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明細書 :間質性肺炎のバイオマーカー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-090323 (P2015-090323A)
公開日 平成27年5月11日(2015.5.11)
発明の名称または考案の名称 間質性肺炎のバイオマーカー
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
C07K  14/82        (2006.01)
FI G01N 33/53 ZNAN
C07K 14/82
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 19
出願番号 特願2013-230423 (P2013-230423)
出願日 平成25年11月6日(2013.11.6)
発明者または考案者 【氏名】権 寧博
【氏名】橋本 修
【氏名】小林 朋子
【氏名】大木 隆史
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査請求 未請求
テーマコード 4H045
Fターム 4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA41
4H045DA86
4H045EA51
4H045GA20
要約 【課題】特発性間質性肺炎の検出方法方法、特発性間質性肺炎の検出用いるためのマーカー、及び特発性間質性肺炎を検出するためのキットの提供。
【解決手段】被験者のサンプル中における、配列番号1~10で示されるアミノ酸配列のタンパク質から選択される少なくとも1種に対する抗体を指標とすることを特徴とする、特発性間質性肺炎の検出方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
被験者のサンプル中における、配列番号1~10で示されるアミノ酸配列のタンパク質から選択される少なくとも1種に対する抗体を指標とすることを特徴とする、特発性間質性肺炎の検出方法。
【請求項2】
配列番号1~10で示されるアミノ酸配列のタンパク質から選択される少なくとも1種からなる、特発性間質性肺炎を検出に用いるためのマーカー。
【請求項3】
配列番号1~10で示されるアミノ酸配列のタンパク質から選択される少なくとも1種に対する抗体を検出する手段を含む、特発性間質性肺炎を検出するためのキット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、主に特発性間質性肺炎の検出方法若しくは診断方法、特発性間質性肺炎の検出若しくは診断に用いるためのマーカー、及び特発性間質性肺炎を検出若しくは診断するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
間質性肺炎(interstitial pneumonia)は、肺において肺胞間の隔壁である、肺の間質組織における炎症性疾患の総称である。間質性肺炎の進行に伴い、間質組織の線維化が生じ、患者の呼吸困難の原因となる。間質性肺炎は、膠原病よるもの、薬剤誘起性、職業若しくは環境によるものなどの原因が明らかな一群と、原因不明の一群とに大別される。原因不明のものは、特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias、IIPs)と呼ばれる。
【0003】
特発性間質性肺炎は予後不良であり、我が国では難治性疾患として特定疾患に指定されている。このように難治性疾患である特発性間質性肺炎は、早期の診断が望ましい。しかしながら、我が国の日本呼吸器学会による診断ガイドライン(非特許文献1)、あるいは、アメリカ胸部医学会(American Thoracic Society、ATS)及びヨーロッパ胸部疾患学会(European Respiratory Society、ERS)による分類(非特許文献2)では、特発性間質性肺炎の確定診断を行うためには、臨床所見、画像所見、肺の機能評価、外科的肺生検による病理組織学的所見等に基づく総合判断を行う必要がある。さらに、病態の進行により初めて確定診断が可能となる場合がある。このような診断を行うことは、患者本人と医師等の医療従事者との双方に大きな負担となる。
【0004】
従って、より簡便に、かつ、高い陽性率及び特異性をもって特発性間質性肺炎を診断する方法が強く求められているのが現状である。
【0005】
これまでに、血液検査による特発性間質性肺炎の診断が提唱されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、陽性率や特異性の観点で十分なものであるとは言えない。
【0006】
また、前記ガイドラインではKL-6、SP-D、SP-Aなどが血清マーカーとして挙げられている(非特許文献1)。これらのマーカーは特発性間質性肺炎において高い陽性率を示すものの、幅広い肺の疾患で陽性を示すマーカーであるため、特発性間質性肺炎の特異的な診断に用いることはできない。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2011-127946号
【0008】

【非特許文献1】日本呼吸器学会びまん性肺疾患診断・治療ガイドライン作成委員会編集「特発性間質性肺炎診断と治療の手引き改訂第2版」、2011年
【非特許文献2】An Official ATS/ERS/JRS/ALAT Statement: Idiopathic Pulmonary Fibrosis: Evidence-based Guidelines for Diagnosis and Management. Am J Respir Crit Care Med Vol 183. pp 788-824, 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特発性間質性肺炎の検出方法、特発性間質性肺炎の検出用いるためのマーカー、及び特発性間質性肺炎を検出するためのキットを提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、被験者のサンプルにおいて特定のタンパク質に対する抗体を指標として、特発性間質性肺炎の検出若しくは診断ができることを見出した。本発明は、斯かる知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0011】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を包含する。
【0012】
項1、被験者のサンプル中における、配列番号1~10で示されるアミノ酸配列のタンパク質から選択される少なくとも1種に対する抗体を指標とすることを特徴とする、特発性間質性肺炎の検出方法。
【0013】
項2、配列番号1~10で示されるアミノ酸配列のタンパク質から選択される少なくとも1種からなる、特発性間質性肺炎を検出に用いるためのマーカー。
【0014】
項3、配列番号1~10で示されるアミノ酸配列のタンパク質から選択される少なくとも1種に対する抗体を検出する手段を含む、特発性間質性肺炎を検出するためのキット。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、簡便に、かつ、高い陽性率及び特異性をもって特発性間質性肺炎の診断が可能となる。また、本発明により、特発性間質性肺炎の早期の診断が可能となり、早期の治療開始が可能となり、適切な処置を施すことで、患者のQOLの向上が期待できる。
【0016】
本発明で見出した抗体を標的とした特発性間質性肺炎の治療薬の開発も期待される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質マーカー(UBE2T)について、ProtoPlex免疫応答アッセイの結果を示す。
【図2】配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質マーカー(HK1)について、ProtoPlex免疫応答アッセイの結果を示す。
【図3】配列番号3で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質マーカー(PMSE1)について、ProtoPlex免疫応答アッセイの結果を示す。
【図4】配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質マーカー(USO1)について、ProtoPlex免疫応答アッセイの結果を示す。
【図5】配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質マーカー(IFI16)について、ProtoPlex免疫応答アッセイの結果を示す。
【図6】配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質マーカー(GLTP)について、ProtoPlex免疫応答アッセイの結果を示す。
【図7】配列番号1~6で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質マーカーについて、ProtoPlex免疫応答アッセイの結果を示す。
【図8】各種間質性肺炎患者の血清中のUBE2Tタンパク質量の定量結果を示す。
【図9】各種間質性肺炎患者の血清中のKL-6値の測定結果を示す。
【図10】配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質マーカー(UBE2T)のROC曲線を示す。
【図11】配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質マーカー(UBE2T)のカットオフ値についての解析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0019】
1.対象疾患
本発明が対象とする疾患は、特発性間質性肺炎である。特発性間質性肺炎の病態は、例えば非特許文献1などにより公知である。肺において肺胞間の隔壁である、肺の間質組織における炎症性疾患である間質性肺炎(interstitial pneumonia)のうち、原因が不明なものを主に指す。

【0020】
特発性間質性肺炎は、病理組織学的に主として7パターンに分類され得る。これらのパターンとして、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis、IPF;通常型間質性肺炎(usual interstitial pneumonia、UIP)ともいう。)、非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia、NSIP)(線維化型非特異型間質性肺炎(fibroic NSIP、fNSIP)を含む。)、特発性基質化肺炎(cryptogenic organizing pneumonia、COP)、急性間質性肺炎(respiratory bronchiolitis-associated interstitial lung disease:RB-ILD)、剥離性間質性肺炎(desquamative interstitial pneumonia、DIP)、呼吸細気管支炎に伴う間質性肺疾患(lymphocytic interstitial pneumonia、LIP)、リンパ球性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia、AIP)が挙げられる。これらの疾患それぞれの具体的病態は、公知である。例えば、日本呼吸器学会による診断ガイドライン、あるいは、アメリカ胸部医学会(American Thoracic Society、ATS)及びヨーロッパ胸部疾患学会(European Respiratory Society、ERS)による分類が挙げられる。

【0021】
本発明は、中でも、特発性肺線維症を対象とすることが好適である。

【0022】
なお、サルコイドーシス、過敏性肺臓炎(Hypersensitivity Pneumonitis、HP)などの疾患に伴う原因や病態が明らかな間質性肺炎は、特発性間質性肺炎に含まれないと理解される。

【0023】
2.被験者
本発明が対象とする被験者(被験対象)は、特に限定されるものではない。特発性間質性肺炎を発症する可能性がある、ヒト、並びに、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ等の非ヒト哺乳類が例示され、特にヒトが好適である。被験者がヒトである場合、例えば、間質性肺炎を含む間質性肺疾患の患者、又は、間質性肺疾患が疑われる被験者が特に好適な例として挙げられる。

【0024】
被験者がヒトである場合、性別、年齢、人種は特に限定されるものではない。

【0025】
3.サンプル
本発明の被験者のサンプルは、被験者の血液(全血)、血清、血漿、リンパ液などが挙げられる。サンプルとして、血液、血清、血漿が好ましく、特に血清が好ましく使用される。

【0026】
サンプルは、当業者に公知の方法で採取することができる。例えば、血液は、注射器などを用いた採血によって採取することができる。なお、採血は、医師、看護師などの医療従事者が行うことが望ましい。血清は、血液から血球及び特定の血液凝固因子を除去した部分であり、例えば、血液を凝固させた後の上澄みとして得ることができる。血漿は、血液から血球を除去した部分であり、例えば、血液を凝固させない条件下で遠心分離に供した際の上澄みとして得ることができる。検体は、被験対象の動脈由来、静脈由来、末梢血管由来のいずれであってもよい。

【0027】
4.抗体
本発明は、配列番号1~10で示されるアミノ酸配列のタンパク質から選択される少なくとも1種もしくはその断片に対する抗体を指標とすることを特徴とする。

【0028】
配列番号1で示されるアミノ酸配列は、ユビキチン結合酵素(Ubiquitin-conjugating enzyme、E2)であるヒトUBE2Tタンパク質をコードする。当該アミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号NM_014176により表される塩基配列の翻訳産物であり、GenBankアクセッション番号NP_054895により表される。

【0029】
配列番号2で示されるアミノ酸配列は、ヒトヘキソキナーゼ1(hexokinase 1)タンパク質をコードする。当該アミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号BC008730により表される塩基配列の転写産物であり、GenBankアクセッション番号AAH08730により表される。

【0030】
配列番号3で示されるアミノ酸配列は、ヒトプロテアソーム(proteasome、別名prosome,又はmacropain)活性化サブユニット(activator subunit)1タンパク質(PSME1)(別名、PA28 alpha)をコードする。当該アミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号NM_176783により表される塩基配列の転写産物であり、GenBankアクセッション番号NP_788955により表される。

【0031】
配列番号4で示されるアミノ酸配列は、酵母の小胞ドッキングタンパク質(vesicle docking protein)であるUSO1タンパク質のヒトホモログタンパク質をコードする。当該アミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号BC032654により表される塩基配列の転写産物であり、GenBankアクセッション番号AAH32654により表される。

【0032】
配列番号5で示されるアミノ酸配列は、ヒトインターフェロンγ誘導性タンパク質16(interferon-gamma-inducible protein 16、IFI16)(別名IFNGIP1、PYHIN2)をコードする。当該アミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号BC017059により表される塩基配列の転写産物であり、GenBankアクセッション番号AAH17059により表される。

【0033】
配列番号6で示されるアミノ酸配列は、ヒトGLTP(Glycolipid Transfer Protein)タンパク質をコードする。当該アミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号NM_016433により表される塩基配列の転写産物であり、GenBankアクセッション番号NP_057517により表される。

【0034】
配列番号7で示されるアミノ酸配列は、ヒトPRC1(Protein Regulator of Cytokinesis 1)をコードする。当該アミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号NM_003981により表される塩基配列の転写産物であり、GenBankアクセッション番号NP_003972により表される。

【0035】
配列番号8で示されるアミノ酸配列は、ヒトTFE3(transcription factor binding to IGHM enhancer 3、別名bHLHe33; RCCP2; TFEA)タンパク質をコードする。当該アミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号NM_00652により表される塩基配列の転写産物であり、GenBankアクセッション番号NP_006512により表される。

【0036】
配列番号9で示されるアミノ酸配列は、ヒトWHSC1(Wolf-Hirschhorn syndrome candidate 1、別名FLJ23286;、KIAA1090、MMSET、NSD2、REIIBP、TRX5)タンパク質をコードする。当該アミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号NM_133336により表される塩基配列の転写産物であり、GenBankアクセッション番号NP_006512により表される。

【0037】
配列番号10で示されるアミノ酸配列は、DNA修復タンパク質であるヒトXRCC4タンパク質をコードする。当該アミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号NM_022406により表される塩基配列の転写産物であり、GenBankアクセッション番号NP_071801により表される。

【0038】
配列番号1~10で示されるアミノ酸配列を、下記表に示す。

【0039】
【表1】
JP2015090323A_000002t.gif

【0040】
【表2】
JP2015090323A_000003t.gif

【0041】
【表3】
JP2015090323A_000004t.gif

【0042】
【表4】
JP2015090323A_000005t.gif

【0043】
上記タンパク質のうち、特に配列番号1~6で示されるアミノ酸配列のタンパク質を用いることが好ましく、配列番号1~3で示されるアミノ酸配列のタンパク質が特に好ましい。

【0044】
配列番号1~10は、各々のタンパク質の全長アミノ酸配列を示す。本発明において用いられるタンパク質は、配列番号1~10に示すアミノ酸配列からなるタンパク質であっても、本発明の実施ができる限度において、配列番号1~10が示す各々のアミノ酸配列の一部分であってもよい。

【0045】
上記のタンパク質に対する抗体は、当該タンパク質に特異的に結合する抗体が主に意図される。本発明において、「抗体」の好ましい具体例は自己抗体である。「自己抗体」とは、自己の細胞又は組織に対して産生される抗体を意味する。

【0046】
「抗体」は、「免疫グロブリンタンパク質」と交換可能に用いられる。抗体のアイソタイプは、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgA、IgDなどがあるが、特に限定されるものではない。抗体のアイソタイプは、好適にはIgGである。

【0047】
5.抗体の検出
被験者のサンプルにおいて、上記抗体を検出する手段は、適宜公知の手法を用いることができる。具体的には、ELISA法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)、ラジオイムノアッセイ法(RIA)などの免疫学的測定方法が好適な例として挙げられる。簡便性と正確性の観点から、特に好ましい抗体を検出する手段としてELISAが挙げられる。

【0048】
ELISA法の具体的な実施態様として、競合イムノアッセイ、サンドイッチイムノアッセイが挙げられる。

【0049】
6.特発性間質性肺炎の検出
本発明において、被験者のサンプル中における、上記タンパク質から選択される少なくとも1種もしくはその断片に対する抗体を指標として、特発性間質性肺炎の検出または診断を行う。従って、本発明は、上記タンパク質を、特発性間質性肺炎の検出または診断に用いるためのマーカーとして使用することをも提供する。

【0050】
本明細書において、「検出」は、「診断」または「判定」と交換可能に用いることができる。「特発性間質性肺炎の検出」とは、被験者が、特発性間質性肺炎を発症していることの検出を主に指す。さらに、「特発性間質性肺炎の検出」は、特発性間質性肺炎を将来発症する可能性があることの検出であってもよい。あるいは、「特発性間質性肺炎の検出又は診断」は、過去に特発性間質性肺炎であると診断された被験者の、病態の変化(治療効果、重症度等)の検出であってもよい。

【0051】
本発明の好ましい態様の1つにおいては、上記タンパク質に対する抗体が、予め設定されたカットオフ値よりも多く存在する場合、被験者は特発性間質性肺炎であると判定することができる。上記予め設定するカットオフ値は、当業者が適宜設定することができる。例えば、特発性間質性肺炎を発症していない健常者の平均値又は中央値と比べて統計的に有意に高い値とすることができる。

【0052】
7.キット
本発明は、特発性間質性肺炎を検出するためのキットをも提供する。本発明のキットは、配列番号1~10で示されるアミノ酸配列のタンパク質から選択される少なくとも1種に対する抗体を検出する手段を含むものであれば特に限定されない。

【0053】
例えば、配列番号1~10で示されるアミノ酸配列のタンパク質から選択される少なくとも1種に対する抗体を検出する手段は、当該タンパク質が固相に結合された、ELISA法を実施するための器具であってもよい。固相の具体例としては、試験管、マイクロタイタープレートのウェル、アガロース粒子、ラテックス粒子などが挙げられる。

【0054】
また、本発明のキットには、必要に応じて他の成分を含めることができる。他の成分は、例えばサンプルを採取するための道具(例えば、注射器等)、ポジティブコントロール試料及びネガティブコントロール試料などが挙げられるが、これに限定されない。本発明の検出方法を行うための手順を書き記した書面等を含むこともできる。
【実施例】
【0055】
[実施例1]
サンプル
日本呼吸器学会による診断ガイドライン(非特許文献1)及びATS/ERS/JRS/ALAT Statement(非特許文献2)に基づき特発性肺線維症 (idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)と診断したIPF9症例から血液を採取し血清を分離した。対象をIPFに罹患していない健常者とし採血後血清を分離した。
【実施例】
【0056】
ProtoArray
上記患者群の血清及び対照群の血清について、ライフテクノロジーズ社が提供するProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイを用いて、血清中に存在する自己抗体のプロファイルを求めた。具体的手法は、製造者が提供するプロトコールに従った。
【実施例】
【0057】
得られた結果を解析し、患者群の血清中に、対照群と比して、自己抗体が多く存在する抗原タンパク質を抽出し、配列番号1~10のアミノ酸配列のタンパク質が得られた。
【実施例】
【0058】
なお、ProtoArrayヒトタンパク質マイクロアレイには、9000種以上の完全長ヒトタンパク質が2スポット搭載されている、タンパク質マイクロアレイである。
【実施例】
【0059】
[実施例2]
サンプル
日本呼吸器学会による診断ガイドライン(非特許文献1)及びATS/ERS/JRS/ALAT Statement(非特許文献2)に基づき特発性肺線維症 (idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)と診断したIPF16症例から血液を採取し血清を分離した(図中、「Group 2 Patient」)。対象をIPFに罹患していない健常者とし採血後血清を分離した(図中、「Group 1 Control」)。
【実施例】
【0060】
ProtoPlex
ライフテクノロジーズ社が提供するProtoPlex免疫応答アッセイサービスにより、実施例1で選択した上記配列番号1~10のアミノ酸配列のタンパク質について、患者群及び対照群の血清中に存在する自己抗体の量を測定した。具体的手法は、製造者が提供するプロトコールに従った。
【実施例】
【0061】
結果を、図1~6に示す。また、図7に統計解析の結果を示す。
【実施例】
【0062】
以上の結果は、本発明のタンパク質が、特発性間質性肺炎の検出に有用であることを示している。
【実施例】
【0063】
[実施例3]
配列番号1のアミノ酸配列のタンパク質(ヒトUBE2Tタンパク質)について、ELISA法により、各種間質性肺炎の患者由来の血清に存在する自己抗体の量を定量した。対照として、血清中のKL-6値の測定をした。
【実施例】
【0064】
サンプル
日本呼吸器学会による診断ガイドライン及びATS/ERS/JRS/ALAT Statement参考文献1)に基づき特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis; IPF)に基づいてIPFと診断したIPF 26症例、過敏性肺臓炎及びサルコイドーシス各2症例から血液を採取し血清を分離した。対象をIPFに罹患していない健常者とし採血後血清を分離した。
【実施例】
【0065】
測定
ヒトUBE2T(1-197aa Human, His-tagged, Recombimamt, E.coli (ATGEN 社: #ATGP0529))をマイクロプレート上に固相化し洗浄後、6 x His antibody(rabbit polyclonal)(Gene Tex社:#GTX30501)を10,000 - 156.25 pg/mlまでサンプルバッファーにより7段階に希釈した標準サンプルと、サンプルバッファーで200倍に希釈した血清をウェルに加え、室温で2時間インキュベーションした。洗浄バッファーで3回洗浄後、Biotin anti-Human IgG(Fc)(BioLegend 社)を検出抗体とし1時間室温でインキュベーションし、洗浄バッファーで5回洗浄した。TMB (Kirkegaard & Perry Laboratories,Inc 社)で発色し、1N 塩酸で発色を停止後、吸光高度計Multiskan GO (Thermo)で450nmの吸光度を測定した。標準サンプルの吸光度からSkanIt 3.2 software (Thermo)を用いて検量線を作成し、4パラメーターロジティックモデルy=(A-D)/(1+(x/C)^B)+D, R2を用いて濃度を算出した。
【実施例】
【0066】
KL-6値の測定は、製造者が提供する指示書に従った。
【実施例】
【0067】
結果
結果を図8及び図9に示す。図8に示すように、特発性肺線維症(IPF)の患者において、健常者と比較して、有意にUBE2Tタンパク質に対する自己抗体の血中濃度が高いことが確認できた(P<0.05、IPF vs normal、Mann-Whitney U test)。一方、図9に示すように、KL-6値については、有意差は見られなかった。
【実施例】
【0068】
ROC曲線解析
次いで、配列番号1のアミノ酸配列のタンパク質(ヒトUBE2Tタンパク質)を特発性肺線維症のマーカーとして用いることのモデル性能の評価をするために、ROC曲線を作成した。ROC曲線を図10に示す。また、解析結果を図11に示す。血清抗UBE2T抗体の濃度のカットオフ値を219ng/mlとした場合、IPFの診断における感度は92.9%、特異度は80.8%で、感度、特異度ともにIPFの診断において血清抗UBE2T抗体の測定が有効であることが示された。
図面
【図8】
0
【図9】
1
【図10】
2
【図11】
3
【図1】
4
【図2】
5
【図3】
6
【図4】
7
【図5】
8
【図6】
9
【図7】
10