TOP > 国内特許検索 > 成膜方法および成膜装置 > 明細書

明細書 :成膜方法および成膜装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3816759号 (P3816759)
公開番号 特開2002-329669 (P2002-329669A)
登録日 平成18年6月16日(2006.6.16)
発行日 平成18年8月30日(2006.8.30)
公開日 平成14年11月15日(2002.11.15)
発明の名称または考案の名称 成膜方法および成膜装置
国際特許分類 H01L  21/203       (2006.01)
C30B  23/08        (2006.01)
H01L  33/00        (2006.01)
FI H01L 21/203 S
C30B 23/08 P
H01L 33/00 C
H01L 33/00 D
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2001-132087 (P2001-132087)
出願日 平成13年4月27日(2001.4.27)
審査請求日 平成15年11月11日(2003.11.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】秩父 重英
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】菅野 智子
参考文献・文献 特開平08-045846(JP,A)
特開平11-172424(JP,A)
特開2000-147198(JP,A)
特開平11-071200(JP,A)
特開平07-238371(JP,A)
調査した分野 H01L 21/203
C30B 25/00
C23C 14/00
特許請求の範囲 【請求項1】
プラズマ源としてヘリコン波励起プラズマを用いる成膜方法であって、少なくとも、真空チャンバーに連結された石英管と、石英管内のプラズマ発生領域に連続高周波場を発生させるためのRFアンテナと、磁界を発生させるため石英管外周に設けられた一対のコイルとを有するプラズマ源から真空チャンバー内に放出されるヘリコン波励起プラズマを、ターゲットにDCバイアスを与えることによりターゲットに照射してターゲットをスパッタし、その際に、ターゲットの法線方向に対し、プラズマ入射角θ1と基板への出射角θ2とを同じにする、または(θ2-θ1)/θ2を±20%以内に収め、ターゲットから放出されたスパッタ粒子により基板上にエピタキシャル成長を行ことを特徴とする成膜方法。
【請求項2】
成長時に原料ガスを分離供給することを特徴とする請求項1の成膜方法。
【請求項3】
成長時の基板部分の圧力を3mTorr以下とすることを特徴とする請求項1または2の成膜方法。
【請求項4】
プラズマ源から真空チャンバー内に放出されるヘリコン波励起プラズマによりターゲットをスパッタし、ターゲットから放出されたスパッタ粒子により基板上にエピタキシャル成長を行う成膜装置であって、プラズマ源は、少なくとも、真空チャンバーに連結された石英管と、石英管内のプラズマ発生領域に連続高周波場を発生させるためのRFアンテナと、磁界を発生させるため石英管外周に設けられた一対のコイルとを有し、成膜装置は、ターゲットにDCバイアスを与える手段と、ターゲットの法線方向に対し、プラズマ入射角θ1と基板への出射角θ2とを同じ、または(θ2-θ1)/θ2を±20%以内に収める手段とを備えていることを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
成長時に原料ガスを分離供給する手段を備えていることを特徴とする請求項4の成膜装置
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、成膜方法および成膜装置に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、高性能な半導体膜や光機能膜等の高機能性被膜形成などに有用な、ダメージフリーな高機能エピタキシャル被膜形成を容易に行うことのできる、新しい成膜方法および成膜装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ITO(酸化インジウム錫)やZnO:B,Al(ボロン・アルミニウム添加酸化亜鉛)などの酸化物半導体は、たとえば透明導電性電極・窓材として太陽電池や光検出器、可視発光ダイオードに利用されている。また、単結晶ZnOのエピタキシャル成長膜は可視から紫外領域での発光素子材料としても注目されている。他方、ZnOと類似の特性を示すGaNは、単結晶はもとより、ガラスや金属、酸化膜上に堆積させた多結晶薄膜においても強い発光を呈する。したがって、バンド構造が類似で酸化に対し強い(はじめから酸化物である)ZnOは、安価な多結晶薄膜発光素子材料としても注目される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の成膜技術では、成長中の膜損傷が大きく、光学特性に優れた多結晶薄膜の形成は困難であった。たとえば、従来のDC、RFスパッタ法では、基板-ターゲット間にプラズマを発生するため超薄膜に対する損傷が避け難いのである。
【0004】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの事情を鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、ダメージフリーな高機能エピタキシャル被膜形成を容易に行うことのできる、新しい成膜方法および成膜装置を提供することを課題としている、
【0005】
【課題を解決する手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、プラズマ源としてヘリコン波励起プラズマを用いる成膜方法であって、少なくとも、真空チャンバーに連結された石英管と、石英管内のプラズマ発生領域に連続高周波場を発生させるためのRFアンテナと、磁界を発生させるため石英管外周に設けられた一対のコイルとを有するプラズマ源から真空チャンバー内に放出されるヘリコン波励起プラズマを、ターゲットにDCバイアスを与えることによりターゲットに照射してターゲットをスパッタし、その際に、ターゲットの法線方向に対し、プラズマ入射角θ1と基板への出射角θ2とを同じにする、または(θ2-θ1)/θ2を±20%以内に収め、ターゲットから放出されたスパッタ粒子により基板上にエピタキシャル成長を行うことを特徴とする成膜方法(請求項1)を提供し、この成膜方法において、成長時に原料ガスを分離供給すること(請求項)や、成長時の基板部分の圧力を3mTorr以下とすること(請求項3)をも提供する。
【0006】
また、この出願の発明は、プラズマ源から真空チャンバー内に放出されるヘリコン波励起プラズマによりターゲットをスパッタし、ターゲットから放出されたスパッタ粒子により基板上にエピタキシャル成長を行う成膜装置であって、プラズマ源は、少なくとも、真空チャンバーに連結された石英管と、石英管内のプラズマ発生領域に連続高周波場を発生させるためのRFアンテナと、磁界を発生させるため石英管外周に設けられた一対のコイルとを有し、成膜装置は、ターゲットにDCバイアスを与える手段と、ターゲットの法線方向に対し、プラズマ入射角θ1と基板への出射角θ2とを同じ、または(θ2-θ1)/θ2を±20%以内に収める手段とを備えていることを特徴とする成膜装置(請求項4)、そしてさらに、成膜時に原料ガスを分離供給する手段を備えている成膜装置(請求項)をも提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
この出願の発明の成膜方法は、高真空中で低エネルギプラズマ電子を高密度に発生できる「ヘリコン波励起プラズマ」(HWP:Helicon-Wave excited Plasma)をリモートソースとして、大面積化の可能なスパッタ法に適用した、ZnOおよびMgZnO、CdZnOなどの混晶やGaN、InGaN、AlGaN、AlInGaNなどの混晶のスパッタエピタキシー単結晶成長法である。すなわち、基板-ターゲット間にプラズマをたてず、ヘリコン波励起プラズマをリモートプラズマ的に用いてターゲットのみをスパッタし、基板へのプラズマ損傷を低減させると同時に真空度を高め、単原子層レベルでのエピタキシャル成長を実現する方法である。
【0009】
この成膜方法では、プラズマ源としてヘリコン波励起プラズマを用い、少なくとも、真空チャンバーに連結された石英管と、石英管内のプラズマ発生領域に連続高周波場を発生させるためのRFアンテナと、磁界を発生させるため石英管外周に設けられた一対のコイルとを有するプラズマ源から真空チャンバー内に放出されるヘリコン波励起プラズマを用いる。たとえば図1に例示したように、比較的高真空(たとえば3mTorr以下、より好ましくは1mTorr以下)で発生させる弱磁界アシスト低エネルギプラズマを、プラズマ源(1)により基板(3)から隔離して発生させて、ターゲット(2)を衝撃する。これにより、プルーム的なスパッタ粒子(4)のみが基板(3)に供給され、膜損傷が劇的に減少するのである。また、ターゲット(2)にバイアスを与えることにより所望の並進エネルギを与えることが可能であり、成長部は真空度が高く、基板ヒータ(5)などによる基板加熱も可能となり、新しいエピタキシー法が実現されることになる。
【0010】
図2は、上記成膜方法を実行するこの出願の発明の成膜装置の一例を示したものである。たとえばこの図2に例示したように、この出願の発明の成膜装置では、プラズマ源としてヘリコン波励起プラズマが用いられており、ヘリコン波励起プラズマによりターゲットがスパッタされ、ターゲットから放出されるスパッタ粒子により基板上にエピタキシャル成長が行われる構成となっている。
【0011】
より具体的には、プラズマ源は、少なくとも、真空チャンバーに連結されたヘリコン波励起プラズマを発生させる石英管(11)と、石英管内のプラズマ発生領域に連続高周波場を発生させるRFアンテナ(12)と、磁界を発生させるため石英管外周に設けられた一対のコイル(13a)(13b)と、ターゲット(14)および基板ホルダー(16)が設置された真空チャンバー(18)とを有している。図2の例では、永久磁石(15)およびシャッター(17)なども設置されている。
【0012】
永久磁石(15)はターゲット(14)の裏側に位置し、ヘリコン波励起プラズマを集束させるためのDCバイアスをターゲット(14)に与える。基板ホルダー(16)は、図示していないが基板ヒータを備え、保持した基板を加熱可能となっている。基板に回転機構が備えられていても良い。
【0013】
このような構成の成膜装置およびそれに実行される成膜方法は、上述した酸化物半導体膜や窒化物半導体膜はもとより、従来はEB蒸着に頼ってきた高融点金属や高融点酸化物反射コーティング(たとえばMgF2)セラミクスや超伝導酸化物などのスパッタにも適用可能である。また、太陽電池や発光ダイオードのような2端子デバイスのみならず、超薄膜・ヘテロ界面などがデバイス表面近くにある場合でも適用できる。したがって、たとえばフォトニックバンドギャップデバイスやマイクロキャビティ光源のプロセスにも応用できるのである。
【0014】
さらにまた、単結晶ZnOのエピタキシャル成長だけでなく、ガラスや反射率の高い金属上に多結晶接合形発光素子を形成できれば、安価に作れる多結晶薄膜発光素子としての実用化の可能性も高い。たとえば、GaNをガラスや金属、酸化膜上に堆積させる多結晶半導体薄膜の分野に酸化に強いZnOが参入し、透明なトランジスタと集積化すれば、大型フラットディスプレイを高層ビルの窓にはめ込んだり、紫外線をカットして目的地まで誘導するディスプレイを自動車のフロントガラスに組み込むことも可能になる。
【0015】
この出願の発明は、以上のとおりの特徴を有するものであるが、以下に、添付した図面に沿って実施例を示し、さらに詳しくこの発明の実施の形態について説明する。
【0016】
【実施例】
前述の図2に例示した成膜装置を用いて、サファイアC面、A面、R面基板上にZnO薄膜をスパッタエピタキシャル成長させた。本実施例では、RFアンテナ(12)としてナゴヤタイプIIIを用い、13.56MHzを最大5kWで発生させる高周波電源(19)によりマッチングボックス(20)を介して運転するようにした。
【0017】
プラズマ導入口の方向は、ターゲット(2)の法線方向に対してヘリコン波励起プラズマ入射角θと基板への出射角θとが同じになる、あるいは(θ-θ)/θが±20%以内となるように設定する(図3参照)本実施例ではθ=θ=30°とした。この場合においてターゲット(2)は上下360°どこを向いていても構わない。また成長時の基板部分の圧力は3mTorr以下である。プラズマ入射角、出射角および基盤圧力をこのような数値に設定することで、効率よくプラズマを発生させ、且つ基板表面の真空度がエピタキシャル成長に十分なほど低く、高密度の低エネルギプラズマを再現性良く発生できる。
【0018】
本実施例ではさらに、基板温度を制御して600℃とし、プラズマの安定化も同時に図った。
以上の条件にて成膜を行った結果、X線の2θスキャン半値幅が0.1°以下の完全c軸配向ZnO膜を得ることができた。図4は、このZnO膜のX線回折の測定結果(φスキャン)を例示したものである。通常のMBE(分子線エピタキシー)やレーザMBE法では、600℃という低温ではサファイアc面上にはa軸の方向が30°づつずれた12回対称のマルチドメイン多結晶膜が得られやすいが、この出願の発明によれば、図4に示すように面内でa軸の回転が抑制された6回対称を示す高c軸配向性膜が得られる。すなわち、低温で単一ドメイン構造ZnO成長を実現できるのである。
【0019】
また、このZnO膜の300Kおよび77Kでのフォトルミネッセンス(PL)を測定したところ、たとえば図5に例示したように、ZnOのバンドギャップに対応する370~390nmという紫外域の発光が極めて支配的な優れたスペクトルとなった。
なお、半導体をIII族窒化物半導体とし、原料ガスにアンモニアないしは有機窒素ガス(ジメチルヒドラジンなど)を用いたり、半導体を酸化物半導体とし、原料ガスに酸素もしくは笑気ガス(N2O)もしくはオゾンガスまたはそれらのプラズマを用いたりすることができる
【0020】
他方、同様にしてGaNの成膜を行ったところ、ZnOと同様に、GaNのバンドギャップに対応する360~370nm付近の紫外発光が支配的な膜を成長することができた。
【0021】
なお、図2にも例示したように、この出願の発明においては、スパッタガスと薄膜構成元素のアシストガスないしは反応性ガスとを分離供給する。一例として、ZnOのエピタキシャル成長の際に酸素(ないしはアシストガス、活性ガス、プラズマガス、有機金属でも構わない)と笑気ガスを分離導入したところ、結晶性の大きな改善を実現でき、X線の半値幅が半分以下、発光強度が10倍程度となった。
【0022】
以上の実施例から明らかなように、この出願の発明の成膜方法および成膜装置は、酸化物半導体や窒化物半導体のエピタキシャル成長に非常に有効である。
【0023】
この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0024】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この出願の発明によって、高性能被膜形成に有用であり、特に大面積の基板に安価に再現性および均一性良くエピタキシャル薄膜を成長させることのできる、新しい成膜方法および成膜装置が提供される。
【0025】
また、この成膜方法および装置は、半導体プロセスや、酸化物半導体デバイスおよび窒化物半導体デバイスの作製工程、プラズマスパッタ(エピタキシャル)堆積膜を必要とするデバイス、光電子素子分野などの様々な半導体分野にも応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明を説明する図である。
【図2】この出願の発明の成膜装置を例示した概略構成図である。
【図3】プラズマ入射について説明するための図である。
【図4】この出願の発明により成膜されたZnO薄膜の回折強度の測定結果を例示した図である。
【図5】この出願の発明により成膜されたZnO薄膜のフォトルミネッセンス強度の測定結果を例示した図である。
【符号の説明】
1 プラズマ源
2 ターゲット
3 基板
4 スパッタ粒子
5 基板ヒータ
11 石英管
12 RFアンテナ
13a,13b コイル
14 ターゲット
15 永久磁石
16 基板ホルダー
17 シャッター
18 真空チャンバー
19 高周波電源
20 マッチングボックス
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4