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明細書 :太陽電池モジュール

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-122748 (P2016-122748A)
公開日 平成28年7月7日(2016.7.7)
発明の名称または考案の名称 太陽電池モジュール
国際特許分類 H01L  31/055       (2014.01)
C09K  11/06        (2006.01)
FI H01L 31/04 622
C09K 11/06
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2014-262372 (P2014-262372)
出願日 平成26年12月25日(2014.12.25)
発明者または考案者 【氏名】伊藤 冬樹
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 5F151
Fターム 5F151HA17
要約 【課題】 波長変換型の太陽電池モジュールで、より発電効率の高い太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】 波長変換型の太陽電池モジュール10であって、太陽光を受光する受光部12と、受光部12を透過した光を受光する太陽電池セル14とを備え、前記受光部12が、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体からなる波長変換材料を含むことを特徴とする。受光部12は、媒体中に波長変換材料を分散させて形成され、媒体中における波長変換材料の濃度を選択して、発光強度が最大となる波長を調節することにより、太陽電池の発電効率を向上させることができる。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
波長変換型の太陽電池モジュールであって、
太陽光を受光する受光部と、該受光部を透過した光を受光する太陽電池セルとを備え、
前記受光部が、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体からなる波長変換材料を含むことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記受光部は、媒体中に前記波長変換材料を分散させてなることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記受光部は、吸収が最大となる波長が360nm~410nmの範囲にあり、発光強度が最大となる波長が410nm~600nmの範囲にあることを特徴とする請求項2記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記受光部は、前記媒体中における前記波長変換材料の濃度を選択して、発光強度が最大となる波長を調節したものであることを特徴とする請求項3記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記受光部は、該受光部に入射した太陽光のうち前記太陽電池セルの光電変換に寄与する波長域の光と、前記波長変換材料により前記太陽電池セルの光電変換に寄与する波長域の光に変換された変換光とを、前記太陽電池セルにまで導く導光手段を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記受光部は、平板体に形成され、前記太陽電池セルは、前記平板体の端面の一部にのみ配置されていることを特徴とする請求項5記載の太陽電池モジュール。



発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関し、より詳細には波長変換型の太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は太陽光のエネルギーを電力に変換するデバイスであり、太陽光をできるだけ効率的に電力に変換することが求められる。波長変換型の太陽電池は、入射光のうち光電変換に寄与しない波長の光、たとえば紫外線領域の光を光電変換に寄与する波長に変換する機能を備えるものである。
波長変換型の太陽電池には、受光面側に配置する封止シートとして波長変換材料を含有したシート体を使用し、封止シートに入射した太陽光を波長変換させて太陽電池セルに入射させるものがある。たとえば、蛍光体粒子を分散媒樹脂に分散させた樹脂粒子を含むシート体を封止シートとするもの(特許文献1)、有機系の蛍光色素化合物を含むシート体を利用するもの(特許文献2)等である。蛍光体粒子を分散媒樹脂に分散させた樹脂粒子としては、ユーロピウム錯体あるいはサマリウム錯体が用いられ、有機系の蛍光色素化合物としては、ベンゾチアジアゾール構造を有する化合物が用いられている。
【0003】
また、波長変換技術と集光器として近年、注目されているものに、レーザ色素を利用するもの(非特許文献1)、量子ドットを利用するもの(非特許文献2)、会合誘起発光分子を用いるもの(非特許文献3)がある。レーザ色素を利用するものは、高蛍光量子収率が得られるという利点がある一方、濃度が高くなるとともに消光する、固体化することにより蛍光量子収率が低下する、ストークスシフト(吸収波長と蛍光波長の差)が小さいことが問題とされている。量子ドットを利用するものは、媒体中において量子収率が低下する、媒体との相溶性が低い、コストが高い、毒性が問題とされている。また、会合誘起発光分子を用いるものは、蛍光量子収率が40%程度と低い、合成が煩雑である、光に対する耐久性が低いことが問題とされている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2014-60418号公報
【特許文献2】特開2014-234495号公報
【特許文献3】特開2013-175513号公報
【0005】

【非特許文献1】Sol. Energy Mater. Sol. Cells 105,287-292
【非特許文献2】J. Mater. Chem.,2012,22,16687-16697.
【非特許文献3】Scientific Reports,4,Article number:4635 doi:10.1038/srep0435
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
波長変換型の太陽電池は、太陽光を効率的に利用できる点できわめて有用な技術であるが、広く普及する技術とするためには、使用する材料が安価であること、合成が簡便で製造にコストがかからないこと、発光効率に優れること、発光色の制御(蛍光波長の制御)が可能であること、光に対する耐久性に優れるといったことが求められる。
本発明は、これらの要望に応えることができ、容易に発電効率を向上させることができる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る太陽電池モジュールは、波長変換型の太陽電池モジュールであって、太陽光を受光する受光部と、該受光部を透過した光を受光する太陽電池セルとを備え、前記受光部が、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体からなる波長変換材料を含むことを特徴とする。
【0008】
アボベンゾンフッ化ホウ素錯体(BF2AVB)は下記の化学式で表される。
【化1】
JP2016122748A_000003t.gif

【0009】
本発明者は、力学的作用により蛍光色変化を示す蛍光性メカノクロミズム分子であるアボベンゾンフッ化ホウ素錯体(BF2AVB)について研究を行っている。この研究過程において、本発明者は、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体がきわめて高い蛍光量子効率(96%)を有するという現象を発見した。本発明は、このアボベンゾンフッ化ホウ素錯体についての新しい知見に基づくものである。
アボベンゾンフッ化ホウ素錯体は、太陽光のうち、太陽電池セルの光電変換に対する寄与が低い紫外光側の光を吸収し、太陽電池セルの光電変換に寄与する波長域の蛍光を発するという特性を有している。したがって、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体を波長変換材料として使用することにより、太陽電池の発電効率を効果的に向上させることが可能である。
【0010】
本発明に係る太陽電池モジュールの受光部は、太陽光を受光して太陽電池セルに太陽光を入射させるという作用と、波長変換材料としてアボベンゾンフッ化ホウ素錯体を含むことにより、受光部に入射した太陽光のうち太陽電池セルの光電変換に寄与しない短波長側の光(紫外光)を太陽電池セルの光電変換が効率的になされる波長の光に変換して太陽電池セルに入射させるという作用を有する。この作用により、波長変換材料としてアボベンゾンフッ化ホウ素錯体を含む受光部を備える太陽電池モジュールは、より効率的に太陽エネルギーを発電に利用することができる。
【0011】
波長変換材料としてアボベンゾンフッ化ホウ素錯体を含む受光部は、光透過性等を考慮して任意の有機材料や無機材料からなる媒体(基材、マトリックス材)中にアボベンゾンフッ化ホウ素錯体を分散させて形成することができる。
前記受光部の光学的特性としては、吸収が最大となる波長が360nm~410nmの範囲にあり、発光強度が最大となる波長が410nm~600nmの範囲にあるものであり、太陽電池セルの特性に合わせて受光部の特性を選択することができる。
受光部の発光特性を調整する場合は、前記媒体中における波長変換材料の濃度を選択して、発光強度が最大となる波長を調節する方法が有効に利用できる。
【0012】
また、前記受光部は、該受光部に入射した太陽光のうち前記太陽電池セルの光電変換に寄与する波長域の光と、前記波長変換材料により前記太陽電池セルの光電変換に寄与する波長域の光に変換された変換光とを、前記太陽電池セルにまで導く導光手段を備えることにより、太陽光と変換光を太陽電池セルに効果的に入射させ、発電効率を向上させることができる。
導光手段を備える太陽電池モジュールにおいては、受光部と太陽電池セルとは適宜配置することができるが、例として、前記受光部を平板体として形成し、太陽電池セルを平板体の端面の一部にのみ配置する構成とすることで、受光部に入射した太陽光と太陽光を変換した変換光とを太陽電池セルに集中して入射させることができる。受光部に入射した太陽光と変換光とを太陽電池セルに導くようにして集光させることにより、太陽電池セルによる発電効率をさらに向上させることができる。
【0013】
太陽電池モジュールを構成する受光部は、たとえば平板状の自立する部材として形成することもできるし、薄いフィルム状の形態として形成することもできる。また、ガラス板あるいはプラスチック板のような支持基材の表面に薄膜状、シート状として形成し、太陽光の導光と波長変換光の導光の機能を付与するようにすることもできる。このように、受光部の大きさ、形態はとくに限定されるものではなく、支持基材と複合化して受光部とすることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る太陽電池モジュールによれば、太陽光を効率的に太陽電池の発電に利用することができ、より発電効率の高い太陽電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】太陽電池モジュールの構成例を示す斜視図である。
【図2】アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の濃度が異なる9種類のサンプルについて測定した吸収スペクトルである。
【図3】アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の濃度が異なる11種類のサンプルについて測定した発光スペクトルである。
【図4】アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の濃度と発光スペクトルのピーク値との関係を示すグラフである。
【図5】ガラス板上にアボベンゾンフッ化ホウ素錯体を含む高分子薄膜を形成したサンプルからの発光をとらえた写真である。
【図6】サンプルにレーザ光を連続照射したときの発光強度を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(太陽電池モジュールの構成例)
図1は、本発明に係る太陽電池モジュールの構成例を示す。図1に示す太陽電池モジュール10は、平面形状が矩形の平板状に形成した受光部12と、受光部12の一つの端面に沿って配置した太陽電池セル14とからなる。受光部12は、波長変換材料を含有し、太陽光のうち、短波長側の光(紫外光)を太陽電池セル14の光電変換に寄与する光に波長変換する作用と、受光部12の受光面に入射した太陽光と波長変換した光(変換光)を、受光部12の端面に配置した太陽電池セル14にまで導く作用(導光作用)を有する。

【0017】
受光部12による導光作用(導光手段)としては、受光部12の表面(境界面)における全反射を利用することができる。受光部12において太陽電池セル14にまで導光する光の波長域は光電変換に寄与する波長域であるから、受光部12の構成材料(媒体)として、当該波長域において境界面で全反射する材料を選択すればよい。
受光部12において波長変換作用によって生じた変換光は、受光部12を平板状とし、受光部12の境界面に臨界角よりも大きな入射角で入射した変換光(自然光の反射光を含む)が受光部12の境界面で全反射するようにすることにより、徐々に、受光部12の端面に向けて反射させ太陽電池セル14に導くことができる。
太陽電池セル14と受光部12との接合面には反射防止膜を設け、受光部12と太陽電池セル14との接合面(境界面)に入射した光は反射せずに太陽電池セル14に入射させる。

【0018】
受光部12の受光面に入射する太陽光は、受光面に垂直あるいは十分に小さな入射角で入射する場合もある。また、受光部12の内部で波長変換された変換光も、受光部12と外界との境界面に対して臨界角よりも小さな入射角で入射する場合もある。このような光を太陽電池セル14に導く方法としては、受光部12の受光面の内面側と受光部12の裏面側に、垂直あるいは十分に小さな入射角で入射する光を太陽電池セル14に向けて反射させて導く導光手段を利用することができる。導光手段としては、受光部12の表面と裏面の双方あるいは一方に、境界面に入射する光を斜めに反射させる傾斜面を備える凹凸の反射部を設ける方法、受光部12とは異なる屈折率の単層あるいは複数層の反射層を設ける方法等がある。

【0019】
なお、図1に示す太陽電池モジュール10においては、平面形状が長方形状の受光部12の長手方向の一つの端面に太陽電池セル14を配置した構成としているが、太陽電池セル14を受光部12の長手方向の両端面に配置することもできる。また、短手方向の端面に配置することもでき、受光部12の四つの端面に配置することもできる。また、受光部12の平面形状は長方形状に限定されるものではなく、任意の多角形あるいは外形形状が曲線であってもよく、太陽電池セル14は受光部12の形態に応じて適宜配置位置を選択することができる。

【0020】
図1に示す太陽電池モジュール10において、受光部12を平板状とし、受光部12の長手方向の一端面にのみ太陽電池セル14を配置している理由は、受光部12において受光した光と受光部12の内部で波長変換した変換光を合わせて、受光部12の一端面に集光することにより、太陽電池セル14の発電効率を向上させ、効率的に太陽電池セル14が利用できるようにするためである。
このような設定条件において、発電効率を向上させるには、受光部12の平面積をできるだけ広くしてより多くの太陽光を受光できるようにし、受光部12の内部を反射及び透過して太陽電池セル14に光が到達するようにする必要がある。

【0021】
太陽光には赤外域、可視光域、紫外域の光が含まれている。本実施形態の太陽電池モジュール10においては、太陽電池セル14の光電変換に寄与する波長域の光のみを太陽電池セル14に導入して発電するから、光電変換に寄与する波長域よりも長波長側の光についての透過率は問題にならない。ただし、光電変換に寄与する波長域よりも短波長側の光について、受光部12を透過する必要があり、受光部12の構造材料としては、光電変換に寄与する波長域よりも短波長側の光については十分な透過率を有する材料を選択する必要がある。

【0022】
(波長変換材料)
上述した太陽電池モジュール10は、受光部12の一端面に太陽電池セル14を配置することにより発電効率を向上させる構成としたものであるが、受光部12に用いる波長変換材料として効率的に太陽光を波長変換することができる材料を使用することにより、さらに太陽電池モジュール10の発電効率を向上させることができる。
以下では、太陽光の波長変換材料、とくに太陽電池モジュールに好適に利用することができる波長変換材料について説明する。

【0023】
本発明に係る太陽電池モジュールにおいては、波長変換材料としてアボベンゾンフッ化ホウ素錯体(BF2AVB)を使用する。
アボベンゾンフッ化ホウ素錯体は、摩砕により蛍光色が変化するという特性を有し、発光特性については、分子の集合状態、結晶多形によって変化するという特性がある。

【0024】
アボベンゾンフッ化ホウ素錯体は、アボベンゾンを加熱して還流する操作を行うことで作製することができる。
実施形態で使用したアボベンゾンフッ化ホウ素錯体は、以下の方法により作製した。
三つ口フラスコに1-(4-tert-Butylphenyl)-3-(4-methoxyphenyl)-1,3-propanedione (AVB)(4.00g、1.3×10-2mol)とDichloromethane(100mL、1.56mol)を入れ、窒素ガスバブリングにより脱酸素し、この溶液中にシリンジを用いてBron trifluoride diethyl etherate(2.2 mL、1.8×10-2mol)を滴下し、60℃の油浴中で1時間加熱還流した。その後、室温までゆっくりと冷却し、ロータリーエバポレーターを用いて減圧留去して粗生成物を得た。粗生成物はジクロロメタンを展開溶媒としてカラムクロマトグラフィーによって精製した。その後、アセトンを用いて再結晶を行い、純品の粉末からなるアボベンゾンフッ化ホウ素錯体を得た。

【0025】
次に、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体を含む薄膜のサンプルを作製した例について説明する。
まず、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体と高分子媒体としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を含む1,2-ジクロロエタン溶液を調製した。PMMA濃度は2.0質量パーセントで一定とした。PMMA単量体に対して、0.01, 0.05, 0.1, 0.2, 0.3, 0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.8, 0.9, 1.0, 1.2, 1.4, 1.6, 1.8, 2.0, 2.2, 2.4, 2.6, 2.8, 3.0, 3.2, 3.4, 3.6, 3.8, 4.0 mol%となるような濃度条件を設定した。
薄膜はキャスト法によって作成した。基板として、表面処理したカバーガラスを用いた。基板上へ均一になるように溶液を滴下しキャストし、数時間室温で乾燥させ目視によって製膜したことを確認した後、数時間真空乾燥して薄膜サンプルを得た。

【0026】
上述したように、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体はアボベンゾンを用いて容易に合成することができる。アボベンゾンフッ化ホウ素錯体を太陽光の波長変換材料として利用する方法は、前述したレーザ色素、量子ドッドといった波長変換材料とくらべて作製費用が低廉で済ませられるという利点がある。
アボベンゾンは紫外線吸収剤として利用されることもあり、100gにつき数千円で手に入れることができ、フッ化ホウ素も100gにつき数千円で手に入れることができる。一方、レーザ色素は1gの価格が1万円を超え、量子ドッドの作製に使用するCdSe/ZnSは10mgで1万円以上かかる。
このように、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体は波長変換材料として容易に使用することができる。

【0027】
図2は上述した方法により、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体を分散させた薄膜のサンプルについて光吸収特性を測定した結果を示す。測定は、薄膜中のアボベンゾンフッ化ホウ素錯体の濃度が異なる(0.01mol%~0.7mol%)9種類のサンプルについて行った。
図2に示すように、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体は、360nm~410nmの波長範囲においてピークとなる吸収スペクトルを有する。このようにアボベンゾンフッ化ホウ素錯体は太陽光の紫外線領域側において高い光吸収領域を有するから、太陽光の紫外線領域の光を効果的に光電変換に利用することができる。

【0028】
図3は、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の濃度が異なる(0.01mol%~4.0mol%)11種類のサンプルについて、励起光を375nmとして、発光スペクトルを測定した結果を示す。図3に示す発光スペクトルから、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の濃度が高くなるにしたがって、発光スペクトルのピーク波長が長波長側に変化すること、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の濃度が高くなるにしたがって発光スペクトルがブロードになる(半値幅が広くなる)傾向があることがわかる。

【0029】
図4に、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の薄膜サンプルの濃度と発光スペクトルのピークとの関係(発光のピーク波長の濃度依存性)を示す。図4に示すように、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の濃度が高くなるにしたがって、発光スペクトルのピーク位置が徐々に長波長側にシフトする。すなわち、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の濃度を調節することにより、太陽電池セルの光電変換が最も効率的になるように変換光の波長域を調節することができる。アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の発光スペクトルは、図3の発光スペクトルからわかるように、バンド幅の広いスペクトルである。したがって、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体を太陽電池モジュールの波長変換材料として使用する場合は、発光スペクトルのバンド幅についても考慮して太陽電池セルの光電変換にもっとも効果的に寄与する波長域のアボベンゾンフッ化ホウ素錯体の濃度を選択して使用するのがよい。

【0030】
太陽電池モジュールの波長変換材料として使用する場合には、蛍光量子収率が重要な要件の一つである。表1に、上述したアボベンゾンフッ化ホウ素錯体のサンプルについて求めた蛍光量子収率を示す。
【表1】
JP2016122748A_000004t.gif

【0031】
表1に示すように、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の蛍光量子収率はアボベンゾンフッ化ホウ素錯体の分散濃度が高くなるとともに低下する。したがって、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体を波長変換材料として使用する場合は、光電変換に寄与する波長とあわせて、蛍光量子効率についても考慮するのがよい。表1に示すアボベンゾンフッ化ホウ素錯体の蛍光量子収率は、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の濃度を最も高く設定した4.0mol%のサンプルであっても50%以上の蛍光量子収率を有しており、この蛍光量子収率は、比較的蛍光量子効率に優れるレーザ色素群の蛍光量子効率30%と比較しても、大幅に上回っており、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体が太陽光の波長変換材料として効果的に利用できることを示している。

【0032】
図5は、ガラス板の上にアボベンゾンフッ化ホウ素錯体を含む高分子膜を形成したサンプルに、紫外線ランプ(365nm)を照射し、サンプルからの発光をとらえた写真である。各々のサンプルは、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の濃度を調整してアボベンゾンフッ化ホウ素錯体の溶液を調製し、溶液を10mm×10mmのガラス板の上に塗布し、溶媒を飛散させて作製した。ガラス板上の高分子膜の厚さは0.5mm程度である。
図5は、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の濃度が異なることにより、発光色が紫色(400nm)から黄緑色(600nm)まで変化することを示す。

【0033】
図6は、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体の光耐久性を調べる実験を行った結果を示す。
実験は、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体結晶粉末にレーザ光(波長343nm)を直接照射し、顕微鏡を用いて蛍光強度を連続観察する方法で行った。図6のグラフは、蛍光強度の時間変化(signal in)と蛍光寿命(励起状態寿命)の時間変化(lifetime in)を示す。実験結果は、蛍光強度と蛍光寿命とも、40分間連続照射しても変化しない、すなわち劣化による強度低下ならびに発光種の光反応がほとんどないことを示している。
この実験から、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体は高い光耐久性を備え、太陽電池モジュールの波長変換材料として好適に利用することができることがわかる。

【0034】
表2は、上述した実験結果を踏まえて、アボベンゾンフッ化ホウ素錯体を波長変換材料として用いる場合について、他の波長変換材料と特性を比較して示したものである。
【表2】
JP2016122748A_000005t.gif

【0035】
表2中の、再吸収損失とは、自家蛍光によって試料が励起されることにより、見かけ上、試料の吸収帯の波長での蛍光強度が減少することで、ストークスシフトが小さい蛍光分子では一般的に発生する。アボベンゾンフッ化ホウ素錯体を波長変換材料として使用する場合は、高濃度とすることにより、蛍光波長を長波長側へシフトさせることが可能であり、これによって自家蛍光を励起光とすることを避け、再吸収損失を抑えることが可能である。

【0036】
表2に示すとおり、波長変換材料としてのアボベンゾンフッ化ホウ素錯体は、他の波長変換材料と比較して、価格、波長選択性、量子収率、耐久性、開発コスト・時間の点で、いずれも優れており、太陽電池による発電に有効に利用することができる。また、波長選択性が広いことから、シリコン系の太陽電池に限らず、種々の太陽電池に適用して、太陽エネルギーを効率的に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 太陽電池モジュール
12 受光部
14 太陽電池セル

図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5