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明細書 :ニッケル-ダイヤモンド複合材及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-178674 (P2015-178674A)
公開日 平成27年10月8日(2015.10.8)
発明の名称または考案の名称 ニッケル-ダイヤモンド複合材及びその製造方法
国際特許分類 C25D  15/02        (2006.01)
C25D  13/22        (2006.01)
FI C25D 15/02 F
C25D 13/22 302
請求項の数または発明の数 9
出願形態 OL
全頁数 20
出願番号 特願2015-031772 (P2015-031772)
出願日 平成27年2月20日(2015.2.20)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 平成26年10月15日に、ウェブサイトhttp://www.admeta.org/2014/abstracts/index.htmlにおいて、「Fabrication of High-Thermal-Conductivity Ni/Diamond Composites by Electrodeposition」について電気通信回線を通じて発表した。 平成26年10月22日に発行された、ADMETA▲Plus▼ 2014 Advanced Metallization Conference 2014 24▲th▼ Asian Session IWAPS Joint Conference,CD-ROMにおいて「 Fabrication of High-Thermal-Conductivity Ni/Diamond Composites by Electrodeposition」について発表した。 平成26年10月22日に発行された、ADMETA▲Plus▼ 2014 Advanced Metallization Conference 2014 24▲th▼ Asian Session IWAPS Joint Conference,第58-59頁において 「 Fabrication of High-Thermal-Conductivity Ni/Diamond Composites by Electrodeposition」について発表した。 平成26年10月23日に、ADMETA▲Plus▼ 2014 Advanced Metallization Conference 2014 24▲th▼ Asian Session IWAPS Joint Conference,東京大学弥生講堂・一条ホール(東京都文京区弥生一丁目1番1号)において、「Fabrication of High-Thermal-Conductivity Ni/Diamond Composites by Electrodeposition」についてポスター発表により公開した。
優先権出願番号 2014038003
優先日 平成26年2月28日(2014.2.28)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】新井 進
【氏名】植田 美代加
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100088306、【弁理士】、【氏名又は名称】小宮 良雄
【識別番号】100126343、【弁理士】、【氏名又は名称】大西 浩之
審査請求 未請求
要約 【課題】純ニッケルよりも格段に高い熱伝導率を有するニッケル-ダイヤモンド複合材、及びめっき液の撹拌条件を細かく設定することが不要で、このニッケル-ダイヤモンド複合材を簡便に製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】ニッケル-ダイヤモンド複合材1は、平均粒径が少なくとも45μmであるダイヤモンド粒子2が、ニッケルマトリクス3に担持されており、シェラーの式に従って算出されたニッケルマトリクス3の結晶子3aの平均結晶子径が最大で45nmであるものである。ニッケル-ダイヤモンド複合材1の製造方法は、めっき槽10の底に敷かれた陰極板40の上方に陽極板50を水平に対向させ、ダイヤモンド粒子2を含有しているめっき液20を撹拌した後、ダイヤモンド粒子2を沈降させてから、通電することによってダイヤモンド粒子2とニッケルマトリクス3とを共析させるものである。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
平均粒径が少なくとも45μmであるダイヤモンド粒子が、ニッケルマトリクスに担持されており、シェラーの式に従って算出された前記ニッケルマトリクスの平均結晶子径が最大で45nmであることを特徴とするニッケル-ダイヤモンド複合材。
【請求項2】
前記ダイヤモンド粒子が、少なくとも40vol%含まれていることを特徴とする請求項1に記載のニッケル-ダイヤモンド複合材。
【請求項3】
前記ダイヤモンド粒子と前記ニッケルマトリクスとの少なくとも一部が、密着していることを特徴とする請求項1又は2に記載のニッケル-ダイヤモンド複合材。
【請求項4】
ダイヤモンド粒子とスルファミン酸ニッケルとを含有するめっき液に、陰極板と前記陰極板との上方に配置された陽極板とが水平に対向して浸かっており、前記めっき液を撹拌することにより前記ダイヤモンド粒子を分散させ、
撹拌を止めることによって前記ダイヤモンド粒子を沈降させてから、前記陰極板と前記陽極板との間に電流を通じることによって前記陰極板上に前記ニッケルマトリクスと前記ダイヤモンド粒子とを共析させたものであることを特徴とするニッケル-ダイヤモンド複合材。
【請求項5】
前記ダイヤモンド粒子の形状が、多角形を組み合わせた多面体であることを特徴とする請求項4に記載のニッケル-ダイヤモンド複合材。
【請求項6】
平均粒径が少なくとも45μmであるダイヤモンド粒子を含有するめっき液に、陰極板と前記陰極板の上方に配置された陽極板とが水平に対向して浸かっており、前記めっき液を撹拌することにより前記ダイヤモンド粒子を分散させ、
撹拌を止めることによって前記ダイヤモンド粒子を沈降させてから、前記陰極板と前記陽極板との間に電流を通じることによって前記陰極板上にニッケルマトリクスと前記ダイヤモンド粒子とを共析させることを特徴とするニッケル-ダイヤモンド複合材の製造方法。
【請求項7】
スルファミン酸ニッケルとホウ酸とを混合して前記めっき液を調製することにより、シェラーの式に従って算出された前記ニッケルマトリクスの平均結晶子径を最大で45nmに形成することを特徴とする請求項6に記載のニッケル-ダイヤモンド複合材の製造方法。
【請求項8】
前記ダイヤモンド粒子の形状が、多角形を組み合わせた多面体であることを特徴とする請求項6に記載のニッケル-ダイヤモンド複合材の製造方法。
【請求項9】
前記電流を通じる際及び/又はその直前に、前記めっき液及び/又は前記陰極板に振動を付与することを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のニッケル-ダイヤモンド複合材の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱伝導率を有するニッケル-ダイヤモンド複合材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動作により発熱する機器は、発生した熱を放散させるヒートシンクやヒートスプレッダのような放熱器を有している。この放熱器の放熱材として、ニッケルマトリクス中に、高熱伝導体であるダイヤモンド粒子を担持したニッケル-ダイヤモンド複合材が知られている。
【0003】
このような複合材の熱伝導率を示す理論式として、Hasselman-Johnson(ハッセルマン-ジョンソン)の式が非特許文献1に開示されている。Hasselman-Johnsonの式を数式1に示す。この式によれば、ニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率の理論値を算出することができる。
【0004】
【数1】
JP2015178674A_000003t.gif

【0005】
数式1中、k:ニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率(W/mK)、k:ニッケルの熱伝導率(W/mK)、k:ダイヤモンドの熱伝導率(W/mK)、V:ダイヤモンド粒子の体積分率、α:ダイヤモンド粒子の半径(m)、h:ダイヤモンドとニッケルとの界面熱伝達率(W/mK)である。また、k=90.5、k=900であり(非特許文献2)、h=149591316.5(非特許文献3)である。
【0006】
図10は、数式1に従って算出されたニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率の計算値を、1、10、45μmの平均粒径を有するダイヤモンド粒子毎にプロットしたグラフである。横軸はニッケル-ダイヤモンド複合材中のダイヤモンド含有率(vol%)を表し、縦軸はニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率(W/mK)を表している。同図のグラフによれば、平均粒径45μmのような比較的大きい平均粒径を有するダイヤモンド粒子は、含有率が高いほど、ニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率を向上させることができる。一方、平均粒径1μmのような小粒径のダイヤモンド粒子は、その含有率が高いほど却ってニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率を低下させてしまう。
【0007】
特許文献1にニッケル-ダイヤモンド複合材の製造方法が開示されている。この製造方法は、ダイヤモンド粒子同士が接触しつつニッケルと共析するように、めっき液の撹拌速度を細かく変化させながら電気めっきを行うものである。それによってダイヤモンド粒子は、ニッケル-ダイヤモンド複合材の厚さ方向で局所的に偏在する。ダイヤモンド粒子がそれの偏在箇所で互いに接触していることにより、ダイヤモンド粒子間で熱伝導を生じるので、この製造方法により得られるニッケル-ダイヤモンド複合材は、純ニッケルよりも高い熱伝導率を有している。
【0008】
しかしながら高いダイヤモンド粒子含有率を有するニッケル-ダイヤモンド複合材であっても、数式1によって算出される値に匹敵するような格段に高い熱伝導率を得ることができなかった。
【0009】
まためっき液中のダイヤモンド粒子の挙動は、ダイヤモンド粒子の粒径及び形状、めっき液の比重、ニッケルとの共析の速度、並びにめっき液の電気分解により生成する気体等の要因の影響を受ける。そのため特許文献1に開示されたニッケル-ダイヤモンド複合材の製造方法は、ダイヤモンド粒子同士が接触する撹拌条件を設定するのに、これらの要因に応じ、実験を繰り返さなければならなかった。このことは、ニッケル-ダイヤモンド複合材の製造条件を決定する時間を長引かせ、製造コストの高騰を招来していた。さらにめっき液の撹拌速度の条件を設定したとしても、これらの要因は、めっき工程毎に異なるものであるので、撹拌だけでダイヤモンド粒子同士が必ず接触するように、一様に制御することができなかった。
【先行技術文献】
【0010】

【非特許文献1】D.P.H.Hasselman, L.F.Johnson, J.Comp.Mater., (1987), vol.21, no.6, p.508-515
【非特許文献2】公益社団法人日本化学会、「化学便覧基礎編II」、丸善株式会社、平成3年2月28日、改訂3版、p.73-74
【非特許文献3】独立行政法人材質・材料研究機構、NIMS物質・材料データベース、[online]、平成25年12月25日、材料情報ステーション、[平成26年2月27日検索]、インターネット〈URL: http://mits.nims.go.jp/index.html〉
【0011】

【特許文献1】特許第5006993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、純ニッケルよりも格段に高い熱伝導率を有するニッケル-ダイヤモンド複合材、及びめっき液の撹拌条件を細かく設定することが不要で、このニッケル-ダイヤモンド複合材を簡便に製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するためになされた本発明のニッケル-ダイヤモンド複合材は、平均粒径が少なくとも45μmであるダイヤモンド粒子が、ニッケルマトリクスに担持されており、シェラーの式に従って算出された前記ニッケルマトリクスの平均結晶子径が最大で45nmであるものである。
【0014】
ニッケル-ダイヤモンド複合材は、前記ダイヤモンド粒子が、少なくとも40vol%含まれていることが好ましい。
【0015】
ニッケル-ダイヤモンド複合材は、前記ダイヤモンド粒子と前記ニッケルマトリクスとの少なくとも一部が、密着していることが好ましい。
【0016】
ニッケル-ダイヤモンド複合材は、ダイヤモンド粒子とスルファミン酸ニッケルとを含有するめっき液に、陰極板と前記陰極板との上方に配置された陽極板とが水平に対向して浸かっており、前記めっき液を撹拌することにより前記ダイヤモンド粒子を分散させ、撹拌を止めることによって前記ダイヤモンド粒子を沈降させてから、前記陰極板と前記陽極板との間に電流を通じることによって前記陰極板上に前記ニッケルマトリクスと前記ダイヤモンド粒子とを共析させたものであってもよい。
【0017】
ニッケル-ダイヤモンド複合材は、前記ダイヤモンド粒子の形状が、多角形を組み合わせた多面体であってもよい。
【0018】
ニッケル-ダイヤモンド複合材の製造方法は、平均粒径が少なくとも45μmであるダイヤモンド粒子を含有するめっき液に、陰極板と前記陰極板の上方に配置された陽極板とが水平に対向して浸かっており、前記めっき液を撹拌することにより前記ダイヤモンド粒子を分散させ、撹拌を止めることによって前記ダイヤモンド粒子を沈降させてから、前記陰極板と前記陽極板との間に電流を通じることによって前記陰極板上にニッケルマトリクスと前記ダイヤモンド粒子とを共析させるものである。
【0019】
ニッケル-ダイヤモンド複合材の製造方法は、スルファミン酸ニッケルとホウ酸とを混合して前記めっき液を調製することにより、シェラーの式に従って算出された前記ニッケルマトリクスの平均結晶子径を最大で45nmに形成することが好ましい。
【0020】
ニッケル-ダイヤモンド複合材の製造方法は、前記ダイヤモンド粒子の形状が、多角形を組み合わせた多面体であることが好ましい。
【0021】
ニッケル-ダイヤモンド複合材の製造方法は、前記電流を通じる際及び/又はその直前に、前記めっき液及び/又は前記陰極板に振動を付与してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のニッケル-ダイヤモンド複合材は、少なくとも45μmの平均粒径を有するダイヤモンド粒子が、ニッケルマトリクスに担持されているものである。ニッケルマトリクスの平均結晶子径は最大で45nmであるので、このニッケル-ダイヤモンド複合材は、純ニッケルよりも高い熱伝導率を有する。また、このニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率は、Hasselman-Johnsonの式に従った計算値に凡そ合致する。そのため、ダイヤモンド粒子の平均粒径及び含有率の数値だけから所望の熱伝導率を有するニッケル-ダイヤモンド複合材を簡易に設計することができる。
【0023】
このニッケル-ダイヤモンド複合材は、ダイヤモンド粒子を40vol%以上含んでいたり、ダイヤモンド粒子とニッケルマトリクスとの少なくとも一部が密着していたりすると、熱伝導率をより向上させることができる。
【0024】
このニッケル-ダイヤモンド複合材は、ダイヤモンド粒子が多面体形状を有しているものであると、熱伝導率をより一層向上させることができる。
【0025】
このニッケル-ダイヤモンド複合材の製造方法は、陰極板とこれの上方の陽極板とが水平に対向してダイヤモンド粒子を含有するめっき液に浸かっており、このめっき液を撹拌した後、撹拌を止めることによってダイヤモンド粒子を陰極板上に堆積させてから、電流を流してニッケルマトリクスを電気めっきするものであるので、大粒径のダイヤモンド粒子をニッケル-ダイヤモンド複合材に含有させることができる。それにより高熱伝導率を有するニッケル-ダイヤモンド複合材を、簡便に製造することができる。
【0026】
このニッケル-ダイヤモンド複合材の製造方法は、めっき液がスルファミン酸ニッケルとホウ酸とを混合して調製されたものであると、シェラーの式に従って算出された平均結晶子径が45nm以下のニッケルマトリクスが得られる。その結果、内部応力が小さく、高熱伝導率のニッケル-ダイヤモンド複合材を製造することができる。
【0027】
このニッケル-ダイヤモンド複合材の製造方法は、電流を通じる際及び/又はその直前に、めっき液及び/又は陰極板に振動を付与するものであると、大粒径のダイヤモンド粒子を陰極板上に密に積み重ねることができるので、ダイヤモンド粒子の含有率を高めることができる。その結果、より高熱伝導率のニッケル-ダイヤモンド複合材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を適用するニッケル-ダイヤモンド複合材の製造に用いられるめっき装置の模式図である。
【図2】本発明を適用するニッケル-ダイヤモンド複合材の一形態を示す模式断面図である。
【図3】本発明を適用する銅-ダイヤモンド複合材に用いられるダイヤモンド粒子の電界放出型走査電子顕微鏡画像である。
【図4】本発明を適用するニッケル-ダイヤモンド複合材の別な一形態を示す模式断面図である。
【図5】本発明を適用するニッケル-ダイヤモンド複合材に用いられるダイヤモンド粒子の別な形態を示す斜視図である。
【図6】ニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率とダイヤモンド粒子含有率との相関について、実施例、比較例及び参考例のニッケル-ダイヤモンド複合材、並びに参考例の純ニッケルの測定値と、Hasselman-Johnsonの式に従った計算値とを示すグラフである。
【図7】実施例及び比較例のニッケル-ダイヤモンド複合材の外観を撮影した写真である。
【図8】実施例及び参考例のニッケル-ダイヤモンド複合材の表面を電界放出型走査顕微鏡で観察した画像である。
【図9】実施例のニッケル-ダイヤモンド複合材の断面を電界放出型走査顕微鏡で観察した画像である。
【図10】ニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率とダイヤモンド粒子含有率との相関について、Hasselman-Johnsonの式に従った計算値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。

【0030】
本発明のニッケル-ダイヤモンド複合材は、ダイヤモンド粒子がニッケルマトリクスに担持されているものであり、以下の一形態で製造される。

【0031】
図1に、本発明のニッケル-ダイヤモンド複合材1を製造するためのめっき装置100の模式図を示す。

【0032】
まず、陰極板40をめっき槽10の内壁の底面に水平に敷く。陽極板50を、陰極板40と平行に対向させてクランプ(不図示)で固定する。陰極板40及び陽極板50を、電線で電源60につなげる。このとき、陰極板40と電源60とを繋ぐ電線を樹脂製の被覆材70で確りと覆う。それによってこの電線が電気めっきによって溶解することを防止する。

【0033】
スルファミン酸ニッケルとホウ酸との混合溶液に、ダイヤモンド粒子2を投入し、ダイヤモンド粒子2を含有するめっき液20を調製する。陰極板40に対向している陽極板50の面が完全に浸漬する量のめっき液20をめっき槽10に注いでめっき浴30を調製する。

【0034】
めっき浴30に撹拌棒80を入れる。撹拌棒80は、長尺の棒部と、めっき液20に浸された下端部に平板状の羽根部とを有する。棒部の基端は、モーター等の動力源(不図示)に接続されている。この動力源を動作させることにより、撹拌棒80を回転させて、めっき液20を撹拌する。それにより、ダイヤモンド粒子2をめっき液20中に分散させる。撹拌速度や撹拌時間のような撹拌条件は、めっき槽10の容量や形状、めっき液20の量、陰極板40及び陽極板50の位置によって適宜設定されるが、めっき液20中にダイヤモンド粒子2が分散される条件であれば、特に制限されない。

【0035】
撹拌棒80の回転を止める。ダイヤモンド粒子2は、化学的にも電気的にも安定であるので、ダイヤモンド粒子2同士で凝集したり、めっき液20と反応したりしない。このため撹拌棒80の回転を止めると、めっき液20に分散していたダイヤモンド粒子2は、重力に応じてゆっくりと沈降し、陰極板40上に徐々に堆積する。ダイヤモンド粒子2は、それが有する自由エネルギーを減少させる方向へと自然に進むため、陰極板40上に略均等に積み重なって堆積する。

【0036】
続いて電源60を動作させて、陰極板40と陽極板50との間に電流を通じる。このとき、陰極板40における電流密度が0.01~20A/dmの一定電流とした電流規制法で行うことが好ましい。この電流密度の範囲は、40℃条件下、陰極板40におけるニッケルの還元電位を、飽和カロメル電極を基準して示すと-0.55~-1.4Vに相当する。この電位は、めっき浴30に浸漬している陰極板40の近傍に飽和カロメル電極を配置することによって測定される。

【0037】
めっき液20が電気分解されることによって、陰極板40上に積み重ねられたダイヤモンド粒子2によって形成された空隙を埋めるように、ニッケルマトリクス3が陰極板40に電気めっきされる。それによって、ニッケルマトリクス3とダイヤモンド粒子2とが共析したニッケル-ダイヤモンド複合材1が製造される。

【0038】
なお、すべてのダイヤモンド粒子2が同径の真球であり、最密に陰極板40上に積み重ねられたと仮定した場合、立方最密又は六方最密に積み重ねられたダイヤモンド粒子2の単位空間格子当たりの占有率は、74vol%である。また体心立方に積み重ねられた場合、この占有率は68vol%である。

【0039】
このように、ニッケル-ダイヤモンド複合材1の製造方法は、めっき液20の撹拌が行われる際、撹拌速度や撹拌時間を細かく変化させる必要がないものである。そのため、撹拌を行う工程の条件設定に長時間を要しないので、低コストでニッケル-ダイヤモンド複合材1を製造できる。しかも撹拌を止めると、ダイヤモンド粒子2は陰極板40上に自然に堆積して積み重なるので、平均粒径45μm以上の大粒径であるダイヤモンド粒子2を、ニッケルマトリクス3と共析させることができる。それによって、純ニッケルよりも格段に高い熱伝導率を有するニッケル-ダイヤモンド複合材1を、簡便に製造することができる。

【0040】
めっき液20として、NiSO(硫酸ニッケル)、NiCl(塩化ニッケル)及びHBO(ホウ酸)を含むワット浴、(HNSONi(スルファミン酸ニッケル)とHBO(ホウ酸)とを含むスルファミン酸浴、NiClを主成分とするストライク浴、亜鉛を含む黒色ニッケルめっき浴、並びにクエン酸を含むクエン酸浴を挙げることができるが、特にスルファミン酸浴が好ましい。まためっき液は光沢剤やレベリング剤のような添加剤を実質的に含んでいないことが好ましい。添加剤を含まないスルファミン酸浴で電気めっきされたニッケルマトリクス3は、緻密な結晶子3a(図2参照)を有する。

【0041】
めっき槽10の材料及び形状は、電気めっきで行われる操作によって、変質や変形を生じないものであれば、特に限定されない。めっき槽10の材料として例えば、ステンレス、ガラス、及び樹脂を挙げることができる。

【0042】
陰極板40の材料は、ニッケル、銅、金、白金、銀、ステンレス、カーボンのような電気化学的に安定で、電気の良導体であることが好ましい。陰極板40の材料が、ニッケル-ダイヤモンド複合材1との密着性が良好なニッケルであると、陰極板40をニッケル-ダイヤモンド複合材1の基板として放熱器に用いることができる。また、陰極板40の材料が、ニッケル-ダイヤモンド複合材1との密着性に乏しいステンレスであると、ニッケル-ダイヤモンド複合材1をわずかな力で陰極板40から剥離することができる。陽極板50の材料は、陰極板40と同様であるが、金属単体の場合、ニッケル又はニッケルよりも貴な金属でなければならない。

【0043】
なお、陽極板50の材料がニッケルである場合、電流を通じることによって陽極板50が溶解する。溶解したニッケルは、ニッケルマトリクス3として陰極板40にめっきされる。

【0044】
また撹拌棒80は、めっき液20を撹拌でき、ダイヤモンド粒子2が陰極板40に堆積することを妨げないものであればよい。撹拌棒の他に例えば、撹拌子及び撹拌板を挙げることができる。

【0045】
上記の製造方法によって得られた本発明のニッケル-ダイヤモンド複合材1の一形態の模式断面図を図2に示す。

【0046】
ニッケル-ダイヤモンド複合材1は、ダイヤモンド粒子2とニッケルマトリクス3とを有している。ダイヤモンド粒子2は、水平な陰極板40上に積み重なっている。ニッケルマトリクス3は、電気めっきされて、ダイヤモンド粒子2に囲まれた空隙を充填している。それによってダイヤモンド粒子2は、ニッケルマトリクス3と密着しつつ、これに担持されている。

【0047】
ニッケルマトリクス3は、無数の結晶子3aからなる。結晶子3aの平均結晶子径は、最大で45nmであることが好ましい。この平均結晶子径は、シェラーの式に従って算出される。シェラーの式を数式2に示す。

【0048】
【数2】
JP2015178674A_000004t.gif

【0049】
数式2中、D:平均結晶子径、K:シェラー定数、λ:X線波長、β:最大のX線回折強度の半価幅、θ:回折角である。

【0050】
平均結晶子径が45nm以下であるニッケルマトリクス3は、これよりも大きい平均結晶子径のニッケルマトリクスに比べて、電気めっきによって生じる内部残留応力が小さく、歪みを生じない。そのためニッケルマトリクス3は、ダイヤモンド粒子2の表面に密着してこれを担持できる。またダイヤモンド粒子2とニッケルマトリクス3とが密着していることによって、これらの界面で生じる熱伝達損失を最小限に抑えることができる。さらに、内部残留応力が小さいニッケルマトリクス3は、割れやスポーリングを生じないので、高い熱伝導率を有する。

【0051】
結晶子3aの平均結晶子径が小さい場合、無数に存在する結晶粒界が、結晶子3aが有している内部残留応力を相殺しているため、ニッケルマトリクス3全体として内部残留応力を小さくすることができるものと考えられる。

【0052】
ニッケルマトリクス3はダイヤモンド粒子2の表面に直接電気めっきされないので、ニッケルマトリクス3が電気めっきされる面積は、陰極板40上に積み重ねられたダイヤモンド粒子2に囲まれた空隙の形状に応じて変化する。そのため一定電流条件の電気めっき中、陰極板40の電位が変化する。陰極板40における電流密度を最大で20A/dmとすることにより、過電圧の過度な上昇を抑制できる。それによって、めっき液20に含まれる水の電気分解によって陰極板40で気体の水素が発生することを防止し、ニッケルマトリクス3内に熱伝導を妨げる空隙であるピットやピンホールを生じさせない。

【0053】
ダイヤモンド粒子2の平均粒径が大きいほど、またそれの含有率が高いほど、ニッケル-ダイヤモンド複合材1の熱伝導率は、高くなる。そのため、ダイヤモンド粒子2は、平均粒径が45μm以上で、ニッケル-ダイヤモンド複合材1中に40vol%以上含有されていることが好ましい。ダイヤモンド粒子2の平均粒径の測定方法は、沈降法、動的散乱法、レーザー回折法、及び画像解析法を挙げることができる。また平均粒径としてモード径、メディアン径及び算術平均径を用いることができる。具体的にダイヤモンド粒子2の平均粒径として、レーザー回折式粒径分布測定装置(CILAS社製、1064型)にて測定された粒径分布に基いて算出されたモード径を用いることができる。なおこの場合粒径分布は、分散媒に純水、分散剤にリン酸ナトリウムを用いて測定されたものであることが好ましい。

【0054】
図3にダイヤモンド粒子2の電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM;日本電子株式会社製、製品名7000F)にて観察した画像を示す。同図(a)は、平均粒径45μmのダイヤモンド粒子2を、同図(b)は平均粒径195μmのダイヤモンド粒子2を夫々示している。同図(b)のダイヤモンド粒子2は、六角形8面と四角形6面とが組み合わされた多面体である切頂八面体に凡そ揃っている。

【0055】
図4に多面体形状を有するダイヤモンド粒子2を含有するニッケル-ダイヤモンド複合材1の模式断面図を示す。ダイヤモンドは、四方向に劈開し易く、八面体又は球状の晶癖を有するので、多角形を組み合わせた多面体形状を形成し易い。多面体形状を有するダイヤモンド粒子2は、安定な最密構造を形成しつつ陰極板40上に積み重なっている。このようにダイヤモンド粒子2が多面体形状を有していると、ニッケル-ダイヤモンド複合材1中、単位体積当たりにおけるダイヤモンド粒子2の充填率が、多面体形状でないダイヤモンド粒子に比較して高くなる。さらにダイヤモンド粒子2同士が面接触し易いため、ダイヤモンド粒子2間で熱伝達が生じて、ニッケル-ダイヤモンド複合材1の熱伝導率を一層高めることができる。なお、最密構造は立方最密又は六方最密のいずれの構造であってもよく、両者が混在していてもよい。

【0056】
ダイヤモンド粒子2の形状として、切頂八面体を挙げたが、略球形をなす多面体であればこれに限られない。ダイヤモンド粒子2の形状が略球形であると、最密に積み重なり易い。ダイヤモンド粒子2の形状は、図5(a)に示す三角形8面と八角形6面とを組み合わせた切頂六面体、同図(b)に示す三角形20面と十角形8面とを組み合わせた切頂十二面体、同図(c)に示す五角形12面と六角形20面とを組み合わせた切頂二十面体、同図(d)に示す三角形8面と四角形6面とを組み合わせた立方八面体、同図(e)に示す四角形12面と六角形8面と八角形6面とを組み合わせた斜方切頂立方八面体を挙げることができる。これらの多面体を構成する多角形は、正多角形であってもよい。このような多面体は、半正多面体又はアルキメデスの立体と呼ばれる。またこれらの他に、正十二面体、正二十面体を挙げることができる。

【0057】
陰極板40と陽極板50との間に電流を通じる際、及び/又はその直前に、めっき液20又は陰極板40に振動を付与してもよい。それによって、陰極板40上に堆積して積み重なるダイヤモンド粒子2を均すことができる。それにより、ダイヤモンド粒子2を陰極板40上に密に積み重ねて、ダイヤモンド粒子2の含有率を高めることができる。その結果、より高熱伝導率のニッケル-ダイヤモンド複合材1を製造することができる。振動は、例えば、めっき液20又は陰極板40に超音波振動器のような発振装置を接触させることによって付与することができる。なお振動は、めっき液20及び陰極板40の双方に付与してもよい。
【実施例】
【0058】
以下に、ニッケル-ダイヤモンド複合材を作製した実施例、比較例及び参考例を、並びに純ニッケルをめっきした別な参考例を夫々示す。
【実施例】
【0059】
なお、ニッケル-ダイヤモンド複合材中のダイヤモンド粒子の含有率を、次のように求めた。ニッケル-ダイヤモンド複合材の重量を測定した後、希硝酸でニッケルマトリクスを溶解し、残ったダイヤモンド粒子の重量を測定した。これらの測定値からニッケル-ダイヤモンド複合材に対するダイヤモンド粒子の重量比を算出し、さらにニッケル及びダイヤモンドのかさ密度に基いてダイヤモンド粒子の含有率(vol%)を算出した。なお、ニッケルのかさ密度ΡNiを8.91g/cm、ダイヤモンドのかさ密度Ρを3.51g/cmとした(公益社団法人日本化学会、「化学便覧基礎編I」、丸善株式会社、平成3年2月28日、改訂3版、p.24-26)。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
本発明を適用するニッケル-ダイヤモンド複合材を作製した。縦3.5cm、横7cm、高さ6.5cmの略直方体で天面が開口したアクリル樹脂製めっき槽の内壁の底面に、ステンレス製で、厚さ0.3mmの陰極板を敷いた。めっき槽に、1Mの(HNSONi・4HOと0.5MのHBOとからなるめっき液100mLを注ぎ入れてスルファミン酸浴を調製した。そこへ平均粒径45μmのダイヤモンド粒子(Changsha Xinye社製、製品名Micron Powder MMP)を加えて0.4953gのダイヤモンド粒子を含有したスルファミン酸浴を調製した。このめっき浴をヒーターで40℃に保った。
【実施例】
【0061】
純ニッケル製で厚さ2mmの陽極板をL字形に折り曲げ、その一部をクランプ(不図示)で挟んだ。クランプがめっき液に浸らないように、めっき液中で陽極板を陰極板に対向させて固定した。陰極板と陽極板との間隔を2.5cmとした。陰極板と電源(菊水電子工業株式会社製、製品名PMC35-3)の負極とを被覆材で被覆された電線でつなぎ、陽極板と電源の正極とを電線でつないだ。
【実施例】
【0062】
次いでめっき液中に、下端部で平板状の羽根部が出っ張った撹拌棒をめっき液に入れ、1000rpmで、5分間回転させてダイヤモンド粒子をめっき液中に十分に拡散させた後、撹拌棒の回転を止めた。それにより、拡散していたダイヤモンド粒子が重力に従ってゆっくりと沈降を始めた。
【実施例】
【0063】
ダイヤモンド粒子が沈降した後、電源を動作させて、陰極板の電流密度が0.5A/dmとなるように、陰極板と陽極板との間に電流を15時間通じた。このときの電位は、飽和カロメル電極基準で最大-1Vであった。それにより、陰極板上に積み重なったダイヤモンド粒子と、それの空隙を充填しているニッケルマトリクスとが共析した。これを、めっき槽から取り出した陰極板から剥がして、ダイヤモンド粒子の平均粒径45μm、含有率44vol%である実施例1のニッケル-ダイヤモンド複合材を作製した。このニッケル-ダイヤモンド複合材の厚さは、160μmであった。
【実施例】
【0064】
(実施例2)
平均粒径195μmのダイヤモンド粒子を、実施例1で調製したスルファミン酸浴に加えて2.1464gのダイヤモンド粒子を含有したスルファミン酸浴を調製したこと、電流を65時間通じたこと、陽極板に硫黄含有ニッケル板を用いたこと、及び陰極板に純銅板を用いたこと以外は、実施例1と同様に操作した。それによりダイヤモンド粒子を36vol%含有する実施例2のニッケル-ダイヤモンド複合材を作製した。このニッケル-ダイヤモンド複合材の厚さは、450μmであった。
【実施例】
【0065】
(比較例1)
本発明を適用外のニッケル-ダイヤモンド複合材を作製した。平均粒径10μmのダイヤモンド粒子を、実施例1で調製したスルファミン酸浴に加えて0.1101gのダイヤモンド粒子を含有したスルファミン酸浴を調製したこと、及び電流を3時間20分通じたこと以外は、実施例と同様に操作した。それによりダイヤモンド粒子を31vol%含有する比較例1のニッケル-ダイヤモンド複合材を作製した。このニッケル-ダイヤモンド複合材の厚さは、41μmであった。
【実施例】
【0066】
(比較例2)
1MのNiSO・6HO、0.2MのNiCl・6HO、及び0.5MのHBOからなる無光沢ワット浴を調製した。これに平均粒径10μmのダイヤモンド粒子を加えて、0.1101gのダイヤモンド粒子を含有するワット浴を調製したこと以外は、比較例1と同様に操作した。それによりダイヤモンド粒子を34vol%含有する比較例2のニッケル-ダイヤモンド複合材を作製した。このニッケル-ダイヤモンド複合材の厚さは、41μmであった。
【実施例】
【0067】
(参考例1)
平均粒径45μmのダイヤモンド粒子を、比較例1で調製したワット浴に加えて、0.4953gのダイヤモンド粒子を含有するワット浴を調製したこと以外は、実施例1と同様に操作した。それによりダイヤモンド粒子を49vol%含有する参考例1のニッケル-ダイヤモンド複合材を作製した。このニッケル-ダイヤモンド複合材の厚さは、170μmであった。
【実施例】
【0068】
(参考例2)
平均粒径195μmのダイヤモンド粒子を、比較例1で調製したワット浴に加えて、2.1464gのダイヤモンド粒子を含有するワット浴を調製したこと以外は、実施例2と同様に操作した。それによりダイヤモンド粒子を30vol%含有する参考例2のニッケル-ダイヤモンド複合材を作製した。このニッケル-ダイヤモンド複合材の厚さは、450μmであった。
【実施例】
【0069】
(参考例3)
実施例1で調製したスルファミン酸浴にダイヤモンド粒子を投入せず、電流を通じてニッケルマトリクスのみを陰極板に析出させた。実施例1と異なる点は、ダイヤモンド粒子を含んでいない点のみである。参考例3のニッケルマトリクスの厚さは、64μmであった。
【実施例】
【0070】
(熱伝導率の測定)
JIS R 1611に記載されたフラッシュ法に準拠し、基線フラッシュ熱特性評価装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、製品名LFA 447 Nanoflash)を用いて、陰極板から剥離したニッケル-ダイヤモンド複合材の熱拡散率を測定した。ニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率を、λ=α×c×ρに従って求めた。但し、λ:ニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率(W/mK)、α:ニッケル-ダイヤモンド複合材の熱拡散率(m/s)、c:ニッケル-ダイヤモンド複合材の比熱容量(J/kg・K)、ρ:ニッケル-ダイヤモンド複合材のかさ密度(kg/m)である。なお、ニッケル-ダイヤモンド複合材の比熱容量cは、ニッケルの比熱容量CNiを0.44kJ/kg・K、ダイヤモンドの比熱容量Cを0.53kJ/kg・Kとし(公益社団法人日本化学会、「化学便覧基礎編II」、丸善株式会社、平成3年2月28日、改訂3版、p.239)、数式3に従って算出された値であり、ニッケル-ダイヤモンド複合材のかさ密度ρは、数式4に従って算出された値である。数式2及び3中、VNiはニッケル-ダイヤモンド複合材におけるニッケルの体積分率であり、Vはニッケル-ダイヤモンド複合材におけるダイヤモンドの体積分率である。
【実施例】
【0071】
【数3】
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【実施例】
【0072】
【数4】
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【実施例】
【0073】
実施例、比較例及び参考例について、めっき浴、ダイヤモンド粒子の平均粒径、ダイヤモンド粒子の含有率及び熱伝導率の測定値を表1に示す。ダイヤモンド粒子の平均粒径が同一で、かつそれの含有率が同程度である場合、ワット浴よりもスルファミン酸浴を用いて作製されたニッケル-ダイヤモンド複合材の方が、高い熱伝導率を示した。
【実施例】
【0074】
【表1】
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【実施例】
【0075】
数式1に従って算出された熱伝導率の計算値、及び熱伝導率の測定値をプロットしたグラフを図6に示す。横軸はニッケル-ダイヤモンド複合材中のダイヤモンド含有率(vol%)を表し、縦軸はニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率(W/mK)を表している。同図中、右上がりの一点鎖線、破線、及び実線は、夫々平均粒径10μm、45μm及び195μmのダイヤモンド粒子を含有するニッケル-ダイヤモンド複合材が有する熱伝導率の計算値である。また、丸、四角及び三角の点は、夫々実施例、比較例及び参考例の熱伝導率の測定値を示している。
【実施例】
【0076】
表1及び図6から分かるように、実施例のニッケル-ダイヤモンド複合材は、純ニッケルである参考例3に比べて2倍以上という高い熱伝導率を有している。なかでも実施例2のニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率は、数式1に従った195μmダイヤモンド粒子の計算値を上回る値を示した。数式1によって算出された計算値の通り、ダイヤモンド粒子の平均粒径が大きいほど、またダイヤモンド粒子の含有率が高いほど、ニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率が向上した。
【実施例】
【0077】
さらにスルファミン酸浴を用いて作製された実施例のニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率は、ワット浴を用いた参考例よりも高い熱伝導率を有するものであった。このことは、ニッケルマトリクスの平均結晶子径が45nm以下であると、ニッケル-ダイヤモンド複合材の熱伝導率が向上することを示している。なお、参考例1のニッケル-ダイヤモンド複合材は、比較例1及び2よりも大きい平均粒径のダイヤモンド粒子を含有しているので、比較例よりも高い熱伝導率を有している。参考例1の熱伝導率は、計算値の凡そ80%である。
【実施例】
【0078】
(ニッケルマトリクスの平均結晶子径)
X線回折装置(株式会社島津製作所製、製品名XRD-6000)を用い、X線波長λ:1.54056nm、管電圧:30kV、管電流:20mA、走査範囲(2θ):20~100deg、サンプリング間隔:0.02deg、走査速度:4deg/分、発散スリット・散乱スリット:1.00deg、受光スリット:0.3mmとしてニッケル-ダイヤモンド複合材のX線回折パターンを得た。得られたX線回折パターンから最大のX線回折強度の回折角θ及びその半価幅β、並びに上記のX線波長λ基き、数式2に従って、ニッケルマトリクスの平均結晶子径を算出した。このとき数式2中、シェラー定数をK=0.9とした。
【実施例】
【0079】
表2に、実施例1、比較例1及び参考例1の回折角θ、半価幅β、平均結晶子径を示す。実施例1及び比較例1の平均結晶子径は45nm以下である。一方、参考例1の平均結晶子径は、45nmを大きく上回っている。
【実施例】
【0080】
【表2】
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【実施例】
【0081】
図7に実施例1及び参考例1のニッケル-ダイヤモンド複合材の外観写真を示す。同図(a)は実施例1の写真であり、同図(b)は参考例1の写真である。同図から明らかな通り、実施例1のニッケル-ダイヤモンド複合材は、ほとんど反っていないのに対し、参考例1のニッケル-ダイヤモンド複合材は、四隅で反っている。これは、ワット浴で作製された参考例1のニッケル-ダイヤモンド複合材中のニッケルマトリクスは、大きな平均結晶子径を有しているため、内部残留応力が大きいことを示している。
【実施例】
【0082】
以上より、スルファミン酸ニッケルを含有するめっき液を用いて作製することによって、ニッケルマトリクスの平均結晶子径を小さくでき、内部残留応力を抑制できる。ニッケルマトリクスの内部残留応力を抑制することによって、より高い熱伝導率を有するニッケル-ダイヤモンド複合材を得ることができる。
【実施例】
【0083】
(ニッケル-ダイヤモンド複合材の観察)
電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM;日本電子株式会社製、製品名7000F)を用いてダイヤモンド粒子及びニッケル-ダイヤモンド複合材の表面及び断面の画像を得た。
【実施例】
【0084】
図8(a)に実施例1、同図(b)に参考例2のニッケル-ダイヤモンド複合材の表面FE-SEM画像を夫々示す。ダイヤモンド粒子は、ニッケル-ダイヤモンド複合材中で密に積み重なっている。同図(b)に示すように多面体形状を有しているダイヤモンド粒子は、最密構造を形成しつつ積み重なっている。図9は、実施例1のニッケル-ダイヤモンド複合材の断面FE-SEM画像である。下側のダイヤモンド粒子と上側のニッケルマトリクスとの間は、隙間なく密着している。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のニッケル-ダイヤモンド複合材は、ヒートシンク、ヒートスプレッダのような放熱器の放熱材に用いられる。
【符号の説明】
【0086】
1はニッケル-ダイヤモンド複合材、2はダイヤモンド粒子、3はニッケルマトリクス、3aは結晶子、10はめっき槽、20はめっき液、30はめっき浴、40は陰極板、50は陽極板、60は電源、70は被覆材、80は撹拌棒、100はめっき装置である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図10】
5
【図3】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
9