TOP > 国内特許検索 > 魚卵判別方法および魚卵選別装置 > 明細書

明細書 :魚卵判別方法および魚卵選別装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-021894 (P2015-021894A)
公開日 平成27年2月2日(2015.2.2)
発明の名称または考案の名称 魚卵判別方法および魚卵選別装置
国際特許分類 G01N  21/27        (2006.01)
A01K  61/00        (2006.01)
G01N  21/47        (2006.01)
FI G01N 21/27 B
A01K 61/00 D
G01N 21/47 Z
請求項の数または発明の数 17
出願形態 OL
全頁数 17
出願番号 特願2013-151670 (P2013-151670)
出願日 平成25年7月22日(2013.7.22)
発明者または考案者 【氏名】石垣 美歌
【氏名】佐藤 英俊
【氏名】前田 康大
出願人 【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 2B104
2G059
Fターム 2B104AA01
2B104BA03
2B104CG19
2G059AA02
2G059BB12
2G059CC12
2G059EE03
2G059EE04
2G059FF03
2G059FF20
2G059GG01
2G059HH01
2G059HH02
2G059JJ01
2G059JJ03
2G059JJ11
2G059JJ15
2G059JJ17
2G059MM05
要約 【課題】魚卵の良否を産卵(あるいは受精)直後の段階で判別可能な魚卵判別方法および魚卵選別装置を提供する。
【解決手段】魚卵選別装置1は、魚卵が投入される投入部2と、前記魚卵の良否を判別する判別部4と、判別部4の判別結果に基づいて良卵と不良卵とを仕分ける仕分部5と、を備える。判別部4は、レーザー光を魚卵に照射する照射手段と、前記魚卵の反射光からラマン散乱光を検出し、検出されたラマン散乱光に基づいて、魚卵の良否を判別する解析手段と、を備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
レーザー光を魚卵に照射する照射ステップと、
前記魚卵の反射光からラマン散乱光を検出し、検出されたラマン散乱光に基づいて、魚卵の良否を判別する判別ステップと、を有することを特徴とする魚卵判別方法。
【請求項2】
前記レーザー光の波長は720~860nmであることを特徴とする請求項1に記載の魚卵判別方法。
【請求項3】
前記レーザー光の波長は785nmであることを特徴とする請求項2に記載の魚卵判別方法。
【請求項4】
前記照射ステップでは、前記レーザー光を前記魚卵の脂肪滴および卵黄部分の少なくともいずれかに照射することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の魚卵判別方法。
【請求項5】
前記判別ステップでは、脂質のバンドを用いて線形判別分析を行うことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の魚卵判別方法。
【請求項6】
前記判別ステップでは、さらにタンパク質のバンドを用いて線形判別分析を行うことを特徴とする請求項5に記載の魚卵判別方法。
【請求項7】
前記判別ステップでは、さらにカロテノイドのバンドを用いて線形判別分析を行うことを特徴とする請求項6に記載の魚卵判別方法。
【請求項8】
魚卵が投入される投入部と、
前記魚卵の良否を判別する判別部と、
前記判別部の判別結果に基づいて良卵と不良卵とを仕分ける仕分部と、を備えた魚卵選別装置であって、
前記判別部は、
レーザー光を魚卵に照射する照射手段と、
前記魚卵の反射光からラマン散乱光を検出し、検出されたラマン散乱光に基づいて、魚卵の良否を判別する解析手段と、を備えることを特徴とする魚卵選別装置。
【請求項9】
前記照射手段は、
前記レーザー光の照射位置を、前記魚卵に追随させる追随手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の魚卵選別装置。
【請求項10】
前記追随手段は、
前記レーザー光を偏向するポリゴンミラーであることを特徴とする請求項9に記載の魚卵選別装置。
【請求項11】
前記追随手段は、
前記レーザー光を伝播させ、先端が前記魚卵の進路に沿って移動可能な光ファイバーであることを特徴とする請求項9に記載の魚卵選別装置。
【請求項12】
前記レーザー光の波長は720~860nmであることを特徴とする請求項8~11のいずれかに記載の魚卵選別装置。
【請求項13】
前記レーザー光の波長は785nmであることを特徴とする請求項12に記載の魚卵選別装置。
【請求項14】
前記照射手段は、前記レーザー光を前記魚卵の脂肪滴および卵黄部分の少なくともいずれかに照射することを特徴とする請求項8~13のいずれかに記載の魚卵選別装置。
【請求項15】
前記解析手段は、脂質のバンドを用いて線形判別分析を行うことを特徴とする請求項8~14のいずれかに記載の魚卵判別方法。
【請求項16】
前記解析手段は、さらにタンパク質のバンドを用いて線形判別分析を行うことを特徴とする請求項15に記載の魚卵判別方法。
【請求項17】
前記解析手段は、さらにカロテノイドのバンドを用いて線形判別分析を行うことを特徴とする請求項16に記載の魚卵判別方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、魚卵の良否を判別する技術に関し、特に、魚卵の受精の有無及び受精卵の孵化可能性を判別する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水産養殖業において、孵化率の高い卵の安定的な入手は重要な課題である。特に、親魚の入手自体が困難な希少種や、養殖状態での安定的な産卵誘発技術が確立途上である種では、その重要性は増大する。
【0003】
特に、海魚は、卵を育てるための最適条件を作り出すことが難しいため、養殖における孵化率が低い。例えば、養殖が盛んで商業的に重要なオヒョウは、孵化率は1%以下である。ヨーロピアンシーバスの孵化率は10~15%であり、受精卵を育てる方法が確立されているサケでさえ、孵化率は50%である。
【0004】
海魚孵化場では、海水に対して卵が浮くか否かによって、卵の良否を判別する方法が一般的である。さらに、特許文献1及び2には、生きている良卵がほぼ透明であり、死んでいる不良卵が白濁していることに着目して、魚卵からの反射光の強度に基づいて、魚卵の良否を判別する方法が開示されている。当該方法により、魚卵を破壊することなく、魚卵の良否を判別することができる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開昭57-86230号公報
【特許文献2】特開昭57-86231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オヒョウなどでは、卵の質は、卵割の早い段階における細胞の対象性により評価する必要がある。そのため、魚卵が海水に対して浮くか否かに基づく判別方法は適用できない。また、産卵(あるいは受精)直後の段階では、良卵と不良卵とで光の透過率は変わらないので、特許文献1及び2に記載の判別方法も適用できない。さらに 、産卵(あるいは受精)直後から魚卵の形態的な変化が起こるまでの期間に、魚卵の孵化可能性を効率よく判別する方法は知られていない。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、魚卵の良否を産卵(あるいは受精)直後の段階で判別可能な魚卵判別方法および魚卵選別装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る魚卵判別方法は、上記課題を解決するためになされたものであり、レーザー光を魚卵に照射する照射ステップと、前記魚卵の反射光からラマン散乱光を検出し、検出されたラマン散乱光に基づいて、魚卵の良否を判別する判別ステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、魚卵にレーザー光を照射し、その反射光のラマン散乱光に基づき、魚卵の良否を判別する。産卵(あるいは受精)直後の受精卵と無精卵とでは、見た目には大差はないが、受精卵では、液胞から卵中へのエネルギー供給が行われているため、液胞成分が染み出している。そのため、ラマン散乱光からラマンスペクトルを解析して、脂肪滴成分(中性脂肪)の組成を検出することにより、受精の有無を予見することができる。よって、魚卵の良否を産卵(あるいは受精)直後の段階で判別することができる。
【0010】
また、上記魚卵判別方法において、前記レーザー光の波長は720~860nmであることが好ましい。
【0011】
また、上記魚卵判別方法において、前記レーザー光の波長は785nmであることがさらに好ましい。
【0012】
また、上記魚卵判別方法において、前記照射ステップでは、前記レーザー光を前記魚卵の脂肪滴および卵黄部分の少なくともいずれかに照射することが好ましい。
【0013】
また、上記魚卵判別方法において、前記判別ステップでは、脂質のバンドを用いて線形判別分析を行うことが好ましい。
【0014】
また、上記魚卵判別方法において、前記判別ステップでは、さらにタンパク質のバンドを用いて線形判別分析を行うことが好ましい。
【0015】
また、上記魚卵判別方法において、前記判別ステップでは、さらにカロテノイドのバンドを用いて線形判別分析を行うことが好ましい。
【0016】
魚卵の早い発生段階のラマン散乱光において、タンパク質・カロテノイドの生成を検出することにより、孵化の可否を予見することができる。
【0017】
また、本発明に係る魚卵選別装置は、上記課題を解決するためになされたものであり、魚卵が投入される投入部と、前記魚卵の良否を判別する判別部と、前記判別部の判別結果に基づいて良卵と不良卵とを仕分ける仕分部と、を備えた魚卵選別装置であって、前記判別部は、レーザー光を魚卵に照射する照射手段と、前記魚卵の反射光からラマン散乱光を検出し、検出されたラマン散乱光に基づいて、魚卵の良否を判別する解析手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、照射手段が魚卵にレーザー光を照射し、解析手段が反射光のラマン散乱光に基づき、魚卵の良否を判別する。したがって、魚卵選別装置は、産卵(あるいは受精)直後の段階で良卵と不良卵とを選別することができる。
【0019】
また、上記魚卵選別装置において、前記照射手段は、前記レーザー光の照射位置を、前記魚卵に追随させる追随手段を備えることが好ましい。これにより、レーザー光を照射する際に、魚卵の移動を停止させる必要がない。よって、判別に要する時間を短くすることができ、魚卵を損傷するリスクを減らすことができる。
【0020】
また、上記魚卵選別装置において、前記追随手段は、前記レーザー光を偏向するポリゴンミラーであってもよい。
【0021】
また、上記魚卵選別装置において、前記追随手段は、前記レーザー光を伝播させ、先端が前記魚卵の進路に沿って移動可能な光ファイバーであってもよい。
【0022】
また、上記魚卵選別装置において、前記レーザー光の波長は720~860nmであることが好ましい。
【0023】
また、上記魚卵選別装置において、前記レーザー光の波長は785nmであることがさらに好ましい。
【0024】
また、上記魚卵選別装置において、前記照射手段は、前記レーザー光を前記魚卵の脂肪滴および卵黄部分の少なくともいずれかに照射することが好ましい。
【0025】
また、上記魚卵選別装置において、前記解析手段は、脂質のバンドを用いて線形判別分析を行うことが好ましい。
【0026】
また、上記魚卵選別装置において、前記解析手段は、さらにタンパク質のバンドを用いて線形判別分析を行うことが好ましい。
【0027】
また、上記魚卵選別装置において、前記解析手段は、さらにカロテノイドのバンドを用いて線形判別分析を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、魚卵の良否を産卵(あるいは受精)直後の段階で判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る魚卵選別装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】上記魚卵選別装置の判別部の一構成例を示す図である。
【図3】上記魚卵選別装置の仕分部の一構成例を示す図である。
【図4】判別部の変形例を示す図である。
【図5】無精卵と受精直後の受精卵の卵黄のラマンスペクトルの第1主成分のローディングプロット例を示すグラフである。
【図6】無精卵と受精卵のスコアプロットを示すグラフである。
【図7】孵化する卵と孵化しない卵の卵黄のラマンスペクトルのローディングプロット例を示すグラフである。
【図8】孵化する卵と孵化しない卵のスコアプロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。

【0031】
(魚卵選別装置)
図1は、本発明の一実施形態に係る魚卵選別装置1の概略構成を示すブロック図である。魚卵選別装置1は、魚卵が投入される投入部2、投入された魚卵を一列に整列する整列部3、魚卵の良否を判別する判別部4、および、判別部4の判別結果に基づいて良卵と不良卵とを仕分ける仕分部5を備えている。投入部2には、産卵された直後の魚卵が投入される。投入部2に投入された魚卵は、整列部3によって所定の間隔で一列に整列される。投入部2および整列部3は、詳細な構成は特に限定されず、公知のものを用いることができる。整列された魚卵は、水で満たされた水路を通って判別部4に到達する。

【0032】
(判別部)
図2は、判別部4の一構成例を示す図である。判別部4は、魚卵の良否、すなわち、受精卵であるか無精卵(未受精卵)であるかを判別するものであり、ラマン分光法によって判別することを特徴としている。判別部4は、水路41、石英ガラス42、シリンドリカルレンズ43、レーザー光源44(照射手段)、ビームスプリッター45、ポリゴンミラー46(追随手段)、ロングパスフィルター47、分光器48およびラマンスペクトル解析器49(解析手段)を備えている。

【0033】
水路41は、断面が半円形のチューブ状に形成されている。水路41の上部は板状の石英ガラス42が設けられており、水路41と石英ガラス42との間は、新鮮な水流で常に満たされている。これにより、水面が石英ガラス42の窓で覆われる。整列部3で整列された魚卵Eは、水路41中を図中右方向に移動する。水の温度は、魚卵Eの品質に影響を与えないように管理されている。なお、石英ガラス42の代わりに、サファイアガラスを使用してもよい。

【0034】
シリンドリカルレンズ43は、石英ガラス42の上側の水路41と対向する位置に設けられている。レーザー光源44から出射されたレーザー光は、ビームスプリッター45を通過してポリゴンミラー46の側面に反射され、シリンドリカルレンズ43によって魚卵Eの中心付近に収束するように照射される(照射ステップ)。ポリゴンミラー46は、レーザー光の照射位置が魚卵Eに追随するようにレーザー光を偏向する。これにより、水路41中を移動する魚卵Eに1~5秒間レーザー光を連続的に照射することができる。

【0035】
魚卵Eからの反射光は、ポリゴンミラー46、ビームスプリッター45に反射され、ロングパスフィルター47を通過する。その際、反射光からレイリー散乱光が除去され、ラマン散乱光のみが分光器48に入射する。分光器48は、ラマン散乱光を分光する。ラマンスペクトル解析器49は、分光されたラマン散乱光を波長毎に検出し、ラマンシフト値に変換してラマンスペクトルを測定する(検出ステップ)。これにより、ラマンスペクトル解析器49は、魚卵Eの良否、すなわち、魚卵Eが孵化する受精卵であるか、孵化しない無精卵であるかを判別する(判別ステップ)。判別結果は、仕分部5に送信される。なお、判別方法の具体的な内容は、後述の実施例で説明する。

【0036】
レーザー光の波長は、特に制限されないが、720~860nmが好ましく、特に785nmが好ましい。なお、短波長のレーザー光は、魚卵Eに毒性があるため、好ましくない。また、1000nmを超える波長のレーザー光を用いると、ラマンスペクトル解析器49として、高価な装置を用いる必要がある。

【0037】
(仕分部)
図3は、仕分部5の一構成例を示す図である。仕分部5は、判別部4の下流に設けられており、水路51、シャッター52、シャッター制御装置53を備えている。水路51は、図2に示す水路41と連続しており、判別部4において良否を判別された魚卵Eが水路51を図中左側からシャッター52の方向へ移動する。水路51は、シャッター52が設けられている位置で2つの水路51a・51bに分岐している。

【0038】
シャッター52は、シャッター制御装置53の制御によって、水路51の水流を水路51a・51bのいずれに流すかを切り替える。シャッター制御装置53は、判別部4から送信される判別結果に基づき、受精卵であると判別された魚卵Eを水路51aに流し、無精卵であると判別された魚卵Eを水路51bに流すように、シャッター52を制御する。これにより、魚卵選別装置1は、受精卵と無精卵とを選別することができる。

【0039】
さらに、魚卵Eが接水によって付活しない魚卵(メダカ等)であれば、無精卵であると判別された魚卵Eを、精子が混入した塩類溶液に移して、人工受精させることができる。これにより、受精率を向上させ、孵化率の高い卵をより安定的に得ることができる。

【0040】
なお、仕分部5の具体的な構成は、図3に示すものに限定されず、公知のあらゆる装置を適用することができる。

【0041】
(ラマン分光法による魚卵の良否の判別)
上述のように、判別部4は、ラマン分光法によって魚卵の良否を判別することを特徴としている。具体的には、魚卵Eの液胞(脂肪滴)および/または卵黄の部分にレーザー光を照射し、その反射光のラマン散乱光に基づき、魚卵の良否を判別する。産卵(あるいは受精)直後の受精卵と無精卵とでは、見た目には大差はないが、受精卵では、液胞から卵中へのエネルギー供給が行われているため、液胞成分が染み出している。そのため、ラマン散乱光からラマンスペクトルを解析して、脂肪滴成分(中性脂肪)の組成を検出することにより、受精の有無を予見することができる。さらに、魚卵の早い発生段階のラマン散乱光において、タンパク質・カロテノイドの生成を検出することにより、孵化の可否を予見することができる。よって、装置上の自由度を確保することができ、実用化が容易な装置とすることができる。

【0042】
また、液胞のラマンスペクトルは他の部位に比較して非常に強い(約100倍)ラマン散乱光を与えるため、スペクトルからも液胞と他の部位を識別することも可能である。従って、レーザー光の焦点の位置制御精度や空間分解能が低くても、高いS/N比でラマンスペクトルを得ることができる。

【0043】
(仕分部の変形例)
図2に示す仕分部4では、ポリゴンミラーを用いることにより、移動する魚卵に連続的にレーザー光を照射していたが、本発明はこれに限定されない。以下では、光ファイバー(中空ファイバー)を用いて、移動する魚卵に連続的にレーザー光を照射する構成について説明する。

【0044】
図4は、図2に示す判別部4の変形例に係る判別部4’の構成を示す図である。判別部4’は、水路41、石英ガラス42、レーザー光源44、分光器48、ラマンスペクトル解析器49および光ファイバーF(追随手段)を備えている。レーザー光源44、分光器48および光ファイバーFは、同数ずつ設けられている。

【0045】
光ファイバーFは、励起集光ファイバーと信号収集ファイバーとから構成されている。励起集光ファイバーの一端にレーザー光源44が接続され、励起集光ファイバーの他端は、魚卵Eの進路に沿って移動可能となっている。これにより、光ファイバーFの先端は、水路41を移動する魚卵Eに追随することができる。信号収集ファイバーは分光器48に接続されている。判別部4’の他の構成は、図2に示す判別部4と同様である。

【0046】
上記の構成により、判別部4’では、レーザー光源44から出射されたレーザー光は、光ファイバーFの励起集光ファイバーを伝播して、魚卵Eに照射される。上記のように光ファイバーFの先端は魚卵Eに追随することができるため、移動する魚卵Eにレーザー光を連続的に照射することができる。

【0047】
魚卵Eからの反射光は、光ファイバーFの信号収集ファイバーを通り、レイリー散乱光が除去されて、分光器48に入射する。分光器48はラマン散乱光を分光する。ラマンスペクトル解析器49は、分光されたラマン散乱光を波長毎に検出し、ラマンシフト値に変換してラマンスペクトルを測定する。これにより、ラマンスペクトル解析器49は、魚卵Eの良否を判別する。

【0048】
このように、本変形例では、光ファイバーを用いて、移動する魚卵に連続的にレーザー光を照射することができる。

【0049】
(付記事項)
なお、上記の実施形態では、レーザー光の照射位置を魚卵に追随させる追随手段として、ポリゴンミラーまたは光ファイバーを用いたが、移動する魚卵にレーザー光を連続的に照射可能なものであれば、追随手段はこれらに限定されない。また、上記追随手段は必須ではなく、魚卵が生息できる状況下でラマン分光法による測定が可能であれば、魚卵の移動を一旦停止させた状態で、所定時間レーザー光を照射する構成としてもよい。当該構成では、判別に要する時間が長くなるが、固定された照射装置を用いることができる。

【0050】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0051】
本実施例では、ラマン分光法を用いた魚卵判別方法によって、受精の有無が判別可能であることを検証するための実験を行った。なお、各実施例における数値(レーザー光の波長、解析に用いるバンド等)はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、バンドの数値は、装置の精度・性能によって、多少変動してもよい。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
実施例1では、総数約120個のメダカの卵を用意し、顕微ラマン装置(レーザー光の波長:785nm、試料点での出力:60 mW)を用いて、卵中の卵黄部分を測定し、ラマンスペクトルの分析を行った。測定データは試料の無い状態で測定したバックグランドを引き、5次関数によるベースライン補正を実施して、背景ノイズ光(蛍光、ダークノイズ等)を除去した。1003cm-1付近に観測されるフェニルアラニンのバンド強度を用いてスペクトル強度を規格化し、サビツキーゴーレイ法でスムージングを施した。
【実施例】
【0053】
図5は、無精卵と受精直後の受精卵の卵黄のラマンスペクトルの第1主成分(PC1)のローディングプロット例を示している。次に波数領域(1800~600cm-1)のデータを用いて、主成分分析(PCA)を行った結果の無精卵と受精卵のスコアプロットを図6に示した。各プロットが卵毎の測定データを表しており、受精卵のプロットは円形で示され、無精卵のプロットは矩形で示されている。無精卵のプロットと受精卵のプロットとは、異なる領域に分布していることから、プロット中に境界線を引くことにより、受精の有無のグループが区分可能であることが分かる。なお、実際の受精の有無は、顕微鏡によって卵割が発生しているか否かに基づいて確認した。
【実施例】
【0054】
主成分のローディングプロットから、無精卵と受精卵とを判別するために、脂質成分の組成が大きく貢献しており、液胞からのエネルギー供給が行われているかどうかで受精の有無を識別できることを示している。PCAの解析結果より、液胞成分のバンド(1265,1300,1438,1656,1745cm-1)を用いて線形判別分析(LDA)を行った。無精卵(17個)、受精直後(6個)のデータから1つのデータを除き、残りの22個のデータでモデルを作成し、初めに除いたデータをモデルに当てはめ、無精卵・受精直後の判別を行った。この作業を23個全てのデータについて繰り返した結果、95.7%の精度で(正答:22, 誤答:1)無精卵・受精直後を正しく判別できた。
【実施例】
【0055】
(実施例2)
本実施例では、ラマン分光法を用いた魚卵判別方法によって、受精卵が孵化するか否かを判別可能であることを検証するための実験を行った。実験に用いる装置および測定条件は、実施例1と同一である。
【実施例】
【0056】
孵化しない卵(無精卵・変な分割卵・冷凍卵)と孵化する卵(受精直後・2-8細胞期・多細胞期・かなり進んだ多細胞期)の計7種類の卵のラマンスペクトルについて解析を行った。図7は、孵化する卵と孵化しない卵の卵黄のラマンスペクトルのローディングプロット例を示している。次に、波数領域(1800~600cm-1)のデータを用いて、孵化する卵と孵化しない卵の間で主成分分析(PCA)を行った結果のスコアプロットを図8に示した。孵化する卵のプロットは円形で示され、孵化しない卵のプロットは矩形で示されている。孵化する卵であるか否かの区別は、後日、プロットに対応する卵が実際に孵化したか否かに基づいて行った。
【実施例】
【0057】
続いて、図8のプロットを、2グループに分けて解析を実施した。両グループ間の分離率が最も高くなるように、分析波数領域を決定した。分析波数領域は以下のように設定した。
【実施例】
【0058】
PCA解析結果より、判別に貢献していると考えられる1270,1300,1440,1660,1745cm-1の脂質・タンパク質のバンドを用いて線形判別分析を行った。122個のデータを2つに分け、一方のデータ(61個)に対して上記の脂質・タンパク質のバンドを用いて線形判別モデルを作成した。次に他方のデータ(61個)をモデルに当てはめて判別の正確性を検証した結果、正答率70.5%を得た。
【実施例】
【0059】
さらに、脂質・タンパク質のバンドにカロテノイドのバンド(1158,1521cm-1)を加えて、同様の解析を行った結果、80.3%の正答率を得た。
【実施例】
【0060】
以上のように、ラマン分光法を用いて、孵化する卵と孵化しない卵とを識別することができる結果を得た。
【符号の説明】
【0061】
1 魚卵選別装置
2 投入部
3 整列部
4 判別部
4’ 判別部
5 仕分部
41 水路
42 石英ガラス
43 シリンドリカルレンズ
44 レーザー光源(照射手段)
45 ビームスプリッター
46 ポリゴンミラー(追随手段)
47 ロングパスフィルター
48 分光器
49 ラマンスペクトル解析器(解析手段)
51 水路
51a 水路
51b 水路
52 シャッター
53 シャッター制御装置
E 魚卵
F 光ファイバー(追随手段)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7