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明細書 :可視光応答型光反応用複合触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-195802 (P2014-195802A)
公開日 平成26年10月16日(2014.10.16)
発明の名称または考案の名称 可視光応答型光反応用複合触媒
国際特許分類 B01J  35/02        (2006.01)
B01J  31/22        (2006.01)
FI B01J 35/02 J
B01J 31/22 Z
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 26
出願番号 特願2014-045361 (P2014-045361)
出願日 平成26年3月7日(2014.3.7)
優先権出願番号 2013045909
優先日 平成25年3月7日(2013.3.7)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】嶌越 恒
【氏名】久枝 良雄
【氏名】米村 俊佑
出願人 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099634、【弁理士】、【氏名又は名称】平井 安雄
【識別番号】100087675、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 知
審査請求 未請求
テーマコード 4G169
Fターム 4G169AA04
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA27B
4G169BA27C
4G169BA48A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC67B
4G169BC67C
4G169BE01A
4G169BE01B
4G169BE01C
4G169BE02A
4G169BE02B
4G169BE02C
4G169BE06A
4G169BE06B
4G169BE06C
4G169BE09B
4G169BE19A
4G169BE19B
4G169BE19C
4G169BE28C
4G169BE32A
4G169BE32B
4G169BE32C
4G169BE37A
4G169BE37B
4G169BE37C
4G169BE38A
4G169BE38B
4G169BE38C
4G169BE43A
4G169BE43B
4G169BE43C
4G169CB01
4G169CB25
4G169CB35
4G169CB75
4G169FC02
4G169HA02
4G169HB02
4G169HB03
4G169HC04
4G169HD03
4G169HD09
4G169HD21
4G169HE04
要約 【課題】可視光を照射することによって、高効率な触媒活性が得られる新しいタイプの可視光応答型光反応用複合触媒を提供する。
【解決手段】可視光応答型光反応用複合触媒は、エンジオール基を有する化合物により該エンジオール基を介して界面錯体形成された酸化チタンと、ビタミンB12またはその誘導体とから形成され、可視光の照射によってビタミンB12またはその誘導体が還元活性化され光触媒作用を発揮する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
エンジオール基を有する化合物により該エンジオール基を介して界面錯体形成された酸化チタンと、ビタミンB12またはその誘導体とから形成され、可視光の照射によってビタミンB12またはその誘導体が還元活性化され光触媒作用を発揮することを特徴とする可視光応答型光反応用複合触媒。
【請求項2】
界面錯体形成された酸化チタンが、ビタミンB12またはその誘導体に、直接連結されていることを特徴とする請求項1に記載の可視光応答型光反応用複合触媒。
【請求項3】
界面錯体形成された酸化チタンが、前記エンジオール基とは別異の結合部を介してビタミンB12またはその誘導体に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の可視光応答型光反応用複合触媒。
【請求項4】
界面錯体形成された酸化チタンと、ビタミンB12またはその誘導体とが混合されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の可視光応答型光反応用複合触媒。
【請求項5】
エンジオール基を有する化合物が、カテコールであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の可視光応答型光反応用複合触媒。
【請求項6】
結合部がカルボキシリル基またはトリメトキシシリル基に由来する構造から成ることを特徴とする請求項3に記載の可視光応答型光反応用複合触媒。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒化学の技術分野に属し、特に、可視光応答性を有する光触媒(光反応用触媒)に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、光を照射するという簡素な操作のみによって、比較的緩和な条件下で、各種の反応を進行させるという優れた触媒作用を有する。
【0003】
このような光触媒としては、紫外領域の光(紫外線)を照射することによって、光触媒作用を発揮する紫外線応答型触媒が知られている。しかしながら、紫外線はエネルギーが極めて高く人体に有害であるため、触媒の利用条件が制約されるとともに慎重な取り扱いが要求されることから、実用上の問題点が多い。そのため、紫外線に代替して可視光を利用可能な光触媒(可視光応答型光反応用複合触媒)が実現されれば、将来的には太陽光を利用することもでき、クリーンかつ省エネルギーで安全性の高い光触媒反応が得られるものと期待されている。
【0004】
光応答型触媒としては、例えば、ビタミンB12化合物を担持させた紫外光応答型酸化チタン光触媒を用いて、有機ハロゲン化物を脱ハロゲン化することが開示されている(特許文献1参照)。また、紫外線に応答できる脱ハロゲン化触媒としてのビタミンB12化合物-チタニアハイブリッド化合物も開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2006-191947号広報
【特許文献2】特開2008-222654号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来から光触媒の材料として利用されている酸化チタン(チタニア)は、バンドギャップが大きいという物性のため、実用上、充分な触媒作用を得るためには、紫外領域の光を照射する必要がある。このようなことから、従来の酸化チタン(チタニア)を含む光触媒は、紫外線よりもエネルギーが低い可視光を照射する場合では、その触媒活性は、紫外線応答型触媒に比べて1/10以下にとどまっており、実用レベルに達するものではない。すなわち、紫外線応答型触媒に匹敵する高効率な触媒活性を有する可視光応答型触媒は、現在のところ見当たらない。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、可視光を照射することによって、高効率な触媒活性が得られる新しいタイプの可視光応答型触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、エンジオール基を有する化合物を用いて、該エンジオール基を介して界面錯体形成された酸化チタンと、ビタミンB12またはその誘導体とを組み合わせることによって、優れた可視光応答性を発揮する新しいタイプの可視光応答型触媒を新たに見出した。
【0009】
かくして、本発明に従えば、エンジオール基を有する化合物により該エンジオール基を介して界面錯体形成された酸化チタンと、ビタミンB12またはその誘導体とから形成され、可視光の照射によって光触媒作用を発揮することを特徴とする可視光応答型光反応用複合触媒が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a-1)本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒(連結型)の模式図を示す。(a-2)本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒(個別修飾型)の模式図を示す。(a-3)本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒(非連結型)の模式図を示す。(b)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2-アナターゼ型酸化チタン複合触媒のFT-IRスペクトルを示す。(c)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2-アナターゼ型酸化チタン複合触媒の拡散反射UV-visスペクトルを示す。
【図2】(a)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2-アナターゼ型酸化チタン複合触媒の調製前後のUV-visスペクトルを示す。(b)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2-アナターゼ型酸化チタン複合触媒の可視光(λ> 420 nm)照射前後の拡散反射UV-visスペクトルを示す。
【図3】(a)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2-ルチル型酸化チタン複合触媒のFT-IRスペクトルを示す。(b)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2-ルチル型酸化チタン複合触媒の拡散反射UV-visスペクトルを示す。
【図4】(a)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2-ルチル型酸化チタン複合触媒の調製前後のUV-visスペクトルを示す。(b)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2-ルチル型酸化チタン複合触媒の可視光(λ>420 nm)照射前後の拡散反射UV-visスペクトルを示す。
【図5】(a)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2-カテコール-アナターゼ型酸化チタン複合触媒のFT-IRスペクトルを示す。(b)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2-カテコール-アナターゼ型酸化チタン複合触媒の拡散反射UV-visスペクトルを示す。
【図6】(a)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2-カテコール-アナターゼ型酸化チタン複合触媒の調製前後のUV-visスペクトルを示す。
【図7】(a)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2-カテコール-ルチル型酸化チタン複合触媒のFT-IRスペクトルを示す。(b)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2-カテコール-ルチル型酸化チタン複合触媒の拡散反射UV-visスペクトルを示す。
【図8】(a)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2-カテコール-ルチル型酸化チタン複合触媒の調製前後のUV-visスペクトルを示す。(b)本発明に係る(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2-カテコール-ルチル型酸化チタン複合触媒の可視光(λ> 420 nm)照射前後の拡散反射UV-visスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒は、エンジオール基によって界面錯体形成された酸化チタンと、ビタミンB12またはその誘導体とを組み合わせて形成されるという特徴を有する。ここでいう「可視光」とは、400nm以上の波長の光線を意味する。また、「界面錯体」とは、酸化物(酸化物半導体)の界面(表面)において、その酸化物を構成する金属イオンに、配位子が結合してなる錯体である。酸化物としては、酸化チタンがよく知られており、界面錯体を形成することによって、電荷移動特性が異なることに注目して、各種の研究が試みられている。本発明に係る界面錯体は、酸化チタン粒子の表面(界面)と、代表的にはカテコールにみられる、エンジオール基に含まれる2つの水酸基由来の各々の酸素原子とが結合することによって、酸化チタンとエンジオール基含有化合物とから構成される錯体である。

【0012】
本発明でいうビタミンB12の誘導体とは、コリン環にコバルトが配位した構造のビタミンB12骨格を有し、その末端に、エンジオール基を有する化合物(例えばカテコール基)と結合し得る部位(後述の連結型の場合)、または、酸化チタンと化学結合し得る部位(結合部;後述の個別修飾型の場合)を有する化合物を指す。例えば、次の式(I)で表されるものが挙げられる。

【0013】
【化1】
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【0014】
上記式(I)中、R1~R7はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。Xはシアノ基、水酸基、またはメチル基を表す。Yはコバルト原子に配位している水分子を表す。

【0015】
式(I)において、R1~R7におけるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1~8程度のアルキル基が挙げられ、通常はメチル基を用いる。

【0016】
本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒では、該酸化チタンの粒子表面にエンジオール基が修飾されることによって界面錯体形成していればよい。そのため、本発明では、該酸化チタンと、ビタミンB12またはその誘導体との結合状態については、特に制約されるものではなく、例えば、次の3つの形態が含まれる。

【0017】
第一の形態としては、ビタミンB12またはその誘導体が、エンジオール基を含む結合部を介して、酸化チタンに化学結合により直接連結されている形態(以下、「連結型」という)がある。

【0018】
第二の形態としては、ビタミンB12またはその誘導体が、前記エンジオール基とは別異の結合部を介して、前記エンジオール基によって界面錯体形成された(粒子表面が修飾された)酸化チタンに結合されている形態(以下、「個別修飾型」という)がある。

【0019】
第三の形態としては、エンジオール基によって界面錯体形成された酸化チタンと、ビタミンB12またはその誘導体とを単に混ぜ合わせることにより複合触媒が形成されている形態(以下、「非連結型」という)がある。

【0020】
なお、本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒においては、上記3つの形態のうちの1つの形態を単独に用いてもよいし、複数の形態を組み合わせて用いてもよい。本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒は、いずれの形態であっても、ビタミンB12またはその誘導体が触媒として用いられる公知の各種の光触媒反応に適用可能である。そのような適用可能な触媒反応としては、例えば、脱塩素化反応によるDDTやトリハロメタン類の分解、ラジカル型有機合成反応による人工香料の合成、アルケンおよびアルキン還元反応による薬剤(例えば、イブプロフェン基本骨格)の合成、水からの水素発生反応によるグリーンエネルギー変換など多岐に渡り、環境分野、医薬合成分野、およびエネルギー分野など幅広い分野に及ぶものである。事実、本発明者らは、本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒を用いることによって、各種の物質変換反応、特に、脱塩素を含む脱ハロゲン化反応、アルケン類の還元反応、エステル合成反応、および官能基転位反応が、確かに起きることを確認し立証している(後述の反応例1~13参照)。

【0021】
これらの3つの形態の調製方法について、概説すれば、次の通りである。
(1)連結型
(工程1-1)ビタミンB12誘導体に連結部位(エンジオール基)を導入。
(工程1-2)上記で得られたビタミンB12誘導体に、酸化チタンを混合。
(2)個別修飾型
(工程2-1)ビタミンB12誘導体に個別修飾部位(例えば、トリメトキシシリル基)を導入。
(工程2-2)上記で得られたビタミンB12誘導体に、エンジオール基(例えば、カテコールを由来とする)が付加した酸化チタンを混合。
(3)非連結型
(工程3-1)ビタミンB12誘導体と、酸化チタンとを、単に混合。

【0022】
以下、これらの3つの形態の調製方法について、さらに詳述する。
(1)連結型
本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒(連結型)は、エンジオール基を含む以下のビタミンB12誘導体をメタノールに溶解し、酸化チタンを加え懸濁させ、遮光下、常温で攪拌し(例えば、24時間)、この懸濁溶液を、超音波洗浄し、さらにメタノール洗浄によってビタミンB12誘導体の物理吸着分を取り除き、吸引ろ過、真空乾燥によって、粉末形態で得ることができる。
この本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒(連結型)は、図1(a-1)の模式図に示すように、エンジオール基を介して界面錯体形成された酸化チタンが、ビタミンB12またはその誘導体に、直接連結されて形成されている。

【0023】
【化2】
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【0024】
上記式(II)中、環Aは、置換基を有してもよい炭素数5~20の芳香族炭化水素環を表し、単環でも複環でもよく、RおよびRは、互いに独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基または水素原子を表し、lは1~5(炭素数1~5の直鎖または分岐鎖状のアルキル鎖)を示す。

【0025】
環Aとしては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アセチレン環を用いることができる。また、Rは、酸化チタンと界面錯体形成をしやすい点から、比較的脱離しやすい嵩の小さい部位(官能基)を用いることが好ましく、例えば、水素原子、メチル基、エチレン基を挙げることができる。

【0026】
このようなビタミンB12誘導体としては、例えば、以下に示すカテコール基を末端に含むものを用いることができる。

【0027】
【化3】
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【0028】
(2)個別修飾型
本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒(個別修飾型)は、上述したビタミンB12骨格の末端部に、酸化チタン粒子と結合する結合部となり得る官能基を有するビタミンB12誘導体を、メタノールに溶解し、エンジオール基(例えば、カテコール)と界面錯体形成された酸化チタンを加え懸濁させ、遮光下、常温で攪拌し(例えば、24時間)、この懸濁溶液を、超音波洗浄し、さらにメタノール洗浄によってビタミンB12誘導体の物理吸着分を取り除き、吸引ろ過、真空乾燥によって、粉末形態で得ることができる。
この本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒(個別修飾型)は、図1(a-2)の模式図に示すように、界面錯体形成された酸化チタンが、前記エンジオール基とは別異の結合部(例えば、トリメトキシシリル基)を介して、ビタミンB12またはその誘導体に結合されて形成されている。

【0029】
該結合部となり得る部位(官能基)としては、コバルトと酸化チタンの両方に化学結合し得るような部位に由来するものであれば、特に制限なく適用可能であり、後述の実施例1に記載のカルボキシリル基を有する(CN)2Cob(III)6C1エステルや、シランカップリング剤として用いられるものが一般に用いられ、例えば、トリメトキシシリル基が挙げられるが、この他シランカップリング剤として一般に用いられているものも、同様に適用可能である。酸化チタンに化学結合する末端としては、少なくとも2つの水酸基、メトキシ基、またはエトキシ基を備えるものが好ましい。

【0030】
すなわち、このようなビタミンB12誘導体としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。

【0031】
【化4】
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【0032】
上記式(III)中、R10は、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基または水素原子を表し、nおよびmは、互いに独立して、1~5(炭素数1~5の直鎖または分岐鎖状のアルキル鎖)を示す。このうち、酸化チタンとの結合のし易さから、比較的脱離しやすい嵩の小さい官能基を用いることが好ましく、R10の好適な例としては、水素原子、メチル基、およびエチレン基を挙げることができる。

【0033】
このようなビタミンB12誘導体としては、例えば、以下のように、該結合部にトリメトキシシリル基を含むものを用いることができる。

【0034】
【化5】
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【0035】
(3)非連結型
本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒(非連結型)は、ビタミンB12またはその誘導体(例えば、上記の個別修飾型に使用したビタミンB12誘導体)をメタノールに溶解し、エンジオール基を有する化合物により該エンジオール基を介して界面錯体形成された酸化チタン(例えば、上記の連結型に使用した酸化チタン)を単に混ぜ合わせることによって得ることができる。
この本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒(個別修飾型)は、図1(a-3)の模式図に示すように、界面錯体形成された酸化チタンと、ビタミンB12またはその誘導体とが混合されて形成されている。

【0036】
上記いずれの形態であっても、本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒は、従来では得られない効率の高さで可視光に応答して光触媒作用を呈する(後述の実施例参照)。この本発明の優れた光触媒作用をもたらす詳細なメカニズムは、未だ充分に解明されていないが、光反応用触媒の構成材料としてこれまで知られていなかった上述の酸化チタンとエンジオール基から構成される錯体が、酸化チタンの表面(界面)で電荷が移動しやすい状態を形成し、その結果として可視光で励起しやすくなり、可視光を照射された際に起きる励起によって、この錯体の近傍に存在しているビタミンB12またはその誘導体に含まれるコバルトイオンに対して、電子を潤沢に供与できる状態を形成し、2価のコバルトイオンから、1価のコバルトイオン(求核性が極めて高い)が生成しやすくなっているものと推察される。
本発明によれば、エンジオール基の存在により生成される1価のコバルトイオンによって、従来では可視光照射下で充分に反応が進行しなかった各種の触媒反応(例えば、脱塩素を含む脱ハロゲン化反応)の光反応用触媒として作用しているものと推察される。

【0037】
本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒は、より強い光触媒作用を得るという観点から、触媒活性なCo(I)種の生成を促進するために、酸化チタンから、ビタミンB12またはその誘導体への電子移動が活発化していること(電子授受が円滑化されていること)が望ましい。このことから、上記のエンジオール基に修飾された酸化チタンと、ビタミンB12またはその誘導体とが、各々、より近距離に所在していること、すなわち、本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒の3つの形態のうち、該酸化チタンと、ビタミンB12またはその誘導体が、結合部を介して直接的に結合している形態、すなわち、上述の個別修飾型と連結型が好ましい。
また、酸化チタンの種類については、還元力の高さから、アナターゼ型のものを用いることが好ましい。
以上のことから、本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒は、より強い光触媒作用を得るという観点から、アナターゼ型の酸化チタンを用いて、かつ、上述の個別修飾型と連結型の構成であることが、より好ましい。

【0038】
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に示すために実施例を記すが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。

【0039】
実施例の構成は以下の通りである。
実施例1(連結型・アナターゼ型酸化チタン)
実施例2(連結型・ルチル型酸化チタン)
実施例3(個別修飾型・アナターゼ型酸化チタン)
実施例4(個別修飾型・ルチル型酸化チタン)
実施例5(非連結型・アナターゼ型酸化チタン)
実施例6(非連結型・ルチル型酸化チタン)

【0040】
なお、実施例では、以下の機器を使用した。
GC-MS:GC-MS-QP5050AHガスクロマトグラフ質量分析計((株)島津製作所製)MALDI-TOF-MS:Bruker Autoflex質量分析装置((株)ブルカーダルトニクス社製)NMR:AVANCE 500 核磁気恭敬装置((株)ブルカー製)電子スペクトル(UV-vis):U-3000型紫外可視分光光度計((株)日立製作所製)拡散反射電子スペクトル(UV-vis):V670型紫外可視分光光度計((株)日本分光社製)赤外吸収スペクトル(IR):FT-IR 460plus分光光度計((株)日本分光社製)光照射装置:((株)旭製作所製)

【0041】
(実施例1)
以下、本発明に係るビタミンB12誘導体-アナターゼ型酸化チタン複合触媒(連結型)を製造した。

【0042】
出発原料となるビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)6C1エステルの合成

【0043】
【化6】
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【0044】
(実験操作)
シアノコバラミン2.00 g(1.50 mmol)のメタノール溶液200 mlに、冷濃硫酸30 mlとメタノール100 mlの混合溶媒を加え、遮光し窒素雰囲気下で120時間還流した。その後、メタノールを減圧留去し冷水を100 ml加えた後、炭酸水素ナトリウムで中和を行い、シアン化カリウム1.00 g(15.3 mmol)を加えた。この水溶液を四塩化炭素150 mlで3回、さらに塩化メチレン150 mlで3回抽出した。それぞれの溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過し、溶媒を減圧留去した後、塩化メチレン/n-ヘキサンで再沈殿を行い、生成物をろ過、減圧乾燥し紫色粉末の塩化メチレン抽出体((CN)2Cob(III)6C1エステル)を、収量0.32 g (2.99×10-1 mmol)、収率20%で得た。UV-visスペクトル(溶媒:CH2Cl2):λmax:278, 314, 371, 422, 550, 589 nm、FT-IRスペクトル(KBr錠) νC≡N:2122 cm-1、νC=O:1734 cm-1

【0045】
結合部を有するビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2の合成

【0046】
【化7】
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【0047】
(実験操作)
上記で得られた(CN)2Cob(III) 6C1エステル51.2 mg(4.8×10-2 mmol)、ドーパミン塩酸塩 20.5 mg(mmol)、4-ジメチルアミノピリジン48.4 mg(mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩46.5 mg(mmol)を乾燥DMF 10 mlに溶解し、0℃で6時間、室温で40時間撹拌した。この溶液に水(50 ml)を加え、四塩化炭素(50 ml×2)、塩化メチレン(50 ml×6)で抽出し、塩化メチレン抽出溶液をKCN水溶液(3.1×10-2 M)で振とうした。その後水(50 ml×3)で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾固した。その後、塩化メチレン/n-ヘキサンで再沈殿を行い、紫色粉末を、収量21 mg(1.5×10-5 mol)、収率35%で得た。
UV-visスペクトル(溶媒:CH3OH):λmax:277, 306, 368, 419, 542, 583 nm、FT-IRスペクトル (KBr錠):νC=O(エステル):1733 cm-1、νC=O(アミド):1646 cm-1、νC-C/νC=C(芳香環):1438 cm-1、MALDI-TOF MS(Matrix:dithranol)、m/z = 1157:Cob(III) CON(CH2)2C6H3(OH)2

【0048】
複合触媒の調製

【0049】
【化8】
JP2014195802A_000010t.gif

【0050】
(実験操作)
上記で得られたビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2の4.00 mg(3.3.×10-6 mol)をメタノール1.5 mlに溶解し、アナターゼ型酸化チタン(AMT-600)151 mgを加え懸濁させ、遮光下、常温で24時間攪拌した。この懸濁溶液を、超音波洗浄し、さらにメタノール洗浄によってビタミンB12誘導体の物理吸着分を取り除き、吸引ろ過、真空乾燥によって薄紫色の粉末を得た。

【0051】
(同定)
FT-IRスペクトル、および拡散反射UV-visスペクトル
FT-IRスペクトル(KBr錠)について、図1(b)に示すように、得られた複合触媒のFT-IR測定を行ったところ、上記で得られたビタミンB12誘導体由来のC=O 、C-C(環)、C-O伸縮振動が確認できた。νC=O:1725 cm-1、νC-C/νC=C(芳香環):1500 cm-1

【0052】
拡散反射UV-visスペクトル(CH3OH中)
作製した複合触媒の拡散反射UV-visスペクトル測定結果を図1(c)に示す。未修飾の酸化チタンと比較して、得られた複合触媒由来の吸収および400 nm付近に界面錯体形成により固定化されたビタミンB12誘導体による新しい吸収が確認された。これは、得られた複合触媒が薄紫色(ビタミンB12誘導体由来)に着色していることからも確認された。

【0053】
ビタミンB12誘導体の固定化量測定
複合触媒において、酸化チタン上に固定化しているビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2の量を吸収差法で求めた。すなわち、複合触媒作製時にUV-visスペクトル測定を行い、作製前後による吸収スペクトルの差により酸化チタンによる吸着量を導出した。

【0054】
ビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2の4.00 mg(3.3×10-6 mol)をメタノール1.5 mlに溶解した溶液のうち40μlを分取し、100倍希釈した後、KCNを加えてジシアノ化し、UV-visスペクトルを測定した。また、アナターゼ型酸化チタン(AMT-600)151.0mgを加え懸濁させ、遮光下、常温といった条件で24時間攪拌した後、静置した。そして、上澄み液を80μl分取した後50倍希釈した後KCNを加えてジシアノ化し、UV-visスペクトルを測定した。

【0055】
得られたUV-visスペクトル(溶媒:CH3OH)を図2(a)に示す。583 nmにおけるMeOH中でのジシアノ体(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2のモル吸光係数は、ε=10500 [cm/M]であるので、Lambert-Beer則から調製前のビタミンB12誘導体の濃度は、C 1= Abs. (583 nm) / (ε・l)=100×0.161/(10500 [cm/M] ・1.0 [cm])=1.53×10-3 [M](結果1-1)と得られた。同様に、触媒調製後の濃度を次式で求めることができる。調製後のビタミンB12誘導体の濃度C 2= Abs. (583 nm) / (ε・l)=50×0.032/(10500 [cm/M] ・1.0 [cm])=1.52×10-4 [M](結果1-2)と得られた。

【0056】
従って、系中のビタミンB12誘導体のうち、酸化チタンに固定化されているものの重さは、上記結果から求められ、酸化チタンに固定化されているビタミンB12の物質量=(1.53×10-3 [M]-1.52×10-4 [M])×1.5×10-3 [l]= 2.07×10-6 [mol](結果1-3)と得られた。酸化チタンに固定化されているビタミンB12の重さ=(1.53×10-3 [M]-1.52×10-4 [M])×1.5×10-3 [l] ×1210 [g/mol]=2.51×10-3 [g](結果1-4)と得られた。

【0057】
よって、複合触媒の重さあたりのビタミンB12固定化量は、複合触媒の重さあたりのビタミンB12固定化量=(結果1-3)/ (酸化チタン+ビタミンB12の重さ(結果1-4))=2.07×10-6 [mol] / (151.0+2.51)×10-3 [g]=1.35×10-5 [mol/g]と得られた。

【0058】
酸化チタンの表面積あたりの固定化量について、系中のビタミンB12誘導体の物質量 /酸化チタンの表面積の和=(結果1-3)/ 5.2×105 [cm2/g]×151.0×10-3 [g]=2.64×10-11 [mol/cm2]と得られた。

【0059】
よって、吸収差法によって求められたビタミンB12誘導体の固定化量は、複合触媒の重さあたりのビタミンB12固定化量が1.35×10-5 [mol/g]であり、酸化チタンの表面積あたりの固定化量が2.64×10-11 [mol/cm2]であることが導出された。

【0060】
可視光照射によるビタミンB12誘導体の還元
(実験操作)
得られたビタミンB12誘導体-酸化チタン複合触媒(アナターゼ型) 2.0 mgをメタノール3.5 mlに分散させ、トリエタノールアミン 100 mg(6.7×10-4 mol)を加えた溶液を脱気セルに入れ、20分間窒素バブリングを行った。その後、可視光照射(λ> 420 nm)を行い、拡散反射UV-visスペクトル測定を行った。

【0061】
(結果)
得られた拡散反射UV-visスペクトルを図2(b)に示す。可視光照射を行うと次第にジシアノ体由来である580 nm付近の吸収が次第に減少していき、Co(II)由来である480 nm付近の吸収が増大してきた。さらに光を照射し続けると、Co(II)由来の吸収が減少していき、Co(I)由来である390 nmの吸収が増大した。また、光照射後コックを開放し空気を混入させると、すぐに390 nmの吸収は消失した。このことより390 nmの吸収は酸素に敏感なCo(I)由来であることが分かる。これらの結果より、本発明に係る(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2-アナターゼ型酸化チタン複合触媒は、可視光(λ> 420 nm)によってビタミンB12が活性化され、Co(I)由来の触媒反応が行われることが示唆された。

【0062】
(実施例2)
以下、本発明に係るビタミンB12誘導体-ルチル型酸化チタン複合触媒(連結型)を製造した。

【0063】
(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2-ルチル型酸化チタン複合触媒の調製

【0064】
【化9】
JP2014195802A_000011t.gif

【0065】
(実験操作)
上記で得られたビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2の4.32 mg(3.6×10-6 mol)をメタノール1.5 mlに溶解し、ルチル型酸化チタン(TK-1005)151 mgを加え懸濁させ、遮光下、常温で24時間攪拌した。この懸濁溶液を、超音波洗浄し、さらにメタノール洗浄によってビタミンB12誘導体の物理吸着分を取り除き、吸引ろ過、真空乾燥によって紫色の粉末を得た。

【0066】
複合触媒の同定
FT-IRスペクトル、および拡散反射UV-visスペクトルにより同定を行った。FT-IRスペクトル (KBr錠)について、図3(a)に示すように、作製した複合触媒のFT-IR測定を行ったところ、化合物7由来のC=O 、C-C(環)、C-O伸縮振動が確認できた。νC=O:1717 cm-1、νC-C / νC=C(芳香環):1489 cm-1

【0067】
拡散反射UV-visスペクトル(CH3OH中)
得られた複合触媒の拡散反射UV-visスペクトル測定結果を図3(b)に示す。未修飾の酸化チタンと比較してビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2由来の吸収および400 nm付近に界面錯体形成により固定化されたビタミンB12誘導体による新しい吸収が確認された。これは、得られた複合触媒が薄紫色(ビタミンB12誘導体由来)に着色していることからも確認された。

【0068】
ビタミンB12誘導体の固定化量測定
複合触媒において、酸化チタン上に固定化しているビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2の量を吸収差法で求めた。すなわち、複合触媒作製時にUV-visスペクトル測定を行い、作製前後による吸収スペクトルの差により酸化チタンによる吸着量を導出した。

【0069】
(実験操作)
ビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2の4.32 mg(3.6×10-6 mol)をメタノール1.5 mlに溶解した溶液のうち40μlを分取し、100倍希釈した後、KCNを加えてジシアノ化し、UV-visスペクトルを測定した。また、ルチル型酸化チタン(TK-1005)150.5mgを加え懸濁させ、遮光下、常温といった条件で24時間攪拌した後、静置した。そして、上澄み液を100μl分取した後50倍希釈した後KCNを加えてジシアノ化し、UV-visスペクトルを測定した。

【0070】
(結果)
得られたUV-visスペクトル(溶媒:CH3OH)を図4(a)に示す。583 nmにおけるMeOH中でのジシアノ体(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2のモル吸光係数は、ε=10500 [cm/M]であるので、Lambert-Beer則から、調製前のビタミンB12誘導体の濃度C 1= Abs. (583 nm) / (ε・l)=100×0.222/(10500 [cm/M] ・1.0 [cm])=2.11×10-3 [M](結果2-1)と得られた。同様に、触媒調製後のビタミンB12誘導体の濃度C 2= Abs. (583 nm) / (ε・l)=50×0.028/(10500 [cm/M] ・1.0 [cm])=1.33×10-4 [M](結果2-2)と得られた。

【0071】
従って、系中のビタミンB12誘導体のうち、酸化チタンに固定化されているビタミンB12の物質量は、(結果2-1)および(結果2-2)から求められ、(2.11×10-3 [M]-1.33×10-4 [M])×1.5×10-3 [l]= 2.97×10-6 [mol](結果2-3)と得られた。また、酸化チタンに固定化されているビタミンB12の重さは、(2.11×10-3 [M]-1.33×10-4 [M])×1.5×10-3 [l] ×1210 [g/mol]=3.59×10-3 [g](結果2-4)と得られた。

【0072】
よって、複合触媒の重さあたりのビタミンB12固定化量は、複合触媒の重さあたりのビタミンB12固定化量=(結果2-3)/ (酸化チタン+ビタミンB12の重さ(結果2-4))=2.97×10-6 [mol] / (150.5+3.59)×10-3 [g]=1.93×10-5 [mol/g]と得られた。

【0073】
酸化チタンの表面積あたりの固定化量は、系中のビタミンB12誘導体の物質量 / 酸化チタンの表面積の和=(結果2-3) / 5.2×105 [cm2/g]×150.5×10-3 [g]=3.79×10-11 [mol/cm2]と得られた。

【0074】
以上、吸収差法によって求められたビタミンB12誘導体の固定化量は、複合触媒の重さあたりのビタミンB12固定化量は1.93×10-5 [mol/g]であり、酸化チタンの表面積あたりの固定化量は3.79×10-11 [mol/cm2]と導出された。

【0075】
可視光照射によるビタミンB12誘導体の還元
(実験操作)
得られたビタミンB12誘導体-酸化チタン複合触媒 (ルチル型)2.0 mgをメタノール3.5 mlに分散させ、トリエタノールアミン 100 mg(6.7×10-4 mol)を加えた溶液を脱気セルに入れ、20分間窒素バブリングを行った。その後、可視光照射(λ> 420 nm)を行い、拡散反射UV-visスペクトル測定を行った。

【0076】
(結果)
得られた拡散反射UV-visスペクトルを図4(b)に示す。可視光照射を行うと次第にジシアノ体由来である580 nm付近の吸収が次第に減少していき、Co(II)由来である480 nm付近の吸収が増大してきた。さらに光を照射し続けると、Co(II)由来の吸収が減少していき、Co(I)由来である390 nmの吸収が増大した。また、光照射後コックを開放し空気を混入させると、直ちに390 nmの吸収は消失した。このことより390 nmの吸収は酸素に敏感なCo(I)由来であることが分かる。これらの結果より、(CN)2Cob(III)CON(CH2)2C6H3(OH)2-ルチル型酸化チタン複合触媒は、可視光(λ> 420 nm)によってビタミンB12が活性化され、Co(I)由来の触媒反応が行われることが示唆された。

【0077】
(実施例3)
以下、本発明に係るビタミンB12誘導体-アナターゼ型酸化チタン複合触媒(個別修飾型)を製造した。

【0078】
出発原料となるビタミンB 12誘導体(CN) 2Cob(III)CON[(CH 2) 3Si(OCH 3) 3] 2 の合成

【0079】
【化10】
JP2014195802A_000012t.gif

【0080】
(実験操作)
(CN)(H2O)Cob(III) 6C1エステル の50.8 mg(4.4×10-5 mol)を乾燥DMF 10 mlに溶解し、シアノリン酸ジエチル16 mg(1.0×10-4 mol)を加え0℃で30分間撹拌した。そこへビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン40 mg(1.2×10-4 mol)及び、トリエチルアミン0.015 ml(1.1×10-5 mol))を加え、0℃で6時間、室温で15時間撹拌した。この溶液に塩化メチレンを加え、水(50 ml×3)で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧乾固した。その後、塩化メチレン/n-ヘキサンで再沈殿を行い、紫色粉末を収量21 mg(1.5×10-5 mol)、収率35%で得た。UV-visスペクトル(溶媒:CH2Cl2):λmax:278, 315, 371, 422, 549, 588 nm、FT-IRスペクトル (KBr錠):νC=O(エステル):1740 cm-1、νC=O(アミド):1672 cm-1、MALDI-TOF MS(Matrix:dithranol):m/z = 1345 :Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2、m/z = 1371 :(CN)Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2

【0081】
出発原料となるカテコール-アナターゼ型酸化チタンの調製

【0082】
【化11】
JP2014195802A_000013t.gif

【0083】
(実験操作)
カテコール53.8 mg(4.9×10-1 mmol)をエタノール4.0 mlに溶解し、ここにアナターゼ型酸化チタン(AMT-600) 307 mgを加え懸濁させ、遮光下、常温で24時間攪拌した。この懸濁溶液を、超音波洗浄し、さらにエタノール洗浄によってカテコールの物理吸着分を取り除き、遠心分離した後、真空乾燥し淡黄色の粉末を得た。

【0084】
カテコール-アナターゼ型酸化チタンの同定
FT-IRスペクトルおよび拡散反射UV-visスペクトルにより同定を行った。FT-IRスペクトル(KBr錠)について、得られたカテコール-アナターゼ型酸化チタンのFT-IR測定を行ったところ、カテコール由来のC-C(環)、C-O伸縮振動が確認できた。νC-C / νC=C(芳香環):1484 cm-1。νC-O:1263 cm-1
また、拡散反射UV-visスペクトル(CH3OH中)について、得られた酸化チタンの拡散反射UV-visスペクトル測定結果から、未修飾の酸化チタンと比較して新しい吸収が確認された。

【0085】
カテコールの固定化量測定
酸化チタン上に固定化しているカテコールの量を調製前後のカテコールの質量差より求めた。カテコール 53.8 mg(4.9×10-1 mmol)をエタノール4.0 mlに溶解させたのち、アナターゼ型酸化チタン(AMT-600) 307 mgを加え懸濁させ、遮光下、常温といった条件で24時間撹拌した。そして懸濁溶液を遠心分離し、エタノール洗浄によってカテコールの物理吸着分を取り除き、その上澄み溶液を回収した。上澄み溶液を減圧乾固し、真空乾燥させたのち、質量を測定した。

【0086】
(結果)
調製前のカテコールの質量 M1 = 53.8×10-3 [g]、調製後のカテコールの質量 M2 = 50.4×10-3 [g]と得られた。従って、酸化チタン上に固定化されているカテコールの物質量は、 (53.8×10-3 [g]-50.4×10-3 [g]) / 110 [g/mol]=3.12×10-5 [mol](結果3-1)と得られた。

【0087】
よって、修飾酸化チタンの重さあたりのカテコール固定化量は、修飾酸化チタンの重さあたりのカテコール固定化量=((結果3-1)/修飾酸化チタンの重さ)=3.12×10-5 [mol] / (307×10-3 [g] + 3.4×10-3 [g])=1.01×10-4 [mol/g]と得られた。

【0088】
また、酸化チタンの単位面積あたりの固定化量は、系中のカテコールの物質量 / 酸化チタンの表面積の和=(結果3-1) / (5.2×105[cm2/g]×307×10-3 [g])=1.95×10-10[mol/cm2]と得られた。

【0089】
以上より、カテコールの固定化量は、修飾酸化チタンの重さあたりのカテコール固定化量・・・1.01×10-4 [mol/g] 、酸化チタンの単位面積あたりの固定化量・・・1.95×10-10[mol/cm2]と導出された。

【0090】
ビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2-カテコール-アナターゼ型酸化チタン複合触媒(個別修飾型)の調製

【0091】
【化12】
JP2014195802A_000014t.gif

【0092】
(実験操作)
ビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2の4.20 mg(3.0×10-6 mol)をメタノール1.0 mlに溶解し、ここにカテコール-アナターゼ型酸化チタン(AMT-600) 101 mgを加え懸濁させ、遮光下、常温といった条件で24時間攪拌した。この懸濁溶液を、超音波洗浄し、さらにメタノール洗浄によってビタミンB12誘導体の物理吸着分を取り除き、遠心分離、真空乾燥によって赤紫色の粉末を得た。

【0093】
複合触媒の同定
FT-IRスペクトルおよび拡散反射UV-visスペクトルにより同定を行った。
FT-IRスペクトル (KBr錠)
得られた複合触媒のFT-IR測定を行ったところ、図5(a)に示すように、ビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2由来のC=O伸縮振動、カテコール由来のC-C(環)、C-O伸縮振動が確認できた。νC=O:1731cm-1、νC-C / νC=C(芳香環):1466 cm-1、νC-O:1268 cm-1

【0094】
拡散反射UV-visスペクトル(CH3OH中)
得られた複合触媒の拡散反射UV-visスペクトルを図5(b)に示す。未修飾の酸化チタンと比較してカテコール修飾による吸収とビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2由来の吸収が確認された。これは、得られた複合触媒が薄紫色(ビタミンB12誘導体由来)に着色していることからも確認された。

【0095】
ビタミンB12誘導体の固定化量測定
複合触媒において、酸化チタン上に固定化しているビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2の量を吸収差法で求めた。すなわち、複合触媒作製時にUV-visスペクトル測定を行い、作製前後による吸収スペクトルの差により酸化チタンによる吸着量を導出した。

【0096】
(実験操作)
ビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2の4.20 mg(3.0×10-6 mol)をメタノール1.0 mlに溶解した溶液のうち100μlを分取し、50倍希釈した後、KCNを加えてジシアノ化し、UV-visスペクトルを測定した。また、カテコール-アナターゼ型酸化チタン(AMT-600)101.2mgを加え懸濁させ、遮光下、常温といった条件で24時間攪拌した後、静置した。そして、上澄み液を100μl分取した後50倍希釈した後KCNを加えてジシアノ化し、UV-visスペクトルを測定した。

【0097】
得られたUV-visスペクトル(溶媒:CH3OH)を図6に示す。582 nmにおけるMeOH中でのジシアノ体(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2のモル吸光係数は、ε=10500 [cm/M]であるので、Lambert-Beer則から調製前のビタミンB12誘導体の濃度C 1= Abs. (582 nm) / (ε・l)=50×0.608/(10500 [cm/M] ・1.0 [cm])=2.90×10-3 [M]・・・(結果3-1)と得られた。同様に、触媒調製後のビタミンB12誘導体の濃度C 2= Abs. (582 nm) / (ε・l)=50×0.237/(10500 [cm/M] ・1.0 [cm])=1.13×10-3 [M]・・・(結果3-2)と得られた。

【0098】
従って、系中のビタミンB12誘導体のうち、酸化チタンに固定化されているビタミンB12の物質量は、(結果3-1)および(結果3-2)から求められ、(2.90×10-3 [M]-1.13×10-3 [M])×1.0×10-3 [l]= 1.77×10-6 [mol] ・・・(結果3-3)と得られた。

【0099】
酸化チタンに固定化されているビタミンB12の重さは、(2.90×10-3 [M]-1.13×10-3 [M])×1.0×10-3 [l] ×1398 [g/mol]=2.48×10-3 [g] ・・・(結果3-4)と得られた。

【0100】
よって、複合触媒の重さあたりのビタミンB12固定化量は、(結果3-3) / (酸化チタン+ビタミンB12の重さ(結果3-4)) =1.77×10-6 [mol] / (101.2+2.48)×10-3 [g]=1.71×10-5 [mol/g]と得られた。

【0101】
酸化チタンの表面積あたりの固定化量は、系中のビタミンB12誘導体の物質量 / 酸化チタンの表面積の和=(結果3-3) / 5.2×105 [cm2/g]×101.2×10-3 [g]=3.36×10-11 [mol/cm2]と得られた。

【0102】
以上、吸収差法によって求められたビタミンB12誘導体の固定化量は、複合触媒の重さあたりのビタミンB12固定化量1.71×10-5 [mol/g]、酸化チタンの表面積あたりの固定化量3.36×10-11 [mol/cm2]と導出された。

【0103】
(実施例4)
以下、本発明に係るビタミンB12誘導体-ルチル型酸化チタン複合触媒(個別修飾型)を製造した。

【0104】
ビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2-カテコール-ルチル型酸化チタン複合触媒(個別修飾型)の調製

【0105】
【化13】
JP2014195802A_000015t.gif

【0106】
(実験操作)
ビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2の5.05 mg(3.6×10-6 mol)をメタノール1.5 mlに溶解し、カテコール-ルチル型酸化チタン(TK-1005)151 mgを加え懸濁させ、遮光下、常温といった条件で24時間攪拌した。この懸濁溶液を、超音波洗浄し、さらにメタノール洗浄によってビタミンB12誘導体の物理吸着分を取り除き、吸引ろ過、真空乾燥によって赤紫色の粉末を得た。

【0107】
(複合触媒の同定)
FT-IRスペクトルおよび拡散反射UV-visスペクトルにより同定を行った。FT-IRスペクトル (KBr錠)について、得られた作製した複合触媒のFT-IR測定を行ったところ、図7(a)に示すように、ビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2由来のC=O伸縮振動,カテコール由来のC-C(環)、C-O伸縮振動が確認できた。νC=O:1732 cm-1、νC-C / νC=C(芳香環):1482 cm-1、νC-O:1258 cm-1

【0108】
拡散反射UV-visスペクトル(CH3OH中)
得られた複合触媒の拡散反射UV-visスペクトル測定結果を図7(b)に示す。未修飾の酸化チタンと比較してカテコール修飾による吸収とビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2由来の吸収が確認された。これは、得られた複合触媒が薄紫色(ビタミンB12誘導体由来)に着色していることからも確認された。

【0109】
ビタミンB12モデル誘導体の固定化量測定
複合触媒において、酸化チタン上に固定化しているビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]2の量を吸収差法で求めた。すなわち、複合触媒作製時にUV-visスペクトル測定を行い、作製前後による吸収スペクトルの差により酸化チタンによる吸着量を導出した。

【0110】
(実験操作)
ビタミンB12誘導体である化合物(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3Si(OCH3)3]25.05 mg(3.6×10-6 mol)をメタノール1.5 mlに溶解した溶液のうち50μlを分取し、100倍希釈した後、KCNを加えてジシアノ化し、UV-visスペクトルを測定した。また、カテコール-ルチル型酸化チタン(TK-1005)150.8mgを加え懸濁させ、遮光下、常温といった条件で24時間攪拌した後、静置した。そして、上澄み液を100μl分取した後50倍希釈した後KCNを加えてジシアノ化し、UV-visスペクトルを測定した。

【0111】
(結果)
得られたUV-visスペクトル(溶媒:CH3OH)を図8(a)に示す。583 nmにおけるMeOH中での上記ジシアノ体のモル吸光係数は、ε=10500 [cm/M]であるので、Lambert-Beer則から調製前のビタミンB12誘導体の濃度C 1= Abs. (583 nm) / (ε・l)=100×0.236/(10500 [cm/M] ・1.0 [cm])=2.25×10-3 [M](結果4-1)と得られた。同様に、触媒調製後のビタミンB12誘導体の濃度C 2= Abs. (583 nm) / (ε・l)=50×0.203/(10500 [cm/M] ・1.0 [cm])=9.67×10-4 [M](結果4-2)と得られた。

【0112】
従って、系中のビタミンB12誘導体のうち、酸化チタンに固定化されているものの重さは、(結果4-1)および(結果4-2)から求められ、酸化チタンに固定化されているビタミンB12の物質量=(2.25×10-3 [M]-9.67×10-4 [M])×1.5×10-3 [l]= 1.92×10-6 [mol](結果4-3)と得られた。また、酸化チタンに固定化されているビタミンB12の重さ=(2.25×10-3 [M]-9.67×10-4 [M])×1.5×10-3 [l] ×1398 [g/mol]=2.69×10-3 [g](結果4-4)と得られた。

【0113】
従って、複合触媒の重さあたりのビタミンB12固定化量は、(結果4-3) / (酸化チタン+ビタミンB12の重さ(結果4-4)) =1.92×10-6 [mol] / (150.8+2.69)×10-3 [g]=1.25×10-5 [mol/g]と得られた。

【0114】
酸化チタンの表面積あたりの固定化量は、系中のビタミンB12誘導体の物質量 / 酸化チタンの表面積の和=(結果4-3) / 5.2×105 [cm2/g]×150.8×10-3 [g]=2.45×10-11 [mol/cm2]と得られた。

【0115】
以上、吸収差法によって求められたビタミンB12誘導体の固定化量は、複合触媒の重さあたりのビタミンB12固定化量が1.25×10-5 [mol/g]、酸化チタンの表面積あたりの固定化量が2.45×10-11 [mol/cm2]と導出された。

【0116】
可視光照射によるビタミンB12誘導体の還元
(実験操作)
作製したビタミンB12-酸化チタン複合触媒(ルチル型、個別修飾型) 2.0 mgをメタノール3.5 mlに分散させ、トリエタノールアミン 100 mg(6.7×10-4 mol)を加えた溶液を脱気セルに入れ、20分間窒素バブリングを行った。その後、可視光照射(λ> 420 nm)を行い、拡散反射UV-visスペクトル測定を行った。

【0117】
(結果)
得られた拡散反射UV-visスペクトルを図8(b)に示す。可視光照射を行うと次第にジシアノ体由来である580 nm付近の吸収が次第に減少していき、Co(II)由来である480 nm付近の吸収が増大してきた。さらに光を照射し続けると、Co(II)由来の吸収が減少していき、Co(I)由来である390 nmの吸収が増大した。また、光照射後コックを開放し空気を混入させると、すぐに390 nmの吸収は消失した。このことより390 nmの吸収は酸素に敏感なCo(I)由来であることが分かる。これらの結果より、(CN)2Cob(III)CON[(CH2)3 Si(OCH3)3]2-カテコール-ルチル型酸化チタン複合触媒は、可視光(λ> 420 nm)によってビタミンB12が活性化され、Co(I)由来の触媒反応が行われることが示唆された。

【0118】
(実施例5)
本発明に係るビタミンB12誘導体-アナターゼ型酸化チタン複合触媒(非連結型)は、上記実施例1のアナターゼ型酸化チタン(AMT-600)と、文献(Bull. Chem. Soc. Jpn., 1983, 56, 3642-3646)に記載されたビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III)7C1エステルを加え懸濁させ、遮光下、常温で24時間攪拌して単に混合することによって製造した。

【0119】
(実施例6)
本発明に係るビタミンB12誘導体-ルチル型酸化チタン複合触媒(非連結型)は、上記実施例2のルチル型酸化チタン(TK-1005)と、文献(Bull. Chem. Soc. Jpn., 1983, 56, 3642-3646)に記載されたビタミンB12誘導体(CN)2Cob(III) 7C1エステルを加え懸濁させ、遮光下、常温で24時間攪拌して単に混合することによって製造した。

【0120】
(触媒作用の確認)
上記実施例1で得られた本発明に係るビタミンB12誘導体-アナターゼ型酸化チタン複合触媒について、その触媒作用を、以下の反応例1~13として確認した。
反応例1~9:脱塩素を含む脱ハロゲン化反応(トリクロロエチルベンゼンの分解)
反応例10:脱塩素を含む脱ハロゲン化反応(DDTの分解)
反応例11:アルケン類の還元反応(スチレンの還元)
反応例12:エステル合成反応(安息香酸メチルの合成)
反応例13:官能基転位反応(ジエチル2-ブロモメチル-2-フェニルマロネートを基質とした官能基転位反応)

【0121】
先ず、本発明に係るビタミンB12誘導体-アナターゼ型酸化チタン複合触媒の脱ハロゲン化反応として、脱塩素反応の触媒作用を、反応例1~9として確認した。

【0122】
表1は、本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒の調製前後の可視光応答型光反応用触媒による光反応結果を示す。表2は、本発明に係る可視光応答型光反応用複合触媒のビタミンB12誘導体を有しない可視光応答型光反応用触媒による光反応結果(コントロール)を示す。表3は、紫外線応答型ビタミンB12-酸化チタン光反応用触媒による可視光照射時における光反応結果(コントロール)を示す。
なお、表1~3では、以下の化学反応式により、トリクロロエチルベンゼンが分解されて得られた上記化合物1~4の各収率も合わせて記載する。

【0123】
【化14】
JP2014195802A_000016t.gif

【0124】
(反応例1)
トリクロロエチルベンゼンを5mmol/Lの濃度でメタノール(和光純薬工業(株)製、試薬特級)に溶解させ、10mLを秤取り、パイレックスガラス(登録商標)製シュレンク管 (30 mL)に入れた。次いで、トリエタノールアミン(0.1mol/L)および上記で得た可視光応答型光反応用触媒(アナターゼ型)10mgを加え、撹拌して懸濁させながら窒素ガスをバブリングさせて溶存酸素を除去し、次いで撹拌下に光照射装置(シグマ光輝製カットオフフィルターL42付属)により、420nm以下の光をカットした可視光を3時間照射した。紫外光照射後の反応混合物における有機化合物の含有量をガスクロマトグラフィー質量分析装置により求めて、用いた有機ハロゲン化物のうち脱ハロゲン化されたものの割合(転化率、%)および脱塩素化生成物の生成量(収率、%)を求めた。脱塩素化反応物として、トランス-1,2-ジクロロジフェニルエチレン(化合物1)、シス-1,2-ジクロロジフェニルエチレン(化合物2)、2、2’、3、3’-テトラクロロ1、2-ジフェニルエタン(化合物3)、安息香酸メチル(化合物4)が得られた。結果を表1(エントリー1)に示す。

【0125】
(反応例2)
反応例1で用いた可視光応答型光反応用触媒に代えて、ビタミンB12錯体とカテコール基を個別に修飾した光反応用触媒(アナターゼ型)を用いた以外は反応例1と同様に操作し光化学反応を行った。結果を表1(エントリー2)に示す。

【0126】
(反応例3)
反応例1で用いた可視光応答型光反応用触媒に代えて、ビタミンB12錯体は溶解させ(2.0x10-7 mol)、カテコール基のみを修飾した光反応用触媒(アナターゼ型)を用いた以外は反応例1と同様に操作し光化学反応を行った。結果を表1(エントリー3)に示す。

【0127】
(反応例4)
反応例1で用いた可視光応答型光反応用触媒に代えて、可視光応答型光反応用触媒(ルチル型)を用いた以外は反応例1と同様に操作し光化学反応を行った。結果を表1(エントリー4)に示す。

【0128】
(反応例5)
反応例1で用いた可視光応答型光反応用触媒に代えて、ビタミンB12錯体とカテコール基を個別に修飾した光反応用触媒(ルチル型)を用いた以外は反応例1と同様に操作し光化学反応を行った。結果を表1(エントリー5)に示す。

【0129】
(反応例6)
反応例1で用いた可視光応答型光反応用触媒に代えて、ビタミンB12錯体は溶解させ(2.0x10-7 mol)、カテコール基のみを修飾した光反応用触媒(ルチル型)を用いた以外は反応例1と同様に操作し光化学反応を行った。結果を表1(エントリー6)に示す。

【0130】
以下、本発明に係るビタミンB12誘導体-アナターゼ型酸化チタン複合触媒に対するコントロール実験を、反応例7~9として確認した。

【0131】
(反応例7):コントロール
反応例1で用いた可視光応答型光反応用触媒に代えて、カテコール基のみを修飾した光反応用触媒(アナターゼ型)を用いた以外は反応例1と同様に操作し光化学反応を行った。結果を表2(エントリー1)に示す。

【0132】
(反応例8):コントロール
反応例1で用いた可視光応答型光反応用触媒に代えて、カテコール基のみを修飾した光反応用触媒(ルチル型)を用いた以外は反応例1と同様に操作し光化学反応を行った。結果を表2(エントリー2)に示す。

【0133】
(反応例9):コントロール
反応例1で用いた可視光応答型光反応用触媒に代えて、上述の特許文献1に示される紫外線応答型ビタミンB12-酸化チタン光反応用触媒を用いた以外は実施例1と同様に操作し光化学反応を行った。結果を表3(エントリー1)に示す。

【0134】
【表1】
JP2014195802A_000017t.gif

【0135】
【表2】
JP2014195802A_000018t.gif

【0136】
【表3】
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【0137】
さらに、本発明に係るビタミンB12誘導体-アナターゼ型酸化チタン複合触媒(連結型)について、さらなる触媒作用を、以下の反応例10~13として確認した。

【0138】
(反応例10):脱塩素を含む脱ハロゲン化反応(DDTの分解)
1,1-ビス(4-クロロフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン〔DDT〕(東京化成工業社(株)製、試薬特級)を5.0mmol/Lの濃度でアセトニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬特級)に溶解させ、10mLを秤取り、パイレックスガラス製シュレンク管 (30 mL)に入れた。次いで、トリエタノールアミン(0.1mol/L)(ナカライテスク社(株)製、試薬特級)および可視光応答型光反応用触媒(アナターゼ型)10mgを加え、撹拌して懸濁させながら窒素ガスをバブリングさせて溶存酸素を除去し、次いで撹拌下に光照射装置(シグマ光輝製カットオフフィルターL42付属)により、420nm以下の光をカットした可視光を2時間照射した。可視光照射後の反応混合物における有機化合物の含有量をガスクロマトグラフィー質量分析装置により求めて、反応生成物の生成量(収率、%)を求めた。反応生成物として、1,1-ビス(4-クロロフェニル)-2,2-ジクロロエタン〔DDD〕、1,1,4,4-テトラキス(4-クロロフェニル)-2,3-テトラクロロ-ブタン〔TTBB〕、1,1,4,4-テトラキス(4-クロロフェニル)-2,3-ジクロロ-2-ブテン(E体、Z体)〔TTDB〕が得られた。結果を以下の式(1)に示す。

【0139】
【化15】
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【0140】
(反応例11):アルケン類の還元反応(スチレンの還元)
スチレン(ナカライテスク社(株)製、試薬特級)を6.48mmol/Lの濃度でメタノール(和光純薬工業(株)製、試薬特級)に溶解させ、6mLを秤取り、パイレックスガラス製シュレンク管 (30 mL)に入れた。次いで、1,3-ジメチルベンズイミダゾリン(30.6 mmol/L)(文献(H. Chikashita, K. Itoh, Bull. Chem. Soc. Jpn., 1986, 59, 1747-1752.)記載の方法で合成した)および可視光応答型光反応用触媒(アナターゼ型)10mgを加え、撹拌して懸濁させながら窒素ガスをバブリングさせて溶存酸素を除去し、次いで撹拌下に光照射装置(シグマ光輝製カットオフフィルターL42付属)により、420nm以下の光をカットした可視光を24時間照射した。可視光照射後の反応混合物における有機化合物の含有量をガスクロマトグラフィー質量分析装置により求めて、反応生成物の生成量(収率、%)を求めた。反応生成物として、2,3-ジフェニルベンゼン(ラセミ体、メソ体)が得られた。結果を以下の式(2)に示す。

【0141】
【化16】
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【0142】
(反応例12):エステル合成反応(安息香酸メチルの合成)
トリクロロメチルベンゼン(東京化成工業社(株)製、試薬特級)を2.96mmol/Lの濃度でメタノール(和光純薬工業(株)製、試薬特級)に溶解させ、6mLを秤取り、パイレックスガラス製シュレンク管 (30 mL)に入れた。次いで、1,3-ジメチルベンズイミダゾリン(30.9 mmol/L)および可視光応答型光反応用触媒(アナターゼ型)10mgを加え、空気下撹拌下に光照射装置(シグマ光輝製カットオフフィルターL42付属)により、420nm以下の光をカットした可視光を5時間照射した。可視光照射後の反応混合物における有機化合物の含有量をガスクロマトグラフィー質量分析装置により求めて、反応生成物の生成量(収率、%)を求めた。反応生成物として、安息香酸メチルが得られた。結果を以下の式(3)に示す。

【0143】
【化17】
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【0144】
(反応例13):ジエチル2-ブロモメチル-2-フェニルマロネートを基質とした官能基転位反応
先ず、ジエチル2-ブロモメチル-2-フェニルマロネートは、文献(H. Shimakoshi, M. Abiru, S. Izumi, Y. Hisaeda, Chem. Commun., 2009, 6427-6429.)記載の方法で合成した。
ジエチル2-ブロモメチル-2-フェニルマロネートを5.0mmol/Lの濃度でアセトニトリル(和光純薬工業(株)製、試薬特級)に溶解させ、10mLを秤取り、パイレックスガラス製シュレンク管 (30 mL)に入れた。次いで、トリエタノールアミン(0.1mol/L)(ナカライテスク社(株)製、試薬特級)および可視光応答型光反応用触媒(アナターゼ型)10mgを加え、撹拌して懸濁させながら窒素ガスをバブリングさせて溶存酸素を除去し、次いで撹拌下に光照射装置(シグマ光輝製カットオフフィルターL42付属)により、420nm以下の光をカットした可視光を24時間照射した。可視光照射後の反応混合物における有機化合物の含有量をガスクロマトグラフィー質量分析装置により求めて、反応生成物の生成量(収率、%)を求めた。反応生成物として、ジエチルベンジルマロネート(フェニル基転位化合物)およびジエチル2-メチル-2-フェニルマロネート(還元化合物)が得られた。結果を以下の式(4)に示す。

【0145】
【化18】
JP2014195802A_000023t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7