TOP > 国内特許検索 > Li含有複合酸化物の製造方法 > 明細書

明細書 :Li含有複合酸化物の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-110792 (P2016-110792A)
公開日 平成28年6月20日(2016.6.20)
発明の名称または考案の名称 Li含有複合酸化物の製造方法
国際特許分類 H01M  10/0562      (2010.01)
H01M  10/054       (2010.01)
H01M  10/052       (2010.01)
H01B  13/00        (2006.01)
H01B   1/06        (2006.01)
H01B   1/08        (2006.01)
FI H01M 10/0562
H01M 10/054
H01M 10/052
H01B 13/00 Z
H01B 1/06 A
H01B 1/08
請求項の数または発明の数 18
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2014-246176 (P2014-246176)
出願日 平成26年12月4日(2014.12.4)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成26年度学術講演大会 講演予稿集(発行所:日本材料科学会 発行日:平成26年6月6日) 〔刊行物等〕 平成26年度学術講演大会(開催日:平成26年6月6日) 〔刊行物等〕 International Union of Materials Research Societies-The 15▲th▼ IUMRS International Conference in Asia IUMRS-ICA2014 Program(発行所:一般社団法人 日本MRS 発行日:平成26年8月24日) 〔刊行物等〕 International Union of Materials Research Societies-The 15▲th▼ IUMRS International Conference in Asia(開催日:平成26年8月24日)
発明者または考案者 【氏名】手嶋 勝弥
【氏名】是津 信行
【氏名】大石 修治
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100099759、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 篤
【識別番号】100077517、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 敬
【識別番号】100087413、【弁理士】、【氏名又は名称】古賀 哲次
【識別番号】100093665、【弁理士】、【氏名又は名称】蛯谷 厚志
【識別番号】100102990、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良博
【識別番号】100080919、【弁理士】、【氏名又は名称】田崎 豪治
審査請求 未請求
テーマコード 5G301
5H029
Fターム 5G301CA02
5G301CA12
5G301CA16
5G301CA18
5G301CA19
5G301CA25
5G301CA27
5G301CA28
5G301CA30
5G301CD01
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ22
5H029HJ02
要約 【課題】良好なリチウムイオンの拡散経路をもつ高品質なLiLaNb12等のLi含有複合酸化物結晶を効率よく製造する方法を提供し、さらに電極活物質上にLi含有複合酸化物結晶層を直接形成する方法も提供する。
【解決手段】Li含有複合酸化物の出発原料およびフラックスを含む溶液または分散体を基板表面に塗布し、塗布された表面を含む基板を加熱し、ついで冷却することにより基板上にLi含有複合酸化物結晶層を形成することを特徴とするLi含有複合酸化物の製造方法。得られたLi含有複合酸化物は、全固体型リチウムイオン二次電池用固体電解質として好適である。
【選択図】図8
特許請求の範囲 【請求項1】
Li含有複合酸化物の出発原料およびフラックスを含む溶液または分散体を基板表面に塗布し、塗布された表面を含む基板を加熱し、ついで冷却することにより基板上にLi含有複合酸化物結晶層を形成することを特徴とするLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項2】
Li含有複合酸化物が、ガーネット型、ペロブスカイト型,LISICON (・-LiPO)型、NASICON型またはLi-・-アルミナ型複合酸化物である請求項1に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項3】
ガーネット型複合酸化物が、一般式LiLa12(M=Nbおよび/またはTa)またはLi7‐xLaZr2-xM’12(M'はNb,TaまたはAl、0≦x≦2)で示される請求項2に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項4】
ぺロブスカイト型複合酸化物が、一般式(LiLn)TiO(Ln=レアメタル)で示される請求項2に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項5】
LISICON型複合酸化物が、Li14ZnGe16または一般式Li1+x2-xIIIPO12(M=Ti,Zr,GeまたはHf;MIII=Al,InまたはSc、0≦x≦2)で示される請求項2に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項6】
Li含有複合酸化物の出発原料が、それぞれの金属成分の酸化物、水酸化物、金属塩またはアルコキシドである請求項1~5のいずれか1項に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項7】
フラックスがLiOH・HO(融点:471℃),LiCO(融点:720℃),LiCl(融点:605℃),LiNO(融点:873℃),LiSO(融点:860℃),LiBO(融点:849℃),Li(融点:754℃),KOH(融点:406℃),NaCl(融点:801℃),KCl(融点:770℃)
KNO(融点:334℃),NaNO(融点:308℃),KCO(融点:633℃),NaCO(融点:851℃)から選ばれる少なくとも1種を含んでいる請求項1~6のいずれか1項に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項8】
基板が、Li含有複合酸化物の金属成分の1つである金属膜である上記請求項1~7のいずれか1項に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項9】
基板が二次電池の電極活物質層である請求項1~7のいずれか1項に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項10】
基板が、二次電池の極活物質上に成膜された、Li含有複合酸化物の金属成分の1つである金属膜である請求項8に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項11】
二次電池が、リチウムイオン二次電池またはナトリウムイオン二次電池である請求項9または10に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項12】
Li含有複合酸化物の金属成分の1つである金属膜が、NbまたはZrである請求項8または10に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項13】
Li含有複合酸化物がLiLaNb12である請求項1~3のいずれか1項に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項14】
Li含有複合酸化物がLiLaZn12である請求項1~3のいずれか1項に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項15】
Li含有複合酸化物結晶層が、Li含有複合酸化物の単結晶粒子が積層された積層構造体である請求項1~14のいずれか1項に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
【請求項16】
電極活物質層上にLi含有複合酸化物の単結晶粒子が積層されてなるLi含有複合酸化物積層構造体。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の製造方法で得られたLi含有複合酸化物を用いてなる全固体型リチウムイオン二次電池用固体電解質。
【請求項18】
請求項16に記載のLi含有複合酸化物積層構造体を固体電解質として用いてなる全固体型リチウムイオン二次電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、Li含有複合酸化物の製造方法、さらには得られたLi含有複合酸化物を用いた全固体型リチウムイオン二次電池用固体電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
LiLaNb12に代表されるガーネット型固体電解質は, 三次元経路によるイオン拡散, 化学的・熱的安定性および広い電位窓をもつため,全固体型リチウムイオン二次電池(LIB) 用固体電解質への応用が期待される。実際に全固体型LIB に応用するためには,良好なイオン拡散経路を形成した高品質な単結晶が望まれる。また,固体/固体界面の接合が求められる。一般に,全固体型LIBにおける電解質と活物質の固体接合面は点接触になりやすく,界面イオン移動の観点からは,抵抗が大きく望ましくない。また,活物質表面に固体電解質を接触させると,リチウムイオンに対する化学ポテンシャルの異なる固体界面として,空間電荷層が形成される。これにより,固体電解質から活物質側にリチウムイオンが移動し,固体電解質の組成が最適組成から変化し,界面に大きな抵抗成分が生成する。これは,活物質/固体電解質界面でのイオン移動を妨げる要因となる。以上の点から,集電体および電極活物質の耐熱温度を考慮した低温での,活物質と固体電解質の良好な接合界面をもつ積層体とその形成方法の開発は急務と言われている。
【0003】
パーソナルコンピュータ、携帯電話等の機器類に用いられている二次電池においては、イオンを移動させる媒体として有機溶媒等の液状の電解質が汎用されている。このような液状電解質を用いた電池においては、 その漏洩、発火等の問題を生ずる可能性がある。これに対し、液状電解質に替えて固体電解質を使用するとともに、他の電池要素を全て固体で構成した全固体型LIBは、高エネルギー密度とすることが可能であるとともに、電解質が焼結したセラミックスであるので、発火や漏液の恐れがなく、腐食により電池性能の劣化等の問題も生じにくい。
【0004】
そのような固体電解質であるガーネット型固体電解質粒子は、主に固相反応法(非特許文献1および2)によって合成されている。しかし, 固相反応法により作製された粒子は不定形多結晶体である。
【0005】
また、全固体型LIBの作製法には, 作製した電極および電解質材料をプレス加工して積層体を形成する手法が挙げられる。しかし,この手法には良好な電極/ 電解質界面を形成できないという課題がある。そのため,簡単なプロセスで良好な電極/ 固体電解質界面を形成できる手法が求められる。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】Venkataraman Thangadurai, Stefan Adams, Werner Weppner, Chem. Mater., 16, 2998 (2004).
【非特許文献2】Sumaletha Narayanan, Venkataraman Thangadurai, Journal of Power Sources, 196, 8085 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は,良好なリチウムイオンの拡散経路をもつ高品質なLiLaNb12等のLi含有複合酸化物単結晶を電極活物質層から直接育成された積層体とそれを効率よく製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の問題を解決するために、以下の発明を提供するものである。
(1)Li含有複合酸化物の出発原料およびフラックスを含む溶液または分散体を基板表面に塗布し、塗布された表面を含む基板を加熱し、ついで冷却することにより基板上にLi含有複合酸化物結晶層を形成することを特徴とするLi含有複合酸化物の製造方法。
(2)Li含有複合酸化物が、ガーネット型、ペロブスカイト型,LISICON (・-LiPO)型、NASICON型またはLi-・-アルミナ型複合酸化物である上記(1)に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(3)ガーネット型複合酸化物が、一般式LiLa12(M=Nbおよび/またはTa)またはLi7‐xLaZr2-xM’12(M'はNb,TaまたはAl、0≦x≦2)で示され上記(2)に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(4)ぺロブスカイト型複合酸化物が、一般式(LiLn)TiO(Ln=レアメタル)で示される上記(2)に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(5)LISICON型複合酸化物が、Li14ZnGe16または一般式Li1+x2-xIIIPO12(M=Ti,Zr,GeまたはHf;MIII=Al,InまたはSc、0≦x≦2)で示される上記(2)に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(6)Li含有複合酸化物の出発原料が、それぞれの金属成分の酸化物、水酸化物、金属塩またはアルコキシドである上記(1)~(5)のいずれかに記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(7)フラックスがLiOH・HO(融点:471℃),LiCO(融点:720℃),LiCl(融点:605℃),LsiNO(融点:873℃),LiSO(融点:860℃),LiBO(融点:849℃),Li(融点:754℃),KOH(融点:406℃),NaCl(融点:801℃),KCl(融点:770℃)
KNO(融点:334℃),NaNO(融点:308℃),KCO(融点:633℃),NaCO(融点:851℃)から選ばれる少なくとも1種を含んでいる上記(1)~(6)のいずれかに記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(8)基板が、Li含有複合酸化物の金属成分の1つである金属膜である上記(1)~(7)のいずれかに記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(9)基板が二次電池の電極活物質層である上記(1)~(7)のいずれかに記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(10)基板が、二次電池の極活物質上に成膜された、Li含有複合酸化物の金属成分の1つである金属膜である上記(8)に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(11)二次電池が、リチウムイオン二次電池またはナトリウムイオン二次電池である上記(9)または(10)に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(12)Li含有複合酸化物の金属成分の1つである金属膜が、NbまたはZrである上記(8)または(10)に記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(13)Li含有複合酸化物がLiLaNb12である上記(1)~(12)のいずれかに記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(14)Li含有複合酸化物がLiLaZn12である上記(1)~(12)のいずれかに記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(15)Li含有複合酸化物結晶層が、Li含有複合酸化物の単結晶粒子が積層された積層構造体である上記(1)~(14)のいずれかに記載のLi含有複合酸化物の製造方法。
(16)電極活物質層上にLi含有複合酸化物の単結晶粒子が積層されてなるLi含有複合酸化物積層構造体。
(17)上記(1)~(15)のいずれか1項に記載の製造方法で得られたLi含有複合酸化物を用いてなる全固体型リチウムイオン二次電池用固体電解質。
(18)上記(16)に記載のLi含有複合酸化物積層構造体を固体電解質として用いてなる全固体型リチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、良好なリチウムイオンの拡散経路をもつ高品質なLiLaNb12結晶等のLi含有複合酸化物を効率よく製造する方法を提供し得、得られるLiLaNb12結晶等は全固体型リチウムイオン二次電池用固体電解質として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】Nb基板上に形成されたLiLaNb12結晶およびNb基板のXRDパターン。
【図2】Nb基板上に形成されたLiLaNb12結晶およびNb基板のSEM像。
【図3】Nb基板のTG-DTA 曲線。
【図4】Nb基板のin-situ XRD パターン。
【図5】保持時間を変えて育成した結晶のXRDパターン。
【図6】保持時間を変えて育成した結晶のSEM像。
【図7】種々の結晶のXRDパターン。
【図8】種々の結晶のSEM像。
【図9】種々の結晶のXRDパターン。
【図10】種々の結晶のSEM像。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のLi含有複合酸化物は、その出発原料およびフラックスを含む溶液または分散体を基板表面に塗布し、塗布された表面を含む基板を加熱し、ついで冷却することにより基板上にLi含有複合酸化物結晶層を形成することにより得られる。

【0012】
Li含有複合酸化物としては、ガーネット型、ペロブスカイト型,LISICON (・-LiPO)型、NASICON型またはLi-・-アルミナ型複合酸化物が挙げられるが、ガーネット型複合酸化物またはペロブスカイト型複合酸化物が好適であり、ガーネット型複合酸化物が特に好適である。

【0013】
ガーネット型複合酸化物は、一般式LiLa12(M=Nbおよび/またはTa)またはLi7‐xLaZr2-xM’12(M'はNb,TaまたはAl、0≦x≦2)で示される。具体的にはLiLaNb12、LiLaZr12、Li7-xLaZr2-xNb12等が挙げられるが、リチウムイオン伝導度の点からLi7-xLaZr2-xNb12が最も好ましい。

【0014】
ぺロブスカイト型複合酸化物は、一般式(LiLn)TiO(Ln=レアメタル)で示される。具体的には、Li3xLa(2/3-x)Li3xTiO(0.05≦x≦0.1)、LiLa1/3Nb1-xTi等が挙げられるが、リチウムイオン伝導度の点からLi0.33La0.5TiO等が好適である。

【0015】
LISICON型複合酸化物は、Li14ZnGe16または一般式Li1+x2-xIIIPO12(M=Ti,Zr,GeまたはHf;MIII=Al,InまたはSc、0≦x≦2)で示される。

【0016】
Li含有複合酸化物の出発原料は、Li,La,Nb,Ta,Zr、Al等の金属成分の酸化物、水酸化物、金属塩またはアルコキシドであるのが好適である。たとえば、Li成分としては、水酸化リチウム、炭酸リチウム等が挙げられ、La成分としては水酸化ランタン、酸化ランタンLa23が挙げられ、Nb成分としては、酸化ニオブNb25、塩化ニオブNbCl、ニオブアルコキシド等が挙げられ、さらにZr成分としてはジルコニアZrO2等が挙げられる。さらに、Ti成分としては、チタンアルコキシド等が挙げられる。Nb,Zr,Ta,Al、Ti成分としては、金属自体も使用し得る。

【0017】
これらのLi含有複合酸化物の出発原料は、目的とするLi含有複合酸化物の組成比に応じて、量比が決定され配合される。

【0018】
フラックス法は、溶液からの結晶育成法の一種であり、そこでは高温で融解しているフラックス(溶媒)に溶質を溶解させ、溶液の冷却や溶媒の蒸発による過飽和の増加を利用して結晶を育成する。そして、目的とする結晶を融点より低い温度で育成でき、高品質な結晶を育成でき、さらには特殊な装置や操作を必要としない、等の特長を有する。フラックス法は、通常、るつぼ等の容器内で結晶を育成する。フラックスコーティング法は、このようなフラックス法の原理を応用した結晶層(薄膜)形成方法である。通常、るつぼに充填する出発原料(溶質およびフラックス)に溶媒を加えて、常温で溶液やペーストを作成し、基板表面にこれを塗布して加熱する。塗布された溶質が、加熱によりフラックスに溶解し、フラックスの蒸発または溶液の冷却を駆動力として基材表面で結晶が成長する。

【0019】
フラックス法は, 溶液から結晶を析出するために, 結晶構造を反映したフラットな結晶面で囲まれた自形をもつ高品質な単結晶を育成できる。フラックスとしては、アルカリ炭酸塩、アルカリ硝酸塩、アルカリ塩化物塩、アルカリ水酸化物の一種以上を含むのが好適であり、LiOH・HO(融点:471℃),LiCO(融点:720℃),LiCl(融点:605℃),LiNO(融点:873℃),LiSO(融点:860℃),LiBO(融点:849℃),Li(融点:754℃),KOH(融点:406℃),NaCl(融点:801℃),KCl(融点:770℃)
KNO(融点:334℃),NaNO(融点:308℃),KCO(融点:633℃),NaCO(融点:851℃)から選ばれる少なくとも1種を含んでいるものが好適に用いられる。Li含有フラックスはLi源としても用いられる。

【0020】
塗布方法は、特に制限されないが、スプレー法、浸漬法、コテ刷毛法、等によることができる。塗布後に、室温ないし100℃程度で乾燥され、フラックス量は通常0.01mg・cm-2~10mg・cm-2とされる。

【0021】
ついで、塗布された表面を含む基板は、加熱炉内に導入され、好ましくは高酸素分圧雰囲気中で加熱され、ついで冷却することにより基板上に目的とする結晶層を形成する。得られる結晶層は、Li含有複合酸化物の単結晶粒子が緻密に積層された積層構造体である。

【0022】
加熱は、500~1000℃程度から選定され、好ましくは700~900℃程度で、1分間~3時間程度保持される。

【0023】
基板は、二次電池の電極活物質層であるのが好適である。または、基板は、Li含有複合酸化物の金属成分の1つである金属、たとえばNbまたはZr基板であるのが好適である。または、さらに好ましくは、基板が、電極活物質上に成膜されたNbまたはZr層である。すなわち、フラックスコーティング法により電極活物質上にたとえばLiLaNb12結晶層やLiLaZr12、Li7-xLaZr2-xNb12を直接形成することができる。好適には、基板は、リチウムイオン二次電池またはナトリウムイオン二次電池の電極活物質層である。または、基板は、リチウムイオン二次電池またはナトリウムイオン二次電池の電極活物質上に成膜された、Li含有複合酸化物の金属成分の1つである金属膜である。成膜は、スパッタ法、真空蒸着法、等で形成されるが、好適にはスパッタ法によることができる。膜厚は、通常5~500nm程度から選ばれる。

【0024】
上記ナトリウムイオン二次電池には、通常、正極にナトリウム金属酸化物、負極にグラファイト等の炭素材が用いられる。

【0025】
全固体型LIBの作製法として、作製した電極および電解質材料をプレス加工して積層体を形成する手法が挙げられる。しかし、この手法では良好な電極/ 電解質界面を形成できないことが課題であった。ここでは、簡単なプロセスで良好な電極/ 固体電解質界面を形成し得る。

【0026】
このように得られたLi含有複合酸化物は、特に全固体型リチウムイオン二次電池用固体電解質として有用である。すなわち、全固体型リチウムイオン二次電池は、正極、負極、および本発明のLi含有複合酸化物である固体電解質、を備える。正極及び負極は、リチウムイオン二次電池に使用されている公知の正極活物質及び負極活物質を含むことができる。正極活物質としては、たとえばリチウムマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、オリビン構造を有するリチウムリン酸化合物等が挙げられるが、層状構造をもつLiCoO2、LiNiO、LiNi0.33Mn0.33Co0.33,LiNi0.82Co0.13Al0.05、スピネル構造をもつLiMnO4、LiNi0.5Mn1.5O4、オリビン構造をもつLiNiPO4,LiNiPO4等が好適である。負極活物質としては、たとえば、カーボン、金属リチウム(Li),チタン酸リチウム酸(窒)化物等が挙げられる。

【0027】
上記のように、本発明において、電極活物質層上にLi含有複合酸化物の単結晶粒子が緻密に積層された積層構造体を得た場合には、たとえば、これを固体電解質として全固体型リチウムイオン二次電池に好適に使用し得る。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例においては、Li含有複合酸化物の一例として、LiLaNb12についての結果を示すが、本発明はLiLaNb12に限定されるものではなく、また実施例において選択された実験条件に限定されるものではない。
実施例1
A.LiOHフラックスによるNb基板のLiLaNb12結晶層への変換
(1)活物質上に固体電解質結晶層を直接形成するためには, 集電体と活物質の耐熱温度を考慮して低温形成するだけでなく,溶質と活物質の反応を抑制して直接形成する必要がある。そこで、活物質LiCoO上にNb層を積層する。Nbは,Co と固溶体を形成しないため,保護層として利用できる。さらに, Nb源をNb層から供給すれば,基材表面上で結晶成長するため緻密で強固な結晶層を作製し得る。ここでは,モデル実験としてNb 層(Nb 基板)から結晶層を形成することに着目した。LiLaNb12結晶層の作製には,市販試薬のLiOH・HO(試薬特級、和光純薬工業)0.295g,LaO (光学用,和光純薬工業)0.305gを用いた。また,フラックスとしてLiOH・HOを2.431g用いた。LiOH・HOはLi 源にも用いるが,ここではLi 濃度として取り扱わず便宜上,溶質とフラックスを区別して取り扱う。
【実施例】
【0029】
Nb 基板(10×15 mm)上にLiOH・HO およびLaO の混合試薬を塗布した。その後,ふたをして電気炉内に設置した。8.3℃/分で500℃まで昇温し,その温度で0~10 時間保持した。保持終了後, 200℃/時間で100°C まで冷却し,さらに室温まで放冷した。その後, 電気炉内からるつぼを取り出し,温水中に浸漬してフラックスを溶解除去した。
(2)保持温度500℃でLiOH フラックスを用いてLiLaNb12結晶層を作製した。作製した結晶層のXRDパターンを図1に示す。図1において、(a)は,保持時間10時間でNb基板上に形成された結晶、(b)は未処理Nb基板および(c)は、Li5La3Nb2O12 ICDD PDF 73-7390のXRD パターンを示す。XRD パターンには, Nb およびLiLaNb12に起因する回折線が検出された。その結果, 作製した結晶層がLiLaNb12であることが確認された。図2に,未処理のNb 基板(a)と保持温度10 時間で作製した結晶層((b)および(c))のSEM 像を示す。自形の発達した多面体結晶から成る結晶層がNb 基板表面上に形成できた。作製した結晶層は、基板と強固に接合していた。Nb 源をNb 基板から供給したためと考えられる。断面像から, 結晶層は厚さ方向においては1 個の結晶で構成されていることを確認した。また、緻密に結晶が集積しているため, 基板表面で結晶成長していることが考えられる。
(3)基板表面での結晶成長過程を考察するために,Nb 基板のTG-DTA 分析と温度変化に対するXRD パターンを調査した。いずれも, 昇温速度500℃/時間で500℃まで昇温した。その結果を図3 および4に示す。図4において、(a)はNb 基板、(b)はNb2O ICDD PDF 03-0514を示す。
【実施例】
【0030】
TG-DTA 分析では,Nb 基板の重量が加熱とともに増加した。また,In-situ XRD 分析では、461~499°C でNbO の形成に起因する回折線を確認した。フラックスの融点(462℃)とこれらの結果を考慮すると,Nb 源は加熱によって表面に形成される酸化膜であると考えられる。
(4)次に, 保持時間10 時間から保持なし、あるいは保持1 時間に変更して作製した結晶層のXRD パターンを図5 に示す。保持なし(a)では,LiLaNb12がわずかに生成したが、主相としてLiLaNbOが生成した。保持時間1時間(b)では,LiLaNbOが副産物となり主相としてLiLaNb12が生成した。保持時間10 時間(c)では,LiLaNbO に起因する回折線は消失し,LiLaNb12 のみが生成した(↓:Nb基板)。このことから,LiLaNb12 結晶層は,LiLaNbOを経由して生成すると考えられる。(d)は、LiLaNbO ICDD PDF および(e)はLi5La3Nb2O12 ICDD PDFを示す。
【実施例】
【0031】
図6に,それぞれの保持時間で作製したLi5La3Nb2O12結晶層のSEM 像を示す。保持なし(a)では,多面体結晶が一部分で生成し,保持時間1 時間(b)では多面体結晶の数が増加した。保持時間10 時間(c)では多面体結晶が基板表面を完全に占めて、個々の結晶サイズが増大した。
(5)以上の結果から結晶層形成過程を考察する。450℃ 付近でNb 基板表面は酸化膜で覆われる。500℃まで昇温すると,融解したフラック中で溶質が反応してLiLaNbOが基板表面に形成され、ついでLiLaNb12が生成し始める。生成したLiLaNb12結晶は、フラックス中で成長し、基板表面に緻密なLiLaNb12結晶層が形成される。すなわち,LiLaNb12結晶が基板表面に形成された後, 個々の結晶がフラックス中でオストワルド熟成したと考える。
B.LiOHフラックスからの活物質上へのLiLaNb12結晶層の作製
(1)活物質上へのLiLaNb12結晶層の作製には,市販試薬のLiOH・HO(試薬特級, 和光純薬工業)、LaO (光学用, 和光純薬工業)を用いた。活物質には市販の正極材として用いられるLiCoOを用いた。Nb 源には,LiCoO上にスパッタリング成膜したNb層を用いた。スパッタリング条件は、背圧2.0×10-3 Pa,出力300 W,アルゴン流量3.0 sccm,放電Arガス圧力0.67 Pa,放電時間5 時間 とした。また,フラックスにはLiOH・HOを選択した。LiOH・HOを0.295g,LaOを0.305gを用いた。また,フラックスとしてLiOH・HOを2.431gをそれぞれ乾式混合し,Nb 被覆したLiCoOペレット上に塗布した。電気炉内で,約8.3℃/分で500℃まで昇温し,その温度で10時間保持した。保持終了後,200℃/時間で100℃まで冷却し、さらに室温まで放冷した。その後, 電気炉から取り出し,温水中に浸漬してフラックスを溶解除去した。
(2)図7に未処理のLiCoO ペレット、Nb スパッタリング後および結晶層形成後のXRD パターンを示す。図7において、(a)~(e)は、(a) Li5La3Nb2O12 / LiCoO2 (Run No.2-11)、(b) Nb / LiCoO2 、(c) LiCoO2 、(d)Li5La3Nb2O12 ICDD PDFおよび(e)LiLaNbO ICDD PDF 40-0895を示す。Nb スパッタリング後のXRDパターンから, Nb に起因する回折線を確認した。また, Nb 層変換後のXRD パターンから,主相としてLiLaNb12が生成したが、LiLaNbOが副産物として生成したことを確認した。未処理のLiCoO ペレット、Nb スパッタリング後および結晶層形成後のSEM 像を図8に示す。スパッタリング後、Nb 膜がLiCoO 表面に成膜されたことを確認した。また、Nb 層変換後のSEM 像から, 自形の発達した多面体結晶から成る結晶層が緻密に形成できたことを確認した。結晶層を構成する個々の結晶は、基板上での結晶層と同様で{110}および{211}面で囲まれていた。図8において, (a)~(d)は、(a) LiCoO2 , (b) Nb / LiCoO2 および((c)および(d))Li5La3Nb2O12結晶層/ LiCoO2を示す。
C.以上のように、上記の条件下で、フラックス法によりLiLaNb12結晶が育成された。結晶育成に用いた保持温度および保持時間は500℃,10 時間程度であり,従来の固相反応法(950℃,24時間)(J.Am.Ceram.Sos., 88,411(2005))と比べ大幅に低温,短時間化できた。生成相,結晶のサイズおよび形態は,フラックス,保持温度に大きく依存した。育成した結晶は,結晶面がフラットで自形の発達した多面体結晶であった。また、結晶は{110}および{221}面で囲まれていた。育成した結晶の格子定数、結晶密度、面角および格子面間隔は,文献値とほぼ同じ値を示した。同条件で育成した結晶は,TEM観察よりシャープな回折パターンと規則正しい原子配列をもつことがわかった。以上のことから低温フラックス育成した結晶は高品質な単結晶であるといえる。高品質な単結晶が育成できたのは,LiOH フラックスが十分に溶質を溶かし、結晶が成長したためと考えられる。結晶層を形成する厚さ方向の結晶の数は1 個であった。さらに基板表面での結晶層形成過程を考察した。昇温, 保持過程においてNb 基板表面はNb、NbO5、LiLaNbO6 の順に生成相が変わり,最終的にLiLaNb12結晶層が形成される。また,保持過程では,個々のLiLaNb12結晶がオストワルド熟成していると考えられる。また、Nb 基板上への結晶層形成条件を基に活物質LiCoO上にLiLaNb晶層を形成できた。以上の結果から,フラックス法およびフラックスコーティング法により育成・作製した固体電解質LiLaNb12結晶(層)は全固体型リチウムイオン二次電池に好適に使用され得る。
実施例2
A.LiOHフラックスによるTa基板のLiLaTa12結晶層への変換
活物質LiCoO上にTa層を積層する。Ta は,Co と固溶体を形成しないため,保護層として利用できる。さらに,Ta 源をTa 層から供給すれば,基材表面上で結晶成長するため緻密で強固な結晶層を作製し得る。
(1)活物質上へのLiLaTaO12結晶層の作製には,市販試薬のLiOH・HO(試薬特級,和光純薬工業),LaO(光学用,和光純薬工業)を用いた。活物質には市販の正極材として用いられるLiCoOを用いた。Ta 源には,LiCoO上にスパッタリング成膜したTa 層を用いた。スパッタリング条件は,背圧2.0×10-3 Pa,出力150 W,アルゴン流量3.0 sccm,放電Ar ガス圧力0.67 Pa,放電時間15 分間とした。また,フラックスにはLiOH・HOを選択した。LiOH・HOを0.093 g,LaOを0.188 gを用いた。また,フラックスとしてLiOH・HOを1.610 gをそれぞれ乾式混合し,Ta 被覆したLiCoOペレット上に塗布した。電気炉内で,約8.3℃/分で500℃まで昇温し,その温度で10時間保持した。保持終了後,200℃/時間で100℃まで冷却し,さらに室温まで放冷した。その後,電気炉から取り出し,温水中に浸漬してフラックスを溶解除去した。
(2)図9に結晶層形成後のXRD パターンを示す。図9において,(a)~(d)は,(a) Li5La3Ta2O12 / LiCoO2,(b) LiCoO2, (c) Li5La3Ta2O12 ICDD PDF 45-0110,(d) La2Li0.5Co0.5O4 ICDD PDF 89-4701を示す。Ta層変換後のXRD パターンから,La2Li0.5Co0.5O4が副産物として生成したが,主相としてLi5La3Ta2O12が生成したことを確認した。結晶層形成後のSEM 像を図10(a)および(b)に示す。Ta 層変換後のSEM 像から,自形の発達した多面体結晶から成る結晶層が緻密に形成できたことを確認した。
B.LiOHフラックスからの活物質上へのLiLaTaO12結晶層の作製
活物質LiCoO上にTa層を積層する。Ta は,Co と固溶体を形成しないため,保護層として利用できる。さらに,Ta 源をTa 層から供給すれば,基材表面上で結晶成長するため緻密で強固な結晶層を作製し得る。
(1)活物質上へのLiLaTaO12結晶層の作製には,市販試薬のLiOH・HO(試薬特級,和光純薬工業),LaO(光学用,和光純薬工業)を用いた。活物質には市販の正極材として用いられるLiCoOを用いた。Ta 源には,LiCoO上にスパッタリング成膜したTa 層を用いた。スパッタリング条件は,背圧2.0×10-3 Pa,出力150 W,アルゴン流量3.0 sccm,放電Ar ガス圧力0.67 Pa,放電時間15 分間とした。また,フラックスにはLiOH・HOを選択した。LiOH・HOを0.093 g,LaOを0.188 gを用いた。また,フラックスとしてLiOH・HOを1.610 gをそれぞれ乾式混合し,Ta 被覆したLiCoOペレット上に塗布した。電気炉内で,約8.3℃/分で500℃まで昇温し,その温度で10時間保持した。保持終了後,200℃/時間で100℃まで冷却し,さらに室温まで放冷した。その後,電気炉から取り出し,温水中に浸漬してフラックスを溶解除去した。
(2)図9に結晶層形成後のXRD パターンを示す。図9において,(a)~(d)は,(a) Li5La3Ta2O12 / LiCoO2,(b) LiCoO2, (c) Li5La3Ta2O12 ICDD PDF 45-0110,(d) La2Li0.5Co0.5O4 ICDD PDF 89-4701を示す。Ta 層変換後のXRD パターンから,La2Li0.5Co0.5O4が副産物として生成したが,主相としてLi5La3Ta2O12が生成したことを確認した。結晶層形成後のSEM 像を図10に示す。Ta 層変換後のSEM 像から,自形の発達した多面体結晶から成る結晶層が緻密に形成できたことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、良好な正極活物質と固体電解質が直接接合された界面が形成され,界面におけるリチウムイオンの良好な拡散経路をもつ高品質な活物質/固体電解質界面を効率よく製造する方法を提供し得る。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図7】
4
【図9】
5
【図2】
6
【図6】
7
【図8】
8
【図10】
9