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明細書 :呼吸引き込み装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-030048 (P2016-030048A)
公開日 平成28年3月7日(2016.3.7)
発明の名称または考案の名称 呼吸引き込み装置
国際特許分類 A61H  31/00        (2006.01)
A61B   5/08        (2006.01)
FI A61H 31/00
A61B 5/08
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2014-153448 (P2014-153448)
出願日 平成26年7月29日(2014.7.29)
発明者または考案者 【氏名】橋本 稔
【氏名】高瀬 弘樹
【氏名】森山 徹
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4C038
4C074
Fターム 4C038SS08
4C074AA04
4C074BB02
4C074CC13
4C074DD10
4C074EE05
4C074GG11
要約 【課題】 触圧を利用して、効果的に、また利用者に負担をかけることなく呼吸を誘導することができる呼吸引き込み装置を提供する。
【解決手段】 身体に装着する触圧刺激装置10と、使用者の呼吸周期を検知する呼吸センサ20と、前記触圧刺激装置を制御する制御部30とを備え、触圧刺激装置10が、触圧刺激の作用源としてゲルアクチュエータを備えることを特徴とする。
触圧刺激装置10は、ゲルアクチュエータの陽極と陰極とに印加する電圧を制御することにより、ゲルアクチュエータが厚さ方向に収縮する作用を利用して触圧刺激を作用させることができ、ゲルアクチュエータの陽極と陰極とに印加する電圧を制御することによりゲルアクチュエータの剛性が変化する作用を利用して触圧刺激を作用させることができる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
身体に装着する触圧刺激装置と、使用者の呼吸周期を検知する呼吸センサと、前記触圧刺激装置を制御する制御部とを備え、
前記触圧刺激装置が、触圧刺激の作用源としてゲルアクチュエータを備えることを特徴とする呼吸引き込み装置。
【請求項2】
前記ゲルアクチュエータは、厚さ方向に収縮する収縮型のゲルアクチュエータを単体、あるいは厚さ方向に複数段に積層して構成されていることを特徴とする請求項1記載の呼吸引き込み装置。
【請求項3】
前記触圧刺激装置は、前記ゲルアクチュエータの陽極と陰極とに印加する電圧を制御することにより、ゲルアクチュエータが厚さ方向に収縮する作用を利用して触圧刺激を作用させることを特徴とする請求項1または2記載の呼吸引き込み装置。
【請求項4】
前記触圧刺激装置は、前記ゲルアクチュエータの陽極と陰極とに印加する電圧を制御することによりゲルアクチュエータの剛性が変化する作用を利用して触圧刺激を作用させることを特徴とする請求項1または2記載の呼吸引き込み装置。
【請求項5】
前記制御部は、呼吸周期を検出する生体信号計測装置と、生体信号計測装置からの出力信号をA/D変換するAD変換機と、前記触圧刺激装置による触圧刺激を制御する制御用PCとを備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の呼吸引き込み装置。
【請求項6】
前記制御部は、次式(1)の位相振動子モデルに基づく同調制御方法により、前記触圧刺激装置により提示する触圧刺激を制御することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載の呼吸引き込み装置。
【数3】
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θは振動子の位相角、ωは固有角振動数、nは隣り合う振動子の数、Kijは振動子i-j間に働く相互作用の強さを示す。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、外部刺激により使用者の呼吸を調整する呼吸引き込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸を操作することで心と身体を調節することは、古くから経験的に実践されてきた。呼吸の操作を体系化したものが、座禅や太極拳などの、いわゆる“東洋的行法”と呼ばれるものに組み込まれている“呼吸法”である。
呼吸法には、呼気時間を長くする長息呼吸法や、腹部を膨らませて吸気し腹部を凹ませて呼気する腹式呼吸法などがあり、これらの呼吸法実施によりリラックス状態が得られることが明らかとなっている(非特許文献1)。
また、心理臨床において、外的な刺激によりカウンセラーが患者の呼吸を調整する技法として、「とけあい動作法」(非特許文献2)がある。カウンセラーの掌を患者の身体に当てて心地よく「ピタ-」とゆっくりと押し、掌を患者の身体に密着したまま「フワ-」と言いながらゆっくりその力を緩める手続きを周期的に行うことにより、過度な筋緊張を緩和させ、心と身体の調和をもたらす方法である。患者の呼吸にあわせて腹部に周期的に触圧を加えることで、患者の呼吸を徐々に安定・安静にすることができる。
【0003】
使用者の呼吸を誘導調整することによりリラックスさせる方法を利用する装置として、生体に与える呼吸パターンに関する刺激信号として音楽を使用し、音楽による刺激を制御して呼吸を理想パターンに誘導するもの(特許文献1)、利用者をリラックス状態に誘導した後に、映像、音響、光を利用して、利用者に呼気期間のみを目標値に誘導することによりリフレッシュ状態に誘導するもの(特許文献2)、シート部に使用者に触覚刺激を与える触覚刺激手段を設け、触覚刺激手段を制御して使用者の呼吸の状態を目標状態に誘導するもの(特許文献3)等がある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2002-301047号公報
【特許文献2】特開2010-104457号公報
【特許文献3】特開2012-65729号公報
【0005】

【非特許文献1】静井章朗、森高瀬 弘樹・山田 朱美・芝原 祥三 (2002). 呼吸 春木豊(編著)身体心理学—姿勢・表情などからの心へのパラダイム 川島書店
【非特許文献2】今野 義孝 (2005) とけあい動作法 学苑社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、使用者の呼吸を誘導する方法として、音、映像、光、触覚等の外的刺激を制御することにより、目標とする呼吸パターンに誘導する方法が種々検討されている。外的刺激のうち、触覚を利用する方法は、音、映像、光による外的刺激とくらべて、より直接的に使用者に作用して呼吸を誘導すると考えられ、音、映像、光による刺激を併用することによって、さらに有効に作用するものと考えられる。
従来の触覚を利用して呼吸を誘導する方法には、シート部にエアバッグを配して、エアバッグによる圧力を制御するといった方法がある。しかしながら、従来の触覚を利用して呼吸を誘導する方法は、必ずしも有効に機能しているとはいいがたい。
【0007】
本発明は、利用者の体に掌を当てて押す動作と、身体を押す力をゆっくりと緩める動作を周期的に行う、「とけあい動作法」を利用して利用者の呼吸を誘導する、触圧を利用する呼吸引き込み装置に係るものであり、触圧を利用して、より効果的に、また利用者に負担をかけることなく呼吸を誘導することができる呼吸引き込み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る呼吸引き込み装置は、身体に装着する触圧刺激装置と、使用者の呼吸周期を検知する呼吸センサと、前記触圧刺激装置を制御する制御部とを備え、前記触圧刺激装置が、触圧刺激の作用源としてゲルアクチュエータを備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記ゲルアクチュエータは、厚さ方向に収縮する収縮型のゲルアクチュエータを単体、あるいは厚さ方向に複数段に積層して構成されていることを特徴とする。
また、前記触圧刺激装置は、前記ゲルアクチュエータの陽極と陰極とに印加する電圧を制御することにより、ゲルアクチュエータが厚さ方向に収縮する作用を利用して触圧刺激を作用させることを特徴とする。
また、前記触圧刺激装置は、前記ゲルアクチュエータの陽極と陰極とに印加する電圧を制御することによりゲルアクチュエータの剛性が変化する作用を利用して触圧刺激を作用させることを特徴とする。
【0010】
また、前記制御部は、呼吸周期を検出する生体信号計測装置と、生体信号計測装置からの出力信号をA/D変換するAD変換機と、前記触圧刺激装置による触圧刺激を制御する制御用PCとを備えることを特徴とする。
また、前記制御部は、次式(1)の位相振動子モデルに基づく同調制御方法により、前記触圧刺激装置により提示する触圧刺激を制御することを特徴とする。
【数1】
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θは振動子の位相角、ωは固有角振動数、nは隣り合う振動子の数、Kijは振動子i-j間に働く相互作用の強さを示す。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る呼吸引き込み装置は、触圧刺激装置により作用させる触圧刺激の作用源としてゲルアクチュエータを使用することにより、触圧を利用して、効果的に、また利用者に負担をかけることなく呼吸を誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】呼吸引き込み装置の構成例を示す説明図である。
【図2】収縮型のゲルアクチュエータの構成とその作用を示す説明図である。
【図3】誘電性のゲルがクリープ変形する作用を示す説明図である。
【図4】ゲルアクチュエータを厚さ方向に積層した積層体として形成した例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係る呼吸引き込み装置の構成例を示す。この呼吸引き込み装置は、利用者の身体に装着して用いる触圧刺激装置10と、利用者の呼吸状態を検知する呼吸センサ20と、触圧刺激装置10の制御部30とを備える。制御部30は、制御用PC32、データ収録用PC34、生体信号計測装置36、AD変換機38を備える。

【0014】
生体信号計測装置36は、触圧刺激装置10による刺激信号(加圧力)と、呼吸センサ20の出力信号に基づく胸部の呼吸運動(膨張、収縮)等の生体信号を検出するためのものである。
生体信号計測装置36は、触圧刺激装置10による刺激信号や呼吸データの他に、心拍数、心電図、血圧等の生体信号を検知するセンサを身体に装着して、これらの生体信号を計測するように設定することもできる。

【0015】
生体信号計測装置36により検出された呼吸データ(アナログ信号)は、AD変換機38によりA/D変換され、制御用PC32により呼吸周期が算出され、算出された呼吸周期に基づいて触圧刺激装置10の刺激パターン(運動パターン)が制御される。
本実施形態においては、呼吸センサ20として、ベルト状の器具を胸部に巻き付けて胸部の膨張、収縮から呼吸運動を検出する装置を使用した。呼吸データを検出できる装置であれば、適宜センサを利用することができる。

【0016】
本実施形態の呼吸引き込み装置において特徴的な構成は触圧刺激装置10にある。触圧刺激装置10は、身体の腹部や肩部等に装着し、使用者の身体に触圧刺激を作用させるものである。身体の腹部等に触圧刺激を作用させる作用源として、本実施形態においては収縮型のゲルアクチュエータを使用する。
収縮型のゲルアクチュエータとは、図2に示すように、メッシュ状の電極(陽極)をゲルシートにより挟み、双方のゲルシートの外面に箔状の電極(陰極)を設けた構成を備える。このゲルアクチュエータは、陽極と陰極との間に電圧を印加すると、ゲルがメッシュの空間内に引き込まれ、全体として厚さ方向に収縮し、電圧印加を除去するとゲル自体の弾性によって元の状態(元の厚さ)に戻るように作用する。この収縮型のゲルアクチュエータの厚さ方向に変位する作用を利用することにより、身体に触圧刺激を作用させることができる。

【0017】
ゲルアクチュエータが厚さ方向に収縮する作用は、ポリ塩化ビニル(PVC)等の誘電性のゲル材料は、電圧を印加すると陽極近傍でクリープ変形を生じる性質を備えることによる。図3は、電極間に電圧を印加した際に、陽極上に誘電性材料のゲルが這い上がるように変形(クリープ変形)し、電圧印加を解除すると元の形態に戻る様子を示す。このクリープ変形作用は、ゲルに電圧を印加すると、電荷が陰極からゲルを通じて陽極に移動し、陽極で放電して消失する前に陽極近傍に電荷が蓄積し、陽極表面へのゲルの静電的吸着を促進することによって生じる(特開2009-273204)。
上述したメッシュ状の陽極をゲルシートにより挟み、陽極と陰極との間に電圧を印加したときに、厚さ方向に収縮する作用は、ゲルがメッシュ状の陽極に引き込まれるクリープ変形の作用によるものである。

【0018】
なおクリープ変形を生じる誘電性材料には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン6、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、シリコーンゴム等がある。
これら誘電性材料のうち、ポリ塩化ビニル(PVC)は、廉価であること、取り扱いが容易であること、電圧を印加したときのクリープ変形量が大きいことから、ゲルアクチュエータの誘電性材料として好適に使用できる。
PVCゲルシートは、ポリ塩化ビニルと可塑剤であるアジピン酸ジブチル(DBA)を溶媒テトラヒドロフラン(THF)中で混合し、この混合物を底面が平坦な容器にキャストし、静置して、溶媒を蒸発させることによって作製することができる。キャスト法のかわりに、フィルムアプリケータを使用し、離型フィルム上に前述した混合液を塗布してフィルム状とすることもできる。

【0019】
ゲルアクチュエータには、上述したメッシュ状の陽極をゲルシートにより挟む構造とするものの他に、表面に突起を設けたゲルシートを使用するもの、誘電性材料からなるナノファイバーの不織布状としたものをゲルシートにかえて使用することができる。
表面に突起を設けたゲルシートは、突起部分が厚さ方向の収縮を可能とする隙間部分を構成し、電圧を印加することにより、突起の先端側が陽極に吸着するように変形し、突起の高さが低くなり厚さ方向に収縮する。
不織布状のナノファイバからなるゲルは、膜内に空隙が含まれているから、厚さ方向に収縮可能であり、電圧印加をON-OFFすることにより、厚さ方向に収縮し、元の厚さに復帰する作用をなす。

【0020】
本発明に係るゲルアクチュエータは、このように、ゲルシートによりメッシュ状の陽極を挟む構成とするものに限るものではなく、クリープ変形する作用を有する誘電性材料を陽極と陰極とにより厚さ方向に挟む配置とし、陽極と陰極とに印加する電圧をON-OFFすることにより、厚さ方向に収縮し元の厚さに復帰する作用をなすものを意味する。

【0021】
これらのゲルアクチュエータは、厚さ方向に多段に積層した積層体として使用することができる。図4は、ゲルアクチュエータを厚さ方向に積層した積層体として形成した例を示す。図示例は、平面形状がリング状の単位ゲルアクチュエータを積層した例であるが、ゲルアクチュエータは円形、矩形等の任意の平面形状、また寸法に形成することができる。ゲルアクチュエータを厚さ方向に積層した構成とすることにより、単位構造のゲルアクチュエータとくらべて、電圧を印加したときの厚さ方向の変位量をより大きくすることができ、また、元の厚さに復帰するときの力(回復応力)を大きくすることができる。
ゲルアクチュエータは誘電性材料(誘電層)を薄膜化することにより、印加電圧を抑えて、変形量、回復応力を増大させることが可能であり、ゲルアクチュエータの収縮率は10~20%、回復応力は15kPa程度である。

【0022】
(触圧刺激装置の構成例)
ゲルアクチュエータを使用して身体に触圧刺激を作用させる一つの方法は、ゲルアクチュエータが厚さ方向に膨縮するように組み込んだベルトを、身体の触圧刺激を作用させる部位に巻き付け、ゲルアクチュエータの陽極と陰極に印加する電圧を制御することにより、身体に加圧力を作用させる方法である。ゲルアクチュエータの陽極と陰極に印加する電圧を周期的に変化させることにより、身体に作用させる加圧力を周期的に変化させることができる。

【0023】
すなわち、弾力性のあるベルトにゲルアクチュエータを組み込み、使用者の身体に装着した状態で、ゲルアクチュエータを厚さ方向に収縮させると身体に作用する加圧力が弱まり、収縮状態から元の厚さにゲルアクチュエータを復帰させると身体に作用する加圧力が強くなる。したがって、ゲルアクチュエータの陽極と陰極とに印加する電圧を周期的に変化させることにより、身体に作用する加圧力を周期的に変化させることができる。

【0024】
使用者に作用する加圧力に相当するゲルアクチュエータの回復応力は、印加電圧によって変化するから、ゲルアクチュエータに印加する電圧を制御することによって、加圧力の大きさと、加圧力を作用させるタイミング(周期)を調節することができる。
上記例では、ゲルアクチュエータを収縮させたときに加圧力が弱くなり、回復応力が作用するときに加圧力が強く作用するとしたが、ゲルアクチュエータにアタッチメントを組み合わせることにより、これとは逆に、ゲルアクチュエータを収縮させたときに加圧力が強く作用し、回復応力が作用するときに加圧力が弱くなるように構成することもできる。

【0025】
ゲルアクチュエータを使用して身体に触圧刺激を作用させる他の方法として、ゲルアクチュエータの陽極と陰極とに電圧を印加すると、ゲルアクチュエータの剛性が変化することを利用する方法がある。ゲルアクチュエータの陽極と陰極とに電圧を印加すると、ゲルが陽極の網目内に引き込まれ、ゲルと陽極表面との接触面積の増加、吸着力の作用によってゲルの剛性が増大する(特開2014-50490)。すなわち、ゲルアクチュエータの陽極と陰極とに電圧を印加するとゲルアクチュエータの剛性が高くなり、電圧印加を解除すると剛性が低くなる。
このように陽極と陰極とに印加する電圧によってゲルアクチュエータの剛性が変化する作用を利用して、触圧刺激装置を構成することができる。

【0026】
ゲルアクチュエータの剛性変化を利用する触圧刺激装置の例として、サポータ型の伸縮性のある装着具に、ゲルアクチュエータを面状に組み込んで構成する方法がある。
伸縮性を有する装着具にゲルアクチュエータを組み込むことにより、ゲルアクチュエータに電圧を印加するとゲルアクチュエータの剛性が高まって加圧作用が強まり、電圧印加を解除するとゲルアクチュエータの剛性が低下することにより加圧作用が緩和される。すなわち、ゲルアクチュエータの陽極と陰極に印加する電圧を制御することにより、装着具による触圧を硬くしたり、柔らかくしたりすることができる。

【0027】
ゲルアクチュエータの剛性を変化させる方法を利用して触圧刺激を制御する方法は、ゲルアクチュエータを構成するゲル自体が本来的に柔軟な素材であることによる。なお、メッシュ状の陽極の柔軟性が問題となる場合には、フレキシブルメッシュを使用すればよい。
前述した「とけあい動作法」により呼吸を誘導する方法は、使用者の身体に掌を当てて押す動作と緩める動作とを周期的に行う方法であり、一定の周期(リズム)で触圧刺激を作用させることによって使用者の呼吸を誘導する。この場合の触圧刺激は、物理的な加圧力の大小が問題ではなく、使用者に柔軟に触圧刺激が与えられることが重要である。

【0028】
ゲルアクチュエータを触圧刺激の作用源として利用する方法は、使用者に対してやわらかく触圧刺激を作用させることができる点できわめて有用である。
前述したゲルアクチュエータが厚さ方向に膨縮する際の回復応力を利用する場合も、ゲルアクチュエータの剛性変化を利用する場合も、ゲルアクチュエータ自体が柔軟性を備えることにより、使用者の身体に的確にフィットさせて装着することができ、触圧刺激を確実に作用させることができる。また、触圧刺激に柔軟性があり、人の掌と同様の触圧刺激を作用させることができ、「とけあい動作法」と同様の触圧刺激を行うことによって、使用者に負担をかけずに目標周期に呼吸を引き込むことが可能になる。
ゲルアクチュエータの回復応力、剛性変化は、陽極と陰極に作用させる電圧を制御することによって任意に制御することが可能であり、使用者や用途に応じて、加圧するときの圧力の加え方、加圧を緩めるときの緩め方(圧力制御プロフィール)を細かく制御することが可能である。

【0029】
(同調制御方法)
本実施形態の呼吸引き込み装置を使用する際は、使用者に触圧刺激装置10と呼吸センサ20を装着し、これらと制御用PC32、生体信号計測装置36とを接続し、使用者の呼吸を誘導して目標とする呼吸周期に導くようにする。
目標とする呼吸周期に誘導する方法としては、使用者の呼吸周期が目標とする呼吸周期に達するように、目標周期よりも使用者の呼吸周期が速い場合には、触圧刺激装置10による触圧刺激を徐々に遅くするように制御して誘導し、目標周期にくらべて使用者の呼吸周期が遅い場合には、触圧刺激装置10による触圧刺激を徐々に速くなるように制御して誘導する。

【0030】
このため、まずはじめに、呼吸センサ20と生体信号計測装置36により、使用者が安静にした状態での呼吸周期を計測し、目標周期との差異を把握してから、リアルタイムで使用者の呼吸周期を計測しながら誘導制御する。
誘導方法としては、使用者の呼吸周期が目標周期よりも速い場合には、リアルタイムで計測している呼吸周期の時系列データに対し、100msec~1sec程度遅延させた触圧刺激を触圧刺激装置10により提示し、使用者の呼吸を速める場合には、リアルタイムで計測している呼吸周期に対し、0.8~0.9倍の周期の触圧刺激を提示して使用者の呼吸を誘導する方法が考えられる。

【0031】
しかしながら、リアルタイムで計測している呼吸周期に対して、一定の時間差を設けて機械的に目標周期に誘導する方法は、必ずしも有効に呼吸周期を誘導できるとは限らない。呼吸周期のような生体活動に関わる動作は、誘導操作に対する反応が個々異なると想定されるし、同一人であっても健康状態等の生体の状態によってさまざまに変動すると考えられるからである。
このような個別の条件によって生体反応が異なるような場合の制御方法としては、生体の反応に対し制御装置側が同調しながら制御する方法(同調制御方法)が有効に利用できる。

【0032】
同調制御方法では、装置の人間に対する同調性を調節することができる。装置と人間との同調性を高めるように制御すると、人間の動作タイミングに合わせて装置が動作(反応)を補助するように作用し、同調性を低めると、装置が人間を誘導する(牽引する)ように作用する。同調制御方法として、位相振動子モデルがある。この位相振動子モデルは、単振動を行う振動子の位相を制御し、振動子間の同調や任意の位相差を維持するように制御することが可能である。
位相振動子のモデル式を次式(1)に示す。
【数2】
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θは振動子の位相角、ωは固有角振動数、nは隣り合う振動子の数、Kijは振動子i-j間に働く相互作用の強さを示す。右辺第二項が振動子間の相互作用項であり、これにより複数の振動子間で引き込み・同調が起こる。

【0033】
位相振動子モデルは、単振動を行う振動子間に用いるパターン生成モデルである。装置の運動(ここでは触圧刺激装置が触圧刺激を提示する操作)を生成する位相振動子と人間との間で同調を実現させるため、人間も装置と同様の振動子にしたがって運動している(呼吸している)と仮定して人間の位相を推定する。
位相振動子を用いて呼吸周期に引き込みむ方法は次の通りである。
呼吸センサにより呼吸の位相を検出し、位相振動子によりそれに引き込まれる触圧刺激を加える。両者が同調した後で、位相振動子の同調性を小さくすることにより、呼吸周期を位相振動子の周期に引き込むことで、呼吸数を減少させ精神を安定化させる。

【0034】
本実施形態の呼吸引き込み装置においては、位相振動子モデルに基づいて触圧刺激装置10により使用者に触圧刺激を作用させ、使用者の呼吸周期と触圧刺激との同調性を見ながら、触圧刺激装置10による触圧刺激を制御して使用者の呼吸周期を目標周期に誘導する。このような誘導操作では、使用者の呼吸周期を計測しながら、徐々に使用者の呼吸周期を目標周期に引き込む。すなわち、計測された呼吸周期に対し位相差を設定して触圧刺激を提示したときの呼吸周期のずれ(誘導量)を検出しながら、もっとも有効な引き込み操作がなされるように制御する。

【0035】
なお、呼吸引き込み操作では、触圧刺激を提示するタイミングに加えて、加圧力の大きさ、加圧力の加え方、加圧力の緩め方を制御して引き込み操作を行うこともできる。ただし、ゲルアクチュエータはフレキシブル性が高いことから、圧力センサを使用せずに触圧刺激することも可能である。

【0036】
上記実施形態は、使用者に触圧刺激を作用させて呼吸を引き込む制御に関するものである。触圧刺激のかわりに、「とけあい動作法」で用いられる「ピター、フワー」といった音に近い音、もしくは呼吸音による聴覚刺激装置を利用して、使用者を呼吸周期を聴覚刺激装置の刺激周期に引き込むことも可能である。
この聴覚刺激装置を利用する呼吸周期の引き込みにおいても、生体の反応に対して制御装置を同調させるように制御する同調制御方法を利用することにより、効果的な呼吸引き込みが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 触圧刺激装置
20 呼吸センサ
30 制御部
32 制御用PC
34 データ収録用PC
36 AD変換機
38 生体信号計測装置


図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3