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明細書 :環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩、その製造方法、及びその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5946447号 (P5946447)
登録日 平成28年6月10日(2016.6.10)
発行日 平成28年7月6日(2016.7.6)
発明の名称または考案の名称 環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩、その製造方法、及びその用途
国際特許分類 C07K   7/54        (2006.01)
A61K  38/00        (2006.01)
A61P  17/00        (2006.01)
A61K   8/64        (2006.01)
A61Q  19/00        (2006.01)
A61P   9/10        (2006.01)
FI C07K 7/54 ZNA
A61K 37/02
A61P 17/00
A61K 8/64
A61Q 19/00
A61P 9/10 101
請求項の数または発明の数 13
全頁数 34
出願番号 特願2013-515179 (P2013-515179)
出願日 平成24年5月16日(2012.5.16)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 (1)ウェブサイトの掲載日 2011年12月27日 ウェブサイトのアドレス http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X11023163 (2)発行日 2012年4月1日 刊行物 化学工業 第63巻 第4号
国際出願番号 PCT/JP2012/062513
国際公開番号 WO2012/157674
国際公開日 平成24年11月22日(2012.11.22)
優先権出願番号 2011110828
優先日 平成23年5月17日(2011.5.17)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成27年3月17日(2015.3.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503092180
【氏名又は名称】学校法人関西学院
発明者または考案者 【氏名】葛野 菜々子
【氏名】中島 喜一郎
【氏名】平井 洋平
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】植原 克典
参考文献・文献 Journal of Dermatological Science,2010年,vol.59,pp.176-183
調査した分野 C07K 7/54
A61K 38/00
A61P 17/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
式(I):
【化1】
JP0005946447B2_000017t.gif
〔式中、Xaaはアラニル基、Xaaはイソロイシル基、Xaaはグルタミル基、Xaaはプロリル基、Xaaはグルタミニル基、及びXaaはリシル基を示し;
は式(II):
【化2】
JP0005946447B2_000018t.gif
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基、及びmは0または1の整数を示し;並びに
はカルボキシル基がアミド化されていてもよいシスチン残基、及びlは0または1の整数を示す。但し、mとlが同時に0となることはない。〕
で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【請求項2】
式(I)中、lが1である、請求項1記載の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【請求項3】
式(I)において、mが1である、請求項1または2記載の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【請求項4】
式(I)中、mが1であって、Rが、式(II)中、nが1~3の整数である基である、請求項1乃至3のいずれかに記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【請求項5】
式(I)中、mが0であり、lが1である、請求項1または2に記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【請求項6】
式(I):
【化3】
JP0005946447B2_000019t.gif
〔式中、Xaaは置換基をアラニル基、Xaaはイソロイシル基、Xaaはグルタミル基、Xaaはプロリル基、Xaaはグルタミニル基、及びXaaはリシル基を示し;
は式(II):
【化4】
JP0005946447B2_000020t.gif
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基、及びmは0または1の整数を示し;並びに
はカルボキシル基がアミド化されていてもよいシスチン残基、及びlは0または1の整数を示す。但し、mとlが同時に0となることはない。〕
で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法であって、式(III):
【化5】
JP0005946447B2_000021t.gif
〔式中、Xaaはアラニル基、Xaaはイソロイシル基、Xaaはグルタミル基、Xaaはプロリル基、Xaaはグルタミニル基、及びXaaはリシル基を示し、
は式(IV):
【化6】
JP0005946447B2_000022t.gif
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基、及びmは0または1の整数を示し;並びに
lは同時に0または1の整数を示す。但し、mとlが同時に0となることはない。
なお、lが1であるとき、C末端のシステイニル基のカルボキシル基はフリーでも、またアミド化されていてもよい。〕
で表される化合物を環化させることを特徴とする環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかに記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩からなる、シンタキシン4のアンタゴニスト。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれかに記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を有効成分とする医薬組成物、医薬部外品組成物、または化粧料組成物。
【請求項9】
外用組成物である、請求項記載の医薬組成物、医薬部外品組成物、または化粧料組成物。
【請求項10】
シンタキシン4によって引き起こされる皮膚の異常な状態を予防、治療または改善するための組成物である、請求項8または9に記載する医薬組成物、医薬部外品組成物、または化粧料組成物。
【請求項11】
シンタキシン4によって引き起こされる皮膚の異常な状態が、皮膚の不全角化、不全角化を起因とする皮膚の異常状態、または皮膚の異常状態における代謝亢進である、請求項10に記載する外用組成物。
【請求項12】
エピモルフィンによって引き起こされるか、エピモルフィンの過剰発現によって発症若しくは増悪する疾患または病態を予防、治療または改善するための組成物である、請求項8または9に記載する医薬組成物、医薬部外品組成物、または化粧料組成物。
【請求項13】
疾患または病態が、臓器の損傷、慢性閉塞性動脈硬化症、またはバージャー病である、請求項12に記載する医薬組成物、医薬部外品組成物、または化粧料組成物。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩、およびその製造方法に関する。また、本発明は、かかる環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の用途に関する。詳細には、本発明は、不全角化を起因とする皮膚状態を予防、治療または改善するうえで有用な環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩、並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの表皮は、下層から順に、基底層と有棘層と顆粒層と角質層とからなる。ヒトの正常な皮膚では、前記角質層は、バリア機能を発現し、物理的刺激や化学的刺激から皮膚を保護している。
【0003】
正常な皮膚は、通常、28日間の周期でターンオーバーする。正常な皮膚のターンオーバーでは、ケラチノサイトが顆粒層から角質層へと押し上げられる。このとき、ケラチノサイトの分化により脱核が生じて有核細胞が消失し、成熟した角質層が形成される。しかしながら、炎症や皮脂中に含まれる不飽和脂肪酸などによって表皮における細胞の増殖速度が著しく大きくなり、角化の速度が異常に促進された場合、最終分化段階(表皮細胞内がケラチンで満たされ脱落に向かう段階)のケラチノサイトにおいて、脱核が起こらないことがある。これを「不全角化」という。
【0004】
不全角化を伴う皮膚は、上記するように皮膚の角化プロセスに不備が生じ正常な角質細胞が形成されないため、角質層のバリア機能が著しく低下していることから、物理的刺激や化学的刺激を十分に防ぐことができない状態になっている。そのため、不全角化を伴う皮膚では、ニキビ、肌荒れなどの皮膚トラブルが生じやすい。
【0005】
前記バリア機能を補うために、不全角化を伴う皮膚に対して、保湿剤などを含む皮膚外用剤が適用されている。しかしながら、一般に、前記保湿剤による表皮における保湿効果は、一時的に発揮されるにすぎないことから、当該保湿剤などを含む皮膚外用剤には、本質的な皮膚の状態の改善を期待することができないという欠点がある。そこで、不全角化を抑制し、当該不全角化を起因とする皮膚状態を予防または改善することができる有用な皮膚外用組成物が求められている。
【0006】
一方、エピモルフィンは、上皮組織の形態形成の制御に関与している因子の1つであると考えられている。また、前記エピモルフィンのノックアウトにより、マウスにおける癌化誘導が減少することが報告されている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0007】
前記上皮組織の形態形成を制御するために、エピモルフィンにより奏される上皮組織の形態形成促進作用を阻害するオリゴペプチドが提案されている(例えば、特許文献1および2を参照)。
【0008】
しかしながら、上皮組織の形態形成促進作用に対する前記オリゴペプチドの阻害作用は、上皮組織の形態形成を制御するには不十分であるため、エピモルフィンによって引き起こされる皮膚などの上皮細胞の形態・分化異常の発生などをより高い効率で抑制することができるさらに有用な化合物が求められている。
【0009】
一方、エピモルフィンのファミリータンパク質の中には、シンタキシン4(syntaxin 4)と称されるタンパク質がある(非特許文献2)。エピモルフィンと同様に皮膚細胞にて発現して存在するタンパク質であるが、エピモルフィンが真皮に存在するのに対して、シンタキシン4は表皮に大量に存在する(後述する実験例1~2参照)。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開平10-7698号公報
【特許文献2】特許第3922345号公報
【0011】

【非特許文献1】アニサ・シェーカー(Anisa Shaker)ら、「エピモルフィン欠損は、炎症誘導性結腸癌発生からマウスを守るとともに、幹細胞ニッチ筋線維芽細胞分泌を変える(Epimorphin deletion protects mice from inflammation-induced colon carcinogenesis and alters stem cell niche myofibroblast secretion)」、ザ・ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(The Journal of Clinical Investigation)、2010年5月10日、第120巻、p.2081-2093
【非特許文献2】セル(Cell)1993年9月10日、74(5)p.863-873
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、不全角化を伴う皮膚の異常な状態を抑制することができる、新規な環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を提供することを目的とする。また、本発明は、当該環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
さらに、本発明は、上記環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の用途、具体的には、シンタキシン4のアンタゴニストとしての使用、並びにシンタキシン4のアンタゴニストとしての作用に基づいて、不全角化を伴う皮膚の異常な状態を抑制し、当該状態を予防、治療または改善するために有効な皮膚外用組成物、並びにその他の医薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的に鋭意検討を重ねていたところ、後述する式(I)で示される特定のアミノ酸配列を有する環状ペプチド化合物が、皮膚の表皮に大量に発現し存在するシンタキシン4のアンタゴニストとして作用すること(実験例7)、そして当該アンタゴニスト作用に基づいて、シンタキシン4によって引き起こされる皮膚の分化異常(不全角化)を抑制するとともに(実験例6)、シンタキシン4による皮膚の代謝亢進を抑制することで(実験例4~5)、皮膚の不全角化やその悪化に伴って生じる皮膚の異常な状態を予防、治療または改善することができることを確認した。
【0015】
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであって、下記の実施形態を包含するものである。
【0016】
(I)環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩
(I-1)式(I)(配列番号1):
【0017】
【化1】
JP0005946447B2_000002t.gif

【0018】
〔式中、Xaaは置換基を有していてもよいアラニル基またはグリシル基、Xaaは置換基を有していてもよいイソロイシル基またはロイシル基、Xaaは置換基を有していてもよいグルタミル基またはアスパルチル基、Xaaは置換基を有していてもよいプロリル基またはグリシル基、Xaaは置換基を有していてもよいグルタミニル基またはアスパラギニル基、及びXaaは置換基を有していてもよいリシル基またはアルギニル基を示し;
は式(II):
【0019】
【化2】
JP0005946447B2_000003t.gif

【0020】
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基、及びmは0または1の整数を示し;並びに
はカルボキシル基がアミド化されていてもよいシスチン残基、及びlは0または1の整数を示す。但し、mとlが同時に0になることはない。〕
で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【0021】
(I-2)式(I)において、lが1である(I-1)に記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【0022】
(I-3)式(I)において、mが1である(I-1)または(I-2)に記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【0023】
(I-4)式(I)中、mが1であって、Rが、式(II)中、nが1~3の整数である基である、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【0024】
(I-5)式(I)中、mが1であって、Rが、式(II)中、nが1若しくは3である基である、(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【0025】
(I-6)式(I)中、mが0であり、lが1である、(I-1)または(I-2)に記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【0026】
(I-7)式(I)中、Xaaはアラニル基、Xaaはイソロイシル基、Xaaはグルタミル基、Xaaはプロリル基、Xaaはグルタミニル基、及びXaaはリシル基である、(I-1)乃至(I-6)のいずれかに記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩。
【0027】
なお、以下、上記式(I)で示される環状ペプチド化合物を「環状ペプチド化合物(I)」ともいう。
【0028】
(II)環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法
(II-1)式(I)(配列番号1):
【0029】
【化3】
JP0005946447B2_000004t.gif

【0030】
〔式中、Xaaは置換基を有していてもよいアラニル基またはグリシル基、Xaaは置換基を有していてもよいイソロイシル基またはロイシル基、Xaaは置換基を有していてもよいグルタミル基またはアスパルチル基、Xaaは置換基を有していてもよいプロリル基またはグリシル基、Xaaは置換基を有していてもよいグルタミニル基またはアスパラギニル基、及びXaaは置換基を有していてもよいリシル基またはアルギニル基を示し;
は式(II):
【0031】
【化4】
JP0005946447B2_000005t.gif

【0032】
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基、及びmは0または1の整数を示し;並びに
はカルボキシル基がアミド化されていてもよいシスチン残基、及びlは0または1の整数を示す。但し、mとlが同時に0となることはない。〕
で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法であって、式(III)(配列番号2):
【0033】
【化5】
JP0005946447B2_000006t.gif

【0034】
〔式中、Xaaは置換基を有していてもよいアラニル基またはグリシル基、Xaaは置換基を有していてもよいイソロイシル基またはロイシル基、Xaaは置換基を有していてもよいグルタミル基またはアスパルチル基、Xaaは置換基を有していてもよいプロリル基またはグリシル基、Xaaは置換基を有していてもよいグルタミニル基またはアスパラギニル基、及びXaaは置換基を有していてもよいリシル基またはアルギニル基を示し、
上記Rは式(IV):
【0035】
【化6】
JP0005946447B2_000007t.gif

【0036】
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基、及びmは0または1の整数を示し;並びにlは同時に0または1の整数を示す。但し、mとlが同時に0となることはない。なお、lが1であるとき、C末端のシステイニル基のカルボキシル基はフリーでも、またアミド化されていてもよい。〕
で表される化合物を環化させることを特徴とする環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法。
【0037】
(II-2)式(I)中、lが1である、(II-1)に記載する製造方法。
【0038】
(II-3)式(I)中、mが1であって、Rが、式(II)中、nが1~3の整数である基である(II-1)又は(II-2)に記載する製造方法。
【0039】
(II-4)式(I)中、mが1であって、Rが、式(II)中、nが1若しくは3である基である(II-1)又は(II-2)に記載する製造方法。
【0040】
(II-5)式(I)中、mが0であり、lが1である、(II-1)または(II-2)に記載する製造方法。
【0041】
(II-6)式(I)中、Xaaはアラニル基、Xaaはイソロイシル基、Xaaはグルタミル基、Xaaはプロリル基、Xaaはグルタミニル基、及びXaaはリシル基である、(II-1)乃至(II-5)のいずれかに記載する製造方法。
【0042】
(III)環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の用途
(III-1)(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩からなる、シンタキシン4のアンタゴニスト。
【0043】
(III-2)(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を有効成分とする外用組成物。
【0044】
(III-3)外用組成物が、外用医薬品、外用医薬部外品、または化粧品である、(III-2)に記載する外用組成物。
【0045】
(III-4)(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を有効成分とする医薬組成物、医薬部外品組成物、または化粧料組成物。
【0046】
(III-5)シンタキシン4によって引き起こされる皮膚の異常な状態を予防、治療または改善するための組成物である、(III-2)または(III-3)に記載する外用組成物。
【0047】
(III-6)シンタキシン4によって引き起こされる皮膚の異常な状態が、皮膚の不全角化、不全角化を起因とする皮膚の異常状態(肌荒れ、ニキビ、吹き出物、タコ、イボ、乾癬)、または皮膚の異常状態における代謝亢進である(III-5)に記載する外用組成物。
【0048】
(III-7)エピモルフィンによって引き起こされるか、エピモルフィンの過剰発現によって発症若しくは増悪する疾患または病態を予防、治療または改善するための組成物である、(III-4)に記載する医薬組成物、医薬部外品組成物、または化粧料組成物。
【0049】
(III-8)上記疾患または病態が、臓器の損傷、慢性閉塞性動脈硬化症、またはバージャー病である、(III-7)に記載する医薬組成物、医薬部外品組成物、または化粧料組成物。
【0050】
(III-9)シンタキシン4によって引き起こされる皮膚異常を有する被験者の当該皮膚に、(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩、または(III-2)または(III-3)に記載する組成物を適用する工程を有する、シンタキシン4によって引き起こされる皮膚の異常を治療または改善する方法。
【0051】
(III-10)エピモルフィンによって引き起こされるか、エピモルフィンの過剰発現によって発症若しくは増悪する疾患または病態を有する被験者に(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩、または(III-4)に記載する組成物を投与する工程を有する、上記疾患または病態を治療または改善する方法。
【0052】
なお、上記(III-9)及び(III-10)において、被験者にはヒトを始めとする哺乳動物が含まれる。
【0053】
(III-11)シンタキシン4によって引き起こされる皮膚異常、またはエピモルフィンによって引き起こされるか、エピモルフィンの過剰発現によって発症若しくは増悪する疾患または病態を予防、治療または改善するための医薬組成物、医薬部外品組成物、または化粧料組成物を製造するための、(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の使用。
【0054】
(III-12)シンタキシン4によって引き起こされる皮膚異常、またはエピモルフィンによって引き起こされる疾患を予防、治療または改善するための医薬組成物、医薬部外品組成物、または化粧料組成物を製造するための、(I-1)乃至(I-7)のいずれかに記載する環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の使用。
【発明の効果】
【0055】
本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩は、シンタキシン4に対して拮抗的に作用して、その生理活性を制御する。このため、本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩は、シンタキシン4に対するアンタゴニストとして用いることができる。具体的には、本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩によれば、シンタキシン4に対するアンタゴニスト作用に基づいて、シンタキシン4によってヒトの皮膚に引き起こされる皮膚の不都合な状態(例えば、不全角化を伴う皮膚の異常状態、当該異常状態における皮膚の代謝亢進)の発生や増悪を抑制することができるという効果を奏することができる。本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩は、当該作用に基づいて、外用組成物として、特に外用医薬品、外用医薬部外品、または化粧料として有用である。
【0056】
また、本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩は、シンタキシン4の機能もしくは特性を解明または検証する実験系において、シンタキシン4の活性を制御するための試薬として用いることができる。さらに、前述するように、シンタキシン4のアンタゴニストとして、シンタキシン4またはシンタキシン4作用剤の活性・作用評価系の試薬や対照薬として用いることができる。
【0057】
また、本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩の製造方法によれば、前記環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩を簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】皮膚組織におけるシンタキシン4(stx4)の発現部位を示す図である(実験例1)。これからエピモルフィン(EPM)は真皮層で発現するのに対して、シンタキシン4は表皮層で発現して局在しており、表皮の分化に深く関与している可能性が示唆される。
【図2】シンタキシン4は、ヒト皮膚の表皮細胞の外側表面に提示された状態で発現していることを示す図である(実験例2)。
【図3】シンタキシン4は、エピモルフィンと同様に、CHX刺激により、正常ヒト表皮細胞の細胞外に提示されるタンパク質であることを示す図である(実験例3)。一方、細胞外に提示されることのないタンパク質であるシンタキシン6(Syntain6)は検出されていない。
【図4】本発明の環状ペプチド化合物(ST40、ST41、ST4gaba)の正常ヒト表皮細胞の代謝に及ぼす影響を評価した結果を示す(実験例4)。縦軸は正常ヒト表皮細胞の細胞代謝量を、横軸は添加ペプチド(左からペプチド無添加、ペプチドST41、ペプチドST40、及びペプチドST4gaba)を意味する。
【図5】本発明の環状ペプチド化合物(ST40、ST41、ST4gaba)の、正常ヒト表皮細胞及びEP4M強発現表皮細胞の代謝に及ぼす影響を評価した結果を示す(実験例5)。図5において、横軸の左側から1~4番目の結果は、図4に示した結果を併記したものであり、左からペプチド無添加、環状ペプチドST41添加、環状ペプチドST40添加、及び環状ペプチドST4gaba添加した場合における正常ヒト表皮細胞(HaCaT細胞)の代謝量を示す。また横軸中央の結果は、EPΔM発現表皮細胞の細胞代謝量を示す。さらに左から6~9番目の結果は、左からペプチド無添加、ペプチドST41添加、ペプチドST40添加、及びペプチドST4gaba添加した場合におけるEP4M発現表皮細胞の細胞代謝量を示す。
【図6】左端から、正常ヒト表皮細胞の角化率、並びにEPΔM処理表皮細胞、EP4M処理表皮細胞、及び「EP4M+ST41」処理表皮細胞における角化率をそれぞれ示す(実験例6)。
【図7】左端から、正常ヒト表皮細胞、r-stx4処理表皮細胞、及び「r-stx4+ST41」処理表皮細胞における角化能(コーニファイドエンベロープ形成能:CCE形成能)を示す(実験例7)。なお、角化能(CCE形成能)は、正常ヒト表皮細胞を1とした相対比で示す。
【図8】左端から、対照の表皮細胞(正常ヒト表皮細胞に空の発現ベクターを導入した細胞)、EPM強制発現表皮細胞、EPn1処理+EPM強制発現表皮細胞、stx4強制発現表皮細胞、ST41処理+stx4強制発現表皮細胞における角化能(コーニファイドエンベロープ形成能:CCE形成能)を示す(実験例8)。なお、角化能(CCE形成能)は、正常ヒト表皮細胞を1とした相対比で示す。**:p<0.01【図10】(A)は、1ウェルあたりに播いた細胞数が1.0×104/wellの場合の接着アッセイの結果、(B)は、1ウェルあたりに播いた細胞数が2.0×104/wellの場合の接着アッセイの結果を示す(実験例10)。
【図11】実験例11の結果を示す。(A)各種組換えタンパク質(シンタキシン4(stx4)、エピモルフィン(EPM)、変異エピモルフィン(EP4M))を各条件(還元条件、非還元条件、native条件)で電気泳動した結果を示す。(B)電気泳動の結果から推定した各種組換えタンパク質(シンタキシン4(stx4)、エピモルフィン(EPM)、変異エピモルフィン(EP4M))の立体構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
1.環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩
本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、式(I)(配列番号1):

【0060】
【化7】
JP0005946447B2_000008t.gif

【0061】
〔式中、Xaaは置換基を有していてもよいアラニル基またはグリシル基、Xaaは置換基を有していてもよいイソロイシル基またはロイシル基、Xaaは置換基を有していてもよいグルタミル基またはアスパルチル基、Xaaは置換基を有していてもよいプロリル基またはグリシル基、Xaaは置換基を有していてもよいグルタミニル基またはアスパラギニル基、及びXaaは置換基を有していてもよいリシル基またはアルギニル基を示し;
は式(II):

【0062】
【化8】
JP0005946447B2_000009t.gif

【0063】
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基、及びmは0または1の整数を示し;並びに
はカルボキシル基がアミド化されていてもよいシスチン残基、及びlは0または1の整数を示す。但し、mとlが同時に0となることはない。〕
で表される構造(配列番号1)を有する。

【0064】
で示すシスチン残基とは、例えば下式に示すように、2つのシステイニル基が互いにジスルフィド結合して形成された残基を意味する。当該シスチン残基は、上記するように、カルボキシル基がアミド化されていてもよい。

【0065】
【化9】
JP0005946447B2_000010t.gif

【0066】
(式中、+は、隣接するアミノ酸残基との結合部位を意味する。)
なお、本明細書において、特に言及しない限り、各アミノ酸(Xaa~Xaa等)間を連結する結合様式はペプチド結合である。例えば上記式(I)において、RとXaaとの結合、XaaとXaaとの結合、XaaとXaaとの結合、XaaとXaaとの結合、XaaとXaaとの結合、XaaとXaaとの結合、XaaとRとの結合、及びRとRとの結合はいずれもペプチド結合である。

【0067】
本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、式(I)で表される構造を有することを特徴とし、かかる構造に基づいて、シンタキシン4に対するアンタゴニスト作用、及びシンタキシン4によって引き起こされる皮膚状態の異常を抑制することができる。以下、シンタキシン4によって引き起こされる皮膚状態の異常を抑制する作用を、単に「抑制作用」ともいう。

【0068】
Xaa1は、置換基を有してもよいアラニル基、置換基を有してもよいグリシル基である。前記置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよい。Xaa1が置換基を有してもよいアラニル基または置換基を有してもよいグリシル基である場合、かかる置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピルなどの炭素数1-3の低級アルキル基などが挙げられる。前記Xaa1のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは置換基を有しないアラニル基である。

【0069】
Xaa2は、置換基を有してもよいイソロイシル基、または置換基を有してもよいロイシル基である。前記置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよい。前記置換基としては、例えば、炭素数1~3のアルキル基などが挙げられる。前記Xaa2のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは置換基を有しないイソロイシル基である。

【0070】
Xaa3は、置換基を有してもよいグルタミル基、または置換基を有してもよいアスパラチル基である。前記置換基は、本発明の目的を阻害しない官能基であればよい。Xaa3が置換基を有してもよいグルタミル基である場合、前記置換基としては、アミノ基などが挙げられる。Xaa3が置換基を有してもよいアスパラチル基である場合、前記置換基としては、スクシンイミド基、リン酸基などが挙げられる。前記Xaa3のなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは置換基を有しないグルタミル基である。

【0071】
Xaaは、置換基を有してもよいプロリル基またはグリシル基である。当該置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよく、例えば、メチル、エチル、プロピルなどの炭素数1-3の低級アルキル基などが挙げられる。前記Xaaのなかで、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは置換基を有しないプロリル基である。

【0072】
Xaaは、置換基を有してもよいグルタミニル基、または置換基を有してもよいアスパラギニル基である。前記置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよい。Xaaが置換基を有してもよいグルタミニル基である場合、前記置換基としては、カルボキシル基などが挙げられる。またXaaが置換基を有してもよいアスパラギニル基である場合、前記置換基としては、単糖または多糖から誘導されたチオグリコシル基、単糖または多糖から誘導されたO-グリコシル基、単糖または多糖から誘導されたN-グリコシル基などが挙げられる。前記Xaaのなかでは、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは置換基を有しないグルタミニル基である。

【0073】
Xaaは、置換基を有してもよいリシル基、または置換基を有してもよいアルギニル基である。前記置換基は、本発明の効果を阻害しない官能基であればよい。Xaaが置換基を有してもよいリシル基である場合、前記置換基としては、メチル、エチル、プロピルなどの炭素数1-3の低級アルキル基などが挙げられる。またXaaが置換基を有してもよいアルギニル基である場合、前記置換基としては、メチル、エチル、プロピルなどの炭素数1-3の低級アルキル基などが挙げられる。前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは置換基を有しないリシル基である。

【0074】
なお、Xaa~Xaa、RおよびRは、それぞれ、L-体の官能基であってもよく、D-体の官能基であってもよい。ヒトの皮膚への適応性の観点から、Xaa~Xaa、R1およびRは、好ましくはL-体の官能基である。

【0075】
式(I)で表される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩のなかで、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは、式(I)において、lが1である環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩が特に好ましい。さらに、mが0であって、lが1である化合物;またはmが1、及びlが0または1であって、Rで示される基が、式(II)において、nが1~10の整数である化合物である。nは、好ましくは8以下の整数、より好ましくは5以下の整数、さらに好ましくは3以下の整数である。特に好ましくは1~3の整数、なかでも1若しくは3であることが好ましい。なお、mが1であるとき、lも同時に1であることが好ましい。

【0076】
前記薬理的に許容される塩としては、酸付加塩および塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、無機酸塩、有機酸塩などが挙げられる。前記無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩などが挙げられる。また、有機酸塩としては、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩などが挙げられる。塩基付加塩としては、無機塩基塩、有機塩基塩などが挙げられる。無機塩基塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基塩としては、例えば、トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩などの有機塩基塩などが挙げられる。

【0077】
2.環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造方法
本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩の製造方法は、式(III)(配列番号2):

【0078】
【化10】
JP0005946447B2_000011t.gif

【0079】
〔式中、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、m及び1は、式(I)における各定義と同じ、
は式(IV):

【0080】
【化11】
JP0005946447B2_000012t.gif

【0081】
(式中、nは1~10の整数を示す)
で表される基を示す。但し、mとlは同時に0にはならない。〕
で表される鎖状ペプチド化合物を合成し、得られた鎖状ペプチド化合物(III)を環化させることによって実施することができる。かかる本発明の製造方法によれば、式(III)で表されるペプチド化合物を環化させることによって、前記環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を、簡便に、かつ効率よく製造することができる。

【0082】
なお、上記式(III)中、lが1である鎖状ペプチドは、C末端のシステイニル基のカルボキシル基がフリーであっても、またアミド化されていてもよい。

【0083】
式(III)で表されるペプチド化合物のうち、例えば、mが0であり、lが1である化合物は、式(III)におけるCys、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、XaaおよびCysそれぞれに対応するアミノ酸を用いて、ペプチドの化学合成法を行なうことにより製造することができる。また、式(III)で表されるペプチド化合物のうち、例えば、mとlがいずれも1である化合物は、式(III)におけるCys、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Cysそれぞれに対応するアミノ酸、及び式(V):

【0084】
【化12】
JP0005946447B2_000013t.gif

【0085】
〔式中、nは式(I)におけるnと同じである〕
で表される化合物を用い、ペプチドの化学合成法などを行なうことにより製造することができる。さらに、式(III)で表されるペプチド化合物のうち、例えば、mが1でlが0である化合物は、式(III)におけるXaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaaそれぞれに対応するアミノ酸、及び式(V):

【0086】
【化13】
JP0005946447B2_000014t.gif

【0087】
〔式中、nは式(I)におけるnと同じである〕
で表される化合物を用い、ペプチドの化学合成法などを行なうことにより製造することができる。

【0088】
前記化学合成法としては、例えば、固相合成法、段階的伸長法、液相合成法などが挙げられる。前記化学合成法のなかでは、目的とする環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の製造が容易であり、しかも、その収率および純度が高いことから、固相合成法が好ましい。前記固相合成法としては、例えば、Fmoc合成法、Boc合成法などが挙げられる。かかる固相合成法は、市販のペプチド合成機を用いて行なうことができる。

【0089】
固相合成法を行なう場合、固相として、例えば、ペプチド合成用樹脂などが用いられる。前記ペプチド合成用樹脂としては、例えば、PAM樹脂、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4-ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4-メチルベンズヒドリルアミン樹脂、4-ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4-(2’,4’-ジメトキシフェニル-ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂などが挙げられる。

【0090】
固相合成法において、前記アミノ酸は、前記保護基によって分子内のアミノ基を予め保護して用いられる。前記保護基としては、例えば、9-フルオレニル-メトキシカルボニル(Fmoc)基、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、前記アミノ酸は、必要に応じて、側鎖の官能基を当該官能基に応じた保護基により保護して用いることができる。なお、本明細書において、アミノ基や側鎖の官能基が保護されているアミノ酸を「保護アミノ酸」という。

【0091】
式(V)において、nが1である場合、式(V)で表される化合物として、グリシンを用いることができる。式(V)において、nが2である場合、式(V)で表される化合物として、β-アラニンを用いることができる。また、式(V)において、nが3である場合、式(V)で表される化合物として、4-アミノ酪酸(γ-アミノ酪酸)を用いることができる。式(V)において、nが4~10の整数である場合、式(V)で表される化合物は、ストレッカー反応ならびにゼリンスキー・スタドニコフの変法を利用した化学合成によって得ることができる。固相合成法において、かかる式(V)で表される化合物は、前記アミノ酸の場合と同様に、アミノ基および必要に応じて側鎖の官能基を当該官能基に応じた保護基により保護して用いる。なお、本明細書において、アミノ基や側鎖の官能基が保護されている式(V)で表される化合物を「保護化合物」という。

【0092】
式(III)で表されるペプチド化合物のうち、例えば、mが0であり、lが1である化合物は、固相合成法を行なう場合、式(III)におけるCys、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、およびCysに対応する保護アミノ酸または保護化合物を、この順で、ペプチド合成用樹脂上で逐次的に縮合させ、つぎに、前記ペプチド合成用樹脂から式(III)で表される化合物に対応する産物を切り出すと同時に保護基を除去する。また、式(III)で表されるペプチド化合物のうち、例えば、mとlが同時に1である化合物は、固相合成法を行なう場合、式(III)におけるCys、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、R、およびCysに対応する保護アミノ酸または保護化合物を、この順で、ペプチド合成用樹脂上で逐次的に縮合させ、つぎに、前記ペプチド合成用樹脂から式(III)で表される化合物に対応する産物を切り出すと同時に保護基を除去する。さらに、式(III)で表されるペプチド化合物のうち、例えば、mが1でlが0である化合物は、固相合成法を行なう場合、式(III)におけるXaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、Xaa、及びRに対応する保護アミノ酸または保護化合物を、この順で、ペプチド合成用樹脂上で逐次的に縮合させ、つぎに、前記ペプチド合成用樹脂から式(III)で表される化合物に対応する産物を切り出すと同時に保護基を除去する。

【0093】
前記縮合には、一般的なペプチド合成に用いられる活性化試薬などが用いられる。前記縮合の際の反応温度は、ペプチドの合成において一般的な温度であればよい。通常、前記反応温度は、約-20℃~50℃の範囲から適宜選択される。

【0094】
保護基の除去は、例えば、触媒の存在下での水素気流中での酸処理、アルカリ処理、接触還元などにより行なうことができる。

【0095】
式(III)で表される化合物の製造後、必要に応じて、得られた生成物の精製を行なってもよい。前記精製は、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーによって行なうことができる。

【0096】
本発明の環状ペプチド化合物(I)が、式(I)中、lが1である化合物の場合、式(III)で表される化合物の環化は、かかる化合物の両末端のシステイニル基のチオール基を酸化架橋させることにより行なうことができる、前記システイニル基同士のジスルフィド化は、例えば、式(III)で表される化合物を、酢酸水溶液などの酸性水溶液中でヨウ素によって酸化させることによって形成させることができる。

【0097】
本発明の環状ペプチド化合物(I)が、式(I)中、lが0であり、mが1である化合物の場合、式(III)で表される化合物の環化は、かかる化合物の両末端のアミノ酸残基同士(Rで示されるアミノ酸残基とXaaで示されるアミノ酸残基同士)をペプチド結合させることにより行なうことができる、かかるアミノ酸残基同士のペプチド結合は、例えば、式(III)(式中、lは0であり、mは1である)で表される化合物に通常のペプチド合成に用いられる縮合試薬を作用させることによって行うことができ、斯くして環状構造を形成させることができる。

【0098】
得られた生成物が式(I)で表される化合物であることは、例えば、プロテインシークエンサーや質量分析装置などによって確認することができる。

【0099】
なお、式(I)で表される化合物が遊離体として得られた場合、式(I)で表される化合物の薬理的に許容できる塩は、得られた生成物を、必要に応じて、常法にしたがって薬理的に許容できる塩に変換することにより得ることができる。

【0100】
また、得られた生成物がその分子内に前記保護基を有する場合、常法に従って前記保護基を脱離させることができる。なお、保護基の導入と脱保護に関して、例えば、グリーンズ・プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス第4版〔ペーター・G.M.ワッツ(Peter G.M.Wuts)およびテオドラ.W.グリーン(Theodora W.Greene)著、Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis、2006年発行〕に記載の方法に従うこともできる。また、必要に応じて、得られた生成物の単離や精製を行なってもよい。前記生成物の単離や精製は、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーなどによって行なうことができる。

【0101】
本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩は、シンタキシン4に対して拮抗的に働く(アンタゴニスト作用)。このため、本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩は、シンタキシン4の生理活性を抑制し、当該シンタキシン4によって引き起こされる皮膚状態の異常を抑制することができる。かかる皮膚状態の異常としては、制限されないが、例えば、ヒトを含む動物の皮膚の不全角化などを例示することができる。従って、本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩によれば、皮膚の不全角化を抑制することにより、当該不全角化に起因する皮膚状態の異常を改善することができる。かかる皮膚状態の異常としては、例えば、肌荒れ、ニキビ、吹き出物、タコ、イボ、乾癬などが挙げられる。

【0102】
これらのことから、本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩は、外用組成物、例えば外用の医薬品、医薬部外品、及び化粧品の有効成分として有用である。また、本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩は、シンタキシン4に対するアンタゴニストとして、シンタキシン4またはそのアゴニストの作用等を評価する試薬として有用である。

【0103】
なお、本発明で対象とするシンタキシン4は、その由来を特に制限されるものではないが、ヒト及びその他の動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌなど)の皮膚表皮細胞において発現するタンパク質である。マウス(Mus musculus)のシンタキシン4のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列を、配列番号3及び4のそれぞれに示す(NCBI-GeneID:20909、KEGG entry No.: mmu: 20909)。またヒトのシンタキシン4のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列を配列番号5及び6のそれぞれに示す(NCBI-GeneID:6810、KEGG entry No.: hsa:6810)。

【0104】
本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩による前記抑制作用は、例えば、(a)シンタキシン4を強発現する表皮細胞を、本発明の環状ペプチド化合物の存在下で培養することにより、シンタキシン4を強発現することによって増加した標記細胞の代謝量が抑制されること、または(b)本発明の環状ペプチド化合物を含む培地中でシンタキシン4を強発現する表皮細胞を培養した後、得られた表皮細胞をカルシウムイオン導入剤を含む培地中で培養することにより、シンタキシン4を強発現することによって増大した皮膚の角化能(不全角化)が抑制されることに基づいて評価することができる。

【0105】
また(c)本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩のシンタキシン4に対するアンタゴニスト作用(拮抗作用)を評価することによっても、上記抑制作用を評価することができる。

【0106】
3.環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の用途
(3-1)外用組成物
本発明は、式(I)で示される環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩を有効成分とする外用組成物を提供する。本発明が対象とする外用組成物には、前述するように、外用の医薬品(皮膚外用剤)、医薬部外品、及び化粧料が含まれる。

【0107】
本発明の外用組成物中における前記環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩の含有量は、前記外用組成物の種類やその形状などによって異なるので、一概には決定することができず、前記外用組成物の種類やその形状などに応じて適宜設定することが好ましい。通常、本発明の外用組成物中における前記環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩の含有量は、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは0.00000001質量%以上、より好ましくは0.0000001質量%以上、取り扱い時における容易性を確保するとともに、ヒトへの負荷を抑制する観点から、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。なお、液剤や乳液剤の形状を有する外用組成物の場合、当該外用組成物中における前記環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩の含有量は、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは1ng/mL以上、より好ましくは10ng/mL以上、取り扱い時における容易性を確保する観点から、好ましくは10mg/mL以下、より好ましくは100μg/mL以下である。

【0108】
本発明の外用組成物には、本発明の目的が妨げられない範囲で、医薬品、医薬部外品または皮膚化粧料に配合されるその他の成分が配合されていてもよい。前記成分としては、例えば、油性成分、保湿剤、界面活性剤、安定化剤、防腐剤、酸化防止剤、粘度調整剤、キレート化剤、アルコール、pH調整剤、香料、色素、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、ビタミン、アミノ酸、水などが挙げられる。本発明の外用組成物中における前記成分の含有量は、外用組成物の形状や各成分の種類などによって異なるので、一概には決定することができず、外用組成物の形状や各成分の種類などに応じて適宜設定することが好ましい。

【0109】
なお、外用医薬品としては、例えば、軟膏、クリーム、ローション、ゲル剤、ムース、噴霧剤(スプレー)などが挙げられる。外用の医薬部外品としては、例えば、軟膏、クリーム、ローション、ゲル剤、ムース、噴霧剤(スプレー)などが挙げられる。

【0110】
また、皮膚化粧料としては、特に限定されないが、例えば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ファンデーションなどが挙げられる。洗顔料としては、特に限定されないが、例えば、石けん、クレンジングフォーム、クレンジングジェル、洗顔パウダー、シェービングフォーム、クレンジングミルク、クレンジングオイル、クレンジングマスクなどが挙げられる。化粧水としては、特に限定されないが、例えば、柔軟化粧水、収れん化粧水などが挙げられる。乳液としては、例えば、エモリエントローション、マッサージローション、クレンジングローション、メーキャップローション、ハンドローション、ボディーローションなどが挙げられる。クリームとしては、特に限定されないが、メーキャップクリーム、ベースクリーム、プレメーキャップクリーム、エモリエントクリーム、クレンジングクリーム、ファンデーションクリーム、マッサージクリーム、デオドラントクリームなどが挙げられる。ファンデーションとしては、パウダーファンデーション、ケーキタイプファンデーション、両用ファンデーションなどが挙げられる。

【0111】
本発明の外用組成物によれば、当該外用組成物を、不全角化を伴う皮膚と接触させることにより、シンタキシン4と拮抗することでその生理活性を抑制し、当該シンタキシン4により引き起こされる不全角化の状態を改善することができる。したがって、本発明の外用組成物によれば、不全角化を起因とする皮膚の状態を改善することができる。また、シンタキシン4は、ヒトなどの動物の皮膚の表皮最終分化(細胞内がケラチンで満たされ脱落に向かう過程)を抑制するとともに、表皮細胞の代謝を亢進させる作用がある。本発明の外用組成物によれば、シンタキシン4と拮抗することでその生理活性を抑制し、当該シンタキシン4により引き起こされる皮膚の分化異常と代謝亢進による不全角化の悪化を抑制することができる。

【0112】
本発明の外用組成物の皮膚への使用量は、皮膚の状態や範囲などによって異なるので、一概には決定することができず、皮膚の状態や範囲などに応じて適宜設定することが好ましい。通常、前記外用組成物の使用量は、皮膚の面積10cm2あたりの前記環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の量が、前記抑制作用を十分に発現させる観点から、好ましくは1ng以上、より好ましくは10ng以上となり、取り扱い時における容易性を確保する観点から、好ましくは1000μg以下、より好ましくは100μg以下、さらに好ましくは10μg以下となる程度に調整されることが望ましい。

【0113】
本発明の外用組成物と皮膚との接触は、当該外用組成物の剤形などに応じた方法によって行なうことができる。

【0114】
以上のように、本発明の外用組成物によれば、ヒトを含む動物の皮膚の不全角化を抑制することができることから、前記不全角化に起因するヒトの皮膚の異常状態を改善することができる。したがって、本発明の外用組成物は、不全角化に起因するヒトの皮膚の異常状態を予防または改善するために好適に使用することができる。

【0115】
(3-2)その他の医薬用途
本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、シンタキシン4に対し拮抗的に働き、シンタキシン4の生理活性を抑制し、当該シンタキシン4によって引き起こされるヒトの組織の状態の異常を抑制することができるので、上記で説明したヒトの皮膚の不全角化などの抑制のほか、各種の医薬用途に適用することができる。

【0116】
例えば、シンタキシン4と同じファミリーであるエピモフィンは、内胚葉細胞に存在するレセプター型チロシンキナーゼを介して臓器の形成などに関与していることが知られている。また、エピモルフィンが過剰に発現した場合、例えば、慢性関節リウマチ、癌(例えば、腎細胞癌、皮膚癌など)、動脈硬化症、膠原病、造血器疾患、腎疾患、筋ジストロフィー、骨粗鬆症、神経線維腫症、Sturge-Weber症候群、結節性硬化症、神経管閉塞障害、分節異常、脳孔症、水頭症などの疾患が引き起こされる可能性がある。本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩によれば、シンタキシン4の生理活性を抑制することができることから、同様にエピモフィンの生理活性をも抑制できると考えられ、例えば、肺、肝臓、腎臓、胃、腸などの臓器の損傷の治療、血管再生、慢性閉塞性動脈硬化症状、バージャー病などの予防・治療、さらにはエピモルフィンの過剰発現に起因する疾患の予防または治療などの用途に有用である。したがって、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、エピモルフィンの過剰発現に起因する疾患の予防または治療剤、慢性閉塞性動脈硬化症状、バージャー病などの予防または治療剤、損傷臓器の治療剤などの製剤として有用であると考えられる。

【0117】
前記製剤においては、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩は、器官、局所部位、組織などに導入するに適した薬理的に許容される担体に保持させてもよい。

【0118】
前記製剤中における本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の含有量は、治療上有効量であり、前記製剤の用途、投与経路、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、剤形などによって異なることから一概には決定することができないが、前記製剤の用途、投与経路、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、剤形などに応じて適宜設定することができる。通常、前記製剤中における本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の含有量は、0.0001~100質量%である。

【0119】
また、前記製剤は、前記製剤の用途、投与経路、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、剤形などに応じて、他の助剤をさらに含有していてもよい。前記助剤としては、例えば、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の効果を発現させる対象となる部位に到達するまでの間に、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の分解を抑制する性質を呈する薬理的に許容される助剤、賦形剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤などが挙げられる。

【0120】
製剤の剤形は、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類などによって適切な剤形が異なることから一概には決定することができないが、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。前記製剤の剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、シロップ剤、注射剤などが挙げられる。

【0121】
前記製剤の投与経路は、前記製剤の用途、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、投与対象となるヒトの年齢または体重などによって異なることから一概には決定することができないが、前記製剤の用途、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、投与対象となるヒトの年齢または体重などに応じて適宜決定することが好ましい。前記製剤の投与経路としては、例えば、局所投与、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、経口投与などが挙げられる。

【0122】
前記製剤の投与量は、前記製剤の用途、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、投与対象となるヒトの年齢または体重などによって異なることから一概には決定することができないが、前記製剤の用途、適用対象となる疾患または損傷臓器の種類、投与対象となるヒトの年齢または体重などに応じて適宜決定することが好ましい。前記製剤の投与量は、例えば、投与対象となるヒトが成人である場合、1日あたり成人の体重1kgに対して、本発明の環状ペプチド化合物またはその薬理的に許容される塩の量が、シンタキシン4の生理活性を十分に抑制する観点から、好ましくは1μg以上、より好ましくは10μg以上となり、投与対象のヒトへの負荷を抑制する観点から、好ましくは10mg以下、より好ましくは1mg以下となるように調整されることが望ましい。
【実施例】
【0123】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、Cysはシステイニル基、Alaはアラニル基、Glnはグルタミニル基、Gluはグルタミル基、Ileはイソロイシル基、Proはプロリル基、Glyはグリシル基を示す。
【実施例】
【0124】
実施例1 環状ペプチドの製造
式(I)において、Xaaがアラニル基、Xaaがイソロイシル基、Xaaがグルタミル基、Xaaがプロリル基、Xaaがグルタミニル基、及びXaaがリシル基であり、m及びlがいずれも1であり、R基中、nが1、Rのシスチン残基のカルボキシル基がアミド化されている環状ペプチド(ST41)を以下のようにして、合成した。
【実施例】
【0125】
(1)ST41ペプチドの合成(m=1、l=1、n=1)
出発原料として、Fmoc-Cys(Trt)-Trt(2-Cl)樹脂〔2-クロロトリチル樹脂1gあたりFmoc-Cys(Trt)の量が0.70mmol〕0.25mmol相当量を、自動ペプチド合成装置〔アプライド・バイオシステム(Applied Biosystem)社製、商品名:430A〕に入れた。
【実施例】
【0126】
樹脂上のFmoc基を20体積%ピペリジン含有N-メチルピロリドン溶液で除去し(脱保護)、洗浄した。その後、ペプチド合成装置のプログラムの制御下に、Fmoc-アミノ酸誘導体であるFmoc-Lys(Boc)1mmolをカップリング剤〔0.5mmol O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(以下、「HBTu」という)と0.5mmol 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(以下、「HOBt」という)とを含むジメチルホルムアミド〕で活性化させ、前記反応槽に入れた。これにより、前記反応槽内において、樹脂上のアミノ酸残基とFmoc-アミノ酸誘導体とのカップリング反応を行ない、Fmoc基保護ペプチド鎖を生成した。
【実施例】
【0127】
つぎに、樹脂上のFmoc基を20体積%ピペリジン含有N-メチルピロリドン溶液で除去し(脱保護)、洗浄した。その後、配列に従ってFmoc-Lys(Boc)、Fmoc-Gln(Trt)、Fmoc-Pro、Fmoc-Glu(OBu)、Fmoc-Ile、Fmoc-Ala、Fmoc-GlyおよびFmoc-Cys(Trt)をこの順で用いて前記と同様の操作を行なうことにより、配列番号7に示されるアミノ酸配列に従って、対応するFmoc-アミノ酸誘導体を樹脂上のFmoc基保護ペプチド鎖に逐次導入し、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する保護ペプチド樹脂を得た。なお、カップリング反応の成否は、カイザーテストを行なうことにより適宜確認した。つづいて、樹脂中のFmoc基を除去した後、全保護基の除去と樹脂担体からの切り出しを行った。
【実施例】
【0128】
得られた保護ペプチドを含む樹脂を、トリフルオロ酢酸(以下、「TFA」という)とトリイソプロピルシラン(以下、「TIS」という)と水とエタンジチオール(以下、「DT」という)の混合液〔TFA/TIS/水/DT(体積比)が92.5/2.5/2.5/2.5〕中、室温で2時間インキュベーションして脱保護および樹脂からのペプチド鎖の切り出しを行なった。インキュベーション後の混合液から2-クロロトリチル樹脂をろ別し、ろ液を得た。得られたろ液を減圧下に濃縮して当該ろ液からTFAを留去した。得られた残渣に、冷却ジエチルエーテルを添加して、ペプチドの粗生成物の沈殿物約700mgを回収した。
【実施例】
【0129】
得られた粗生成物約700mgを、逆相カラム〔ゾルバックス(Zorbax)社製、オクタデシルシリカカラム、カラムの内径:30mm、カラムの長さ250mm〕を備えた高速液体クロマトグラフィー分取装置〔(株)島津製作所製、商品名:モデルLC8A〕に供した。そして、0.1体積%トリフルオロ酢酸水溶液と0.1体積%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル溶液とを用い、溶離液中のアセトニトリルの濃度勾配が1~60体積%となるように溶離液中のアセトニトリルの濃度を調整しながら、流速:1.0mL/分で25分間クロマトグラフィーを行なった。目的のペプチドを含む画分を回収し、前記画分からアセトニトリルを留去した。つぎに、残渣を凍結乾燥させ、目的のペプチドのトリフルオロ酢酸塩110mgを得た。前記ペプチドは、HPLC及び質量分析測定で配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることが確認された。
【実施例】
【0130】
(2)ペプチドの環化
前記(1)で得られたペプチド110mg(0.135mmol)を50体積%酢酸水溶液130mLに添加した。得られた混合物に、0.5Mヨウ素水溶液210μL(0.8当量)を添加し、撹拌しながら室温で3時間混合した。これにより、ペプチド中の2つのシステイニル基のチオール基を酸化して、ジスルフィド結合を形成させた。その後、得られた混合物にアスコルビン酸70mgを添加した。
【実施例】
【0131】
つぎに、得られた混合物を、逆相カラム〔ズルバックス(Zorbax)社製、オクタデシルシリカカラム、カラムの内径:30mm、カラムの長さ250mm〕を備えた逆相高速クロマトグラフィー分取装置〔(株)島津製作所製、商品名:モデルLC8A〕に供した。そして、0.1体積%トリフルオロ酢酸水溶液と0.1体積%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル溶液とを用い、溶離液中のアセトニトリルの濃度勾配が1~60体積%となるように溶離液中のアセトニトリルの濃度を調整しながら、流速:1.0mL/分で25分間クロマトグラフィーを行なった。これにより、生成物20mgを得た。
【実施例】
【0132】
(3)環状ペプチド化合物(ST41)の確認
前記(1)で得られたペプチド(配列番号7)および前記(2)で得られた生成物(酸化後のペプチド)それぞれを質量分析装置〔(株)島津製作所製、商品名:LC-MS-2010〕に供し、前記(1)で得られたペプチドおよび前記(2)で得られた酸化後のペプチドそれぞれのマススペクトルを調べた。
【実施例】
【0133】
その結果から、前記(1)で得られたペプチドのマススペクトルでは、配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるペプチドの理論値付近の948.1m/zにピークが見られることがわかる。この結果から、前記(1)で得られたペプチドが配列番号7に示されるアミノ酸配列からなるペプチドであることが裏付けられた。なお、配列番号7で示されるペプチドは、C末端のシステイニル基のカルボキシル基がアミド化されている。
【実施例】
【0134】
また、前記(1)で得られたペプチドのマススペクトルでは、948.1m/zにピークが見られるのに対して、前記(2)で得られた酸化後のペプチドのマススペクトルでは、水素原子2個分少ない946.6m/zにピークが見られることがわかる。これらの結果から、前記(2)で得られた酸化後のペプチドは、2つのシステイニル基間でジスルフィド結合が形成されることによって、前記(1)で得られたペプチド(配列番号7)が環化されていることが裏付けられた。したがって、前記(2)で得られた酸化後のペプチド(ST41)は、式(I)において、Xaaがアラニル基、Xaaがイソロイシル基、Xaaがグルタミル基、Xaaがプロリル基、Xaaがグルタミニル基、及びXaaがリシル基であり、シスチン残基のカルボキシル基はアミド化されており、m及びlがいずれも1、R基中、nが1である環状ペプチド化合物であることがわかる。なお、当該環状ペプチド化合物の純度をHPLCで調べたところ、99.6%であることが確認された。
【実施例】
【0135】
(4)外用組成物の調製
前記(2)で得られた環状ペプチド化合物をその濃度が1mg/mLとなるように精製水に添加し、外用組成物(皮膚外用剤)を得た。
【実施例】
【0136】
実施例2:環状ペプチド(ST40)の製造(m=0、l=1)
実施例1において、mが1である化合物の代わりに、mが0である化合物を用いたことを除き、実施例1と同様に操作を行ない、配列番号8に示されるアミノ酸配列からなる鎖状ペプチドを合成した後、これを2つのシステイニル基間でジスルフィド結合を形成することで環化させて環状ペプチド化合物(ST40)を製造した。なお、配列番号8で示されるペプチドは、C末端のシステイニル基のカルボキシル基がアミド化されている。当該環状ペプチド化合物の純度をHPLCで調べたところ、98.5%であることが確認された。
【実施例】
【0137】
ここで得られた環状ペプチド化合物(ST40)をその濃度が1mg/mLとなるように精製水に添加し、外用組成物(皮膚外用剤)を得た。
【実施例】
【0138】
実施例3:環状ペプチド(ST4gaba)の製造(m=1,l=1,n=3)
実施例1において、mとlがいずれも1であって、R基中、nが1である化合物の代わりに、mとlがいずれも1であって、R基中、nが3である化合物を用いたことを除き、実施例1と同様に操作を行ない、配列番号9に示されるアミノ酸配列からなる鎖状ペプチドを合成した後、これを2つのシステイニル基間でジスルフィド結合を形成することで環状ペプチド化合物(ST4gaba)を製造した。なお、配列番号9で示されるペプチドは、C末端のシステイニル基のカルボキシル基がアミド化されている。当該環状ペプチド化合物の純度をHPLCで調べたところ、93.9%であることが確認された。
【実施例】
【0139】
ここで得られた環状ペプチド化合物(ST4gaba)をその濃度が1mg/mLとなるように精製水に添加し、外用組成物(皮膚外用剤)を得た。
【実施例】
【0140】
実験例1 表皮におけるシンタキシン4の発現の確認
ヘアレスマウス(日本SLC, HR-1)の皮膚の凍結切片を作成し、これを被験皮膚試料として、上記で調製した抗血清ならびにFITCラベルされた抗ウサギIgG(「Alexa Fluor(登録商標)488ラベル」インビトロジェン社)を用いて、皮膚におけるシンタキシン4の発現部位を調べた。
【実施例】
【0141】
結果を図1に示す。この結果から、シンタキシン4は、皮膚の表皮において多く発現していることが分かる。このことから、シンタキシン4は表皮の分化に深く関与している可能性が示唆された。
【実施例】
【0142】
実験例2 シンタキシン4の局在部位の確認
チャンバースライドの培地上に、正常ヒト表皮ケラノサイト細胞株であるHaCaT細胞を播いた。なお、培地として、DMEM/HamF12(シグマ-アルドリッチ社製)に、熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)を最終濃度が10質量%になるように添加し、熱不活性化FCS含有DMEM/HamF12培地(以下、「DH10培地」という)を使用した。
【実施例】
【0143】
結果を図2に示す。上記で説明するように、この実験ではヒト表皮細胞の細胞膜に穴を開けずに細胞表面のみを蛍光免疫染色している。その結果、図2に示すように、細胞内に存在するタンパク質であるβ-actinは染色されていないのに対して、シンタキシン4は染色されていたこと。このことから、シンタキシン4は、表皮細胞の外側表面に提示された状態で存在していると考えられる。
【実施例】
【0144】
実験例3 細胞表面におけるシンタキシン4の検出
マウスのエピモルフィンをコードするcDNA(GeneBank Accession:BAA01278.1、配列番号10)におけるエピモルフィンのN末端側に対応する部位に、T7タグをコードするDNAを付加し、T7タグ-エピモルフィンをコードするcDNAを調製した。次いで、T7タグ-エピモルフィンをコードするcDNAを、レトロウイルス発現ベクターpQCXIN(クローンテック社製)のEcoRI認識部位に挿入し、T7タグ-エピモルフィン発現用プラスミドを調製した。得られたプラスミドを、遺伝子導入用試薬(商品名:リポフェクタミン(インビトロジェン社製)、商品名:プラス試薬(インビトロジェン社製))を用いてパッケージング細胞(クローンテック社製、PT67細胞)に導入した。つぎに、得られた細胞のうち、500μg/mLのジェネティシン(商品名:G418、ギブコ・ラボラトリー社製)に対して耐性能を示す細胞から培養上清を回収した。回収された培養上清中から、レトロウイルスを得た。得られたレトロウイルスをヒド表皮細胞(HaCaT細胞)に感染させ、500μg/mLのジェネティシンの存在下に、5体積%二酸化炭素雰囲気下にて37℃で8日間培養した。その後、培養後の細胞におけるエピモルフィン発現を調べることにより、N末端側にT7タグを付けたマウスエピモルフィン(配列番号11)を産生するヒト表皮細胞(HaCaT細胞)を得た。
【実施例】
【0145】
同様にして、N末端側にT7タグを付けたマウスのシンタキシン4(配列番号3)を産生するヒト表皮細胞(HaCaT細胞)を調製した。
【実施例】
【0146】
次いで、各遺伝子を導入したヒト表皮細胞を培養する培地に、100mMのシクロヘキシミド(CHX)(Bio Vision製)を培地の1/1000量添加し、シクロヘキシミド(CHX)刺激を行った。
【実施例】
【0147】
CHX刺激した表皮細胞を、DH10培地中で5体積%二酸化炭素雰囲気下、37℃で培養し、3日後に培地を捨てて、PBSで2回優しく洗浄した。洗浄後、5mlのPBSを入れ、次いでSolfo-NHS-ビオチン(ピアス社製:10mg/mL in PBS)を50μL加え15分間室温で反応させた。その後、PBS+Solfo-NHS-ビオチンを捨て、DH10培地で優しく1回洗浄して、ビオチンラベル化を停止した。
【実施例】
【0148】
結果を図3に示す。図3に示すように、細胞外に提示されることのないタンパク質であるシンタキシン6は検出されなかったのに対して、CHX刺激により細胞外へより提示されることが分かっているエピモルフィンと同様に、シンタキシン4もCHX刺激により細胞外へより提示されることが分かった。
【実施例】
【0149】
実験例4 本発明の環状ペプチド化合物(ST40、ST41、ST4gaba)の表皮細胞に対する作用
DH10培地入りの96穴プレートに、5,000個/well の割合で正常ヒト表皮細胞(HaCaT細胞)を播き、それに製造例1~3で製造した各環状ペプチド化合物(ST40、ST41、ST4gaba)を10μg/mLずつ添加し、5体積%二酸化炭素雰囲気下で37℃の条件で静置培養した。培養から7日後、各ウエルに細胞増殖試薬(商品名:WST-1、(株)同仁化学研究所製)を添加し、37℃で2時間反応させた後、波長450nmにおける吸光度を測定した(WST-1値の測定)。また、比較対照試験として、上記環状ペプチド化合物を添加しない以外は同様にして、正常ヒト表皮細胞(HaCaT細胞)を播いて7日間培養したウエルに細胞増殖試薬を添加して反応させた後、波長450nmにおける吸光度を測定した(WST-1値の測定)。
【実施例】
【0150】
次いで、各ウエルをPBSで洗ったのち、0.5MのNaOH 水溶液を50μL/wellの割合で添加し、DNA濃度を超微量分光光度計(nano-drop)を用いて測定した。ヒト表皮細胞1個あたりの代謝量を、下式から算出した。
【実施例】
【0151】
[数1]
ヒト表皮細胞1個あたりの代謝量 = WST-1の値/DNA量
結果を図4に示す。縦軸は正常ヒト表皮細胞の細胞代謝量を、横軸は添加ペプチドを意味し、左からペプチド無添加、環状ペプチドST41添加、環状ペプチドST40添加、及び環状ペプチドST4gaba添加の系における実験結果を示す。図4に示すように、環状ペプチドを添加していない表皮細胞の代謝量に比べて、環状ペプチド(ST40、ST41、ST4gaba)を添加した標記細胞の代謝量はいずれも低くなった。この結果から、本発明の環状ペプチドは表皮細胞の代謝を抑制する作用を有していると判断された。
【実施例】
【0152】
実験例5 環状ペプチド化合物(ST40、ST41、ST4gaba)の表皮細胞に対する作用
上記実験例4では、内在性のエピモルフィン及びシンタキシン4が正常に発現している正常ヒト表皮細胞(HaCaT細胞)に対する本発明の環状ペプチド化合物の影響を調べたが、この実験例5では、正常ヒト表皮細胞に代えて、下記の変異エピモルフィンを強制発現させたヒト表皮細胞(HaCaT細胞)を用いて、実験例4と同様の実験を行い、変異エピモルフィン強制発現表皮細胞に対する本発明の環状ペプチド化合物(ST40、ST41、ST4gaba)の影響を調べた。
(1)変異エピモルフィン強制発現表皮細胞の調製
(1-1)変異エピモルフィン(EPΔM)強制発現表皮細胞
マウスのエピモルフィンのアミノ酸配列(配列番号11)において、N末端から95~100の領域(活性中心)のアミノ酸配列(SIEQSC:配列番号12)を欠損させた変異エピモルフィン(以下、これを単に「EPΔM」という)をコードする遺伝子を、正常ヒト表皮細胞(HaCaT細胞)に導入して、変異エピモルフィン(EPΔM)強制発現表皮細胞(以下、これを「EPΔM発現表皮細胞」という)を調製した。
【実施例】
【0153】
(1-2)変異エピモルフィン(EP4M)強制発現表皮細胞
マウスのエピモルフィンのアミノ酸配列(配列番号11)において、N末端から95~100の領域(活性中心)のアミノ酸配列(SIEQSC:配列番号12)を、マウスのシンタキシン4の推定活性中心のアミノ酸配列(AIEPQK:配列番号13)(N末端から103~108の領域)で置換した変異エピモルフィン(以下、これを単に「EP4M」という)をコードする遺伝子を、正常ヒト表皮細胞(HaCaT細胞)に導入して、変異エピモルフィン(EP4M)強制発現表皮細胞(以下、これを「EP4M発現表皮細胞」という)を調製した。
【実施例】
【0154】
(2)表皮細胞の代謝量の測定
実験例4と同様にして、DH10培地入りの96穴プレートに、5,000個/well の割合で上記で調製したEPΔM発現表皮細胞またはEP4M発現表皮細胞を播き、それに製造例1~3で製造した各環状ペプチド化合物(ST40、ST41、ST4gaba)を10μg/mLずつ添加し、5体積%二酸化炭素雰囲気下で37℃の条件で静置培養した。培養から7日後、各ウエルに細胞増殖試薬(商品名:WST-1試薬、(株)同仁化学研究所製)を添加し、37℃で2時間反応させた後、波長450nmにおける吸光度を測定した(WST-1値の測定)。また、比較対照試験として、環状ペプチド化合物を添加しない以外は同様にして、ウエルに細胞増殖試薬を添加して反応させた後、波長450nmにおける吸光度を測定した(WST-1値の測定)。
【実施例】
【0155】
次いで、各ウエルをPBSで洗ったのち、0.5MのNaOH 水溶液を50μL/wellの割合で添加し、DNA濃度をnano-dropを用いて測定した。ヒト表皮細胞1個あたりの代謝量を算出した。
【実施例】
【0156】
(3)結果
結果を図5に示す。縦軸はヒト表皮細胞の細胞代謝量を示す。具体的には、図5において、横軸の左側から1~4番目の結果は、図4に示した結果を併記したものであり、左からペプチド無添加、環状ペプチドST41添加、環状ペプチドST40添加、及び環状ペプチドST4gaba添加した場合における正常ヒト表皮細胞(HaCaT細胞)の代謝量を示す。図5において横軸中央の結果は、EPΔM発現表皮細胞の細胞代謝量を示す。さらに図5において左から6~9番目の結果は、左からペプチド無添加、ペプチドST41添加、ペプチドST40添加、及びペプチドST4gaba添加した場合におけるEP4M発現表皮細胞の代謝量を示す。
【実施例】
【0157】
この結果からわかるように、エピモルフィンの活性中心部位を欠損させたEPΔMを強制発現させたヒト表皮細胞の代謝量(図5中、中央)は、正常ヒト表皮細胞の代謝量 (図5中、一番左側)と殆ど変わらないのに対して、エピモルフィンの活性中心部位のアミノ酸配列をシンタキシン4の推定活性中心部位のアミノ酸配列で置換したEP4Mを強制発現させたヒト表皮細胞の代謝量(図5中、左から6番目)は正常ヒト表皮細胞の代謝量 (図5中、一番左側)よりも有意に高くなることが分かった。かかるEP4M発現表皮細胞に対して、本発明の環状ペプチド化合物(ST41、ST40、ST4gaba)を添加することにより、その代謝量の増加を中和すること、つまり、EP4M発現表皮細胞における代謝量の増加を抑制することが分かった。
【実施例】
【0158】
このことから、エピモルフィンの活性中心部位のアミノ酸配列をシンタキシン4の推定活性中心部位のアミノ酸配列で置換したEP4Mを強発現させることで、表皮細胞の代謝量は増加するが、本願発明の環状ペプチド化合物(ST41、ST40、ST4gaba)にはその代謝量の増加を抑制する作用があることが判明した。
【実施例】
【0159】
なお、エピモルフィンとシンタキシン4とは互いに類似のアミノ酸配列を有するタンパク質であり、上記で置換した活性中心領域のアミノ酸配列は相違するものの、それ以外の領域のアミノ酸配列は類似している。このため、エピモルフィンの活性中心部位のアミノ酸配列をシンタキシン4の推定活性中心部位のアミノ酸配列で置換したEP4M は、シンタキシン4に極めて類似するものであり、いわばシンタキシン4を模倣したものといえる。このため、上記実験例5の結果から、シンタキシン4(Stx4)を強制発現させたヒト表皮細胞の代謝量は正常ヒト表皮細胞の代謝量よりも高くなることが予想され、またかかるStx4強発現表皮細胞に対して、本発明の環状ペプチド化合物(ST41、ST40、ST4gaba)を添加することによりその代謝量の増加が中和されること、つまり、本発明の環状ペプチド化合物によればStx4強発現表皮細胞における代謝量の増加を抑制できるものが予想される。
【実施例】
【0160】
実験例6 環状ペプチド化合物(ST40、ST41、ST4gaba)の表皮細胞の角化に対する作用
エピモルフィンの活性中心(a.a.95-1000)のアミノ酸配列(配列番号12)を欠失させたEPΔM、エピモルフィンの活性中心のアミノ酸配列をシンタキシン4の推定活性中心(a.a.103-108)のアミノ酸配列(配列番号13)で置換したEP4M、および本発明の環状ペプチド化合物(ST41)が、表皮細胞の分化の過程である角化においてどのような影響を示すかを調べた。
【実施例】
【0161】
(1)実験方法
DH10培地を入れた48穴プレートに、正常ヒト表皮細胞(HaCaT細胞)を播いた(10×104/1well)。5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で2日間培養した後に、培地を交換し、各ウエルに、EPΔM(50μg/mL)単独、EP4M(50μg/mL)単独、及び「EP4M(50μg/mL)+ST41(10μg/mL)」をそれぞれ添加した。引き続き、5体積%二酸化炭素雰囲気下、37℃条件下で3日間培養した後に、表皮細胞を回収し、回収した表皮細胞を1.0×105 細胞/mLになるように、無血清DH培地(DMDM/HamF12:シグマ-アルドリッチ社製)に懸濁した。
【実施例】
【0162】
斯くして調製した懸濁液(20×104 細胞/ 250μL)に、カルシウム流入を引き起こすカルシウムイオノフォア(商品名:A23187、シグマ-アルドリッチ社製)を10ng / 250μLとなるように加えて混合し、5体積%二酸化炭素雰囲気下、37℃条件下で5時間培養した。次いで、10,000rpmで10分間遠心分離し、上清を除去して表皮細胞を回収し、回収した表皮細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で洗浄した。洗浄後の細胞を可溶化液(組成:2質量%SDS、20mMジチオスレイトール、残部精製水)中で10分間沸騰処理した後、カルシウムイオノフォアによるカルシウム流入後の角化(コーニファイドエンベロープ形成)に起因する残存不溶化細胞の数を、光学顕微鏡下で計数し、表皮細胞の総数(全細胞数)と残存不溶化細胞の総数から、下式より、表皮細胞の角化率(コーニファイドエンベロープ形成率)を算出した。
【実施例】
【0163】
[数2]
角化率(%)=(残存不溶化細胞の総数/全細胞数)×100
結果を図6に示す。図6の左端から、正常ヒト表皮細胞の角化率、並びにEPΔM処理表皮細胞、EP4M処理表皮細胞、及び「EP4M+ST41」処理表皮細胞における角化率をそれぞれ示す。これからわかるように、EPΔMは表皮細胞の角化にまったく影響しなかったのに対して、EP4Mは表皮細胞の角化を有意に阻害した。また表皮細胞を「EP4M+ST41」で処理することで、EP4M処理による表皮細胞の角化の阻害が抑制されたことから、本発明の環状ペプチド化合物ST41は、EP4Mの角化阻害作用を中和すること、つまり、EP4Mの角化阻害作用をペプチドST41が抑制することが確認された。
【実施例】
【0164】
実験例5にて説明したように、EP4M は、シンタキシン4に極めて類似したアミノ酸配列からなるタンパク質であり、いわばシンタキシン4を模倣したものといえる。つまり、上記EP4Mに代えてシンタキシン4を用いても、同様の結果が得られると考えられる。このため、上記実験例6の結果に基づけば、表皮細胞にシンタキシン4(Stx4)を強制発現させるとヒト表皮細胞の角化率は格段に低下して不全角化が生じると予想される。またかかる表皮細胞に対して、本発明の環状ペプチド化合物(ST41、ST40、ST4gaba)を添加することにより表皮細胞の最終分化が抑制され、その結果、不全角化が抑制されると予想される。このことから、本発明の環状ペプチド化合物(ST41、ST40、ST4gaba)は、シンタキシン4の強発現などに起因する不全角化等の皮膚の異常な状態を抑制若しくは改善する作用があると考えられる。
【実施例】
【0165】
実験例7 環状ペプチド化合物(ST41)の表皮細胞の角化に対する作用(その2)
シンタキシン4(r-stx4)、および本発明の環状ペプチド化合物(ST41)が、表皮細胞の分化の過程である角化においてどのような影響を示すかを調べた。
【実施例】
【0166】
(1)組換えシンタキシン4(r-stx4)の調製
Y. Hirai, et al.,(J. Cell Biol. 140 (1998) 159-169)及びY. Oka, et al.,(Exp. Cell Res. 222(1996) 189-198)に記載されている方法と同様の手法を用いて作製したシンタキシン4発現コンストラクト(stx4構築物)を用いて、BL21菌株により調製した。具体的には、stx4の発現構築物は、SNAREとC末端のトランスメンブランドメインを欠失させたマウス・シンタキシン4(NCBI-GeneID:20909)に相当するcDNAを、5’末端に6つのヒスチニン残基をコードする塩基配列、及び3’末端にTGAの塩基残基を有するDNAとともにPCRにより増幅させ、次いで、Pet3aベクター(Novagen社製)のEcoRI部位に挿入することで、作製した。
【実施例】
【0167】
(2)実験方法
実験例6と同様に、DH10培地を入れた48穴プレートに、正常ヒト表皮細胞(HaCaT細胞)を播いた(10×104/1well)。5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で2日間培養した後に、培地を交換し、各ウエルに、r-stx4(50μg/mL)単独、及び「r-stx4(50μg/mL)+ST41(10μg/mL)」をそれぞれ添加した。引き続き、5体積%二酸化炭素雰囲気下、37℃条件下で3日間培養した後に、表皮細胞を回収し、回収した表皮細胞を1.0×105 細胞/mLになるように、無血清DH培地(DMDM/HamF12:シグマ-アルドリッチ社製)に懸濁した。
【実施例】
【0168】
斯くして調製した懸濁液(20×104 細胞/ 250μL)に、実験例6と同様に処理して、カルシウムイオノフォアによるカルシウム流入後の角化(コーニファイドエンベロープ形成:CCE形成)に起因する残存不溶化細胞の数を、光学顕微鏡下で計数し、表皮細胞の総数(全細胞数)と残存不溶化細胞の総数から、上記式より、表皮細胞の角化率(コーニファイドエンベロープ形成率)を算出した。
【実施例】
【0169】
結果を図7に示す。図7の左端から、正常ヒト表皮細胞の角化能、r-stx4処理表皮細胞、及び「r-stx4+ST41」処理表皮細胞における角化能をそれぞれ示す。なお、図に示すr-stx4処理表皮細胞及び「r-stx4+ST41」処理表皮細胞における角化能は、正常ヒト表皮細胞の角化能を1とした場合の相対比である。これからわかるように、本発明の環状ペプチド化合物(ST41)は、シンタキシン4が有する正常ヒト表皮細胞の角化促進作用を阻害することが確認された。
【実施例】
【0170】
前述する実験例5と上記実験例6の結果から、本発明の環状ペプチド化合物(ST41)は、EP4Mの角化阻害活性を阻害するのみならず、シンタキシン4の角化促進活性をも抑制するように機能することが判明した。
【実施例】
【0171】
実験例8 環状ペプチド化合物(ST41)の表皮細胞の角化に対する作用(その3)
シンタキシン4(stx4)を強制発現させた表皮細胞に対する本発明の環状ペプチド化合物(ST41)の、角化における影響を調べた。
【実施例】
【0172】
(1)シンタキシン4(stx4)強制発現表皮細胞の調製
細胞外に発現するようにN末端側にシグナルペプチドを融合させた、T7タグ付きシンタキシン4(stx4)(マウス)のアミノ酸配列(配列番号3)をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを、正常ヒト表皮細胞(HaCaT細胞)に導入して、シンタキシン(stx4)強制発現表皮細胞(以下、これを「stx4強制発現表皮細胞」という)を調製した。
【実施例】
【0173】
(2)エピモルフィン(EPM)強制発現表皮細胞の調製
細胞外に発現するようにN末端側にシグナルペプチドを融合させた、T7タグ付きエピモルフィン(EPM)(マウス)のアミノ酸配列(配列番号11)をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを、正常ヒト表皮細胞(HaCaT細胞)に導入して、エピモルフィン(EPM)強制発現表皮細胞(以下、これを「EPM強制発現表皮細胞」という)を調製した。
【実施例】
【0174】
(3)実験方法
実験例6と同様に、DH10培地を入れた48穴プレートに、上記のstx4強制発現表皮細胞またはEPM強制発現表皮細胞を播いた(10×104/1well)。5体積%二酸化炭素雰囲気下に37℃で2日間培養した後に、培地を交換し、stx4強制発現表皮細胞を撒いたウエルにST41(10μg/mL)を、EPM強制発現表皮細胞を撒いたウエルにEPMのアンタゴニストEPn1(配列番号14)(10μg/mL)を添加した。なお、EPn1は、エピモルフィンの活性中心のアミノ酸配列(配列番号12)から合成されたエピモルフィンのアンタゴニストであり、下式(VI)で示される環状ペプチドである(特開2012-17290号公報参照)。なお、下記式中、各アミノ酸はL体である。
【実施例】
【0175】
【化14】
JP0005946447B2_000015t.gif

【実施例】
【0176】
引き続き、5体積%二酸化炭素雰囲気下、37℃条件下で3日間培養した後に、表皮細胞を回収し、回収した表皮細胞を1.0×105 細胞/mLになるように、無血清DH培地(DMDM/HamF12:シグマ-アルドリッチ社製)に懸濁した。
【実施例】
【0177】
斯くして調製した懸濁液(20×104 細胞/ 250μL)に、実験例6と同様に処理して、カルシウムイオノフォアによるカルシウム流入後の角化(コーニファイドエンベロープ形成:CCE形成)に起因する残存不溶化細胞の数を、光学顕微鏡下で計数し、表皮細胞の総数(全細胞数)と残存不溶化細胞の総数から、上記式より、表皮細胞の角化率(コーニファイドエンベロープ形成率)を算出した。
【実施例】
【0178】
結果を図8に示す。図8の左端から、対照の表皮細胞(正常ヒト表皮細胞に空の発現ベクターを導入した細胞)、EPM強制発現表皮細胞、EPn1処理-EPM強制発現表皮細胞、stx4強制発現表皮細胞、及びST41処理-stx4強制発現表皮細胞における角化能をそれぞれ示す。なお、図に示す各細胞における角化能は、対照細胞の角化能を1とした場合の相対比である。
【実施例】
【0179】
この結果からわかるように、表皮細胞においてシンタキシン4を強制発現させると表皮細胞の角化能(CCE形成能)が増加するが、この作用は本発明の環状ペプチド(ST41)により抑制される。このことから、本発明の環状ペプチド(ST41)は、シンタキシン4のアンタゴニストとして作用することがわかる。つまり、本発明の環状ペプチド(ST41)は、シンタキシン4のアンタゴニストとして、シンタキシン4の表皮分化促進機能を抑制するように作用する。
【実施例】
【0180】
一方、表皮細胞においてエピモルフィンを強制発現させると、逆に表皮細胞の角化能(CCE形成能)が低下する。この作用は、エピモルフィンのアンタゴニストにより抑制される。エピモルフィンとシンタキシン4は同じ領域を活性中心とするものの、表皮細胞の分化に対しては逆の作用を示し、それぞれの作用がペプチド性アンタゴニストで中和されることが判明した。このことは、表皮のホメオスタシス維持に両方の因子が違った形で参加し、何らかの形でそのバランスが崩れた場合にもそれぞれのアンタゴニストにより修正が可能であることを示唆する。
【実施例】
【0181】
実験例9 環状ペプチド化合物(ST41)の表皮細胞の角化に対する作用(その4)
ヒト初代培養表皮細胞は、シンタキシン4を多く発現している。そこで、細胞としてヒト初代培養表皮細胞(クラボウNHEK cat#KK-4009 Stain No.01387)を用いて、実験例6と同様の方法により、本発明の環状ペプチド(ST41)の表皮細胞の角化能(コーニファイドエンベロープ形成能:CCE形成能)に対する作用を調べた。なお、対照として、本発明の環状ペプチド(ST41)とは別に、エピモルフィンのアンタゴニストである上記式(VI)に示すEPn1(配列番号14)、およびコントロールペプチドとして下式(VII)で示す環状ペプチドEPn0(配列番号15)についても同様に、表皮細胞の角化能に対する作用を調べた。下記式中、各アミノ酸はL体である。
【実施例】
【0182】
【化15】
JP0005946447B2_000016t.gif
【実施例】
【0183】
結果を図9に示す。
【実施例】
【0184】
この結果から、ヒト初代培養表皮細胞を用いた場合でも、本発明の環状ペプチド(ST41)は、表皮細胞の角化を有意に抑制することが確認された。
【実施例】
【0185】
実験例10 環状ペプチド(ST40、ST41、ST4gaba)のアンタゴニスト作用
(1)試験方法
(1-1)被験試料の調製
被験試料として、下記のタンパク質含有水溶液を調製した。
・GFP
・シントキシン4+環状ペプチド(ST41, ST40, またはST4gaba)
・EP4M+環状ペプチド(ST41, ST40, またはST4gaba)
(1-2)接着アッセイ
細胞培養用でない未処理の48穴プレート(iwaki)の各ウエルの内壁に、蛋白濃度を1mg/mlに調製した上記の各被験試料を5μLずつ塗布した。これを室温で1時間放置して乾燥させた。次いで、非特異的な細胞の接着を阻止するため7mg/mlのBSAを含有する培養液(DMEM/HamF12:Sigma製)にHaCaT細胞を懸濁し、1ウエルあたり10000個(1.0×104/well)または20000個(2.0×104/well)の割合になるように細胞(400μL)を播いた。室温で1.5時間インキュベートした後、ウエル内でよくピペッティングし、沈んでいる細胞を浮かせた後、素早く培養液を吸い取った。
【実施例】
【0186】
培養液を除去したウエルを数回PBSで洗浄し、4% パラホルムアルデヒドで10分間処理して固定した後、ヘマトキシリンで1時間染色した。次いで、ウエル内を流水で洗浄し、染色を指標として、細胞数をカウントした。
【実施例】
【0187】
(2)結果
結果を図10に示す。図10(A)は、1ウエルあたりに播いた細胞数が1.0×104/wellの場合の結果、図10(B)は、1ウエルあたりに播いた細胞数が2.0×104/wellの場合の結果を示す。図10に示すように被験試料を塗布しなかったウエルにはHaCaT細胞が全く接着しなかった。また、ネガティブコントロールとして実施したGFPを塗布したウエルにもHaCaT細胞がほとんど接着しなかった。これに対して、シンタキシン4(r-Stx4) を塗布したウエル、および活性中心領域のアミノ酸配列をシンタキシン4(r-Stx4)の活性相当領域のアミノ酸配列で置換したエピモルフィン改変体(r-EP4M)を塗布したウエルにはHaCaT細胞が接着した。さらにシンタキシン4およびエピモルフィン改変体(r-EP4M)にそれぞれ本発明の環状ペプチド化合物(ST40、ST41、ST4gaba)を加えた結果、どの環状ペプチド化合物を加えた場合でも、接着細胞数が減少した。これらの結果から、本発明の環状ペプチド化合物はいずれもシンタキシン4およびエピモルフィン改変体(r-EP4M)のアンタゴニストとして機能していることが確認された。
【実施例】
【0188】
以上の実験例1~10の結果から、本発明の環状ペプチド化合物(I)は、シンタキシン4のアンタゴニストとして作用することが確認された。このため、本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩によれば、シンタキシン4によってヒトの皮膚に引き起こされる皮膚の状態の異常、特に不全角化の発生や増悪を抑制することができることがわかる。したがって、本発明の環状ペプチド化合物(I)またはその薬理的に許容される塩は、不全角化に起因するヒトの皮膚の状態の異常を改善する医薬用途や美容用途などに有用である。
【実施例】
【0189】
実験例11 シンタキシン4(stx4)、エピモルフィン(EPM)、及び変異エピモルフィン(EP4M)の立体構造
正常ヒト表皮細胞と各種の組換えタンパク質[シンタキシン4(stx4)、エピモルフィン(EPM)、変異エピモルフィン(EP4M)]をインキュベートし、細胞に結合したタンパク質を還元下(ジメルカプトエタノール存在下:2Me(+))または非還元下(ジメルカプトエタノール存在下:2Me(-))、並びにnative-PAGEにて電気泳動を行った。native-PAGE電気泳動は、インビトロジェンから購入した試薬を用いて推奨のプロトコールに従って実施した。
【実施例】
【0190】
電気泳動の結果を図11(A)に示す。この結果から、角化阻害活性を有するエピモルフィン(EPM)や変異エピモルフィン(EP4M)は主として二量体として存在し、角化促進活性を有するシンタキシン4(stx4)は主として単量体として存在することが明らかになった(図11(B))。EPM及びEP4Mは、それぞれN末端領域の11番目のシステイニル基がジスルフィド結合することにより二量体を形成し、またstx4は141番目のシステイニル基がジスルフィド結合することにより二量体を形成するものと考えられる。いずれも活性部位(図11(B)の矢印領域)を表面に出した状態で折り畳まれた構造を有している。このことから、本発明の環状ペプチドは、シンタキシン4(stx4)の単量体及び二量体の両方をアンタゴナイズすることが示唆される。
【実施例】
【0191】
(処方例)
以下、本発明に係る外用組成物の処方例を示す。
【実施例】
【0192】
(処方例1 エモリエントローション)
実施例1~3で得られた環状ペプチド化合物 0.0001質量%
エタノール 5.0質量%
ポリイキシエチレン(50)硬化ヒマシ油 1.0質量%
グリセリン 15.0質量%
1,3-ブチレングリコール 1.5質量%
クエン酸 0.05質量%
クエン酸ナトリウム 0.1質量%
メチルパラベン 0.3質量%
香料 適 量
紫外線吸収剤 適 量
精製水 残 部
合計 100.0質量%
【実施例】
【0193】
(処方例2 エモリエント乳液)
実施例1~3で得られた環状ペプチド化合物 0.0003質量%
流動パラフィン 15.0質量%
ミツロウ 2.0質量%
ラノリン 1.5質量%
セスキオレイン酸ソルビタン 2.5質量%
ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル 1.0質量%
1,2-オクタンジオール 0.05質量%
グリセリン 10.0質量%
1,3-ブチレングリコール 3.0質量%
キサンタンガム 0.5質量%
香料 適 量
紫外線吸収剤 適 量
精製水 残 部
合計 100.0質量%
【実施例】
【0194】
(処方例3 エモリエントクリーム)
実施例1~3で得られた環状ペプチド化合物 0.0005質量%
ステアリルアルコール 5.0質量%
ステアリン酸 2.0質量%
ワセリン 5.0質量%
スクワラン 5.0質量%
トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル 1.0質量%
ホホバ油 1.0質量%
オリーブ油 1.0質量%
1,3-ブチレングリコール 3.0質量%
グリセリン 10.0質量%
プロピレングリコールモノステアリン酸エステル 2.5質量%
ポリオキシエチレンセチルエーテル 3.0質量%
トリエタノールアミン 1.0質量%
メチルパラベン 0.15質量%
プロピルパラベン 0.1質量%
香料 適 量
酸化防止剤 適 量
精製水 残 部
合 計 100.0質量%
【配列表フリ-テキスト】
【0195】
配列番号1は一般式(I)で示される本発明の環状ペプチド化合物のアミノ酸配列である。配列番号2は本発明の環状ペプチド化合物を合成する中間体としての直鎖状ペプチドのアミノ酸配列である。配列番号7は、式(I)中、Rが式(II)または(III)で示される基であってm=1、n=1である本発明の環状ペプチド化合物の製造中間体としての鎖状ペプチドのアミノ酸配列である。配列番号8は、式(I)中、Rが式(II)または(III)で示される基であってm=0である本発明の環状ペプチド化合物の製造中間体としての鎖状ペプチドのアミノ酸配列である。配列番号9は、式(I)中、Rが式(II)または(III)で示される基であってm=1、n=3である本発明の環状ペプチド化合物の製造中間体としての鎖状ペプチドのアミノ酸配列である。配列番号12はエピモルフィンの活性中心のアミノ酸配列、配列番号13はシンタキシン4の推定活性中心のアミノ酸配列である。配列番号14はエピモルフィンのアンタゴニストである環状ペプチド(EPn1)のアミノ酸配列である。配列番号15は実験例9においてコントロールペプチドとして使用した環状ペプチド(EPn0)のアミノ酸配列である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10