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明細書 :直接電子移動型酵素電極を用いた免疫学的測定法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-130136 (P2014-130136A)
公開日 平成26年7月10日(2014.7.10)
発明の名称または考案の名称 直接電子移動型酵素電極を用いた免疫学的測定法
国際特許分類 G01N  27/416       (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
G01N  27/327       (2006.01)
C12Q   1/00        (2006.01)
C12Q   1/32        (2006.01)
FI G01N 27/46 336B
G01N 33/543 501A
G01N 27/30 357
G01N 27/46 336G
C12Q 1/00 B
C12Q 1/32
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 7
出願番号 特願2013-247182 (P2013-247182)
出願日 平成25年11月29日(2013.11.29)
優先権出願番号 2012261931
優先日 平成24年11月30日(2012.11.30)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】吉宗 一晃
【氏名】神野 英毅
【氏名】小森谷 友絵
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
【識別番号】100077562、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 登志雄
【識別番号】100096736、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 俊夫
【識別番号】100117156、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 正樹
【識別番号】100111028、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 博人
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
Fターム 4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ96
4B063QR04
4B063QR82
4B063QS03
4B063QS33
4B063QS36
4B063QS39
4B063QX04
要約 【課題】標識する酵素の性質に左右されずに簡便な操作で、低濃度から高濃度までの被検物質を高感度に定量できる免疫学的測定法の提供。
【解決手段】電極上に試料中の被検物質を固定化し、固定化された被検物質に、直接または間接的に、ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体または抗原を反応させ、次いで電圧を印加し、発生する電流を測定することを特徴とする、試料中の被検物質の免疫学的測定法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
電極上に試料中の被検物質を固定化し、固定化された被検物質に、直接または間接的に、ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体または抗原を反応させ、次いで電圧を印加し、発生する電流を測定することを特徴とする、試料中の被検物質の免疫学的測定法。
【請求項2】
固定化された被検物質に、直接または間接的に、ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体または抗原を反応させる手段が、(1)固定化された被検物質に、直接ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体または抗原を反応させる手段;(2)被検物質が抗体であって、当該抗体に対する抗原を介してヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体を反応させる手段;または、(3)被検物質が抗原であって、当該抗原に対する抗体を介して、ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する第2抗体を反応させる手段である請求項1記載の免疫学的測定法。
【請求項3】
発生する電流が、抗原抗体反応複合体上のヒドロゲナーゼによる水素の発生に基づくものである請求項1または2記載の免疫学的測定法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原抗体反応による試料中の被検物質の測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗原抗体反応、すなわち免疫反応を利用した試料中の被検物質の測定法は、血液、尿、環境試料等の多種類の成分を含有する試料中の特定の成分を低濃度から正確かつ特異的に測定できることから広く用いられている。免疫学的測定法としては、被検物質である抗原又は抗体に特異的に反応する抗体又は抗原の標識体を用いる免疫凝集法、標識として酵素を用いるELISA等が汎用されている。
【0003】
また、免疫学的測定に電気化学的手段を適用した例としては、MRSA抗体を電極に固定化し、これにMRSAを反応させ、次いで酵素標識抗体を反応させ、さらにNADH及びNADPH等の酸化還元電位を発生する酵素基質を介して発生する電位を測定する方法等(特許文献1及び2)が報告されている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2000-241432号公報
【特許文献2】特開2003-014692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の免疫学的測定法では、標識した酵素がその酵素の基質に対する反応の条件、すなわち標識に用いた酵素の至適濃度に依存することから、測定できる被検物質の濃度範囲が限定されてしまうという問題がある。そのため、試料の希釈系列を作成して、何回も測定する必要があった。また、従来の免疫学的測定に電気化学的手段を適用した例においても、標識した酵素と基質との反応を利用するため、同様の問題は避けられないものであった。また、酵素と基質との反応に依存するため、酵素の特性により感度が向上したり、低下してしまうという問題もあった。
従って、本発明の課題は、標識する酵素の性質に左右されずに簡便な操作で、低濃度から高濃度までの被検物質を高感度に定量できる免疫学的測定法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、抗原抗体反応を酵素と基質との反応に置換するのではなく、酵素活性を直接測定する手法とすべく種々検討した結果、抗原又は抗体に結合させる酵素としてヒドロゲナーゼを採用し、ヒドロゲナーゼが結合した抗原又は抗体と被検物質との反応を電極上で行なわせ、ヒドロゲナーゼによる水素の発生又は水素の酸化による電流を直接測定することにより、被検物質が低濃度であっても高濃度であっても直接測定可能であり、感度も優れていることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[3]を提供するものである。
【0008】
[1]電極上に試料中の被検物質を固定化し、固定化された被検物質に、直接または間接的に、ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体または抗原を反応させ、次いで電圧を印加し、発生する電流を測定することを特徴とする、試料中の被検物質の免疫学的測定法。
[2]固定化された被検物質に、直接または間接的に、ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体または抗原を反応させる手段が、(1)固定化された被検物質に、直接ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体または抗原を反応させる手段;(2)被検物質が抗体であって、当該抗体に対する抗原を介してヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体を反応させる手段;または、(3)被検物質が抗原であって、当該抗原に対する抗体を介して、ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する第2抗体を反応させる手段である[1]記載の免疫学的測定法。
[3]発生する電流が、抗原抗体反応複合体上のヒドロゲナーゼによる水素の発生又は水素の酸化に基づくものである[1]または[2]記載の免疫学的測定法。
【発明の効果】
【0009】
本発明方法によれば、ヒドロゲナーゼによる水素の発生量を直接電流として測定するので、高感度であり、被検物質濃度の広範囲が測定可能であり、絶対定量が可能であり、校正が不要であることから自動化で容易であり、また検体を密閉系で測定可能であることから感染や汚染の可能性のある検体を測定可能であり、基質などの試薬が少なくなるため安価である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】遊離ヒドロゲナーゼによる電流と、抗原抗体反応時の電流との差を示す図である。
【図2】CRP濃度と電流との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の免疫学的測定法は、電極上に試料中の被検物質を固定化し、固定化された被検物質に、直接または間接的に、ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体または抗原を反応させ、次いで電圧を印加し、発生する電流を測定することを特徴とする。

【0012】
本発明の免疫学的測定に用いられる試料としては、血液、血清、血漿、尿、リンパ液等のヒト及び動物の体液、細胞や微生物の培養液、河川、湖沼等の環境試料、飲料水や食品等が挙げられるが、体液や培養液等の生物学的試料が特に好ましい。

【0013】
被検物質としては、前記試料中に含まれる抗原抗体反応を生じる物質であれば限定されず、各種タンパク質、ポリペプチド、DNA、RNA、化学物質等が挙げられる。被検物質には、例えば生体中の各種タンパク質、ポリペプチドだけでなく、生体中に存在する各種の抗体も含まれる。

【0014】
本発明に用いられる電極としては、電子伝導体又は半導体であればよいが、例えばグラッシーカーボン電極、金電極、白金電極、銀電極、ニッケル電極、グラファイト電極、パラジウム電極、鉄電極、銅電極、カーボンペースト電極等が用いられる。

【0015】
電極上に試料中の被検物質を固定化するには、例えば電極表面の疎水性を利用して試料と疎水的相互作用させる方法、電極を疎水性有機化合物、アミノ基もしくはカルボキシ基と共有結合する化合物で修飾し試料と結合させる方法、酵素固定化膜を用いた固定等が挙げられる。より具体的には、例えば、電極が持つ疎水性とタンパク質等との疎水的相互作用により吸着させる。

【0016】
電極上に被検物質を固定化後は、非特異反応を防止するためブロッキング剤で電極を処理するのが好ましい。ブロッキング剤としては、BSA、血清、界面活性剤、スキムミルク、ゼラチン、市販のブロッキング剤等を用いることができる。具体的には、ブロッキング剤含有液で電極を数分から数時間浸せばよい。

【0017】
次に、固定化された被検物質に、直接または間接的に、ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体または抗原を反応させる。

【0018】
本発明においては、被検物質に対する抗体または抗原にヒドロゲナーゼを結合させて用いる。ここで、被検物質がタンパク質などの抗原の場合は、被検物質に対する抗体を用い、被検物質が抗体の場合は被検物質に対する抗原を用いる。これらの被検物質に対する抗体または抗原には、ヒドロゲナーゼを結合させる。ここで、ヒドロゲナーゼとしては、分子型水素(H2)の可逆的な酸化還元反応を触媒する酵素であれば、特に限定されないが、鉄ヒドロゲナーゼ、ニッケル鉄ヒドロゲナーゼ及び鉄硫黄フリーヒドロゲナーゼが挙げられ、このうちニッケル鉄ヒドロゲナーゼが好ましい。また、ヒドロゲナーゼのうち、H+と電子からH2を生成する作用を有し、かつ酸化還元物質を電子移動体としない鉄鉄型ヒドロゲナーゼ及びニッケル鉄型ヒドロゲナーゼを用いるのが好ましい。また、ニッケル鉄型ヒドロゲナーゼが酸素耐性が高いためさらに好ましい。

【0019】
被検物質に対する抗体または抗原へのヒドロゲナーゼの結合は、例えばグルタルアルデヒドによる化学架橋の他、アミノ基、カルボキシ基、スルフヒドリル基および、過ヨウ素酸酸化等で生じるアルデヒド基と反応する架橋試薬等により行うことができる。

【0020】
固定化された被検物質に、直接または間接的に、ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体または抗原を反応させる手段としては、(1)固定化された被検物質に、直接ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体または抗原を反応させる手段;(2)被検物質が抗体であって、当該抗体に対する抗原を介してヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体を反応させる手段;(3)被検物質が抗原であって、当該抗原に対する抗体を介して、ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する第2抗体を反応させる手段が挙げられる。これらのうち、反応を密閉系で行うことができる点から、(1)直接反応させる手段が好ましい。

【0021】
(1)直接反応させる手段は、通常の抗原抗体反応であり、電極上に固定化された被検物質に、ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体または抗原を含有する溶液を添加すればよい。ここで、抗体または抗原を含有する溶液は、ヒドロゲナーゼの作用pHの緩衝液を用いるのが好ましい。反応は、5~40℃で1分~10時間程度行うのが好ましい。この直接法は、被検物質は抗原でも抗体でもよい。

【0022】
(2)被検物質が抗体の場合、当該抗体に対する抗原を介してヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体を反応させる手段を採用できる。この方法は、サンドイッチ法であり、被検物質(抗体)と、ヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する抗体とは、抗原上の異なる位置を認識する抗体である。この方法では、抗原を反応させ、次いでヒドロゲナーゼを結合した抗体を反応させればよい。これらの反応はそれぞれ5~40℃で1分~10時間程度行うのが好ましい。

【0023】
(3)被検物質が抗原の場合、当該抗原に対する抗体を介してヒドロゲナーゼを結合させた被検物質に対する第2抗体を反応させる手段を採用できる。この方法において用いる第2抗体は、抗IgG抗体等が使用できる。この方法では、抗体と反応させ、次いでヒドロゲナーゼ結合第2抗体を反応させればよい。これらの反応は、それぞれ5~40℃で1分~10時間程度行うのが好ましい。

【0024】
次に、これに電圧を印加し、発生する電流を測定する。電極上の被検物質と、ヒドロゲナーゼが結合した抗体または抗原とが抗原抗体反応すれば、抗原抗体反応複合体上のヒドロゲナーゼの作用によりH+から水素が発生し、このとき電極の抗原抗体反応複合体周辺では電流が生じる。本発明では、この電流を測定すれば、抗原抗体反応の量が正確に測定できる。
ここで電圧の印加と電流の測定は、電気化学アナライザーを用いたサイクックボルタンメトリーやアンペロメトリー等により行うのが容易である。

【0025】
具体的には、抗原抗体反応を生じさせない遊離のヒドロゲナーゼを存在させた場合の電流をコントロールとし、ヒドロゲナーゼを結合させた抗体または抗原を用いた場合の電流の差を測定すれば、当該電流の差が抗原抗体反応に関与したヒドロゲナーゼにより生じた電流、すなわち抗原抗体反応量となる。

【0026】
本発明方法によれば、低濃度から高濃度までの被検物質を一回の測定で検出できるだけでなく、前記電流の差は抗原抗体反応量と一致するので絶対定量も可能である。また、補正又は校正が不要であることから自動化が可能であり、密閉系とすることが可能である。また、酵素の基質、ペルオキシダーゼ等の追加の試薬が不要であり、安価である。
【実施例】
【0027】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0028】
実施例1
(1)使用した材料
ア.電極
作用電極:Pyrolytic Graphite (Edge plage)(PGE電極)
参照電極:銀/塩化銀
対極電極:白金
イ.被検物質
C反応性タンパク質(CRP)(和光純薬工業株式会社製)
ウ.抗体
抗CRP抗体(イムノ・プローブ社製)
エ.ヒドロゲナーゼ
ニッケル鉄型ヒドロゲナーゼ(大腸菌BL21由来)
【実施例】
【0029】
(2)電極への被検物質の固定化
PGE電極表面に1μg/mLのCRP10μLを滴下し、互いの疎水的相互作用により吸着させる。
(3)ヒドロゲナーゼの抗CRP抗体への結合
用事調整したグルタルアルデヒドを40mMとなるように添加し、1mg/mL抗CRP抗体および1mg/mLヒドロゲナーゼを混合した。室温で1時間放置し、この反応液の1/10量の1Mグリシンを添加することで反応を止めた。この反応液を10mMリン酸緩衝液で透析し、限外濾過膜により1mg/mLまで濃縮した。
(4)電極上のCRPとヒドロゲナーゼ結合抗CRP抗体との反応、電圧印加及び電流測定
PGE電極表面に1μg/mLのCRPを10μL滴下し、室温で5分放置した。液を除きブロッキング試薬(Immunoblock、DSファーマバイオメディカル)を滴下し、電極表面をマスクした。PBS(137mM NaCl, 2.7mM KCl, 10mM Na2HPO4, 1.8mM KH2PO4, pH7.4)で十分に洗浄後、ヒドロゲナーゼを結合させた抗CRP抗体(1mg/mL)10μLを滴下し、室温で5分放置した。PBS-T(0.05%のTween20を添加したPBS)で十分に洗浄後、混合緩衝液(15mM酢酸ナトリウム、15mM MES、15mM HEPES、15mM TAPS及び、0.1M NaCl)中で電気化学アナライザーを用いてサイクリックボルタメントリー(CV)測定を行った。
(5)健常人の血中にCRPは30μg/mL以下含まれるため、その検出感度は1μg/mLで十分である。CRP(1μg/mL)を結合させた電極およびCRPを結合させていない陰性対照の電極にヒドロゲナーゼを結合させた抗CRP抗体を反応させ、電圧を印加した時の電流を図1に示す。図1から、CRPの有無で電極に流れる電流に差が生じ、この差から抗原抗体反応量が定量できることがわかる。
【実施例】
【0030】
(6)各濃度のCRPを前記(4)と同様にして電極表面に吸着させ、ニッケル鉄型ヒドロゲナーゼ(大腸菌BL21由来)を結合させた抗CRP抗体を反応させて電極に-0.758V印加した時の電流を測定した。その結果を図2に示す。図2より、CRP濃度が1μg/mlから正確に定量できることが判明した。
図面
【図1】
0
【図2】
1