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明細書 :銅三次元ナノ構造体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-056401 (P2016-056401A)
公開日 平成28年4月21日(2016.4.21)
発明の名称または考案の名称 銅三次元ナノ構造体の製造方法
国際特許分類 C25D  21/12        (2006.01)
C25D   7/00        (2006.01)
C25D   3/38        (2006.01)
B82Y  40/00        (2011.01)
B82Y  30/00        (2011.01)
H01M   4/80        (2006.01)
H01M   4/66        (2006.01)
FI C25D 21/12 A
C25D 7/00 Y
C25D 3/38
B82Y 40/00
B82Y 30/00
H01M 4/80 C
H01M 4/66 A
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2014-182989 (P2014-182989)
出願日 平成26年9月9日(2014.9.9)
発明者または考案者 【氏名】新井 進
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4K023
4K024
5H017
Fターム 4K023AA19
4K023BA06
4K023CB03
4K023CB32
4K023DA06
4K023DA07
4K023DA11
4K023EA01
4K024AA09
4K024AB19
4K024BB09
4K024BB27
4K024CA01
4K024CA02
4K024CA06
4K024CA16
4K024GA16
5H017AA03
5H017AS02
5H017BB16
5H017BB17
5H017CC01
5H017DD01
5H017DD05
5H017EE01
5H017HH06
要約 【課題】 きわめて大きな比表面積の粗面構造を有する金属膜及びその好適な製造方法を提供する。
【解決手段】 電解めっきにより、銅からなる板状の電析物がランダムな向きに交錯して形成された銅三次元ナノ構造体を製造する方法であって、めっき時の電流密度の大小を調整することにより、前記板状の電析物の疎密度を制御することを特徴とする。
電解めっきに用いるめっき浴の添加剤としてポリアクリル酸を使用し、めっき浴におけるポリアクリル酸の濃度cを、2×10-5 M<c<2×10-3 Mの範囲に設定して、前記銅三次元ナノ構造体を形成する。
【選択図】 図4
特許請求の範囲 【請求項1】
電解めっきにより、銅からなる板状の電析物がランダムな向きに交錯して形成された銅三次元ナノ構造体を製造する方法であって、
めっき時の電流密度の大小を調節することにより、前記板状の電析物の疎密度を制御することを特徴とする銅三次元ナノ構造体の製造方法。
【請求項2】
電解めっきにより、銅からなる板状の電析物がランダムな向きに交錯して形成された銅三次元ナノ構造体を製造する方法であって、
めっき時の通電量の大小を調節することにより、前記板状の電析物の疎密度を制御することを特徴とする銅三次元ナノ構造体の製造方法。
【請求項3】
電解めっきにより、銅からなる板状の電析物がランダムな向きに交錯して形成された銅三次元ナノ構造体を製造する方法であって、
めっき時のめっき浴の温度を調節することにより、前記板状の電析物の疎密度を制御することを特徴とする銅三次元ナノ構造体の製造方法。
【請求項4】
電解めっきに用いるめっき浴の添加剤としてポリアクリル酸を使用し、めっき浴におけるポリアクリル酸の濃度cを、
2×10-5 M<c<2×10-3 M
の範囲に設定して、前記銅三次元ナノ構造体を形成することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の銅三次元ナノ構造体の製造方法。
【請求項5】
前記めっき浴のポリアクリル酸の濃度cを、
1×10-4 M<c<5×10-4 M
の範囲に設定することを特徴とする請求項4記載の銅三次元ナノ構造体の製造方法。





発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電解めっき法によって銅三次元ナノ構造体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元ナノ構造を持つ金属はキャパシタや二次電池等の蓄電分野や触媒担持体、熱交換分野等の様々な分野での応用が期待されている。特に銅の三次元ナノ構造は、リチウムイオン電池の負極集電体としての応用が検討されている。これまでに陽極酸化アルミナを利用した電気銅めっき法で銅三次元ナノ構造を作製し、Fe3O4やNi-Sn合金をめっきしたリチウムイオン電池用負極が優れた充放電サイクル特性を示すことが報告されている(非特許文献1、2)。
銅三次元ナノ構造について、本発明者は、ポリアクリル酸を添加した硫酸銅浴から電析により銅三次元ナノ構造を簡単に作製できることを報告している。
【0003】
リチウムイオン電池の充放電特性を向上させるには、集電体表面あるいは活物質の比表面積を大きくする方法が有効である。集電体あるいは活物質の比表面積を大きくすると充放電速度の向上が期待でき、また活物質に隙間が多く形成されることから、充放電時の活物質の体積変化によって生じる応力を緩和できる利点がある。
集電体表面を粗面にした例としては、粗面化処理を施した2層の金属箔を積層して形成したもの(特許文献1)、樹脂からなる基材上に導電性膜を介して、表面を粗面とした集電層を設け集電層上に活物質層を設けたもの(特許文献2)等がある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2007-26913号公報
【特許文献2】特開2008-171788号公報
【0005】

【非特許文献1】P.L. Taberna, S. Mitra, P. Poizot, P. Simon, J.-M. Tarascon; Nature Materials, 5,567-573 (2006).
【非特許文献2】J. Hassoun, S. Panero, P. Simon, P. Louis Taberna, B. Scrosati, Advanced Materials, 19, 1632-1635 (2007)
【非特許文献3】S. Arai, T. Kitamura; ECS Electrochemistry Letters, 3 (5),D7 (2014).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
銅三次元ナノ構造を作製する方法として、陽極酸化アルミナを利用した銅三次元ナノ構造の作製は操作が複雑である。これに対し、ポリアクリル酸を添加した硫酸銅浴から電析により形成する方法は操作が簡単であるという大きな利点がある。しかしながら、この電析による場合も、電析時の電流密度や浴温などによって銅三次元ナノ構造体の微細構造が大きく変化する可能性がある。
本発明は、めっきの際の析出条件を制御することにより、ナノ構造体の疎密度を制御する銅三次元ナノ構造体の製造方法を提供することをを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、電解銅めっきにより銅三次元ナノ構造体を形成する際に、電流密度を制御すること、もしくは通電量を制御すること、もしくはめっき浴の浴温度を制御することにより銅三次元ナノ構造体の疎密度を変えることができることを見出し、本発明に想到したものである。
すなわち、本発明に係る銅三次元ナノ構造体の製造方法は、電解めっきにより、銅からなる板状の電析物がランダムな向きに交錯して形成された銅三次元ナノ構造体を製造する方法であって、めっき時の電流密度の大小を調整することにより、前記板状の電析物の疎密度を制御することを特徴とする。
電解銅めっきにより、銅三次元ナノ構造体を形成する場合に電流密度を高くしてめっきすると、銅三次元ナノ構造体は緻密に形成され、電流密度を低くしてめっきすると銅三次元ナノ構造体は疎(板状の電析物の間隔が、電流密度を高くした場合よりも広い)となるように形成される。したがって、形成すべき銅三次元ナノ構造体の疎密度に応じて電流密度を制御することにより、所望の疎密度を備える銅三次元ナノ構造体を得ることができる。
【0008】
また、本発明に係る銅三次元ナノ構造体の製造方法は、電解めっきにより、銅からなる板状の電析物がランダムな向きに交錯して形成された銅三次元ナノ構造体を製造する方法であって、めっき時の通電量の大小を調節することにより、前記板状の電析物の疎密度を制御することを特徴とする。
電解銅めっきにより、銅三次元ナノ構造体を形成する際に、通電量を大きくすると銅三次元ナノ構造体は疎となり、通電量を小さくすると銅三次元ナノ構造体は緻密に形成される。
【0009】
また、本発明に係る銅三次元ナノ構造体の製造方法は、電解めっきにより、銅からなる板状の電析物がランダムな向きに交錯して形成された銅三次元ナノ構造体を製造する方法であって、めっき時のめっき浴の温度を調節することにより、前記板状の電析物の疎密度を制御することを特徴とする。
電解銅めっき時にめっき浴の温度を低くすると銅三次元ナノ構造体は緻密に形成され、めっき浴の温度を高くすると銅三次元ナノ構造体は疎となるように形成される。
【0010】
銅三次元ナノ構造体を形成する際のめっき条件としては、電解めっきに用いるめっき浴の添加剤としてポリアクリル酸を使用し、めっき浴におけるポリアクリル酸の濃度cを、2×10-5 M<c<2×10-3 Mの範囲に設定して、前記銅三次元ナノ構造体を形成する方法が有効である。
また、前記めっき浴のポリアクリル酸の濃度cを、1×10-4 M<c<5×10-4 Mの範囲に設定することが、銅三次元ナノ構造体を製造する方法としてさらに好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る銅三次元ナノ構造体の製造方法によれば、銅からなる板状体の配置の疎密度を容易に制御することができ、種々用途に応じた比表面積等の特性を備える銅三次元ナノ構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電解めっきにより作製した銅三次元ナノ構造体の構造を示すSEM像である。
【図2】電解めっきにより作製した銅三次元ナノ構造体の構造を示すSEM像である。
【図3】めっき浴に添加するポリアクリル酸の添加量を変えたときの銅三次元ナノ構造体の構造を示すSEM像である。
【図4】電流密度を変えてめっきしたときのめっき表面のSEM像(低倍率)である。
【図5】電流密度を変えてめっきしたときのめっき表面のSEM像(高倍率)である。
【図6】電流密度を変えたときの銅三次元ナノ構造体の構造を示すSEM像である。
【図7】通電量を変えてめっきしたときのめっき表面のSEM像である。
【図8】通電量を変えてめっきしたときのめっきの断面SEM像である。
【図9】めっき浴の温度を変えてめっきしたときのめっき表面のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(銅三次元ナノ構造体の製法)
銅三次元ナノ構造体は、薄い(厚さ数十nm)板状の電析物がランダムに交錯した形態に形成された構造体であり、電解めっき法を利用して作製することができる。銅三次元ナノ構造体の作製方法において特徴的な点は、めっき浴に添加するポリアクリル酸の量にある。
図1、2は、銅めっき浴(CuSO4・5H2O :0.85M、H2SO4 :0.55M)に添加剤としてポリアクリル酸(分子量5000)を添加して銅板表面にめっきしためっき膜表面のSEM像を示す。図1は、電流規制法、通電量60C cm-2電流密度0.5Adm-2とした場合、図2は、電流密度を1Adm-2とした場合である。

【0014】
図1(a)~(d)、図2(a)~(d)とも、ポリアクリル酸の添加量を、(a):2×10-6 M、(b):2×10-5 M、(c):2×10-4 M、(d):2×10-3 Mとした場合である。
図1、2(a)、(b)、(d)を見ると、めっき膜は、表面に若干の凹凸は見られるものの、めっき膜全体として平滑である。
これに対し、図1(c)、図2(c)のめっき膜(ポリアクリル酸:2×10-4 M)は、特異的にめっき膜の表面が粗面となっている。図1(c)の拡大像を見ると、薄い板状の電析物がランダムに交錯して形成されたナノ構造体であることがわかる。
この実験結果は、電解銅めっき法により銅三次元ナノ構造体を形成するためのポリアクリル酸のモル濃度cは、2×10-5 M<c<2×10-3 Mの範囲にあることを示唆する。

【0015】
図3は、上述した例と同様の銅めっき浴を使用し、添加剤としてポリアクリル酸(分子量5000)を使用し、通電量27C cm-2、電流密度1Adm-2とした銅めっき膜の表面SEM像と断面SEM像である。ポリアクリル酸の添加量は、図3(a):0 M、(b):1×10-4 M、(c):3×10-4 M、(d):5×10-4 M、(e):2×10-3Mである。
図3から、ポリアクリル酸の添加量が0M(図3(a))と2×10-3M(図3(e))のサンプルについては、めっき膜が円滑膜に形成され、析出物が交錯した構造が見られない。一方、ポリアクリル酸の添加量が1×10-4 M、3×10-4M、5×10-4Mである図3(b)、(c)、(d)のサンプルについては、板状の銅析出物がランダムに交錯して重なり合い、内部に空隙が形成された構造(銅三次元ナノ構造体)となっている。
この実験結果は、銅三次元ナノ構造体を形成するためのポリアクリル酸の添加量としてさらに好適な範囲cが、1×10-4 M<c<5×10-4 Mであることを示している。

【0016】
ポリアクリル酸を添加したことによって銅三次元ナノ構造体が形成される作用は、以下のように考えられる。
めっき浴にポリアクリル酸を添加したときの電流-電位曲線を見ると、添加するポリアクリル酸の濃度が増大するとともに銅の析出が抑制される傾向が見られる。この結果は、ポリアクリル酸が陰極に吸着し、銅の析出を阻害していることを示す。すなわち、ポリアクリル酸は銅が析出するとその表面を被覆して銅が厚さ方向に析出することを阻害し、銅の析出物の端面部分のみから銅が析出することができることで、板状に延びるように銅が析出し、三次元ナノ構造体を構築する。

【0017】
(電流密度を変える実験)
電解めっきにより銅三次元ナノ構造体を作製する条件として、電流密度がどのように作用するかを調べるため、電流密度を変えて、銅三次元ナノ構造体を作製する実験を行った。
電解めっきの条件を以下に示す。
めっき浴 CuSO4・5H2O :0.85M H2SO4;0.55M
添加材 ポリアクリル酸(PA-5000):3×10-4 M
電析条件 電流規制法 電流密度:0.1~5A/dm2 通電量:27C
アノード:含リン銅板 カソード:純銅板 温度:25℃ 攪拌:なし

【0018】
図4は、電流密度を0.1A/dm2、0.2A/dm2、0.5A/dm2、1A/dm2、1.5A/dm2、2A/dm2、5A/dm2として基材表面にめっきしたときの表面の微細構造を示す。図5は、電流密度を0.1A/dm2、0.2A/dm2、0.5A/dm2、1A/dm2、1.5A/dm2、2A/dm2、5A/dm2としたときの表面構造を高倍率で観測した結果を示す。図4のSEM像は一目盛が50μm、図5のSEM像は一目盛が2μmである。

【0019】
図4、5の表面SEM像から、電流密度を5A/dm2とした場合を除き、電流密度を0.1A/dm2、0.2A/dm2、0.5A/dm2、1A/dm2、1.5A/dm2、2A/dm2とした場合については、いずれも銅の薄い板状体がランダムに交錯した銅三次元ナノ構造体が形成されていることがわかる。なお、電流密度を5A/dm2とした場合は、高倍率のSEM像(図5)を見ても、板状体が交錯した形態はみられない。
図4、5に示した実験結果は、電解めっき時の電流密度が、銅三次元ナノ構造体を形成するためのめっき条件の一つであること、さらに、電流密度が銅三次元ナノ構造体の疎密度(銅の板状体が形成される密度)に影響を与えることを示す。

【0020】
すなわち、図4、5から、電解めっきの際の電流密度を低く設定した場合は、電流密度を高く設定した場合と比べて、銅三次元ナノ構造体の疎密度が粗くなり、電流密度を高くするにしたがって、銅三次元ナノ構造体の密度が高くなる。
図4に示す低倍率の表面SEM像を見ると、電流密度が低くなるにしたがって、ランダム配置の銅の板状体が広い間隔で形成されていることがわかる。電流密度を1A/dm2、1.5A/dm2、2A/dm2とした場合は、図4では、銅三次元ナノ構造体の構造がわかりにくいが、図5から銅三次元ナノ構造体が形成されていることがわかる。

【0021】
図5の銅三次元ナノ構造体の構成において特徴的な点は、電流密度を高くして、銅三次元ナノ構造体が緻密に形成される場合でも、銅三次元ナノ構造体は電流密度を低くした場合と同様に、薄い銅の板状体がランダムに交錯して、内部に空隙が形成された形態となっている点である。すなわち、電流密度を高くして、銅三次元ナノ構造体が緻密になるように形成した場合でも、板状体をランダムに交錯した形態がそのまま維持される。そして、このように銅三次元ナノ構造体が緻密に形成される場合でも、めっき部分を厚さ方向にみると、深さ方向の全体にわたって緻密に銅の板状体が交錯した形態となり、めっき膜の全体が銅三次元ナノ構造体となる。

【0022】
図6は、上記めっき方法と同様な方法で銅三次元ナノ構造体を形成した他の例を示す。
図6(a)~(d)は、それぞれ電流密度を(a):0.1A/dm2、(b):0.5A/dm2、(c):1A/dm2、(d):2A/dm2としたときの表面SEM像である。図6(a)~(d)は、同一倍率である。
図6に示す実験結果も、電流密度を高くしていくと、銅三次元ナノ構造体の板状体の間隔が狭くなり、銅三次元ナノ構造体が緻密な構造になっていくことを示す。
この場合も、電流密度を変えても析出する板状体の厚さは変わらず、銅からなる板状体がランダムに交錯した形態を維持することは上記実施例と同様である。銅からなる板状体の厚さは40~50nm程度である。

【0023】
本実験例の場合も、銅三次元ナノ構造体が緻密に形成される場合でも、銅三次元ナノ構造体の全体の厚さ(めっき部分の厚さ)が、銅三次元ナノ構造体が疎に形成される場合と比較して薄くなるわけではない。すなわち、電析物の厚さは、電流密度を変えても変わらず、厚さ方向の全体にわたって緻密な構造となる。図6(a)に示すように、板状体の配置が疎となる場合は、電析物の厚さ方向の全体にわたって電析物の密度が疎となる。

【0024】
(通電量を変える実験)
上記実験は電解めっきの際に電流密度を変えた実験である。次に、電流密度を一定とし、通電量を変えてめっきした場合の実験結果について説明する。
電解めっき条件を以下に示す。
めっき浴 CuSO4・5H2O :0.85M H2SO4;0.55M
添加材 ポリアクリル酸(PA-5000):3×10-4 M
電析条件 電流規制法 電流密度:1A/dm2 通電量:68、34、14、7C
アノード:銅板 カソード:銅板 温度:室温 攪拌:なし

【0025】
図7は、電流密度を1A/dm2とし、通電量を68C、34C、14C、7Cとして電解めっきしためっき表面のSEM像である。これらの表面SEM像から、通電量が大きい場合には銅三次元ナノ構造体の疎密度が疎(板状体の間隔が広い)となり、通電量を小さくすると銅三次元ナノ構造は緻密になることがわかる。

【0026】
図8は、通電量を68C、34C、14C、7Cとしたときの断面SEM像である。通電量が大きい場合にはめっきが厚く、通電量を小さくするとめっきが薄くなる。通電量68Cと34CのSEM像から、めっきの厚さ方向の全体にわたって銅三次元ナノ構造体が形成されていること、すなわちめっきの厚さ方向の全体に銅の板状体がランダムに交錯した形態となることがわかる。
めっきの厚さがこれらよりも薄い、通電量が14C、7Cの場合も、めっきの厚さ方向にの全体にわたって銅三次元ナノ構造体が形成されている。

【0027】
(めっき浴の温度を変える実験)
次に、めっき浴の浴温を変えたときに、銅三次元ナノ構造体の形態がどのようになるかを実験した結果について説明する。
本実験での電解めっきの条件を下記に示す。
めっき浴 CuSO4・5H2O :0.85M H2SO4;0.55M
添加材 ポリアクリル酸(PA-5000):3×10-4 M
電析条件 電流規制法 電流密度:1A/dm2 通電量:27C
アノード:含リン銅板 カソード:純銅板 温度25~80℃ 攪拌:なし
この実験では、電流密度を1A/dm2、通電量27Cとし、めっき浴の浴温度を25~80℃の範囲で変えてめっきした。

【0028】
図9に、めっき浴の温度を25℃、40℃、60℃、80℃としてめっきしたサンプルの表面SEM像を示す。それぞれ、上段が低倍率、下段が高倍率のSEM像を示す。
図9から、めっき浴の浴温度が25℃~60℃の範囲では、浴温度が低い場合には銅三次元ナノ構造体は緻密になり、浴温度が高くなると銅三次元ナノ構造体は疎密度が粗くなることがわかる。なお、浴温度を80℃とした場合は、めっき膜表面が粗面となる構造は見られるが、銅の板状体がランダムに交錯する形態(銅三次元ナノ構造体)はみられない。

【0029】
(銅三次元ナノ構造体の疎密度の調整)
上述した各実験例は、銅三次元ナノ構造体を形成する場合に、電解めっきの際の電流密度を調節する方法、通電量を調節する方法、めっき浴の浴温度を調節することによって、銅三次元ナノ構造体の疎密度(銅からなる板状体の配置密度)が調節できることを示している。

【0030】
銅三次元ナノ構造体は、銅の板状体がランダムに交錯し、内部にさまざまな空隙を備えるという特徴的な構成を備えることから、種々用途への利用が考えられる。
たとえば、銅三次元ナノ構造体は、大きな比表面積を有することからその比表面積を利用する用途に利用することが考えられる。このような場合に、銅三次元ナノ構造体の疎密度を調節することにより、用途に合わせた比表面積を有する銅三次元ナノ構造体を提供することができる。
また、銅三次元ナノ構造体は、その表面に、めっき、あるいはコーティング等により、他の物質を積層して保持する基材として利用することができる。このような場合には、銅三次元ナノ構造体がアンカーとして作用するが、銅三次元ナノ構造体の疎密度を調節することにより用途に合わせたアンカー作用を有する銅三次元ナノ構造体を提供することができる。

【0031】
また、銅三次元ナノ構造体はその内部、あるいは表面に、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、シリコン、スズ等の他の素材を取り込む構造として利用することができる。このような場合にも、銅三次元ナノ構造体の疎密度を調節して銅三次元ナノ構造体の空隙の大きさ等を調節することにより、銅三次元ナノ構造体に取り込む対象物や用途に合わせて他の素材を的確に取り込む空隙を備える銅三次元ナノ構造体を提供することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8