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明細書 :ゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-056863 (P2016-056863A)
公開日 平成28年4月21日(2016.4.21)
発明の名称または考案の名称 ゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構
国際特許分類 F16D  28/00        (2006.01)
H02N  11/00        (2006.01)
FI F16D 28/00 Z
H02N 11/00 Z
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2014-183160 (P2014-183160)
出願日 平成26年9月9日(2014.9.9)
発明者または考案者 【氏名】橋本 稔
【氏名】李 毅
【氏名】白井 叔子
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
要約 【課題】 小型化、軽量化が可能で、低消費電力、低価格化が可能なクラッチ機構を提供する。
【解決手段】 面方向を対向して配置される陽極板10及び陰極板12と、陰極板12の少なくとも陽極板10に対向する面を被覆する誘電性部材14とを備え、陽極板10と陰極板12との間に電圧を印加すると、誘電性部材14が陽極板10に吸着し、陽極板10と陰極板12との間に印加する電圧を解除すると、誘電性部材14が元の厚さに復帰して、陽極板10と誘電性部材14を含む陰極板12とが離間することによりクラッチ作用がなされる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
面方向を対向して配置される陽極板及び陰極板と、
前記陰極板の少なくとも前記陽極板に対向する面を被覆する誘電性部材とを備え、
前記陽極板と前記陰極板との間に電圧を印加すると、前記誘電性部材が前記陽極板に吸着し、
前記陽極板と前記陰極板との間に印加する電圧を解除すると、前記誘電性部材が元の厚さに復帰して、前記陽極板と前記誘電性部材を含む陰極板とが離間することによりクラッチ作用がなされることを特徴とするゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構。
【請求項2】
前記陽極板が回転駆動される動力側の部材であり、前記誘電性部材を含む陰極板が前記陽極板に対して接離作用をなすことを特徴とする請求項1記載のゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構。
【請求項3】
前記陽極板が直動駆動される動力側の部材であり、前記誘電性部材を含む陰極板が前記陽極板に対して接離作用をなすことを特徴とする請求項1記載のゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構。
【請求項4】
前記陰極板が前記陽極板に対向する方向に進退動可能に設けられ、前記陰極板に対し前記陽極板から退避する向きの弾性力を付与する弾性部材を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載のゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構。
【請求項5】
前記陽極板の前記陰極板との接離面が、凹凸面に形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載のゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構。
【請求項6】
面方向を対向して配置される駆動部材及び押動板と、
前記駆動部材と前記押動板との間に介装される双方向型のアクチュエータユニットとを備え、
前記アクチュエータユニットに印加する電圧をON-OFFすることにより、前記駆動部材に前記押動板を接離してクラッチ作用がなされることを特徴とするゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料を用いたアクチュエータはソフトで小型軽量な次世代アクチュエータとして注目されおり活発に開発が行なわれている、中でもPVC ゲルを用いたアクチ ュエータは大気中で安定駆動が可能あるため比較的制御ししやすいという利点を持つ。本発明者は、PVCゲルを用いて電場駆動可能な伸縮アクチュエータ を開発し、その特性等について報告している(特許文献1、2、非特許文献1、2)。最近の研究では、300Vの電圧印加で収縮率10%、回復応力20kPaという駆動特性を得ている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2012-23843号公報
【特許文献2】特開2012-130201号公報
【0004】

【非特許文献1】静井章朗、森崇、加藤龍、森下壮一郎、横井浩史、“収縮型PVCゲルアクチュエータの構造と駆動特性”、第28回日本ロボット学会学術講演会、RSJ2010AC2J1-8,2010
【非特許文献2】山野美咲、橋本稔、高崎緑、平井利博、“メッシュ電極を用いた伸縮型PVCゲルアクチュエータの駆動特性”、第26回日本ロボット学会学術講演会、2A1-02,2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PVCゲルアクチュエータは、ポリ塩化ビニル(PVC)を可塑剤によりゲル化した PVCゲルをメッシュ状の陽極と箔状(薄平板状)の陰極とで挟んで構成する。電圧印加時には、ゲルがメッシュの空間内に引き込まれ全体として厚さ方向に収縮し、除去時には、ゲルが持つ弾性によって元の状態に戻るというメカニズムを持つ。さらにこの単位構造(単層)を高さ方向に積層することにより、全体としての変位が増大され、収縮型アクチュエータを構成することができる。
【0006】
このPVCゲルアクチュエータの利用例としてクラッチへの利用が考えられる。クラッチは、動力部と動かしたいもの、たとえば車輪などとを接続する部分に使われる。それらは油中で駆動させる湿式と大気中での駆動の乾式に大きく二分され、単板・多板・遠心等の種類がある。またそれらを動かすための摩擦材としてコルクモールド・ゴムモールド・ペーパーベース・ガラスヤーン・セミメタリックなどがあり、これらもまた湿式と 乾式がある。
しかしながら、これら従来の構造は複雑で重く、また摩擦材の性能がクラッチ駆動の良し悪しを左右するといわれ、1.破損し飛び散る危険がない、2.クラッチを動かすレバー等が軽く操作が容易、3.接続がスムーズで振動がない、4.電力伝達・遮断が確実に行われる、5.耐熱性・耐摩耗性に優れている、6.変速が容易にできる等、摩擦材には多くの性能が求められている。
【0007】
本発明は、ゲルアクチュエータをクラッチ機構に利用することにより、摩擦材を使用せずに駆動することができ、軽量、低消費電力、低価格化が可能なゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構は、面方向を対向して配置される陽極板及び陰極板と、前記陰極板の少なくとも前記陽極板に対向する面を被覆する誘電性部材とを備え、前記陽極板と前記陰極板との間に電圧を印加すると、前記誘電性部材が前記陽極板に吸着し、前記陽極板と前記陰極板との間に印加する電圧を解除すると、前記誘電性部材が元の厚さに復帰して、前記陽極板と前記誘電性部材を含む陰極板とが離間することによりクラッチ作用がなされることを特徴とする。
誘電性部材とは、電圧を印加したときに陽極に引き付けられて変形する作用を奏する部材であり、PVC(ポリ塩化ビニル)ゲル等が用いられる。
なお、誘電性部材が陽極板に吸着される作用は、電圧を印加したことにより誘電性部材に注入された電子がクーロン力により陽極板に吸引され、それとともに誘電性部材が陽極板に向けて伸び、陽極板に吸着(粘着)する作用である。
【0009】
また、前記クラッチ機構としては、前記陽極板が回転駆動される動力側の部材であり、前記誘電部材を含む陰極板が前記陽極板に対して接離作用をなす回転式のクラッチ機構、前記陽極板が直動駆動される動力側の部材であり、前記誘電部材を含む陰極板が前記陽極板に対して接離作用をなす直動式のクラッチ機構を構成することができる。
【0010】
また、前記陰極板が前記陽極板に対向する方向に進退動可能に設けられ、前記陰極板に対し前記陽極板から退避する向きの弾性力を付与する弾性部材を備えることにより、電圧印加を解除したときに陰極板を確実に陽極板から離間する位置に戻すことができ、より確実なクラッチ操作をなすことができる。
また、前記陽極板の前記陰極板との接離面が、凹凸面に形成されていることにより、前記陽極板と陰極板との連結性を向上させ、動力の伝達性を向上させることができる。
【0011】
また、面方向を対向して配置される駆動部材及び押動板と、前記駆動部材と前記押動板との間に介装される双方向型のアクチュエータユニットとを備え、前記アクチュエータユニットに印加する電圧をON-OFFすることにより、前記駆動部材に前記押動板を接離してクラッチ作用がなされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構は、クラッチ操作にゲルアクチュエータを用いたことにより、小型で軽量であり、低消費電力のクラッチ機構として提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ゲルアクチュエータを用いた回転式のクラッチ機構の構成例を示す説明図である。
【図2】ゲルアクチュエータを用いた直動式のクラッチ機構の構成例を示す説明図である。
【図3】回転式のクラッチ機構で陽極板の接離面を凹凸面とした例の説明図である。
【図4】直動式のクラッチ機構で陽極板の接離面を凹凸面とした例の説明図である。
【図5】回転式のクラッチ機構の他の構成例を示す、クラッチ機構の組み立て図(a)、クラッチ機構を組み立てた状態の斜視図(b)、陰極板の平面図(c)である。
【図6】直動式のクラッチ機構の他の構成例を示す斜視図である。
【図7】回転式のクラッチ機構のさらに他の構成例を示す斜視図である。
【図8】アクチュエータユニットの構成と作用を示す説明図である。
【図9】直動式のクラッチ機構のさらに他の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(回転式のクラッチ機構)
図1はゲルアクチュエータを用いた回転式のクラッチ機構の構成例を示す。
図1(a)、(b)に示すゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構は、動力側である陽極板10と、動力が伝達される側である陰極板12とを、回転軸(支持軸)の軸心位置を一致させ、平行平板配置として、それぞれ回転自在に支持した構成を備える。
このクラッチ機構において特徴的な構成は、陰極板12の表面全体をPVCゲル14により被覆する構成としたこと、陽極板10と、陰極板12をそれぞれ直流印加電圧の正極と負極とに接続する構成としたことにある。なお、陽極板10と陰極板12は導電性材料からなる。16は直流電源である。

【0015】
図1(a)は、陽極板10と陰極板12との間に電圧を印加していない状態、図1(b)は、陽極板10と陰極板12との間に電圧を印加した状態を示す。
図1(a)の電圧を印加していない状態においては、陰極板12の表面を被覆するPVCゲル14と陽極板10との対向面がわずかに離間する(空隙がある)ように陽極板10と陰極板12の配置、厚さ、及びPVCゲル14の厚さを設定する。
図1(a)に示すように、陽極板10と陰極板12は対向面が平行平面になるように配置し、陰極板12の表面を被覆するPVCゲル14を均一の厚さとすることで、陽極板10の接離面(クラッチ作用をなすときに相互に接触する面)とこれに対向するPVCゲル14の表面とが平行面になる。

【0016】
陽極板10と陰極板12とに電圧を印加すると(図1(b))、陰極板12からPVCゲル14に電子が注入され、PVCゲル14の表面近傍に電子が蓄積される。PVCゲル14の表面に電子が蓄積されることにより、クーロン力により電子が陽極板10に引き付けられ、PVCゲル14が陽極板10に向けて伸び(厚さ方向に伸びる)、PVCゲル14が陽極板10に吸着される。PVCゲル14は導電性を有しないから、PVCゲル14は陽極板10の表面に吸着された状態を維持する。

【0017】
PVCゲル14が伸びる理由は、PVCゲル14が柔軟性を有していることにある。したがって、PVCゲル14の柔軟性を調節したり、陰極板12の表面を被覆するPVCゲル14の厚さを調節したりすることにより、PVCゲル14の伸び率を調節することができる。
図1(b)に示すように、陽極板10と陰極板12との間に電圧を印加すると、陽極板10に対向する面のPVCゲル14は、その全面が陽極板10に粘着するように吸着し、陽極板10の動力が陰極板12に伝達される状態(クラッチが接続した状態)になる。

【0018】
陽極板10と陰極板12とに印加する電圧を解除すると、PVCゲル14に蓄積されていた電子の蓄積が解消され、PVCゲル14は陽極板10に引き寄せられて伸びた状態から元の状態に復帰し、図1(a)に示すように、PVCゲル14と陽極板10との対向面間が離間する状態(クラッチが離れた状態)になる。
こうして、陽極板10と陰極板12との間の電圧印加をON-OFF操作することにより、陽極板10と陰極板12との間のクラッチ切り替え作用がなされる。
本実施例では、陰極板12の外面の全面をPVCゲル14によって被覆したが、PVCゲル14は、陰極板12の少なくとも陽極板10に対向する面を被覆すればよい。

【0019】
(直動式のクラッチ機構)
図2はゲルアクチュエータを用いた直動式のクラッチ機構の構成例を示す。
図2にに示す直動式のクラッチ機構は、動力側である平板状の陽極板10の両側に、陽極板10の面に平行に、陽極板10と対向させて、動力が伝達される側の第1の陰極板12aと第2の陰極板12bを配置したものである。
第1の陰極板12a、第2の陰極板12bの外面は、それぞれPVCゲル14によって被覆されている。

【0020】
図2(a)は陽極板10と第1の陰極板12a、第2の陰極板12bとの間に電圧が印加されていない状態である。第1の陰極板12aと第2の陰極板12bを被覆するPVCゲル14は、電圧を印加しない状態でPVCゲル14と陽極板10との対向面間がわずかに離間するように設ける。この状態が、陽極板10と第2の陰極板12a及び第2の陰極板12bが離間した状態(クラッチが離れた状態)で、陽極板10から第1の陰極板12a及び第2の陰極板12bに動力が伝達されない状態である。

【0021】
陽極板10と第1の陰極板12a及び第2の陰極板12bとの間に電圧が印加されると、第1の陰極板12aと第2の陰極板12bを被覆するPVCゲル14に電子が注入され、PVCゲルはクーロン力により陽極板10に引き付けられ、陽極板10に向けて伸び、陽極板10にPVCゲル14が吸着される(図2(b))。陽極板10にPVCゲル14が吸着された状態が陽極板10から第1の陰極板12a及び第2の陰極板12bに動力が伝達される状態(クラッチが接続された状態)である。

【0022】
このように、PVCゲルを用いた直動式のクラッチ機構の場合も、前述した例と同様に、陽極板10と第1の陰極板12aと第2の陰極板12bとの間にPVCゲル14を介在させることにより、電圧印加をON-OFFすることにより、陽極板10と第1の陰極板12a、第2の陰極板12bとの間でクラッチ機能を作用させることができる。

【0023】
(接離面に凹凸を設けた例)
図1、2に示すゲルアクチュエータを用いたクラッチ機構では、陽極板10として接離面が平坦面である平板体を使用した。平板体の陽極板10にかえて、陰極板12を被覆するPVCゲル14との接離面を凹凸面とした陽極板を用いることもできる。
図3は、回転式のクラッチ機構で、陽極板10の接離面10aを凹凸面とした例であり、図4は、直動式のクラッチ機構で、陽極板10の接離面10aを凹凸面とした例である。陽極板10の接離面10aを凹凸面とすると、陽極板と陰極板との間に電圧を印加してPVCゲルを陽極板10の接離面10aに吸着したときに、接離面10aに設けた凹凸がPVCゲル14に食い込み、凹凸がアンカーのように作用するとともに、接離面10aとPVCゲル14との接触面積が大きくなることで、陽極板と陰極板との連結力を強くすることができる。

【0024】
陽極板10の接離面10aに設ける凹凸の例としては、接離面10aにPVCゲルが接触し吸着した際に、PVCゲルに埋没する小突起を多数設ける方法、PVCゲルが進入する小さな凹溝を多数本設ける方法、接離面10aの全面を粗面とする方法等がある。PVCゲルは柔軟性を有するから、陽極板10の接離面10aを凹凸面とする方法は陽極板と陰極板との連結性を高め、陽極板10から陰極板12に効率的に動力を伝達することができる。

【0025】
図4に示す直動式のクラッチ機構では、陽極板10の一方の面のみにおいて陽極板10と陰極板12とを連繋する構成としている。図2に示す直動式の場合も、図4に示すように、動力側である陽極板10の一方の側のみで陰極板12と連繋する構成とすることも可能であり、図4に示すクラッチ機構でも、陽極板10の両面で陰極板12と連繋するように構成することもできる。

【0026】
(引っ張りバネを用いる例)
図5は、図1と同様な回転式のクラッチ機構の他の構成例を示す。このクラッチ機構では、陽極板と陰極板に印加する電圧を解除したときに、引張りバネを用いて陰極板を陽極板から引き離す構成としている。
図5(a)は各部の組み立て図、図5(b)はクラッチを組み立てた状態を示す。
陽極板10は、動力側の回転部材20の接離面に表面を露出して設けられ、回転部材20の駆動軸22内を挿通する配線23を介して電源の正極に接続される。
陰極板12はPVCゲル14により被覆され、第1の支持軸24と、支持板25を介して第2の支持軸26によって支持される。第1の支持軸24は支持板25に軸線方向に若干移動可能に設けられている。陰極板12は、第1の支持軸24、支持板25、第2の支持軸26を挿通する配線27を介して電源の負極に接続される。陰極板12と支持板25との間には、引っ張りバネ28が介装されている。

【0027】
図5(c)は陰極板12の平面図である。陰極板12には複数個の貫通孔が設けられている。陰極板12に複数の貫通孔を設けてPVCゲル14によって陰極板12を被覆すると、陰極板12へのPVCゲル14の保持性が良好になるという利点がある。

【0028】
図5に示すクラッチ機構では、配線23、27を介して陽極板10と陰極板12に電圧を印加すると、陰極板12はPVCゲル14と陽極板10との間に作用する吸引力により、陽極板10に向けて移動してPVCゲル14が陽極板10に吸着される。電圧の印加を解除すると、PVCゲル14が厚さ方向に収縮する作用と、バネ28の引っ張り力により陰極板12が元位置に復帰し、陽極板10と陰極板12(PVCゲル14)が離間する。
本実施例では、バネ28の引っ張り力を利用して陰極板12を元位置に復帰させることで、陽極板10に吸着した(粘着した)陰極板12を確実に元位置に復帰させ、クラッチ機構の接離作用が確実に作用させることができる。

【0029】
(直動式で引っ張りバネを用いた例)
図6は、直動式のクラッチ機構の構成例で、電圧の印加を解除したときに、陰極板12を陽極板10から離間させるための戻し用のバネ(引っ張りバネ)28を設けた例である。
平板状の陽極板10を挟んで、PVCゲル14で外面を被覆した第1の陰極板12aと第2の陰極板12bを配置する構成は、図2に示すクラッチ機構と同様である。図2の構成と相違する点は、第1の陰極板12aと第2の陰極板12bが陽極板10に向けて接離可能となるように、支持ブロック30により第1の陰極板12aと第2の陰極板12を一端側で支持し、第1の陰極板12aと第2の陰極板12bに対し、陽極板10から離間する向きの弾性力を付与するバネ28a、28bを設けた点にある。
陽極板10は配線31を介して電源に接続され、第1の陰極板12aと第2の陰極板12bは配線32を介して電源に接続される。

【0030】
本構成例のクラッチ機構においては、陽極板10と、第1の陰極板12a及び第2の陰極板12bとの間に電圧を印加すると、第1の陰極板12aと第2の陰極板12bが陽極板10向けてわずかに移動して吸着され、電圧の印加を解除すると、第1の陰極板12aと第2の陰極板12bは、PVCゲル14が収縮する作用と、バネ28a、28bの戻し作用によって、元位置に復帰する。
この構成例の場合も、バネ28a、28bを設けたことにより、電圧印加を解除した際に、陽極板10に吸着した第1の陰極板12aと第2の陰極板12bを確実に元位置に復帰させることができ、安定したクラッチ操作をなすことができる。

【0031】
(アクチュエータユニットを使用する例)
図7は回転式のクラッチ機構についての他の構成例を示す。このクラッチ機構は、動力側の駆動部材40に、PVCゲル14により外面を被覆した押動板50を接離してクラッチ作用を生じさせるものである。
PVCゲル14を被覆した押動板50を、支持板52及び支持軸54により、軸線方向に進退動可能に支持し、押動板50の背面側と支持板52との間に、押動板50を駆動部材40に対して接離動させるアクチュエータユニット60を介装する。

【0032】
図8にアクチュエータユニット60の構成と作用を示す。アクチュエータユニット60は、コンテナフレーム62の内側に、コンテナフレーム62に対して突出入可能に移動できるスライドフレーム63を設け、スライドフレーム63の底板とコンテナフレーム62の上板との間に第1のゲルアクチュエータ65aを介装し、スライドフレーム63の底板とコンテナフレーム62の底板との間に第2のゲルアクチュエータ65bを介装した構成を備える。第1のゲルアクチュエータ65aと第2のゲルアクチュエータ65bは、電圧を印加するとクリープ変形する特性を有する誘電性材料からなるゲルシートを、陰極とメッシュ状の陽極とで挟んだ構造を厚さ方向に積層したものである。

【0033】
図8(b)は、第1のゲルアクチュエータ65aに印加する電圧を解除し、第2のゲルアクチュエータ65bに電圧を印加した状態である。この場合は、第1のゲルアクチュエータ65aが元の厚さに復帰し、第2のゲルアクチュエータ65bが厚さ方向に収縮することにより、スライドフレーム63がコンテナフレーム62の内側に引き込まれる。
図8(c)は、第1のゲルアクチュエータ65aに電圧を印加し、第2のゲルアクチュエータ65bに印加する電圧を解除した状態である。この場合は、第1のゲルアクチュエータ65aが厚さ方向に収縮し、第2のゲルアクチュエータ65bが元の厚さに復帰することにより、スライドフレーム63がコンテナフレーム62から押し出される。

【0034】
図8のアクチュエータユニット60の作用は、第1のゲルアクチュエータ65aと第2のゲルアクチュエータ65bに交互に電圧を印加する操作によって、スライドフレーム63を引き戻したり、押し出したりする作用である。このアクチュエータユニットは、第1のゲルアクチュエータ65aと第2のゲルアクチュエータ65bが元の厚さに復帰するときの力(回復力)を利用して、スライドフレーム63を押動する操作をなすもので、いわゆる双方向型のゲルアクチュエータユニットである。ゲルアクチュエータの回復力は20kPa程度あるから、押動板50を押動してクラッチ作用をなすに十分な押動力、引っ張り力を備える。

【0035】
図7に示すクラッチ機構は、上述したアクチュエータユニット60の押動力と引っ張り力を利用して、押動板50を駆動部材40に接離することによりクラッチ作用をなす。
アクチュエータユニット60の第1のゲルアクチュエータ65aと第2のゲルアクチュエータ65bには、配線56を介して、陽極と陰極に電圧を印加すればよい。
本実施形態のクラッチ機構では、押動板50は電気的な作用をなすものではない。また押動板50を被覆するPVCゲル14も摩擦材、粘着材として機能するものであり、PVCゲルにかえて他の摩擦材を利用することも可能である。

【0036】
図7に示したクラッチ機構は、双方向型のアクチュエータユニットを用いて、駆動部材である駆動部材40に押動板50を接離して回転駆動力を伝達するクラッチ機構として構成した例である。この双方向型のアクチュエータユニットは、図9に示すように、直動型のクラッチ機構に利用することもできる。すなわち、押動板51を直動型の駆動部材42に対向して進退動するように支持し、双方向型のアクチュエータユニット60を用いて、押動板を直動型の駆動部材に接離させるようにすればよい。図9(a)は、駆動部材42の一方の側のみに押動板51を配置した例、図9(b)は、駆動部材42の両側に押動板51を配置した例である。

【0037】
なお、双方向型のアクチュエータユニットを使用する場合に、押動板を駆動部材から引き離す作用を補助するため、押動板を離間位置に引き戻す引っ張りバネを装着する構成とすることもできる。
また、上記回転型のクラッチ機構、直動型のクラッチ機構ともに、押動板に接触する駆動部材の表面を凹凸面、粗面にすることも有効である。

【0038】
ゲルアクチュエータを用いてクラッチ機構を構成したことにより、下記のような利点を有する。
ゲルは柔軟であるので、クラッチを接離したときの衝撃が小さく、やわらかなクラッチ接続が可能である。ゲルの伸縮を制御することにより、より衝撃を小さくしたり、変速が可能である。また、仮に飛び散った場合も危険がない。また、加工・作製が容易で、軽量、小型化が可能である。消費される電流はわずかであり、低電力での駆動が可能である。ゲルアクチュエータは大きな発熱がなく、火気厳禁の場所でも使用が可能である。とくに、小型装置、工場内の小型ライン、玩具等へ好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0039】
10 陽極板
10a 切離面
12 陰極板
12a 第1の陰極板
12b 第2の陰極板
14 PVCゲル
20 回転部材
28、28a、28b バネ
30 支持ブロック
40、42 駆動部材
50、51 押動板
52 支持板
60 アクチュエータユニット
62 コンテナフレーム
63 スライドフレーム
65a 第1のゲルアクチュエータ
65b 第2のゲルアクチュエータ


図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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