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明細書 :MALDI質量分析用マトリックス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-028474 (P2015-028474A)
公開日 平成27年2月12日(2015.2.12)
発明の名称または考案の名称 MALDI質量分析用マトリックス
国際特許分類 G01N  27/64        (2006.01)
G01N  27/62        (2006.01)
FI G01N 27/64 B
G01N 27/62 V
G01N 27/62 K
G01N 27/62 Y
請求項の数または発明の数 13
出願形態 OL
全頁数 67
出願番号 特願2014-134965 (P2014-134965)
出願日 平成26年6月30日(2014.6.30)
優先権出願番号 2013137028
優先日 平成25年6月28日(2013.6.28)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】新藤 充
【氏名】割石 博之
【氏名】三浦 大典
【氏名】藤村 由紀
【氏名】松本 健司
出願人 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査請求 未請求
テーマコード 2G041
Fターム 2G041CA01
2G041DA04
2G041FA06
2G041JA08
要約 【課題】メタボローム解析に利用可能なMALDI質量分析方法を提供する。
【解決手段】特定の式で表される化合物ならびにそれらの塩からなる群より選択される1または複数の化合物をマトリックスとして用いる。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
次の一般式Iまたは式IIで表される化合物、下記化合物56、57、62、63、64、65および66ならびにそれらの塩からなる群より選択される1または複数の化合物を、対象と混合して用いる、MALDI質量分析方法。
【化1】
JP2015028474A_000058t.gif
(式I中:
環Cが6員の炭素からなる環であり、かつ環A、BおよびCのうちのいずれか1つまたは2つが非芳香族性であり、残りが芳香族性であるか;または環Cが存在せず、かつ環AおよびBのうちの少なくとも1つが芳香属性であり;かつ
R1、R2およびR3のうち芳香属性の環上の置換基である少なくとも1つがNH2もしくはNHR9であり、このときR9がC1-6アルキルであり、かつ残りがH、F、Cl、BrもしくはIであるか;またはR1が次の式
【化2】
JP2015028474A_000059t.gif
で表される基であり、R2がHであり、かつR3がNH2もしくはNHR9であり、このときR9がC1-6アルキルであり;かつ
R4がHであるか;または環Bが芳香族性であり、かつR1がNH2もしくはNHR9である(R9は上で定義したとおりである。)とき、R4がF、Cl、BrもしくはIである。)

【化3】
JP2015028474A_000060t.gif
(式II中、
環D、EおよびFが還元されたアクリジン環を構成し;かつ
R5、R6およびR7のうち少なくとも1つがNH2もしくはNHR10であり、このときR10がC1-6アルキルであり、かつ残りがHであるか;またはR5、R6およびR7がHであり;かつ
R8がHまたは存在しない。)
【化4】
JP2015028474A_000061t.gif

【請求項2】
1または複数の化合物が、下記化合物44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65および66ならびにそれらの塩からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【化5】
JP2015028474A_000062t.gif

【請求項3】
分析が、ネガティブモードで行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
MALDI-TOF質量分析方法である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
対象が、一または複数の分子量1000以下のアニオン種を含む試料である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
分子量1000以下のアニオン種が、アミノ酸である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
イメージング質量分析、メタボローム解析、疾患マーカー解析または医薬候補物質のスクリーニングのために行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1に定義された一般式Iまたは式IIで表される化合物およびそれらの塩からなる群より選択される1または複数の化合物を含む、MALDI質量分析用マトリックス。
【請求項9】
1または複数の化合物が、請求項2に定義された群より選択される、請求項7に記載のマトリックス。
【請求項10】
請求項8または9に記載のマトリックスを含む、MALDI質量分析用キット。
【請求項11】
次の一般式I-1で表される化合物またはその塩。
【化6】
JP2015028474A_000063t.gif
(式I-1中:
R1がNH2またはNHR9であり、かつR2およびR3がHであり;かつ
R4がF、Cl、BrもしくはIである。)
【請求項12】
化合物が下記のいずれかである、請求項11に記載の化合物またはその塩。
【化7】
JP2015028474A_000064t.gif

【請求項13】
下記のいずれかの化合物またはその塩。
【化8】
JP2015028474A_000065t.gif
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マトリックスとして新規な化合物を用いる、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)質量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MALDI(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization、マトリックス支援レーザー脱離イオン化)は、汎用性の高いイオン化法であり、質量分析のためのイオン源として広く利用されている。
【0003】
MALDI質量分析では通常、レーザーエネルギーを効率良く吸収するマトリックスと呼ばれる化合物中に分析対象となる分子を均一に分散させた微細結晶を調製し、レーザー光を照射する。この操作により、試料分子をほとんどフラグメント化することなくイオン化し、得られた分子イオンを質量分析に供することができる。MALDI質量分析では多くの場合、対象分子をポジティブイオン化し、ポジティブイオンとして検出するポジティブモードで行われるが、リン酸化または硫酸化されたペプチド類、オリゴヌクレオチド類および酸性オリゴ糖等、プロトンを放出しやすい官能基を有する分子はネガティブイオン化し、ネガティブモードで分析される。
【0004】
MALDI質量分析では、分析対象に応じてマトリックスを選択する必要があり、これまで、様々な検討がされてきた。例えば、非特許文献1~3は、特定の非極性の分子、分子約700~5000ポリブタジエンまたは低分子粗製油画分等を分析対象とし、anthracene等の非極性分子をマトリックスとして用いるポジティブモードのMALDI質量分析について報告する。また非特許文献4は、gramicidin S、bovine insulin、aprotinin等のタンパク質を分析対象とし、pyridoindole類、pyridylindole類およびpyridylpyridoindole類である含窒素ヘテロ環化合物をマトリックスとして用いるMALDI質量分析について報告する。また非特許文献5は、ネガティブモードのMALDI質量分析における、9-aminoacridineのマトリックスとしての使用について報告する。ここでは、フェノール類、カルボン酸類、スルホン酸エステル類、アミン類およびアルコールのようなプロトンを放出する、分子量の比較的小さい分子、並びにオリゴヌクレオチド、オリゴアミドおよびタンパク質のような高分子を対象として分析を試みている。また、特許文献1は、アミノキノリンのイオンと酸性基含有有機物質のイオンとを含む液体マトリックスを用い、糖、糖ペプチドまたはペプチドを分析対象とするMALDI質量分析法を提案する。
【0005】
一方、本発明者らは、アントラセン、フェナントレン、アクリジンまたはキノリン骨格を有するMALDI質量分析用マトリックスを開発している(特許文献2)。そして、9-aminoanthracene(前掲特許文献2中の化合物17)をマトリックスとして、アニオン性生体成分の混合物を分析対象としたネガティブモードのMALDI質量分析に用いたところ、多数の分子が検出可能であることを報告している。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2009-257848
【特許文献2】WO2013/008723
【0007】

【非特許文献1】MACHA, S.F., Influence of ionization energy on charge-transfer ionization in matrix-assisted laser desorption/ionization mass spectrometry, Analytica Chimica Acta, 1999, 397, 235-245
【非特許文献2】MACHA, S. F., Appl ication of Nonpolar Matrices for the Analysis of Low Molecular Weight Nonpolar Synthetic Polymers by Matrix-Assisted Laser Desorption/Ionization Time-of-Flight Mass Spectrometry, J Am Soc Mass Spectrom, 2000, 11, 731-737
【非特許文献3】Robins,C., The use of nonpolar matrices for matrix-assisted laser desorption/ionization mass spectrometric analysis of high boiling crude oil fractions, Rapid Commun. Mass Spectrom., 17, 2003, 2839-2845
【非特許文献4】NONAMI,H., Evaluation of pyridoindoles, pyridylindoles andpyridylpyridoindoles as matrices for ultraviolet matrix-assisted laser desorption/ionization time-of-flight mass spectrometry, Rapid Commun. Mass Spectrom., 2001, 15; 2354-2373
【非特許文献5】VERMILLION-SALSBURY, R. L., 9-Aminoacrydine as a matrix for negative mode matrix-assisted laser desorption/ionization, Rapid Commun. Mass Spectrom., 2002, 16, 1575-1581
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、生体低分子の網羅的な解析を行うことを目的に、約300種の代謝物質を用いたMALDI質量分析を行い、数種のアミノ酸が感度よく検出されることを見出してきた。低分子化合物をネガティブモードで分析するためのマトリックスとしては、上述の9-aminoacridine(9-AA)が汎用されてきたが、9-AAではproline、cysteineおよびpipecolate等を検出できなかった。また、上述の9-aminoanthracene(化合物17)は、アミノ酸検出において比較的有効ではあったが、不安定であり、取扱い上の問題があった。
【0009】
今般、アミノ酸を高感度で検出するのに有効な、MALDI質量分析用マトリックスを探索した。そして化合物17および9-AAの部分還元体を合成し、数種のアミノ酸混合物を対象としてMALDI質量分析を行った結果、アミノ酸を対象としたネガティブモードMALDI質量分析のための新規なマトリックスを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記を提供する。
[1] 次の一般式Iまたは式IIで表される化合物、下記化合物56、57、62、63、64、65および66ならびにそれらの塩からなる群より選択される1または複数の化合物を、対象と混合して用いる、MALDI質量分析方法。
【0011】
【化1】
JP2015028474A_000002t.gif

【0012】
(式I中:
環Cが6員の炭素からなる環であり、かつ環A、BおよびCのうちのいずれか1つまたは2つが非芳香族性であり、残りが芳香族性であるか;または環Cが存在せず、かつ環AおよびBのうちの少なくとも1つが芳香属性であり;かつ
R1、R2およびR3のうち芳香属性の環上の置換基である少なくとも1つがNH2もしくはNHR9であり、このときR9がC1-6アルキルであり、かつ残りがH、F、Cl、BrもしくはIであるか;またはR1が次の式
【0013】
【化2】
JP2015028474A_000003t.gif

【0014】
で表される基であり、R2がHであり、かつR3がNH2もしくはNHR9であり、このときR9がC1-6アルキルであり;かつ
R4がHであるか;または環Bが芳香族性であり、かつR1がNH2もしくはNHR9である(R9は上で定義したとおりである。)とき、R4がF、Cl、BrもしくはIである。)
【0015】
【化3】
JP2015028474A_000004t.gif

【0016】
(式II中、
環D、EおよびFが還元されたアクリジン環を構成し;かつ
R5、R6およびR7のうち少なくとも1つがNH2もしくはNHR10であり、このときR10がC1-6アルキルであり、かつ残りがHであるか;またはR5、R6およびR7がHであり;かつ
R8がHまたは存在しない。)
【0017】
【化4】
JP2015028474A_000005t.gif

【0018】
[2] 1または複数の化合物が、下記化合物44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65および66ならびにそれらの塩からなる群より選択される、[1]に記載の方法。
【0019】
【化5】
JP2015028474A_000006t.gif

【0020】
[3] 分析が、ネガティブモードで行われる、[1]または[2]に記載の方法。
[4] MALDI-TOF質量分析方法である、[1]~[3]のいずれか一に記載の方法。
[5] 対象が、一または複数の分子量1000以下のアニオン種を含む試料である、[1]~[4]のいずれか一に記載の方法。
[6] 分子量1000以下のアニオン種が、アミノ酸である、[5]に記載の方法。
[7] イメージング質量分析、メタボローム解析、疾患マーカー解析または医薬候補物質のスクリーニングのために行われる、[1]~[6]のいずれか一に記載の方法。
[8] [1]に定義された一般式Iまたは式IIで表される化合物およびそれらの塩からなる群より選択される1または複数の化合物を含む、MALDI質量分析用マトリックス。
[9] 1または複数の化合物が、[2]に定義された群より選択される、[7]に記載のマトリックス。
[10] [8]または[9]に記載のマトリックスを含む、MALDI質量分析用キット。
[11] 次の一般式I-1で表される化合物またはその塩。
【0021】
【化6】
JP2015028474A_000007t.gif

【0022】
(式I-1中:
R1がNH2またはNHR9であり、かつR2およびR3がHであり;かつ
R4がF、Cl、BrもしくはIである。)
[12] 化合物が下記のいずれかである、[11]に記載の化合物またはその塩。
【0023】
【化7】
JP2015028474A_000008t.gif

【0024】
[13] 下記のいずれかの化合物またはその塩。
【0025】
【化8】
JP2015028474A_000009t.gif

【0026】
本発明はまた、下記を提供する。
[1] 次の一般式Iまたは式IIで表される化合物およびそれらの塩からなる群より選択される1または複数の化合物を、対象と混合して用いる、MALDI質量分析方法。
【0027】
【化9】
JP2015028474A_000010t.gif

【0028】
(式I中:
環Cが6員の炭素からなる環であり、かつ環A、BおよびCのうちのいずれか1つまたは2つが非芳香族性であり、残りが芳香族性であるか;または環Cが存在せず、かつ環AおよびBのうちの少なくとも1つが芳香属性であり;かつ
R1、R2およびR3のうち芳香属性の環上の置換基である少なくとも1つがNH2もしくはNHR9であり、このときR9がC1-6アルキルであり、かつ残りがHであるか;またはR1が次の式
【0029】
【化10】
JP2015028474A_000011t.gif

【0030】
で表される基であり、R2がHであり、かつR3がNH2もしくはNHR9であり、このときR9がC1-6アルキルであり;かつ
R4がHであるか;または環Bが芳香族性であり、かつR1がNH2もしくはNHR9である(R9は上で定義したとおりである。)とき、R4がF、Cl、BrもしくはIである。)
【0031】
【化11】
JP2015028474A_000012t.gif

【0032】
(式II中、
環D、EおよびFが還元されたアクリジン環を構成し;かつ
R5、R6およびR7のうち少なくとも1つがNH2もしくはNHR10であり、このときR10がC1-6アルキルであり、かつ残りがHであるか;またはR5、R6およびR7がHであり;かつ
R8がHまたは存在しない。)
[2] 1または複数の化合物が、下記化合物44、45、46、47、48、49、50、51、52、53および54ならびにそれらの塩からなる群より選択される、[1]に記載の方法。
【0033】
【化12】
JP2015028474A_000013t.gif

【0034】
[3] 分析が、ネガティブモードで行われる、[1]または[2]に記載の方法。
[4] MALDI-TOF質量分析方法である、[1]~[3]のいずれか一に記載の方法。
[5] 対象が、一または複数の分子量1000以下のアニオン種を含む試料である、[1]~[4]のいずれか一に記載の方法。
[6] 分子量1000以下のアニオン種が、アミノ酸である、[5]に記載の方法。
[7] イメージング質量分析、メタボローム解析、疾患マーカー解析または医薬候補物質のスクリーニングのために行われる、[1]~[6]のいずれか一に記載の方法。
[8] [1]に定義された一般式Iまたは式IIで表される化合物およびそれらの塩からなる群より選択される1または複数の化合物を含む、MALDI質量分析用マトリックス。
[9] 1または複数の化合物が、[2]に定義された群より選択される、[7]に記載のマトリックス。
[10] [8]または[9]に記載のマトリックスを含む、MALDI質量分析用キット。
[11] 次の一般式I-1で表される化合物またはその塩。
【0035】
【化13】
JP2015028474A_000014t.gif

【0036】
(式I-1中:
R1がNH2またはNHR9であり、かつR2およびR3がHであり;かつ
R4がF、Cl、BrもしくはIである。)
[12] 下式で表される、[11]に記載の化合物またはその塩。
【0037】
【化14】
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【0038】
[13]
下式で表される化合物またはその塩。
【0039】
【化15】
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【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】アミノ酸混合物としてMix3を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物44を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物44のみ)
【図2】アミノ酸混合物としてMix3を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物45を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物45のみ)
【図3】アミノ酸混合物としてMix3を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物46を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物46のみ)
【図4】アミノ酸混合物としてMix3を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物47を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物47のみ)
【図5】アミノ酸混合物としてMix3を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物48を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物48のみ)
【図6】アミノ酸混合物としてMix3を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物49を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物49のみ)
【図7】アミノ酸混合物としてMix3を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物50を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物50のみ)
【図8】アミノ酸混合物としてMix3を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物51を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物51のみ)
【図9】アミノ酸混合物としてMix3を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物52を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物52のみ)
【図10】アミノ酸混合物としてMix3を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物53を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物53のみ)
【図11】アミノ酸混合物としてMix8を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物44を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物44のみ)
【図12】アミノ酸混合物としてMix8を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物45を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物45のみ)
【図13】アミノ酸混合物としてMix8を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物46を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物46のみ)
【図14】アミノ酸混合物としてMix8を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物47を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物47のみ)
【図15】アミノ酸混合物としてMix8を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物48を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物48のみ)
【図16】アミノ酸混合物としてMix8を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物49を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物49のみ)
【図17】アミノ酸混合物としてMix8を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物50を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物50のみ)
【図18】アミノ酸混合物としてMix8を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物51を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物51のみ)
【図19】アミノ酸混合物としてMix8を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物52を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物52のみ)
【図20】アミノ酸混合物としてMix8を用いた場合のMALDI質量分析チャート。チャート上段:マトリックスとして化合物53を用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、チャート中段:マトリックスとして9-AAを用いた場合のアミノ酸混合物の分析結果、下段:blank(化合物53のみ)
【図21】グルタミンの分布画像。マトリックスとして化合物51を用いた、脳切片のMALDI質量分析イメージング例の例。
【図22】グルタミン酸の分布画像。マトリックスとして化合物51を用いた、脳切片のMALDI質量分析イメージング例の例。
【図23】グルタミン/グルタミン酸の強度比画像。マトリックスとして化合物51を用いた、脳切片のMALDI質量分析イメージング例の例。
【発明を実施するための形態】
【0041】
〔MALDI質量分析用マトリックス〕
本発明のMALDI質量分析においては、9-aminoacridine(9-AA)または9-aminoanthracene(化合物17)を還元した構造を有する化合物およびそれらの塩からなる群より選択される1または複数の化合物を、マトリックスとして用いる。具体的には、次の一般式Iまたは式IIで表される化合物、下記化合物56、57、62、63、64、65および66ならびにそれらの塩からなる群より選択される1または複数の化合物を、マトリックスとして用いる。

【0042】
【化16】
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【0043】
式I中:
環Cが、環Bと共通する炭素を含めて6員の炭素からなる環であり、かつ環A、BおよびCのうちのいずれか1つまたは2つが非芳香族性であり、残りが芳香族性であるか;または環Cが存在せず、かつ環AおよびBのうちの少なくとも1つが芳香属性であり;かつ
R1、R2およびR3のうち芳香属性の環上の置換基である少なくとも1つがNH2もしくはNHR9であり、このときR9がC1-6アルキルであり、かつ残りがH、F、Cl、BrもしくはIであるか;またはR1が次の式

【0044】
【化17】
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【0045】
で表される基であり、R2がHであり、かつR3がNH2もしくはNHR9であり、このときR9がC1-6アルキルであり(好ましくはR9がC1-3アルキルであり、より好ましくはR9がCH3である。);かつ
R4がHであるか;または環Bが芳香族性であり、かつR1がNH2もしくはNHR9である(R9は上で定義したとおりである。)とき、R4がF、Cl、BrもしくはIである。

【0046】
【化18】
JP2015028474A_000019t.gif

【0047】
式II中、
環D、EおよびFが還元されたアクリジン環を構成し;かつ
R5、R6およびR7のうち少なくとも1つがNH2もしくはNHR10(このときR10がC1-6アルキルである。)であり、かつ残りがHであるか;またはR5、R6およびR7がHであり;かつ
R8がHまたは存在しない。
【化19】
JP2015028474A_000020t.gif

【0048】
式Iで表される化合物またはその塩のうち、9-AAでは測定不能なproline、cysteineおよびpipecolateのうち少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、より好ましくはすべて)を検出でき、かつより多くのアミノ酸(例えば10種類以上、好ましくは20種類以上、さらに好ましくは25種類以上のアミノ酸)を検出できるとの観点からは、次の式で表される化合物またはその塩であることが好ましい。

【0049】
【化20】
JP2015028474A_000021t.gif

【0050】
各式中、
環A、BおよびCのうちのいずれか1つまたは2つが非芳香族性であり、残りが芳香族性であり;かつ
R1、R2およびR3のうち芳香属性の環上の置換基である少なくとも1つ(好ましくはいずれか1つ)がNH2もしくはNHR9であり、このときR9がC1-6アルキルであり(好ましくはR9がC1-3アルキルであり、より好ましくはR9がCH3である。)、かつ残りがH、F、Cl、BrもしくはIであり;かつ
R4がHであるか;または環Bが芳香族性であり、かつR1がNH2もしくはNHR9であるとき、R4がF、Cl、BrもしくはIである。

【0051】
式I-1~4で特定された化合物またはその塩のうち、さらに特定された好ましい例は、下記の化合物またはその塩である。

【0052】
【化21】
JP2015028474A_000022t.gif

【0053】
式Iで表される化合物またはその塩のうち、9-AAでは測定不能なproline、cysteineおよびpipecolateのうち少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、より好ましくはすべて)を検出できる他の例は、環Cが6員の炭素からなる環であり、かつ環A、BおよびCのうちのいずれか1つまたは2つが非芳香族性であり、残りが芳香族性であり;かつ
R1が次の式

【0054】
【化22】
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【0055】
で表される基であり、R2がHであり、かつR3がNH2もしくはNHR9であり、このときR9がC1-6アルキルであり(好ましくはR9がC1-3アルキルであり、より好ましくはR9がCH3である。);かつ
R4がHであるものである。

【0056】
上で特定された化合物またはその塩のうち、さらに特定された好ましい例は、下記の化合物またはその塩である。

【0057】
【化23】
JP2015028474A_000024t.gif

【0058】
式Iで表される化合物またはその塩のうち、9-AAでは測定不能なproline、cysteineおよびpipecolateのうち少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、より好ましくはすべて)を検出できる他の例は、式Iにおいて、環Cが存在せず、かつ環AおよびBのうちの少なくとも1つが芳香属性(1つが芳香族性で、他方が非芳香族性である場合と、2つが芳香族性である場合とを含む。)であるものである。さらに特定すると、次の式で表される化合物またはその塩である。

【0059】
【化24】
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【0060】
各式中、R1、R2、R3およびR4は、式Iに関して定義した場合と同じである。

【0061】
式I-5で特定された化合物またはその塩のうち、さらに特定された好ましい例は、下記の化合物またはその塩である。

【0062】
【化25】
JP2015028474A_000026t.gif

【0063】
9-AAでは測定不能なproline、cysteineおよびpipecolateのうち少なくとも1つ(好ましくは2つ以上、より好ましくはすべて)を検出できる他の例は、化合物54、化合物55、化合物56、化合物58、化合物59、化合物60、化合物62、化合物63、化合物64、化合物65および化合物66である。これらの内、proline、cysteineおよびpipecolateのすべてを検出できるとの観点からの特に好ましい例は、化合物55、化合物58、化合物59、化合物60、化合物62、化合物65および化合物66である。

【0064】
式Iで表される化合物のうち、検出可能なアミノ酸が多いという観点からは、化合物53、化合物50、化合物49、化合物47、化合物48が好ましく、化合物53、化合物50、化合物49、化合物47および化合物48がより好ましく、化合物53、化合物50、化合物49および化合物47がより好ましく、化合物53、化合物50および化合物49がより好ましく、化合物53および化合物50がより好ましく、化合物53がさらに好ましい。式Iで表される化合物のうち、バックグラウンドピークが少ないとの観点からは、化合物47、化合物48、化合物49、化合物50および化合物53が好ましく、化合物47、化合物48および化合物49がより好ましく、化合物47および化合物48がより好ましく、化合物47がさらに好ましい。

【0065】
検出可能なアミノ酸が多い他の例は、化合物55、化合物58、化合物59、化合物62、化合物63、化合物65および化合物66である。これらの内、より多くのアミノ酸が検出できるとの観点からは、化合物55、化合物58、化合物59、化合物60、化合物62、化合物65および化合物66である

【0066】
式IIで表される化合物またはその塩のうち、より多くのアミノ酸(例えば10種類以上、好ましくは20種類以上、さらに好ましくは25種類以上のアミノ酸)を検出できるとの観点からは、R5、R6およびR7のうち少なくとも1つ(好ましくはいずれか1つ)がNH2もしくはNHR10(このときR10がC1-6アルキルであり、好ましくはR10がC1-3アルキルであり、より好ましくはR10がCH3である。)であり、残りがHであり、かつR8がHまたは存在しない化合物またはその塩である。より特定された好ましい例は、環D、EおよびFが、環Dおよび環Fのうち少なくとも1つの環において還元されたアクリジン環(例えば、環Dまたは環Fにおいて還元されたテトラヒドロアクリジン環、環Dおよび環Fにおいて還元されたオクタヒドロアクリジン環)を構成し;かつR5、R6およびR7のうち還元されていない環上の少なくとも1つがNH2もしくはNHR10(このときR10がC1-6アルキルである。)であり、かつ残りがHであり;かつR8が存在しない化合物またはその塩である。
さらに特定された好ましい例は、下記の化合物またはその塩である。

【0067】
【化26】
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【0068】
式IIで表される化合物またはその塩のうち、9-AAでは測定不能なprolineを検出できるとの観点からは、好ましい例は、下記の化合物またはその塩である。

【0069】
【化27】
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【0070】
本発明者らの検討によると、本発明により提供される化合物は、化合物17と比較して安定性は改善されているといえる。化合物17は、冷凍庫(約-20℃)保存中にですら分解し、変色・変質するが、化合物44~53は、冷凍庫(約4℃)で少なくとも1ヶ月は保存でき、分解せず、安定であることが確認されている。また、本発明により提供される化合物は、窒素レーザー(波長 337nm)を用いるMALDI質量分析に特に適している。吸光度測定を行うと、9-AAは337nm付近の波長の光をほとんど吸収しないのに対し、化合物47は比較的よく吸収することが確認されている。

【0071】
本発明で、「マトリックス」というときは、一の化合物を指す場合と、二以上の化合物の混合物を指す場合とがある。また一の化合物または二以上の化合物の混合物は、MALDI質量分析のために適した適切な溶媒に、例えばメタノールに、溶解された状態であってもよい。マトリックスは、そのような溶液である場合を含む。本発明でマトリックスとして使用される化合物に関し、「その塩」というときは、MALDI質量分析に際してアミノ酸測定の障害とならず、またMALDI質量分析のために適した適切な溶媒に、例えばメタノールに、溶解可能なものであることが好ましい。このような塩の例は、例えば、低分子(例えば、分子量100以下)の酸との塩であり、より具体的には、塩酸塩、硫酸塩および酢酸塩である。なお、本発明で「n~m」または「n-m」で範囲を表す際は、その範囲は両端の値mおよびnを含む。

【0072】
〔MALDI質量分析の対象〕
本発明により提供されるマトリックスを用いるMALDI質量分析の測定対象は、分子量1000以下のアニオン種(アニオンを生じさせる化合物)であり得る。測定対象は、好ましくは、アミノ酸(αアミノ酸、βアミノ酸、γアミノ酸、プロリン、L-アミノ酸、D-アミノ酸を含む。)である。

【0073】
本発明により検出可能なアミノ酸は、alanine、serine、N-acetylglycine、asparagine、anthranilate、glutamine、histidine、1-Aminocyclopropane-1-carboxylate、ornithine、lysine、N-acetylproline、N-acetylcysteine、3-methylhistidine、beta-alanine、proline、cysteine、pipecolate、L-Homocystein、glutamate、phenylalanine、5-Aminolevulinate、4-Aminobenzoate、methionine、D-Alanyl-D-alanine、N-acetylleucine、tyrosine、xanthurenate、5-aminovalerate、isoleucine、O-Acetyl-L-Homoserine、homocitrulline、phenylacetylglycine、tryptophan、sarcosine (N-Methylglycine)、L-Homoserine、L-Hydroxyproline、N-acetylglutamate、N-acetylmethionine、N-acetylphenylalanine、leucine、acetylcarnitine、N-acetyl-aspartyl-glutamate (NAAG)、cysteine-glutathione disulfide、Folate、5-methyltetrahydrofolate (5MeTHF)、glutathione, oxidized (GSSG)、glycine、2-aminobutyrate、threonine、5-oxoproline、aspartate、Nicotinurate、glutathione, reduced (GSH)、arginine、およびvalineからなる群より選択されるアミノ酸またはそのエナンチオマーもしくはジアステレオマーのいずれかである。

【0074】
分析対象であるアミノ酸は、微生物、植物、動物(細胞、組織切片、血液、体液および排泄物を含む。)または食品等の種々の源に由来するサンプル中に含まれていてもよい。

【0075】
本発明においては、MALDI質量分析に際し、マトリックスを溶媒に溶解して用いてもよい。溶媒として、揮発性のものを選択することができる。当業者であれば、選択したマトリックス化合物(またはその塩)に応じ、適切な溶媒を適宜決定することができる。溶媒の具体的な例は、メタノール、アセトニトリルおよびテトラヒドロフラン(THF)である。

【0076】
本発明においては、MALDI質量分析に際し、マトリックスが対象と「混合」して用いられる。ここでいう「混合」は、例えばアミノ酸水溶液にメタノールに溶解したマトリックスを添加する場合(またはその逆)のように、液状の両者を混ぜ合わせる場合のほか、例えば動物組織由来の切片に、メタノールに溶解したマトリックスを噴霧する場合のように、固体状のサンプルに対してマトリックスを添加する場合を含む。当業者であれば、サンプルの状態に応じ、適宜マトリックスの用法を決定することができる。

【0077】
またマトリックスの使用量は、サンプルの量またはサンプル中に含まれるであろう分析対象の量等に応じて、当業者であれば適宜決定できる。通常、対象物の量に比較して、多い量のマトリックスが使用される。例えば、サンプル1重量部に対して10~100,000重量部または100~10,000重量部の、マトリックス化合物(複数のマトリックス化合物を用いる場合は、各マトリックス化合物の総量として)を用いることができる。

【0078】
〔MALDI質量分析方法〕
本発明により提供されるマトリックスを使用したMALDI質量分析においては、窒素レーザー(波長337 nm)を利用するものが好ましい。また、分析計として、種々のものが選択しうる。例えば、本発明のMALDI質量分析と組み合わせて使用可能な分析計には、飛行時間型(TOF)、イオントラップ型(IT)、磁場型(Sector)、四重極型(Q-pole)およびフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型(FT-ICR)が含まれる。適用できるサンプルの種類が多く、簡便であるとの観点からは、TOF型が好ましい。

【0079】
本発明によるMALDI質量分析は、ネガティブモードで行われることが好ましい。アミノ酸はプロトンを放出しやすい官能基を有するが、本発明により提供されるマトリックスは、ネガティブモードでアミノ酸を分析するのに特に適している。

【0080】
〔MALDI質量分析の用途〕
本発明によるMALDI質量分析方法(以下、単に「本発明の方法」ということがある。)は、イメージング質量分析のために用いることができる。イメージング質量分析は、生体組織切片などのサンプル上の位置情報を残したまま、一または複数の生体分子や代謝物を対象として質量分析計で解析する技術である。測定から得られた位置情報と質量スペクトル中の特定イオンの信号強度に基づき、検出された対象分子の二次元分布図を画像化する(MSイメージング)。

【0081】
本発明の方法を、イメージング質量分析として行う際には、本発明のマトリックスは、例えば、適切な溶媒に溶解した溶液とし、生体組織切片等のサンプル表面にスプレーして用いることができる。溶液におけるマトリックスの濃度は、当業者であれば適宜決定できるが、例えば、0.5~50mg/mlとすることができる。スプレーするに際しては、市販されている専用デバイスを用いることができる。マトリックスが添加されたサンプルは、MALDI装置内で一定間隔でレーザー光が照射され、サンプル上のイオンが連続して検出される。イメージング質量分析のための装置、および得られる膨大なデータを処理するためのソフトウェアが市販されており、本発明の方法にも適用できる。

【0082】
本発明に基づくイメージング質量分析は、バイオマーカーの探索、投与した薬物またはその代謝物の局在等を評価するために用いることができる。また、異なる組織から得られた複数のサンプルの結果を比較することで、組織による差異を画像として比較することができる。

【0083】
本発明の方法は、メタボローム解析(生体低分子の網羅的解析)のために用いることができる。これまで分析の対象とされてきた、糖および有機酸に加えて、本発明によりアミノ酸の高感度・迅速な検出が可能となった。メタボローム解析は、医療分野では、細胞や組織に存在する様々なバイオマーカーを探索する強力な手段となり得る。また他の分野では、例えば、有用物質を産生する微生物について、通常時と有用物質酸性時の細胞内代謝物質を網羅的に測定することにより、有用物質を生産するメカニズムの解明、関連する遺伝子の特定、効率的な生産への応用が期待できる。さらに、ストレスに曝した植物や羅病した植物のメタボローム解析により、ストレスや病害に強い農作物の開発等にも寄与しうる。また、メタボローム解析は、食品に含まれる機能成分の探索にも用いることができる。

【0084】
本発明に基づくメタボローム解析は、ゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス等と組み合わせることができる。それにより、代謝調節メカニズムの解明、遺伝子およびタンパク質の機能解明、薬物の作用のメカニズムの解明、バイオマーカー探索、食品に含まれる機能成分の探索、生物の育種等の、さらに幅広い分野への利用が期待できる。

【0085】
本発明の方法、または本発明の方法を組み合わせた解析は特に、疾患マーカーの探索のために有用であろう。一般に、多くの病気で代謝経路の一部が活性化または不活性化されるので、代謝物等を数値化することで特定の病気のマーカーとすることができる。疾患マーカーには、診断用バイオマーカー、疾患段階を判断するバイオマーカー、疾患予後バイオマーカー、治療処置に対する反応を見る目的のモニター用バイオマーカーが含まれる。

【0086】
本発明の方法は、または本発明の方法を組み合わせた解析は特に、医薬候補物質のスクリーニングのために有用であろう。

【0087】
〔新規化合物〕
本発明は、新規化合物を提供する。具体的には、次の一般式I-1で表される化合物またはその塩を提供する。

【0088】
【化28】
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【0089】
式I-1中:
R1がNH2またはNHR9であり、かつR2およびR3Hであり;かつ
R4がF、Cl、BrもしくはIである。

【0090】
式I-1で表される化合物またはその塩の特に好ましい例は、下記の化合物またはその塩である。

【0091】
【化29】
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【0092】
この化合物は、例えば次の方法で製造することができる。
出発物質として9-Amino-1,2,3,4-tetrahydroanthracene (化合物47。この製法は本明細書の実施例の項を参考にすることができる。)を用い、この溶液に、臭素源(例えば、N-ブロモスクシンイミド(NBS))を加え、アルゴン雰囲気下、環境温度で数十分間、反応させる。必要に応じ、ろ過、溶媒除去、再結晶を行う。
当業者であれは、式I-1に包含される化合物54以外の化合物を、上記の方法を参考にして適宜製造することができる。

【0093】
本発明はまた、別の新規化合物を提供する。具体的には、下式で表される化合物またはその塩を提供する。

【0094】
【化30】
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【0095】
この化合物は、例えば次の方法で製造することができる。
出発物質として2-Aminoanthrathene(化合物38。この化合物は市販されている。)の溶液に、Rh-Al2O3等の適切な触媒加え、水素雰囲気下、環境温度で数時間~数日間反応させる。反応液を濾過後、水酸化ナトリウム溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、有機溶剤相を洗浄後、必要に応じ、乾燥、溶媒除去、再結晶を行う。

【0096】
〔化合物の製造方法〕
本発明はまた、化合物47およびその塩の、新規な製造方法を提供する。本発明の方法は、出発物質を化合物17とし、それを還元することにより化合物47を製造する。具体的には、化合物17の溶液に、パラジウム触媒を加え、水素雰囲気下、環境温度で数時間反応する。必要に応じ、反応液について、濾過、溶媒除去、再結晶等の操作を行う。

【0097】
出発物質である化合物17は、Adams, H.; Bawa, R. A.; McMillan, K. G.; Jones, S. Tetrahedron: Asymmetry, 2007, 18, 1003-1012または前掲特許文献2に記載されている。

【0098】
本発明はまた、化合物49およびその塩の、新規な製造方法を提供する。本発明の方法は、出発物質を化合物40とし、それを還元することにより化合物49を製造するものである。具体的には、1-aminoanthracene(化合物40。この化合物は市販されている。)の溶液に、Rh-Al2O3等の適切な触媒加え、水素雰囲気下、数時間反応する。必要に応じ、反応液について、濾過、溶媒除去、再結晶等の操作を行う。

【0099】
以下、本発明を実施例を例に説明する。
【実施例】
【0100】
<MALDI質量分析>
下表に示したアミノ酸5~7種類を等重量含む混合物を8種類作成し、これらについて負イオンモードでMALDI質量分析を行い、各アニオン性化合物のイオン化能、ピーク強度に及ぼすマトリックスの効果を評価した。
【実施例】
【0101】
【表1-1】
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JP2015028474A_000033t.gif
【実施例】
【0102】
さらに下表に示したアミノ酸混合物を2種類を追加作成し、これらについて負イオンモードでMALDI質量分析を行い、各アニオン性化合物のイオン化能、ピーク強度に及ぼすマトリックスの効果を評価した。
【実施例】
【0103】
【表1-2】
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【実施例】
【0104】
1. 方法
アミノ酸水溶液(100μg/ml)を用いて混合溶液を調製した後に純水で希釈し、サンプルとした(各アミノ酸の濃度10μg/ml)。マトリックス候補化合物(化合物44~53、および化合物55~66)をメタノールに溶解し、マトリックス溶液を作成した(マトリックス濃度10 mg/ml)。96 well plate上で、サンプル5μl、マトリックス候補化合物溶液5μlを混合した(各アミノ酸の終濃度5μg/ml、化合物終濃度5mg/ml)。サンプルプレートを真空乾燥した。レーザーショット1210/wellまたは605/wellの条件で、MALDI質量分析装置(島津製作所製 MALDI-TOF-MS: AXIMA,Performance)で測定した。
【実施例】
【0105】
2. 結果
アミノ酸混合物としてMix3を用いた場合の、化合物44の結果を図1に、化合物45の結果を図2に、化合物46の結果を図3に、化合物47の結果を図4に、化合物48の結果を図5に、化合物49の結果を図6に、化合物50の結果を図7に、化合物51の結果を図8に、化合物52の結果を図9に、化合物53の結果を図10に示した。Mix8を用いた場合の、化合物44の結果を図11に、化合物45の結果を図12に、化合物46の結果を図13に、化合物47の結果を図14に、化合物48の結果を図15に、化合物49の結果を図16に、化合物50の結果を図17に、化合物51の結果を図18に、化合物52の結果を図19に、化合物53の結果を図20に示した。また、結果を下表にまとめた。
【実施例】
【0106】
【表2-1】
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9-AA_2: 9-Aminoacridineについての2回の実験を行った結果
【実施例】
【0107】
【表2-2】
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9-AA: 9-Aminoacridine
化合物38: 2-aminoanthrathene
【実施例】
【0108】
【表2-3】
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【実施例】
【0109】
<マトリックスを用いたイメージング質量分析>
方法:化合物51をmethanolにて5 mg/mLの濃度に溶解し、エアブラシを用いたスプレーコーティング法により、マウス脳切片に適量塗布した。マトリックスを塗布した脳切片は、AXIMA Confidence(島津製作所)を用い、50-1000 m/zを測定範囲としてネガティブモードにて質量分析イメージングに供した。得られたスペクトルデータはSIMedit(島津製作所)総イオン強度にて標準化を行った後、BioMap(http://www.MALDI-msi.org)により画像化した。
【実施例】
【0110】
グルタミンの分布画像を図21に、グルタミン酸の分布画像を図22に、グルタミン/グルタミン酸の強度比画像を図23に示した。
【実施例】
【0111】
<化合物の合成>
化合物44~48を、以下の方法で合成した。
【実施例】
【0112】
【化31】
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【実施例】
【0113】
〔No.44 (9,10-dihydroacridine)の合成〕
【実施例】
【0114】
【化32】
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【実施例】
【0115】
9-Aminoacridine (9-AA, 300 mg, 1.54 mmol)のEtOH (15 ml)溶液に、PtO2 (70 mg, 0.31 mmol, 0.20 equiv.)を加え、水素雰囲気下、室温で攪拌した。15時間後、PtO2 (70 mg, 0.31 mmol, 0.20 equiv.)を追加し、さらに23時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、溶剤を減圧下で留去して、粗生成物を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物44を163 mg (収率55%)で得た。EtOHから再結晶を行い、白色針状結晶(融点171-172℃)を得た。CAS番号[92-81-9] 、参考文献: Matesic, L. et al. Tetrahedron 2012, 68, 6810-6819.
【実施例】
【0116】
colorless needles (mp. 171-172℃, lit: 171-172℃). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 4.06 (s, 2H), 5.94 (brs, 1H), 6.63-6.69 (m, 2H), 6.81-6.89 (m, 2H), 7.04-7.14 (m, 4H).
【実施例】
【0117】
〔No.45 (9-amino-1,2,3,4-tetrahydroacridine)の合成〕
【実施例】
【0118】
【化33】
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【実施例】
【0119】
Tacrine hydrochloride(235 mg, 1.00 mmol)のCHCl3 (20 ml)溶液に、1M水酸化ナトリウム溶液 (10 ml)を加え、室温で10分間攪拌した。反応液をCHCl3で抽出し、得られた有機溶剤層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶剤を減圧下で留去して粗生成物を得た。benzeneから再結晶を行い、化合物45を白色針状結晶(融点179-181℃)として116 mg (収率59%)を得た。CAS番号[321-64-2] 、参考文献: McKenna, M. T. et al. J. Med. Chem. 1997, 40, 3516-3523.
【実施例】
【0120】
colorless needles (mp. 179-181℃, lit: 178-180℃). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.85-2.05 (m, 4H), 2.60-2.75 (2H, m), 2.95-3.10 (m, 2H), 4.63 (brs, 2H), 7.32-7.41 (m, 1H), 7.52-7.65 (m, 1H), 7.66-7.74 (m, 1H), 7.85-7.93 (m, 1H).
【実施例】
【0121】
〔No.46 (9-amino-1,2,3,4,5,6,7,8-octahydroacridine)の合成〕
【実施例】
【0122】
【化34】
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【実施例】
【0123】
9-Aminoacridine (9-AA, 300 mg, 1.54 mmol)のEtOH(15 ml)溶液に、5% Rh-Al2O3 (350 mg, 0.17 mmol, 0.11 equiv.)を加え、水素雰囲気下、室温で38時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、溶剤を減圧下で留去して、粗生成物を得た。MeOH-H2O (1:2)から再結晶を行い、化合物46を白色針状結晶(融点213-216℃)として48 mg (収率15%)を得た。CAS番号[13415-07-1]、参考文献: [1] Goncharenko, S. B.; Kaganskii, M. M.; Portnov, Y. N.; Granik, V. G. Pharmaceutical Chemistry Journal 1992, 26, 769-772. [2] Potmischil, F. et al. Magn. Reson. Chem. 2009, 47, 1031-1035.
【実施例】
【0124】
colorless needles (mp. 213-216℃, lit: 218-220℃). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.78-1.90 (m, 8H), 2.38-2.44 (4H, m), 2.76-2.82 (m, 4H).
【実施例】
【0125】
〔No.47 (9-amino-1,2,3,4-tetrahydroanthracene)の合成〕
【実施例】
【0126】
【化35】
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【実施例】
【0127】
化合物17(500 mg, 2.59 mmol)のEtOH (26 ml)溶液に、10% Pd-C (154 mg, 0.15 mmol, 0.056 equiv.)を加え、水素雰囲気下、室温で6時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、溶剤を減圧下で留去して、粗生成物を得た。これをEtOHから再結晶を行い、化合物47を白色針状結晶(融点99-101℃)として284 mg (収率56%)を得た。SciFinder [1348473-64-2]、化合物17についての参考文献:Adams, H.; Bawa, R. A.; McMillan, K. G.; Jones, S. Tetrahedron: Asymmetry, 2007, 18, 1003-1012、および前掲特許文献2
【実施例】
【0128】
colorless needles (mp. 99-101℃). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.78-1.86 (m, 2H), 1.92-2.00 (m, 2H), 2.68 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.94 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 4.12 (brs, 2H), 7.08 (s, 1H), 7.32-7.38 (m, 2H), 7.65-7.76 (m, 2H). 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 22.9 (t), 23.4 (t), 24.7 (t), 30.8 (t), 116.7 (s), 117.5 (d), 120.0 (d), 121.6 (s), 123.8 (d), 124.9 (d), 127.7 (d), 132.4 (s), 136.6 (s), 138.6 (s). IR (KBr): 3339, 2931, 1630, 1506 cm-1. MS (EI) m/z 197 (M+, 100%). Anal. Calcd for C14H15N: C, 85.24; H, 7.66; N, 7.10, found: C, 85.09; H, 7.66; N, 7.06.
【実施例】
【0129】
〔No.48 (9-amino-1,2,3,4,5,6,7,8-octahydroanthracene)の合成〕
【実施例】
【0130】
【化36】
JP2015028474A_000043t.gif
【実施例】
【0131】
化合物17 (250 mg, 1.29 mmol)のEtOH (13 ml)溶液に、5% Rh-Al2O3 (293 mg, 0.14 mmol, 0.11 equiv.)を加え、水素雰囲気下、室温で14時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、溶剤を減圧下で留去して、粗生成物を得た。これをMeOHから再結晶を行い、化合物48を白色針状結晶(融点83-84℃)として106 mg (収率41%)を得た。CAS番号[25911-42-6]、参考文献: Dewar, M. J. S.; Michl, J. Tetrahedron 1970, 26, 375-384.
【実施例】
【0132】
Colorless needles (mp. 83-84℃, lit: 84.5-85.0℃). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.70-1.77 (m, 4H), 1.82-1.90 (m, 4H), 2.44 (t, J = 6.4 Hz, 4H), 2.69 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.54 (brs, 2H), 6.37 (s, 1H). Anal. Calcd for C14H19N: C, 83.53; H, 9.51; N, 6.96, found: C, 83.19; H, 9.40; N, 6.90.
【実施例】
【0133】
化合物49~52を、以下の方法で合成した。
【実施例】
【0134】
【化37】
JP2015028474A_000044t.gif
【実施例】
【0135】
〔No.49 (5-Amino-1,2,3,4-tetrahydroanthracene)の合成〕
【実施例】
【0136】
【化38】
JP2015028474A_000045t.gif
【実施例】
【0137】
1-Aminoanthracene(化合物40, 224 mg, 1.16 mmol)のEtOH (10 ml)溶液に、5% Rh-Al2O3 (264 mg, 0.13 mmol, 0.11 equiv.)を加え、水素雰囲気(3 atm)下、室温で12時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、溶剤を減圧下で留去して、粗生成物を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物49を124 mg (収率54%)で得た。Hexaneから再結晶を行い、褐色針状結晶(融点95-96度)を得た。SciFinder [1379367-47-1]
【実施例】
【0138】
Pale brown needles (mp. 95-96℃). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.82-1.90 (m, 4H), 2.92-3.02 (m, 4H), 4.06 (brs, 2H), 6.67 (dd, J = 1.6, 6.8 Hz, 1H), 7.12-7.22 (m, 2H), 7.49 (s, 1H), 7.52 (s, 1H). MS (EI) m/z 197 (M+, 100%). Anal. Calcd for C14H15N: C, 85.24; H, 7.66; N, 7.10, found: C, 85.11; H, 7.60; N, 7.16.
【実施例】
【0139】
〔No.50 (6-amino-1,2,3,4-tetrahydroanthracene)の合成〕
【実施例】
【0140】
【化39】
JP2015028474A_000046t.gif
【実施例】
【0141】
2-Aminoanthrathene(化合物38, 250 mg, 1.30 mmol)のEtOH (13 ml)溶液に、5% Rh-Al2O3 (259 mg, 0.13 mmol, 0.10 equiv.)を加え、水素雰囲気下、室温で22時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、溶剤を減圧下で留去して、粗生成物を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物50を109 mg (収率43%)で得た。MeCNから再結晶を行い、褐色針状結晶(融点149-150度)を得た。CAS番号[160555-08-8] 、参考文献: v. Braun, J.; Bayer, O. Justus Liebigs Annalen der Chemie 1929, 472, 90-121.
【実施例】
【0142】
Pale brown needles (mp. 149-150℃, lit.: 154℃). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.78-1.88 (m, 4H), 2.82-2.94 (m, 4H), 3.72 (brs, 2H), 6.84 (dd, J = 2.0, 8.4 Hz, 1H), 6.87 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.29 (s, 1H), 7.39 (s, 1H), 7.53 (d, J = 8.4 Hz, 1H). MS (EI) m/z 197 (M+, 100%).
【実施例】
【0143】
〔No.51 (1,1',2,2',3,3',4,4',-octahydro-9,9'-bianthracene-7,7'-diamine)の合成〕
【実施例】
【0144】
【化40】
JP2015028474A_000047t.gif
【実施例】
【0145】
2-Aminoanthrathene(化合物38, 250 mg, 1.30 mmol)のトリフルオロ酢酸 (13 ml)溶液に、5% Rh-Al2O3 (290 mg, 0.15 mmol, 0.11 equiv.)を加え、水素雰囲気(3 atm)下、室温で6日間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、3 M水酸化ナトリウム溶液を加え、AcOEtで抽出した。有機溶剤相を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し、溶剤を減圧下で留去して、粗生成物を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物51を134 mg (収率53%)で得た。HPLC精製により無色油状物を得た。
【実施例】
【0146】
Colorless oil. 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.65-1.84 (m, 8H), 2.58-2.74 (m, 4H), 2.91 (t, J = 6.4 Hz, 4H), 3.54 (brs, 4H), 6.82 (s, 2H), 7.03 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.50 (s, 2H), 7.67 (d, J = 8.8 Hz, 2H). MS (EI) m/z 392 (M+, 100%)
【実施例】
【0147】
他の化合物は、以下の方法で合成した。なお、以下に合成方法の記載のない化合物は、上述のMALDI質量分析等では、市販の化合物を購入して試験した。
【実施例】
【0148】
〔No.53 (2-amino-9,10-dihydroanthracene)の合成〕
【実施例】
【0149】
【化41】
JP2015028474A_000048t.gif
【実施例】
【0150】
2-Aminoanthrathene(化合物38, 50 mg, 0.26 mmol)のEtOH (2.6 ml)溶液に、10% Pd-C (16 mg, 0.015 mmol, 0.050 equiv.)を加え、水素雰囲気(3 atm)下、室温で29時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、溶剤を減圧下で留去して、粗生成物を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物53を28 mg (収率54%)で得た。Hexaneから再結晶を行い、黄色針状結晶(融点85-86度)を得た。CAS番号[871879-54-8] 、参考文献: v. Braun, J.; Bayer, O. Justus Liebigs Annalen der Chemie 1929, 472, 90-121.
【実施例】
【0151】
Yellow needles (mp. 85-86℃, lit.: 88-90℃). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 3.56 (brs, 2H), 3.84 (s, 4H), 6.55 (dd, J = 2.4, 8.0 Hz, 1H), 6.66 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.14-7.7.19 (m, 2H), 7.22-7.29 (m, 2H). MS (EI) m/z 195 (M+), 194 (100%). Anal. Calcd for C14H13N: C, 86.12; H, 6.71; N, 7.17, found: C, 85.79; H, 6.66; N, 7.24.
【実施例】
【0152】
〔No.54 (9-amino-10-bromo-1,2,3,4-tetrahydroanthracene)の合成〕
【実施例】
【0153】
【化42】
JP2015028474A_000049t.gif
【実施例】
【0154】
9-Amino-1,2,3,4-tetrahydroanthracene (化合物47, 40 mg, 0.20 mmol)のCH2Cl2 (2 ml)溶液に、NBS (36 mg, 0.20 mmol, 1.0 equiv.)を加え、アルゴン雰囲気下、室温で30分間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、溶剤を減圧下で留去して、粗生成物を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物54を32 mg (収率58%)で得た。MeOHから再結晶を行い、褐色針状結晶(分解点98度)を得た。
【実施例】
【0155】
Pale brown needles (98度分解). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.76-1.82 (m, 4H), 2.67 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.00 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 7.42 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.49 (t, J = 8.0 Hz, 1H), 7.75 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.27 (d, J =8.0 Hz, 1H). MS (EI) m/z 275 (M+, 100%), 277 (M++2).
【実施例】
【0156】
〔No.55(9,10-dihydroanthracen-1-amine)の合成〕
【実施例】
【0157】
【化43】
JP2015028474A_000050t.gif
【実施例】
【0158】
1-aminoanthracene(578 mg, 3 mmol)のEtOH (30 ml)溶液に、10% Pd/ C (159 mg, 0.15 mmol, 0.050 equiv.)を加え、水素雰囲気(1 atm)下、室温で44時間攪拌した。反応液をセライト濾過した後、溶剤を減圧下で留去して、粗生成物を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィー(eluent: Hex/EA = 8: 2)により精製し、黄色針状結晶402 mg (収率68%)で得た。Hexaneから再結晶を行い、黄色針状結晶を得た。
【実施例】
【0159】
〔No.57(2-aminotetradecahydroanthracene)の合成〕
【実施例】
【0160】
【化44】
JP2015028474A_000051t.gif
【実施例】
【0161】
2-aminoanthracene(50 mg, 0.26 mmol)をトリフルオロ酢酸2.6mLに溶かし5%ロジウムアルミナ(58 mg)を加え水素ガスで0.3 MPaに加圧し4日間反応させた。反応液をセタイトでろ過したのち3M水酸化ナトリウム水溶液で反応液をpH>8とした。これを酢酸エチルで抽出し、その有機層を飽和食塩水で洗浄後、減圧濃縮しシリカゲルカラムクロマトグラフィーで生成し立体異性体の混合物として得た。

【実施例】
【0162】
〔No.58(chloro-1,2,3,4-tetrahydroanthracen-9-amine)の合成〕
【実施例】
【0163】
【化45】
JP2015028474A_000052t.gif
【実施例】
【0164】
1,2,3,4-tetrahydroanthracen-9-amine (78.9 mg, 0.40 mmol)にCH2Cl2 (4 ml)を加え、NCS (53.4 mg, 0.40 mmol)を加えた後、室温空気雰囲気下で撹拌した。15分後、TLCで原料の消失を確認した後、CH2Cl2で洗いながら吸引濾過を行い、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(10% →20% EtOAc/Hexane)にて単離した。No.58が収量70 mg, 76%で得られた。その後、EtOHで再結晶を行い、白色針状結晶を得た。
【実施例】
【0165】
colorless needles: mp 94.6-95.2 (EtOH); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.78-1.92 (m, 4H), 2.61 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 2.97 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 4.05 (s, 2H), 7.40 (t, J = 7.2 Hz, 1H), 7.47 (t, J = 7.4 Hz, 1H), 7.72 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 8.23 (d, J = 8.4 Hz, 1H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 22.6 (t), 25.3 (t), 28.9 (t), 117.6 (s), 120.2 (d), 120.7 (s), 122.4 (s), 124.5 (d), 124.6 (d), 125.9 (d), 129.5 (s), 134.0 (s), 137.6 (s); EI-MS m/z 231 (M+), 233 (M++2) ; IR (KBr) 3383, 3462 cm-1 (NH2); Anal. calcd for C14H14ClN: C, 72.57; H, 6.09; N, 6.04. found: C, 72.65; H, 6.09; N, 6.01.
【実施例】
【0166】
〔No.59(1,1',2,2',3,3',4,4'-octahydro-[9,9'-bianthracene]-10,10'-diamine)の合成〕
【実施例】
【0167】
【化46】
JP2015028474A_000053t.gif
【実施例】
【0168】
1,2,3,4-tetrahydroanthracen-9-amine (168 mg, 0.85 mmol)にRh/C (5%) (88 mg, 0.043 mmol)を加え、さらにTFA (4 ml)を加えた後、室温空気雰囲気下で撹拌した。1.5時間後、TLCで原料の消失を確認した後、氷浴にて冷やしつつ塩基性になるまで3N NaOH aqを加えた。EtOAcで洗いながら吸引濾過を行った。EtOAcにて抽出した後、飽和食塩水で洗浄、Na2SO4を用いて脱水した後、濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(20% EtOAc/Hexane)で単離した。No.59が収量144 mg, 86%で得られた。
【実施例】
【0169】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3)δ: 1.52-1.69 (m, 4H), 1.81-1.95 (m, 4H), 2.16-2.3
5 (m, 4H), 2.70-2.85 (m, 4H), 4.19 (s, 4H), 7.03 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.11 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.33 (t, J = 7.8 Hz, 1H), 7.83 (d, J = 8.8 Hz, 1H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 23.0 (t), 23.1 (t), 25
.5 (t), 28.6 (t), 117.0 (s), 120.0 (d)., 121.8 (s), 123.7 (d), 124.9 (d), 126.2 (s), 126.2 (d), 131.8 (s), 135.3 (s), 137.8 (s) ; IR (KBr) 3379, 3466 cm-1 (NH2); MALDI-MS- m/z calcd for C28H27N2 391.21797 (M-). found 391.21744.
【実施例】
【0170】
〔No.60(1-bromo-5,6,7,8-tetrahydroanthracen-2-amine)の合成〕
【実施例】
【0171】
【化47】
JP2015028474A_000054t.gif
【実施例】
【0172】
5,6,7,8-tetrahydroanthracen-2-amine (162 mg, 0.82 mmol)にCH2Cl2 (8.2 ml)を加え、NBS (146 mg, 0.82 mmol)を加えた後、室温空気雰囲気下で撹拌した。5分後、TLCで原料の消失を確認した後、CH2Cl2で洗いながら吸引濾過を行い、濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(50% CH2Cl2/Hexane)を行い単離した。No.60が収量111 mg, 49%で得られた。更に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(100% Hexane)を行い、Hexaneで再結晶を行うことで、純粋な白色針状結晶を得た。
【実施例】
【0173】
colorless needles: mp 91.0-92 (hexane); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.80-1.90 (m, 4H), 2.87-2.95 (m, 2H), 2.95-3.02 (m, 2H), 4.27 (s, 2H), 6.90 (d, J = 4.4, 1H), 7.39 (s, 1H), 7.49 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 7.72 (s, 1H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 23.4 (t), 23.4 (t), 29.1(t), 30.0 (t), 103.3 (s), 11
7.0 (d), 123.9 (d), 127.0 (d), 127.3 (s), 127.7 (d), 131.4 (s), 133.0 (s), 138.1 (s), 141.1 (s); EI-MS m/z 275 (M+), 277 (M++2) ; IR (KBr) 3308, 3416 cm-1 (NH2); Anal. calcd for C14H14BrN: C, 60.89; H, 5.11; N, 5.07. found: C, 60.85; H, 5.05; N, 5.03.
【実施例】
【0174】
〔No.61(1-chloro-5,6,7,8-tetrahydroanthracen-2-amine)の合成〕
【実施例】
【0175】
【化48】
JP2015028474A_000055t.gif
【実施例】
【0176】
5,6,7,8-tetrahydroanthracen-2-amine (133 mg 0.67 mmol)にCH2Cl2(13.5 ml)を加え、NCS(90 mg 0.67 mmol)を加えた後、室温空気雰囲気下で撹拌した。5分後、TLCで原料の消失を確認した後、CH2Cl2で洗いながら吸引濾過を行い、濃縮した。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(30% → 50% CH2Cl2/Hexane)で単離した。No.61が収量116 mg, 75%で得られた。更に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(100% Hexane)を行い、Hexaneで再結晶を行うことで、純粋な白色針状結晶を得た。
【実施例】
【0177】
colorless needles: mp 74.9-75.5 (hexane); 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 1.79-1.90 (m, 4H), 2.85-2.96 (m, 2H), 2.96-3.03 (m, 2H), 4.23 (s, 2H), 6.91 (d, J = 4.4, 1H), 7.40 (s, 1H), 7.47 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 7.74 (s, 1H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ: 23.3 (t), 23.4 (t), 29.2 (t), 30.0 (t), 110.8 (s),
117.0 (d), 121.3 (d), 126.8 (d), 127.0 (d), 127.2(s), 130.1 (s), 133.0 (s), 137.8 (s), 139.4 (s); EI-MS m/z 231 (M+), 233 (M++2) ; IR (KBr) 3310, 3422 cm-1 (NH2); Anal. calcd for C14H14ClN: C, 72.57; H, 6.09; N, 6.04. found: C, 72.56; H, 6.03; N, 6.00.
【実施例】
【0178】
〔No.62([1,1'-bianthracene]-2,2'-diamine)の合成〕
【実施例】
【0179】
【化49】
JP2015028474A_000056t.gif
【実施例】
【0180】
2-aminoanthracene(50 mg, 0.26 mmol)のトリフルオロ酢酸 (2.6 ml)溶液に、5% Rh/ C (11 mg, 0.0052 mmol, 0.02 equiv.)を加え、室温で2時間攪拌した。反応液に、3 M水酸化ナトリウム溶液(20 ml)を加え、EA(10×3 ml)で抽出した。有機溶剤相を飽和食塩水で洗浄後、Na2SO4で乾燥し、溶剤を減圧下で留去して、粗生成物を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィー(eluent: CHCl3)で精製し、黄色固体を50 mg (収率100%)で得た。
【実施例】
【0181】
〔No.63(8H-dinaphtho[2,3-c:2',3'-g]carbazole)の合成〕
【実施例】
【0182】
【化50】
JP2015028474A_000057t.gif
【実施例】
【0183】
2-aminoanthrathene(50 mg, 0.26 mmol)の1,1,1,3,3,3-Hexafluoro-2-propanol(2.6 ml)溶液に、5% Rh/ C (27 mg, 0.015 mmol, 0.05 equiv.)を加え、室温で6時間攪拌した。反応液に、3 M水酸化ナトリウム溶液(20 ml)を加え、EA(10×3 ml)で抽出した。有機溶剤相を飽和食塩水で洗浄後、Na2SO4で乾燥し、溶剤を減圧下で留去して、粗生成物を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィー(eluent: Hex/CHCl3 = 1/4)で精製し、黄色固体を36 mg (収率76%)で得た。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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