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明細書 :光分解性組成物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-147947 (P2016-147947A)
公開日 平成28年8月18日(2016.8.18)
発明の名称または考案の名称 光分解性組成物
国際特許分類 C08L  71/02        (2006.01)
A61K  47/34        (2006.01)
A61K  47/40        (2006.01)
C08G  65/333       (2006.01)
C08L   5/16        (2006.01)
C08K   5/07        (2006.01)
C08J   3/28        (2006.01)
FI C08L 71/02
A61K 47/34
A61K 47/40
C08G 65/333
C08L 5/16
C08K 5/07
C08J 3/28 CEP
C08J 3/28 CEZ
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 10
出願番号 特願2015-024925 (P2015-024925)
出願日 平成27年2月12日(2015.2.12)
発明者または考案者 【氏名】荒木 潤
【氏名】本多 勇太
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
審査請求 未請求
テーマコード 4C076
4F070
4J002
4J005
Fターム 4C076AA53
4C076AA58
4C076AA61
4C076AA64
4C076AA95
4C076EE23H
4C076EE39H
4C076FF27
4C076FF68
4F070AA01
4F070AA52
4F070AB05
4F070AB11
4F070HA02
4F070HB14
4J002AB05X
4J002CH05W
4J002EE056
4J005AA04
4J005BD00
4J005BD05
要約 【課題】 ポリロタキサンを用いた光分解性組成物を提供する。
【解決手段】 環状分子と、環状分子の中空部を貫通する主鎖と、主鎖の両末端に配置され前記環状分子が前記主鎖から脱離することを防止する末端基とからなるポリロタキサンを含む光分解性組成物であって、前記末端基が光分解性基からなり、光照射により前記末端基のみが前記主鎖から分離し、ポリロタキサンを構成する前記環状分子と、主鎖と、末端基とに分解されることを特徴とする光分解性組成物
【選択図】 図7
特許請求の範囲 【請求項1】
環状分子と、環状分子の中空部を貫通する主鎖と、主鎖の両末端に配置され前記環状分子が前記主鎖から脱離することを防止する末端基とからなるポリロタキサンを含む光分解性組成物であって、
前記末端基が光分解性基からなり、光照射により前記末端基のみが前記主鎖から分離し、ポリロタキサンを構成する前記環状分子と、主鎖と、末端基とに分解されることを特徴とする光分解性組成物。
【請求項2】
前記ポリロタキサンは、前記環状分子に側鎖が結合されてなり、
光照射により、前記光分解性基のみが前記主鎖から分離し、側鎖が結合した環状分子と、主鎖と、末端基とに分解されることを特徴とする請求項1記載の光分解性組成物。
【請求項3】
前記末端基が、Ddz基(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシ-ベンジルカルボニル基)であることを特徴とする請求項1または2記載の光分解性組成物。
【請求項4】
前記主鎖がポリエチレングリコールからなり、前記環状分子がシクロデキストリンであることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載の光分解性組成物。
【請求項5】
UV光による光照射により、前記末端基のみが前記主鎖から分離することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の光分解性組成物。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は光分解性組成物に関し、より詳細にはポリロタキサンを含有する光分解性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一分子内に幾何学的拘束構造を有する超分子材料、中でもポリロタキサンは、共有結合を介して結合形成された従来の分子とは異なり、複数の構成要素が分子内で回転やスライドといった運動の自由度を有しながら全体として一つの分子として振る舞う。このため、従来の分子には見られない特有の化学的及び力学的物性を示すことが知られ、数々の材料化学分野への応用が進められている(非特許文献1、2)。
【0003】
ポリロタキサンは主鎖と環状分子と末端基とからなり、主鎖に多数個の環状分子を通し(糸にビーズを通した形態)、主鎖の両端に環状分子を抜け止めする末端基を結合した構成を備える。したがって、主鎖と末端基との結合を切断すると、ポリロタキサンは、主鎖、環状分子、末端基それぞれの単体に分離される。ポリロタキサンから主鎖、環状分子、末端基を分離した状態は、ポリロタキサンとは化学的な特性が異なるから、ポリロタキサンから末端基を分離する操作を利用することにより、新規な用途開発を行うことができる。
【0004】
ポリロタキサンの末端基を外す従来方法には、芯物質(主鎖)の末端のかさ高い置換基をアルカリ処理することにより、芯物質からシクロデキストリンポリマーを分離する方法がある(特許文献1)。また、生分解(加水分解)可能な結合により末端基を主鎖に結合し、環状分子に薬物を担持したポリロタキサンを生体内で分解することにより薬剤を放出する方法が提案されている(特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平7-48451号公報
【特許文献2】特開平9-263547号公報
【特許文献3】特開2005-143920号公報
【0006】

【非特許文献1】木戸脇匡俊、片岡利介、伊藤耕三、Drug Delivery System, 2006, 21,592-598.
【非特許文献2】眞弓皓一、伊藤耕三、物性研究、2010, 93, 546-550.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリロタキサンの末端基を主鎖から分離する従来方法は、化学的な処理によることから、処理操作が複雑になること、化学物質を使うため生体内等に使用する場合に適用範囲が限定される等の問題があった。また、レジスト材として使う場合のように、材料の特定の個所のみについて材料特性を変えるといった使い方ができないという問題があった。
本発明はポリロタキサンを新たな用途として利用することを目的としてなされたものであり、ポリロタキサンを用いた光分解性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る光分解性組成物は、環状分子と、環状分子の中空部を貫通する主鎖と、主鎖の両末端に配置され前記環状分子が前記主鎖から脱離することを防止する末端基とからなるポリロタキサンを含む光分解性組成物であって、前記末端基が光分解性基からなり、光照射により前記末端基のみが前記主鎖から分離し、ポリロタキサンを構成する前記環状分子と、主鎖と、末端基とに分解されることを特徴とする。
【0009】
ポリロタキサンは、環状分子の中空部を主鎖が貫通する構成を有することから、主鎖に支持された環状分子は主鎖の軸方向に自由に移動可能であり、主鎖を軸として自由に回転可能である。ポリロタキサンを構成する主鎖の長さが限定されるものではなく、主鎖が貫通する環状分子の数も限定されるものではない。
【0010】
ポリロタキサンを構成する末端基は、主鎖の両末端に結合されているもので、環状分子が主鎖から脱離する(抜ける)ことを防止する作用を有する。このため、末端基には環状分子を抜け止めできる大きさのもの(かさ高いもの)が用いられる。
本発明に係る光分解性組成物は、末端基が光照射により分解される光分解性基からなり、ポリロタキサンに光照射することにより、末端基のみが選択的に主鎖から分離する。末端基が主鎖から分離されることにより、環状分子が主鎖から脱離し、ポリロタキサンを構成していた環状分子、主鎖、末端基にそれぞれ分離する。
【0011】
このように、光照射により、主鎖に環状分子と末端基とが支持されていたポリロタキサン構造から、ポリロタキサンを構成する構成物に分離される構造変化は、きわめて大きな構造的な変化であり、これにともなって、光分解組成物の化学的特性を大きく変化させることができる。
光分解組成物の特性の変化としては、たとえば、光分解性組成物の化学的なエッチングに対する耐性を光照射によって変化させたり、光分解組成物の柔軟性・硬度を光照射によって変化させたり、光分解組成物の光学特性を光照射によって変化させたりすることが考えられる。ポリロタキサン構造から単体の構成物に分離する作用は、きわめて大きな構造変化であることから、従来の光照射による特性変化ではなし得ない特性変化をもたらすことが可能である。
【0012】
また、本発明に係る光分解組成物は化学物質を使用せずに光照射によって分解でき、反応副生成物が少ないことから、生体に使用するといったように適用範囲を広げることができる。たとえば、生体用の薬品として使用する場合、化学分解のための薬品が注入できない部位であっても、光を到達させることにより分解して当該部位で薬効を発揮させるといった利用が考えられる。
【0013】
光分解性組成物に含まれるポリロタキサンの主鎖には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、セルロース系樹脂、ポリアクリル アミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん等及び/またはこれらの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びその他オレフィン系単量体との共重合樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等、及びこれらの誘導体又は変性体、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアニリン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ナイロンなどのポリアミド類、ポリイミド類、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのポリジエン類、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン類、ポリスルホン類、ポリイミン類、ポリ無水酢酸類、ポリ尿素類、ポリスルフィド類、ポリフォスファゼン類、ポリケトン類、ポリフェニレン類、ポリハロオレフィン類から選択して使用することができる。
【0014】
また、ポリロタキサンを構成する環状分子には、シクロデキストリン分子(α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリン)、環状エーテル類(クラウンエーテルおよびアザクラウンエーテル)、ククビットウリル類、カリックスアレーン類、ピラーレン類から選択して使用することができる。
【0015】
また、環状分子は、環状分子単体で用いることもできるし、環状分子に側鎖を結合した状態で用いることもできる。環状分子に側鎖を結合した場合も、光分解性組成物は光照射により、末端基のみが選択的に主鎖から分離し、環状分子は側鎖が結合したままの状態で分離・保持される。
側鎖が結合した環状分子は、溶媒等に対する溶解特性に大きく寄与するから、環状分子に結合する側鎖を選択することにより、光照射によりポリロタキサン構想から個別の環状分子に分離した際の溶解特性を適宜制御することが可能である。
環状分子に結合する側鎖には、線状あるいは分岐状高分子が用いられ、たとえば、主鎖高分子と同様に、ポリアルキル類、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリオール類、ポリエーテル類、ポリシロキサン類、多糖類、DNA、タンパク質およびポリペプチド、長鎖脂肪酸などが使用できる。
【0016】
本発明に係る光分解性組成物に用いられる末端基は、環状分子を主鎖から脱離することを防止するとともに、光分解性基である必要がある。環状分子の脱離防止と光分解性を備える末端基としては、たとえば、Ddz基(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシ-ベンジルカルボニル基)が好適に使用できる。
また、光分解性組成物は、高圧水銀灯等のUV光を照射することにより、効果的に末端基を主鎖から分離することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る光分解性組成物は、光照射により、光分解性組成物に含まれるポリロタキサンの末端基が選択的に主鎖から分離され、ポリロタキサン構造が大きく変化する特性を備えることから、光照射による特性変化を利用する光分解性組成物として種々用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】PEG3400-BAの1H NMRスペクトルである。
【図2】PEG3400-Ddzの1H NMRスペクトルである。
【図3】PEG3400-DdzのGPCクロマトグラムである。
【図4】PR3400-Ddzの1H NMRスペクトルである。
【図5】PR3400-DdzのGPCクロマトグラムである。
【図6】PEG3400-Ddzに光照射したときのGPCクロマトグラムである。
【図7】PR3400-Ddzに光照射したときのGPCクロマトグラムである。
【図8】PEG-DATとα-CDとの混合溶液(a)、PEG-Bocとα-CDとの混合溶液(b)、PEG-Ddzとα-CDとの混合溶液(c)の、混合して10分後、24時間後の混合状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る光分解性組成物は、光分解性を備える化学材料としてポリロタキサンを含む。ポリロタキサンは、直鎖状の分子(主鎖)が環状分子の中空部を貫通し、主鎖の末端に、環状分子が主鎖から脱離しないように封鎖する末端基が設けられた構成を備える。直鎖状の分子(主鎖)には、ポリエチレングリコール(PEG)、アルキル鎖、アミド、アンモニウムなどが用いられ、環状分子には、シクロデキストリン、クラウンエーテル、シクロファン、カリックスアレーン、ククルビットウリル、環状アミド等が用いられる。
以下では、光分解性組成物を構成するポリロタキサンの調製例と、ポリロタキサンの光分解特性について説明する。

【0020】
(PR3400-Ddzの調製)
ポリロタキサンの調製例として、ポリエチレングリコール(PEG)を主鎖とし、α-CD(シクロデキストリン)を環状分子とし、末端基をDdz(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシ-ベンジルカルボニル基)としてポリロタキサンを調製した例について説明する。
本実施形態では、ポリロタキサンを調製するため、まず、PEG3400-BAを調製し、PEG3400-BAを用いてPEG3400-Ddz(PEGの末端基がDdz)と、PR3400-Ddz(末端基がDdzのポリロタキサン)を調製した。

【0021】
PEG3400-BAの調製:
ポリロタキサンを調製する第1段階として、分子量3400のポリエチレングリコールの両末端にBA(ビスアミン)を結合したPEG3400-BAを調製した。具体的な調製例を以下に示す。
まず、PEG3400(5.00g,1.50mmol)を80℃、4時間で減圧下において乾燥し、回収した PEG3400をジクロロメタン(15mL)に溶解し、塩化トシル(9.00g,47.3mmol)及びピリジン(5mL)を加え、Ar雰囲気下で一晩撹拌した。
次いで、混合液を冷ジエチルエーテル中で再析出し、ろ過により回収後、エタノールに溶かし、再結晶を行った。その後、ろ過、真空乾燥を行い回収した(PEG3400-tosylate,5.08 g)。

【0022】
PEG3400-tosylate(4.60g)をジメチルホルムアミド(50mL)に溶解し、フタルイミドカリウム(3.50g,1.88mmol)を加え、Ar雰囲気下で5時間還流した。混合液をろ過後、ろ液を冷ジエチルエーテル中で再析出し、沈殿物をジクロロメタン(70mL)に加えた。この混合物をろ過後、ろ液を冷ジエチルエーテル中で再析出し、ろ過後、真空乾燥により沈殿物を回収した(PEG3400-phthalimide,3.14g)。

【0023】
次いで、PEG3400-phthalimide(3.00 g)をエタノール(50mL)に溶解し、ヒドラジン一水和物(3.0mL)を加え、20時間還流した。混合液を冷ジエチルエーテル中で再析出し、ろ過後、沈殿物をジクロロメタンへ再溶解した。不純物をろ過後、ろ液を冷ジエチルエーテル中で再析出し、ろ過後、真空乾燥により沈殿物を回収した(PEG3400-BA,1.496g)。
得られたPEG3400-BA(0.500g)をイオン交換水(50mL)に溶解し、0.1%メチルオレンジ溶液を数滴加えた後、0.05M塩酸を用いて滴定を行った。また、1H NMR測定によりキャラクタリゼーションを行った。

【0024】
PEG3400-BAのアミノ基の塩酸に対する滴定より0.500g中のアミノ基量を0.249mmolと算出した。PEG3400-BA 0.500g中のアミノ基の理論値が0.294mmolであることから置換度を 84.7% と算出した。
図1に得られたPEG3400-BAの1H NMRスペクトルを示す。図1から、PEG由来のシグナル(3.24-3.69ppm)と、アミノ基由来のシグナル(2.75ppm)を観察した。この2つのシグナルの積分面積比より置換度72.9% と算出した。

【0025】
PEG3400-Ddzの調製:
PEG3400-BAを用いて、PEGの末端基をDdz基(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシ-ベンジルカルボニル基)としたPEG3400-Ddzを下記の方法により調製した。
Ddz-アジド(30mmol,795mg)及びPEG3400-bisamine(PEG3400-BA,0.29mmol,1.00g)をDMF(ジメチルホルムアミド)10mLに溶解後、TEA(30mmol,4.18mL)を加え、Ar雰囲気下において24時間撹拌し、氷浴中でジエチルエーテル100mLを用いて再析出した。
得られた沈殿物を遠心分離し、真空乾燥後、白色固体(収量0.847g)からなるPEG3400-Ddzを得た。1H NMR測定およびGPCによりキャラクタリゼーションを行った。

【0026】
図2に、得られたPEG3400-Ddzの1H NMRスペクトルを示す。図2からDdz基の芳香族由来のシグナルを観察した。
図3は、GPCクロマトグラムである。図3から、10.8min付近でPEG3400-Ddz由来のUV吸収を観察した。

【0027】
PR3400-Ddzの調製:
PEG3400-BAを用いて、α-CDを環状分子とし、末端基をDdz基(α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシ-ベンジルカルボニル基)としたポリロタキサンPR3400-Ddzを下記の方法により調製した。
PEG3400-BA(1.0g,0.028mmol)及びα-CD(シクロデキストリン)4.0gをそれぞれイオン交換水16.7mLに溶解し、2つの溶液を混合した後、冷蔵庫で一晩静置した。
得られた白色沈殿を凍結乾燥してDMF10mLに懸濁し、Ddz-アジド(794 mg,30mmol)及びTEA(30mmol,4.18mL)を加え、Ar 雰囲気下で24時間撹拌した。
次いで、DMF:メタノール (1:1) 混合溶液で2回、イオン交換水で2回遠心分離し、得られた沈殿を凍結乾燥により回収した(0.65g)。回収物をDMSO20 mlに溶解後、水300mL中において再析出し、その沈殿を遠心分離し、凍結乾燥により白色固体のPR3400-Ddz(0.083g)を得た。

【0028】
図4は、得られたPR3400-Ddzの1H NMRスペクトルである。図4から、PEG、α-CD及びDdz基の芳香族由来のシグナルを観察した。
図5は、GPC測定結果を示す。図5から9.8min付近にPR3400-Ddz由来のUV吸収を観察した。

【0029】
(光による分解作用)
上述した方法により調製したPEG3400-DdzとPR3400-Ddzについて、高圧水銀灯の光照射による分解作用について実験した。
PEG3400-Ddzについては、PEG3400-Ddz(50mg)を脱イオン水30mLに溶解し、光照射前と、光照射時間ごと(1h、2h、3h)、それぞれ1 mLずつ量り取り、GPCによりキャラクタリゼーションして光による分解作用を調べた。
図6にGPCのプロファイルを示す。図6(a)は光照射前、図6(b)は光照射時間1h、図6(c)は光照射時間2h、図6(d)は光照射時間3hのときの測定結果を示す。
図6から、10.9min付近のUV吸収(PEG-Ddz由来:分子量3400)が照射時間の増加とともに減少し、12.2min付近にDdz基由来(分子量200弱)のUV吸収を検出した。この実験結果は、時間経過とともに、PEGに結合したDdz基が分解にともなって切断され、PEGから切断されたDdz基が次第に増加したことを示す。光照射後も高分子量画分が検出されていることから、部分的にDdz基の脱保護に成功したと考えられる。

【0030】
PR3400-Ddz(15mg)を0.5M NaOH水溶液10mLに溶解し、高圧水銀灯を用いて1h光照射した。光照射後の溶液1mLを1M塩酸を用いて中和し、GPCによりキャラクタリゼーションして光による分解作用を調べた。
図7にGPCのプロファイルを示す。図7(a)は光照射前のGPCプロファイル、図7(b)は1h光照射した後のGPCプロファイルである。
図7から、高圧水銀灯の1h照射により、9.9min付近の高分子量画分(PR-Ddz由来:分子量18000~20000)が消失し、11.7min付近の低分子量画分(α-CD由来)が増大したことがわかる。この実験結果は、Ddz基のウレタン結合が光照射により分解したことによってロタキサン構造を保てなくなり、高分子量画分が消失したことを示すと考えられる。

【0031】
PR-Ddzが光照射によって分解される作用は、前述したPEGからのDdz基切断と異なり、たとえポリロタキサン1分子内の片側のDdz基が切れた場合でも、包摂されていた環状分子(CD)がすべて放出されるから、そのポリロタキサン分子は存在し得なくなる。したがって、PEG-DdzのUV吸収(10.9min)が消失するためにはすべてのDdz基が切断される必要があるのに対し、PR3400-DdzのUV吸収(9.9min)を消失させるには、すべてのDdz基が切断される必要はなく、最も早ければ、全PR3400-Ddz分子の片側のDdz基が切断された時点ですべてのポリロタキサンが崩壊し、PEGとCDと切れたDdzに解体されることになる。

【0032】
上述したPR3400-Ddzの光による分解実験は、光照射によりPR3400-Ddzの末端基が主鎖から分離されることを示している。
この光による刺激によって末端基を分離する作用は、PR3400-Ddzに限らず、分子量が異なるPEG(分子量2000)を用いて構成したPR2000-Ddz等についても同様に作用し、主鎖の分子量によって限定されるものではない。
また、光分解は主鎖に結合した末端基に作用して、末端基を主鎖から分離する作用をなすものであるから、Ddzと同様な光による分解作用を有する末端基を備えるポリロタキサンについては同様に作用する。

【0033】
(ポリロタキサンの末端基の作用)
上記実施形態においては、Ddz基をポリロタキサンの末端基として使用した。Ddz基がポリロタキサンの末端基として使用できることについては、ポリエチレングリコール(PEG)を主鎖として両端にDAT基(エチレンジアミン)を結合したもの、PEGの両端にBoc基(t-ブトキシカルボニル基)を結合したもの、PEGの両端にDdz基を結合したものの水溶液とα-CD(シクロデキストリン)の水溶液とを混合し、混合状態を観察することによって実験することができる。
混合した状態で、末端基がα-CDの中空部を貫通しないと包接錯体が形成されず、混合溶液には沈殿が生じないのに対し、末端基がα-CDの中空部を貫通すると包接錯体が形成され、沈殿が生じる。

【0034】
図8は、混合してから10分後と24時間後の混合溶液の状態を示す写真である。図8(a)は、PEG-DATとα-CDとの混合溶液、図8(b)はPEG-Bocとα-CDとの混合溶液、図8(c)は、PEG-Ddzとα-CDとの混合溶液である。
PEG-DATとα-CDとの混合溶液(図8(a))では、10分後、24時間後とも沈殿が生じており、DATはポリロタキサンの末端基としては使えないことを示す。
PEG-Bocとα-CDとの混合溶液(図8(b))では、10分後では沈殿が生じていないが、24時間後では沈殿が生じている。Boc基はα-CDの中空部の内径よりも小さく、抜け止め用の末端基としては使えないことがわかる。
PEG-Ddzとα-CDとの混合溶液(図8(c))では、10分後も24時間後もまったく沈殿が生じていない。すなわち、Ddz基はα-CDの中空部の内径よりも十分にかさ高く、抜け止め用の末端基として使えることを示している。



図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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