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明細書 :電気めっき液、リチウム二次電池用活物質の製造方法、及びリチウム二次電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第6057208号 (P6057208)
公開番号 特開2014-096321 (P2014-096321A)
登録日 平成28年12月16日(2016.12.16)
発行日 平成29年1月11日(2017.1.11)
公開日 平成26年5月22日(2014.5.22)
発明の名称または考案の名称 電気めっき液、リチウム二次電池用活物質の製造方法、及びリチウム二次電池
国際特許分類 H01M   4/48        (2010.01)
FI H01M 4/48
請求項の数または発明の数 7
全頁数 8
出願番号 特願2012-248546 (P2012-248546)
出願日 平成24年11月12日(2012.11.12)
審査請求日 平成27年9月2日(2015.9.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
発明者または考案者 【氏名】逢坂 哲彌
【氏名】門間 聰之
【氏名】横島 時彦
【氏名】奈良 洋希
個別代理人の代理人 【識別番号】100076233、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 進
【識別番号】100101661、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 靖
【識別番号】100135932、【弁理士】、【氏名又は名称】篠浦 治
審査官 【審査官】▲辻▼ 弘輔
参考文献・文献 特開2012-204195(JP,A)
特開2012-089267(JP,A)
特開平10-275617(JP,A)
特開2005-116264(JP,A)
特開2008-300179(JP,A)
特開2007-294432(JP,A)
特開2010-282959(JP,A)
調査した分野 H01M 4/00 - 4/62
特許請求の範囲 【請求項1】
シリコンと酸素と10~70at%の炭素とを含有し、シリコンと酸素の組成比がSiOx(0.1≦X<2.0)であり、アモルファスかつ準安定相のSi-O-Cからなるリチウム二次電池用活物質を電析する電気めっき液であって、
シリコンイオンと、電解質イオンと、非水溶媒と、0.001~10vol%の、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、およびジプロピルカーボネートから選ばれる1種以上のカーボネート系添加剤と、を含むことを特徴とする電気めっき液
【請求項2】
前記非水溶媒が、カーボネート系溶媒であることを特徴とする請求項1に記載の電気めっき液。
【請求項3】
前記カーボネート系溶媒が、プロピレンカーボネートであり、
前記カーボネート系添加剤が、フルオロエチレンカーボネートであることを特徴とする請求項2に記載の電気めっき液。
【請求項4】
シリコンと酸素と10~70at%の炭素とを含有し、シリコンと酸素の組成比がSiOx(0.1≦X<2.0)であり、アモルファスかつ準安定相のSi-O-Cからなるリチウム二次電池用活物質の製造方法であって、
シリコンイオンと、電解質イオンと、非水溶媒と、0.001~10vol%の、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、およびジプロピルカーボネートから選ばれる1種以上のカーボネート系添加剤と、を含む電気めっき液を用いて電析を行うことを特徴とするリチウム二次電池用活物質の製造方法
【請求項5】
前記非水溶媒が、カーボネート系溶媒であることを特徴とする請求項4に記載のリチウム二次電池用活物質の製造方法。
【請求項6】
前記カーボネート系溶媒が、プロピレンカーボネートであり、
前記カーボネート系添加剤が、フルオロエチレンカーボネートであることを特徴とする請求項5に記載のリチウム二次電池用活物質の製造方法。
【請求項7】
シリコンイオンと、電解質イオンと、非水溶媒と、0.001~10vol%の、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、およびジプロピルカーボネートから選ばれる1種以上のカーボネート系添加剤と、を含む電気めっき液を用いて電析を行うことで製造された、シリコンと酸素と10~70at%の炭素とを含有し、シリコンと酸素の組成比がSiOx(0.1≦X<2.0)であり、アモルファスかつ準安定相のSi-O-Cからなるリチウム二次電池用活物質を用いて製造された負極を具備することを特徴とするリチウム二次電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンを含有するリチウム二次電池用活物質を製造するための電気めっき液、前記電気めっき液を用いるリチウム二次電池用活物質の製造方法、及び前記活物質用いて製造された負極を具備するリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器等の電源としてリチウム二次電池が用いられている。一般的なリチウム二次電池では、負極の活物質として、黒鉛を代表とする炭素材料が用いられている。しかし、黒鉛からなる活物質では、リチウムがLiCの組成までしか挿入できず、理論エネルギー容量は372mAh/gである。
【0003】
シリコンを活物質とすると、負極活物質あたりの理論エネルギー容量が4200mAh/gとなり、大容量のリチウム電池が実現可能とされている。
【0004】
しかし、シリコンを活物質とする負極は、充放電するときに大きな体積変化を伴う。このため、活物質の脱落等が発生し、充放電を繰り返すと容量が低下するという問題があった。このため、活物質の第三金属との合金化、カーボン材料とのコンポジット化、薄膜化、多孔質化及び集電体の粗面化等が検討されている。
【0005】
発明者らは、特開2012-89267号公報及び特開2012-204195号公報において、シリコンと酸素と炭素とが均一に分散しており、シリコンと酸素の組成比がSiOx(0.1≦X<2)であり、アモルファスかつ準安定相のSi-O-Cからなる活物質を用いることで、充放電による容量変化が小さい電池が提供できることを開示している。この活物質は、シリコンイオン、酸素及び炭素を含有する電解溶液から、電気化学的成膜法により製造される。
【0006】
しかし、充放電サイクル特性のより良好なリチウム二次電池を、より安定して製造することが求められていた。
【0007】
なお、特開2005—116264号公報には、薄帯上にシリコンを電析することによりリチウム二次電池の負極を製造する方法が開示されている。しかし、明細書には、析出したSiが酸化してSiO或いはSiOに転化することを防止するように留意することが記載されている。すなわち酸化状態のシリコンを電析する発明は積極的に除外されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2012-89267号公報
【特許文献2】特開2012-204195号公報
【特許文献3】特開2005—116264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、良好な充放電サイクル特性を示すリチウム二次電池用活物質を安定して製造できる電気めっき液、前記リチウム二次電池用活物質を安定して製造できるリチウム二次電池用活物質の製造方法、及び、前記活物質用いて製造された負極を具備するリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の電気めっき液は、シリコンと酸素と10~70at%の炭素とを含有し、シリコンと酸素の組成比がSiOx(0.1≦X<2.0)であり、アモルファスかつ準安定相のSi-O-Cからなるリチウム二次電池用活物質を電析する電気めっき液であって、シリコンイオンと、電解質イオンと、非水溶媒と、0.001~10vol%の、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、およびジプロピルカーボネートから選ばれる1種以上のカーボネート系添加剤と、を含む。
【0011】
また、別の実施形態のリチウム二次電池用活物質の製造方法は、シリコンと酸素と10~70at%の炭素とを含有し、シリコンと酸素の組成比がSiOx(0.1≦X<2.0)であり、アモルファスかつ準安定相のSi-O-Cからなるリチウム二次電池用活物質の製造方法であって、シリコンイオンと、電解質イオンと、非水溶媒と、0.001~10vol%の、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、およびジプロピルカーボネートから選ばれる1種以上のカーボネート系添加剤と、を含む電気めっき液を用いて電析を行う。
【0012】
また、別の実施形態のリチウム二次電池は、シリコンイオンと、電解質イオンと、非水溶媒と、0.001~10vol%の、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、およびジプロピルカーボネートから選ばれる1種以上のカーボネート系添加剤と、を含む電気めっき液を用いて電析を行うことで製造された、シリコンと酸素と10~70at%の炭素とを含有し、シリコンと酸素の組成比がSiOx(0.1≦X<2.0)であり、アモルファスかつ準安定相のSi-O-Cからなるリチウム二次電池用活物質を用いて製造された負極を具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、良好な充放電サイクル特性を示すリチウム二次電池用活物質を安定して製造できる電気めっき液、前記リチウム二次電池用活物質を安定して製造できるリチウム二次電池用活物質の製造方法、及び、前記活物質用いて製造された負極を具備するリチウム二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】リチウム電池の構成を説明するための断面図である。
【図2】実施形態のリチウム二次電池用活物質の製造装置を説明するための模式図である。
【図3】実施形態のリチウム二次電池用活物質を用いた電池の充放電サイクル特性評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の電気めっき液30及びリチウム二次電池用活物質の製造方法について説明する。電気めっき液30によれば、シリコンと酸素と10~70at%の炭素と、を含有し、シリコンと酸素の組成比がSiOx(0.1≦X<2.0)であり、アモルファスかつ準安定相であるリチウム二次電池用活物質を電析できる。なお「~」は「以上、以下」を示している。

【0016】
発明者らは、特開2012-89267号公報及び特開2012-204195号公報において開示した発明を更に鋭意研究し、電気めっき液30等を発明するに至った。

【0017】
<リチウム二次電池の構成例>
図1に示すように、リチウム電池10は、例えば、集電体11上に形成された活物質12を有する負極13と、正極14と、負極13と正極14との間に配置されて貯留領域17を形成するセパレータ15と、貯留領域17中に充填される電解溶液16と、封止構造部18と、を有する。すなわち、リチウム電池10の基本構成要素は、負極13と、正極14と、電解溶液16と、である。

【0018】
<リチウム二次電池用負極(活物質)の製造>
図2に示すように、実施形態の活物質12は、電気めっき液30を用いて電析を行うことで製造される。例えば電析装置20は、白金線23を陽極とし、銅箔22を陰極としている。銅箔22は集電体11であり、負極13の一部となる。

【0019】
参照電極21としては、Li/Li(TBAClO)を用いた。すなわち、以下の説明において電位Vは、(vs. Li/Li)にて示す。また、TBAは、Tetra Butyl Ammoniumの略号である。

【0020】
電気めっき液30は、シリコンイオンと、電解質イオンと、0.001~10vol%のカーボネート系添加剤と、非水溶媒と、を含む。例えば、電気めっき液30は、0.5M/リットルのSiClと、0.5M/リットルのTBAClOと、1vol(体積)%のフルオロエチレンカーボネート(FEC)と、プロピレンカーボネイト(PC)と、かなる。SiClはシリコンイオン供給源であり、TBAClOは電解質イオン供給源であり、FECはカーボネート系添加剤であり、PCは非水溶媒である。

【0021】
すなわち、非水溶媒としては、ジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン(DEE)、アセトニトリル、プロピルニトリル、エチルエーテル、ジメチルスルホキシド、又はメチルピロリドン等だけでなく、PC又はエチレンカーボネート(EC)等のカーボネート系溶媒も用いることができる。

【0022】
カーボネート系溶媒とカーボネート系添加剤とは類似しているが、陰極面への吸着能力に差がある。すなわち、カーボネート系溶媒も、カーボネート系添加剤と同じように、「-O-(C=O)-」構造を有するが、C、H、Oから構成されており、求核性及び求電子性が比較的小さい。これに対して、カーボネート系添加剤は、F等の極性原子による分極又は二重結合等による、求核性及び求電子性がある。

【0023】
カーボネート系溶媒も陰極面に吸着し、膜中へのO及びCの共析に寄与する。すなわち、カーボネート系添加剤を添加しない電気めっき液からの製造された活物質も、Si-O-Cからなる場合があるが、所望の組成及び構造の活物質が得られないことがある。

【0024】
これに対して、カーボネート系添加剤を添加した電気めっき液30を用いることで、安定して所望の組成及び構造の活物質を製造できる。

【0025】
カーボネート系溶媒としては、例えば、PC、EC、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等から選ばれる1種以上を用いることができる。

【0026】
カーボネート系添加剤としては、例えば、FEC、ビニレンカーボネート(VC)、ジプロピルカーボネート等から選ばれる1種以上を用いることができる。

【0027】
そして、後述するように、非水溶媒としてカーボネート系溶媒を用い、更にカーボネート系添加剤を添加した電気めっき液が好ましく、特に好ましくは、非水溶媒としてPCを用い、カーボネート系添加剤としてFECを用いた、実施形態の電気めっき液30が特に好ましい。

【0028】
電流密度I=1.0mA/cmにて2C(クーロン)/cmの通電電気量に制御し、活物質12を集電体11である、80μmの銅箔22上に成膜して負極13を製造した。

【0029】
<リチウム二次電池用活物質の解析>
エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用い、活物質12を構成する元素の面内分布(マッピング)を測定したところ、SiとOとCとが均一に分散していた。

【0030】
次に、X線回折(XRD)解析を行ったところ、Si(111)、Si(220)、Si(311)、Si(400)に相当するピークは確認されなかった。すなわち、活物質12はアモルファス(非晶質)であった。逆に言えば、本発明においてアモルファスとは、通常のXRD解析においてピークが確認されない状態を意味する。

【0031】
次に、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)による活物質12の解析を行った。活物質12のSi 2p3/2の結合エネルギーは、Siであることを示す99.5eV又はSiOであることを示す103.5eVではなく、その間の101eV~103eVであった。

【0032】
Si 2p3/2の結合エネルギーが101eV~103eVのSi酸化物は、SiOである。SiOは、SiOのような安定相ではなく、非平衡状態の準安定相である。このため、SiOの構造等は不明であるが、活物質12に含有されているSiは、準安定相であることが判明した。

【0033】
なお、準安定相とは熱平衡状態では存在しない相のことであり、熱力学的には不安定ではあるが、何らかの条件が満たされれば暫定的に存在し得る相である。

【0034】
次に、グロー放電発光分光分析(GDOES)による、活物質12の組成分析結果を以下に示す。なお、以下は、表面汚染及び集電体11の影響が少ない、活物質12の表面から深さ1μmの場所の値である。

【0035】
Si : 44at%
O : 21at%
C : 35at%

【0036】
以上のXPS及びGDOESによる解析結果が示すように、活物質12のSiシリコンと酸素とは、SiOx(X=0.48)の状態であった。なお、より厳密には、活物質12は大量の炭素を含有していることから、「Si-O-C」の状態である。

【0037】
活物質12の中の炭素は、活物質12のアモルファス化及び準安定相化に寄与している。

【0038】
すなわち、活物質12は、活物質粉末+導電助剤+バインダ、コアシェル構造、又はμmオーダーレベルのマトリック構造等のバルク的混合物ではなく、原子レベル又はnmオーダーレベルのマトリック構造を有する準安定相のアモルファスである。

【0039】
<リチウム二次電池特性評価>
次に、リチウム電池10の特性評価について説明する。

【0040】
二次電池の特性評価には、電析装置20と同様の三極式セルを用いた。作用極は負極13を用い、対極はLi箔を用い、参照電極は、Li/Li(TBAClO)を用い、電解溶液は、1M LiClO/EC:PC(1:1 vol%)を用いた。

【0041】
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定では、開回路電位より下限電位0.01V、上限電位1.2Vとし、掃引速度0.1mVとした。定電流充放電試験(サイクル試験)は、50μA/cm、0.01V~1.2Vの電位範囲で行った。

【0042】
1回目の充放電サイクルにおいて、活物質12のSiOx(X≦2.0)のシリコンは、リチウムで反応させ活物質12Aとなる。活物質12Aは、シリコンと、酸素と、炭素と、リチウムと、を含有し、リチウムは酸化状態である。活物質12Aは、電気めっき液30から電気めっき法により製造された活物質12のシリコンをリチウムで反応させ合金化することにより製造される。すなわち、1回目の充放電サイクルは製造工程と見なすこともできる。

【0043】
図3に示すように、活物質12を有するリチウム電池10のクーロン効率は50サイクル後において、99%であった。これに対して、電気めっき浴30にFECを添加しなかったFEC未添加浴を用いて製造した活物質を有するリチウム電池のクーロン効率は98%未満であった。

【0044】
活物質12A、すなわち、Si(-C)とLiO(-C)とを有する活物質12Aを用いると、電池を製造した後に、更に不可逆成分が生成することはない。このため、容量が低下することないものと考えられる。

【0045】
更に、電気めっき液30の組成、電流密度等を変えながら試作及び充放電サイクル試験を行ったところ、以下の結果を得た。なお、複数回の試作を行い、良好な充放電サイクル特性を示すリチウム二次電池が安定して製造できることを基準に判定を行った。

【0046】
カーボネート系添加剤の添加量は、0.001~10vol%の範囲で一定の効果が得られ、特に好ましくは、0.1~5wt%の範囲であった。また、非水溶媒としてPCを、カーボネート系添加剤としてFCEを、含む電気めっき液30が最も良い特性を示した。

【0047】
また、活物質12の炭素量は、10~70at%の範囲で、シリコンと酸素の組成比は、SiOx(0.1≦X<20)の範囲のとき、一定の効果が得られた。前記組成の活物質12は、アモルファスかつ準安定相であった。

【0048】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10…リチウム電池
11…集電体
12…活物質
13…負極
14…正極
15…セパレータ
16…電解溶液
17…貯留領域
18…封止構造部
20…電析装置
21…参照電極
22…銅箔
23…白金線
30…めっき液
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2