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明細書 :アクチュエータ素子及びアクチュエータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-122935 (P2015-122935A)
公開日 平成27年7月2日(2015.7.2)
発明の名称または考案の名称 アクチュエータ素子及びアクチュエータ
国際特許分類 H02N  11/00        (2006.01)
FI H02N 11/00 Z
請求項の数または発明の数 14
出願形態 OL
全頁数 15
出願番号 特願2014-106300 (P2014-106300)
出願日 平成26年5月22日(2014.5.22)
優先権出願番号 2013238436
優先日 平成25年11月19日(2013.11.19)
優先権主張国 日本国(JP)
発明者または考案者 【氏名】橋本 稔
【氏名】所 宏美
出願人 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001726、【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
審査請求 未請求
要約 【課題】印加電圧を低減させかつ回復応力を増大させることを可能にするアクチュエータ素子を提供する。
【解決手段】アクチュエータ素子5は、誘電体層10と、誘電体層10を厚さ方向に挟んで配される一対の電極12、14とを備え、誘電体層10が、電極12、14間に電圧を印加した際にクリープ変形するゲル状誘電体からなり、少なくとも一対の電極12、14のうちの陽極12に接する側の表面が、前記クリープ変形を吸収する凹凸面に形成された誘電体層であり、電極12、14間に電圧を印加した際には厚さ方向に収縮し、電圧の印加を解除した際には元の厚さに復帰する作用をなす。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
誘電体層と、該誘電体層を厚さ方向に挟んで配される一対の電極とを備え、
前記誘電体層が、前記電極間に電圧を印加した際にクリープ変形するゲル状誘電体からなり、少なくとも前記一対の電極のうちの陽極に接する側の表面が、前記クリープ変形を吸収する凹凸面に形成された誘電体層であり、
前記電極間に電圧を印加した際には厚さ方向に収縮し、電圧の印加を解除した際には元の厚さに復帰することを特徴とするアクチュエータ素子。
【請求項2】
前記誘電体層が、3次元のネット構造体をなすことを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ素子。
【請求項3】
前記誘電体層がエレクトロスピニングによりネット構造体に形成されていることを特徴とする請求項2記載のアクチュエータ素子。
【請求項4】
前記誘電体層と電極とが厚さ方向に交互に積層されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載のアクチュエータ素子。
【請求項5】
前記一対の電極が、ともに箔状の電極からなることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載のアクチュエータ素子。
【請求項6】
前記一対の電極のうち、前記陽極がメッシュ状の電極からなることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載のアクチュエータ素子。
【請求項7】
前記誘電体層が、ポリ塩化ビニルからなることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載のアクチュエータ素子。
【請求項8】
誘電体層および、該誘電体層を厚さ方向に挟んで配される一対の電極を備え、前記誘電体層が、前記電極間に電圧を印加した際にクリープ変形するゲル状誘電体からなり、少なくとも前記一対の電極のうちの陽極に接する側の表面が、前記クリープ変形を吸収する凹凸面に形成された誘電体層であるアクチュエータ素子と、
前記電極間に、電圧をON-OFF制御して印加する電圧印加手段とを備え、
前記電極間に電圧を印加した際には厚さ方向に収縮し、電圧の印加を解除した際には元の厚さに復帰することを特徴とするアクチュエータ。
【請求項9】
前記誘電体層が、3次元のネット構造体をなすアクチュエータ素子を備えることを特徴とする請求項8記載のアクチュエータ。
【請求項10】
前記誘電体層がエレクトロスピニングによりネット構造体に形成されているアクチュエータ素子を備えることを特徴とする請求項9記載のアクチュエータ。
【請求項11】
前記誘電体層と電極とが厚さ方向に交互に積層されているアクチュエータ素子を備えることを特徴とする請求項8~10いずれか一項記載のアクチュエータ。
【請求項12】
前記一対の電極が、ともに箔状の電極からなるアクチュエータ素子を備えることを特徴とする請求項8~11いずれか一項記載のアクチュエータ。
【請求項13】
前記一対の電極のうち、前記陽極がメッシュ状の電極からなるアクチュエータ素子を備えることを特徴とする請求項8~11いずれか一項記載のアクチュエータ。
【請求項14】
前記誘電体層が、ポリ塩化ビニルからなるアクチュエータ素子を備えることを特徴とする請求項8~13いずれか一項記載のアクチュエータ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体層に、陽極に接する側の表面が凹凸面に形成された誘電体層を使用したアクチュエータ素子及びこれを用いたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高分子材料を用いた次世代型アクチュエータが注目されている。たとえば、伸縮率と発生力に優れるが応答性が低い導電性高分子、発生力と応答性に優れるが高い印加電圧が必要とされる誘電性エラストマ等である。これらと比較して、本願の発明者により開発されたPVCゲルアクチュエータは、柔軟で伸縮性に富み、大気中での収縮駆動が可能であり(非特許文献1)、PVCゲルの薄膜化によって、印加電圧100Vで収縮率25%、回復応力24.4kPa/cmという優れた特性を備えている(非特許文献2)。
【0003】
PVCゲルは、ポリ塩化ビニル(PVC)と可塑剤であるアジピン酸ジブチル(DBA)を、溶媒テトラヒドロフラン(THF)中で混合し、その混合液をシャーレにキャストして得ることができる。図15に示すように、PVCゲルは電圧印加により陽極近傍でクリープ変形を生じる。PVCゲルアクチュエータはこの特性を利用して、ゲルをメッシュ状の陽極と箔状の陰極とで挟んだ構造とすることによって構成される。
【0004】
図16は、ゲルアクチュエータの最も基本となる構造で、メッシュ状の電極(陽極)をゲルシートにより挟み、双方のゲルシートの外面に箔状の電極(陰極)を設けたものである。このゲルアクチュエータは、陽極と陰極との間に電圧を印加すると、ゲルがメッシュの空間内に引き込まれ、全体として厚さ方向に収縮し、電圧印加を除去するとゲル自体の弾性によって元の状態(元の厚さ)に戻るように作用する。図16に示すアクチュエータを厚さ方向に積層した構成とすることにより、アクチュエータの変位量と回復応力を増大させることができる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2009-273204号公報
【特許文献2】特開2012-130201号公報
【特許文献3】特開2012-161221号公報
【0006】

【非特許文献1】山野美咲、小川尚紀、橋本稔、高崎緑、平井利博:“収縮型PVCゲルアクチュエータの構造と駆動特性”日本ロボット学会誌、Vol.27 No.7 pp718~24,2009
【非特許文献2】早坂暢、茅帥竜、土屋幸成、橋本稔、:“薄膜化による高性能PVCゲルアクチュエータの開発”第18回ロボティクスシンポジア予稿集、4A4、pp361~366,2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PVCゲルを用いたゲルアクチュエータについては、ゲルの薄膜化により、ゲルアクチュエータの収縮率と回復応力の改善を図ること、フィードバック制御により変位を正確に制御すること等の種々の改良が検討されてきた。このゲルアクチュエータについては、使用上の安全性を向上させるため、さらに印加電圧を低減させること、ロボティックスーツ等への応用を想定すると、さらに発生力を増大させることが求められる。
本発明は、印加電圧を低減させかつ回復応力を増大させることを可能にする新規な構成からなるアクチュエータ素子及びアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアクチュエータ素子は、誘電体層と、該誘電体層を厚さ方向に挟んで配される一対の電極とを備え、前記誘電体層が、前記電極間に電圧を印加した際にクリープ変形するゲル状誘電体からなり、少なくとも前記一対の電極のうちの陽極に接する側の表面が、前記クリープ変形を吸収する凹凸面に形成された誘電体層であり、前記電極間に電圧を印加した際には厚さ方向に収縮し、電圧の印加を解除した際には元の厚さに復帰することを特徴とする。
誘電体層は、たとえばエレクトロスピニング法を利用することにより、3次元のネット構造体に形成した誘電体層(以下ゲル不織布ということがある)を用いることができる。誘電体層は、電極間に電圧を印加すると、クリープ現象によって変形したゲル状誘電体が自身の凹部内に引き込まれ(吸収され)、これにより全体として厚さ方向に収縮する。誘電体層は、電圧除去時にはゲルがもつ弾性によって元の状態に戻る。
【0009】
エレクトロスピニングにより製造されるゲル不織布は、ファイバーが折り重なった微細なネット状をなす。このゲル不織布の厚さ、ファイバーの径、空隙率等は適宜選定することができる。エレクトロスピニング法によるゲル不織布を利用することにより、誘電体層として従来使用していたゲルシートと比較して薄型化が容易であり、誘電体層の量産化も容易である。また、誘電体層を薄型にできることから、積層構造とした場合でもコンパクトに形成することができ、結果として印加電圧の低減化が可能であり、また、従来のアクチュエータ素子と比較して、収縮率を向上させ、回復応力(発生力)を向上させることが可能である。
【0010】
前記アクチュエータ素子は、前記誘電体層と電極とが厚さ方向に交互に積層されていることにより、電圧印加をON-OFFした際の収縮量(変位量)を大きくすることができ、また、電圧OFF時の回復応力を大きくすることができる。
前記一対の電極は、ともに箔状の電極として構成することもできるし、一方の電極をメッシュ状の電極とすることもできる。
また、前記誘電体層は、適宜誘電体材料から形成することが可能であるが、ポリ塩化ビニルをポリマー成分とするゲル不織布は、製造が容易であり、好適なクリープ変形を生じる誘電体層として作用することから有用である。
【0011】
また、本発明に係るアクチュエータは、誘電体層および、該誘電体層を厚さ方向に挟んで配される一対の電極を備え、前記誘電体層が、前記電極間に電圧を印加した際にクリープ変形するゲル状誘電体からなり、少なくとも前記一対の電極のうちの陽極に接する側の表面が、前記クリープ変形を吸収する凹凸面に形成された誘電体層であるアクチュエータ素子と、前記電極間に、電圧をON-OFF制御して印加する電圧印加手段とを備え、前記電極間に電圧を印加した際には厚さ方向に収縮し、電圧の印加を解除した際には元の厚さに復帰することを特徴とする。
【0012】
誘電体層は、前記のように、たとえばエレクトロスピニング法を利用することにより、3次元のネット構造体をなす誘電体層(ゲル不織布)を用いることができる。また、前記アクチュエータは、前記誘電体層と電極とが厚さ方向に交互に積層されたアクチュエータ素子を備えることを特徴とし、前記一対の電極が、ともに箔状の電極からなるアクチュエータ素子を備えること、前記一対の電極のうち、一方の電極がメッシュ状の電極からなるアクチュエータ素子を備えることを特徴とする。
また、前記誘電体層が、ポリ塩化ビニルをポリマー成分とするゲル不織布からなるアクチュエータ素子を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るアクチュエータ素子及びアクチュエータによれば、誘電体層と、該誘電体層を厚さ方向に挟んで配される一対の電極とを備えたアクチュエータ素子であって、誘電体層が、電極間に電圧を印加した際にクリープ変形するゲル状誘電体からなり、陽極に接する側の表面が、クリープ変形を吸収する凹凸面に形成された誘電体層であるアクチュエータ素子とすることにより、従来のように、メッシュ状の電極(陽極)をゲルシートにより両側から挟み、双方のゲルシートの外面に箔状の電極(陰極)を設けたものに比して薄型化が可能となり、これによって、印加電圧の低減化が可能となり、アクチュエータ素子の収縮率を向上させ、回復応力を増大させることが可能になる。
また、誘電体層にエレクトロスピニング法によるゲル不織布を使用することにより誘電体層の量産化が容易に可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】アクチュエータ素子とアクチュエータの構成を示す説明図である。
【図2】積層型のアクチュエータ素子とアクチュエータの構成を示す説明図である。
【図3】ゲル不織布の表面側のSEM像である。
【図4】ゲル不織布からのサンプル作製方法を示す説明図である。
【図5】ゲル不織布サンプルにリード線を取り付けた状態を示す説明図である。
【図6】アクチュエータの単位構造を示す説明図である。
【図7】アクチュエータの応答特性を示すグラフである。
【図8】アクチュエータの変位量を示すグラフである。
【図9】アクチュエータの変位量を示すグラフである。
【図10】アクチュエータの変位量を示すグラフである。
【図11】アクチュエータの収縮率を示すグラフである。
【図12】アクチュエータの回復応力を示すグラフである。
【図13】アクチュエータの回復応力を示すグラフである。
【図14】アクチュエータの回復応力を示すグラフである。
【図15】誘電体層がクリープ変形する様子を示す説明図である。
【図16】従来のアクチュエータ素子の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[アクチュエータの構成]
図1は、本実施の形態に係るアクチュエータの基本構成を示す。本実施の形態に係るアクチュエータは、誘電体層にゲル不織布を用いたアクチュエータ素子5と、アクチュエータ素子5の誘電体層に電圧を印加する電圧印加手段8とを備える。

【0016】
アクチュエータ素子5は、ゲル不織布10を、陽極(Anode)12と陰極(Cathode)14とで厚さ方向に挟んだ構成を基本構成とする。ゲル不織布10は誘電体層として作用するもので、電圧を印加した際にクリープ変形するゲル状誘電体、たとえばゲル状のポリ塩化ビニル(PVC)から形成される。
電圧印加手段8は、アクチュエータ素子5の陽極12と陰極14との間に電圧をON-OFF制御して印加するものであり、直流電源と、陽極12と陰極14との間に印加する電圧をON-OFFする手段(スイッチング手段)とを備える。

【0017】
本実施の形態に係るアクチュエータ素子は、従来のゲルアクチュエータにおいて、陽極と陰極とで挟む誘電体層として使用されているゲルシートにかえて、ゲル不織布を使用する点が大きく相異する。
ゲルシートは電圧を印加した際にクリープ変形する材料によって形成される。ゲル不織布も、ゲルシートと同様に、電圧を印加した際にクリープ変形するゲル状誘電体によって形成する。電圧を印加した際にクリープ変形する性質を備える材料としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン6、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、シリコーンゴム等がある。

【0018】
ゲル不織布は、誘電体材料を用いてエレクトロスピニング法により作製することができる。PVC等のクリープ変形作用を有する材料を溶解した溶液を陽極側とし、陽極と陰極板との間に高電圧を印加すると、静電力により陽極側の紡糸口のノズルから陰極板に向けてポリマーが噴射され、陰極板上にゲル不織布が形成される。エレクトロスピニング法によると、紡糸口のノズルから陰極板に向けて噴射されるファイバー状のポリマーが、陰極板上に折り重なるようにして次々と結着することから、ゲル不織布は3次元のネット構造体(不織布状)をなすものとなる(図3(A)、(B))。
ゲル不織布を構成するファイバーの径や不織布の厚さは、エレクトロスピニングの紡糸条件により適宜設定することができる。アクチュエータに使用するゲル不織布は、エレクトロスピニングによって作製した不織布から、用途に合わせて、適宜形状及び大きさに、切り出しして使用する。
なお、ゲル不織布はエレクトロスピニング法により作成するものでなくともよいが、陽極に接触する表面側は、クリープ現象により変形するゲル状誘電体を吸収する凹凸面に形成されていればよい。

【0019】
図1(a)は、アクチュエータ素子5の陽極12と陰極14との間の電圧印加を解除した状態、図1(b)は、陽極12と陰極14との間に電圧を印加した状態を示す。陽極12と陰極14との間に電圧を印加すると、図のように、誘電体層であるゲル不織布10の厚さが電圧印加前に比べて薄くなる(Δh)。すなわち、電圧を印加することにより、厚さ方向に収縮する作用をなす。
電圧印加により、ゲル不織布10からなる誘電体層が厚さ方向に収縮する作用は、従来のゲルアクチュエータにおける作用と同様に、陽極12と陰極14との間に電圧を印加したことにより、ゲル不織布10がクリープ変形することによるものである。

【0020】
なお、従来のゲルシートを使用したアクチュエータ素子においては、陽極にメッシュ状の電極を使用するが、本実施形態のアクチュエータ素子においては、陽極12にメッシュ状の電極を使用してもよいし、単なる箔状の電極を使用してもよい。ゲル不織布10はファイバー間が空隙になっているから、箔状の電極を使用した場合でも、電圧を印加した際に容易にクリープ変形でき、変形分がファイバー間の空隙内に入りこみ、結果として厚さ方向に容易に収縮できる。後述するように、実際に、ゲル不織布を利用してアクチュエータを構成し、電圧を印加することにより厚さ方向に収縮する作用を確かめている。

【0021】
図2は、誘電体層であるゲル不織布と電極とを厚さ方向に交互に積層した、積層型のアクチュエータ素子6を用いたアクチュエータの例である。積層型のアクチュエータ素子6では、ゲル不織布10と積層する電極は、交互に陽極12と陰極14とする。図示例はゲル不織布10を5層とした例である。アクチュエータ素子6の積層数は適宜設定することができる。
陽極12と陰極14は、それぞれ共通に電源に接続し、電源をON-OFFした際に、各々の陽極12と陰極14間の電圧が共通にON-OFFされるように配線する。

【0022】
図2(a)は、アクチュエータ素子6の陽極12と陰極14との間に印加する電圧をOFFとした場合、図2(b)はアクチュエータ素子6の陽極12と陰極14との間に電圧を印加した(ON)状態である。電圧を印加したことにより、積層されているゲル不織布10が各々、厚さ方向に収縮し、アクチュエータ素子6全体として、厚さ方向に収縮する(ΔH)。各々のゲル不織布10の収縮量が重畳されることにより、単層からなるアクチュエータ素子にくらべて収縮量が大きくなり、あわせて回復応力も大きくなる。

【0023】
本実施の形態に係るアクチュエータ素子は、誘電体層としてゲル不織布を使用していることから、従来のアクチュエータ素子に使用しているゲルシートと比較して容易に薄型化することができ、積層型のアクチュエータ素子とした場合でも、効果的に薄型にすることができる。また、ゲル不織布を用いることで、アクチュエータ素子の収縮率、回復応力を増大させることができる。

【0024】
ゲル不織布は前記のようにエレクトロスピニング法等により容易に作製することができ、容易に量産することができる。
また、誘電体層としてゲル不織布を用いる場合は、箔状の電極を使用することができるから、積層構造のアクチュエータ素子を形成することが容易である。
積層構造のアクチュエータを形成する方法としては、別々に形成したゲル不織布と導電性の箔とを交互に積層する方法によることもできるし、めっきあるいはスパッタリング等の成膜法により電極となる導電層を形成する方法を利用して、ゲル不織布と導電層とを交互に積層した構造とすることもできる。
また、ファイバーの作製溶液に導電性物質を混合することで、導電性を持つゲル不織布を作製することが可能である。導電性を備えるゲル不織布層を導電層として使用し、誘電体層となるゲル不織布と交互に積層することにより、容易に積層型のアクチュエータ素子を作製することができる。
【実施例】
【0025】
[PVCゲル不織布の作成]
まず、PVCとアジピン酸ジブチル(DBA:可塑剤)、テトラヒドロフラン(THF:溶媒)を混合し、PVCゲルの溶液を作製した。本実施例では重量比でPVC:DBA:THFが1:2:9,1:2:11.5になるようにした。以降,前者を用いて作製したアクチュエータをTHF9、後者をTHF11.5と呼ぶ。
PVCゲル溶液をエレクトロスピニング装置(MECC,NANON-02)を用いてゲル不織布を作製した。環境条件は温度22-25度,湿度14%にし、スピニング条件は印加電圧10kV、溶液送出し量1mL/h、ニードル-コレクタ間距離12cmにして行った。スピニングする際にはプレート型コレクタを用い、コレクタ上にアルミ箔を敷いてスピニングした。なお,アルミ箔は光沢がある面を上面にした。結果として多少の癒着が見られた。THF9のゲルファイバーの径は1.78μm(図3(A))、THF11.5は1.04μm(図3(B))となったが、所々にファイバー同士の癒着が見られ、3次元のネット構造体からなるゲル不織布が得られた。
【実施例】
【0026】
スピニング時間は1.0h、1.5h、2.0hとして、厚さ30μm、45μm、60μmの不織布を作製した。スピニング後はアルミ箔ごと恒温槽で2日間程放置し、その後φ15のポンチを用いてゲル不織布をアルミ箔ごと打ち抜いた(図4)。また,ポンチでアルミ箔のみ打ち抜き,それぞれに導電性接着材を用いてリード線を接着した(図5)。
以上より、2種類のファイバー径、3種類の厚さを持つ計6種類のPVCゲル不織布サンプルを作製した。アクチュエータの重量はTHF9の不織布厚さ(d)が30μmの時9.32mg、同様にTHF11.5では8.51mgとなった(表1)。
【実施例】
【0027】
【表1】
JP2015122935A_000003t.gif
【実施例】
【0028】
[測定方法]
[変位量の測定]
変位を測定するシステムは、電場を印加するための高圧アンプ(MATSUSADA, HOPS-1.5B2-L2)と、変位センサ(KEYENCE, LK-G30)とPCからの信号を出力するためのインターフェイスボード(JUSTWARE, JIF-171-1)から成る。電圧は10sごとに20Vずつ増加させ、100Vまで連続して印加させ、その時の変位量をレーザー変位計を用いて測定した。
【実施例】
【0029】
[収縮率の算出方法]
図6にアクチュエータの単位構造を示す。収縮率は変位量をもとに求める。求め方は変位量(D)をアクチュエータの高さ(h)で割った値に100掛けたものである。アクチュエータの高さとは、ゲル不織布の厚さ(d)と陽極、陰極の厚さ(c)の各半分の値を加えたものである。
【実施例】
【0030】
[回復応力の測定]
回復応力(発生力)の計測をするシステムは、電圧印加のための電源である絶縁抵抗試験機(KIKUSUI, TOS201)とロードセル(KYOWA, LMA-A-5N)、センサから得られる電圧信号をPCに読み込むためのAD変換機(CONTEC, AI-1608AY)とPCから成る。
本実施例において、回復応力とは電圧印加中のアクチュエータが電圧除去時に元の高さに戻ろうとする力を指す。回復応力の測定方法は、アクチュエータに電圧を10s程印加した後、ロードセルをアクチュエータに近づけ、ある程度の負荷(初期負荷)をかけてからPVCゲルアクチュエータに印加していた電圧を除去して測定する。
【実施例】
【0031】
[応答時間の測定]
応答時間の測定には変位量の計測システムを用い算出する。ここでの応答時間とはアクチュエータが変位量の10%から90%まで変位するのにかかる時間を応答時間と定義する(図7)。
【実施例】
【0032】
[測定結果]
[変位量]
結果より、THF9(d=30μm)を除き、アクチュエータの変位量は印加電圧80Vの時に最大値を取るように比例して増加し、その後減少する傾向が見られた(図8‐図10:各グラフにおいて、左側から20V、40V、60V、80V、100V)。
不織布の厚さによる影響を見ると、THF9とTHF11.5は共に不織布厚さが45μmの時に大きな変位量を取ることが分かった(図9)。この時,印加電圧80VにおいてTHF9は最大変位量11.7μm、THF11.5は11.1μmを示すことが分かった。
ゲル不織布のファイバー径の大きさについて見ると、不織布の厚さが45μm、60μmの時はTHF9の方が大きな変位量を示す傾向が見られた。一方、不織布厚さが30μmの時はTHF11.5の方が大きな変位量を示すことが分かった。
【実施例】
【0033】
[収縮率]
収縮率も変位量同様、印加電圧80Vまでは収縮率は比例して増加する傾向が見られた(図11)。不織布の厚さが30μmの時、THF11.5の方が同印加電圧において高い収縮率を示す傾向が見られた。
一方、不織布の厚さが45μm、60μmの時はTHF9の方が高い収縮率を示す傾向が見られた。
最大変位量は印加電圧80Vにおいて不織布厚さ45μmの時THF9で21.4%、THF11.5で21.6%であった。THF9、THF11.5共に厚さが45μm以下の時に印加電圧60Vで収縮率10%を超えており、PVCゲルアアクチュエータよりも低電圧で高い収縮率を得られることが分かった。
【実施例】
【0034】
[回復応力]
回復応力も印加電圧に比例して増加する傾向が見られた(図12‐図14:各グラフにおいて、左側から20V、40V、60V、80V、100V)。不織布の厚さが30μm、45μmの時にはTHF11.5の方が回復応力は大きく、60μmの時にはTHF9の方が回復応力は大きくなる傾向が見られた。
一方、回復応力も変位量、収縮率と同様に不織布厚さが45μmの時に最大値を取った。
最大回復応力値はTHF11.5の時、印加電圧100Vにおいて92Paであった。
【実施例】
【0035】
[応答時間
応答時間については回復応力が大きくなる傾向が見られた不織布厚さ45μmのものを用いて測定した。印加電圧80Vと100V時の応答時間を調べた結果、THF9、THF11.5共に印加電圧が高い方が応答時間が速いことが分かった(表2)。
しかし,ファイバー径の違いによる応答時間の変化はあまり見られなかった。
【実施例】
【0036】
【表2】
JP2015122935A_000004t.gif
【実施例】
【0037】
以上のように、本実施例においてPVCゲル不織布アクチュエータは印加電圧80V時に変位量、収縮率が最大値を取るようにして比例増加する傾向があることが分かった。これは、変位量、収縮率を測定する際の印加電圧のかけ方の差が影響しているのではないかと考えられる。本実施例では、変位量、収縮率を測定する際に、印加電圧は一定時間内に100Vまで連続して印加した。そのため、電圧を除去した際にアクチュエータが元の高さまで戻りきらずに再び電圧を印加してしまったためではないかと考えられる。
一方、本来収縮率に比例して増加すると考えられる回復応力については印加電圧00Vまで、ほぼ比例して増加する傾向にあった。これは変位量、収縮率の測定時の電圧の印加方法が異なったからではないかと考えられる。
【実施例】
【0038】
今後、電圧の印加方法を統一して各特性値を測定する必要があると考えられる。本実施例の結果を従来のPVCゲルアクチュエータの特性と比較したものを表3に示す。
【実施例】
【0039】
【表3】
JP2015122935A_000005t.gif
【実施例】
【0040】
従来のPVCゲルアクチュエータの特性は印加電圧80V時に収縮率14%であるのに対して、PVCゲル不織布アクチュエータは印加電圧80Vにおいて収縮率21.4%を示した。
また,図11において印加電圧60Vの時に収縮率14.8%を示したことからも、PVCゲル不織布アクチュエータは低電圧での駆動が可能になったのではないかと言える。
【実施例】
【0041】
本実施例では、PVCゲル不織布アクチュエータを作製し、特性の評価を行った。PVCゲル不織布アクチュエータは印加電圧の増大とともに、変位量、収縮率、回復応力が増加する特性を持つことが分かった。本実施例では、不織布アクチュエータは不織布の厚さが45μmの時に収縮率、回復応力の比較的特性が良いことがうかがえた。
不織布アクチュエータの重さは従来の10分の1程度となり非常に軽量で、印加電圧60Vにおいて収縮率14.8%を示したことから、従来よりも低電圧での駆動が可能になり,特性の改善ができたのではないかと言える。
【符号の説明】
【0042】
5、6 アクチュエータ素子
8 電圧印加手段
10 ナノファイバー不織布
12 陽極
14 陰極
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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【図9】
8
【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
14
【図16】
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