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明細書 :銅酸化物薄膜太陽電池の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2014-183244 (P2014-183244A)
公開日 平成26年9月29日(2014.9.29)
発明の名称または考案の名称 銅酸化物薄膜太陽電池の製造方法
国際特許分類 H01L  31/06        (2012.01)
FI H01L 31/04 E
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 8
出願番号 特願2013-057569 (P2013-057569)
出願日 平成25年3月21日(2013.3.21)
発明者または考案者 【氏名】奥 健夫
【氏名】藤本 和也
【氏名】秋山 毅
【氏名】鈴木 厚志
出願人 【識別番号】506158197
【氏名又は名称】公立大学法人 滋賀県立大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100094248、【弁理士】、【氏名又は名称】楠本 高義
【識別番号】100129207、【弁理士】、【氏名又は名称】中越 貴宣
【識別番号】100185454、【弁理士】、【氏名又は名称】三雲 悟志
審査請求 未請求
テーマコード 5F151
Fターム 5F151AA07
5F151CB29
5F151CB30
5F151DA03
5F151FA02
5F151GA03
要約 【課題】本発明の目的は、従来の銅酸化物薄膜太陽電池に比べて光変換効率の高い銅酸化物薄膜太陽電池の製造方法を提供することにある。
【解決手段】銅酸化物薄膜太陽電池10は、基板12の上に第1電極14、n型半導体層16、p型半導体層18および第2電極20が順番に積層された構造である。p型半導体層18は電析によってn型半導体層16の上に形成する。電析のために水溶性銅塩を含むアルカリ性溶液を使用する。アルカリ性水溶液は、LiOHによってpHを調整する。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
基板を準備する工程と、
前記基板の一面上に第1電極を形成する工程と、
前記第1電極の上にn型半導体層を形成する工程と、
前記n型半導体層の上にp型半導体層を形成する工程と、
前記p型半導体層の上に第2電極を形成する工程と、
を含む銅酸化物薄膜太陽電池の製造方法であって、
前記p型半導体層を形成する工程が、
水溶性銅塩を含むアルカリ性水溶液に対し、水酸化リチウムを用いてpHを調整する工程と、
前記pHを調整されたアルカリ性水溶液の中で、前記n型半導体層の上に電析によってp型半導体層を形成する工程と、
を含む銅酸化物薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記pHを調整する工程によって、アルカリ性水溶液のpHを10~14にする請求項1の銅酸化物薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記p型半導体層を形成する工程によって、CuO層を形成する請求項1または2の銅酸化物薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記n型半導体層を形成する工程は、電析によってZnO層を形成する請求項1から3のいずれかの薄膜太陽電池の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はヘテロ接合型の銅酸化物薄膜太陽電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料に代わる新エネルギーとして、ほとんど無尽蔵でクリーンな太陽光を電気に変えることができる太陽電池が注目されている。シリコン系の太陽電池が主流であるが、材料面や製造プロセス面から高価格である。太陽電池の普及のためには、低価格化が必要不可欠となっている。
【0003】
そこで、安価で簡単に太陽電池を製造するために、シリコン系以外の太陽電池の開発も盛んにおこなわれている。例えば、下記の特許文献1には、酸化物半導体を使用した太陽電池が開示されている。酸化物半導体は、シリコン系の太陽電池に比べて、製造が簡単であり、安価である。さらに、酸化物半導体は、直接遷移半導体であり、光吸収スペクトルが大きい利点がある。例えば、銅酸化物半導体は、バンドギャップが太陽光のスペクトルに近く理想的であり、CuOであれば1.5eV、CuOであれば2.1eVである(図5参照)。図5は、電極にITOとAuを使用している。このため、太陽電池に適しており、バンドギャップの大きいCuO系太陽電池が注目されている。特許文献1には、NaOHでpHを12.5に調整し、電析によってCuOを形成することが開示されている。
【0004】
しかし、銅酸化物半導体を使用した太陽電池は、シリコン系の太陽電池に比べて変換効率が低く、変換効率を高めることが求められる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2007-19460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の銅酸化物薄膜太陽電池に比べて光変換効率の高い銅酸化物薄膜太陽電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の銅酸化物薄膜太陽電池の製造方法は、基板を準備する工程と、前記基板の一面上に第1電極を形成する工程と、前記第1電極の上にn型半導体層を形成する工程と、前記n型半導体層の上にp型半導体層を形成する工程と、前記p型半導体層の上に第2電極を形成する工程とを含む。前記p型半導体層を形成する工程が、水溶性銅塩を含むアルカリ性水溶液に対し、水酸化リチウムを用いてpHを調整する工程と、前記pHを調整されたアルカリ性水溶液の中で、前記n型半導体層の上に電析によってp型半導体層を形成する工程とを含む。
【0008】
前記pHを調整する工程によって、アルカリ性水溶液のpHを10~14、好ましくは12.5にする。前記p型半導体層を形成する工程によって、CuO層を形成する。前記n型半導体層を形成する工程は、電析によってZnO層を形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、電析をおこなうためのアルカリ水溶液のpHの調整剤として水酸化リチウムを使用することによって、pHの調整剤として水酸化カリウムや水酸化ナトリウムを使用するよりも変換効率の良い太陽電池を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】銅酸化物薄膜太陽電池の構成を模式的に示す図である。
【図2】LiOHでpH調整をおこなって製造した銅酸化物薄膜太陽電池のX線回折パターンのグラフである。
【図3】3種類のpH調整剤の違いによる電圧-電流密度特性の違いを示すグラフである。
【図4】3種類のpH調整剤の違いによる分光感度特性の違いを示すグラフである。
【図5】CuOをp型半導体層に使用した銅酸化物薄膜太陽電池のエネルギーバンドの図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の銅酸化物薄膜太陽電池の製造方法について図面を使用して説明する。

【0012】
図1に示す銅酸化物薄膜太陽電池10は、基板12の上に第1電極14、n型半導体層16、p型半導体層18および第2電極20が順番に積層された構造である。

【0013】
基板12は、ガラスや樹脂でできた透明基板である。基板12の一面上に第1電極14が形成され、他面が光入射面となる。他面に反射防止膜を設けて、n型半導体層16とp型半導体層18の接合部への光の入射効率を高めても良い。基板12はフレキシブルなものであっても良い。

【0014】
第1電極14は、FTO(fluorine doped tin oxide)やITO(indium tin oxide)などの透明電極である。第1電極14が陰極となる。1枚の基板12に対して、第1電極14は1つであっても良いし、複数に分割されていても良い。なお、FTOはITOに比べて耐温度性が良い。

【0015】
n型半導体層16は、光をp型半導体層18との接合面まで到達させることができ、n型半導体の特性を有するものであれば良い。例えばn型半導体層16はZnOの層である。電析によって形成することができる。

【0016】
p型半導体層18は、銅酸化物半導体を使用する。銅酸化物半導体として、CuOやCuOが挙げられるが、バンドギャップの大きいCuO(バンドギャップ2.1eV)を使用するのが好ましい。n型半導体層16とp型半導体層18とはヘテロ接合になる。

【0017】
p型半導体層18は電析によってn型半導体層16の上に形成する。電析のために水溶性銅塩を含むアルカリ性溶液を使用する。水溶性銅塩としては、キレート錯体を形成できる2価の銅塩を使用することができる。例えば水溶性銅塩として、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、酢酸銅などが挙げられる。このアルカリ性溶液の水酸化物の沈殿を抑制するために錯化剤を配合する。錯化剤としては、銅(II)イオンとキレート錯体を形成できる化合物を使用することができ、乳酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸などのヒドロキシカルボン酸が挙げられる。

【0018】
アルカリ性水溶液は、LiOHによってpHを調整する。LiOHでpHを調節することによって、従来のKOHやNaOHでpHを調節するよりも変換効率の良い太陽電池を製造することができる。pHは、10~14であり、好ましくは12.5である。pHを12.5にすることによって、CuOを(111)配向にすることができる。pHが9.0になるとCuOが(200)配向になるため、変換効率が落ち、好ましくない。

【0019】
第2電極20は、Auなどの導電性の金属である。真空蒸着などで形成することができる。第2電極20が陽極になる。第2電極20は複数に分割されていても良い。

【0020】
次に、上述した銅酸化物薄膜太陽電池10の製造方法について説明する。(1)ガラスなどの基板12を準備する。この準備には、基板12を所望形状に切断したり、洗浄したりすることを含む。

【0021】
(2)基板12の上に第1電極14を形成する。第1電極14としてFTOを用いるのであれば、CVD(chemical vapor deposition)やスプレー熱分解法などで形成することができる。なお、基板12にFTOを成膜したものを準備してもよい。

【0022】
(3)第1電極14の上にn型半導体層16を形成する。例えば電析によってZnOの層を形成する。電析のための溶液は、蒸留水の中に硝酸亜鉛六水和物を溶解させた溶液を使用できる。また、ZnOをスパッタリングによって形成しても良い。

【0023】
(4)n型半導体層16の上にp型半導体層18を形成する。p型半導体層18は電析によってCuOの層を形成する。電析のための溶液は、上述したアルカリ水溶液を使用する。アルカリ水溶液は、LiOHでpHを調整する。

【0024】
電析は、3電極法を用いる。作用電極を第1電極14、参照電極をAg/AgClの電極、対電極をPtの電極を使用する。

【0025】
(5)p型半導体層18の上に第2電極20を形成する。例えば、Auを真空蒸着で形成し、第2電極20とする。真空蒸着以外に、金属材料を塗布し、焼成して形成しても良い。

【0026】
実施例
FTOが成膜されたガラス基板を超音波洗浄した。蒸留水に0.08MのZnNOを溶解させ、電析によりZnOを成膜した。その際にpHの調整はおこなわず、pHは5.4であった。電析は、電流密度5mA/cm、電気量1.5C/cm、温度65℃であった。ZnOの膜厚は1.0μmであった。

【0027】
ZnOの上に電析によりCuOを成膜した。電析液は、0.4MのCuSOと0.3MのL乳酸を蒸留水に溶解させ、2.0MのLiOHでpHを12.5にした。電析は、電流密度-1.5mA/cm、電気量4.0C/cm、温度65℃であった。CuOの膜厚は4.0μmであった。

【0028】
電析によって成膜されたCuOの上に、蒸着によってAuを成膜し、140℃、20分で熱処理した。

【0029】
製作した銅酸化物薄膜太陽電池10のX線解析パターンは図2のようになっており、(111)配向のp型半導体層18が得られていた。結晶性が良く、成膜したときにCuOにならない銅が少ない。

【0030】
比較例
上記の実施例はpHの調整をLiOHでおこなったが、比較例としてLiOHの代わりにNaOHまたはKOHを使用してpHを12.5にした。NaOHまたはKOHは2.0Mであった。このpH調整以外は実施例と同じ条件で銅酸化物薄膜太陽電池を製造した。以下、実施例と比較例で挙げたpH調整剤の異なる3種類の銅酸化物薄膜太陽電池の特性の違いについて説明する。

【0031】
電圧—電流特性は図3のようになり、LiOHでpH調整した銅酸化物薄膜太陽電池が最も良い特性になり、KOHでpH調整した銅酸化物薄膜太陽電池が最も悪い特性になった。表1に各太陽電池の特性評価を示す。表1は株式会社三永電機製作所製のソーラーシュミレーターで求めている。光電変換効率が1.4%になるなど、各特性においてLiOHでpH調整した銅酸化物薄膜太陽電池が最も良い特性になっている。

【0032】
【表1】
JP2014183244A_000003t.gif

【0033】
図4に分光感度特性を示すが、LiOHでpH調整した銅酸化物薄膜太陽電池のみが50%を超え、LiOHでpH調整した銅酸化物薄膜太陽電池が最も良い特性になった。また、LiOHでpH調整した銅酸化物薄膜太陽電池のCuOの成膜速度は、KOHやNaOHでpH調整した銅酸化物薄膜太陽電池のCuOの成膜速度よりも約1.6倍速かった。

【0034】
以上のように、p型半導体層18を電析によって形成する際、溶液のpHをLiOHで調整することによって、従来よりも変換効率の良い銅酸化物薄膜太陽電池10を製造することができる。

【0035】
その他、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々の改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【符号の説明】
【0036】
10:銅酸化物薄膜太陽電池
12:基板
14:第1電極
16:n型半導体層
18:p型半導体層
20:第2電極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4