】図11は、色の対比錯視画像の他の例を示す図である。
【図12】図12は、図11にある原画像の内側四角部分(原画像CとDで共通)と、原画像Cの画像処理結果である処理画像Cの内側四角部分と、原画像Dの画像処理結果である処理画像Dの内側四角部分とを示す図である。
【図13】図13は、色の対比錯視画像の他の例を示す図である。
【図14】図14は、図13にある原画像の内側四角部分(原画像EとFで共通)と、原画像Eの画像処理結果である処理画像Eの内側四角部分と、原画像Fの画像処理結果である処理画像Fの内側四角部分とを示す図である。
【図15】図15は、原画像と処理画像における内側四角部分内の中心座標における、Lの値、aの値、および、bの値の差分、ならびに、それらの合成スコアを錯視量としてグラフ化した図である。
【図16】図16は、番号1~3の原画像と、原画像の中心断面におけるL,a,bのグラフ、原画像に対応する処理画像と、処理画像の中心断面におけるL,a,bのグラフを示す図である。
【図17】図17は、番号4~6の原画像と、原画像の中心断面におけるL,a,bのグラフ、原画像に対応する処理画像と、処理画像の中心断面におけるL,a,bのグラフを示す図である。
【図18】図18は、番号7~9の原画像と、原画像の中心断面におけるL,a,bのグラフ、原画像に対応する処理画像と、処理画像の中心断面におけるL,a,bのグラフを示す図である。
【図19】図19は、内側の小四角形と外側の大四角形の輝度が均一な原画像と、内側の小四角形と外側の大四角形の輝度が大きく異なる原画像について対比した図である。
【図20】図20は、本実施例で用いる基本図形である。
【図21】図21は、本実施例で用いた検査色を示す図である。
【図22】図22は、処理結果をもとに選んだ背景色をもつ基本図形の例を示す図である。
【図23】図23は、図22の基本図形に対し、実施の形態の順方向の処理を含む方法で処理し、導き出された錯視色を配置した図である。
【図24】図24は、原画像(512×512画素)と、本実施の形態による処理画像を対比して示す図である。
【図25】図25は、図24の各写真において、左から400画素目の列のLの値を示すグラフである。
【図26】図26は、図24の各写真において、左から400画素目の列のaの値を示すグラフである。
【図27】図27は、図24の各写真において、左から400画素目の列のbの値を示すグラフである。
【図28】図28は、錯視分析装置100におけるフィッティング処理の一例を示すフローチャートである。
【図29】図29は、本実施例で用いた原画像を示す図である。
【図30】図30は、原画像の中央の小四角形部分を抜き出した図である。
【図31】図31は、逆方向の処理を行って再構成画像として得られた錯視加味画像を示す図である。
【図32】図32は、錯視加味画像の中央の小四角形部分を抜き出した図である。
【図33】図33は、図29の外側の領域を白色に置き換えた画像を示す図である。
【図34】図34は、逆方向の処理を行って再構成画像として得られた錯視加味画像を示す図である。
【図35】図35は、シュヴルール錯視図形を示す図である。
【図36】図36は、シュヴルール錯視図形に対し逆方向の処理を施した錯視加味画像を示す図である。
【図37】図37は、図35のシュヴルール錯視図形の原画像と図36の錯視加味画像の横断面の輝度(CIELABのL)のグラフである。
【図38】図38は、次数7のレベル2の最大重複かざぐるまフレームレット・フィルタ(maximal overlap pinwheel framelet filters at level 2)にレベル1の最大重複かざぐるまフレームレットの近似フィルタを循環相関積して得たフィルタを示す図である。
【図39】図39は、テスト画像に対し、次数7のかざぐるまフレームレットによりレベル2の最大重複多重解像度分解(2nd stage of maximal overlap MRA decomposition by pinwheel framelet)を行った結果の各サブバンド信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に、本発明にかかる錯視の分析装置、錯視加味画像生成装置、錯視の分析方法、錯視加味画像生成方法、および、プログラムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。例えば、本実施の形態における色空間として、CIE(国際照明委員会)均等知覚色空間(L表現系)を用いた例について説明することがあるが、これに限られず、ヒトの視覚に近い色空間であれば他の色空間における色成分を用いてもよい。

【0049】
[錯視分析装置100の構成]
次に、本実施の形態にかかる錯視の分析装置および錯視加味画像生成装置である錯視分析装置100の構成について図1を参照して説明する。図1は、本実施の形態が適用される本錯視分析装置100の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本実施の形態に関係する部分のみを概念的に示している。

【0050】
図1において錯視分析装置100は、概略的に、制御部102と通信制御インターフェース部104と入出力制御インターフェース部108と記憶部106を備える。ここで、制御部102は、錯視分析装置100の全体を統括的に制御するCPU等である。入出力制御インターフェース部108は、入力装置112や出力装置114に接続されるインターフェースである。また、記憶部106は、各種のデータベースやテーブルなどを格納する装置である。これら錯視分析装置100の各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。

【0051】
記憶部106に格納される各種のファイル(フレームレットファイル106aおよび画像データファイル106b)は、固定ディスク装置等のストレージ手段である。例えば、記憶部106は、各種処理に用いる各種のプログラム、テーブル、ファイル、データベース、および、ウェブページ等を格納する。

【0052】
これら記憶部106の各構成要素のうち、フレームレットファイル106aは、方位性のない近似フィルタ、および、各方位性をもった複数の詳細フィルタの集合である、方位選択性ウェーブレット・フレームまたは方位選択性フィルタ・バンクを記憶するフィルタ記憶手段である。ここで、本実施の形態では、方位選択性ウェーブレット・フレームとして、かざぐるまフレームレット(pinwheel framelet)を用いるが、方位選択性ウェーブレット・フレームはこれに限られず、例えば、単純かざぐるまフレームレット(simple pinwheel framelet)(非特許文献3参照)や、かざぐるまウェーブレット・フレーム(pinwheel wavelet frame)(非特許文献4参照)等を用いてもよい。また、方位性が多方向のかざぐるまフレームレットに限らず、方位性が水平方向、垂直方向、対角方向からなる双直交ウェーブレットフィルタ・バンクを用いてもよい。なお、かざぐるまウェーブレット・フレームは、構成するフィルタの長さが原画像の画素数に応じて変化するのに対して、かざぐるまフレームレットおよび単純かざぐるまフレームレットは、フィルタの長さが画素数に関係しない、という性質がある。例えば、かざぐるまフレームレットは、方位選択性のある2次元フレームレットであり、ウェーブレット・フレームの一種である。一例として、かざぐるまフレームレットは、ヒトの視覚皮質の単純細胞を数理モデル化したものである。この分解は、ヒトの脳内で単純細胞により分解される信号の数理的なモデルである。なお、かざぐるまフレームレットは、単純かざぐるまフレームレットに比べて、神経科学的に、より大脳皮質V1野の単純細胞に近いモデルになっている。一例として、かざぐるまフレームレットには、次数があり、次数は3以上の奇数で、次数が大きくなるほど、それだけ多くの方位を検出できるようになる。なお、その分、フィルタの枚数は多くなり、計算時間も増すという性質がある。また、一例として、次数nのかざぐるまフレームレットのフィルタ数は、(n+1)+(n-1)となる。このうち、一つのフィルタが、近似フィルタであり、残りのフィルタが詳細フィルタである。ここで、図2は、次数5のレベル3の最大重複かざぐるまフレームレット・フィルタに次数5のレベル1とレベル2の最大重複かざぐるまフレームレット・近似フィルタを循環相関積して得られるフィルタを示す図である(循環相関積について、例えば、新井仁之著「線形代数 基礎と応用」株式会社日本評論社(2006年)を参照)。

【0053】
このかざぐるまフレームレットは、次数5であるので、たとえば図2に示すように、各レベルについて左側の6×6個のフィルタと、右側の4×4個のフィルタを合わせて、合計で52枚のフィルタの集合からなっている。このうち、図の中央上部の黒い矩形で囲んだ1枚が、レベル1からレベル3までの近似フィルタの循環相関積により得られるフィルタであり、その他の51枚が、レベル3の詳細フィルタにレベル1から2までの近似フィルタを循環相関積して得られるフィルタである。詳細フィルタから作られる上記フィルタの方位性は、近似フィルタのみから作られるフィルタを中心として、およそ風車の回転する向きに並べている。なお、後に詳述するように、各次数のかざぐるまフレームレットによる最大重複多重解像度分解には、レベルがあり、レベル1はもっとも細かい部分(高周波部分)を検出する。図2は、レベル3のかざぐるまフレームレットであり、レベル2、3・・・と大きくなるにつれ、大まかな部分(低周波部分)が検出される。なお、フレームレットファイル106aは、かざぐるまフレームレット等の方位選択性ウェーブレット・フレームを、関数の形式(フレームレット・フィルタの周波数応答関数等)で記憶してもよい。関数の具体例については後述する。

【0054】
なお、上記に限られず、本実施の形態において様々なウェーブレットを用いてもよい。ここで、ウェーブレットは、古典的なウェーブレットや、狭義のウェーブレット等に限られず、広義のウェーブレットをも含む。例えば、ウェーブレットは、有限長波形、もしくは、0から増幅して速やかに0に収束するような振幅を伴う波様の振動であり、一例として、ガボール・フィルタや、カーブレットのようなウェーブレット擬きを含む。また、フレームレットファイル106aは、方位選択性ウェーブレット・フレームのようなフレームに限らず、方位選択性フィルタ・バンク等のフィルタ群や方位性のあるフィルタを記憶してもよい。各方位性のあるフィルタは、一例として、各方位性をもった複数の詳細フィルタであり、例えば、サブバンド信号等の成分がフィルタにより抽出される。

【0055】
また、画像データファイル106bは、画像データを記憶する画像データ記憶手段である。ここで、画像データファイル106bに記憶される画像データは、予め各色成分ごとに色調や階調値等が記述された画像データであってもよく、本実施の形態で扱われる色成分によって記述されていない画像データであってもよい。なお、後者の場合には、後述する色空間変換部102dによって、所望の色空間に変換され、各色成分に分解される。また、画像データファイル106bに記憶される画像データは、入力装置112を介して入力された画像データでもよく、外部システム200等からネットワーク300を介して受信した画像データでもよい。また、画像データは、カラー画像のイメージデータであってもよく、グレースケールのイメージデータであってもよい。なお、かざぐるまフレームレット等の方位選択性ウェーブレット・フレームにより多重解像度分解される前の元の画像(データ)を原画像(データ)と呼び、サブバンド信号に基づき再構成された後の画像(データ)を再構成画像(データ)と呼ぶ。ここで、画像データファイル106bは、目的の原画像の画像データと同一の画像サイズ(画素数)の単位インパルス信号を画像データとして記憶してもよい。なお、画像データファイル106bに記憶された単位インパルス信号は、画像データとして同様にフレームレットファイル106aに記憶されたフィルタ・バンクに入力され、出力された単位インパルス応答は、目的の原画像の画像データを高速計算するために用いられる。なお、画像データは、例えば、ラスタ形式またはベクタ形式の二次元画像データ等である。また、画像は、一例として、デザイン(意匠)、写真、文字等を表す、任意の画像であってもよい。また、画像は、静止画像に限らず、動画像(映像)であってもよい。

【0056】
再び図1に戻り、入出力制御インターフェース部108は、入力装置112や出力装置114の制御を行う。ここで、出力装置114としては、モニタ(家庭用テレビを含む)等の表示装置や、プリンタ等の印刷装置等を用いることができる。また、入力装置112としては、カメラ等の撮像装置、外部記憶媒体に接続される入力装置等の他、キーボード、マウス、およびマイク等を用いることができる。

【0057】
また、図1において、制御部102は、OS(Operating System)等の制御プログラムや、各種の処理手順等を規定したプログラム、および、所要データを格納するための内部メモリを有する。そして、制御部102は、これらのプログラム等により、種々の処理を実行するための情報処理を行う。制御部102は、機能概念的に、分解部102a、再構成部102c、色空間変換部102d、処理画像出力部102e、錯視量数値化部102f、および、画像編集部102gを備える。なお、分解部102aは、更に係数処理部102bを備える。

【0058】
このうち、分解部102aは、画像データ(例えば、画像データの色成分)に対して、フレームレットファイル106aに記憶された、かざぐるまフレームレット等の方位選択性ウェーブレット・フレームによる多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する分解手段である。ここで、「多重解像度分解」は、最大重複多重解像度分解、最大間引き多重解像度分解、および、一部間引き一部重複多重解像度分解を含む(最大重複多重解像度分解について、例えば、新井仁之著「ウェーブレット」共立出版株式会社(2010年)参照)。なお、分解部102aにより多重解像度分解を計算する際に、循環相関積、循環畳み込み積が使われるが、それらは高速フーリエ変換を用いる公知の高速計算方法により計算してもよい。上述のように、かざぐるまフレームレット等の方位選択性ウェーブレット・フレームによる多重解像度分解には、レベルがある。ここで、図3および図4は、かざぐるまフレームレットのレベルによる違いを示すための図であり、図3は、レベル2(高周波数側)の最大重複かざぐるまフレームレット・フィルタにレベル1の最大重複かざぐるまフレームレット・近似フィルタを循環相関積したフィルタを示し、図4は、レベル3(低周波数側)の最大重複フレームレット・フィルタにレベル1とレベル2の最大重複かざぐるまフレームレット・近似フィルタを循環相関積したフィルタを示している。なお、いずれも次数は7であるので、(7+1)+(7-1)=100個のフィルタがある。

【0059】
一例として、分解部102aは、まず、レベル1のかざぐるまフレームレットによる最大重複多重解像度分解により、もっとも細かい部分(高周波部分)を検出し、レベル2,3・・と大きくなるにつれ、大まかな部分(低周波部分)を検出する。

【0060】
かざぐるまフレームレットによる多重解像度分解には、分解フェーズと合成フェーズがある。各フェーズは、近似フィルタと詳細フィルタの配列(アレイ)からなるフィルタ・バンクにより構成されている。分解部102aは、分解フェーズおよび合成フェーズにおける画像処理を実行後、最終的に、原画像データを「フィルタ数×レベル」個の画像信号(すなわち、サブバンド信号)に分解する。

【0061】
例えば、次数7のかざぐるまフレームレットによるレベル5の最大重複多重解像度分解の場合、あるレベルk(k=1から5)のサブバンド信号には、1枚の近似フィルタにより得られる1つの近似部分と、99枚の詳細フィルタにより得られる99個の詳細部分がある。ここで、図5は、次数7、レベルkのかざぐるまフレームレットにおいて、近似部分をaで表し、詳細部分をd(1)~d(99)の記号(番号)で表した図である。なお、記号(番号)の位置は、図3(k=2)または図4(k=3)における各フィルタの位置と対応づけられている。すなわち、aおよびd(1)~d(99)は、図3または図4における対応する位置のフィルタから取得されたサブバンド信号を表している。

【0062】
ここで、分解部102aの係数処理部102bは、多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、係数処理を行う係数処理手段である。例えば、係数処理部102bは、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように係数処理を行ってもよい(以下、「順方向の処理」と呼ぶ場合がある)。例えば、分解詳細係数のエネルギーが大きい場合に、係数処理部102bは、当該分解詳細係数のばらつきを大きくすることで、比較的小さな値はより小さく抑制しながら比較的大きな値はより大きく増強させる。一方、分解詳細係数のエネルギーが小さい場合に、係数処理部102bは、当該分解詳細係数のばらつきを小さくすることで、比較的小さな値を増強しながら比較的大きな値を抑制する。

【0063】
なお、係数処理部102bは、上述のように順方向の処理を行うことに限られず、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値を増強し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値をより小さく抑制するように係数処理を行ってもよい(以下、「逆方向の処理」と呼ぶ場合がある)。例えば、分解詳細係数のエネルギーが大きい場合に、係数処理部102bは、当該分解詳細係数のばらつきを小さくすることで、比較的小さな値を増強しながら比較的大きな値は抑制させる。一方、分解詳細係数のエネルギーが小さい場合に、係数処理部102bは、当該分解詳細係数のばらつきを大きくすることで、比較的小さな値をより小さく抑制しながら比較的大きな値をより大きく増強させる。

【0064】
ここで、大きな画素数の画像の場合には、その画像を適切に分割して、各分割画像に対して本実施形態の処理を行っても良い。

【0065】
また、係数処理部102bは、関数処理等の係数処理および/またはエネルギー計算において、分解詳細係数の値が扱い易くなるように、正規化を行ってもよい。例えば、係数処理部102bは、分解フェーズと合成フェーズの間において、まず、分解詳細係数を絶対値をとって正規化し、正規化された分解詳細係数(「正規化分解詳細係数」と呼ぶ。)の二乗ノルム(あるいは他のノルムでもよい。)をエネルギーとしてもよい。そして、係数処理部102bは、計算したエネルギーに応じて、正規化分解詳細係数に対して係数処理を行い、係数処理された正規化分解詳細係数に対して正規化の逆演算を行うことで、合成フェーズへの入力データとしてもよい。なお、絶対値を用いた場合は、以下の式のように逆演算の際に符号を元に戻す。
x´=sgn(x)z´
(ここで、xは分解詳細係数であり、zは係数処理後の値であり、z´は正規化の逆演算結果の値である。ここで、x≧0ならばsgn(x)=1であり、x<0ならばsgn(x)=-1である。なお、x´は符号を戻した結果の値である。)

【0066】
なお、係数処理部102bは、エネルギーの大小に応じた係数処理を行うために、エネルギー値に閾値を設けて、エネルギー値の範囲ごとに異なる係数処理を行ってもよく、エネルギー値に閾値を設けることなく、エネルギー値に応じてばらつきが連続的に変化するような関数にて演算することで係数処理を行ってもよい。前者の場合、例えば、係数処理部102bは、エネルギー値の範囲ごとに設定した関数(例えば、ロジット関数や、ロジスティック式等)を用いてもよい。後者の場合、例えば、係数処理部102bは、分解詳細係数のエネルギーが大きい場合にはS字曲線に、小さい場合にはN字曲線に、連続的に変化する関数(「SN関数」と呼ぶ。)を用いて、順方向の処理として係数処理を行ってもよい。ここで、SN関数の一例を以下に示す(非特許文献2参照)。なお、式1は、α>1ならばS字曲線となり、α=1ならば直線となり、α<1ならばN字曲線となる。
z=yα/{yα+(1-y)α} ・・・(式1)
(ここで、yは正規化分解詳細係数であり(0≦y≦1)、αは正規化分解詳細係数のエネルギーに基づく指標値であり(0<α)、zは関数処理された正規化分解詳細係数である。)なお、関数は離散化することにより、テーブル化して用いてもよい。

【0067】
ここで、上述した式1において、αを定めたときのαとエネルギーの増大関係が逆になるように定めなおした指標値、たとえばαの逆数、を改めてαとおけば、逆方向の処理のSN関数とすることができる。すなわち、αを上述のようにおきかえれば、係数処理部102bは、逆方向の処理として、分解詳細係数のエネルギーが大きい場合にはN字曲線に、小さい場合にはS字曲線に、連続的に変化するSN関数を用いて、逆方向の係数処理を行うことができる。なお、以下の実施の形態において、順方向の処理を行うための説明を行うことがあるが、エネルギーの大小に応じた係数処理内容の関係を入れ替えれば、同様にして、逆方向の処理を行うための説明として読み替えることができる。

【0068】
なお、係数処理部102bは、一例として、CIELAB色空間におけるL、a、およびbなどのように、色成分ごとに係数処理を行うものであるが、各色成分の値を独立に処理することに限られず、一つの色成分の係数処理を行う場合に、他の色成分の値に基づいて係数処理を補正してもよい。例えば、ヒトの視覚では、大脳皮質に色・輝度細胞があるという脳神経科学的な実験結果(非特許文献5)があるが、この実験結果を元に、色・輝度細胞の役割を推測した数理モデルを考案することにより係数処理部102bは、画像データのaおよび/またはbの色成分について、aおよび/またはbの分解詳細係数とLにおける分解詳細係数から定めたエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、上述のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように補正した係数処理を行ってもよい。また、分解詳細係数の符号の違いによって別個の処理を行うこともできる。

【0069】
また、再構成部102cは、分解部102aにより取得されたサブバンド信号を足し合わせることにより画像を再構成して、再構成画像データを取得する再構成手段である。例えば、再構成部102cは、上述した最大レベルの近似フィルタにより得られた近似部分のサブバンド信号と、すべての詳細フィルタにより得られた詳細部分のサブバンド信号を足し合わせることによって、画像を再構成して再構成画像データを取得する。このとき、かざぐるまフレームレットが完全再構成性を有するので、係数処理部102bによる処理を行わなければ、再構成部102cは、原画像と同じ画像を再現する。換言すれば、再構成部102cは、係数処理部102bによる処理により分解詳細係数が増減されてから、サブバンド信号を足し合わせることによって、原画像に対して自然な画像処理が施された再構成画像データを取得する。

【0070】
ここで、上述した記号(番号)を用いて、完全再構成性について説明する。原画像の入力信号(原信号)をxとすると、次数7のかざぐるまフレームレットによるレベル5の最大重複多重解像度分解の完全再構成性は以下の式で表される。
x=a+(d(1)+・・・+d(99))+・・・+(d(1)+・・・+d(99))

【0071】
ここで、分解部102aにおいて係数処理部102bによる処理を経た詳細部分をd´(1)、・・・、d´(99)とおくと、この場合、再構成画像(信号)は以下の式で表される。
y=a+(d´(1)+・・・+d´(99))+・・・+(d´(1)+・・・+d´(99))

【0072】
このとき、分解部102aにおいて係数処理が行われなければ、d´(1)=d(1)、・・・、d´(99)=d(99)となり、明らかにx=y(原画像と再構成画像が同一)であり、完全再構成となる。

【0073】
また、色空間変換部102dは、色空間の変換や色成分の分解・合成等を行う色空間変換手段である。例えば、色空間変換部102dは、画像データファイル106bに記憶された画像データがカラー画像の場合であって、本実施の形態で用いる色成分によってデータが記述されていない場合、分解部102aによる処理を行う前に、目的の色空間(例えば、CIELAB色空間)に変換する。CIELAB色空間に変換することにより、画像は、L(輝度)、a(赤-緑)、b(黄-青)の三つの色成分に分解される。なお、色空間変換部102dは、CIELAB色空間以外の他の色空間に変換してもよい。CIELAB色空間を使用する利点は、ヒトの網膜からの視覚情報変換に近いという点である。なお、画像データが予め本実施の形態で用いる各色成分ごとに色調や階調値等を記述している場合は、色空間変換部102dは、色空間に関する処理を行わなくてよい。なお、必要ならば色空間変換部102dは、再構成部102cによる画像データ再構成処理において、色成分の合成や、色空間の変換、輝度・色のスケール変換等を行う。

【0074】
また、処理画像出力部102eは、再構成部102cにより再構成された再構成画像データを、出力装置114に出力する。例えば、処理画像出力部102eは、モニタ等の表示装置に再構成画像を表示出力してもよく、プリンタ等の印刷装置に再構成画像を印刷出力して印刷媒体を製造してもよい。印刷対象の媒体としては、例えば、紙、OHPシート等であってもよく、例えば、チラシやうちわ、カード、絵本、年賀状、クリスマスカード、名刺等の形態であってもよい。なお、出力する形態に応じて、処理画像出力部102eは、用途に応じたデザイン変更(例えば、はがきサイズ等に変更)を行ってもよい。また、処理画像出力部102eは、再構成画像データをネットワーク300を介して外部システム200に送信してもよい。

【0075】
また、錯視量数値化部102fは、画像データと再構成画像データ間における、色成分の比または差を算出することにより錯視量を数値化する錯視量数値化手段である。例えば、錯視量数値化部102fは、画像データと再構成画像データ間において、同一のピクセル座標におけるL、a、または、bの値の差(差の絶対値や二乗を含む。)または比(割合、比率、百分率等を含む。)を錯視量として算出してもよい。なお、錯視量数値化部102fは、L、a、または、bの値の差を統合して、これらの差の二乗和の平方根を、総合的な錯視量として算出してもよい。なお、錯視量数値化部102fは、数値化した錯視量を数値のまま出力装置114に出力してもよく、錯視量をグラフ化して出力装置114に出力してもよい。例えば、錯視量数値化部102fは、画像を横切る横断線において、当該横断線上の座標における錯視量をグラフ化して出力装置114に表示してもよい。また、錯視量数値化部102fは、二次元の画像に対して、錯視量を高さとして三次元表示を行ってもよい。

【0076】
また、画像編集部102gは、画像データを編集する画像編集手段である。例えば、画像編集部102gは、画像データファイル106bに記憶された画像データについて、色調や階調値の変更等を行ってもよい。なお、画像編集部102gは、利用者に入力装置112を介して画像の編集を行わせてもよく、ホワイトバランス等の任意のアルゴリズムで、自動的に画像の編集を行ってもよい。手動の例として、画像編集部102gは、編集対象の画像の輝度ごとのピクセル数をプロットしたヒストグラムを出力装置114に表示させ、利用者にヒストグラム上で画像の明るさやコントラストを調整させてもよい。自動の例として、画像編集部102gは、錯視量数値化部102fにより算出された錯視量が所定値以上の同一色領域や、それに隣接する同一色領域において、当該領域に属するピクセル群に対して色を選択的に変更してもよく色補正を行ってもよい。なお、画像編集部102gは、錯視量数値化部102fにより算出された色成分の錯視量が大きい場合は色の変更量を大きくし、錯視量が小さい場合は色の変更量を小さくしてもよい。このように、画像編集部102gは、変更した画像にかかる錯視画像と元の初期画像との差分(錯視量)が小さく(例えば、最小に)なるように繰り返し画像編集を行うことにより、脳内の錯視量分を加味して結果として初期画像のように知覚されるような画像(出力用画像)を取得してもよい。すなわち、このような出力用画像を、プリントアウト、印刷、表示、ペイント等のように出力することにより、それを見た人は、画像編集前の元の初期画像として脳内で知覚することになり、従来のような、職人的な技能に頼った配色の調整が不要になるという効果を奏する。なお、編集された画像データから取得された再構成画像データと未編集の画像データとの間の比または差を錯視量として算出した数値を用いることに限られず、編集された画像データと当該編集された画像データから取得された再構成画像データとの間の比または差を錯視量として算出した数値を用いてもよい。この場合、画像編集部102gは、錯視量が所定の数値となるように繰り返し編集を行うことにより、数値化された錯視量を指標として所望の錯視量となるよう編集し、錯視量が多い画像や錯視量の少ない画像等の任意の錯視量の画像を作成することができるという効果を奏する。

【0077】
この錯視分析装置100は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、ネットワーク300に通信可能に接続されてもよい。図1において、通信制御インターフェース部104は、錯視分析装置100とネットワーク300(またはルータ等の通信装置)との間における通信制御を行う。すなわち、通信制御インターフェース部104は、通信回線等に接続されるルータ等の通信装置(図示せず)に接続されるインターフェースであり、他の端末と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。図1において、ネットワーク300は、錯視分析装置100と外部システム200とを相互に接続する機能を有し、例えば、インターネット等である。

【0078】
図1において、外部システム200は、ネットワーク300を介して、錯視分析装置100と相互に接続され、画像データやかざぐるまフレームレットに関する外部データベースや、コンピュータを錯視分析装置100として機能させるためのプログラムを提供する機能を備えてもよい。ここで、外部システム200は、WEBサーバやASPサーバ等として構成していてもよい。また、外部システム200のハードウェア構成は、一般に市販されるワークステーション、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置およびその付属装置により構成していてもよい。また、外部システム200の各機能は、外部システム200のハードウェア構成中のCPU、ディスク装置、メモリ装置、入力装置、出力装置、通信制御装置等およびそれらを制御するプログラム等により実現される。

【0079】
以上で、本実施の形態における錯視分析装置100の構成の説明を終える。

【0080】
[錯視分析装置100の処理]
次に、このように構成された本実施の形態における本錯視分析装置100の処理の一例について、以下に図6~図39を参照して詳細に説明する。

【0081】
[基本処理]
まず、錯視分析装置100の基本処理について図6~図8を参照して説明する。図6は、本実施の形態における錯視分析装置100の基本処理の一例を示すフローチャートである。

【0082】
まず、分解部102aは、画像データファイル106bに記憶された画像データの色成分に対して、フレームレットファイル106aに記憶されたかざぐるまフレームレットによる最大重複多重解像度分解を行い、サブバンド信号を取得する(ステップSA-1)。なお、分解部102aは、かざぐるまフレームレットに限られず、方位性が水平方向、垂直方向、対角方向からなる双直交ウェーブレットフィルタ・バンクを用いてもよい。また、必要に応じて(例えば、本実施の形態で用いる色成分にて画像データが記述されていなかった場合等)、色空間変換部102dは、カラー画像に対して所望の色空間の変換処理や色成分の分解処理を行ってもよい。一例として、色空間変換部102dは、カラー画像を、CIELAB色空間に変換してもよい。これにより、画像は、L(輝度)、a(赤-緑)、b(黄-青)の三つの色成分に分解される。ここで、図7は、最大重複多重解像度分解の分解フェーズおよび合成フェーズのフィルタ・バンクの一例を示す図である。図中の数字は、レベルを表している。PWは、詳細フィルタであり、次数7の場合、各レベルに99枚存在する。Aは、近似フィルタであり、同じく次数7の場合、各レベルに1枚存在する。なお、図7の例では、最大重複法を用いているが、本実施の形態はこれに限られず、最大間引き法でも他の間引き法を用いてもよい。

【0083】
図7に示すように、まず、分解部102aは、レベル1のかざぐるまフレームレットを用いて、原画像を入力信号として、99枚の詳細フィルタを通過する信号と、1枚の近似フィルタを通過する信号(分解詳細係数dにて信号強度が表現される信号)に分解する。次に、分解部102aは、レベル1の近似フィルタを通過した信号を、レベル2のかざぐるまフレームレットを用いて、99枚の(レベル2の)詳細フィルタを通過する信号(分解詳細係数d)と、1枚の(レベル2の)近似フィルタを通過する信号に分解する。分解部102aは、この処理を、最大レベルk(図示の場合、レベル5)まで繰り返し行い、分解詳細係数d~d、および近似係数aを得る。ここで用いるかざぐるまフレームレットの次数はレベルごとに変えても良い。通常の多重解像度分解では、分解部102aは、分解フェーズで得られた、分解詳細係数d~dからなる信号をそのまま合成フェーズのフィルタ・バンクにかけるが、本実施の形態では、本実施の形態における係数処理を行って、合成フェーズ入力用の分解詳細係数d´~d´を得る。

【0084】
すなわち、図6に示すように、分解部102aの係数処理部102bは、多重解像度分解における分解フェーズと合成フェーズとの間において、分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、当該分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように係数処理を行う(ステップSA-2)。ここで、係数処理部102bは、画像データのaおよび/またはbの色成分について、aおよび/またはbの分解詳細係数とLにおける分解詳細係数から定めたエネルギーが大きければ大きいほど小さな値をより小さく抑制し、上述のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値を増強するように補正した係数処理を行ってもよい。また、係数処理部102bは、関数処理等の係数処理および/またはエネルギー計算において、分解詳細係数の値が扱い易くなるように、正規化を行ってもよい。ここで、図8は、正規化を伴う分解詳細係数の係数処理の一例を示すフローチャートである。

【0085】
図8に示すように、まず、係数処理部102bは、分解フェーズから出力された分解詳細係数xの絶対値を正規化する(ステップSA-21)。例えば、係数処理部102bは、全ての分解詳細係数xが0から1の間の数値に収まるように適切な正規化手法にて分解詳細係数xの正規化を行う。

【0086】
そして、係数処理部102bは、正規化分解詳細係数yに基づいて、分解詳細係数のエネルギーを計算する(ステップSA-22)。例えば、係数処理部102bは、正規化分解詳細係数yの二乗ノルム||y||をエネルギーとしてもよい。なお、エネルギーを関数処理で扱えるように正規化する等の指数調整を行ってもよい。

【0087】
そして、係数処理部102bは、ステップSA-22にて算出したエネルギーに応じて、非線形的に正規化分解詳細係数yの係数処理を行って係数処理結果zを得る(ステップSA-23)。例えば、係数処理部102bは、エネルギーの大小に応じた係数処理を行うために、エネルギー値に閾値を設けて、エネルギー値の範囲ごとに異なる係数処理を行ってもよく、エネルギー値に閾値を設けることなく、エネルギー値に応じてばらつきが連続的に変化するような関数にて演算することで係数処理を行ってもよい。一例として、順方向の処理を行うため、係数処理部102bは、分解詳細係数のエネルギーが大きい場合にはS字曲線に、小さい場合にはN字曲線に、連続的に変化するSN関数を用いて、係数処理を行ってもよい。ここで、以下の式1は、SN関数の一例である(非特許文献2参照)。式1は、α>1ならばS字曲線となり、α=1ならば直線となり、α<1ならばN字曲線となる。なお、エネルギーとパラメータαの対応の決め方は、一つに固定することなく、個人差を反映させて設定してもよく、また、レベルごと、方位ごと、色成分ごと、分解詳細係数の符号ごとに設定してもよい。
z=yα/{yα+(1-y)α} ・・・(式1)
(ここで、yは正規化分解詳細係数であり(0≦y≦1)、αは正規化分解詳細係数のエネルギーに基づく指標値であり(0<α)、zは関数処理された正規化分解詳細係数である。)なお、上記に限られず、逆方向の処理を行うため、係数処理部102bは、分解詳細係数のエネルギーが大きい場合にはN字曲線に、小さい場合にはS字曲線に、連続的に変化するSN関数を用いて、係数処理を行ってもよい。

【0088】
そして、係数処理部102bは、ステップSA-23にて係数処理された正規化分解詳細係数zに対して正規化の逆演算を行うことで、合成フェーズへの入力データx´を取得する(ステップSA-24)。なお、上述のノルムを用いた場合は、以下の式にて逆演算の際に符号を元に戻す。
x´=sgn(x)z´
(ここで、xは分解詳細係数であり、zは係数処理後の値であり、z´は正規化の逆演算結果の値である。ここで、x≧0ならばsgn(x)=1であり、x<0ならばsgn(x)=-1である。なお、x´は符号を戻した結果の値である。)

【0089】
再び図6に戻り、分解部102aは、ステップSA-2にて係数処理された分解詳細係数を入力データとして合成フェーズの処理を行う(ステップSA-3)。すなわち、分解部102aは、分解フェーズにて出力された信号を係数処理した信号を合成フェーズのフィルタにより、最終的に、99×5のサブバンド信号(詳細部分)と、1のサブバンド信号(近似部分)を取得する(図7参照)。

【0090】
そして、再構成部102cは、分解部102aにより取得されたサブバンド信号を足し合わせて画像を再構成する(ステップSA-4)。なお、サブバンド信号を足し合わせた色成分の数値が規定値(例えば、0から255階調の範囲)を超えている場合、再構成部102cは、例えば線形あるいは非線形な方法で規定範囲(例えば0と255の範囲内)に数値を収めてもよく、最低規定値(例えば0)以下の数値は最低規定値とし、最高規定値(例えば255)以上の数値は255に置き換えてもよい(閾値を用いた方法)。この他、必要に応じて(例えばRGBで出力しなければならない等)、色空間変換部102dは、色空間の変換や色成分の合成等の処理を行ってもよい。なお、ステップSA-2において逆方向の処理を行った場合、当該ステップSA-4において、再構成部102cは、再構成画像として錯視加味画像を得ることができるので、以降の処理は行わなくてよい。

【0091】
そして、錯視量数値化部102fは、上述の画像処理を行うまでの元の画像データと、再構成部102cにより生成された再構成画像データとの間における、色成分の比または差を算出することにより錯視量を数値化する(ステップSA-5)。例えば、錯視量数値化部102fは、画像データと再構成画像データ間において、同一のピクセル座標におけるL、a、または、bの値の差(差の絶対値や二乗を含む。)または比(割合、比率、百分率等を含む。)を錯視量として算出してもよい。なお、錯視量数値化部102fは、L、a、または、bの値の差を統合して、これらの差の二乗和の平方根である色差を用いて、総合的な錯視量として算出してもよい。なお、錯視量を数値化した後、錯視量数値化部102fは、錯視量を数値のまま出力装置114に出力してもよく、錯視量をグラフ化して出力装置114に出力してもよい。例えば、錯視量数値化部102fは、画像を横切る横断線において、当該横断線上の座標における錯視量をグラフ化して出力装置114に表示してもよい。また、錯視量数値化部102fは、二次元の画像に対して、錯視量を高さとして三次元表示を行ってもよい。

【0092】
これにて、錯視分析装置100の基本処理の説明を終える。以上の順方向の処理を含む処理によって得られた再構成画像は、原画像に対して本実施の形態による画像処理が施されており、例えば、原画像よりもヒトの知覚に近い画像となるような自然な画像処理が施されている。このような本実施の形態によってこの自然な画像処理を施すことができる原理は以下のように考えられる。すなわち、ヒトの視覚情報処理には高度な処理機能が備わっているが、ときとして錯視を知覚させる。本実施形態のように、ヒトの視覚情報処理に基づいた数理モデルがヒトと同様に錯視を表現できるということは、脳内の視覚情報処理と類似の処理を行っていることの証明になる。したがって、この脳内の視覚情報処理と類似の処理により導出された処理画像と原画像を比較することにより、数値化された錯視量を得ることができる。

【0093】
[係数処理の実施例]
次に、錯視分析装置100の係数処理部102bにより係数処理の実施例を以下に示す。

【0094】
周囲の刺激量が多いと弱い刺激が抑制され、周囲の刺激量が弱いと弱い刺激が強調されるという現象などを数学的に記述するために、パラメータによりエス字状のグラフをもつ関数からエヌ字状のグラフをもつ関数に連続的に変形していく関数を考える。このような特性をもつ関数を知覚関数と名付ける。知覚関数の一つの例として、以下のSN関数を挙げる。
【数1】
JP0005622971B2_000002t.gif

【0095】
ここで、Xを原画像とし、X=(X,X,X)を色空間における表示を表すものとする。例えば、CIELAB色空間を使う場合は、XをL、Xをa、Xをbに関するデータとする。

【0096】
そして、Xμ(μ=1,2,3)をかざぐるまフレームレットで分解する。この実施例では、Xの画素数は512×512ピクセルで、5次のかざぐるまフレームレット((5-1)+(5+1)=52枚)でレベル8の分解の場合について説明する(なお、別の画素数、別のかざぐるまフレームレット等々でも同様の考え方で行うことができる)。

【0097】
このとき、Xμの分解データは、以下の式で表せる(ただしl,p,j,kは整数)。
【数2】
JP0005622971B2_000003t.gif

【0098】
ここで、(xμ[l,1;j,k])0≦j,k≦511は、かざぐるまフレームレットの分解近似係数であり、(xμ[l,p;j,k])0≦j,k≦511(2≦p≦52)は、かざぐるまフレームレットの分解詳細係数を表すものとする。以下、2≦p≦52とする。

【0099】
φμ,l,pを適切な2変数関数として、以下の式とおく(μ=1,2,3)。
【数3】
JP0005622971B2_000004t.gif

【0100】
例えば、以下とする(a1,a2は適切な正規化定数;μ=1,2,3)。
【数4】
JP0005622971B2_000005t.gif
また、以下とする。
【数5】
JP0005622971B2_000006t.gif

【0101】
b1,b2,b3,b4を適宜定める非負の実数とする。これはμや各レベルlごとに変えてもよい。また、かざぐるまフレームレットの分解詳細係数のうち、その方位pによって変えてもよい。また、分解詳細係数の符号ごとに変えてもよい。
【数6】
JP0005622971B2_000007t.gif
【数7】
JP0005622971B2_000008t.gif

【0102】
μ[l,p;j,k]の絶対値に適切な正規化を施して、0と1の間に値をとるようにしたものをyμ,1[l,p;j,k]とおく。また、以下とおく。ただし、ここで、SN関数sを適切な知覚関数でおきかえてもよい。
【数8】
JP0005622971B2_000009t.gif

【0103】
μ,2[l,p;j,k]にxμ[l,p;j,k]の符号関数をかけ、正規化の逆演算を施したものをy′μ[l,p;j,k]とする。

【0104】
y′μ[l,p;j,k]にかざぐるまフレームレット合成フィルタを施して再構成したデータをX′μとおく(μ=1,2,3)。X′=(X′,X′,X′)とおく。

【0105】
X′がXの処理画像である。なお、処理画像の例では、b1,b2,b3,b4を、Lについては各レベルごとに方位成分については全部同じとし、a,bは、各レベルごとに、水平・垂直,対角,その他でそれぞれ設定している。

【0106】
ここで、上記においては、順方向の処理を行うための関数について説明したが、エネルギーの大小に応じた係数処理内容を入れ替えれば、逆方向の処理を行うための関数を作成することができる。より具体的には、上記のb1,b2,b3,b4を適宜定め、左辺αμ[l,p]の等式の右辺を-1乗したものを改めてαμ[l,p]とおきなおすことにより、逆方向の処理の係数処理の実施例とすることができる。

【0107】
なお、より人の視知覚に近づけるという目的のために、xμ[l,p;j,k]の符号の違いによって、処理方法を変えてもよい。以下に、分解詳細係数の符号の違いによって別個の処理を行う処理の例について説明する。

【0108】
上記と同様に、Xを原画像とし、Xの画素数は512×512ピクセルとする(画素数はこれに限らない)。また、Xは、L、a、bからなるので、それぞれ、X、X、Xとおく。

【0109】
各Xμ(μ=1,2,3)をかざぐるまフレームレットで分解する。レベル8まで分解するが、この例では、大脳皮質V1野の単純細胞の方位選択性の特性を考慮して、レベルごとにかざぐるまフレームレットの次数を変える。

【0110】
すなわち、レベル1からレベル3までは7次のかざぐるまフレームレットを使用し、レベル4からレベル6までは5次のかざぐるまフレームレットを使用し、レベル7と8は3次のかざぐるまフレームレットを使用する。nをレベルlで使ったかざぐるまフレームレットのフィルタ数とすると、この例では以下となる。
=n=n=(7-1)+(7+1)=100
=n=n=(5-1)+(5+1)=52
=n=(3-1)+(3+1)=20

【0111】
上記のかざぐるまフレームレットによるレベル8までの分解係数を以下とおく。
【数9】
JP0005622971B2_000010t.gif

【0112】
つづいて、xμ[l,p;j,k]の符号の違いによって、処理方法を変える。まず、s(l,p)をフィルタのタイプ(偶型、奇型、混合型)により、+1か-1の値を割り当てる。例えば、l,pに対応するフィルタの形が正の向きの偶型ならば+1を、負の向きの偶型ならば-1を、奇型,混合型ならば+1を割り当てる。以下とする。
【数10】
JP0005622971B2_000011t.gif
【数11】
JP0005622971B2_000012t.gif

【0113】
ただし、ここで、以下であって、a11,・・・,a32は適切な正規化定数とする。
【数12】
JP0005622971B2_000013t.gif

【0114】
【数13】
JP0005622971B2_000014t.gif
【数14】
JP0005622971B2_000015t.gif

【0115】
上記とする。ただし、ここで、b1,i、b2,i、b3,iは実験的に定めることのできる定数である。次に非線形処理をするため以下とする。
【数15】
JP0005622971B2_000016t.gif

【0116】
【数16】
JP0005622971B2_000017t.gif

【0117】
上記y′μ[l,p;j,k]にかざぐるまフレームレットの合成フィルタを施して再構成した画像のデータをX′μとおく(μ=1,2,3)。そして、X′=(X′,X′,X′)とおく。このX′がXの処理画像である。

【0118】
以上で、錯視分析装置100の具体化処理の説明を終える。

【0119】
[色の対比錯視におけるシミュレーション]
本実施の形態にて用いる数理モデルが、ヒトの視覚情報処理に近いものであるかを確かめるために、色の対比錯視画像を原画像として、上述した実施の形態による処理を実行した。すなわち、数理モデルがヒトの視覚情報処理に近いものであれば、数理モデルを実装した計算機も錯視を算出するので、本実施の形態にて実際にヒトの錯視をシミュレーションできるかを確かめた。

【0120】
図9は、色の対比錯視画像の一例を示す図である。図9の左図(原画像A)と右図(原画像B)では、内側の四角部分の輝度や明度や色彩は全く同じである。しかしながら、周囲の色の配置によって、ヒトの視覚情報処理としては違った色に見える錯覚を生じる。そこで、本実施の形態の錯視分析装置100により原画像Aと原画像Bに対しそれぞれ画像処理を行った。図10は、原画像の内側四角部分(原画像AとBで共通)と、原画像Aの画像処理結果である処理画像Aの内側四角部分と、原画像Bの画像処理結果である処理画像Bの内側四角部分とを示す図である。

【0121】
図10に示すように、本実施の形態の錯視分析装置100による画像処理を行った結果、原画像A,Bに対するヒトの見え方(錯視)と同じように、原画像Aに対応する処理画像Aの内側四角部分は、実際より鮮やかに表現され、原画像Bに対応する処理画像Bの内側四角部分では、実際よりくすんで表現された。したがって、本実施の形態の錯視分析装置100による画像処理は、ヒトの視覚情報処理に近いものといえる。したがって、図示のごとく、原画像と処理画像の色成分値の差分を算出すれば錯視量を定量化できることが確認された。

【0122】
また、図11は、色の対比錯視画像の他の例を示す図である。図11の左図(原画像C)と右図(原画像D)では、上記と同様に、内側の四角部分の輝度や明度や色彩は全く同じである。図12は、原画像の内側四角部分(原画像CとDで共通)と、原画像Cの画像処理結果である処理画像Cの内側四角部分と、原画像Dの画像処理結果である処理画像Dの内側四角部分とを示す図である。

【0123】
図12に示すように、本実施の形態の錯視分析装置100による画像処理を行った結果、原画像C,Dに対するヒトの見え方(錯視)と同じように、原画像Cに対応する処理画像Cの内側四角部分は、実際より暗く表現され、原画像Dに対応する処理画像Dの内側四角部分では、実際より明るく表現された。したがって、図示のごとく、原画像と処理画像の色成分値の差分を算出すれば錯視量を定量化できることが確認された。

【0124】
また、図13は、色の対比錯視画像の他の例を示す図である。図13の左図(原画像E)と右図(原画像F)では、上記と同様に、内側の四角部分の輝度や明度や色彩は全く同じである。図14は、原画像の内側四角部分(原画像EとFで共通)と、原画像Eの画像処理結果である処理画像Eの内側四角部分と、原画像Fの画像処理結果である処理画像Fの内側四角部分とを示す図である。

【0125】
図14に示すように、本実施の形態の錯視分析装置100による画像処理を行った結果、原画像E,Fに対するヒトの見え方(錯視)と同じように、原画像Eに対応する処理画像Eの内側四角部分は、実際より暗く表現され、原画像Fに対応する処理画像Fの内側四角部分では、実際より明るく表現された。この例は、aおよびbの処理においてLの値も加味した処理を行った効果が顕著に表れた例である。したがって、図示のごとく、原画像と処理画像の色成分値の差分を算出すれば錯視量を定量化できることが確認された。

【0126】
以上の結果、本実施の形態の錯視分析装置100による画像処理は、ヒトの視覚情報処理に極めて近いものであることが確かめられた。したがって、ヒトの視覚情報処理に近い数理モデルを用いた本実施の形態による画像処理を行うことによって、ヒトの視覚に近い情報処理を原画像に施して、ヒトが知覚している自然な処理画像を提供することができる。したがって、つぎに、原画像と、この脳内における知覚画像に近い処理画像との差分を算出して、錯視量の定量化を行った。ここで、図15は、原画像と処理画像における内側四角部分内の中心座標における、Lの値、aの値、および、bの値の差分、ならびに、それらの合成スコアを錯視量としてグラフ化した図である。なお、縦軸は、数値化した錯視量であり、横軸は、9種類の原画像の番号:1~9を示している。

【0127】
ここで、図16~図18は、9種類の原画像と、原画像の中心断面におけるL,a,bのグラフ、原画像に対応する処理画像と、処理画像の中心断面におけるL,a,bのグラフを示す図である。なお、原画像のグラフに示すように、原画像の内側四角部分は、9種類の画像において共通であり、外側の輝度(Lの値)のみを変更している。

【0128】
これら9種類の原画像に基づく処理画像の中心座標における値の差を錯視量としてグラフ化したものが図15である。図15に示すように、番号5において、輝度(Lの値)の錯視量が最小になるのに対して、aの錯視量は最大になっている。この結果は、「色対比は、明るさ対比が最小のときに最大となる」というキルシュマンの第三法則に合致するものであり、本実施の形態により画像処理が、脳内の視覚情報処理と類似の処理であることの証明にもなる。

【0129】
図19は、内側の小四角形と外側の大四角形の輝度が均一な原画像と、内側の小四角形と外側の大四角形の輝度が大きく異なる原画像について対比した図である。図19に示すように、上述のキルシュマンの法則の通り、内側小四角形は、両原画像において共通であるにもかかわらず、輝度が均一な場合の方が人の目には赤っぽく見える。この色の対比錯視を反映するように、本実施の形態により得られる処理画像の内側小四角形を取り出しても、輝度が均一な場合の方が、赤みが増してピンク色になっている。なお、「色対比は、明るさ対比が最小のときに最大となる」という上記キルシュマンの法則について、明るさが均一なときよりも、少し違いがある方が錯視が最大になるのではないか、という反論もある。

【0130】
そこで、図15に示すように、原画像と処理画像間におけるL,a,bの値の差の二乗和の平方根である色差を、これらの色成分の錯視量の合成スコアとして算出した。その結果、図示のように、明るさが均一な番号5のときよりも、少し明るさに違いがある番号6の場合の方が総合的な錯視量は最大になることが分かった。したがって、aの値による色の錯視のみならず、Lの値による輝度の錯視も加味すれば、キルシュマンの法則に対する上記反論の内容にも合致することが確かめられた。

【0131】
[色の対比錯視の実施例]
ここで、より具体的な実施例として、色の対比錯視における錯視量の定量化の実施例について説明する。本実施例では、本実施の形態により、ある色が色の対比錯視により、どのように見えるかを調べた。

【0132】
ここで、図20は、本実施例で用いる基本図形である。本実施例では、図20の形状を持つ図形を扱った。なお、これに限られず、基本図形は、図20以外のものでもよく、目的に応じて作成してもよい。

【0133】
本実施例において、図20の黒で示されている領域につける色を「背景色」と呼ぶ。また、本実施例において、中心の小四角形部分につける色を「検査色」と呼ぶ。また、背景色により小四角形の中心の色に対して起こる錯視を本発明により計算して導き出した色を「錯視色」と呼ぶ。

【0134】
ここで、図21は、本実施例で用いた検査色を示す図である。本実施例では、検査色として図21の色を用いて、この検査色が色の対比錯視の影響でどのように見えるかを調べた。なお、検査色は任意であり、検査色を選ぶ際は、数値での入力、カラーピッカーの利用、測色計の利用などのいずれの方法で選択してもよい。

【0135】
本実施例では、図21の検査色を配色した基本図形において、背景色を少しずつ変化させ、それぞれを本実施の形態の順方向の処理を含む方法で処理した。そして、その中から錯視量が比較的多く、また錯視色の傾向が異なるものをいくつか選んだ。

【0136】
図22は、処理結果をもとに選んだ背景色をもつ基本図形の例を示す図である。また、図23は、図22の基本図形に対し、実施の形態の順方向の処理を含む方法で処理し、導き出された錯視色を配置した図である。すなわち、図23の各小四角形は、処理前の検査色ではなく、処理画像の中心の色つまり錯視色で小四角形を塗りつぶしたものである。なお、図23の矢印にて、錯視色が検査色に対してどのような傾向の色であるかを記している。

【0137】
ここで、図22中央(タイトル「色の対比錯視」を図の上として、上から2段目、左から5番目)の背景色は検査色と同じ色であるので一様な色になっている。よって錯視は起きないので、対応する図23の中央の色も検査色のままである。図23において、錯視量を比較するときの基準にするとわかりやすい。

【0138】
なお、図23では、錯視色にさらに錯視が起こることを軽減するため、各小四角形の背景を、ランダムなカラードットにしてある。しかし、どのような背景を用いても、錯視色を表示する際、その背景によりさらに錯視が起きていることに注意する必要がある。

【0139】
係数処理結果の表示方法は、図22や図23の方法以外にも、例えば連続的な変化による表示、数値による表示、グラフによる表示など、使用目的に合わせて変えることができる。

【0140】
ここで、上述の実施例においては、基本図形のそれぞれを本実施形態による方法で、その都度処理を行ってもよいが、計算を高速化するため、あらかじめ計算した処理結果をテーブル化して用いた。より具体的には、基本図形の検査色と背景色の差を一定の間隔で変化させたものをそれぞれ処理し、検査色と背景色の差、検査色と錯視色の差を色成分ごとにテーブルとして保存しておき、検査色と錯視色の色差もテーブルとして保存した。

【0141】
これにより、検査色を変えても、上記のテーブルから、背景色と対応する錯視量を高速に導き出すことができる。こういったことが可能である理由は二つある。一つは、本実施例で用いているかざぐるまフレームレットは、画像を平均(近似部分)と変化(詳細部分)に分解し、本実施例では変化にのみ非線形処理を加えているからである。もう一つの理由は、本実施例ではCIELAB色空間を用いているからである。色空間内で同じだけ変化した場合、知覚される変化も同じになるような色空間が本実施例に適している。なお、上記のテーブルは基本図形ごとに計算する必要がある。

【0142】
このように上述のテーブル化の方法は、高速な計算が可能で、錯視色の傾向などを見るのに適している。一方、その都度計算する方法は、複雑な図形の場合や画像全体の錯視の様子を知りたい場合に適している。なお、本実施例では、検査色を指定したが、同様の方法で背景色を指定して行うこともできる。

【0143】
この実施例によって、印刷等において色の対比錯視を利用した効果的な色の組み合わせを見つけることに役立ち、産業上有用であることが確かめられた。

【0144】
[風景写真における実施例]
上述した例では、配色した画像を用いる場合について説明したが、これに限られず、人物や風景を撮影した写真について錯視量を数値化することも可能である。ここで、図24は、原画像と、本実施の形態による処理画像を対比して示す図である。

【0145】
図24に示すように、本実施の形態によれば、ヒトの初期視覚情報処理に類似の処理にて脳内の知覚画像に近い処理画像を得ることができる。ここで、図25、図26、および、図27は、図24の各写真(512×512画素)において、左から400画素目の列のL,a,bの値をそれぞれ示すグラフである。横軸は、左から400画素目の列において上から行数を表しており、縦軸は、各色成分(L,a,またはb)の値を表している。青色は、原画像の各点の値を表したグラフを示しており、緑色は、本実施の形態による処理画像の各点の値を表したグラフを示している。

【0146】
すなわち、図25~図27において、本実施の形態によれば、一例として、原画像のy軸の値と、処理画像のy軸の値との差分が錯視量として算出される。図示のように、Lでは激しい変動のある近景(横軸の400~500付近)については画像処理による影響は小さく、変化がなだらかな遠景(横軸の0~300付近)について画像処理による影響(錯視量)が大きくなっている。さらに高周波部分だけでなく、低周波部分についても処理が施されている。そのため、ヒトの初期視覚情報処理に近い自然な画像が得られている。このように、原画像と処理画像の差分をとることにより風景写真等においても錯視量を得ることができる。

【0147】
[フィッティング処理]
つづいて、本実施の形態の錯視分析装置100におけるフィッティング処理について図28を参照して以下に説明する。このフィッティング処理では、任意の画像(「初期画像」と呼ぶ。)について、ヒト脳内において初期画像と知覚されるような出力用画像を得ることを目的とする。すなわち、従来、工業デザイナー等の配色を施す者は、本人が意図した初期画像の通りに第三者から見えるわけではないと気付いても、職人的に経験上習得した技能に頼って配色を調整するしかなかったが、本フィッティング処理では、錯視量を指標として画像編集を行うことにより、初期画像と知覚されるような出力用画像を取得することを目的とする。ここで、図28は、錯視分析装置100におけるフィッティング処理の一例を示すフローチャートである。

【0148】
図28に示すように、画像編集部102gは、所望の初期画像を、テスト画像としてデータ入力する(ステップSA-0)。なお、初期画像データは、任意の画像データであるが、一例として、利用者が任意のグラフィックソフトウェア等を用いて作成した画像データであってもよく、デジタルカメラ等の入力装置112を介して撮像された画像データであってもよい。

【0149】
そして、錯視分析装置100は、上述したステップSA-1~SA-4の処理を行い、テスト画像に対して多重解像度分解を行い再構成した錯視画像を生成する(ステップSA-1~SA-4)。

【0150】
そして、錯視量数値化部102fは、初期画像データと、生成された錯視画像データ(再構成画像データ)との間における、色成分の差分を錯視量として算出する(ステップSA-5´)。例えば、錯視量数値化部102fは、画像データと再構成画像データ間において、同一のピクセル座標におけるL,a,bそれぞれの値の差を錯視量として算出する。そして、錯視量数値化部102fは、二次元のテスト画像に対して、各ピクセル座標における錯視量を高さとして三次元表示を行うことにより、どの箇所でどの程度の錯視が起きているかを視覚的に明らかにしてもよい。

【0151】
そして、画像編集部102gは、テスト画像データに修正が必要か否かを判定する(ステップSA-6)。例えば、画像編集部102gは、ある座標において所定の閾値以上の錯視量がある場合に、修正が必要であると判定してもよい。また、画像編集部102gは、「テスト画像の修正を行いますか?」との表示とともに「Yes」/「No」ボタンを表示し、利用者により入力装置112を介して「Yes」ボタンがクリック等された場合に、修正が必要と判定してもよい。

【0152】
修正が必要と判定した場合(ステップSA-6,Yes)、処理をステップSA-0に戻し、画像編集部102gは、テスト画像に編集を施した上で、新たなテスト画像として再入力する(ステップSA-0)。例えば、画像編集部102gは、図19にて上述した画像番号5のように、錯視により赤っぽく見える小領域がある場合、赤みが中和されるように当該小領域における補色の階調値を上げてもよく、明るさ対比が起きるように当該小領域の周辺領域との輝度差を大きくしてもよい。このように、画像編集部102gは、錯視量数値化部102fにより算出された錯視量が所定値以上の同一色領域や、それに隣接する同一色領域において、当該領域に属するピクセル群に対して色や輝度を選択的に変更してもよく色補正を行ってもよい。なお、画像編集部102gは、このようなアルゴリズムを自動で行うことなく、利用者に入力装置112を介して、テスト画像のヒストグラム上で画像の明るさやコントラストを調整させてもよい。なお、画像編集部102gは、公知の最適化手法(フィッティング手法)を用いてランダムにテスト画像に変更を加えてもよい。また、画像編集部102gは、シミュレーティド・アニーリング法等を用いて、錯視量数値化部102fにより算出された色成分の錯視量が大きい場合は変更量を大きくし、錯視量が小さい場合は変更量を小さくしてもよい。

【0153】
そして、錯視分析装置100は、画像編集部102gにより再入力されたテスト画像について、上述したステップSA-1~SA-6の処理を繰り返す。なお、繰り返し処理においても、錯視量数値化部102fは、(再入力されたテスト画像ではなく)初期画像データと、再入力されたテスト画像から生成された錯視画像データとの間における、色成分の差分を算出する(ステップSA-5´)。

【0154】
以上のように、錯視分析装置100は、繰り返し処理に従って、色成分の差分が最小となるようにテスト画像を修正していく。そして、錯視量が所定の閾値未満になった場合等のように、テスト画像データに修正が必要なしと判定された場合(ステップSA-6,No)、錯視分析装置100は、最終的に得られたテスト画像を出力用画像として取得して、フィッティング処理を終える。

【0155】
得られた出力用画像を、プリントアウトや印刷、表示、ペイント等のように出力することにより、その出力用画像を見た人は、脳内で初期画像に近い画像として知覚することになる。このように、本実施の形態によれば、テスト画像による錯視画像と、元の初期画像との差分が最小になるように繰り返し画像編集を行うので、脳内の錯視量分をも加味して初期画像として知覚されるような出力用画像を得ることができ、従来のような、職人的な技能に頼った配色の調整が不要になる。

【0156】
[逆方向の処理]
以下、逆方向の処理の一例について詳細に説明する。上述の実施の形態では、主に、錯視の定量化を行うために、実際の画像からヒトが知覚する画像すなわち錯視の起きた画像の算出(順方向の処理)について説明した。順方向の処理は、脳の数理モデルと同じ方向の処理である。

【0157】
一方、ヒトが画像を見て得た知覚から実際の画像を算出する処理を、ここでは逆方向の処理と呼ぶ。ヒトは錯視を起こすため、本来知覚させようと意図した色ではない色を知覚してしまう。しかし、逆方向の処理を用いれば、意図した色を知覚させるためには、どのような色の画像を見せればよいかを知ることができる。

【0158】
なお、本実施形態での逆方向の処理は、順方向の処理の数学的な意味での完全な逆変換ではない。言い換えれば、順方向の処理の出力画像に対して逆方向の処理を行っても、近似的には元に近くても厳密な意味では元には戻らない。その理由の一つは、本実施形態で用いる方位選択性ウェーブレット・フレームや方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解にある。例えば、かざぐるまフレームレットによる最大重複多重解像度分解では、分解フェーズにおけるサブバンド信号に非線形処理を加えたものと、その合成フェーズを経た出力画像を再度分解した分解フェーズにおけるサブバンド信号は一般には一致しない。他の方位選択性ウェーブレット・フレームや方位選択性フィルタ・バンクによる多重解像度分解でも特別な場合を除いて同様である(このことについては例えば、新井仁之著「線形代数 基礎と応用」株式会社日本評論社(2006年)を参照)。

【0159】
逆方向の処理では、分解フェーズから出力される分解詳細係数に対して、分解詳細係数のエネルギーが大きければ大きいほど小さな値を増強し、当該分解詳細係数のエネルギーが小さければ小さいほど小さな値をより小さく抑制するように係数処理を行う。例えば、SN関数を用いる場合、順方向の処理の場合とSN関数の指数を逆数におきかえることで上記の係数処理を行うことができる。例えば、上述した[係数処理の実施例]において、上記のb1,b2,b3,b4を適宜定め、左辺αμ[l,p]の等式の右辺を-1乗したものを改めてαμ[l,p]とおきなおすことにより、逆方向の処理用の関数を得ることができる。

【0160】
図29は、本実施例で用いた原画像であり、図30は、中央の小四角形部分を抜き出した図である。図29の中央の小四角形部分は、図30に示すように灰色に配色している。しかし、色の対比錯視により、ピンク色がかって見える。つまり、灰色の小四角形を知覚してもらおうと図29を提示しても、見た人は灰色だとは知覚しない。

【0161】
そこで、図29の原画像に対して、逆方向の処理を施した。図31は、逆方向の処理を行って再構成画像として得られた錯視加味画像であり、図32は、中央の小四角形部分を抜き出した図である。図31に示すように、小四角形は灰色に見える。すなわち、錯視量を加味して、図30で知覚させようと意図したとおりの色に見えていることが確かめられた。なお、図31の小四角形の実際の色は、図32に示すように灰色に近い緑色である。このように、逆方向の処理によれば、人が見たときの錯視を打ち消すように意図したとおりの色と知覚されるように配色することが可能であることが確かめられた。

【0162】
ここで、図30と図31の小四角形部分の色を比べると、図30の方が暗く見えることがわかる。これは、図30では背景が白色であることにより、ここでも色の対比錯視が起きているからである。

【0163】
そこで、続いて、図33に示すように、図29の外側の領域を白色に置き換えた画像を原画像として用意した。そして、図33の原画像に対して、同様に逆方向の処理を施した。図34は、逆方向の処理を行って再構成画像として得られた錯視加味画像を示す図である(図33および図34において枠線は画像に含まれない)。

【0164】
図33に対して逆方向の処理を施した図34は、図30で本来知覚させたいと意図した色に見える画像であることが確かめられた。図31と図34の小四角形は同じ色に見えることがわかる。しかし、実際には、図32と図34を比べてわかるように異なった色である。

【0165】
以上のように、本実施例により、原画像のとおりヒトの脳内で知覚されるような錯視加味画像を得ることができることが確かめられた。これにより、任意の画像について、初期視覚情報処理に主要因があると考えらえる明暗に関する錯視および色の対比錯視に関して、脳内の錯視量分を加味して、その画像のとおりに知覚されるような出力用画像を取得することが可能となることがわかった。

【0166】
ここで、他の実施例として、錯視画像に対して、逆方向の処理を施して、錯視量が軽減したように知覚させる画像を生成した例について説明する。図35は、シュヴルール錯視図形を示す図である。

【0167】
図35のシュヴルール錯視図形では、各帯の色は一定であるが、例えば中央の帯より左側にある帯では、帯の左側から右側にかけて、暗から明のグラデーションがあるように見える。特に、それらの帯の右の縁の近傍は明るく光っているかのようにも見える。このように、シュヴルール錯視では、本来はないグラデーションが知覚される。

【0168】
そこで、図35のシュヴルール錯視図形に対し、本実施の形態による逆方向の処理を施した。図36は、シュヴルール錯視図形に対し逆方向の処理を施した錯視加味画像を示す図である。図36に示すように、シュヴルール錯視がかなり抑制されており、グラデーションは殆ど知覚されない。ここで、図37は、図35のシュヴルール錯視図形の原画像と図36の錯視加味画像の横断面の輝度(CIELABのL)のグラフである。なお、破線は、原画像の輝度を示し、実線は、錯視加味画像の輝度を示している。

【0169】
図37に示すように、図35の原画像では、各帯の輝度は一定であり、横断面のグラフは階段状となっているが、逆方向の処理を施した錯視加味画像では、角のとれたなだらかな変動となっている。これは、錯視加味画像では、人の脳内で付加される錯視量を予め見積もって算出しているからであり、実際の人の脳内では、図36に示したように、錯視量が付加されて元の階段状に近い、すなわちグラデーションの殆どない輝度で知覚されることとなる。

【0170】
このように、本実施例により、錯視量が比較的大きな錯視図形に対しても逆方向の処理を施すことによって得られた錯視加味画像では、本来の原画像に近い輝度や色調で知覚できることが確かめられた。

【0171】
したがって、このような錯視加味画像を出力用画像として、プリントアウト、印刷、表示、ペイント等のように出力することにより、それを見た人は、元の画像のまま脳内で知覚することになり、従来のような、職人的な技能に頼った配色の調整が、コンピュータ等を用いて自動的に得られることがわかった。

【0172】
[かざぐるまフレームレット]
本実施の形態で、例として用いているかざぐるまフレームレットは、上述したように公知の単純かざぐるまフレームレットあるいはかざぐるまウェーブレット・フレームなどの方位選択性ウェーブレット・フレーム、或いは方位選択性をもつフィルタ・バンクでもよい。ここで、かざぐるまフレームレットについて以下に説明する。

【0173】
次数をn≧3,奇数として、A=(Ak,l):(n+1)×(n+1)対称行列で、s=0,1・・・,[n/2],t=s,・・・,[n/2]に対して、As,t=An-s,t=As,n-t=An-s,n-t=sを満たす行列をみつける。ただし[]はガウス記号を表す。

【0174】
n=7の場合、条件を満たす行列は以下である。
【数17】
JP0005622971B2_000018t.gif

【0175】
B=(Bk,l):(n+1)×(n+1)行列とすると、以下の条件(P)を満たす行列である。
【数18】
JP0005622971B2_000019t.gif
【数19】
JP0005622971B2_000020t.gif

【0176】
【数20】
JP0005622971B2_000021t.gif
【数21】
JP0005622971B2_000022t.gif
ここで、Mは、方形格子、五の目格子、あるいは六角格子のサンプリング行列である。

【0177】
【数22】
JP0005622971B2_000023t.gif
【数23】
JP0005622971B2_000024t.gif
【数24】
JP0005622971B2_000025t.gif

【0178】
補題2(H.&S.Arai,2008) Pが方形格子,五の目格子,六角格子に関するフレームレット・フィルタであるための必要十分条件は、B=(Bk,l)が以下の条件をみたすことである。
【数25】
JP0005622971B2_000026t.gif

【0179】
<上記条件を満たすB=(Bk,l)の求め方>
{(k,l):k=0,1,・・・,n,l=s,・・・,n,}を次のように順序付ける。
【数26】
JP0005622971B2_000027t.gif

【0180】
μ=(k,l),ν=(k´,l´)
【数27】
JP0005622971B2_000028t.gif
【数28】
JP0005622971B2_000029t.gif
【数29】
JP0005622971B2_000030t.gif

【0181】
定理3(H.&S.Arai,2008)以上で得たB=(Bk,l)は補題2を満たす。したがって、Pは方形格子,五の目格子,六角格子に関するフレームレット・フィルタになっている。Pを、次数nのかざぐるまフレームレット(pinwheel framelet of degree n)とよぶ。図38は、レベル2における最大重複かざぐるまフレームレット・フィルタ(maximal overlap pinwheel framelet filters at level 2)にレベル1の近似フィルタを循環相関積して得たフィルタを示す図である。また、図39は、テスト画像に対し、かざぐるまフレームレットによりレベル2の最大重複多重解像度分解(2nd stage of maximal overlap MRA decomposition by pinwheel framelet)を行った結果の各サブバンド信号を示す図である。

【0182】
以上で、本実施の形態の説明を終える。このように、本実施の形態によれば、任意の画像について発生しうる錯視量を定量化あるいは錯視量を加味した画像を生成することができる、錯視の分析装置、錯視加味画像生成装置、錯視の分析方法、錯視加味画像生成方法、および、プログラム、並びに、記録媒体を提供することができる。特に、色の対比錯視および錯視加味画像は、製品等の色の見え方に関わることであるので、色彩の施された製品等を製造・販売等する産業(印刷、デザイン、映像、塗装等の産業)において極めて有用である。

【0183】
[他の実施の形態]
さて、これまで本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてよいものである。

【0184】
例えば、錯視分析装置100がスタンドアローンの形態で処理を行う場合を一例に説明したが、錯視分析装置100は、クライアント端末(錯視分析装置100とは別筐体)からの要求に応じて処理を行い、その処理結果を当該クライアント端末に返却するようにしてもよい。例えば、錯視分析装置100は、ASPサーバとして構成され、ユーザ端末からネットワーク300を介して送信された原画像データを受信し、この原画像データに基づいて加工した処理画像の再構成画像データを、ユーザ端末に返信してもよい。

【0185】
また、実施の形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。

【0186】
このほか、上記文献中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。

【0187】
また、錯視分析装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。

【0188】
例えば、錯視分析装置100の各装置が備える処理機能、特に制御部102にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPU(Central Processing Unit)および当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。なお、プログラムは、後述する、コンピュータに本発明に係る方法を実行させるためのプログラム化された命令を含む、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて錯視分析装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部106などには、OS(Operating System)として協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。

【0189】
また、このコンピュータプログラムは、錯視分析装置100に対して任意のネットワーク300を介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。

【0190】
また、本発明に係るプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USBメモリ、SDカード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD-ROM、MO、DVD、および、Blu-ray Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。

【0191】
また、「プログラム」とは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OS(Operating System)に代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。

【0192】
記憶部106に格納される各種のデータベース等(フレームレットファイル106a、画像データファイル106b)は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。

【0193】
また、錯視分析装置100は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、該情報処理装置に任意の周辺装置を接続して構成してもよい。また、錯視分析装置100は、該情報処理装置に本発明の方法を実現させるソフトウェア(プログラム、データ等を含む)を実装することにより実現してもよい。

【0194】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じて、または、機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施の形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施の形態を選択的に実施してもよい。
【符号の説明】
【0195】
100 錯視分析装置
102 制御部
102a 分解部
102b 係数処理部
102c 再構成部
102d 色空間変換部
102e 処理画像出力部
102f 錯視量数値化部
102g 画像編集部
104 通信制御インターフェース部
106 記憶部
106a フレームレットファイル
106b 画像データファイル
108 入出力制御インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 外部システム
300 ネットワーク
図面
【図1】
0
【図5】
1
【図6】
2
【図7】
3
【図8】
4
【図28】
5
【図37】
6
【図2】
7
【図3】
8
【図4】
9
【図9】
10
【図10】
11
【図11】
12
【図12】
13
【図13】
14
【図14】
15
【図15】
16
【図16】
17
【図17】
18
【図18】
19
【図19】
20
【図20】
21
【図21】
22
【図22】
23
【図23】
24
【図24】
25
【図25】
26
【図26】
27
【図27】
28
【図29】
29
【図30】
30
【図31】
31
【図32】
32
【図33】
33
【図34】
34
【図35】
35
【図36】
36
【図38】
37
【図39】
38