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明細書 :銀ナノワイヤの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6118584号 (P6118584)
公開番号 特開2014-162946 (P2014-162946A)
登録日 平成29年3月31日(2017.3.31)
発行日 平成29年4月19日(2017.4.19)
公開日 平成26年9月8日(2014.9.8)
発明の名称または考案の名称 銀ナノワイヤの製造方法
国際特許分類 B22F   9/24        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
B22F   1/00        (2006.01)
FI B22F 9/24 E
H01B 13/00 501Z
B82Y 40/00
B22F 1/00 K
請求項の数または発明の数 5
全頁数 17
出願番号 特願2013-034361 (P2013-034361)
出願日 平成25年2月25日(2013.2.25)
審査請求日 平成27年12月22日(2015.12.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】506158197
【氏名又は名称】公立大学法人 滋賀県立大学
【識別番号】000224798
【氏名又は名称】DOWAホールディングス株式会社
発明者または考案者 【氏名】バラチャンドラン ジャヤデワン
【氏名】クヤ ウアマン ジョン レマン
【氏名】兒玉 大輔
個別代理人の代理人 【識別番号】100101557、【弁理士】、【氏名又は名称】萩原 康司
【識別番号】100096389、【弁理士】、【氏名又は名称】金本 哲男
【識別番号】100095957、【弁理士】、【氏名又は名称】亀谷 美明
【識別番号】100076130、【弁理士】、【氏名又は名称】和田 憲治
審査官 【審査官】川口 由紀子
参考文献・文献 国際公開第2012/081904(WO,A2)
特開2013-033729(JP,A)
特開2009-242880(JP,A)
特開2009-299162(JP,A)
特開2009-155674(JP,A)
調査した分野 B22F 9/24
B22F 1/00
B82Y 30/00
B82Y 40/00
H01B 13/00
D01F 9/08
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリオールを溶媒として有機保護剤と第1のハロゲン化合物とを含有する第1の溶液に、ポリオールを溶媒として銀化合物を含有する第2の溶液を添加することにより製造される銀ナノワイヤの製造方法であって、
前記第1のハロゲン化合物と銀とのモル比(第1のハロゲン化合物/銀)が0~0.1(ただし、0である場合を除く)を満たし、
前記有機保護剤と銀とのモル比(有機保護剤/銀)が0.1~8.0を満たし、
前記第1の溶液に前記第2の溶液を添加して得られた反応液に第2のハロゲン化合物を添加し、該第2のハロゲン化合物と銀とのモル比(第2のハロゲン化合物/銀)が0.0005~0.1を満たすことを特徴とする銀ナノワイヤの製造方法。
【請求項2】
前記第2の溶液の添加後、5分間以上経過した後に前記反応液に前記第2のハロゲン化合物を添加することを特徴とする請求項1に記載の銀ナノワイヤの製造方法。
【請求項3】
前記第2の溶液の添加後、5分~240分間経過した後に前記反応液に前記第2のハロゲン化合物を添加することを特徴とする請求項2に記載の銀ナノワイヤの製造方法。
【請求項4】
前記第2のハロゲン化合物は、臭素化合物であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の銀ナノワイヤの製造方法。
【請求項5】
前記臭素化合物は、臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化銅、臭化セチルトリメチルアンモニウムのいずれかであることを特徴とする請求項4に記載の銀ナノワイヤの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜の導電体として用いられる銀ナノワイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶・プラズマ・有機エレクトロルミネッセンス等の各種ディスプレイや各種太陽電池において、透明導電膜を用いた透明電極は必須の構成技術となっている。この透明導電膜の材料としては、ITOをはじめとする金属酸化物薄膜が主に用いられている。金属酸化物薄膜は、光透過性と導電性との両立が可能で耐久性にも優れており、特に、ITOは、光透過性と導電性とのバランスが良く、ウェットエッチングによる電極微細パターン形成が容易であることから、各種オプトエレクトロニクス用の透明電極として多用されている。
【0003】
透明導電膜に使用される金属酸化物薄膜は、一般的に真空蒸着法やスパッタ法により製造されるが、薄膜は金属酸化物であることから、曲げに弱く、最終製品のフレキシブル化の障害になる場合がある。また、真空蒸着法やスパッタ法は真空環境を必要とするため、処理装置が大掛りかつ複雑なものとなることや、成膜に大量のエネルギーを消費する等の課題があり、これらの課題に対する改善技術の開発が要請されている。
【0004】
このような要請に対して、透明導電膜の導電体として金属ナノワイヤを用いることが提案されている。金属ナノワイヤを導電体として用いる場合、金属ナノワイヤが接触し合うことによって導電ネットワークを形成し、導電性を発現する。そして、太さが300nm以下で、長さが3μm以上の金属ナノワイヤを用いた場合には、透明導電膜の導電性と透明性の両立が可能となる。金属ナノワイヤを構成する金属については、Ag、Cu、Au等が検討されているが、電気導電性や耐酸化性に優れ、かつ金属価格が著しく高くないことからAgが好ましいと考えられ、銀ナノワイヤに関する技術が盛んに開発されている。このような銀ナノワイヤの製造方法としては、例えば、特許文献1及び非特許文献1~3に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】US2005/0056118号公報
【0006】

【非特許文献1】J.of Solid State Chem.1992,100,272~280
【非特許文献2】Chem.Mater.2002,14,4736~4745
【非特許文献3】Nanotechnology 2006,17,3933~3938
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び非特許文献1,2に開示されている方法は、ポリオールを溶媒とし、銀化合物及び保護剤としてPVP(ポリビニルピロリドン)を使用して銀ナノワイヤを得る技術である。このようなポリオールを溶媒として用いて銀ナノワイヤを製造する方法は、ポリオール法と称されている。
【0008】
銀ナノワイヤを透明導電膜の導電体として用いる場合には、透明導電膜に高い導電性と良好な光学特性(高透過率、低ヘイズ)を両立させることが求められる。それを達成するためには、銀ナノワイヤの太さ(短軸径)が細い方が有利であり、得られる銀ナノワイヤの太さが細くなる銀ナノワイヤの製造方法について研究されている。
【0009】
非特許文献3には、ポリオールを溶媒とし、銀化合物及び有機保護剤としてPVP(ポリビニルピロリドン)を使用して銀ナノワイヤを得る製造方法が開示されている。非特許文献3の製造方法では、PVPを添加する際に臭化カリウム等の形状制御剤を同時に添加することにより、得られる銀ナノワイヤの太さを細くすることを可能にしている。
【0010】
しかしながら、非特許文献3の製造方法により得られる銀ナノワイヤの太さでは、透明導電膜における高い導電性と良好な光学特性(高透過率、低ヘイズ)を両立できているとは言えない。
【0011】
このため、本発明は、ポリオール法により得られる銀ナノワイヤの太さを従来よりも更に細くすることができる銀ナノワイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明によれば、ポリオールを溶媒として有機保護剤と第1のハロゲン化合物とを含有する第1の溶液に、ポリオールを溶媒として銀化合物を含有する第2の溶液を添加することにより製造される銀ナノワイヤの製造方法であって、前記第1のハロゲン化合物と銀とのモル比(第1のハロゲン化合物/銀)が0~0.1(ただし、0である場合を除く)を満たし、前記有機保護剤と銀とのモル比(有機保護剤/銀)が0.1~8.0を満たし、前記第1の溶液に前記第2の溶液を添加して得られた反応液に第2のハロゲン化合物を添加し、該第2のハロゲン化合物と銀とのモル比(第2のハロゲン化合物/銀)が0.0005~0.1を満たすことを特徴とする銀ナノワイヤの製造方法が提供される。
【0013】
また、前記第2の溶液の添加後、5分間以上経過した後に前記反応液に前記第2のハロゲン化合物を添加しても良い。また、前記第2の溶液の添加後、5分~240分間経過した後に前記反応液に前記第2のハロゲン化合物を添加しても良い。
【0014】
また、前記第2のハロゲン化合物は、例えば臭素化合物である。前記臭素化合物は、例えば臭化カリウム、臭化ナトリウム、臭化銅、臭化セチルトリメチルアンモニウムのいずれかである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の溶液に第2の溶液を添加して得られた反応液に第2のハロゲン化合物を添加することにより、生成される銀ナノワイヤの太さを細くすることができる。その結果、銀ナノワイヤを導電体として用いた透明導電膜において、高い導電性と良好な光学特性(高透過率、低ヘイズ)を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図2】実施例2により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図3】実施例3により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図4】実施例4により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図5】実施例5により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図6】実施例6により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図7】実施例7により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図8】実施例8により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図9】実施例9により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図10】実施例10により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図11】実施例11により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図12】実施例12により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図13】比較例1により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図14】比較例2により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図15】比較例3により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【図16】比較例4により製造された銀ナノワイヤのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、銀ナノワイヤの製造方法に基づいて説明する。本発明の実施の形態では、加熱した溶液A(第1の溶液)と溶液B(第2の溶液)を混合し、溶液Aと溶液Bの混合により得られた反応液にハロゲン化合物を添加することにより銀ナノワイヤを製造する。

【0018】
溶液A(第1の溶液)の調液について説明する。溶液Aは溶媒、有機保護剤及びハロゲン化合物A(第1のハロゲン化合物)を含む。

【0019】
溶液Aの溶媒は、ポリオールを用いることができる。ポリオールの好適な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールやこれらの混合溶媒が挙げられる。ポリオールは、銀に対して適度な還元力があり、銀ナノワイヤの生成に適しており、沸点が比較的高く、常圧下で銀ナノワイヤを生成することが可能であるという利点がある。

【0020】
溶液Aに含まれる有機保護剤は、高分子有機物を用いることができ、例えばPVP(ポリビニルピロリドン)を用いることが好適である。一般に、銀が還元される際に特定の結晶面に有機保護剤が付着することによって、還元により生成する銀がワイヤ状になると考えられている。有機保護剤として用いられるPVPは、還元されて生成した銀に対して、特定の結晶面に付着して、特定の結晶面の成長を抑制する効果が大きいと考えられ、ワイヤ状の銀を生成させやすくなる。

【0021】
溶液Aに含まれるハロゲン化合物Aの種類は特に限定されず、例えばNaCl、KCl、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、TBAC(テトラブチルアンモニウムクロライド)等を用いることができる。

【0022】
以上の通り、溶液Aは、ポリオール、有機保護剤及びハロゲン化合物Aを混合することにより得られる。

【0023】
次に、溶液B(第2の溶液)の調液について説明する。溶液Bは溶媒及び銀化合物から成る。

【0024】
溶液Bの溶媒は、ポリオールを用いることができる。ポリオールの好適な例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロールやこれらの混合溶媒が挙げられる。ポリオールは、銀に対して適度な還元力があり、銀ナノワイヤの生成に適しており、沸点が比較的高く、常圧下で銀ナノワイヤを生成することが可能であるという利点がある。

【0025】
また、溶液Bに含まれる銀化合物の種類は、溶液Bの溶媒に溶解するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、硝酸銀、酢酸銀、酸化銀を使用することができる。なお、溶媒に対する溶解度とコストの観点から、硝酸銀を用いることが好ましい。

【0026】
以上の通り、溶液Bは、ポリオール及び銀化合物を混合することにより得られる。なお、溶液Bの温度は、5~50℃とすることが好ましい。これは、液温が低すぎると銀化合物の溶解工程に時間がかかることがあり、また、液温が高すぎると溶媒であるアルコールにより銀の還元反応が進行してしまうことがあるためである。なお、溶液Bの温度は、10~40℃とすることが更に好ましい。

【0027】
次に、銀ナノワイヤの生成反応工程について説明する。

【0028】
まず、溶液Aを加熱する。このとき、溶液Aの温度を70℃以上、かつ、使用する溶媒の沸点以下とすることが好ましい。この温度の範囲外となる場合には、銀ナノワイヤが十分生成しないことがあるためである。また、銀ナノワイヤの生成に要する時間を短縮するためには、溶液Aの温度を90℃以上、かつ、使用する溶媒の沸点以下とすることが更に好ましい。

【0029】
その後、加熱された溶液Aに溶液Bを添加し攪拌する。これにより、銀ナノワイヤを含有する反応液を得ることができる。そして、溶液Bを添加してから所定時間経過した後に、ハロゲン化合物B(第2のハロゲン化合物)を反応液に添加する。このようにして反応液にハロゲン化合物Bを添加することにより、後工程を経て製造される銀ナノワイヤの太さを従来よりも細くすることができる。

【0030】
なお、ハロゲン化合物Bは、溶液Aに溶液Bを添加してから5分以上経過した後に添加することが好ましい。また、反応液へのハロゲン化合物Bの添加は、反応時間(反応液を所定の温度で保持する時間)の2/3の時間が経過するまでに行うことが好ましい。ハロゲン化合物Bの添加がこれらの時間外に行われた場合、得られる銀ナノワイヤの太さを細くする効果が十分得られないことがある。また、反応時間が長すぎる場合には生産性が低下することを考慮すると、溶液Aに溶液Bを添加してから5分~240分間経過した後に添加することが更に好ましい。
また、反応液は70℃以上、かつ、使用する溶媒の沸点以下とした状態で、60分間以上保持することが好ましい。

【0031】
反応液に添加するハロゲン化合物Bの種類は、反応液に溶解するものであれば特に限定されるものではなく、例えばKBr、NaBr、CuBr、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、NaCl、KCl、TBAC(テトラブチルアンモニウムクロライド)等を用いることができる。また、ハロゲン化合物Bの種類は、ハロゲン化合物Aと同種であってもよい。なお、ハロゲン化合物Bは、得られる銀ナノワイヤの太さを細くするという観点から臭素化合物とすることが好ましい。また、反応液に添加する際のハロゲン化合物Bの形態は、固体で添加するほか、溶媒に溶解した溶液の状態とすることもできる。

【0032】
また、反応液に添加するハロゲン化合物Bの量は、反応液中の銀に対するモル数の比率を以下の範囲とすることが好ましい。
(ハロゲン化合物B(ハロゲン元素として))/銀=0.0005~0.1(更に好ましくは、0.001~0.05)

【0033】
反応液に添加するハロゲン化合物Bと銀のモル比の値が上記範囲を下回る場合には、得られる銀ナノワイヤの太さを細くする効果が得られないことがあり、モル比の値が上記範囲を超える場合には、得られる銀ナノワイヤの長さが短くなりすぎることがある。

【0034】
反応液の銀濃度は、0.01~1mol/lであることが好ましい。これは、銀濃度が0.01mol/l未満の場合には銀ナノワイヤの生産性が低くなり、1mol/lを超える場合には細い銀ナノワイヤが十分生成しないことがあるためである。

【0035】
なお、溶液A中のハロゲン化合物A及び有機保護剤の量は、それぞれのモル数と銀に対するモル数の比率が以下の範囲となることが好ましい。ここで、モル比(有機保護剤のモル数/銀のモル数)を算出する際に、有機保護剤にポリマーを使用する場合には、モノマーとしての分子量から有機保護剤のモル数を計算する。例えば、有機保護剤にPVPを使用する場合、PVPのモノマーは、CNO(分子量111)であり、有機保護剤の質量をこの分子量111で除した値を有機保護剤のモル数とする。
(溶液A中のハロゲン化合物A(ハロゲン元素として))/銀=0~0.1 (更に好ましくは、0.01~0.1)
有機保護剤/銀=0.1~8.0

【0036】
溶液A中のハロゲン化合物Aと銀のモル比が上記範囲の範囲外となる場合や有機保護剤と銀のモル比が上記範囲より小さい場合には、銀ナノワイヤの収率が低下する場合があり、有機保護剤と銀のモル比が上記範囲より大きい場合には、銀ナノワイヤのほか、銀微粒子が多く生成し銀ナノワイヤの収率が低下するおそれがある。

【0037】
次に、銀ナノワイヤの洗浄工程について説明する。

【0038】
反応時間が経過した後、銀ナノワイヤを含む反応液を冷却し、反応液を遠心分離もしくはデカンテーションにより固液分離する。そして、固液分離した銀ナノワイヤに溶媒を添加して攪拌することにより、反応液の反応生成物等が除去され、清浄な溶媒に分散した銀ナノワイヤの分散液を得ることができる。この遠心分離もしくはデカンテーション及び溶媒の添加、攪拌は繰り返し行われる。

【0039】
洗浄工程終了後に、銀ナノワイヤが分散した分散液から有機溶媒を除去することにより、銀ナノワイヤを得ることができる。

【0040】
以上の通り、本発明の実施の形態によれば、溶液Aに溶液Bを添加して得られた反応液にハロゲン化合物Bを添加することにより、生成される銀ナノワイヤの太さを細くすることができる。その結果、銀ナノワイヤを導電体として用いた透明導電膜において、高い導電性と良好な光学特性(高透過率、低ヘイズ)を両立させることができる。

【0041】
なお、本発明における銀ナノワイヤの「太さ」とは、十分な数の銀ナノワイヤを電子顕微鏡写真で撮影し、個々の銀ナノワイヤ像の太さを測定し、算術平均することにより求めた「平均太さ」のことである。このとき計測対象となる銀ナノワイヤの数は、100個以上が好ましい。また、銀ナノワイヤを透明導電体として用いる場合、光散乱の影響を軽減し透明性を高めるために、金属ナノワイヤの太さは50nmより小さいことが好ましい。また、10~40nmとすることが更に好ましく、10~35nmとすることが一層好ましい。
【実施例】
【0042】
本発明に係る製造方法により銀ナノワイヤを製造した(実施例1~12)。また、本発明に係る製造方法と異なる方法においても銀ナノワイヤを製造した(比較例1~4)。各実施例及び各比較例の製造条件及びその結果(銀ナノワイヤの太さ)を表1に示す。なお、表1の「ハロゲン添加開始時間」とは、溶液A(第1の溶液)に溶液B(第2の溶液)を添加した後、ハロゲン化合物B(第2のハロゲン化合物)を反応液に添加するまでの時間を指す。また、表1中の下線部は、実施例1と異なる製造条件であることを示している。
【実施例】
【0043】
【表1】
JP0006118584B2_000002t.gif
【実施例】
【0044】
(実施例1)
90mLのエチレングリコールにポリビニルピロリドン(シグマアルドリッチ製、平均分子量55000)2.45gと塩化ナトリウム(和光純薬工業製)0.006gを添加し、溶解させて溶液Aを得た。次に、10mLのエチレングリコールに硝酸銀0.85gを添加し溶解させて溶液Bを得た。
【実施例】
【0045】
次に、溶液Aの全量を室温から115℃まで加熱しながら攪拌した。その後、溶液の温度を115℃で維持しながら、液温が25℃の溶液Bを10mL添加して、反応液を得た。溶液Bを添加した110分後に、反応液中に臭化カリウムのメタノール溶液(濃度10g/L)を230μL添加した。この反応液を溶液B添加6時間後まで、100rpmで攪拌しながら115℃の温度を保持した。
【実施例】
【0046】
続いて、反応液を25℃まで冷却し、冷却した反応液を3000rpm、10分間の条件で遠心分離をおこなった後、上澄み液を除去した。そこに純水100mLを加えて攪拌し、銀ナノワイヤを分散させ、分散液を得た。その後、この分散液に対し、3000rpm、10分間の条件で遠心分離を行った後、上澄み液を除去し、純水100mLを添加し攪拌する操作を3回繰り返した。これにより、銀ナノワイヤを洗浄し、銀ナノワイヤを含む分散液を得た。
【実施例】
【0047】
洗浄後の分散液を分取し、溶媒を観察台上で揮発させて、銀ナノワイヤを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。SEM写真を図1に示す。SEM写真で得られた100個の銀ナノワイヤの任意の箇所を測定対象として、銀ナノワイヤの太さ(平均太さ)を求めた。得られた銀ナノワイヤの太さは29.5nmであった。
【実施例】
【0048】
また、洗浄後の分散液を分取し、試料台の上で溶媒を揮発させて、X線回折装置(フィリップス社製、X’Pert)を用いて、X線としてCu-Kαを使用し、管電圧40V、管電流40A、スキャンスピード0.0435度/sの条件で測定を行った結果、金属銀のピークが認められた。これらの結果から、実施例1の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0049】
(実施例2)
臭化カリウムのメタノール溶液の添加を、溶液Bの添加の110分後から溶液Bの添加の130分後に変更して行った以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図2に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは28.8nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例2の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0050】
(実施例3)
臭化カリウムのメタノール溶液の添加を、溶液Bの添加の110分後から溶液Bの添加の150分後に変更して行った以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図3に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは32.7nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例3の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0051】
(実施例4)
臭化カリウムのメタノール溶液の添加を、溶液Bの添加の110分後から溶液Bの添加の90分後に変更して行った以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図4に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは30.5nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例4の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0052】
(実施例5)
臭化カリウムのメタノール溶液の添加量を、230μLから200μLに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図5に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは32.8nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例5の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0053】
(実施例6)
臭化カリウムのメタノール溶液の添加量を、230μLから260μLに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図6に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは33.5nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例6の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0054】
(実施例7)
臭化カリウムのメタノール溶液の添加量を、230μLから290μLに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図7に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは33.2nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例7の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0055】
(実施例8)
添加するハロゲン化物溶液を臭化カリウムのメタノール溶液230μLから、臭化ナトリウムのメタノール溶液200μLに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図8に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは42.6nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例8の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0056】
(実施例9)
添加するハロゲン化物溶液を臭化カリウムのメタノール溶液230μLから、臭化銅のメタノール溶液600μLに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図9に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは36.0nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例9の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0057】
(実施例10)
添加するハロゲン化物溶液を臭化カリウムのメタノール溶液230μLから、セシルトリメチルアンモニウムブロミド(C1942BrN)のメタノール溶液400μLに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図10に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは33.9nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例10の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0058】
(実施例11)
硝酸銀の量を0.85gから1.7gに変更し、ポリビニルピロリドンの量を2.45gから4.8gに変更し、塩化ナトリウムの量を0.006gから0.012gに変更し、臭化カリウムのメタノール溶液の添加量を230μLから450μLに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図11に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは43.4nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例11の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0059】
(実施例12)
硝酸銀の量を0.85gから2.2gに変更し、ポリビニルピロリドンの量を2.45gから6.5gに変更し、塩化ナトリウムの量を0.006gから0.016gに変更し、臭化カリウムのメタノール溶液の添加量を230μLから600μLに変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図12に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは47.5nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、実施例12の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0060】
(比較例1)
臭化カリウムのメタノール溶液を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図13に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは51.7nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、比較例1の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0061】
(比較例2)
臭化カリウムのメタノール溶液の添加方法について、溶液Bを添加した110分後の反応液に添加することから、溶液Bの添加前に溶液Aに添加する方法に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図14に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは37.7nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、比較例2の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0062】
(比較例3)
臭化カリウムのメタノール溶液の添加方法について、溶液Bを添加した110分後の反応液に添加することから溶液Bと同時に溶液Aに添加する方法に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。
銀ナノワイヤのSEM写真を図15に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは43.3nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、比較例3の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0063】
(比較例4)
臭化カリウムのメタノール溶液を添加しなかった以外は、実施例12と同様の方法で、銀ナノワイヤを含む分散液を作製し評価を行った。銀ナノワイヤのSEM写真を図16に示す。得られた銀ナノワイヤの太さは100nmであった。また、得られたX線回折スペクトルは実施例1と同様であった。これらの結果から、比較例4の製造方法により、銀ナノワイヤが得られていることが確認された。
【実施例】
【0064】
実施例1と比較例1の結果から、反応液にハロゲン化合物Bを添加することにより、銀ナノワイヤの太さを細くできることが確認された。また、実施例1と比較例2,3の結果から、「溶液Bの添加前に溶液Aにハロゲン化合物Bを添加する場合」や「溶液Bと同時に溶液Aにハロゲン化合物Bを添加する場合」よりも、「溶液Aに溶液Bを添加して得られた反応液にハロゲン化合物を添加する場合」の方が、製造される銀ナノワイヤの太さを細くできることが確認された。
【実施例】
【0065】
実施例1~4の結果によれば、ハロゲン添加開始時間を変更しても、製造される銀ナノワイヤの太さに大きな違いは見られない。これらの結果から、ハロゲン化合物Bの添加開始時間を短くしたとしても、製造される銀ナノワイヤの太さを細くすることできると推認される。すなわち、「溶液Aに溶液Bを添加して得られた反応液」にハロゲン化合物Bを添加することにより、銀ナノワイヤの太さを細くすることができる。
【実施例】
【0066】
実施例1と実施例5~7の結果によれば、ハロゲン化合物Bの添加量を変更しても、製造される銀ナノワイヤの太さに大きな違いは見られない。これらの結果から、ハロゲン化合物Bの添加量に関わらず、「溶液Aに溶液Bを添加して得られた反応液」にハロゲン化合物Bを添加することにより、銀ナノワイヤの太さを細くできることが確認された。
【実施例】
【0067】
実施例1と実施例8~10の結果によれば、添加するハロゲン化合物Bの種類を変更しても、製造される銀ナノワイヤの太さに大きな違いは見られない。これらの結果から、添加するハロゲン化合物Bの種類に関わらず、「溶液Aに溶液Bを添加して得られた反応液」にハロゲン化合物Bを添加することにより、銀ナノワイヤの太さを細くできることが確認された。
【実施例】
【0068】
実施例12と比較例4の結果によれば、反応液の銀濃度が高い場合、得られる銀ナノワイヤの太さが太くなる傾向が見られたが、「溶液Aに溶液Bを添加して得られた反応液にハロゲン化合物を添加する場合」の方が、製造される銀ナノワイヤの太さを細くできることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、透明導電膜の導電体として用いられる銀ナノワイヤの製造に適用することができる。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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