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明細書 :電気刺激システム及び計測システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-133123 (P2014-133123A)
公開日 平成26年7月24日(2014.7.24)
発明の名称または考案の名称 電気刺激システム及び計測システム
国際特許分類 A61N   1/36        (2006.01)
A61B   5/0488      (2006.01)
FI A61N 1/36
A61B 5/04 330
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2013-259481 (P2013-259481)
出願日 平成25年12月16日(2013.12.16)
優先権出願番号 2012273523
優先日 平成24年12月14日(2012.12.14)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】佐藤 佑樹
【氏名】鈴木 美奈子
【氏名】横井 浩史
【氏名】加藤 龍
【氏名】中村 達弘
【氏名】森下 壮一郎
出願人 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100101247、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 俊一
審査請求 未請求
テーマコード 4C027
4C053
Fターム 4C027AA04
4C027DD03
4C053FF01
4C053FF04
4C053JJ01
4C053JJ13
4C053JJ24
要約 【課題】適切な位置と範囲への刺激の付与を可能とする。
【解決手段】刺激信号を複数生成し、生成した各刺激信号をそれぞれ異なる出力部T1~T4から出力する信号生成装置1と、人体の皮膚に貼付されて、入力する刺激信号に応じた刺激を出力する複数の電極部2a~2dと、前記各電極側に固定点を設けた電流制御部を有し、利用者に刺激を与えるタイミングで各電極部2a~2dと接続させる信号生成装置1の出力部T1~T4を選択し、各電極部2a~2dを選択された出力部T1~T4と接続させる選択装置3とを備える。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
刺激信号を複数生成し、生成した各刺激信号をそれぞれ異なる出力部から出力する信号生成装置と、
人体の皮膚に貼付されて、入力する刺激信号に応じた刺激を出力する複数の電極部と、
前記各電極部側に固定点を設けた電流制御部を有し、利用者に刺激を与えるタイミングで前記各電極部と接続させる前記信号生成装置の出力部を選択し、前記各電極部を選択された出力部と接続させる選択装置と、
を備えることを特徴とする電気刺激システム。
【請求項2】
前記電極部は、人体の皮膚の所定面積内において略等間隔に配置されて貼付され、入力する刺激信号に応じた刺激をそれぞれ出力する
ことを特徴とする請求項1の電気刺激システム。
【請求項3】
前記選択装置は、人体の動きに関するデータを計測する生体計測センサと接続され、当該生体計測センサの計測結果を利用して出力部を選択する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気刺激システム。
【請求項4】
前記信号生成装置は、高周波の二相性矩形波を低周波で変調させた波形の刺激信号を生成することを特徴とする請求項1乃至3に記載の電気刺激システム。
【請求項5】
人体の皮膚に貼付され、人体の関節の動作によって人体で生じる電位を取得する複数の電極部と、
複数の入力部を有し、前記電極部で取得した電位を計測する筋電計と、
前記各電極部側に固定点を設けた電流制御部を有し、利用者の電位を計測するタイミングで前記筋電計の入力部と接続される電極部を選択し、前記各電極部を選択された入力部と接続させる選択装置と、
を備えることを特徴とする計測システム。
【請求項6】
前記電極部は、人体の皮膚に貼付され、人体の関節の動作によって人体で生じる電位を取得可能であって、
複数の入力部を有し、前記電極部で取得した電位を計測する筋電計と、
前記筋電計の入力部と接続される電極部を選択し、前記各電極部を選択された入力部と接続させる第2選択装置と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電気刺激システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、運動の補助に利用する刺激をユーザに与える電気刺激システム及びユーザが運動する際に生じる筋電位を計測する計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
感覚運動系の麻痺者の皮膚表面に表面電気刺激を付与し、筋群の筋収縮を促すことは、麻痺肢の運動補助やニューロリハビリテーションに有用であることが知られている。
【0003】
具体的には、表面電気刺激は,皮膚表面の2箇所に電極(陰極側と陽極側)を貼付し、その2つの電極間に電位差を与えて生体内に電流を流すことにより筋収縮を促すものである。電気刺激によって所望の筋収縮を発生させるには、電気刺激に対し最も筋収縮が生じる点 (モーターポイント:motor point)を適切に刺激する必要がある。
【0004】
しかしながら、体表面に貼付した2つの電極と筋内部のモーターポイントとの間には皮膚や脂肪などが存在し、モーターポイントの位置は外部観測することができない。また、モーターポイントの位置には個人差がある。そのため、画一的な電極の貼付位置の決定が難しい。さらに、電気刺激によって筋収縮することで、電極と収縮した筋内部のモーターポイントとの相対距離が変化することもある。このような理由から、モーターポイントを探し、モーターポイントに対して直接刺激することは困難である。
【0005】
従来、表面電気刺激の際には、作業療法士などが解剖学的知識に基づいて試行錯誤的に電極の貼付位置を決定している。この貼付位置の探索には長時間が必要となる。また、貼付位置を決定したとしても、モーターポイントを適切に刺激することは困難であり、必要以上のエネルギーで刺激を付与することもある。
【0006】
これに対し、多数の電極を貼付し、その中から所望の手指運動を発現させる電極配置を探索することが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されるような従来の方法では、複数の電極があるものの、全ての電極で1種類の刺激のみを与えている。すなわち、全ての電極で同じ強度かつ同じ刺激波形の刺激を同時に付与していることになり、筋収縮の強さの調整ができない。
【0008】
その他、神経や筋に関する疾患の有無を調べる方法として、筋電位を計測するものがある。このような場合にも、複数位置の筋電位を同時に計測することが好ましいが、適切な計測位置と範囲を同時に決定することは困難である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2004-129699号公報
【特許文献2】特開2011-206398号公報
【0010】

【非特許文献1】Emi Tamaki, Takashi Miyaki, Jun Rekimoto: PossessedHand: Techniques for Controlling Human Hands using Electrical Muscles Stimuli,ACM CHI2011,pp.543-552,(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記課題に鑑み、本発明は、適切な位置と範囲に刺激を与えることのできる電気刺激システム及び適切な位置と範囲の電位を計測する計測システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る電気刺激システムは、刺激信号を複数生成し、生成した各刺激信号をそれぞれ異なる出力部から出力する信号生成装置と、人体の皮膚に貼付されて、入力する刺激信号に応じた刺激を出力する複数の電極部と、前記各電極部側に固定点を設けた導電性の回路を有し、利用者に刺激を与えるタイミングで前記各電極部と接続させる前記信号生成装置の出力部を選択し、前記各電極部を選択された出力部と接続させる選択装置とを備える。
【0013】
また、本発明に係る計測システムは、人体の皮膚に貼付され、人体の関節の動作によって人体で生じる電位を取得する複数の電極部と、複数の入力部を有し、前記電極部で取得した電位を計測する筋電計と、前記筋電計の入力部と接続される電極部を選択し、前記各電極部を選択された入力部と接続させる選択装置とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、適切な位置と範囲に刺激を与え、または、適切な位置と範囲の電位を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係る電気刺激システムの構成を説明するブロック図である。
【図2】電気刺激システムの選択装置が有する演算部を説明する図である。
【図3】電気刺激システムの信号生成装置が生成する刺激信号の波形である。
【図4】電気刺激システムの操作信号出力装置及びデマルチプレクサから出力される信号について説明する図である。
【図5】電気刺激システムが利用するリレー回路について説明する図である。
【図6】電極パッド及びモーターポイントについて説明する図である。
【図7】電気刺激システムの選択装置によって選択される刺激部について説明する図である。
【図8】第2実施形態に係る電気刺激システムの選択装置によって選択される刺激部について説明する図である。
【図9】第3実施形態に係る電気刺激システムの刺激部によって与えられる刺激について説明する図である。
【図10】第4実施形態に係る計測システムの構成を説明するブロック図である。
【図11】計測システムの選択装置が有する演算部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を用いて本発明の実施形態に係る電気刺激システム及び計測システムについて説明する。以下の説明において、同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。

【0017】
〈第1実施形態〉
図1に示す第1実施形態に係る電気刺激システム10Aは、例えば、人体(ユーザ)の関節を動作させるために賦活する脳の特定部位(体性感覚野、体性感覚野の周辺の頭頂連合野又は前頭前野)と対応する神経(求心性神経及び遠心性神経)に当該特定部位を賦活させるために与える刺激信号を生成し、ユーザの神経に刺激を与える装置である。

【0018】
例えば、ユーザが脳神経の麻痺や感覚運動系の疾患による麻痺等、中枢神経系の損傷による上位運動ニューロン障害があり、日常生活で必要な動作が困難であるとする。このような場合、電気刺激システム10Aは、ユーザの神経から脳、脳から筋肉に刺激を与えることで、ユーザの運動を補助することができる。

【0019】
また電気刺激システム10Aは、複数の刺激位置から選択した位置に刺激を与えることができるとともに、複数の刺激信号から選択した刺激を選択した位置に与えることができる。したがって、電気刺激システム10Aは、ユーザ運動を補助する際、どの位置に刺激を与えると効果的であるか、どの強さで刺激を与えると効果的であるかを探索するために使用することもできる。

【0020】
図1に示すように、第1実施形態に係る電気刺激システム10Aは、複数の刺激信号を生成し、各刺激信号をそれぞれ異なる出力部T1~T4から出力する信号生成装置1と、人体の皮膚に貼付されて、入力する刺激信号に応じた刺激をユーザに与える複数の電極パッド2a~2dと、各電極パッド2a~2dと接続させる信号生成装置1の出力部T1~T4を選択する選択装置3とを備えている。なお、各電極パッド2a~2dは付与する刺激信号により陽極にも陰極にもなる。

【0021】
選択装置3では、図1に示すように、各電極パッド2a~2dに対応する演算部3a~3dを備えており、各演算部3a~3dは、対応する電極パッド2a~2dと接続する出力部T1~T4を選択するための演算を実行する。なお、図2は、図1の演算部3aについて説明する図である。また、電気刺激システム10Aは、人体の動きの状態を計測する生体計測センサ5を有していてもよい。

【0022】
(信号生成装置)
信号生成装置1は、強度や波形の異なる複数の刺激信号を生成し、生成した各刺激信号を各出力部T1~T4から出力する。図1及び図2に示す例では、信号生成装置1は、4種類の刺激信号を生成し、4の出力部T1~T4を有する構成である。

【0023】
具体的には、信号生成装置1は、第1の出力部T1からは信号(S1,a)を出力し、第2の出力部T2からは信号(S1,b)を出力し、第3の出力部T3からは信号(S2,a)を出力し、第4の出力部T4からは信号(S2,b)を出力する。例えば、刺激信号S1によって刺激を与える際には、出力部T1は信号aによって陽極となる電極パッドを選択して接続し、出力部T2は信号bによって陰極となる電極パッドを選択して接続する。また、刺激信号S2によって刺激を与える際には、出力部T3は信号aによって陽極となる電極パッドを選択して接続し、出力部T4は信号bによって陰極となる電極パッドを選択して接続する。

【0024】
なお、図1及び図2では、信号生成装置1が4つの出力部T1~T4を有する例を示しているが、信号生成装置1が有する出力部の数は限定されない。

【0025】
信号生成装置1が生成する刺激信号は、図3に示すような高周波の矩形の二相性波形(以下、二相性矩形波と称す)(搬送周波数=1/tc)を低周波(バースト周波数=1/tb)で変調させた波形(電圧VとDuty比(=tp/tb)も変更可能)の信号である。このように、高周波に低周波で変調させた刺激信号を使用することで、表層筋と深部筋を刺激することができる。

【0026】
高周波の信号では皮膚から筋肉に入りやすいが、筋は反応しない。また、低周波の信号では、筋肉は収縮を起こすが皮膚を透過しづらい。したがって、図3に示すような高周波の二相性矩形波を低周波で変調させた信号を利用することで、表層筋と深部筋に刺激を与えることができる。

【0027】
(電極パッド)
電極パッド2a~2dは、運動を補助するユーザの皮膚に貼付され、刺激を与える。各電極パッド2a~2dは、信号生成装置1の出力部T1~T4のいずれかと接続された場合、信号生成装置1で生成された刺激信号に応じてユーザに刺激を与える。また、各電極パッド2a~2dは、いずれの出力部T1~T4とも接続されない場合には、刺激信号を入力しないため、ユーザに刺激を与えることはない。

【0028】
各電極パッド2a~2dと各出力部T1~T4の接続については、選択装置3によって選択される。したがって、各電極パッド2a~2dは、いずれかの出力部T1~T4に接続されると、それぞれ信号生成装置1が生成する複数の異なる刺激信号を利用してユーザに刺激を与える。ここで、電極パッド2a~2dは出力部T1~T4の刺激信号により陽極又は陰極となり、陽極となる電極パッドは陽極側の出力部と接続され、陰極となる電極パッドは陰極側の出力部と接続される。

【0029】
なお、図1に示す例では、電気刺激システム10Aが4つの電極パッド2a~2dを有する例を示しているが、電気刺激システム10Aが有する電極パッドの数は限定されない。

【0030】
これら複数の電極パッド2a~2dは、運動を補助したい関節を支配する筋群の直上に貼付され、関節近傍の神経に刺激を与える。例えば、歩行動作を補助する際には腰、膝又は足首等の関節付近に貼付され、手の動作を補助する際には肩、肘又は手首等の関節付近に貼付される。

【0031】
ここで、電極パッド2a~2dが、求心性神経及び遠心性神経の双方に刺激を与える位置に貼付されることで、信号生成装置1で生成された信号によってユーザに与えられた刺激は、神経を介して脳に伝達される。このとき、電極パッド2a~2dが与える刺激信号は、直接筋肉に伝達されるのではなく、皮膚から神経に伝達され、神経から脳に伝達され、脳から筋肉に伝達されて筋肉を運動させるものである。

【0032】
すなわち、一般的な運動を補助する装置のように筋肉に直接刺激を与えて逆リクルーメントで筋肉を運動させるのではなく、信号生成装置1で生成する刺激信号は、神経から脳、脳から筋肉のような順リクルーメントで筋肉を運動させることができる。このとき、高電圧(例えば、50~200V程度)を利用して刺激を与えた場合には筋肉に直接刺激が与えられるが、比較的低い電圧(例えば、9~100V程度)を利用して刺激を与えることで、皮膚を介して神経に刺激を与えることができる。中枢神経系の損傷による上位運動ニューロン障害においては、末梢神経系や筋肉は機能しているため、電気刺激システム10Aによって脊髄や脳からの指令の代替となる刺激信号を与えることで、筋肉を運動させることができる。

【0033】
電極パッド2a~2dは、例えば、導電性ジェルに電極が接続されて構成されており、信号生成装置1で生成された刺激信号に応じて、皮膚を介してユーザの神経に刺激として与えることができる。ただし、電極パッド2a~2dは、導電性ジェルに電極が接続された構成に限らず、電磁誘導や振動により信号生成装置1から入力する信号をユーザの神経に刺激として与えるものであってもよい。

【0034】
なお、複数の電極パッド2a~2dは、1枚のシート上に固定されていてもよい(図示せず)。複数の電極パッド2a~2dが1枚のシート上に固定されている場合、ユーザへの電極パッド2a~2dの貼付の際に、複数の電極パッド2a~2dを別々に貼付する必要がない。また各電極パッド2a~2dの位置関係に注意することなく貼付することができる。したがって、電極パッド2a~2dを別々に貼付するよりも、1枚のシートを貼付することで、電極パッドの貼付を短時間で容易に行うことができるとともに、各電極パッド2a~2dの位置関係のずれによる精度の低下も防止することができる。さらに、刺激する電極パッドを適宜選択することにより、三角形、四角形、及びリング型など、刺激できる位置(面積)を選択することができる。

【0035】
(操作信号出力装置)
操作信号出力装置4は、選択装置3における処理に使用する操作信号を生成する。例えば、操作信号出力装置4は、予め指定された操作信号出力プログラムに従って、各演算部3a~3dに対し、選択信号A1,A2と切替信号EL、無出力状態を作るリセット信号Rを含む操作信号を出力する。

【0036】
なお、図2に示すように、操作信号出力装置4と各演算部3a~3dとは、それぞれリセット信号R用のライン、選択信号A1用のライン、選択信号A2用のライン及び切替信号EL用のラインの4本のラインが接続されるが、図1では1本のラインとして図示を省略している。

【0037】
図1に示すように操作信号出力装置4が生体計測センサ5と接続され、生体計測センサ5から計測結果を入力する場合、操作信号出力装置4は、生体計測センサ5から入力する計測結果を利用して操作信号を生成することができる。例えば、関節の運動を補助する際には、生体計測センサ5から入力された計測結果により関節の角度が分かれば次にどのような強さの刺激信号をどの位置に与えればよいか予測ができるため、その角度を利用して操作信号を生成する。

【0038】
(選択装置)
図1及び2に示す選択装置3は、電極パッド2a~2dの数と同一数の演算部3a~3dを有し、各演算部3a~3dにはそれぞれ対応する電極パッド2a~2dが定められている。この選択装置3は、信号生成装置1が生成した複数の刺激信号の中から操作信号出力装置4の操作信号に従って、各電極パッド2a~2dについて接続対象の出力部T1~T4を選択し、選択した各電極パッド2a~2dを選択した出力部T1~T4と接続させる。また、選択装置3は電極パッド2a~2dを無接続であると決定することもあり、無接続と決定された電極パッド2a~2dについては、いずれの出力部T1~T4とも接続させない。

【0039】
図1及び2に示す例において、各演算部3a~3dは、対応する電極パッド2a~2dと信号生成装置1の出力部T1~T4との接続のためにスイッチングする電流制御部であるリレー回路33と、操作信号出力装置4の操作信号を制御信号にデコードするデマルチプレクサ31と、デマルチプレクサ31から出力される制御信号に応じてリレー回路33をスイッチングするリレードライバ32とを有している。

【0040】
具体的には、デマルチプレクサ31は、操作信号出力装置4から入力した2bitsの選択信号A1,A2を、4bitsのon/off信号O1~O4へ変換し、リレー素子に出力する。このときデマルチプレクサ31の機能から、on/off信号O1~O4はいずれかのみが1(例えば、5V)で他が0(例えば、0V)となる。

【0041】
リレードライバ32は、デマルチプレクサ31によりデコーディングされたon/off信号O1~O4のうち、信号O2~O4を2本のラインに分岐する。またリレードライバ32は、分岐した一方のラインからはon/off信号O2~O4をリレー回路33に出力し、分岐した他方のラインではon/off信号O2~O4をNOT素子により反転した信号をリレー回路33に出力する。

【0042】
図2に示すように、リレー回路33は信号生成装置1が接続されており、リレー回路33の出力は、電極パッド2aと接続される。したがって、電極パッド2aはリレードライバ32から入力するon/off信号に従ってスイッチングされ、いずれか1つの出力部T1~T4と導通するか無接続状態となる。

【0043】
このように、演算部3aは、操作信号出力装置4からの操作信号に応じて、接続される出力部T1~T4のいずれか、または、無接続(いずれの出力部T1~T4とも接続されないという結果)を選択する。

【0044】
演算部3aにおける動作を図4に示す。デマルチプレクサ31では、最初にリセット信号Rを入力し、初期化する。初期化の後、クロック信号の入力を切替タイミングのトリガー(切替信号EL)とし、切替信号ELの入力に従ってon/off信号O1~O4を出力する。刺激を与えない電極も設定しなければならないが、リセット信号Rを入力し続けることで、電極パッド2aと無接続状態にすることができる。

【0045】
図2は、選択装置3のうち、演算部3aのみを説明する図であるが、演算部3b~3dについても演算部3aと同様に刺激信号を選択する。なお、図2に示す例は、4つの電極パッド2a~2dを有する場合の一例であり、電気刺激システム10Aが有する電極パッドの数が異なる場合には、演算部3a~3dの構成も異なる。

【0046】
ここで、一般的なリレーの使用方法の場合、図5(a)に示すように、接点の固定点側に電流を流す側(図5における信号生成装置1のT1~T4)に設定する。しかし、このように設定した場合、図5(a)に示すように、1つの電極パッド2dに対し、2以上の出力部T3,T4から電圧を印加するおそれがある。すなわち、接点の固定点側に電流を流す場合、電極パッドを通さずにショートする恐れがある。

【0047】
これに対し、本発明のリレーの使用方法では、図5(b)に示すように、電極パッド2a~2d側に固定点を設けることにより、ショートの可能性を物理的に排除している。また、電極パッド2a~2dは、それぞれ独立しているため、同時に複数の電極パッド2a~2dに同じ電圧を印加することも可能である。具体的には、電極パッド2a及び2bを出力部T4に、電極パッド2c及び2dを出力部T3に同時に接続し、電圧を印加することも可能である。

【0048】
(生体計測センサ)
生体計測センサ5は、ユーザの運動の状態を計測する装置である。例えば、ユーザの関節の角度を計測する角度センサ、ユーザの筋電位を計測する筋電位センサ、ユーザの運動時の加速度を計測する加速度センサ、ユーザの運動速度を計測する速度センサ等である。

【0049】
[使用例:モーターポイントの探索]
ここで、ユーザ毎に麻痺や損傷の状態が異なる。またユーザ毎に皮下脂肪の量(厚さ)が異なり、皮下脂肪の厚さによっても感じやすい刺激(周波数や電圧)が異なる。そのため、電気刺激システム10Aは、ユーザに応じた刺激を与えることが好ましい。したがって、電気刺激システム10Aは、ユーザの反応から、ユーザ毎に所望の筋収縮の発生に適した電極パッド2a~2dの貼付位置や刺激信号を探索する。

【0050】
具体的には、電気刺激システム10Aは、操作信号出力装置4から出力される操作信号を利用して選択装置3により、多数の電極パッド2a~2dに対して信号生成装置1の操作信号を選択的に付与することで、有効な電極パッド2a~2dの組み合わせと、刺激信号の選択に利用することができる。

【0051】
例えば、操作信号出力装置4では、探索用のプログラムが予め定められており、予め定められる順序で刺激信号(出力部T1~T4)を選択するような操作信号を出力する。この探索用のプログラムで刺激を与えてユーザの筋収縮を観察することにより、有効な電極パッド2a~2dの組み合わせと刺激信号を探索することができる。

【0052】
[使用例:運動補助]
また、運動補助の際には、操作信号出力装置4は、運動用に決められたプログラムで、所定の順序で操作信号を出力してユーザに刺激を与える。

【0053】
例えば、図6(a)に示すように、電極パッド2a~2dをユーザの腕の皮膚に貼付し、電極パッド2b(-)及び電極パッド2c(+)によって筋肉200aのモーターポイントMPに刺激を与えるとする。また、与えられた刺激によって、図6(b)に示すように、刺激によって筋肉200a~200cが収縮したとする。

【0054】
このような場合、皮膚に貼付された電極パッド2a~2dの位置は変わらないが、筋肉200aの収縮に応じて、電極パッド2a~2dに対するモーターポイントMPの位置が変化する。したがって、運動を継続するために続いて刺激を与える場合、同一の電極パッド2b及び2cによって刺激を与えるのではなく、図6(b)に示すように、変化したモーターポイントMPの位置に合わせた電極パッド2a(+)及び2b(-)によって刺激を与える必要がある。

【0055】
ここで、運動補助に使用する際、上述したように、生体計測センサ5によってユーザの運動の状態が計測されている場合には、操作信号出力装置4は、運動の状態を考慮して操作信号を出力することができる。すなわち、電極パッド2a及び2bに刺激を与えることで筋収縮したときに、MPの移動に追随して移動後のMPに刺激を与えることができる。その際に電極パッドを貼り替える必要はない。

【0056】
なお、電極パッドは、一列に貼付する他、図7に示すように、複数列に電極パッドを貼付してもよい。このとき、例えば、図7(a)に示すように1つの電極パッドを陽極側とし、1つの電極パッドを陰極側として電圧を印加することで刺激を与えた後、図7(b)に示すように別の1つの電極パッドを陽極側とし、2つの電極パッドを陰極側として電圧を印加して刺激を与えることができる。図7(a)と図7(b)のように刺激を与える電極パッドを変更した場合、印加する電圧は異なっていてもよい。すなわち、図7(a)で1kHzの電圧を印加した場合であっても、図7(b)で2kHzの電圧を印加してもよい。

【0057】
[使用例:筋肉維持及び筋肉増強]
また、筋肉維持及び筋肉増強の際には、操作信号出力装置4は、筋肉維持及び筋肉増強用に決められたプログラムで、所定の順序で操作信号を出力してユーザに刺激を与える。

【0058】
例えば、腕を動かす際、モーターポイントMPの位置が、図6(a)に示すように、電極パッド2b及び2cに対応する位置と、図6(b)に示すように、電極パッド2a及び2bに対応する位置とを交互に移動することが生体計測センサ5によって測定されているとする。このような場合、このプログラムでは、各モーターポイントMPの位置を交互に刺激するように、電極パッド2b及び2cと、電極パッド2a及び2bとによって交互に刺激するようプログラムがされている。これによって、ユーザの筋肉維持や筋肉増強を図ることが可能になる。

【0059】
なお、ユーザ本人のモーターポイントMPを測定することが好ましいが、運動選手のモーターポイントMPの位置の変化を測定し、この測定結果を利用してユーザに刺激を与えることで、筋力維持及び筋肉増強の実現のみならず、運動選手と同じ筋肉の動かし方を実現することができる。

【0060】
上述したように、第1実施形態に係る電気刺激システム10Aでは、人体に刺激を与える際に複数の電極パッド2a~2d及び選択装置3を利用し、刺激を与える位置(電極パッド2a~2d)及び面積や、刺激の強度及び波形を選択することができる。

【0061】
これにより、電気刺激システム10Aでは、同時に複数の異なる位置及び面積に異なる信号を付与することができる。また、電気刺激システム10Aでは、電極パッド2a~2dの貼付位置や刺激の強度等を調整することで、筋収縮の強さを自由に調整することができる。さらに、電気刺激システム10Aでは、刺激の強度を調整することで、生体に余計なエネルギーをかけることなく、筋収縮を行うことができる。

【0062】
また、第1実施形態に係る電気刺激システム10Aでは、1台の信号生成装置1から複数の電極パッド2a~2dへ同時に複数の異なる刺激信号を選択して送信することができる。従来であれば、複数の電極パッドに複数の異なる刺激信号を同時に出力する際には電極パッド毎に信号生成装置が必要であったが、本発明によれば、複数の信号生成装置1を必要とせず、システムの小型化を実現することができる。

【0063】
さらに、第1実施形態に係る電気刺激システム10Aでは、信号生成装置1が高周波の二相性矩形波を低周波で変調させた波形の刺激信号を利用することで、表層筋だけでなく深部筋にも刺激を与えることができる。

【0064】
〈第2実施形態〉
続いて、第2実施形態に係る電気刺激システムについて説明する。第2実施形態に係る電気刺激システムの構成は、図1を用いて上述した第1実施形態に係る電気刺激システム10Aと同一であるため、図1を用いて説明する。

【0065】
第2実施形態に係る電気刺激システム10Bでは、第1実施形態に係る電気刺激システム10Aと比較して、複数の電極パッドを1つの陽極もしくは陰極の電極グループとして利用する点で異なる。例えば、電気刺激システム10Bでは、図8(a)に示すように、第1グループG11の電極パッドを陽極側とし、第2グループG12の電極パッドを陰極側として電圧を印加して刺激を与える。その後、電気刺激システム10Bでは、図8(b)に示すように、第3グループG21の電極パッドを陽極側とし、第4グループG22の電極パッドを陰極側として電圧を印加して刺激を与える。

【0066】
また、グループ設定の際には、連続して配列されている電極パッドを1つのグループとする必要はない。例えば、図8(c)に示すように、陽極側の離れた複数の電極パッドを第5グループG31とし、第6グループG32の電極パッドを陰極側として電圧を印加して刺激を与えることもできる。この場合には、広い範囲に少ない電圧の印加で刺激を与えることができる。

【0067】
上述したように、第2実施形態に係る電気刺激システム10Bでは、複数の電極パッドを陽極もしくは陰極の電極グループとし、広い範囲に刺激を与えることができる。すなわち、刺激範囲を状況に応じて自由自在に拡大縮小させると共に同時に刺激を与えることができる。

【0068】
また、第2実施形態に係る電気刺激システム10Bでも、第1実施形態に係る電気刺激システム10Aと同様に、同時に複数の異なる電極グループに複数の異なる刺激信号を付与することで、筋収縮の強さの自由な調整、生体への負担軽減、システムの小型化、表層筋及び深部筋への刺激の付与を実現することができる。

【0069】
〈第3実施形態〉
続いて、第3実施形態に係る電気刺激システムについて説明する。第3実施形態に係る電気刺激システムの構成は、図1を用いて上述した第1実施形態に係る電気刺激システム10Aと同一であるため、図1を用いて説明する。

【0070】
第3実施形態に係る電気刺激システム10Cでは、第1実施形態に係る電気刺激システム10A及び第2実施形態に係る電気刺激システム10Bと比較して、同時に複数の電圧で刺激を与える点で異なる。例えば1つの電圧で刺激を与える場合には、図6で上述したように、一定の範囲(一定の深さ)にのみ刺激を与えることができない。

【0071】
これに対し、同時に複数の異なる電圧を印加して刺激を与えた場合、異なる複数の深さのモーターポイントに同時に電気刺激を与えることができる。図9は、第1グループG11の電極パッド(+)と第2グループG12の電極パッド(-)によって1kHzの電圧を印加して第1のモーターポイントMP1に刺激を与え、第3グループG21の電極パッド(+)と第4グループG22の電極パッド(-)とによって8kHzの電圧を印加して第2のモーターポイントMP2に刺激を与えた一例を示している。

【0072】
図9に示すように、複数の異なる深さにモーターポイントが存在する場合であっても、複数の電圧を印加することで、各モーターポイントに刺激を与えることができる。また、図9では、2種類の電圧を印加した例を示したが、2種類以上であってもよく、刺激したいモーターポイントの数と位置に応じて使用する電極パッドや電圧を変更すればよい。

【0073】
上述したように、第3実施形態に係る電気刺激システム10Cでは、異なる強度(電圧)の信号を同時に与えることで、広い範囲に同時に刺激を与えることができる。すなわち、刺激範囲を状況に応じて自由自在に拡大縮小させると共に同時に刺激を与えることができる。

【0074】
また、第3実施形態に係る電気刺激システム10Cでも、第1実施形態に係る電気刺激システム10Aと同様に、同時に複数の異なる電極グループに異なる刺激信号を付与することで、筋収縮の強さの自由な調整、生体への負担軽減、システムの小型化、表層筋及び深部筋への刺激の付与を実現することができる。

【0075】
〈第4実施形態〉
図10に示す第4実施形態に係る計測システム20は、ユーザの運動の際に生じる筋電位を計測する装置である。図10に示すように、計測システム20は、図1を用いて上述した電気刺激システム10Aと比較して、信号生成装置1に代えて筋電計6を有し、各電極パッド2a~2dを筋電計6の電極として利用する。また、計測システム20では、電極パッド2a~2dで計測された電位が選択装置3の演算部3a~3dに入力され、その後、筋電計6に入力される。なお、図11は、図1の演算部3aについて説明する図である。

【0076】
筋電計6は、各電極パッド2a~2dで計測された電位からユーザの筋電位を求めるものである。具体的には、筋電計6は、陽極と陰極の電極パッド対となる2a~2dをそれぞれ選択し、その電位差を選択する。このとき、陽極の電気パッド及び陰極の電気パッドはそれぞれ1つ以上あればよく、第2実施形態に係る電気刺激システム10Bのように複数の電極パッドで1つの電極グループとしてもよい。

【0077】
ここで、選択装置3は、操作信号出力装置4から入力する操作信号に応じて、電位の測定対象の電極パッド2a~2dを選択し、電位の測定結果を筋電計6に出力する。

【0078】
選択装置3は、各電極パッド2a~2dと対応する複数の演算部3a~3dを有しており、各演算部3a~3dにおいて、筋電計6と接続する電極パッド2a~2dを選択する。このとき、全ての電極パッド2a~2dが筋電計6と接続されるのではなく、筋電計6と未接続の電極パッド2a~2dもある。

【0079】
ここで、計測システム20において陽極と陰極の電極パッド(又はそのグループ)を選ぶ場合、その範囲を適切にする必要がある。例えば、電極パッド(又はそのグループ)の範囲が大きい場合、電極パッドから計測する電位は直下に位置する多くの筋の電位が重畳されるため、筋を限定できず何を測定しているのかわからなくなる。一方、電極パッド(又はそのグループ)の範囲が小さい場合、電位が小さくなり、電位はノイズに埋もれて測定できなくなる。この場合の適切な範囲のサイズは、筋の大きさや体脂肪の様相によって異なり、また、個々人または身体の部位に依存して変化する。したがって、計測範囲を自由に設定可能とすることで、筋を限定しながら、適切な電位を計測することができる。

【0080】
また、図示を用いた説明を省略するが、図1を用いて上述した電気刺激システム10A~10Cに筋電計6を組み合わせることもできる。なお、この場合、信号生成装置1と接続される選択装置(第1選択装置)と筋電計6と接続される選択装置(第2選択装置)との2つの選択装置が必要になる。これにより、刺激と身体運動の計測を同時に行うことが可能となり、より大きな運動を発現させる有効な電極パッドの配置を網羅的に探索することが可能になる。
【符号の説明】
【0081】
10A~10C…電気刺激システム
1…信号生成装置
2a~2d…電極パッド(電極部)
3…選択装置
3a~3d…演算部
31…デマルチプレクサ
32…リレードライバ
33…リレー回路
4…操作信号出力装置
T1~T4…出力部
6…筋電計
20…計測システム
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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