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明細書 :シルク複合ナノファイバー及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-035121 (P2016-035121A)
公開日 平成28年3月17日(2016.3.17)
発明の名称または考案の名称 シルク複合ナノファイバー及びその製造方法
国際特許分類 D01F   4/02        (2006.01)
FI D01F 4/02 ZNM
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2014-158498 (P2014-158498)
出願日 平成26年8月4日(2014.8.4)
発明者または考案者 【氏名】塚田 益裕
【氏名】寺本 彰
【氏名】阿部 康次
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4L035
Fターム 4L035LB10
要約 【課題】ビーズ形態を含まず、細胞付着率と生分解性に優れた細胞足場材用のシルク複合ナノファイバー及びその製造法の提供。
【解決手段】シルク複合ナノファイバーは、高分子量のビニル化合物とシルクとからなり、このシルク複合ナノファイバーは、ビニル化合物を用いてグラフト加工した絹糸を溶解したシルク複合溶媒を、エレクトロスピニングして製造する方法、或いは、グラフト加工法により作製した高分子量のビニル化合物を溶解した溶媒と、シルクを溶解したシルク溶媒とを、任意の組成比で複合してなるシルク複合溶媒をエレクトロスピニングして製造する方法。前記ビニル化合物として、エトキシメチルアクリレート、メタクリル酸2-ハイドロキエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、メタクリルアミド及びメタクリル酸メチルから選ばれる、少なくともいずれか一つを用いるシルク複合ナノファイバー。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
高分子量のビニル化合物とシルクとからなることを特徴とするシルク複合ナノファイバー。
【請求項2】
前記高分子量のビニル化合物は、グラフト加工法で製造されたものであることを特徴とする請求項1記載のシルク複合ナノファイバー。
【請求項3】
前記シルクは、家蚕絹糸または野蚕絹糸であることを特徴とする請求項1または2記載のシルク複合ナノファイバー。
【請求項4】
ビニル化合物を用いてグラフト加工した絹糸を溶解したシルク複合溶媒を、エレクトロスピニングして製造することを特徴とするシルク複合ナノファイバーの製造方法。
【請求項5】
グラフト加工法により作製した高分子量のビニル化合物を溶解した溶媒と、シルクを溶解したシルク溶媒とを、任意の組成比で複合してなるシルク複合溶媒をエレクトロスピニングして製造することを特徴とするシルク複合ナノファイバーの製造方法。
【請求項6】
前記ビニル加工物として、エトキシメチルアクリレート(ETMA)、メタクリル酸2-ハイドロキエチルメタクリレート(HEMA)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、メタクリルアミド(MAA)及びメタクリル酸メチル(MMA)から選ばれる、少なくともいずれか一つを用いることを特徴とする請求項4または5記載のシルク複合ナノファイバーの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シルク複合ナノファイバー及びその製造方法に関し、細胞接着性にすぐれ、所要の生分解性を備えるシルク複合ナノファイバー及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のバイオテクノロジーの進展に伴い、蚕のシルクが持つ多様な機能が見直されるようになり、医療分野あるいは各種産業分野で利活用できるシルク新素材の開発研究が進展している。
最近の研究により、シルク膜における酸素透過性が良いことが解明された。また、リン酸基をグラフト加工の手法で導入したシルクにはカルシウムを吸着する機能のあることが確かめられ、バイオ材料として医療分野で広範に利活用できるものと期待されている。
蚕を通して得られたシルクは、生体内に埋め込んでも抗原抗体の反応が軽微であり、生体親和性であるため、従来、外科分野では手術用縫合材として利用されてきた。シルク表面では生体細胞が良く付着し、増殖性が優れており、細胞足場材として応用できるとされ、再生医療分野における活用の展望が開けている。
【0003】
絹糸は染色性、風合感が優れ感性に優れたた実用性能を有しているが、紫外線の照射を受けると着色し易いという実用上の欠点を補うため、あるいは染色性を増強させることを目的に、我が国独自で開発されたグラフト加工技術(加工法ともいう)が有効である。
グラフト加工法は、ビニル化合物、重合開始剤を含んだグラフト系に絹糸を浸漬し所定時間加熱することによりビニル化合物と重合開始剤が試料に浸透し、試料内に高分子量のビニル化合物が充填することにより実施できる。
ビニル化合物としては側鎖に多様な官能基を有するものがある。疎水性あるいは親水性を持つ化合物、あるいはリン酸基等の特殊な官能基を持つビニル化合物があり所望する用途に合ったビニル化合物を選択することができる。例えば、親水性基あるいは疎水基を持つビニル化合物で絹糸をグラフト加工すると、ビニル化合物が持つ特性に応じて、親水性あるいは疎水性の絹糸が製造できる。
グラフト加工法で製造できる絹糸は衣料分野のみでなく医療分野で応用するための技術開発を進めることが望まれている。
【0004】
近年、エレクトロスピニング紡糸法(以下、エレクトロスピニングと略記することもある)でナノオーダーの極細ファイバーを製造し、バイオ材料として利用する技術に関心が寄せられている。シルクを溶解した溶媒をエレクトロスピニングして製造することができるシルクナノファイバーは、優れた生化学特性を有するため、再生医療工学、創傷材料、あるいはヘルスケアー分野、バイオテクノロジー分野、エネルギー分野で応用する研究が進むようになった。
【0005】
シルクナノファイバーに関する従来公知の技術には次のようなものがある。
繭糸を精練してなる絹糸(絹フィブロイン繊維,フィブロイン、あるいは単にシルクという場合がある)をトリフルオロ酢酸に溶解してなる5-15wt%のシルク溶液を印加電圧25kV、紡糸距離15cmでエレクトロスピニングすることで微細なシルクナノファイバーの製造する技術が公開されている(特許文献1)。
絹糸を加熱した中性塩水溶液で溶解し、透析処理して得られる絹フィブロイン水溶液を例えば、ポリエチレン膜表面に拡げて乾燥固化することで製造できる再生絹フィブロイン膜(再生絹シルク膜ともいう)を室温のヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解してなるシルクHFIP溶液をエレクトロスピニングすることでシルクナノファイバーを製造する方法が開示されている(特許文献2)。特許文献2では、絹シルク膜を溶解するための溶媒は、蒸気圧が高いためエレクトロスピニングでナノファイバーを製造する作業環境が劣悪となり、かつ使用する溶媒は人の健康に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、溶媒が人の健康に害を及ぼすことなく、蒸気圧が低い溶媒を用いるシルクナノファイバーの新規製造技術の開発が望まれている。
【0006】
細胞足場材として好ましく利用できる材料としてシルクとポリオキシ酸とが複合したシルク複合素材がある。これは、シルクとポリオキシ酸とが任意の組成比で含まれるシルク複合物を溶解したトリフルオロ酢酸(TFA)あるいはヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)をエレクトロスピニングすることにより得られ、効果的な細胞足場材を製造する方法が開示されている(特許文献3)。
生体適合性に優れたシルクにポリオキシ酸以外の高分子量の化合物を複合させ、細胞付着率、生分解性に優れたシルク複合溶媒をエレクトロスピニングして製造できるシルク複合ナノファイバーを製造する技術が強く望まれている。こうして製造できる比表面積が広く、繊維径が微細なシルクナノファイバーは、医療分野を始め各種産業分野において、将来的に利用価値の高い素材であるとして関心が寄せられている。
【0007】
シルクを溶解した溶媒をエレクトロスピニングすることで製造でき、細胞の付着率に優れ、微細径で繊維経のバラツキが少なくビーズ形態を含まず平滑表面で微細な繊維径のシルクナノファイバーはバイオ材料として効果的に利用可能である。
所望する微細径でビーズ形態が無いシルク複合ナノファイバーを製造するには、試料を溶解する条件、溶媒、溶解時間、試料濃度そしてエレクトロスピニング条件を最適にする必要がある。
【0008】
生体細胞を付着増殖するために利用する細胞足場材として有望なシルクは、所望される生体適合性と生分解性を備え、良好な細胞付着率を持つため再生医療分野で応用することができる。
ただし、再生医療領域では、細胞の足場材が生体そのものとなるわけではなく、組織の再生に伴い最終的には生分解される必要がある。そのため、本来の組織に置き換わることができる生分解性と生化学特性を有するバイオ材料の出現が強く望まれてきた。
細胞足場材を生体の修復に応用するには、細胞足場材であるシルク表面に細胞を効率的に増殖させた後、例えば、皮膚組織として応用するには数日から10日程度、骨組織で2、3ヶ月,器官を再構築するには半年以上を必要とすることもある。
医療分野で利活用でき理想的なシルク複合ナノファイバーは、生体細胞の付着率が優れ、このような修復期間で分解速度を制御することが可能となる諸特性を持つ足場材である。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特開2004-68161号公報
【特許文献2】米国特許第5,252,285号
【特許文献3】特開2014-015702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、ビーズ形態を含まず、微細径を有し、かつ、細胞接着率、生分解性に優れたシルク複合ナノファイバー及びその製造方法を提供することにある。
なお、本発明において、シルク複合の用語は、シルクと、グラフト加工法で製造できる高分子量のビニル化合物とを含む混合体(あるいは複合ともいう)を意味する。シルクと高分子量のビニル化合物とを含むシルク複合溶媒をエレクトロスピニングして製造したものがシルク複合ナノファイバーである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ビニル化合物でグラフト加工した絹糸をTFAに溶解させてなるシルクと高分子量のビニル化合物とからなるシルクTFAをエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバーが、微細な繊維経で、骨芽細胞が効率的に付着することができ、かつ、生分解性が優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
ビニル化合物を使用し、グラフト加工法でグラフト加工した絹糸をTFA等に溶解してなるシルク複合TFAをエレクトロスピニングすることでシルク複合ナノファイバーを製造することに成功した。また、別法ではあるが、絹糸あるいはシルクスポンジを溶解した溶媒と、ビニル化合物を対象にグラフト加工法で製造した高分子量のビニル化合物と溶解した溶媒を、任意の組成比で混合したシルク複合溶媒をエレクトロスピニングし、シルク複合ナノファイバーを製造することも可能である。
【0012】
シルクスポンジは次のようにして製造することができる。繭糸を精練してなる絹糸を臭化リチウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の加熱した中性塩水溶液中で溶解したシルクと中性塩とが混ざったシルク水溶液をセルロース製の透析膜に入れ、蒸留水で置換することにより製造できるシルク水溶液を凍結乾燥することにより、シルクスポンジが製造できる。
【0013】
シルクスポンジ、絹糸、グラフト加工絹糸あるいは高分子量のビニル化合物を溶解するための溶媒には、トリフルオロ酢酸(TFA)、ヘキサフルオロアセトン1.5水和物、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用いることができる。微細繊維経で表面が平滑なナノファイバーを製造するにはTFA(トリフルオロ酢酸)が特に好ましく利用できる。
【0014】
上記方法によって得られたシルク複合ナノファイバーは、高分子量のビニル化合物とシルクとからなるため、生体適合性に優れ、細胞付着増殖性が良好であり、生分解性も優れており細胞足場材として適しているため再生医療分野で広く応用できるのである。
【0015】
グラフト加工法によりビニル化合物を用いて絹糸をグラフト加工するには、様々なビニル化合物を使用することができ、ビニル化合物を単独で用いることも可能であり、あるいは複数のビニル化合物を任意の組成比で混合してなる複合させたビニル化合物を用いることができる。
グラフト加工法の概要は次のとおりである。グラフト加工用のグラフト系に、単独あるいは複合したビニル化合物を入れ、さらに重合開始剤、界面活性剤を加えた後、希薄蟻酸水溶液を添加してグラフト系のpHを3近辺に調整することが望ましい。ビニル化合物が水不溶性であれば、非イオン界面活性剤を加えビニル化合物を乳化させてからグラフト加工するとよい。
グラフト加工絹糸を溶媒に溶解させエレクトロスピニングすることでシルク複合ナノファイバーが製造できる。
【0016】
エレクトロスピニングで製造できるシルク複合ナノファイバーは、いずれも水に溶解するシルク複合ナノファイバーである。応用用途を広範なものにするために、例えば、細胞足場材として使用するには、水に不溶化させる必要がある。濃度20-80%のアルコール水溶液で1-10分浸漬処理すると水溶解型のシルク複合ナノファイバーは、水不溶型のシルク複合ナノファイバーとなる。
【0017】
本発明における、シルクの原料は、昆虫(家蚕又は野蚕)由来の絹タンパク質である。絹タンパク質としては、例えば、農家が飼育する家蚕(Bombyx mori)又は柞蚕(Antheraea pernyi)、天蚕(Antheraea yamamai)、エリ蚕、シンジュ蚕等の野蚕幼虫が吐糸した絹糸由来の絹タンパク質を挙げることができる。
【0018】
本発明に用いるビニル化合物には次のような様々な化合物がある。2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メタクリルアミド(MAA)、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、N, N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水溶性ビニル化合物単独でも使用が可能である。あるいは、エトキシメチルアクリレート(ETMA)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、メタクリル酸メチル(MMA)、メチル(メタ)アクリレート、シロキサニル(メタ)アクリレート、フルオロ(メタ)アクリレートなどの水不溶性ビニル化合物単独でも使用は可能である。さらに、水溶性ビニル化合物から2種類以上のビニル化合物を用いること、あるいは水不溶性ビニル化合物から2種類以上のビニル化合物を用いること、さらには、水溶性ビニル化合物と水不溶性化合物とを含む複数のビニル化合物を使用することも可能である。
ビニル化合物を複数複合してグラフト加工をするには、HEMAとHBAとの組み合わせが特に好ましく使用できる。
【0019】
複数の複合ビニル化合物を用いる場合には、例えば、親水性ビニル化合物と疎水性ビニル化合物のように水溶解性の異なるビニル化合物を複合させて用いることもできる。
グラフト系に加えるビニル化合物の濃度は、ビニル化合物のグラフト効率によっても異なるが、グラフト加工率が高いMMA、あるいはHEMAであれば、20-80%owfが望ましい。グラフト加工効率が良好でないMAAを用いる場合は、MAA濃度を50-120%に設定するとよい。
【0020】
グラフト系に加える重合開始剤としては過硫酸アンモニウム(APS)が好ましく利用でき、絹糸とビニル化合物の合計重量に対して2.5%owfが望ましい。本発明で使用する濃度単位は、%owfがあり、試料量に対する%量を意味する。
グラフト加工溶液の温度は、25℃から45分かけて85℃に昇温し、80℃の一定温度で60分加熱処理して絹繊維へのグラフト重合反応を行うとよい。
グラフト加工した絹糸は、未反応薬品を除去するため、85℃の1g/1リットルの非イオン界面活性剤ノイゲンHC(登録商標)水溶液で30分間処理し、次いで流水で十分に洗浄することが望ましい。
本発明のグラフト加工法は、比較的低い温度領域での処理で実施でき、しかも穏やかな条件での処理で絹糸に加工できることが特徴である。
【0021】
本発明でシルク複合溶媒に溶解するグラフト加工絹糸の加工率は、特に限定されるものではないが、15%~80%、より好ましくは20~50%である。グラフト加工率がこの範囲より少ないとエレクトロスピニングで製造できるシルク複合ナノファイバーに含まれる高分子量のビニル化合物の含量が少なくなり、またこの範囲より多いとシルク複合ナノファイバーに含まれる高分子量のビニル化合物の含量が多くなる。シルク複合ナノファイバーの生分解性や細胞接着率を所望する値にするように絹糸の加工率は自由に選択できる。
【0022】
本発明に係るシルク複合ナノファイバーは、高分子量のビニル化合物とシルクとからなることを特徴とし、このシルク複合ナノファイバーは、生体適合性に優れ、細胞付着増殖性が良好であり、酵素処理により所望の生分解性を持つため、一定時間の細胞培養を行った後、生分解性機能を活用して、細胞足場材から増殖した細胞を切り離すことができ、再生医療分野の他に、創傷材料等のヘルスケアー分野、バイオテクノロジー分野、エネルギー分野において広く活用することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るシルク複合ナノファイバーは、細胞親和性に優れ、比表面積が極めて大きく、細胞の付着増殖性が良好であり、生分解性が優れているため細胞足場材として好適に使用することができる。生分解性を備えるため、増殖した細胞を細胞足場材から穏やかな条件下で容易に離すことができる。また、本発明に係るシルク複合ナノファイバーの製造方法によれば、細胞足場材として利用できるシルク複合ナノファイバーを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】HEMA(a)、HEMA/5%HBA(b)、HEMA/10%HBA(c)でグラフト加工した家蚕絹糸を溶解したシルク複合TFAをエレクトロスピニングしてなるシルク複合ナノファイバーのSEM画像である。
【図2】シルクナノファイバー(a)と、HEMAでグラフト加工した絹糸を溶解したシルク複合TFAから製造したシルク複合ナノファイバー(b)のSEM画像である。
【図3】ETMA(a),MMA(b)でグラフト加工した絹糸をTFAに溶解してなるシルク複合TFAから製造したシルク複合ナノファイバーのSEM画像である。
【図4】高分子量のHEMA(a)、HEMAでグラフト加工した絹糸をTFAに溶解してなるシルク複合TFAから製造したシルク複合ナノファイバー(b)、シルクナノファイバー(c)のFTIRスペクトルである。
【図5】シルクナノファイバー(a)及びHEMAでグラフト加工した絹糸をTFAに溶解してなるシルク複合TFAをエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバー(b)の繊維径分布を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。本発明はこれらの例に限定されるものではない。
本発明によれば、シルクの原料は、昆虫(家蚕又は野蚕)由来の絹タンパク質の絹糸である。例えば、農家が飼育する家蚕(Bombyx mori)又は家蚕の近縁種であるクワコの幼虫由来の絹糸を挙げることができ、また、柞蚕(Antheraea pernyi)、天蚕(Antheraea yamamai)、タサール蚕(Antheraea militta)、ムガ蚕(Antheraea assama)、エリ蚕、シンジュ蚕等の野蚕幼虫が吐糸した絹タンパク質の絹糸を挙げることができる。
実施例におけるグラフト加工、細胞培養、基材表面での細胞の観察、細胞の付着率の概要を以下に説明する。

【0026】
(グラフト加工法)
絹糸へのグラフト加工方法は次のようにして行うことができる。2g/Lの非イオン界面活性剤(第一工業製薬製・商品名・ノイゲンHC)、ビニル化合物を含むグラフト加工系水溶液に希薄蟻酸水溶液を加えてグラフト系をpH3に調整する。次に、重合開始剤として3%owfの過硫酸アンモニウム(APS)を加え、グラフト加工系に所定濃度のビニル化合物を添加し、浴比は1:50に設定する。グラフト系に絹糸を入れ、室温から80℃まで40分かけて昇温し、80℃で90分間加熱処理することでグラフト加工を行った。
反応終了後、試料を取り出し、80℃で2g/Lの非イオン界面活性剤(第一工業製薬製・ノイゲンHC)で処理して、試料表面に付着した未反応試薬を除去し、水洗いした後、最後に加工絹糸を室温で乾燥させた。
グラフト加工率は、グラフト加工前後の試料重量の変化から算出した。すなわち、グラフト加工前後の試料を105℃で2時間乾燥処理して試料中の水分を除去した後、試料絶乾重量(W)を測定するとともに、グラフト反応後の試料についても同様に乾燥処理し、その絶乾重量(W)を測定した。グラフト加工前後の試料絶乾重量の比較から、グラフト加工率(WG)を次式により求めた。
WG=(W-W)/W×100(%)

【0027】
(高分子量のビニル化合物)
上記、グラフト系に100mgのビニル化合物と2.5%owfの重合開始剤を入れ、80℃で3時間、加熱処理することでビニル化合物を重合させたものを高分子量のビニル化合物とする。HEMA、MMAは重合し易いビニル化合物であり、グラフト加工後、ビーカーの底に沈殿する。HBA、MAA、ETMAを重合するには加工に時間がかかるが、グラフト加工の過程でビニル化合物がゲル化する時点でグラフト加工を終了とした。得られた高分子量のビニル化合物を十分に水洗いをして、室温で乾燥した。

【0028】
(ビニル化合物)
実施例で使用したビニル化合物は下記の通りであり、それらの略称名を( )内に示す。
エトキシメチルアクリレート(ETMA)、メタクリル酸2-ハイドロキエチルメタクリレート(HEMA)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、メタクリルアミド(MAA)、メタクリル酸メチル(MMA)から選ばれる、少なくともいずれか一つを用いることができる。

【0029】
(エレクロトスピニング条件)
カトーテック株式会社製のエレクトロスピニング装置を用いてシルク複合ナノファイバーを製造した。印加電圧25kV、紡糸距離15cm、紡糸速度20μL毎分とした。実施例でエレクトロスピニング条件の記載がない場合はこの条件でナノファイバーを製造した。

【0030】
(細胞培養)
シルク素材表面における細胞付着・増殖実験は次のようにして行った。
マウス由来の繊維芽細胞をEagle's 培地 (Eagle's minimum essential medium), 10% fetal bovine serum (FBS, GIBCO) に懸濁し(1×104cells/mL)、組織培養用ディッシュ(Dainippon Seiyaku Co.Ltd)に10mL播種後、炭酸ガスインキュベーター(CO2 INCUBATOR IT-63:YAMATO SCIENTIFIC 、37℃ , 5%CO2)の中で、培養を行い、2~3日ごとに通常の継代操作を行った。
所定時間培養後(1h、3h、24h)、培地を除去し、PBS(-)で3回洗浄した。
続いて、2.5%グルタルアルデヒド水溶液を添加し、冷蔵庫(4℃)で一晩固定した。
その後、蒸留水で3回洗浄し、濃度勾配エタノール法(50、60、70、80、90、99% EtOHの順に10分間ずつ浸漬)により脱水を行った。
脱水終了後、t-ブチルアルコールで2回置換(60分間ずつ2回)後、-20℃の冷凍庫内で凍結し、凍結乾燥を行った。

【0031】
(基材表面上の繊維芽細胞(L-929)の観察)
所定時間(1h 24h)、繊維芽細胞の培養を行った後、2.5%グルタルアルデヒド水溶液を添加し、冷蔵庫(4℃)で一晩固定した。その後、蒸留水で3回洗浄し、濃度勾配エタノール法(50、60、70、80、90、99%の順に各10分間浸漬)により脱水を行った。
脱水終了後、t-ブチルアルコールで2回置換(60分間ずつ2回)後、-20℃の冷凍庫内で凍結し、凍結乾燥を行った。
凍結乾燥後の基材の底面を1cm四方に切り出し、伝導カーボン両面テープ(応研商事株式会社)を用いて試料台に接着し、ドータイト(D-550;藤倉化成株式会社)を少量塗り、Ag-Pdイオンスパッタコーティング(E-1010;HITACHI)を行った(Ar雰囲気下、90sec)後、走査型電子顕微鏡(SU1510;HITACHI)により観察を行った。

【0032】
(細胞の接着率)
骨芽細胞(MC3T3-E1)を2.0×104cells/scaffoldの濃度で各試料に播種し、インキュベーター内(37℃,5%CO2)に所定時間(1、24時間)静置後、浮遊細胞数を血球計算盤でカウントする事で接着率を算出した。その際に用いた計算式は以下の通りである。
接着率=(a-b)/a ×100 (%)
但し、aとbは、それぞれ播種細胞数および浮遊細胞数を意味する。

【0033】
(実施例1)有機溶媒によるグラフト加工絹糸の溶解性
グラフト加工絹糸をTFAに溶解してなるシルク複合TFAをエレクトロスピニングしてシルク複合ナノファイバーを製造するには、TFAへのグラフト加工絹糸の溶解状態と溶解時間との関係を予め調べる必要がある。ここでは、絹糸溶解性の評価を目視によって行った結果を表1に示す。
グラフト加工絹糸をTFAに溶解してなるシルク複合TFAをエレクトロスピニングして製造できるシルク複合ナノファイバーの形態も併せて評価することにした。すなわち、濃度8wt%の各種シルク複合TFAをエレクトロスピニングしてなるシルク複合ナノファイバーの形態をSEM観察により行った。エレクトロスピニングにより得られるシルク複合ナノファイバーの形態がビーズ形態かあるいは微細なナノファイバーであるかを評価した。なお、エレクトロスピニング条件は、紡糸速度 22μL/min、電圧 25kVであった。
得られた測定結果が表1である。表1では、TFAにおける絹糸の溶解性が良好である場合を○、エレクトロスピニングで製造したものがナノファイバー形態である場合をNF、ビーズ形態である場合をBと記載した。

【0034】
【表1】
JP2016035121A_000003t.gif

【0035】
表1から次のことがわかる。HEMAでグラフト加工し、加工率が32% のグラフト加工絹糸(HEMA grafted,32%)をTFAに浸漬し、溶解時間1日で得られるシルク複合TFAをエレクトロスピニングしても微細な繊維径のナノファイバーではなくビーズ形態物となった。TFA中、溶解時間2日で得られるシルク複合TFAをエレクトロスピニングすると微細形態のナノファイバーが得られた。
モノマー仕込み濃度が35%メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)と、5%4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)との混合ビニル化合物でグラフト加工し、加工率が33% のグラフト加工絹糸(HEMA/HBA,33%)を溶解時間1日で得られるシルク複合TFAをエレクトロスピニングするとビーズ形態物が、溶解時間2、3、4日で得られるシルク複合TFAをエレクトロスピニングすると微細形態のナノファイバーが得られた。
同様に、MMAでグラフト加工したグラフト加工絹糸(MMA grafted, 28%) を溶解時間1日で得られるシルク複合TFAをエレクトロスピニングしてもビーズ形態物しか得られないが、溶解時間2、3、4日で得られるシルク複合TFAをエレクトロスピニングすると微細形態のナノファイバーが得られた。
未加工絹糸以外の3種類のグラフト加工絹糸をTFA中、溶解時間5日で得られたシルク複合TFAをそれぞれエレクトロスピニングしても微細径のナノファイバーではなくビーズ形態を取るものが数多く得られた。

【0036】
表1の結果から、グラフト加工絹糸を室温のTFA中、溶解時間2日で得られるシルク複合TFAをエレクトロスピニングすると微細径のシルクナノファイバーが製造できることが分かった。
以下の実施例では、グラフト加工絹糸は、TFA中、溶解時間2日で得られるシルク複合TFAをエレクトロスピニングすることにした。

【0037】
(実施例2)家蚕シルクナノファイバーの製造と細胞接着率
家蚕絹糸を用い、下記のNo.1~No.6に記載する方法でシルクナノファイバーあるいはシルク複合ナノファイバーを製造した。
(No.1):
未加工絹糸(未加工絹フィブロイン繊維)を室温のTFA中、浸漬時間2日で得られる濃度8wt%のシルクTFAをエレクトロスピニングすることで繊維径289nmのシルクナノファイバーを製造した。
(No.2):
未加工絹糸(未加工絹フィブロイン繊維)を室温のTFA中、浸漬時間2日で得られる濃度10wt%のシルクTFAをエレクトロスピニングすることで繊維径703nmのシルクナノファイバーを製造した。
(No.3):
未加工絹糸(未加工絹フィブロイン繊維)を室温のTFA中、浸漬時間2日で得られる濃度12wt%のシルクTFAをエレクトロスピニングすることで繊維径1410nmのシルクナノファイバーを製造した。
(No.4):
グラフト系に35%owfのHEMAを使用して絹糸へのグラフト加工を行い、加工率が32%のグラフト加工絹糸を製造する。このグラフト加工絹糸を室温のTFA中、浸漬時間2日で得られるシルク複合TFAをエレクトロスピニングすることで繊維径287nmのシルクナノファイバーを製造した。
(No.5):
グラフト系に35%owfのHEMAと5%owfの4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)の混合ビニル化合物を使用し、HEMAとHBAとの混合ビニル化合物からなり、加工率が33%のグラフト加工絹糸を製造した。かくして製造した、HEMAとHBAとの混合ビニル化合物でグラフト加工した家蚕絹糸を室温のTFA中、浸漬時間2日で得られる濃度8wt%のシルク複合TFAをエレクトロスピニングすることで繊維径289nmのシルクナノファイバーを製造した。
(No.6):
グラフト系に35%owf HEMAと10%owf 4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)の混合ビニル化合物を使用し、加工率が31%のHEMAとHBAとの混合ビニル化合物からなるグラフト加工絹糸を製造した。かくして製造した、HEMAとHBAとの混合ビニル化合物でグラフト加工した絹糸を室温のTFA中、浸漬時間2日で得られる濃度8wt%のシルク複合TFAを調製し、エレクトロスピニングすることで繊維径703nmのシルクナノファイバーを製造した。

【0038】
上記No.1~No.6の6種類のシルクナノファイバーについて細胞接着率を評価した結果を表2に示す。
表2のサンプル欄の、1-1、1-24は、サンプル番号No.1のシルクナノファイバーを用いて骨芽細胞(MC3T3-E1)培養を行い、培養1時間および24時間における細胞の接着率の測定結果を示す。他のサンプルについても同様である。SDは細胞の接着率のバラツキを示す標準偏差である。Conc.wt%とSizeとはシルクナノファイバーあるいはシルク複合ナノファイバーを製造する際の試料TFA濃度と、ナノファイバーの平均繊維径である。

【0039】
【表2】
JP2016035121A_000004t.gif

【0040】
家蚕の未加工絹糸から作製したシルクナノファイバー(試料No.1、No.2、No.3)はシルクTFA濃度が8、10、12wt%と増加すると、ナノファイバーの繊維経がそれぞれ、289nm、703nm、1410nmとなった。培養時間1時間では、いずれの試料についても接着率は70~80%程度の低い値となったが、培養時間24時間ではいずれも90~94%程度にまで増加した。
メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)でグラフト加工した家蚕絹糸を溶解したシルク複合TFAをエレクトロスピニングしてなるシルク複合ナノファイバー(試料No.4)の繊維径は287nmであり、培養1時間ではナノファイバー表面における骨芽細胞の接着率が89%、培養時間24時間では98%近い値となった
メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)と4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)との
混合モノマーでグラフト加工した家蚕絹糸を溶解したシルク複合TFAをエレクトロスピニングしてなるシルク複合ナノファイバー(試料No.5、No.6)は繊維径が289~703nmであり、ナノファイバー表面における骨芽細胞の接着率は、培養1時間で89~95%,培養時間24時間では96~100%となった。

【0041】
表2の結果から次のことがわかる。未加工絹糸から作製した家蚕シルクナノファイバー(No.1)表面における骨芽細胞の接着率は、高分子量のHEMAを含むシルク複合ナノファイバー(No.4)表面での細胞の接着率よりも低い値となった。さらに高分子量のHEMAと高分子量のHBAとを含むシルク複合ナノファイバー(No.5,No.6)表面での細胞の接着率は、高分子量のHEMAを含むナノファイバー表面での細胞の接着率よりも更に高い値となった。
すなわち、細胞の接着率、増殖性について比較すると、未加工絹糸を用いたシルクナノファイバーよりも、高分子量のビニル化合物を含むシルク複合ナノファイバーの細胞付着率は高くなる。
表1にあるMMA grafted 28%のシルク複合ナノファイバーの細胞付着率はHEMA grafted 32%のシルク複合ナノファイバーと同等の値となった。

【0042】
シルクナノファイバーを細胞足場材として使用する場合、繊維径が細いシルクナノファイバーにおける細胞接着率は、繊維径の太いシルクナノファイバーにおける細胞接着率よりも高い値となる傾向がある。従来は、シルクの細胞増殖性、接着性については知られていたが、シルクナノファイバーへの細胞接着率と繊維径との関連が明らかとなった。
上記実験結果は289nm~1410nmの繊維径を有し、家蚕絹糸由来のシルクナノファイバーが細胞足場材として効果的であることが明らかとなった。

【0043】
(実施例3)高分子量のビニル化合物と家蚕シルクとを複合したナノファイバー
HEMAをグラフト加工法により重合しTFAに溶解した高分子量のHEMA TFAと、家蚕絹糸をTFAに溶解してなるシルクTFAとを、組成比、50:50で混合してなるシルク複合TFAをエレクトロスピニングしてシルク複合ナノファイバーを製造した。得られたシルク複合ナノファイバーの繊維経は460nmであった。実施例2と同様の方法で骨芽細胞による栽培培養を行い、培養1時間、24時間での細胞の接着率は、それぞれ93%、97%となった。

【0044】
(実施例4)柞蚕シルクのナノファイバー
実施例2における家蚕絹糸の代わりに、柞蚕絹糸を用いて下記のNo.T1~NoT.6に記載する方法によりシルクナノファイバーを製造した。
(No.T1):
未加工柞蚕絹糸(未加工絹フィブロイン繊維)を室温のTFA中、浸漬時間2日で得られる濃度8wt%の柞蚕シルクTFAをエレクトロスピニングすることで繊維径293nmの柞蚕シルクナノファイバーを製造した。
(No.T2):
未加工柞蚕絹糸(未加工絹フィブロイン繊維)を室温のTFA中、浸漬時間2日で得られる濃度10wt%のシルクTFAをエレクトロスピニングすることで繊維径823nmの柞蚕シルクナノファイバーを製造した。
(No.T3):
未加工柞蚕絹糸(未加工絹フィブロイン繊維)を室温のTFA中、浸漬時間2日で得られる濃度12wt%のシルクTFAをエレクトロスピニングすることで繊維径1630nmの柞蚕シルクナノファイバーを製造した。
(No.T4):
グラフト系に濃度35%のHEMAを添加し、柞蚕絹糸へのグラフト加工を行い、加工率が32%のグラフト加工柞蚕絹糸を製造する。このグラフト加工柞蚕絹糸を室温のTFA中、浸漬時間2日で得られる濃度8wt%のシルク複合TFAをエレクトロスピニングすることで繊維径360nmの柞蚕シルクナノファイバーを製造した。
(No.T5):
モノマー仕込み濃度が35%HEMAと5% 4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)の混合ビニル化合物を使用し、HEMAとHBAとの混合ビニル化合物からなり加工率が33%のグラフト柞蚕絹糸を製造した。かくして製造した、HEMAとHBAとの混合ビニル化合物でグラフト加工した柞蚕絹糸を室温のTFA中、浸漬時間2日で得られる濃度8wt%のシルク複合TFAを調製し、エレクトロスピニングすることで繊維径299nmのシルクナノファイバーを製造した。
(No.T6):
モノマー仕込み濃度が35%HEMAと10% 4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)の混合ビニル化合物を使用し、加工率が31%のHEMAとHBAとの混合ビニル化合物からなるグラフト柞蚕絹糸を製造した。かくして製造した、HEMAとHBAとの混合ビニル化合物でグラフト加工した柞蚕絹糸を室温のTFA中、浸漬時間2日で得られる濃度8wt%の柞蚕シルク複合TFAを調製し、エレクトロスピニングすることで繊維径987nmの柞蚕シルクナノファイバーを製造した。

【0045】
上記No.T1~No.T6の6種類のシルクナノファイバーについて、細胞接着率を評価した結果を表3に示す。サンプルの欄で、T1-1、T1-24とあるのは、サンプル番号No.T1のシルクナノファイバーを用いた骨芽細胞培養で培養1時間および24時間における測定結果を示す。他も同様である。
【表3】
JP2016035121A_000005t.gif

【0046】
柞蚕のシルクナノファイバー(試料No.T1、No.T2、No.T3)はシルクTFAの濃度が8、10、12wt%と増加すると、ナノファイバーの繊維経がそれぞれ、293nm、823nm, 1630nmとなった。培養時間1時間では、いずれも接着率は70~80%程度の値となった。培養時間24時間ではいずれも92%~95%程度にまで増加した。
メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)でグラフト加工した柞蚕絹糸を溶解したTFAをエレクトロスピニングしてなるシルク複合ナノファイバー(試料No.T4)の繊維径は360nmであり、培養1時間ではシルク複合ナノファイバー表面における骨芽細胞の接着率が93%、培養時間24時間では98%となった
メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)と4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)との
混合モノマーを含む系でグラフト加工した柞蚕絹糸を溶解したシルク複合TFAをエレクトロスピニングしてなるシルク複合ナノファイバー(試料No.T5、No.T6)は繊維径が299~988nmであり、ナノファイバー表面における骨芽細胞の接着率は、培養1時間で95%以上,培養時間24時間ではいずれも100%近くの値となった。

【0047】
表3の結果から次のことがわかる。
未加工柞蚕絹糸から作製した柞蚕シルクナノファイバー(No.T1-24)表面における骨芽細胞の接着率は、高分子量のHEMAを含むシルク複合柞蚕ナノファイバー(No.T4-24)表面での細胞の接着率よりもほぼ同等か若干低い値となった。さらに高分子量のHEMAと高分子量のHBAとを含むシルク複合ナノファイバー(No.T5,No.T6)表面での細胞の接着率は、高分子量のHEMAを含むナノファイバー表面での細胞の接着率よりも若干高い値となった。
すなわち、細胞の接着率、増殖性について比較すると、未加工柞蚕絹糸を用いたシルクナノファイバーよりも、高分子量のHEMAを含むシルク複合ナノファイバーが高い値を、更にHEMAとHBAを含む柞蚕シルク複合ナノファイバーが最も優れた細胞付着率を示した。
また、柞蚕複合シルクナノファイバーの表面での細胞の接着率は、それに対応する家蚕複合シルクナノファイバーよりも高い値を示している。
表1記載のMMA grafted 28%は、家蚕絹糸にMMAでグラフト加工したものであるが、家蚕絹糸の代わりに柞蚕絹糸を用いMMAでグラフト加工した柞蚕絹糸を室温のTFAに溶解してなる柞蚕シルク複合TFAをエレクトロスピニングして製造した柞蚕シルク複合ナノファイバーの細胞付着率は、未加工柞蚕絹糸をTFAに溶解してなる柞蚕シルクTFAをエレクトロスピニングして製造した柞蚕シルクナノファイバーの細胞接着率よりも、さらに家蚕絹糸を室温のTFAに溶解してなる家蚕シルク複合TFAをエレクトロスピニングして製造した家蚕シルクナノファイバーの細胞付着率よりも優れた値が得られた。このことは、原料に未加工の柞蚕絹糸を用いると、未加工の家蚕絹糸を原料に用いるよりも細胞接着率が優れた値となることがわかった。

【0048】
(実施例5)高分子量のビニル化合物と柞蚕シルクとを複合したナノファイバー
HEMAをグラフト加工法で重合させてなる高分子量のHEMAを調製した。これとは別に、柞蚕絹糸をTFAに溶解して柞蚕シルクTFAを調製し、両者を組成比、50:50で混合したシルク複合TFAをエレクトロスピニングすることで柞蚕シルク複合ナノファイバーを製造した。得られた柞蚕シルク複合ナノファイバーの繊維経は460nmであった。実施例2と同様の方法により骨芽細胞の接着率を測定したところ、培養1時間、24時間での細胞の接着率は、ともに、ほぼ100%となった。

【0049】
(実施例6)家蚕シルクの生分解挙動
繊維、シルクナノファイバー、ならびにシルク複合ナノファイバーに3種類の酵素水溶液を作用させてシルクの生分解挙動を調べた。
生分解条件は次の通りである。生分解温度は37℃であり、酵素としては、キモトリプシン、コラゲナーゼおよびプロテアーゼの3種類を用いた。緩衝溶液の液量はシルク材料の250倍とし、570時間以内の生分解挙動を調べた。酵素濃度は、培養液1mL当たりの酵素重量mgで表示した。キモトリプシンはシグマアルドリッチジャパン株式会社製、コラゲナーゼ(Type F)はシグマアルドリッチジャパン株式会社製、また、プロテアーゼはシグマアルドリッチジャパン株式会社製のものを用いた。
コラゲナーゼにより生分解実験をするための緩衝液はTES(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(和光純薬工業株式会社製)、キモトリプシン使用時の緩衝液はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、和光純薬工業株式会社製)、また、プロテアーゼ使用時の緩衝液は燐酸カリウムを用いた。

【0050】
生分解実験に使用した試料は、表4に示す次の3種類である。I.未加工絹糸、II.絹糸を溶解してなる10wt% TFAをエレクトロスピニングしてなるシルクナノファイバー、III.ビニル化合物の仕込み濃度が35%メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)と5% 4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)とを使用し加工率が33%のグラフト加工絹糸を、室温のTFAで2日間溶解し試料濃度8wt%、印加電圧25kVでエレクトロスピニングしたシルク複合NF、IV.グラフト加工法で重合させた高分子量のHEMAを溶解したTFAと、これとは別に家蚕絹糸をTFAに溶解してシルクTFAを調製し、両者を組成比、50:50で混合してなるシルク複合TFAをエレクトロスピニングで製造したシルク複合MIX。エレクトロスピニングの条件は、いずれも試料濃度10wt%、印加電圧25kVである。

【0051】
上記I.~IV.の各試料について生分解挙動を測定した結果を表4に示す。酵素濃度0.2mg/mLのコラーゲナーゼ、キモトリプシン、プロテアーゼKの緩衝液に試料を所定時間(0,24,72,240,576時間)培養した後の試料重量残留率(%)を示している。

【0052】
【表4】
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【0053】
表4から分かることは次の通りである。シルクナノファイバーはプロテアーゼKで加水分解作用を受けやすい。濃度0.5mg/mLプロテアーゼKを用いた生分解実験において、生分解時間576時間で試料重量残留率は55%となった。コラーゲナーゼとキモトリプシンによる処理では、同条件で試料の生分解はプロテアーゼKに比べて起こりに難かった。また、家蚕絹糸はいずれの酵素を作用させても生分解挙動は観察されなかった。シルクの生分解性は、繊維形態を有するか、分子がランダム形態である、あるいはナノファイバーであるかにより大きな差が見られ、ナノファイバー状のシルクの生分解性は絹糸の生分解性に比べて起こり易いことが観察された。
酵素プロテアーゼKの作用により最も加水分解を受けやすいのは家蚕シルク複合ナノファイバーである。
HEMAとHBAとを含む混合したビニル化合物でクラフト加工したグラフト加工絹糸をTFAに溶解してなるシルク複合TFAをエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバー(シルク複合NF)の生分解性は、グラフト加工法で製造した高分子のHEMA/HBAを溶解したTFAと、シルクTFAとを組成比50:50で混合してなるシルク複合TFAをエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバーの生分解性とほぼ同一の値を示した。
酵素による生分解を受け難い試料を並べると次のようになる。家蚕シルク複合ナノファイバー<家蚕シルクナノファイバー<家蚕絹糸。絹糸は酵素作用による生分解が最も起こり難い。

【0054】
(実施例7)柞蚕シルクの生分解挙動
実施例6で使用した試料の代わりに柞蚕シルクの絹糸、ナノファイバー、複合ナノファイバーに3種類の酵素を作用させ生分解挙動を調べた。生分解実験に使用した柞蚕シルクは、表5に示す次の4種類である。
I.未加工柞蚕絹糸、II.柞蚕絹糸を溶解してなる10wt% TFAをエレクトロスピニングして製造したシルクナノファイバー、III.仕込み濃度が35%メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)と5% 4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)とのビニル化合物を使用し、加工率が33%のグラフト加工した柞蚕絹糸を、室温のTFAで2日間溶解してなる試料濃度8wt%の試料TFAをエレクトロスピニングして製造したシルク複合NF、IV.グラフト加工法で重合させTFAに溶解した高分子量のHEMA TFAと、これとは別に柞蚕絹糸をTFAに溶解した柞蚕シルクTFAとを、組成比、50:50で混合してなるシルク複合溶媒をエレクトロスピニングで製造したシルク複合MIX。なお、エレクトロスピニングの条件は、試料濃度10wt%、印加電圧25kVである。

【0055】
上記I.~IV.の各試料について生分解挙動を測定した結果を表5に示す。
【表5】
JP2016035121A_000007t.gif

【0056】
プロテアーゼの作用で最も加水分解を受けやすいのは柞蚕シルク複合ナノファイバーである。酵素の作用による生分解を受けやすい順に並べると次のようになる。柞蚕シルクナノファイバー<柞蚕絹糸。柞蚕絹糸は最も生分解が起こり難い。
実施例6と実施例7の測定結果から、同一酵素による処理で、同一条件であれば、柞蚕シルクおよび柞蚕シルク複合ナノファイバーの方が家蚕シルクおよび家蚕シルク複合ナノファイバーよりも酵素による生分解が起こり難いことがわかる。

【0057】
上述した実施例6、実施例7の実験結果から、シルクの生分解性が、繊維形状が微細なナノファイバーであるか、シルク繊維、あるいはシルク複合ナノファイバーかにより差異があること、使用する酵素によっても異なることが確認できた。
実施例2、4に示したように、家蚕あるいは柞蚕シルクのナノファイバーは、特に柞蚕シルクナノファイバーで観察されたように、優れた細胞接着性、増殖生を備えており、細胞足場材として好適に利用することが可能である。柞蚕シルクナノナファイバーあるいは柞蚕シルク複合ナノファイバーの細胞接着率は、対応する家蚕シルクナノファイバーあるいは家蚕シルク複合ナノファイバーよりも優れている。
これらのシルクナノファイバーおよびシルク複合ナノファイバーは細胞足場材として利用するには、試料表面で細胞を増殖させた後、所望により細胞集合体を生分解性の細胞足場材から穏やかな条件下で切り離すことが可能であり、再生医療分野で有効に利用することができる。

【0058】
(実施例8)家蚕シルク複合ナノファイバーのSEM画像
図1にグラフト加工した家蚕絹糸を溶解した家蚕シルク複合TFAをエレクトロスピニングして製造した家蚕シルク複合ナノファイバーのSEM画像を示す。図1(a)は、HEMAを用いて、(b)は、濃度が35%メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)と5%HBAとを混合したビニル化合物を用いて、(c)は、35%メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)と10%HBAとを混合したビニル化合物を用いてグラフト加工した家蚕絹糸を溶解してなる家蚕シルク複合TFAをエレクトロスピニングして製造した家蚕シルク複合ナノファイバーのSEM画像である。グラフト加工率はいずれも32%であり、シルク複合TFA濃度はいずれも8wt%であった。
図1から、ビニル化合物がHEMA,あるいはHEMAとHBAとからなり組成比が異なったビニル化合物でグラフト加工した家蚕絹糸をTFAに溶解してなる家蚕シルク複合TFAをエレクトロスピニングすると繊維径が細く、表面が平滑なシルク複合ナノファイバーが製造できることが分かった。

【0059】
(実施例9)シルク複合ナノファイバーのSEM画像
図2は、未加工絹糸を室温のTFAに溶解し、それをエレクトロスピニングして製造した
シルクナノファイバー(画像倍率, 1000倍)(a)ならびにシルク複合ナノファイバーのSEM画像である。なお、図2(b)は、グラフト加工法で重合した高分子量のHEMAと、絹糸をTFAに溶解したシルクTFAとを組成比20:80で複合してなるシルク複合溶FTAをエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバーのSEM画像(倍率3000倍)である。
図2から、シルク複合ナノファイバーは、シルクナノファイバーと同様に繊維径が細く、ファイバー表面が平滑であることがわかる。

【0060】
(実施例10)シルク複合ナノファイバーのSEM画像
実施例9で記載したHEMAの代わりにETMAあるいはMMAを使用してグラフト加工した家蚕絹糸から製造したシルク複合ナノファイバーの形態を評価するためSEM画像を撮影した。
ETMAでグラフト加工した家蚕絹糸あるいはMMAでグラフト加工した家蚕絹糸をTFAに溶解してなる8wt%のシルク複合TFAをエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバーのSEM画像がそれぞれ図3(a)と図3(b)である。
図3から、ビニル化合物としてETMAあるいはMMAを用いてグラフト加工した家蚕絹糸を溶解したシルク複合TFAをエレクトロスピニングするとビーズ形態が含まれない微細形態のナノファイバーファイバーが得られることがわかる。
なお、ETMAでグラフト加工した家蚕絹糸を室温のTFAに溶解し、エレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバーへの細胞付着率は、表1に記載したHEMA grafted ,すなわちHEMAでグラフト加工し室温のTFAに溶解してなるシルク複合TFAをエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバーの細胞付着率と同等の値を示した。

【0061】
(実施例11)高分子量のHEMAとシルクとを含むシルク複合ナノファイバーのFTIR
HEMAを用いてグラフト加工した高分子量のHEMAを溶解したHEMA TFA、HEMAを用いてグラフト加工法した家蚕絹糸を溶解したシルク複合TFA, シルクTFAをそれぞれエレクトロスピニングして得られたシルクナノファイバーの分子形態を明らかにするためFTIRスペクトルを測定した。得られたFTIRスペクトルを図4に示す。
図4(a)は高分子量のHEMAのナノファイバー、図4(b)はHEMAを用いてグラフト加工法した家蚕絹糸を溶解したシルク複合TFAをエレクトロスピニングしてなるシルク複合ナノファイバー、図4(c)はシルクナノファイバーのFTIRスペクトルである。

【0062】
高分子量のHEMA(図4(a))のFTIRスペクトルには、1234、1514、1636cm-1にピークが現れている。シルクとHEMAとを複合したシルク複合ナノファイバー(図4(b))のFTIRスペクトルには、1164、1514、1636cm-1にピークが現れている。シルクナノファイバー(図4(c))のFTIRスペクトルには、1076、1164、1636、1705cm-1にピークが現れている。
これらのスペクトルを比較すると、シルク複合ナノファイバーのFTIRスペクトル(図4(b))には、シルクナノファイバーのFTIRスペクトルと高分子量のHEMAに基づくFTIRスペクトルとが重なり複合して出現している。シルク複合ナノファイバーの組成は、分光分析的に見て、シルクと高分子量のHEMAであることが確かめられた。

【0063】
(実施例12)
グラフト加工法で重合した高分子量のHEMAを溶解したTFA,絹糸を溶解したTFAとを混合比20:80で複合したシルク複合TFAをエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバー、ならびにHEMAを使用してグラフト加工した絹糸を溶解したTFAをエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバーの分子形態を実施例11に記載した方法でFTIR測定を行ったところ、両者のFTIRは図4(b)と同様のスペクトルとなった。このことから、HEMAでグラフト加工した家蚕絹糸を溶解したシルク複合ナノファイバーと、高分子量のHEMAと絹糸とを別々に溶解し、所定の組成比で複合してなるシルク複合溶媒をエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバーは、高分子量のHEMAとシルクとが複合した同様の分子構造を持っており、両者の分子構造は類似していることが確認された。
高分子量のHEMAと絹糸とを別々に溶解し、所定の組成比で複合してなるシルク複合溶媒をエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバーへの細胞付着率を実施例2の方法で評価したところ、培養時間24時間で100%となった。

【0064】
(実施例13)シルクナノファイバーの繊維径分布
ナノファイバーの繊維径の分布を明らかにするため、実施例10に記載したナノファイバーのSEM画像(図2(a)、(b))に対して繊維径計測用ソフトを用い、繊維径分布のダイアグラムを作製した。図5に、得られた繊維径のダイアグラムを示す。
図5(a)は、未加工絹糸を溶解したTFAを、図5(b)はHEMAでグラフト加工した絹糸を溶解したTFAを、それぞれエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバーの繊維経のダイアグラムである。
シルクナノファイバーの平均繊維経は185nmであり繊維径が200nm以下のものが多く含んでおり繊維経のバラツキも少ない。一方、図5(b)に示すHEMAでグラフト加工した絹糸をTFAに溶解してエレクトロスピニングしてなるシルク複合ナノファイバーの平均繊維経はシルクナノファイバーと類似するが、繊維経のバラツキは大きい。

【0065】
(実施例14)シルク複合ナノファイバーの繊維径と標準偏差
エトキシメチルアクリレート(ETMA)、HEMA、メタクリルアミド(MAA)、メチルメタクリレート(MAA)を用いてグラフト加工し加工率がいずれも30%の家蚕絹糸をTFAに溶解し、それらをエレクトロスピニングすることでシルク複合ナノファイバーを製造した。SEM測定で繊維形態を観察し、繊維経を測定し平均繊維経を求めた。得られた結果を表6に示す。
【表6】
JP2016035121A_000008t.gif

【0066】
表6に示すように、家蚕シルク複合ナノファイバーの繊維径は、グラフト加工に使用するビニル化合物の種類によって若干変化する。HEMAあるいはMMAを用いてグラフト加工した家蚕絹糸を溶解してなるシルク複合TFAをエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバーの繊維径は比較的細く、MAA、ETMAを用いたグラフト加工によるシルク複合ナノファイバーの繊維径は増加する傾向がある。また、繊維径が太いナノファイバーの方が、繊維径のばらつきが大きくなった。
ETMA, MAA, MMAでグラフト加工した絹糸を溶解してなるシルク複合TFAをエレクトロスピニングして製造したシルク複合ナノファイバーへの細胞付着率を実施例2と同様の方法で評価したところ、いずれも培養時間24時間で99%となった。

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4