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明細書 :硫黄含有グラフェンの製造方法および当該硫黄含有グラフェンを用いたガスセンサー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-155709 (P2016-155709A)
公開日 平成28年9月1日(2016.9.1)
発明の名称または考案の名称 硫黄含有グラフェンの製造方法および当該硫黄含有グラフェンを用いたガスセンサー
国際特許分類 C01B  31/02        (2006.01)
FI C01B 31/02 101Z
請求項の数または発明の数 4
出願形態 OL
全頁数 6
出願番号 特願2015-034629 (P2015-034629)
出願日 平成27年2月25日(2015.2.25)
発明者または考案者 【氏名】岸 直希
【氏名】リュウ カイトウ
【氏名】曽我 哲夫
出願人 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
審査請求 未請求
テーマコード 4G146
Fターム 4G146AA01
4G146AB07
4G146AD30
4G146AD40
4G146BA11
4G146BA38
4G146BC01
4G146BC09
4G146BC25
4G146BC32A
4G146BC32B
4G146BC33A
4G146BC34A
4G146BC34B
4G146DA03
4G146DA12
4G146DA36
要約 【課題】NOxなどと相互作用が強く、これら大気汚染物質を検出するガスセンサーとしての応用が期待されている硫黄含有グラフェンを、扱いやすい原料を用いて、CVD法により合成する方法の提供。
【解決手段】基板6を700~1100℃に加熱し、炭素と硫黄を含む固体原料5を30℃~300℃に加熱して昇華させ、キャリアガス1を導入したCVD法により基板6上に硫黄を含有するグラフェンを合成する、硫黄含有グラフェンの製造方法であり、炭素と硫黄を含む固体原料5として、チオカンファーを用いるのが好適である硫黄含有グラフィンの製造方法。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
基板を700~1100℃に加熱し、炭素と硫黄を含む固体原料を30℃~300℃に加熱して昇華させ、キャリアガスを導入したCVD法により前記基板上に硫黄を含有するグラフェンを合成する、硫黄含有グラフェンの製造方法。
【請求項2】
前記固体原料がチオカンファーである、請求項1に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項3】
前記キャリアガスがアルゴンと水素とを含む、請求項1または2に記載のグラフェンの製造方法。
【請求項4】
請求項1~3に記載の製造方法により得られたグラフェンを用いたガスセンサー。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェンの製造方法に関し、特に、硫黄を含有したグラフェンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェンは、炭素原子が六角形に繋がった平面構造であって化学的に安定しており、透明で、かつバリスティック伝導特性、大電流密度耐性などの優れた電気特性を持つことから、透明電極あるいは高移動度のFET(電界効果トランジスタ)、あるいはセンサーなどの電子デバイスに利用できる材料として注目されている。グラフェン膜としては単層、二層、あるいは数~数十層のものが知られている。
【0003】
グラフェン膜の製造方法としては、テープを用い、グラファイトから基板にグラフェンを転写する方法が知られている。しかしながら、この方法では大面積のグラフェン膜の作製が困難であり、大面積化に向けて、炭化ケイ素(SiC)から選択的にSiを除く方法、あるいはCVD法(化学気相合成法)などが検討されている。
【0004】
ところで、硫黄を含有したグラフェンはNOxなどと相互作用が強く、これら大気汚染物質を検出するガスセンサーとしての応用が期待されている。これまでに硫黄含有グラフェンの化学気相成長合成としては、硫黄を溶解したヘキサン溶液を原料とした化学気相成長法が非特許文献1に報告されている。しかし、引火性の高い液体原料であるヘキサンを用いた合成手法であるため、その安全性に課題があった。
【先行技術文献】
【0005】

【非特許文献1】Hui Gao et al., ”Synthesis of S-doped graphene by liquid precursor” Nanotechnology, 23 (2012) 275605. IOP Publishing
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、扱いやすい原料を用いてCVD法により硫黄含有グラフェンを合成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明者らは原料として、炭素と硫黄を含む固体原料を用いることを創案し、合成を検討した。その結果、グラフェンが合成できることが判った。したがって、以下のグラフェンの製造方法が提供される。
【0008】
[1] 基板を700~1100℃に加熱し、炭素と硫黄を含む固体原料を30℃~300℃に加熱して昇華させ、キャリアガスを導入したCVD法により前記基板上に硫黄を含有するグラフェンを合成する、硫黄含有グラフェンの製造方法。
【0009】
[2] 前記固体原料がチオカンファーである、前記[1]に記載の硫黄含有グラフェンの製造方法。
【0010】
[3] 前記キャリアガスがアルゴンと水素とを含む、前記[1]または[2]に記載の硫黄含有グラフェンの製造方法。
【0011】
[4]前記[1]~[3]に記載の製造方法により得られた硫黄含有グラフェンを用いたガスセンサー。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態で示す硫黄含有グラフェンを製造する装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例で合成された硫黄含有グラフェン状物質のラマン散乱スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の実施例で合成された硫黄含有グラフェン状物質のX線光電子分光スペクトルを示す図である。
【図4】本発明の実施例で合成された硫黄含有グラフェン状物質の透過型電子顕微鏡像を示す図である。
【図5】図4における「○」の部分を高倍率で観察した透過電子顕微鏡像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施
形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改
良を加え得るものである。

【0014】
図1に本発明で用いる硫黄含有グラフェン製造装置の構成を示す。石英管2の外側に第一加熱炉3と第二加熱炉4を設置する。石英管2の内側に硫黄と炭素とを含む固体原料5および基板6を設置する。硫黄と炭素を含む固体原料5は第一加熱炉3により加熱可能な位置に、また基板6は第二加熱炉4により加熱可能な場所に置く。石英管内2にはキャリアガス1を流す。キャリアガス1には窒素またはアルゴンの不活性ガス、より好ましくはアルゴンまたは窒素に水素を混合したガスを用いる。水素を混合する場合は、不活性ガスに対して体積比1%~10%の水素ガスを混合することが好ましい。第二加熱炉4の温度を上げて基板6を加熱するが、その温度は700℃~1100℃が好ましい。第一加熱炉3の温度を上げ硫黄と炭素を含む固体原料5を気化するが、第一加熱炉3の温度は30℃~300℃が好ましく、40℃~100℃が特に好ましい。気化した原料はキャリアガスの流れに乗って基板6に到達し、基板6上に硫黄含有グラフェンが合成される。硫黄と炭素を含む固体原料としてはチオカンファーが好ましい。基板6としては、銅、ニッケルが特に好ましく、他にコバルトあるいは鉄が挙げられる。

【0015】
例えば銅基板上に合成された硫黄含有グラフェンをガスセンサー等に用いるには、センサー用基板に転写圧着して、その後、前記銅基板を除去し、その後、グラフェンのパタニング、さらに電極を形成してセンサーとする。なお、ガスセンサーとしてNoxセンサー等がその代表例である。
【実施例】
【0016】
基板6として銅基板を、硫黄と炭素を含む固体原料5としてチオカンファーを図1の石英管内2に設置した。アルゴンと水素の混合ガス(アルゴン:水素=97:3、体積比)をキャリアガス1として用い、0.5SLMの流量で流した。第二加熱炉4を1000℃に加熱し、次に第一加熱炉3を50℃に加熱し15分間維持した。その後第一加熱炉3、第二加熱炉4のスイッチをOFFにして温度を下げ、室温付近まで温度が下がった後、基板6を取り出した。
図2は本実施例で合成した試料のラマン散乱スペクトルである。158cm-1付近に鋭いG-bandのピーク、また2700cm-1付近に鋭い2D-bandのピークが観察された。G-bandのピークと2D-bandのピークとの強度比、また2D-bandの半値幅から、単層の硫黄含有グラフェンが得られたと考えられる。
図3は本実施例で合成した試料のX線光電子分光スペクトルである。162eV付近に硫黄に由来するS2pピーク、また284eV付近に炭素由来のC1sピークが確認できた。これらのピークを比較することにより、この試料に含まれる硫黄の割合は7.69原子%であることが確認できた。またC1sピークを詳細に解析することにより、炭素と硫黄の結合が確認され、得られた試料が硫黄含有グラフェンであることが確認された。
図4は本実施例で合成した試料の透過型電子顕微鏡像である。シート状の形状が確認できた。図5に図4において示す○の部分を高倍率で観察した透過電子顕微鏡像を示す。観察した視野において2層~3層の硫黄含有グラフェンの断面が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の合成方法により得られる硫黄含有グラフェンは、センサー等に利用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1: キャリアガス、2:石英管、3:第一加熱炉、4:第二加熱炉、5:硫黄と炭素を含む固体原料、6:基板、7:排気

図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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