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明細書 :モータジェットエンジン

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2015-161214 (P2015-161214A)
公開日 平成27年9月7日(2015.9.7)
発明の名称または考案の名称 モータジェットエンジン
国際特許分類 F02C   6/00        (2006.01)
H01M   8/12        (2006.01)
H01M   8/00        (2006.01)
H01M   8/04        (2006.01)
H01M   8/06        (2006.01)
F04D  29/00        (2006.01)
F02C   7/08        (2006.01)
FI F02C 6/00 E
H01M 8/12
H01M 8/00 Z
H01M 8/04 J
H01M 8/06 B
F04D 29/00 B
F02C 7/08 Z
請求項の数または発明の数 2
出願形態 OL
全頁数 24
出願番号 特願2014-036367 (P2014-036367)
出願日 平成26年2月27日(2014.2.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り (1)平成25年11月26日に開催された第24回内燃機関シンポジウムにおいて発表
発明者または考案者 【氏名】田辺 光昭
【氏名】齊藤 允教
【氏名】小山 雄矢
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100067736、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 晃
【識別番号】100096677、【弁理士】、【氏名又は名称】伊賀 誠司
【識別番号】100106781、【弁理士】、【氏名又は名称】藤井 稔也
審査請求 未請求
テーマコード 3H130
5H026
5H027
Fターム 3H130AA13
3H130AB07
3H130AB27
3H130AB60
3H130AC17
3H130BA97G
3H130BA98G
3H130DD01X
5H026AA06
5H027AA06
5H027BA01
5H027DD02
要約 【課題】構造を簡略化して小型化しつつ、高効率・高推力を確保する。
【解決手段】吸気口と排気ノズルとを有するケーシングと、ケーシング内に設けられ、吸気口から吸入された空気を圧縮する圧縮機と、圧縮機に連結され、圧縮機を駆動させるモータと、ケーシング内の圧縮機よりも排気ノズル側に設けられ、電力を発電して電力をモータに給電すると共に、発電時の発熱による熱エネルギーによって圧縮された空気を加熱する燃料電池と、ケーシング内の燃料電池よりも排気ノズル側に設けられ、燃料電池によって加熱された圧縮された空気に燃料を混合して燃焼させて排気ノズルから排出する燃焼器とを備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
吸気口と排気ノズルとを有するケーシングと、
上記ケーシング内に設けられ、上記吸気口から吸入された空気を圧縮する圧縮機と、
上記圧縮機に連結され、該圧縮機を駆動させるモータと、
上記ケーシング内の上記圧縮機よりも排気ノズル側に設けられ、電力を発電して該電力を上記モータに給電すると共に、発電時の発熱による熱エネルギーによって上記圧縮された空気を加熱する燃料電池と、
上記ケーシング内の上記燃料電池よりも排気ノズル側に設けられ、上記燃料電池によって加熱された圧縮された空気に燃料を混合して燃焼させて上記排気ノズルから排出する燃焼器とを備えることを特徴とするモータジェットエンジン。
【請求項2】
上記燃料電池は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)であることを特徴とする請求項1に記載のモータジェットエンジン。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵した燃料電池による発電及び排熱を利用したモータジェットエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のジェットエンジン100は、図10に示すように、例えば、圧縮機101と、燃焼器102と、タービン103とを備えている。更に、従来のジェットエンジン100は、ブレイトンサイクルに基づいて構成されている。圧縮機101にて断熱圧縮された空気が、燃焼器102内で噴射された燃料と混合して等圧下で燃焼され、高温高圧ガスが生成される。この高温高圧ガスは、タービン103を駆動しながら断熱膨張し、ノズル104を介して排出される。また、圧縮機101とタービン103とは、1つの軸105により接続されている。そして、従来のジェットエンジン100は、タービン103を回転させることにより、軸105を介して回転仕事を圧縮機101に伝達して回転させている。
【0003】
ここで、ブレイトンサイクルの効率を示すパラメータは、熱効率と比出力とである。高い比出力を得るためには温度比を高くとる必要がある。更に、温度比を上げると熱効率が最大となる圧力比は増加する。そのため、従来のジェットエンジン100は、高出力・高効率とするためには作動流体を高温高圧にする必要がある。また、従来のジェットエンジン100は、単段圧縮だと圧力比を上げることに限界があるため、多段圧縮をすることにより、圧力比を上げて、高効率化を図っている。
【0004】
更に、従来のジェットエンジン100は、上述したように、高効率化を図るために、高温高圧ガスを流す必要がある。この高温高圧ガスは、タービン103に当たる。そのため、タービン103を構成するタービン翼には、高温高圧に耐えうる性質を持った材料の使用や冷却構造を設ける必要がある。しかしながら、高温高圧に耐えうる材料には、耐熱・耐圧限界があるため、効率を上げることが難しい。また、耐熱・耐圧材料を使用することは、製作コストの上昇にも繋がる。更に、タービン翼に冷却構造を設けることは、高度な加工技術が必要となり、製作・加工が難しくなる。更に、構造が複雑化するため、系全体の大型化が避けられない。更に、保守点検面においても、タービン翼は慎重に点検を行う必要があるため、手間及びコストがかかる等の問題が生じる。また、従来のジェットエンジン100では、燃焼器102で生成された高温高圧ガスが、タービン103を駆動しながら断熱膨張する際に圧力が減少する。そのため、排気ノズル入り口での圧力は減少し、取り出すことのできる仕事を全て外部に取り出すことができない。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2012-505348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、タービンが不要となるなど、構造面での簡略化が可能なモータジェットエンジンを提供することを目的とする。また、高効率・高推力が確保可能なモータジェットエンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るモータジェットエンジンは、吸気口と排気ノズルとを有するケーシングと、上記ケーシング内に設けられ、上記吸気口から吸入された空気を圧縮する圧縮機と、上記圧縮機に連結され、該圧縮機を駆動させるモータと、上記ケーシング内の上記圧縮機よりも排気ノズル側に設けられ、電力を発電して該電力を上記モータに給電すると共に、発電時の発熱による熱エネルギーによって上記圧縮された空気を加熱する燃料電池と、上記ケーシング内の上記燃料電池よりも排気ノズル側に設けられ、上記燃料電池によって加熱された圧縮された空気に燃料を混合して燃焼させて上記排気ノズルから排出する燃焼器とを備える。
【0008】
更に、上記燃料電池として、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を用いるようにしても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明のモータジェットエンジンは、圧縮機が燃料電池によって発電された電力を利用して電動で駆動されることにより、圧縮機を駆動するためのタービンをケーシング内に組み込む必要がなくなる。すなわち、本発明のモータジェットエンジンは、タービンを省略することができる。したがって、本発明のモータジェットエンジンは、軸長を含めて回転系全体の小型化が望める。更に、本発明のモータジェットエンジンは、タービンを省略することができるので、構造の簡略化及び低コスト化を図ることができる。
【0010】
更に、本発明のモータジェットエンジンは、発電時に自ら発熱する。したがって、本発明のモータジェットエンジンは、燃料電池がケーシング内の燃焼器よりも吸気口側に設けられ、燃料電池の発電時の発熱による熱エネルギーによって圧縮機により圧縮された空気が加熱されることにより、燃料電池の発熱による熱エネルギーも推力として取り出して利用することができる。更に、本発明のモータジェットエンジンは、燃焼器によって燃焼する前に、燃料電池の発電時の発熱による熱エネルギーによって圧縮機により圧縮された空気が予熱されることにより、燃焼器による燃焼効率を向上させることができる。よって、本発明のモータジェットエンジンは、圧力比や温度比が同等の従来型ジェットエンジンに比べて、高効率・高推力を確保することができる。
【0011】
すなわち、本発明のモータジェットエンジンは、従来のジェットエンジンと同程度の推力を確保する場合、従来のジェットエンジンよりも少ない燃料流量でよく、従来のジェットエンジンと同程度の燃料流量の場合、従来のジェットエンジンよりも大きな推力を得ることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用したモータジェットエンジンを示した概略図である。
【図2】本発明を適用したモータジェットエンジンを示したブロック図である。
【図3】本発明を適用したモータジェットエンジンのエネルギーバランスを示した図である。
【図4】当量比とセル温度との関係を示したグラフである。
【図5】セル温度と発電効率との関係を示したグラフである。
【図6】セル温度と圧力比との関係を示したグラフである。
【図7】セル温度と総合効率との関係を示したグラフである。
【図8】セル温度と無次元比出力との関係を示したグラフである。
【図9】セル温度と排気ガスのマッハ数との関係を示したグラフである。
【図10】従来のジェットエンジンを示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用したモータジェットエンジンについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。

【0014】
<1.モータジェットエンジンの構成の説明>
本発明を適用したモータジェットエンジン1は、例えば、人が搭乗可能な航空機や人が搭乗しない無人航空機及びホビー用航空機等に搭載されるジェットエンジンである。更に、このモータジェットエンジン1は、タービンを持たず、圧縮機を、従来のジェットエンジンのように圧縮機と直結されたタービンで駆動させるのではなく、外部動力で駆動させる、所謂、モータジェットエンジンである。

【0015】
具体的に、モータジェットエンジン1は、図1に示すように、吸気口2aと排気ノズル2bとを有するケーシング2と、吸気口2aから吸入された空気を圧縮する圧縮機3と、圧縮機3に連結され、圧縮機3を駆動させるモータ4と、電力を発電してその電力をモータ4に給電する燃料電池5と、圧縮された空気に燃料を混合して燃焼させて排気ノズル2bから排出する燃焼器6とを備えている。

【0016】
ケーシング2は、図1に示すように、従来公知のジェットエンジンのケーシングと略同じ構造で構成されており、吸気口2aと排気ノズル2bとを有する円筒状に形成されている。更に、ケーシング2には、圧縮機3、モータ4、燃料電池5及び燃焼器6が内蔵されている。更に、ケーシング2内には、吸気口2aから排気ノズル2bに向けて、圧縮機3(モータ4)、燃料電池5、燃焼器6の順に配置されている。更に、ケーシング2の排気ノズル2bは、燃焼器6によって生成された燃焼ガスを膨張させて気流速度を高めて排気するために設けられている。なお、ケーシング2内には、燃焼器6よりも排気ノズル2b側に、燃焼器6の燃え残りを完全に燃やすための再燃装置であるアフターバーナが更に配置されるようにしても良い。

【0017】
圧縮機3は、図1に示すように、ケーシング2内の吸気口2a側に設けられている。更に、圧縮機3は、遠心圧縮式や軸流圧縮式等の従来公知のジェットエンジンに用いられる圧縮機で構成されている。更に、圧縮機3は、遠心圧縮式の圧縮機と軸流圧縮式等の圧縮機との内の何れか一方を少なくとも1個設けて構成されるようにしても良く、両方を少なくとも1個ずつ設けて構成されるようにしても良い。

【0018】
そして、圧縮機3は、吸気口2aから吸入された空気を圧縮する。更に、圧縮機3は、図2に示すように、圧縮した空気を燃料電池5(カソード5a)に供給する。

【0019】
モータ4は、図1に示すように、圧縮機3を駆動させるための電動モータである。更に、モータ4は、ケーシング2内に設けられ、圧縮機3の回転軸に直接的に又はギア群等の伝達部材を介して間接的に連結されている。更に、モータ4は、燃料電池5と電気的に接続されており、燃料電池5から電力が給電されて駆動される。

【0020】
燃料電池5は、図1に示すように、ケーシング2内の圧縮機3よりも排気ノズル2b側で燃焼器6よりも吸気口2a側に設けられている。すなわち、燃料電池5は、低温度の空気が流れる、所謂、コールドセクションに設けられている。更に、燃料電池5は、モータ4に電気的に接続されている。この燃料電池5は、従来公知の燃料電池であれば如何なる燃料電池であっても良いが、例えば、高温での作動に優れ、高負荷且つ燃料選択の自由度が高い固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、SOFC)が好ましい。

【0021】
そして、図2に示すように、燃料電池5は、空気が燃料電池5のカソード5aに供給されると共に、原燃料が例えばブロワー(又はポンプ)8によってリフォーマ9に供給されてリフォーマ9によって改質された後に燃料電池5のアノード5bに供給される。すると、燃料電池5は、電力を発電して、その電力をモータ4に給電する。なお、燃料電池5は、発電した電力を、例えばDC/ACインバータ等のモータ調節器を介してモータ4に給電するようにしても良い。更に、燃料電池5は、ブロワー(又はポンプ)8やリフォーマ9を介さずに、原燃料が直接アノード5bに供給されるようにしても良い。

【0022】
更に、燃料電池5は、発電時に自ら発熱する。そのため、燃料電池5は、圧縮機3で圧縮されて燃焼器6に導かれる空気を発電時の発熱による熱エネルギーによって加熱する。すなわち、モータジェットエンジン1は、燃料電池5の発電時の発熱による熱エネルギーをも推力として利用する。

【0023】
燃焼器6は、図1に示すように、ケーシング2内において、燃料電池5よりも排気ノズル2b側に設けられている。更に、燃焼器6は、従来公知のジェットエンジンの燃焼器と略同じ構造で構成されている。そして、燃焼器6は、燃料電池5で加熱された圧縮された空気に燃料を混合して燃焼させて、生成された高温の排気ガスを排気ノズル2bからケーシング2の外部に排出する。

【0024】
以上のように構成を有するモータジェットエンジン1は、燃料電池5によって発電された電力がモータ4に供給され、モータ4によって圧縮機3が駆動される。すなわち、モータジェットエンジン1は、燃料電池5によって発電された電力を利用して圧縮機3が電動で駆動される。

【0025】
次いで、モータジェットエンジン1は、圧縮機3が駆動されると、圧縮機3によって吸気口2aから吸入された空気が圧縮され、燃料電池5によって圧縮機3で圧縮された空気が加熱される。すなわち、モータジェットエンジン1は、燃料電池5の発熱による熱エネルギーも推力として取り出して利用する。

【0026】
次いで、モータジェットエンジン1は、燃焼器6によって、燃料電池5で加熱された圧縮された空気に燃料が混合されて燃焼されて、生成された高温の排気ガスが排気ノズル2bからケーシング2の外部に排出されることで、エンジン出力を得る。この際、モータジェットエンジン1は、燃焼器6によって生成された高温の排気ガスが排気ノズル2bにおいて最高圧となり、入口全圧と出口全圧との比である膨張比を大きく取ることができるので、排気速度を大きくすることができる。

【0027】
ここで、図3(A)は、圧縮機とこの圧縮機を駆動するためのタービンとが1つの軸で接続されている従来のジェットエンジンのエネルギーバランスを示している。図3(B)は、圧縮機とこの圧縮機を駆動するためのタービンとが少なくとも1つの軸で接続されていると共に、固体酸化物形燃料電池(SOFC)等の燃料電池が内蔵されている燃料電池内蔵型のジェットエンジンのエネルギーバランスを示している。図3(C)は、圧縮機を駆動するためのタービンがケーシング2内に組み込まれておらず、固体酸化物形燃料電池(SOFC)等の燃料電池5が内蔵されている本発明を適用したモータジェットエンジン1のエネルギーバランスを示している。

【0028】
図3(A)に示すように、従来のジェットエンジンは、図3(A)中の(a)に示すような燃料が全て反応した際に取り出せるエネルギー20を有する。そして、従来のジェットエンジンは、圧縮機で圧縮された空気に燃焼器によって燃料が混合された際、図3(A)中の(b)に示すようなエネルギー21を有する。具体的には、仕事を取り出す元となる合計エネルギー21は、燃料が全て反応した際に取り出せるエネルギー20と、圧縮機で圧縮された空気がもつエネルギー21aとの和である。

【0029】
そして、従来のジェットエンジンは、燃焼器によって燃焼されると、図3(A)中の(c)に示すようなエネルギー22を有する。具体的には、燃料が全て反応した際に取り出せるエネルギー20と圧縮機で圧縮された空気がもつエネルギー21aとの合計エネルギー21が、全て熱エネルギー22となる。

【0030】
そして、この熱エネルギー22は、図3(A)中の(d)に示すように、一部23aが伝熱損失と排気ガスの熱としてケーシングの外部に放出され、その他23bが仕事として取り出される。そして、取り出される仕事23bは、図3(A)中の(e)に示すように、一部24aがタービンを介して圧縮機を駆動するのに用いられ(=圧縮機で圧縮された空気がもつエネルギー21a)、その他24bが外部に取り出される。ここでは、例えば、エンジンの推力となる。

【0031】
図3(B)に示すように、従来の燃料電池内蔵型ジェットエンジンは、図3(B)中の(a)に示すような燃料が全て反応した際に取り出せるエネルギー30を有する。そして、従来の燃料電池内蔵型ジェットエンジンは、圧縮機で圧縮された空気に燃焼器によって燃料が混合された際、図3(B)中の(b)に示すようなエネルギー31を有する。具体的には、エネルギー31は、燃料が全て反応した際に取り出せるエネルギー30と、圧縮機で圧縮された空気がもつエネルギー31aとの合計エネルギーである。

【0032】
そして、従来の燃料電池内蔵型ジェットエンジンは、燃焼器によって燃焼されると共に燃料電池によって発電されると、図3(B)中の(c)に示すようなエネルギー32を有する。具体的には、エネルギー31から得られた熱エネルギー32aと、燃料電池の発電から得られた電気エネルギー32bとを有する。

【0033】
そして、この熱エネルギー32aは、図3(B)中の(d)に示すように、一部33aが伝熱損失と排気ガスの熱としてケーシングの外部に放出され、その他33bが仕事として取り出される。そして、取り出される仕事33bは、図3(B)中の(e)に示すように、一部34aがタービンを介して圧縮機を駆動するのに用いられ(=圧縮機で圧縮された空気がもつエネルギー31a)、その他34bが外部に取り出される。ここでは、例えば、エンジンの推力となる。

【0034】
図3(C)に示すように、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、図3(C)中の(a)に示すような燃料が全て反応した際に取り出せるエネルギー40を有する。そして、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、圧縮機3で圧縮された空気に燃焼器6によって燃料が混合された際、図3(C)中の(b)に示すようなエネルギー41を有する。具体的には、エネルギー41は、燃料が全て反応した際に取り出せるエネルギー40と、圧縮機で圧縮された空気がもつエネルギー41aとの合計エネルギーである。

【0035】
そして、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、燃焼器6によって燃焼されると共に燃料電池5によって発電されると、図3(C)中の(c)に示すようなエネルギー42を有する。具体的には、エネルギー41から得られた熱エネルギー42aと、燃料電池5の発電から得られた電気エネルギー42bとを有する。

【0036】
そして、この熱エネルギー42aは、図3(C)中の(d)に示すように、一部43aが伝熱損失と排気ガスの熱としてケーシング2の外部に放出され、その他43bが外部に仕事として取り出される。ここでは、例えば、エンジンの推力となる。そして、図3(C)中の(e)に示すように、燃料電池5の発電から得られた電気エネルギー42bは、一部44aが圧縮機3を駆動するのに用いられる(=圧縮機で圧縮された空気がもつエネルギー41a)。

【0037】
すなわち、従来のジェットエンジン及び従来の燃料電池内蔵型ジェットエンジン(以下、従来のジェットエンジン等とも言う。)は、圧縮機を駆動するためのタービンを有するので、熱エネルギー22,32aから取り出された仕事の一部23b,33bがタービンを介して圧縮機を駆動するのに用いられてしまう。これに対して、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、燃料電池5によって発電された電力を利用して圧縮機3が電動で駆動されるので、熱エネルギー42aから取り出された仕事43bを全て外部に取り出すことができる。すなわち、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、燃料電池の発電による電気エネルギーで圧縮機3を駆動するため、タービンが不要である。また、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、燃料電池の発熱により得られる熱エネルギーをタービンで失うことなく、ノズルで推進のための仕事として取り出すことができる。したがって、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、従来のジェットエンジン等よりも、高効率である。

【0038】
更に、従来のジェットエンジン等は、外部に取り出される仕事を増やすために、合計エネルギー21,31から得られる熱エネルギー22,32を増やす必要がある。更に、熱エネルギー22,32を増やすためには、圧縮機3によって空気を大きく圧縮して高温高圧化する必要がある。これに対して、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、燃料電池5によって発電された電力を利用して圧縮機3が電動で駆動されるので、従来のジェットエンジン等ほど、圧縮機3によって空気を大きく圧縮して高温高圧化する必要がない。したがって、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、従来のジェットエンジン等ほどの耐熱・耐圧材料を使用する必要が無く、従来のジェットエンジン等のように冷却構造を設ける必要もなく、ケーシング2の肉厚を薄くできるなど、構造の簡略化及び低コスト化を図ることができる。

【0039】
<2.モータジェットエンジンの作用効果の説明>
以上のように、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、圧縮機3が燃料電池5によって発電された電力を利用して電動で駆動されることにより、従来のジェットエンジン等のように、圧縮機3を駆動するためのタービンをケーシング2内に組み込む必要がなくなる。すなわち、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、タービンを省略することができる。したがって、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、従来のジェットエンジン等よりも、回転系全体を短縮することができ、小型化することができる。更に、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、タービンを省略することができるので、従来のジェットエンジン等よりも、構造の簡略化及び低コスト化を図ることができる。

【0040】
更に、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、発電時に自ら発熱する。したがって、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、燃料電池5がケーシング2内の燃焼器6よりも吸気口2a側に設けられ、燃料電池5の発電時の発熱による熱エネルギーによって圧縮機3により圧縮された空気が加熱されることにより、燃料電池5の発熱による熱エネルギーも推力として取り出して利用することができる。更に、本発明を適用したモータジェットエンジンは、燃焼器6によって燃焼する前に、燃料電池5の発電時の発熱による熱エネルギーによって圧縮機3により圧縮された空気が予熱されることにより、燃焼器6による燃焼効率を向上させることができる。よって、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、小型化しても、高効率・高推力を確保することができる。一例として、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、熱効率が40%~60%で大型のガスタービンエンジンと同等の効率を有することができる。

【0041】
更に、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、燃料電池5によって発電された電力を利用して圧縮機3が電動で駆動されるので、熱エネルギー42aから得られた仕事43bを全て外部に取り出すことができる。したがって、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、従来のジェットエンジン等よりも、高効率に外部に仕事を取り出すことができる。

【0042】
すなわち、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、従来のジェットエンジン等と同程度の推力を確保する場合、従来のジェットエンジン等よりも小型化することができ、従来のジェットエンジン等と同程度のサイズにする場合、従来のジェットエンジン等よりも大きな推力を得ることができる。

【0043】
更に、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、燃料電池5によって発電された電力を利用して圧縮機3が電動で駆動されるので、従来のジェットエンジン等ほど、圧縮機3によって空気を大きく圧縮して高温高圧化する必要がない。一例として、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、最高温度が1000℃以下で運用することができる。したがって、本発明を適用したモータジェットエンジン1は、従来のジェットエンジン等ほどの耐熱・耐圧材料を使用する必要が無く、従来のジェットエンジン等のように冷却構造を設ける必要もなく、ケーシング2の肉厚を薄くできるなど、構造の簡略化及び低コスト化を図ることができる。

【0044】
<3.モータジェットエンジンの性能評価の説明>
次に、本発明を適用したモータジェットエンジン1の総合効率や比出力に着目し、性能評価を行った。

【0045】
3-1.性能計算手法の説明
ここでは、燃料成分は航空機用燃料を想定し、ケロシンのサロゲート燃料の主成分として用いられるn-decane(C1022)とした。n-decaneのように炭素数の大きい燃料は、水蒸気改質によって発生する水素の量を増やす試みがなされているが、ここでは水蒸気を用いない最も単純なドライ改質を想定した。改質反応としての総括反応式は、以下の式で表される。

【0046】
【化1】
JP2015161214A_000003t.gif

【0047】
更に、セル内で以下の反応によって発電が行われる。

【0048】
【化2】
JP2015161214A_000004t.gif

【0049】
【化3】
JP2015161214A_000005t.gif

【0050】
全体での総括的な反応式としては、以下の式で表される。

【0051】
【化4】
JP2015161214A_000006t.gif

【0052】
したがって、当量比φはモル比で燃料:酸素=φ:15.5で定義する。発電した電力は圧縮機の駆動に利用される。SOFCの排気ガス中には未反応分のHとCO及び投入した燃料が含まれるため、通常では、これに燃料を加えて後段のアフターバーナ部で再燃するが、今回の計算では簡略化のため全て電池内部で反応するという仮定のもと計算を行った。また、セル出口温度をセルの運用温度とみなして評価を行った。

【0053】
表1に計算条件を示す。初期圧力及びノズル出口圧力はいずれも1atmとし、初期温度は298Kとした。機械効率は計算簡略化のため無視した。また、それ以外の効率について、効率を考慮した条件(With loss case)及び効率をすべて1とした条件(Ideal case)でそれぞれ計算を行った。圧縮機断熱効率とノズル効率はそれぞれ0.85と0.90とした。なお、以後使用する添え字の1から4は、それぞれ圧縮前、圧縮後、セル出口及びノズル出口を表す。

【0054】
【表1】
JP2015161214A_000007t.gif

【0055】
先ず、ギブスの自由エネルギーの反応前と反応後の変化量ΔGを計算する。温度一定のもとで生じるギブスの自由エネルギーの変化量は以下の式で与えられる。

【0056】
【数1】
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【0057】
計算には、化学平衡計算プログラム「NASA CEA」で用いられている熱力学的係数を用いて多項式計算により求めた。TΔSはSOFCでは電力として取り出すことができずに排熱となるが、この熱は最終的にノズルでの膨張によって推力として利用される。また、実際のセルでは、内部抵抗による電圧降下(分極)が発生し、実際の起電力は理論起電力に比べ低くなる。理論出力に対する損失した電力の比で、電極での電力損失率αを定義すると、SOFCの出力Wcellは、セルでの反応前後のギブスの自由エネルギーの変化量ΔGcellとαを用いて以下の式で表される。

【0058】
【数2】
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【0059】
更に、抵抗等による損失を考慮し、電池とモータ間の電力の伝達効率ηtransを用いると、圧縮機動力Wは以下の関係となる。

【0060】
【数3】
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【0061】
更に、エネルギーバランスにより、以下の式が成り立つ。

【0062】
【数4】
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【0063】
ここで、Hは、燃料が初期温度のもと全て反応したと仮定したときに生じるエンタルピーの変化量である。このHとセルの出力を用いて、発電効率ηは以下の式で表される。

【0064】
【数5】
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【0065】
圧力比πは、圧縮前後での温度比θと、圧縮前後での比熱比の算術平均値κを用いて、以下の式で表される。

【0066】
【数6】
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【0067】
ここで、圧縮後のエンタルピーHは、圧縮後の温度、つまり圧力比によって変化するため、上記(8)式を満たすように繰り返し計算によって圧縮後の温度と圧力比とを求めた。ノズルでガスがなす仕事Wnozは、ノズル前後でのエンタルピー落差により以下の式で表される。

【0068】
【数7】
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【0069】
この機関の性能を評価する重要なパラメータである総合的な効率ηは、以下の式で評価する。

【0070】
【数8】
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【0071】
熱効率と同様に、ジェットエンジンの性能を決める重要なパラメータのひとつが無次元比出力であり、以下の式で表される。

【0072】
【数9】
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【0073】
SOFCの出口圧力Pは、圧縮後の圧力Pセルでの圧力損失率ζを用いて以下の式で表される。

【0074】
【数10】
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【0075】
ノズル前後での温度比θは、ノズル前後での圧力比π、ノズル効率η及びノズル前後の比熱比の算術平均値κを用いて、以下の式で表される。

【0076】
【数11】
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【0077】
したがって、ノズル出口温度Tは、T=T/θの関係より、以下の式で表される。

【0078】
【数12】
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【0079】
ノズル出口での排気速度vとマッハ数Mは、排気ガスの質量をm、比熱比をκ及びガス定数をRとすると、それぞれ以下の式で与えられる。

【0080】
【数13】
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【0081】
【数14】
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【0082】
3-2.計算結果及び考察の説明
3-2-1.燃料の当量比がセル出口温度に及ぼす影響の説明
当量比を変化させることで、SOFCの動作温度である900℃から1000℃付近となる当量比を計算により見積もった。図4に各当量比におけるSOFCのセル温度を示す。実線が効率1、すなわち電力損失と分極による起電力の低下や圧力損失を考慮しない条件(Ideal case)での温度、破線が効率を考慮した場合(With loss case)での温度である。セルの出口温度はIdeal caseでは、φ=0.22でおよそ900K、φ=0.27でおよそ1000Kであった。With lossの場合、φ=0.25でおよそ900K、φ=0.29でおよそ1000Kであった。また、SOFCの実際の運用を考慮した場合、燃料の当量比はおよそ0.2から0.4程度で良いことが分かる。

【0083】
3-2-2.セル出口温度が発電効率に及ぼす影響の説明
セル出口温度が発電効率、圧力比及び理論効率に及ぼす影響を評価した。図5にセル温度の違いによる発電効率の計算結果を示す。Ideal caseでは、1000Kでおよそ64%と非常に高い発電効率を得る。また、セル出口温度が低温であるほど発電効率は高まる。これは、ギブスの自由エネルギーで仕事として利用できないTΔS分が低温なほど小さいためである。With loss caseでは当然発電効率も小さくなる結果が得られ、1000Kではおよそ38%ほどであった。電気駆動系の損失により発電効率は低下するが、抵抗などで生じた熱はノズルで仕事として回収でき、後述するように系全体の総合効率は高く保てる。

【0084】
3-2-3.セル出口温度が圧力比に及ぼす影響の説明
図6にセル出口温度の違いによる圧力比の計算結果を示す。セル温度が600K付近ではIdeal caseではおよそ7、With loss caseではおよそ3となった。また、セル出口温度が高いほど、圧力比は高くなる。これは、セル出口温度が高い、すなわちセル出力が高いために、圧縮仕事が大きく圧力比が上昇する。また、セル出口温度が高いほど、各損失による影響が顕著となった。Ideal caseでは、900Kで圧力比はおよそ30程である。これは、最近の大型ターボファンエンジンのおよそ半分程度の圧力比であるが、タービンを駆動する必要が無いため、後述するように非常に高いノズル圧力比を確保できる。また、圧力比が低い分、耐圧性を低くすることが可能で、圧縮機段数も少なくて済み、信頼性や材料面で現行のエンジンに比べて優位である。また、超音速飛行時では、ラム圧縮され高エンタルピーの空気が流入するが、最高最低温度比及び圧力比が小さくても高出力、高効率が実現できる。

【0085】
3-2-4.セル出口温度が総合効率に及ぼす影響の説明
図7に、セル出口温度と総合効率の関係を示す。Ideal caseでは、セル出口温度が1000Kで総合効率およそ87%と非常に高い効率となった。また、幅広い温度域で高い効率となっていることが分かる。これは、セル出口温度が低いほど燃料電池の発電効率が高い一方で、ブレイトンサイクルとしての効率が高温度側で上昇するためである。With loss caseでは、今回行った温度範囲ではおよそ30%程総合効率は低かったが、セル出口温度が1000Kでおよそ45%と高い効率が確保できる。これは、大型のガスタービン発電の発電端効率と同等の効率であるが、系の温度は1000K程で済むという特徴がある。

【0086】
3-2-5.セル出口温度が無次元比出力に及ぼす影響の説明
図8に、セル出口温度と無次元比出力の関係を示す。Ideal caseでは、セル出口温度がおよそ650Kで無次元比出力は1、1000Kではおよそ2.3となった。With loss caseでは、セル出口温度が低いほど損失を無視した場合と無次元比出力の差が小さく、高温ほど差が顕著であった。セル出口温度が1000Kでは、無次元比出力はおよそ1.2となった。これは、圧力比が40程度の現用機とほぼ同等である。

【0087】
3-2-6.セル出口温度が排気ガス速度に及ぼす影響の説明
図9に、セル出口温度と排気ガスのマッハ数の関係を示す。

【0088】
3-3.結論
本発明を適用したモータジェットエンジン1について、n-decaneを燃料として計算によって性能推算を行った。その結果、以下に示す知見を得た。

【0089】
(1)発電効率はセル出口温度が低いほど高く、損失を無視した場合1000Kでおよそ64%であり、温度の上昇に伴い低下する。一方で、圧力比はセル出口温度が高いほど高く、損失を無視した場合900Kでおよそ30となった。以上の特長により、SOFCの運用される幅広い温度域において総合効率が非常に高く、低温・低圧力比でも高い総合効率を得ることが可能であり、運用が想定される幅広い温度域で85%を超える。また、損失を考慮した条件で現行のエンジンに比べて効率を犠牲にすることなく低温低圧化が可能で、利点があることが分かった。

【0090】
(2)損失を無視した場合、セル出口温度が600K程で排気ガスのマッハ数は2を超え、超音速噴射が可能である。損失を考慮した条件においても、セル出口温度が600Kほどでマッハ数が1を超える。現行の超音速飛行用エンジンの圧力比と温度比から見積もられる比出力と同程度の比出力が確保できることからも、圧縮動力源のタービンを用いることなく圧縮機段数を少なくでき、超音速での運用を含む高推力運転が可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 モータジェットエンジン、2 ケーシング、2a 吸気口、2b 排気ノズル、3 圧縮機、4 モータ、5 燃料電池、5a カソード、5b アノード、6 燃焼器、8 ブロワー、9 リフォーマ、100 ジェットエンジン、101 圧縮機、102 燃焼器、103 タービン、104 ノズル、105 軸
図面
【図2】
0
【図10】
1
【図1】
2
【図3】
3
【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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