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明細書 :めっき複合材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-141862 (P2016-141862A)
公開日 平成28年8月8日(2016.8.8)
発明の名称または考案の名称 めっき複合材料の製造方法
国際特許分類 C25D  15/00        (2006.01)
C25D  21/00        (2006.01)
C25D  21/12        (2006.01)
FI C25D 15/00 A
C25D 21/00 J
C25D 21/12 A
C25D 21/12 J
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 12
出願番号 特願2015-020018 (P2015-020018)
出願日 平成27年2月4日(2015.2.4)
新規性喪失の例外の表示 申請有り
発明者または考案者 【氏名】新井 進
【氏名】植田 美代加
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
要約 【課題】隣り合った分散粒子の隙間を、めっきにより確実に充填するめっき複合材料の製造方法の提供。
【解決手段】めっき槽10内の鉛直方向の上位置に陽極12、下位置に陰極14を、互いに対向させて配置し、めっき液中に分散させた分散粒子を陰極14に向け徐々に沈降させ、陰極14上に堆積させるとともに、陰極14上にめっき金属を析出14aさせることにより、めっきマトリックス中に前記分散粒子が含まれためっき複合材料を作製する方法であって、陰極14上にめっき14aを析出させる際に、電位規制法により陰極14の電位を水素が発生しない電位に設定してめっきを析出14aさせるめっき複合材料の製造方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
めっき槽内の鉛直方向の上位置に陽極、下位置に陰極を、互いに対向させて配置し、
めっき液中に分散させた分散粒子を前記陰極に向け徐々に沈降させ、陰極上に堆積させるとともに、陰極上にめっき金属を析出させることにより、めっきマトリックス中に前記分散粒子が含まれためっき複合材料を作製する方法であって、
前記陰極上にめっきを析出させる際に、電位規制法により前記陰極の電位を水素が発生しない電位に設定してめっきを析出させることを特徴とするめっき複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記電位規制法によるめっきにおいては、水素の還元電位よりも正側において析出可能なめっきを施すめっき条件とすることを特徴とする請求項1記載のめっき複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記分散粒子としてダイヤモンド粒子を使用することを特徴とする請求項1または2記載のめっき複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記めっきとして、銅めっきを施すことを特徴とする請求項3記載のめっき複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記ダイヤモンド粒子として、粒径45μm以上の粒子を使用することを特徴とする請求項4記載のめっき複合材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤモンド粒子等の分散粒子をめっきマトリックス中に含むめっき複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CPU等のきわめて放熱量の大きな半導体素子を搭載した電子装置では、ヒートシンクやヒートスプレッダーといった放熱部品を用いて、半導体素子から発生する熱量を効率的に放散させている。これらの放熱部品の素材には、熱伝導性に優れる銅やアルミニウムが使用される。
本発明者は、めっき金属中にカーボン繊維、カーボンナノチューブ、ダイヤモンド粒子等の分散粒子を分散させて取り込む複合めっきについて研究している。これらの複合めっきのうち、ダイヤモンド粒子をめっき金属中に分散させた複合材料は、きわめて熱伝導性に優れることから、ヒートシンクやヒートスプレッダー等の放熱部品として効果的に利用することができる。ダイヤモンドの熱伝導率900(W/mK)は、銅の熱伝導率398(W/mK)の約3倍であり、めっき金属中にダイヤモンド粒子を均一に分散させることにより、好適な複合材料となる。
【0003】
特許文献1にはめっき金属中にダイヤモンド粒子を含む複合材料が開示されている。この複合めっき材料はめっき皮膜の厚さ方向にダイヤモンド粒子の共析量が漸次変化する傾斜機能材料として形成したもので、ダイヤモンド粒子の共析量を傾斜組成とすることにより、めっき皮膜の放熱性を向上させ、基材との密着性を向上させることを可能としている。このめっき複合材料は、めっき液の撹拌速度を細かく調節して製造している。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第5006993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
めっき金属中にダイヤモンド粒子を分散させた複合材料を得る方法として、めっき液の撹拌速度を調節してめっきする方法(特許文献1)は、種々変化するめっき条件に合わせて撹拌速度を的確に設定することが難しいという問題がある。
本発明者は、ダイヤモンド粒子を分散させためっき複合材料を得る方法として、ダイヤモンド粒子を含むめっき液中に、陽極と陰極とを鉛直方向の上位置と下位置に水平に対向させて配置し、陰極上にダイヤモンド粒子を徐々に沈降させて堆積させながらめっきする方法を検討している。
【0006】
電極(陰極)上にダイヤモンド粒子を堆積させながらめっき複合材料を形成するには、堆積したダイヤモンド粒子間の隙間をめっき金属で充填しながらめっきする必要がある。ダイヤモンド粒子に限らず、シリカ粒子、カーボン繊維、カーボンナノチューブといった無機物や、樹脂粒子等の有機物を電極上に堆積させながらめっき複合材料を形成するには、的確にめっき条件を設定しないと、分散粒子の間の隙間部分がめっきによって完全に充填されず、複合材料中にボイド(空隙)が生じたりして、複合材料に求められる強度や熱伝導率といった所要の特性が得られないという問題がある。
【0007】
本発明は、めっき複合材料を作製する際の課題を解決すべくなされたものであり、めっき複合材料中にボイドを生じさせずに、分散粒子間の隙間がめっきにより確実に充填されためっき複合材料を得ることができるめっき複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るめっき複合材料の製造方法は、めっき槽内の鉛直方向の上位置に陽極、下位置に陰極を、互いに対向させて配置し、めっき液中に分散させた分散粒子を前記陰極に向け徐々に沈降させ、陰極上に堆積させるとともに、陰極上にめっき金属を析出させることにより、めっきマトリックス中に前記分散粒子が含まれためっき複合材料を作製する方法であって、前記陰極上にめっきを析出させる際に、電位規制法により前記陰極の電位を水素が発生しない電位に設定してめっきを析出させることを特徴とする。
【0009】
めっき複合材料に含まれる分散粒子とは、めっきマトリックス中に含まれる粒子であり、ダイヤモンド粒子やシリカ、カーボン繊維、カーボンナノチューブ等の無機物からなるもの、樹脂粒子のような有機物からなる。分散粒子は、球状や立方体、直方体状のものに限らず、繊維状のもの、細片状のもの、管状のもの等の種々の形態を含む。また、めっきマトリックス中に含まれる分散粒子の大きさや形状は均一であるとは限らない。
【0010】
本発明方法においては、電位規制法により陰極上にめっきを析出させてめっき複合材料を作製する。電位規制法によるめっきは、めっき時に、電極の電位を特定の電位に規制(保持)してめっきする方法である。電位規制法によるめっき方法によれば、陰極の電位を電極から水素が発生しない電位に設定してめっきすることが可能であり、陰極の電位をめっき時に水素が発生しない電位に規制することにより、めっき時に水素が発生してめっき金属にボイドが生じたり、発生した水素によって分散粒子が浮き上がったりすることを防止し、隣り合った分散粒子の間の隙間がめっき金属により確実に充填される。
【0011】
電位規制法によるめっきでは、とくにめっきの種類が限定されるものではなく、銅めっき、銀めっき、金めっき、ニッケルめっき、スズめっき等のめっきが可能である。ただし、電位規制法によるめっき方法により水素を発生させずにめっきするには、水素の還元電位よりも正側において析出可能となるように、めっきの種類や、使用するめっき液、使用する電極等のめっき条件を選択する必要がある。
【0012】
前述したように分散粒子には種々の材質、大きさ、形状の粒子を使用することができるが、ダイヤモンド粒子は電気的、化学的に安定的な粒子であることから、めっき液中に容易に分散させることができ、ダイヤモンド粒子を分散させためっき複合材料を容易に得ることができる。
また、銅からなるめっきマトリックス中にダイヤモンド粒子を含むめっき複合材料は、銅よりも優れた熱伝導率を備える点で好適に利用することができる。とくに、粒径(粒子の平均の大きさ)が45μm以上のダイヤモンド粒子を使用しためっき複合材料は、ダイヤモンド粒子とめっきマトリックス金属との密着性が良好であり、複合材料中にボイド(空隙)がないことから、銅材の数倍の熱伝導率を備える複合材料として得ることができ、熱放散材料等として好適に利用することができる。
【0013】
本発明に係るめっき複合材料の製造方法は、めっきにより複合材料を形成するから、めっきを形成した基材(電極)からめっき複合材料を外し、めっき複合材料として利用することも可能であるし、銅板等の基材上にめっき複合材料を形成し、基材を含めてめっき複合材料とすることもできる。めっき法により複合材料を形成できることから、熱放散性にすぐれた材料(部品)を製造することも容易である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るめっき複合材料の製造方法によれば、めっきマトリックス中に含まれる分散粒子の間の隙間がめっき金属により充填され、ボイドが残留しない複合材料として確実に得ることができ、熱放散用等として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】めっき装置の構成例を示す説明図である。
【図2】陰極にめっき金属が析出される様子を示す説明図である。
【図3】粒径が異なるダイヤモンド粒子のSEM画像である。
【図4】電位規制法により得られた銅-ダイヤモンド複合材料の表面のSEM像である。
【図5】電流規制法により得られた銅-ダイヤモンド複合材料の表面のSEM像である。
【図6】電流規制法により銅-ダイヤモンド複合材料を作製した際の陰極電位の変化を示すグラフである。
【図7】電位規制法により作製した銅-ダイヤモンド複合材料について熱伝導率を測定した結果を示すグラフである。
【図8】電流規制法により作製した銅-ダイヤモンド複合材料について熱伝導率を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明に係るめっき複合材料の製造方法を適用する場合のめっき装置の構成例を示す。図1は、めっき槽10に陽極12と陰極14とを配置し、陽極12と陰極14とを電源に接続した構成を示す。陽極12と陰極14は、めっき液を収容するめっき槽10の槽内に、鉛直方向の上位置に陽極12、下位置に陰極14とし、それぞれ電極面を水平方向として、互いに電極面を対向させて配置する。

【0017】
図1のめっき装置では、陽極12として、平板状の導体を側面方向から見てL字形に折曲した形態のものを使用している。陽極12のL字形に折曲した面を、陰極14の対向面と同一形状とし、陰極14の電極面と平行に対向させて配置する。
陰極14の電極面の向きを水平方向としているのは、めっき液中に分散させた分散粒子が重力により陰極14上に沈降して、堆積するようにするためである。陽極12は陰極14に対向配置するから、陽極12の面方向も水平方向になる。
複合めっき材料として、銅-ダイヤモンド複合材料を作製する際には、ダイヤモンド粒子を分散させためっき液を使用してめっきすればよい。

【0018】
図1において、陰極14は導体板(たとえば銅板)をL字形に折曲して電極としている。陽極12に対向配置する陰極14の折曲片14aに連結する延出片14bをめっき槽10の上方に延出させ、電源のマイナス側と延出片14とを接続する。図示例では、延出片14bの表面にめっきされないように、めっき槽10に浸漬される延出片14bの表面をマスキングテープ14cで被覆している。

【0019】
本発明に係るめっき複合材料の製造方法において、めっき装置における陽極と陰極の配置は図1に示す構成に限定されるものではない。ただし、めっき時に分散粒子を陰極上に沈降させ、陰極上に徐々に分散粒子を堆積させながらめっきするから、めっき槽内で陽極と陰極とを対向させ、めっき槽内の上位置に陽極を下位置に陰極を配置して、陰極上に分散粒子を堆積させるようにしてめっきする。

【0020】
図1に示すめっき装置を用いてめっき複合材料を作製するめっき操作は、分散粒子(ダイヤモンド粒子)を混合しためっき液をめっき槽10に収容し、めっき液を撹拌してめっき液中で分散粒子を均一に分散させた後、陽極12と陰極14との間に電流を通じることによって行う。
分散粒子(ダイヤモンド粒子)が均一に分散されためっき複合材料を得るには、めっき液中で分散粒子が均一に分散されている必要がある。ダイヤモンド粒子のような、電気的にも化学的にも安定な分散粒子を用いれば、めっき液を撹拌することにより、分散粒子が相互に凝集せず、好適に分散粒子を分散させることができる。

【0021】
めっき液の撹拌を停止すると、めっき液中の分散粒子は重力の作用により徐々に沈降を開始し、陰極14上に堆積し始める。
図2は、陰極14上に分散粒子20が堆積しはじめ、陰極14上にめっき金属22が析出する様子を説明的に示したものである。
図2(a)は、陰極14上に分散粒子20が沈降して、分散粒子20が一層(一段)堆積し、陰極14上にめっき金属(銅めっき)22が析出しはじめた状態である。めっき金属22は、陰極14の表面から、分散粒子20の隙間を埋めるように析出する。めっき金属は、分散粒子が絶縁体であっても導体であっても、分散粒子の隙間を埋めるように析出させることが可能である。ただし、分散粒子がシリカ等の絶縁体の場合の方が、導体の場合よりも容易に分散粒子の隙間を埋めるようにめっき金属を析出させることができる。分散粒子が導体の場合は、めっき液やめっき条件を調整してめっき金属を析出させる必要がある。

【0022】
図2(a)は、陰極14に沈降した分散粒子20が陰極14に接触する部位の近傍がめっきされた状態、図2(b)は、一段目の分散粒子20の1/2程度の高さまでめっきが進んだ状態、図2(c)は、さらにめっきが進み、一段目の分散粒子20の全体が隠れるまでめっきが進んだ状態を示す。
このように分散粒子20が堆積した状態で、分散粒子20の隙間を埋めるようにめっき金属22が析出するということは、めっきが析出する導体領域の面積についてみると、めっきの進行状態によって、導体領域が広がったり、狭まったりすることを意味する。一般的なめっきでは、めっき対象物は平板体のように平面上に単にめっきが析出するのみで、めっき対象となる導体領域の面積が大きく変動することはない。したがって、このようにめっき対象の導体領域の大きさが変動するような場合には、分散粒子20の隙間が確実にめっきにより充填されるようにめっき条件を設定してめっきする必要がある。

【0023】
図2では、説明上、分散粒子20を同一径の球体として描いているが、分散粒子20は実際には大きさや形状にばらつきがあることがふつうである。したがって、陰極14上に分散粒子20が沈降する場合も、整然と分散粒子20が整列して沈降するものではなく、また、一段ずつ積み重なるるようにして堆積するとは限らず、堆積形態もさまざまである。このように、陰極14上に堆積する分散粒子20は、仮に、粒子径をそろえるようにした場合でも、きわめて多様な形態で堆積するから、めっき途中でめっき対象の導体領域の面積が変動することは避けられない。

【0024】
電解めっきにおいては、電流規制法によるめっきが一般的に採用されている。電流規制法は、陽極と陰極とに流す電流を一定としてめっきする方法である。電流規制法が一般的に採用されているのは、製造現場では、めっき対象物のめっき領域がめっきの進行とともに大きく変動するようなめっきを施す例がほとんどないこと、電流規制法は効率的なめっきが可能で安定しためっきができることによる。

【0025】
しかしながら、電流規制法を、図2に示すような、めっきの進行とともにめっき領域が大きく変動するめっき処理に適用すると、めっき領域が変動することによって、めっき領域(導体領域)に作用する電流値が大きく変動する。すなわち、めっき電流が作用する導体領域の面積が小さくなると導体領域に集中的に電流が作用し、導体領域の面積が広がると導体領域に作用する電流が緩やかになる。電解めっきでは、めっき中にめっき液から水素が発生することがあり、とくにめっき領域に電流が集中して作用すると、水素が発生しやすくなり、発生した水素が分散粒子20を浮き上がらせるように作用し、めっき金属22にボイドを発生させるという問題が生じる。

【0026】
めっき時に、めっき複合材料中にボイド(空隙)が発生すると、めっき後の複合材料の内部に空隙が残り、たとえば、銅-ダイヤモンド複合材料では、ダイヤモンド粒子と銅との間に空隙が残ったりすることにより、十分な熱伝導率が得られなかったり、所要の強度が得られなかったりするという問題が生じる。

【0027】
本発明に係るめっき複合材料の製造方法は、電解めっきを施す際に水素が発生することを抑制し、めっき複合材料中にボイドが生じることを防止し、電流効率を向上させることを可能にするため、電位規制法によるめっきを利用してめっき複合材料を製造することを特徴とする。
電位規制法は、水素が発生する陰極の電位を、めっき時に一定の電位に規制して(一定の電位に保持して)めっきする方法である。この電位規制法によるめっき方法を利用すると、めっき時にめっき対象領域(導体領域)の面積が大きく変動する場合でも、陰極から水素を発生させずに確実にめっきすることができる。電位規制法により陰極の電位を規制することにより、めっき時に水素が発生することを防止することができ、複合材料中にボイドが発生することを防止し、まためっき時の電流効率を向上させることができる。
【実施例】
【0028】
本発明に係るめっき複合材料の製造方法を適用した例として、銅-ダイヤモンド複合材料をめっきにより製造した例について説明する。以下では、電流規制法と電位規制法により、銅-ダイヤモンド複合材料を作製した例について対比しながら説明する。
【実施例】
【0029】
(めっき浴)
めっき浴には、電流規制法と電位規制法とも共通に、下記のめっき浴を使用した。
CuSO4・5H2O 0.85M
H2SO4 0.55M
ダイヤモンド粒子 平均粒子径 10、25、45、195、230μm
めっき浴は、溶液にダイヤモンド粒子を加えてダイヤモンド粒子を懸濁させたものである。ダイヤモンド粒子の粒径による熱伝導率の差異を調べるため、平均粒子径が異なる(10、25、45、195、230μm)ダイヤモンド粒子を加えためっき浴をそれぞれ調製して使用した。
めっき液は、100mLビーカーを用いて、100mLのめっき液中に表1の分量のダイヤモンド粒子を混合・撹拌した後、めっき槽に注いで使用した。実施例で使用したダイヤモンド粒子の添加量は、めっき槽の底面(底面積:3.5cm×7cm)にダイヤモンド粒子を充填率64%で2層積み上げる量に相当する。
【実施例】
【0030】
【表1】
JP2016141862A_000003t.gif
【実施例】
【0031】
図3にめっき液に加えたダイヤモンド粒子(粒径:10、25、45、195、230μm)のSEM像を示す。ダイヤモンド粒子は比較的大きなダイヤモンド粒子を破砕して分粒したものである。粒径が195μm、230μmのものは角がとれた形態で球体に近い形状となっている。
【実施例】
【0032】
(めっき条件)
A. 電位規制法
陰極電位 -0.2V (vs.SCE)
陰極 純銅(めっき面積15cm2
陽極 含リン銅
浴温 25℃
めっき厚 1mm
B. 電流規制法
電流値 0.075A
陰極 純銅(めっき面積15cm2
陽極 含リン銅
浴温 25℃
めっき厚 1mm
【実施例】
【0033】
なお、電位規制法により陰極から水素を発生させないようにするには、水素を発生させない基準電極として定められているSHE(Standard Hydrogen Electrode)に対し、陰極を正側の電位に設定する必要がある。
SCEとSHEとは、SCE=0.2412V vs SHEという関係にあるから、上記の陰極電位-0.2V(vs.SCE)という設定条件、すなわち、陰極電位をSCEに対して-0.2Vに設定しためっき条件は、陰極電位を、SHEに対し+0.0412Vとしたこと、すなわちSHEに対し正側に設定し、陰極で水素が発生しない条件としたことを意味する。
【実施例】
【0034】
(めっき操作)
電位規制法により銅-ダイヤモンド複合材料を作製する場合は、図1に示すように、鉛直方向の上下位置に陽極12と陰極14とを配置し、めっき槽10にダイヤモンド粒子を懸濁しためっき液を入れ、まず、めっき液を攪拌してめっき液中でダイヤモンド粒子を均一に分散させた後、めっき液の攪拌を停止し、陽極12と陰極とを電源に接続し、陰極14の電位を-0.2V(vs.SCE)とするめっき条件を保持しながら、陽極12と陰極14とに電流を通じてめっきした。電位規制法によるめっきでは、陰極電位を所定電位に設定してめっきするため、実際には、陽極12と陰極14の他に、基準電位となる電極をめっき槽に設置してめっきする。
【実施例】
【0035】
表2に、電位規制法により陰極14上に銅-ダイヤモンド複合材料を形成した実験でのめっき厚と通電量を示す。なお、電位規制法では、めっき厚を通電量(電流[A]×時間[s])によって制御する、したがって、めっき時間は定まらない。
【表2】
JP2016141862A_000004t.gif
【実施例】
【0036】
表3に、上記実験における電流効率と、得られた複合材料に含まれるダイヤモンド粒子の含有率(体積%)を示す。電流効率は、次式により求めた。電流効率=(得られためっき膜の膜厚/理論膜厚)×100%
【表3】
JP2016141862A_000005t.gif
【実施例】
【0037】
図4は、上述した電位規制法により得られた銅-ダイヤモンド複合材料の表面のSEM像である。SEM像に、銅-ダイヤモンド複合材料中に含有されたダイヤモンド粒子の形態が見えている。また、ダイヤモンド粒子の間に銅が充填され、ダイヤモンド粒子と銅が複合化された材料となっていることがわかる。
【実施例】
【0038】
電流規制法によりめっきする場合は、電位規制法による場合と同様に、めっき槽10にダイヤモンド粒子を混合しためっき液を入れ、めっき液を攪拌してめっき液中でダイヤモンド粒子を均一に分散させた後、めっき液の攪拌を停止し、陽極12と陰極とを電源に接続し、電流値を0.075Aとしてめっきした。
表4に電流規制法により銅-ダイヤモンド複合材料を作製した場合のめっき厚とめっき時間を示す。
【表4】
JP2016141862A_000006t.gif
【実施例】
【0039】
表5に、上記表4に示す銅-ダイヤモンド複合材料を得たときの電流効率と、複合材料に含まれるダイヤモンド粒子の含有率(体積%)を示す。電流効率は、電流規制法による場合と同様に求めた。
【表5】
JP2016141862A_000007t.gif
【実施例】
【0040】
表3の電位規制法による場合と、表5の電流規制法によるめっき結果を比較すると、電位規制法によるめっきでは、電流効率が略100%に近く、電流規制法によるめっきと比較して、電流効率の点で大幅に改善されることがわかる。電流規制法による場合に電流効率が劣化する原因は、めっきの際に水素が発生するためである。電位規制法による場合は、陰極電位を水素が発生しない電位に設定しているから、原理的にも電流効率は100%となる。電位規制法による実験結果は、めっき時にほとんど水素が発生していないことを裏付けている。
【実施例】
【0041】
図5は、上述した電流規制法により得られた銅-ダイヤモンド複合材料の表面のSEM像である。この銅-ダイヤモンド複合材料のSEM像にも、複合材料中に含有されたダイヤモンド粒子の形態が見えている。図4に示した電位規制法による銅-ダイヤモンド複合材料と比較すると、ダイヤモンド粒子間を充填する銅の緻密性が若干、劣るように見える。
【実施例】
【0042】
図6は、電流規制法により銅-ダイヤモンド複合材料を作製した場合に、めっき中に水素が発生することを実験的に検知した例を示す。この実験は、ダイヤモンド粒子の粒径を10μm、電流密度を0.5Adm-2とし、めっき時間(経過時間)による陰極の電位の変化を調べたものである。陽極と陰極の配置等は上述した実験における配置と同一である。
【実施例】
【0043】
図6の縦軸は、電極SCEに対する陰極の電位を示す。
図6に示す測定結果は、めっき開始から30分程度経過したところで、陰極の電位が急激にマイナス側に変化したことを示す。実験では、この陰極電位が急激にマイナス側に変化した時点で水素ガスの発生を検知した。
すなわち、電流規制法によるめっきにおいては、水素発生を抑制することができる電位よりも陰極電位がマイナス側になると水素が発生することを示す。図6は、また、電極SCEに対して陰極が-2Vよりもプラス側であれば、めっき中に水素が発生しないことも示している。
【実施例】
【0044】
(熱伝導率試験)
図7は、電位規制法により作製した上記の銅-ダイヤモンド複合材料のサンプルについて熱伝導率を測定した結果、図8は、電流規制法により作製した銅-ダイヤモンド複合材料のサンプルについて熱伝導率を測定した結果を示す。図7、8では、複合材の熱伝導率を示す理論式(Hasselman-Johnson)と実測値とを合わせて示した。また、純銅についての値を示した。
ハッセルマン-ジョンソンの理論式は次式で与えられる。
【数1】
JP2016141862A_000008t.gif
【実施例】
【0045】
上式で、k:銅-ダイヤモンド複合材の熱伝導率(W/mK)、k:銅の熱伝導率(W/mK)、k:ダイヤモンドの熱伝導率(W/mK)、V:ダイヤモンド粒子の体積分率、α:ダイヤモンド粒子の半径(m)、h:ダイヤモンドと銅との界面熱伝達率(W/m2K)である。k=398、k=900、h=88577882.1である。
【実施例】
【0046】
熱伝導率の測定はJIS R 1611に記載されたフラッシュ法に準拠し、キセノンフラッシュ熱特性評価装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、製品名LFA 447 Nanoflash)を用いて、陰極から剥離した銅-ダイヤモンド複合材料について熱拡散率を測定することで行った。
熱伝導率は、λ=α×c×ρに従って求めた。λ:銅-ダイヤモンド複合材料の熱伝導率(W/mK)、α:銅-ダイヤモンド複合材料の熱拡散率(m2/s)、c:銅-ダイヤモンド複合材料の比熱容量(J/kg・K)、ρ:銅-ダイヤモンド複合材料のかさ密度(kg/m3)である。なお、銅-ダイヤモンド複合材の比熱容量cは、銅の比熱容量CCuを0.386kJ/kg・K、ダイヤモンドの比熱容量Cを0.53kJ/kg・Kとし、c=CCuCu+Cによって算出され、銅-ダイヤモンド複合材料のかさ密度ρは、ρ=ρCuCu+ρによって算出される。なお、VCuは銅-ダイヤモンド複合材料中の銅の体積分率、Vはダイヤモンドの体積分率、ρCuは銅のかさ密度、ρはダイヤモンドのかさ密度である。
【実施例】
【0047】
図7、8に示す銅-ダイヤモンド複合材料の熱伝導率の測定結果は、銅とダイヤモンド粒子とを複合化することにより、銅の熱伝導率を上回る熱伝導率が得られること、とくに粒径45μm以上のダイヤモンド粒子を使用することにより、銅-ダイヤモンド複合材料の熱伝導率が銅の熱伝導率を大きく上回ることを示している。
また、電位規制法による場合(図7)と電流規制法(図8)による場合とを比較すると、電位規制法による複合材料は、電流規制法によるものよりも理論式に近い値が得られていることがわかる。すなわち、電位規制法を利用してめっきすることにより、めっき中に水素が発生させずにめっきすることができ、隣り合ったダイヤモンド粒子の間が緻密に銅(めっき銅)によって充填され、複合材料中にボイドが残留せずにめっきされることで、より理論式に近い値が得られたものと考えられる。
【実施例】
【0048】
上述した実験結果は、めっき方法を利用して銅-ダイヤモンド複合材料を作製する際に電位規制法がダイヤモンド粒子間を銅によって確実に充填しながら複合材料を形成する上できわめて有効であることを示す。とくに、陰極上にダイヤモンド粒子を徐々に沈降させて堆積させながらめっきする際には、ダイヤモンド粒子が複合材料中に入り込むことにより、めっきが析出する面積が刻々と変化すること、めっき中に水素が発生するとダイヤモンド粒子を浮き上がらせるように作用し、めっき中にボイドが発生しやすくなるという問題に対して、電位規制法によるめっき方法はきわめて有効である。電位規制法は、めっきを析出させる面積が変動しても、電極電位を規制するのみでめっきするから、めっき面積の変動にはなんら左右されないからである。また、めっき中に水素を発生させないことから、水素によってダイヤモンド粒子が浮き上がるといったこともない。
【実施例】
【0049】
なお、上記実施例では、銅-ダイヤモンド複合材料をめっきにより作製する例について説明したが、本発明方法は銅-ダイヤモンド複合材料に限らず、ニッケル-ダイヤモンド複合材料のような銅以外のめっき金属との組み合わせについても適用することができる。
本発明においては、電位規制法を利用して、めっき中に水素を発生させずにめっきするから、めっき条件としては、水素の還元電位(0V vs.SHE=-0.2412V vs. SCE)よりも正側の電位で析出可能な金属であればめっきすることができる。たとえば、硫酸銅浴からの銅の析出電位は+0.06V vs. SCEであり水素の発生を抑えるめっきが可能である。これに対し、たとえば、無光沢ワット浴からのニッケルの析出電位は-0.8V vs. SCEであり、電位規制法を用いても水素の発生を抑えてめっきすることができない。このように、本発明方法を適用する場合は、めっき浴や使用する電極材料を適宜選択して適用する必要がある。
【実施例】
【0050】
また、上記実施例ではマトリックス金属に含有する分散粒子としてダイヤモンド粒子を使用する例について説明したが、マトリックス金属に含有させる分散粒子として、ダイヤモンド粒子以外の、シリカ、カーボン繊維、カーボンナノチューブ等の無機物や、樹脂粒子等の有機物を対象とすることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 めっき槽
12 陽極
14 陰極
14a 折曲片
14b 延出片
14c マスキングテープ
20 分散粒子
22 めっき金属


図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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