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明細書 :室温調整システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-003772 (P2016-003772A)
公開日 平成28年1月12日(2016.1.12)
発明の名称または考案の名称 室温調整システム
国際特許分類 F24F   5/00        (2006.01)
F24J   2/42        (2006.01)
FI F24F 5/00 102C
F24J 2/42 Q
F24J 2/42 Z
請求項の数または発明の数 6
出願形態 OL
全頁数 18
出願番号 特願2014-122266 (P2014-122266)
出願日 平成26年6月13日(2014.6.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用申請有り 1 (1)開催日 平成25年(2013年)12月14日 (2)集会名、開催場所 第56回日本大学工学部学術研究報告会 日本大学工学部(福島県郡山市) (3)公開者名 伊藤 耕祐、田中 丈、浦部 智義、宮岡 大、長内 勇樹 (4)発明の内容 平成25年12月第56回日本大学工学部学術研究報告会において、伊藤耕祐、田中丈、浦部智義、宮岡大及び長内勇樹が発明した「水容器を用いた熱容量可変型室温調整システム」について公開した。 2 (1)発行日 平成25年(2013年)12月14日 (2)発行所 日本大学工学部工学研究所 (3)刊行物名 平成25年度 第56回日本大学工学部学術研究報告会 講演要旨集 機械工学部会 3 (1)開催日 平成26年(2014年)2月17日 (2)集会名、開催場所 平成25年度日本大学大学院工学研究科機械工学専攻修士論文発表会 日本大学工学部(福島県郡山市) (3)公開者名 伊藤 耕祐、田中 丈 (4)発明の内容 平成25年度日本大学大学院工学研究科機械工学専攻修士論文発表会において、伊藤耕祐、田中丈、浦部智義、宮岡大及び長内勇樹が発明した「水容器を用いた熱容量可変型室温調整システム」について公開した。
発明者または考案者 【氏名】伊藤 耕祐
【氏名】田中 丈
【氏名】浦部 智義
【氏名】宮岡 大
【氏名】長内 勇樹
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110001210、【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
審査請求 未請求
要約 【課題】室内熱容量を変化させることで室温調整を適切に行えるようにすることである。
【解決手段】室温調整システム10は、大気に比べて単位体積当りの熱容量が1000倍以上ある流体を蓄熱媒体20,21として、室内空間16に設置される室内側の蓄熱媒体容器22と、室外空間18に設置される室外側の蓄熱媒体容器24と、室内側の蓄熱媒体容器22と室外側の蓄熱媒体容器24とを接続する接続管路26と、接続管路26に関連して設けられ、少なくとも室内側の蓄熱媒体容器22の中に収容される蓄熱媒体20の体積を増減して、室内熱容量を増減する熱容量調整部30とを備える。
【選択図】図1
特許請求の範囲 【請求項1】
大気に比べて単位体積当りの熱容量が1000倍以上ある流体を蓄熱媒体として、
室内に設置される室内側の蓄熱媒体容器と、
室外に設置される室外側の蓄熱媒体容器と、
室内側の蓄熱媒体容器と室外側の蓄熱媒体容器とを接続する接続管路と、
接続管路に関連して設けられ、少なくとも室内側の蓄熱媒体容器の中に収容される蓄熱媒体の体積を増減して、室内熱容量を増減する熱容量調整部と、
を備えることを特徴とする室温調整システム。
【請求項2】
請求項1に記載の室温調整システムにおいて、
熱容量調整部は、
一日を複数の時間帯に区分し、
一つの時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を増やして室内熱容量を増大させ、他の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を減らして室内熱容量を減少させることを特徴とする室温調整システム。
【請求項3】
請求項2に記載の室温調整システムにおいて、
熱容量調整部は、
夏季の昼間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を増やして室内熱容量を増大させ、夏季の夜間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を減らして室内熱容量を減少させることを特徴とする室温調整システム。
【請求項4】
請求項2に記載の室温調整システムにおいて、
熱容量調整部は、
冬季の昼間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を減らして室内熱容量を減少させ、冬季の夜間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を増やして室内熱容量を増大させることを特徴とする室温調整システム。
【請求項5】
請求項4に記載の室温調整システムにおいて、
熱容量調整部は、
冬季の昼間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体を室外側の蓄熱媒体容器の中へ移して室外側の蓄熱媒体の体積を増やし、冬季の夜間の時間帯のときに室外側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体を室内側の蓄熱媒体容器の中へ移して室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を増やすことを特徴とする室温調整システム。
【請求項6】
請求項1に記載の室温調整システムにおいて、
熱容量調整部は、
蓄熱媒体を接続管路に沿って移送するポンプ装置と、
外部から接続管路に蓄熱媒体を注入する注入装置と、
接続管路から外部に蓄熱媒体を排出する排出装置と、
を含むことを特徴とする室温調整システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、室温調整システムに係り、特に、大気に比べて単位体積当りの熱容量が大きい流体を蓄熱媒体として用いる室温調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温水や冷水を循環させて室内の冷暖房を行うことはよく知られている。例えば、特許文献1では、建造物の屋内の壁に嵌め込む壁水槽を用い、冷房には温度変化の少ない井戸水を使用し、暖房には太陽熱の温水を利用し、これらを適当量循環させることが述べられている。
【0003】
また、温水タンクや冷水タンクに熱交換パイプを通し、室内の空気をこの熱交換パイプに通して、室内の空気を暖めあるいは冷やすことも行われる。例えば、特許文献2には、地下3~4mの地中は年間を通して安定した温度を保つので、そこに地下水槽を設け、冬の間は冷たい外気を熱交換パイプに流して地下水槽の温度を冷やし、夏の間は暑い外気を熱交換パイプに流して地下水槽の温度を暖めることが述べられている。これを用いて、夏の昼間は、室内の暑い空気を熱交換パイプに流して地下水槽の冷水で熱交換し、冬の昼間は、室内の冷えた空気を熱交換パイプに流し、地下水槽の温水で熱交換することが述べられている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平9-256501号公報
【特許文献2】特開2008-185323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な家電空調機や特許文献1,2に述べられている熱交換装置を用いることで住宅等の室内の温度調整をすることが出来る。このような空調装置の温度調整性は、温度調整を行う室内熱容量によって影響を受ける。例えば、広い室内空間でも熱容量が大きければ、外気の温度変化の影響を受けにくく一旦最適な室温にしたのちの空調負荷は軽い。狭い室内空間でも熱容量が小さければ、外気の温度変化の影響を受けやすく、空調負荷が重い。
【0006】
このように、室内空間の熱容量の最適化は空調負荷の低減に効果がある。しかし、室内空間の熱容量は、室内構造が定まれば熱容量が定まってしまうので、季節変化や生活様式の変化によって変動する最適熱容量に対応できない。
【0007】
例えば、夏であれば、昼間は室内熱容量を大きくして暑い外気の影響を受けないようにすることがよいが、夜間は外気が涼しいので、室内熱容量を小さくして涼しい外気の影響を受けやすくする方がよい。冬であれば、昼間は温かい太陽熱の影響を受けやすいように室内熱容量を小さくすることがよいが、夜は冷たい外気の影響を受けないように室内熱容量を大きくすることがよい。また、室内空間で運動をするときや調理等をするときは外気の影響を受けやすくするように室内熱容量を小さくし、室内空間で読書をするときは外気の影響を受けにくくするために室内熱容量を大きくする方がよい。
【0008】
季節変化や生活様式の変化によって室内熱容量を変化させることが出来れば、体感温度に適合してきめ細かく室温調整ができ、空調負荷を低減させることが出来る。
【0009】
本発明の目的は、室内熱容量を変化させることを可能にする室温調整システムを提供することである。他の目的は、夏季と冬季とで室内熱容量を変化させることを可能にする室温調整システムを提供することである。さらに別の目的は、昼間と夜間とで室内熱容量を変化させることを可能にする室温調整システムを提供することである。以下の手段は、上記目的の少なくとも1つに貢献する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る室温調整システムは、大気に比べて単位体積当りの熱容量が1000倍以上ある流体を蓄熱媒体として、室内に設置される室内側の蓄熱媒体容器と、室外に設置される室外側の蓄熱媒体容器と、室内側の蓄熱媒体容器と室外側の蓄熱媒体容器とを接続する接続管路と、接続管路に関連して設けられ、少なくとも室内側の蓄熱媒体容器の中に収容される蓄熱媒体の体積を増減して、室内熱容量を増減する熱容量調整部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る室温調整システムにおいて、熱容量調整部は、一日を複数の時間帯に区分し、一つの時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を増やして室内熱容量を増大させ、他の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を減らして室内熱容量を減少させることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る室温調整システムにおいて、熱容量調整部は、夏季の昼間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を増やして室内熱容量を増大させ、夏季の夜間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を減らして室内熱容量を減少させることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る室温調整システムにおいて、熱容量調整部は、冬季の昼間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を減らして室内熱容量を減少させ、冬季の夜間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を増やして室内熱容量を増大させることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る室温調整システムにおいて、熱容量調整部は、冬季の昼間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体を室外側の蓄熱媒体容器の中へ移して室外側の蓄熱媒体の体積を増やし、冬季の夜間の時間帯のときに室外側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体を室内側の蓄熱媒体容器の中へ移して室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を増やすことが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る室温調整システムにおいて、熱容量調整部は、蓄熱媒体を接続管路に沿って移送するポンプ装置と、外部から接続管路に蓄熱媒体を注入する注入装置と、接続管路から外部に蓄熱媒体を排出する排出装置と、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成の室温調整システムによれば、室内側の蓄熱媒体容器と室外側の蓄熱媒体容器とを接続管路で接続し、接続管路に関連した箇所に設けられる熱容量調整部によって、少なくとも室内側の蓄熱媒体容器の中に収容される蓄熱媒体の体積を増減して室内熱容量を増減する。これによって、室内熱容量を変化させることが可能となる。
【0017】
また、室温調整システムにおいて、一日を複数の時間帯に区分し、一つの時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を増やして室内熱容量を増大させ、他の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を減らして室内熱容量を減少させるので、例えば、昼間と夜間とで室内熱容量を変化させることが可能になる。
【0018】
また、室温調整システムにおいて、夏季の昼間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を増やして室内熱容量を増大させ、夏季の夜間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を減らして室内熱容量を減少させるので、夏季において昼間と夜間とで室内熱容量を変化させることが可能になる。
【0019】
また、室温調整システムにおいて、冬季の昼間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を減らして室内熱容量を減少させ、冬季の夜間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を増やして室内熱容量を増大させるので、冬季において昼間と夜間とで室内熱容量を変化させることが可能になる。
【0020】
また、室温調整システムにおいて、冬季の昼間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体を室外側の蓄熱媒体容器の中へ移して室外側の蓄熱媒体の体積を増やし、冬季の夜間の時間帯のときに室外側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体を室内側の蓄熱媒体容器の中へ移して室内側の蓄熱媒体容器の中の蓄熱媒体の体積を増やす。これによって、冬季の昼間の時間帯において、例えば、太陽光エネルギで室外側の蓄熱媒体を暖めておいて、夜間の時間帯において、その暖めた蓄熱媒体を室内側の蓄熱媒体容器に移せば、室内温度を温かくすることが出来る。
【0021】
また、室温調整システムにおいて、蓄熱媒体を接続管路に沿って移送するポンプ装置と、外部から接続管路に蓄熱媒体を注入する注入装置と、接続管路から外部に蓄熱媒体を排出する排出装置と、を含むので、これらの操作によって、少なくとも室内側の蓄熱媒体容器の中に収容される蓄熱媒体の体積を増減して、室内熱容量を増減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る実施の形態における室温調整システムの構成図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の室温調整システムにおいて、室内熱容量の調整の4つの場合を示す図である。図2(a)は、室内側の蓄熱媒体容器と室外側の蓄熱媒体容器の両方にまだ蓄熱媒体が充填されていない空の状態を示し、(b)は、室内側の蓄熱媒体容器のみに蓄熱媒体が満充填された状態を示し、(c)は、室内側の蓄熱媒体容器と室外側の蓄熱媒体容器の両方に蓄熱媒体が満充填された状態を示し、(d)は、室外側の蓄熱媒体容器のみに蓄熱媒体が満充填された状態を示す図である。
【図3】室内熱容量の大小によって最高室温と最低室温が変化することを示す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、一日の時間帯に応じて室内熱容量を変化させて、昼間及び夜間の最高室温を共に下げて一日を通して涼しくする例を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、一日の時間帯に応じて室内熱容量を変化させて、昼間及び夜間の最高室温を共に上げて一日を通して暖かくする例を示す図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、室内熱容量を可変できるモデルハウスの見取図である。
【図7】本発明に係る実施の形態において、室内熱容量を可変できるモデル室の構成を示す斜視図である。
【図8】図7のモデル室の室内熱容量等を計算するためのパラメータを示す図である。
【図9】本発明に係る実施の形態において、室内熱容量の大小によって夏季の最高室温がどのように変化するかの実測値を示す図である。
【図10】本発明に係る実施の形態において、一日の時間帯に応じて室内熱容量を可変したときの夏季の最高室温の実測値を示す図である。
【図11】本発明に係る実施の形態において、一日の時間帯に応じて室内熱容量を可変したときの冬季の最高室温の実測値を示す図である。
【図12】本発明に係る実施の形態において、一日の時間帯に応じて室内熱容量を可変したときの冬季の最低室温の実測値を示す図である。
【図13】本発明に係る実施の形態のモデル室において、室内熱容量を変化させたときの最高室温と最低室温の計算値を示す図である。
【図14】本発明に係る実施の形態のモデル室において、単位伝熱面積当たりの室内熱容量を変化させたときの最高室温と最低室温の計算値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下で述べるモデルハウスにおける構造、寸法、材質等は、説明のための一例である。また、室内熱容量可変方法も説明のための例示であって、室温調整システムの仕様等に合わせ、適宜変更が可能である。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。

【0024】
図1は、室温調整システム10の構成を示す図である。図1は、大地12の上に建造された建物14の断面図である。建物14における室温調整システム10は、室温調整の対象空間である室内空間16と、その外側で太陽光を受けるサンルームである室外空間18とを有する。室外空間18は、建物14の外部にある戸外空間ではない。ここでは、建物14の内部空間について、室温調整の対象空間かそれ以外の空間かによって、室内空間16と室外空間18を区別している。

【0025】
室温調整システム10は、一般的な家電空調機や特許文献1,2に述べられている温水循環式熱交換装置を用いず、太陽エネルギと空気温度を利用しながら、室内空間16の熱容量である室内熱容量を調整することで室内空間16の室温を調整する。すなわち、「健康で持続可能なライフスタイル」を指すロハス(Lifestyles Of Health And Sustainability:LOHAS)を実現するための室温調整システムの例である。

【0026】
室内熱容量の調整は、大気である空気に比べて単位体積当りの熱容量が1000倍以上ある流体を蓄熱媒体20として、室内空間16における蓄熱媒体20の体積を増減することで行う。このような蓄熱媒体20の例は、水である。(単位体積当り熱容量)=(密度)×(比熱)で求められるが、水は空気に比べ、密度が約900倍大きく、比熱が約4倍大きい(後述する図8参照)。したがって、水の単位体積当り熱容量は、空気の単位体積当り熱容量の約3600倍大きい。換言すれば、水1dm3の熱容量は、3.6m3の空気の熱容量と同じである。

【0027】
蓄熱媒体20としての水としては、水道水、井戸水等をそのまま用いることが出来る。水以外でも、室内空間16の内部における占有体積を可変できる流体であれば蓄熱媒体20として用いることが出来る。水に不凍液、防錆材、防腐剤等を添加してもよい。添加物の比熱や添加量によるが、数%程度の添加量であれば、単位体積当りの熱容量は水単体に比べ大きな変化はない。水以外の有機溶媒等を蓄熱媒体20として用いてもよい。一例として、エチレングリコールを用いる場合、その単位体積当りの熱容量は水単体の単位体積当りの熱容量に対し、0.8倍程度である。

【0028】
目的に応じて蓄熱媒体20として液体である流体の種類を選択するとして、空気に比べて単位体積当りの熱容量が1000倍以上ある流体を蓄熱媒体20として用いることにすれば、室内空間16の内部の蓄熱媒体20の体積を1dm3増減すると、室内空間16の内部空間の容積を1m3以上増減することと同じ室内熱容量の増減に対応する。このことから、室内空間16の内部における蓄熱媒体20の体積を可変することで、室内空間16の熱容量である室内熱容量を効率よく可変できることが分かる。以下では、蓄熱媒体20として、水道水を用いる。

【0029】
室内空間16に設置される室内側の蓄熱媒体容器22は、蓄熱媒体20を収容する容器で、この内部の蓄熱媒体20の体積を増減することで室内空間16の熱容量を増減することに用いられる。同様に、室外空間18に設置される室外側の蓄熱媒体容器24は、蓄熱媒体21を収容する容器である。かかる蓄熱媒体容器22,24としては、熱伝導率のよい材質で構成される円筒形容器を用いることが出来る。円筒形容器とすることで、角型容器等に比べ、同じ容器体積のときの単位表面積当たりの伝熱効率を高めることが出来る。熱伝導率のよい材質としては金属を用いることが出来る。以下では、蓄熱媒体容器22,24として、ステンレス鋼で構成される円筒形容器を用いる。

【0030】
接続管路26は、室内側の蓄熱媒体容器22と室外側の蓄熱媒体容器24とを接続する蓄熱媒体流路用パイプである。接続管路26は、室内側の蓄熱媒体容器22の上端部と室外側の蓄熱媒体容器24の底面端とを結ぶ第1管路と、室外側の蓄熱媒体容器24の上端部と室内側の蓄熱媒体容器22の底面端とを結ぶ第2管路とで構成される。この構成により、(室内側の蓄熱媒体容器22)-(第1管路)-(室外側の蓄熱媒体容器24)-(第2管路)のループで、蓄熱媒体20,21の循環路が形成される。

【0031】
熱容量調整部30は、接続管路26に関連して設けられ、少なくとも室内側の蓄熱媒体容器22の中に収容される蓄熱媒体20の体積を増減して、室内熱容量を増減する装置群である。熱容量調整部30は、2つのポンプ装置32,34と3つの開閉弁36,38,40で構成される。

【0032】
ポンプ装置32は、室内側の蓄熱媒体容器22の上端部に接続され、外部の水供給源から水を室内側の蓄熱媒体容器22に注入して充填するときに用いられる注入装置である。外部の水供給源は、例えば地下の水タンク等である。これに代えて、水道管を室内空間16の内部に引き込んで室内側の蓄熱媒体容器22の上端部に接続してもよい。その場合には、ポンプ装置32を水道管の開閉バルブに置き替えることが出来る。

【0033】
ポンプ装置34は、接続管路26の途中に設けられ、蓄熱媒体20,21を接続管路26に沿って移送する電動ポンプである。図1の例では、ポンプ装置34は、室外側の蓄熱媒体容器24の上端部と室内側の蓄熱媒体容器22の底面端とを結ぶ第2管路の途中に設けられる。ポンプ装置34は、室内側の蓄熱媒体容器22の側に蓄熱媒体を移送することもでき、逆に室外側の蓄熱媒体容器24の側に蓄熱媒体を移送することもできるように、双方向移送可能なポンプであることが好ましい。

【0034】
開閉弁36,38,40は、必要に応じてポンプ装置34と協働しながら、室内側の蓄熱媒体容器22と室内側の蓄熱媒体容器24の間で蓄熱媒体20,21を移送し、あるいは蓄熱媒体20,21を外部に排出し、あるいは外部から蓄熱媒体を蓄熱媒体容器22,24に充填する機能を有する弁である。開閉弁38は、蓄熱媒体を外部から接続管路26に注入する注入装置であり、一方端が接続管路26において室外側の蓄熱媒体容器24に近い側で接続され、他方端に水道管が接続される。開閉弁40は、蓄熱媒体を接続管路26から外部に排出する排出装置で、一方端が接続管路26においてポンプ装置34に近い側で接続され、他方端が排出タンク等に開放される。開閉弁36は、開閉弁38,40の間に設けられ、接続管路26において蓄熱媒体を流すかまたは遮断するかの間で切り替える切替装置である。

【0035】
上記では、ポンプ装置32を室内側の蓄熱媒体容器22に接続し、ポンプ装置34と開閉弁36,38,40を第2接続管路に設けるものとし、室外側の蓄熱媒体容器24側の開閉弁38を注入装置とし、ポンプ装置34側の開閉弁40を排出装置とする構成とした。少なくとも室内側の蓄熱媒体容器22の中に収容される蓄熱媒体20の体積を増減して、室内熱容量を増減することが可能な装置群であれば、これ以外の構成であってもよい。例えば、ポンプ装置34と開閉弁36,38,40を第1接続管路に設けるものとしてもよい。

【0036】
図2は、熱容量調整部30の作用を場合分けして示す図である。熱容量調整部30を構成する2つのポンプ装置32,34、3つの開閉弁36,38,40の動作を組み合わせることで、室内側の蓄熱媒体容器22の中の蓄熱媒体20の体積、室外側の蓄熱媒体容器24の中の蓄熱媒体21の体積を調整できる。

【0037】
図2(a)は、室内側の蓄熱媒体容器22と室外側の蓄熱媒体容器24の両方にまだ蓄熱媒体が充填されていない初期状態の場合を示す図である。ここでは、ポンプ装置32,34は停止状態で、注入装置である開閉弁38は閉状態とされ、排出装置である開閉弁40は開状態とされ、切替装置である開閉弁36は接続状態とされる。

【0038】
図2(b)は、室内側の蓄熱媒体容器22のみに蓄熱媒体20が満充填された状態である場合を示す図である。図2(a)の状態から(b)の状態にするには、ポンプ装置34を停止状態とし、注入装置である開閉弁38を閉状態とし、排出装置である開閉弁40を閉状態とし、切替装置である開閉弁36を遮断状態とした上で、ポンプ装置32を作動させて、蓄熱媒体を外部から室内側の蓄熱媒体容器22に注入する。そして、室内側の蓄熱媒体容器22において蓄熱媒体20の水位が蓄熱媒体容器22の上端部に達したときにポンプ装置32の動作を止める。

【0039】
図2(c)は、室内側の蓄熱媒体容器22に蓄熱媒体20が満充填され、室外側の蓄熱媒体容器24に蓄熱媒体21が満充填された状態を示す図である。図2(b)の状態から(c)の状態にするには、ポンプ装置34を停止状態とし、注入装置である開閉弁38を閉状態とし、排出装置である開閉弁40を閉状態とし、切替装置である開閉弁36を遮断状態とした上で、ポンプ装置32を図2(b)の状態からさらに作動を継続する。この場合、室内側の蓄熱媒体容器22に過剰に注入された蓄熱媒体は、室内側の蓄熱媒体容器22の上端部から、第1の接続流路を通って室外側の蓄熱媒体容器24の底部に向かって流れる。これによって、室外側の蓄熱媒体容器24において蓄熱媒体21の水位が次第に上昇する。室外側の蓄熱媒体容器24において蓄熱媒体21の水位が蓄熱媒体容器24の上端部に達したときにポンプ装置32の動作を止める。

【0040】
図2(d)は、室外側の蓄熱媒体容器24のみに蓄熱媒体21が満充填された状態を示す図である。図2(c)の状態から(d)の状態にするには、ポンプ装置32を停止状態とし、注入装置である開閉弁38を閉状態とし、排出装置である開閉弁40を開状態とし、切替装置である開閉弁36を接続状態とする。その上で、ポンプ装置34を作動させて、室内側の蓄熱媒体容器22の底部から排出装置である開閉弁40の側に蓄熱媒体を移送させて外部に排出する。これによって、室内側の蓄熱媒体容器22における水位が次第に低下するので、低下した水位が蓄熱媒体容器22の底部に達したところでポンプ装置34の作動を止める。

【0041】
このように、熱容量調整部30を構成する2つのポンプ装置32,34、3つの開閉弁36,38,40の動作を組み合わせることで、図2(a),(b),(c),(d)の4つの状態を作り出すことができる。この4つの場合は典型的な場合であって、2つのポンプ装置32,34、3つの開閉弁36,38,40の動作の適切な組み合わせによって、これ以外の状態を作り出すことが可能である。

【0042】
例えば、室内側の蓄熱媒体容器22の中の蓄熱媒体20の水位を満充填状態と空の状態の中間において任意の水位状態にすることが出来る。1つの方法は、図2(b)において、蓄熱媒体容器22における蓄熱媒体20の水位が満充填状態になる前の任意の水位に達したところでポンプ装置32の作動を止めることである。他の方法は、図2(b)において、蓄熱媒体容器22における蓄熱媒体20の水位が満充填状態になった後で、図2(d)で説明したように、ポンプ装置32を停止状態とし、注入装置弁である開閉弁38を閉状態とし、排出装置である開閉弁40を開状態とし、切替装置である開閉弁36を接続状態とする。その上で、ポンプ装置34を作動させて、室内側の蓄熱媒体容器22の底部から排出装置である開閉弁40の側に蓄熱媒体を移送させて外部に排出する。そして、室内側の蓄熱媒体容器22において任意の水位となったところで排出装置である開閉弁40を閉じ、ポンプ装置34の作動を止める。

【0043】
また、室外側の蓄熱媒体容器24の中の蓄熱媒体21の水位を満充填状態と空の状態の中間において任意の水位状態にすることが出来る。1つの方法は、図2(c)において、蓄熱媒体容器24における蓄熱媒体21の水位が満充填状態になる前の任意の水位に達したところでポンプ装置32の作動を止めることである。この方法によれば、室内側の蓄熱媒体容器22の中の蓄熱媒体20の水位を満充填状態に維持しつつ、室外側の蓄熱媒体容器24の中の蓄熱媒体21の水位を任意に設定することが出来る。

【0044】
他の方法は、図2(d)において、蓄熱媒体容器24における蓄熱媒体21の水位が満充填状態になった後で、ポンプ装置32を停止状態のまま、注入装置である開閉弁38を閉状態とし、排出装置である開閉弁40を開状態とし、切替装置である開閉弁36を接続状態とする。その上で、ポンプ装置34を作動させて、室内側の蓄熱媒体容器22の底部から排出装置である開閉弁40の側に吸引動作を行う。これによって、室外側の蓄熱媒体容器24の底部から室内側の蓄熱媒体容器22の側に蓄熱媒体が吸引される。室内側の蓄熱媒体容器22に吸引された蓄熱媒体は、ポンプ装置34によってさらに排出装置である開閉弁40の側に吸引され、開閉弁40から外部に排出される。そして、室外側の蓄熱媒体容器24において任意の水位に下がったところで排出装置である開閉弁40を閉じ、ポンプ装置34の作動を止める。この方法によれば、室内側の蓄熱媒体容器22の中に蓄熱媒体20が空である状態を維持しつつ、室外側の蓄熱媒体容器24の中の蓄熱媒体21の水位を任意に設定することが出来る。

【0045】
かかる熱容量調整部30の作用を用いて、室内空間16の室内熱容量を増減し、これによって、室内空間16の室温を夏は涼しく、冬は暖かくするように調整することが出来る。そのことを図3から図5を用いて説明する。

【0046】
図3は、建物の構造によって定まる室内熱容量の大小によって、最高室温と最低室温が変化することを示す一般的な概念図である。図3の横軸は室内熱容量CR、縦軸は室温である。図3では、室内熱容量CRが小さい値CRSの例として木造建築家屋、室内熱容量CRが大きい値CRLの例としてコンクリート造建築家屋を示した。コンクリート造は、木造構造において代表的に用いられる合板に比べ、比熱は約0.8倍と小さいが、密度が約5倍大きく、使用している体積も約20倍大きいので、単位体積当り熱容量は約80倍大きい。したがって、同じ室内空間であれば、コンクリート造建築家屋の室内熱容量は、木造建築家屋の室内熱容量の約80倍となる。

【0047】
図3には、室内熱容量CRに対する最高室温特性線50と最低室温特性線52を示した。ここに示されるように、室内熱容量が小さい値CRSにおける最高室温と最低室温との間の温度差ΔTSは、室内熱容量が大きな値CRLにおける最高室温と最低室温との間の温度差ΔTLよりも大きい。つまり、室内熱容量が小さいほど、一日の間での室温の変化幅が大きくなる。コンクリート造建築家屋の室内熱容量も、木造建築家屋の室内熱容量も、建築仕様によって定まり、一旦建築されると後で室内熱容量を変更することが困難である。

【0048】
図1の構成によれば、熱容量調整部30の作用によって、建物14における室内熱容量を可変できる。図4と図5は、その作用を利用する例を示す図である。

【0049】
図4は、一日の時間帯に応じて室内熱容量を変化させ、昼間及び夜間の最高室温を共に下げて一日を通して涼しくする例を示す図である。図4の横軸は時間で、横軸の左側に昼間の時間帯が取られ、右側に夜間の時間帯が取られる。縦軸は室温である。室温特性線54は、室内熱容量CRが小さい値CRSのときの室内空間16の室温変化を示す特性線で、室温特性線56は、室内熱容量CRが大きい値CRLのときの室内空間16の室温変化を示す特性線である。図3で説明したように、室内熱容量CRが小さい値CRSのときの室温特性線54の一日の間での室温の変化幅は、室内熱容量CRが大きい値CRLのときの室温特性線56の一日の間での室温の変化幅よりも大きくなる。

【0050】
したがって、室内熱容量CRが小さい値CRSのときの最高室温は、室内熱容量CRが大きい値CRLのときの最高室温に比べ高くなり、室内熱容量CRが小さい値CRSのときの最低室温は、室内熱容量CRが大きい値CRLのときの最低室温に比べ低くなる。つまり、室内熱容量CRが小さい値CRSのときは、昼間時間帯が暑く、夜間時間帯で涼しくなる。これに対し、室内熱容量CRが大きい値CRLのときは、昼間時間帯が涼しいが、夜間時間帯が暑くなる。

【0051】
そこで、昼間時間帯において室内熱容量を大きな値CRLとし、夜間時間帯において室内熱容量を小さな値CRSとすれば、室温特性線58に示すように、昼間時間帯を涼しく、夜間時間帯も涼しくすることが出来る。すなわち、夏季においては、昼間時間帯において室内熱容量を大きな値CRLとし、夜間時間帯において室内熱容量を小さな値CRSとするような室内熱容量調整59を行うことで、室温調整を最適なものと出来る。

【0052】
図5は、一日の時間帯に応じて室内熱容量を変化させて、昼間及び夜間の最高室温を共に上げて一日を通して暖かくする例を示す図である。図5の横軸、縦軸は、図4と同じである。室温特性線54,56も図4で説明したものと同様である。

【0053】
図4で説明したように、室内熱容量CRが小さい値CRSのときの最高室温は、室内熱容量CRが大きい値CRLのときの最高室温に比べ高くなり、室内熱容量CRが小さい値CRSのときの最低室温は、室内熱容量CRが大きい値CRLのときの最低室温に比べ低くなる。換言すれば、室内熱容量CRが小さい値CRSのときは、昼間時間帯が暖かいが、夜間時間帯で冷える。これに対し、室内熱容量CRが大きい値CRLのときは、昼間時間帯があまり暖かくないが、夜間時間帯の冷えが小さくなる。

【0054】
そこで、昼間時間帯において室内熱容量を小さな値CRSとし、夜間時間帯において室内熱容量を大きな値CRLとすれば、室温特性線60に示すように、昼間時間帯を暖かくでき、夜間時間帯の冷えも押えることが出来る。すなわち、冬季においては、図4で説明した内容とは逆に、昼間時間帯において室内熱容量を小さな値CRSとし、夜間時間帯において室内熱容量を大きな値CRLとするような室内熱容量調整61を行うことで、室温調整を最適なものと出来る。

【0055】
モデルハウスを用いて上記構成の作用を実証した結果について、図6から図14を用いて詳細に説明する。図6から図8は、モデルハウスの内容を示す図で、図9から図12はモデルハウスにおける実測結果を示す図で、図4,5に対応するものである。図13,14は、モデルハウスについてシミュレーション計算を行った結果を示す図で、図3に対応するものである。

【0056】
図6は、実証に用いたモデルハウスの見取図である。実証に用いたモデルハウスは、福島県郡山市における出願人の敷地内に建てられた「ロハスの家3号」について、室内熱容量を可変できるように、熱容量調整部30を付加する改良を行った建物である。「ロハスの家3号」は、太陽エネルギで蓄熱媒体を暖め、暖めた蓄熱媒体を循環させる構造を有する太陽熱利用温水暖房を行うことが出来る建物である。「ロハスの家3号」は室内熱容量を可変することが出来ない。図1の構成の作用の実証のために、「ロハスの家3号」に熱容量調整部30を付加する改良を行った。この「改良ロハスの家3号」をモデルハウスとし、図6では建物14として示した。図6には、南S北Nの方位を示した。図6は見取図であるので、熱容量調整部30の図示を省略した。

【0057】
モデルハウスである建物14は、ほぼ中央に南北方向に延びるアプローチ部13を有する。そして、アプローチ部13の両側にダイニングキッチンルーム15と、ダイニングキッチンルーム15側のサンルーム17と、図1の室内空間16に対応する書斎と、書斎側のサンルームである室外空間18とを有する。ダイニングキッチンルーム15と、書斎である室内空間16には、室内側の蓄熱媒体容器22が設けられる。ダイニングキッチンルーム15側のサンルーム17と、書斎側のサンルームである室外空間18には、室外側の蓄熱媒体容器24が設けられる。ダイニングキッチンルーム15と、書斎である室内空間16は、床面積も天井高さも同じある。両者の間の相違は、ダイニングキッチンルーム15には厨房装置が備えられ、その隣にバスルームとトイレットルーム等の付属室19が接続する点である。

【0058】
モデルハウスである建物14は、北側からアプローチ部13を入り、突き当りのドアから南側の廊下部に入り、廊下部の西側のドアから室外空間18であるサンルームに入り、室外空間18の北側のドアから室内空間16に入ることが出来る。また、廊下部の東側のドアからダイニングキッチンルーム15側のサンルーム17に入り、サンルーム17の北側のドアからダイニングキッチンルーム15に入ることが出来る。ダイニングキッチンルーム15の東側のドアを通って付属室19に進むことが出来る。

【0059】
書斎である室内空間16は、床面と天井面と四方の側壁に囲まれた空間に室内側の蓄熱媒体容器22が設けられるのみの構造で、モデルハウスである建物14において、熱容量調整部30の作用を正確に実証できるモデル室に相当する。

【0060】
図7は、建物14における室内空間16と室外空間18に関する構成を示す斜視図である。室内空間16の床面積は約14.91m2で、天井高さは約2.9mである。室外空間18は室内空間16の約30%の容積の空間である。室外空間18の南側は全面ガラス壁で、太陽光が直接入射する構造である。

【0061】
室内空間16の天井面、四方の側壁面は、室内側から厚さ100mmの発泡ウレタン、厚さ12mmの合板、厚さ12mmの吸音板の積層構造で構成される。床面は、室内側から厚さ1.8mmのビニルシート、厚さ12mの合板、厚さ120mmのコンクリート、厚さ50mmの発泡ウレタン、厚さ150mmの砕石層の積層構造で構成される。なお、北側壁面に複層ガラスが嵌め込まれる開口部が設けられる。

【0062】
室内空間16の北側には、円筒形容器である蓄熱媒体容器22が複数本立てて設けられる。蓄熱媒体容器22の高さは約2.7mである。蓄熱媒体容器22の内径寸法と本数は、実証実験においていくつかの種類が用いられる。図8から図12では、内径が200mm、本数は6本である。図13では、本数を6本、12本、18本として計算が行われる。図14では、内径が50mm、100mm、150mm、200mm、400mm、600mmとして計算が行われる。

【0063】
室外空間18の北側には、円筒形容器である蓄熱媒体容器24が複数本立てて設けられる。蓄熱媒体容器24の高さは約2.0mである。図8から図12では、内径が200mm、本数は6本である。

【0064】
図8は、室内空間16と室外空間18の室内熱容量、蓄熱媒体容器22,24の熱容量を求めるために用いたパラメータである物性値を示す図である。図8の物性値を用いて計算した結果、蓄熱媒体容器22に水を満充填したときの熱容量は、内径を200mm、本数を6本として、約2.1MJ/Kである。また、蓄熱媒体容器22に水が充填されていない空の状態における室内空間16の室内熱容量は、約1.0MJ/Kである。

【0065】
図9から図11は、図4,5で説明した作用について実測した結果を示す図である。これらの実測においては、書斎である室内空間16とダイニングキッチンルーム15の室内空間容積が同じであることを利用し、両者の室内側の蓄熱媒体容器22の熱容量を図4,5で説明した内容に沿って異ならせ、その結果生じる室温の相違を実測した。以下では、蓄熱媒体の熱容量を一日の昼間と夜間とで異ならせる例を示すが、これは一例であって、一日を3以上の複数の時間帯に区分し、それぞれの時間帯における蓄熱媒体の熱容量を異ならせてもよい。

【0066】
図9は、室内熱容量CRの大小によって夏季の最高室温がどのように変化するかの実測値を示す図である。ここでは、室内空間16における蓄熱媒体容器22に蓄熱媒体20を満充填して室内熱容量CRを大きな値CRLとし、ダイニングキッチンルーム15における蓄熱媒体容器22に蓄熱媒体20を全く充填しない空状態として室内熱容量CRを小さな値CRSとした。図9(a)は、室内空間16における室内熱容量CRを一日の全体に渡って大きな値CRLとすることを示す図で、(b)は、ダイニングキッチンルーム15における室内熱容量CRを一日の全体に渡って小さな値CRSとすることを示す図である。

【0067】
図9(c)は、横軸に、室内空間16における一日を通しての最高室温の実測値を取り、縦軸にダイニングキッチンルーム15における一日を通しての最高室温の実測値を取った図である。実測は、6日間に渡って行った。この結果から、室内熱容量CRを大きな値CRLとすると、室内熱容量CRを小さな値CRSとする場合に比べ、最高室温が約1~2℃低くなることが分かる。

【0068】
図10は、室内熱容量CRを一日の時間帯において変化させた場合の夏季の最高室温がどのように変化するかの実測値を示す図である。ここでは、図9と同様に、室内空間16における蓄熱媒体容器22に蓄熱媒体20を満充填して室内熱容量CRを大きな値CRLとする。これに対し、ダイニングキッチンルーム15においては、昼間の時間帯の室内熱容量CRを大きな値CRLとし、夜間の時間帯の室内熱容量CRを小さな値CRSとした。図10(a)は、図9(a)と同様に、室内空間16における室内熱容量CRを一日の全体に渡って大きな値CRLとすることを示す図である。図10(b)は、ダイニングキッチンルーム15における室内熱容量CRについて、0時から9時までと、19時から24時までの時間帯は小さな値CRSとし、昼間の9時から19時までの時間帯は大きな値CRLとすることを示す図である。なお、昼間時間帯において、室内空間16とダイニングキッチンルーム15のそれぞれについて換気を行った。

【0069】
図10(c)は、横軸に、室内空間16における一日を通しての最高室温の実測値を取り、縦軸にダイニングキッチンルーム15における一日を通しての最高室温の実測値を取った図である。実測は、4日間に渡って行った。この結果から、室内熱容量CRを大きな値CRLとするのは、一日中でなくても昼間の時間帯だけとしても最高室温が同じとなることが分かる。図9(c)の実測結果を合わせると、昼間の時間帯だけ室内熱容量CRを大きな値CRLとすることで、室内熱容量室内熱容量CRを小さな値CRSとする場合に比べ、最高室温が約1~2℃低くなる。図9,10の結果は、図4で述べた作用効果とよく一致している。

【0070】
図11は、室内熱容量CRを一日の時間帯において変化させた場合の冬季の最高室温がどのように変化するかの実測値を示す図である。ここでは、室内空間16における蓄熱媒体容器22に蓄熱媒体20を満充填状態として室内熱容量CRを大きな値CRLとする。これに対し、ダイニングキッチンルーム15においては、昼間の時間帯の室内熱容量CRを小さな値CRSとし、夜間の時間帯の室内熱容量CRを大きな値CRLとした。図11(a)は、室内空間16における室内熱容量CRを一日の全体に渡って大きな値CRLとすることを示す図である。図11(b)は、ダイニングキッチンルーム15における室内熱容量CRについて、0時から10時までと、17時から24時までの時間帯は大きな値CRLとし、昼間の10時から17時までの時間帯は小さな値CRSとすることを示す図である。

【0071】
図11(c)は、横軸に、室内空間16における一日を通しての最高室温の実測値を取り、縦軸にダイニングキッチンルーム15における一日を通しての最高室温の実測値を取った図である。実測は、6日間に渡って行った。この結果から、室内熱容量CRを昼間の時間帯において小さな値CRSとし、夜間の時間帯において大きな値CRLとすることで、一日を通して室内熱容量CRを大きな値CRLとすることに比べ、最高室温が約1~1.5℃上昇し、昼間時間帯において暖かくできることが分かる。

【0072】
図12は、室内熱容量CRを一日の時間帯において変化させた場合の冬季の最低室温がどのように変化するかの実測値を示す図である。ここでは、室内空間16における蓄熱媒体容器22に蓄熱媒体20を充填せず空状態として室内熱容量CRを小さな値CRSとする。ダイニングキッチンルーム15については、図11と同様に、昼間の時間帯の室内熱容量CRを小さな値CRSとし、夜間の時間帯の室内熱容量CRを大きな値CRLとした。図12(a)は、室内空間16における室内熱容量CRを一日の全体に渡って小さな値CRSとすることを示す図である。図11(b)は、ダイニングキッチンルーム15における室内熱容量CRについて、0時から10時までと、17時から24時までの時間帯は大きな値CRLとし、昼間の10時から17時までの時間帯は小さな値CRSとすることを示す図である。

【0073】
図12(c)は、横軸に、室内空間16における一日を通しての最高室温の実測値を取り、縦軸にダイニングキッチンルーム15における一日を通しての最高室温の実測値を取った図である。実測は、6日間に渡って行った。この結果から、室内熱容量CRを昼間の時間帯において小さな値CRSとし、夜間の時間帯において大きな値CRLとすることで、一日を通して室内熱容量CRを小さな値CRSとすることに比べ、最高室温が約1~2℃上昇し、夜間時間帯において暖かくできることが分かる。

【0074】
このように、冬季においては、室内熱容量CRを昼間時間帯で小さな値CRSとし、夜間時間帯で大きな値CRLとすることで、昼間時間帯でも夜間時間帯でも暖かくできる。このことは、図5で説明した作用とよく一致する。

【0075】
なお、冬季の昼間の時間帯のときに室内側の蓄熱媒体容器22の中の蓄熱媒体20を室外側の蓄熱媒体容器24の中へ移して室外側の蓄熱媒体21の体積を増やし、冬季の夜間の時間帯のときに室外側の蓄熱媒体容器24の中の蓄熱媒体21を室内側の蓄熱媒体容器22の中へ移して室内側の蓄熱媒体容器22の中の蓄熱媒体20の体積を増やすことがよい。これによって、冬季の昼間の時間帯において、例えば、太陽光エネルギで室外側の蓄熱媒体を暖めておいて、夜間の時間帯において、その暖めた蓄熱媒体を室内側の蓄熱媒体容器に移せば、室内温度をさらに温かくすることが出来る。

【0076】
図9から図12は、室内側の蓄熱媒体容器22を内径200mm、本数を6本として、一日の時間帯において室内熱容量CRを可変して室温調整が行えることを実測値で示した。図13は、室内熱容量CRを変化させたときの最高室温と最低室温がどのように変化するかをシミュレーション計算によって求めた結果を示す図である。ここでは、室内側の蓄熱媒体容器22の内径を200mmのままとして、本数を6本、12本、18本と変化させた。

【0077】
室内側の蓄熱媒体容器22に蓄熱媒体20が全く充填されていない空の状態では、室内熱容量CRは、1MJ/Kである。室内側の蓄熱媒体容器22の6本に蓄熱媒体20が満充填された状態では、室内熱容量CRは2.1MJ/K増加して、合計3.1MJ/Kになる。12本に蓄熱媒体20が満充填されると室内熱容量CRはさらに2.1MJ/K増加して合計5.2MJ/Kとなる。18本に蓄熱媒体20が満充填されると室内熱容量CRはさらに2.1MJ/K増加して合計7.3MJ/Kとなる。

【0078】
図13の横軸は、室内熱容量CRの値で、参考として、室内側の蓄熱媒体容器22で蓄熱媒体20が満充填された本数も示した。縦軸は、シミュレーション計算で求めた最高室温と最低室温である。シミュレーション計算は、「次世代省エネルギー基準(2009年改訂)の熱損失及び日射取得の算出法」に基づき、用いたパラメータの物性値は、図7、図8で説明した値を用いた。最高室温と最低室温は、一日を通しての室温の最高値と最低値である。

【0079】
図13に示すように、室内熱容量CRが大きくなるに従い、最高室温と最低室温の差が小さくなる。この結果は、図3で説明した内容とよく一致する。図13の結果から、室内熱容量CRを4MJ/K以上とすることで、一日を通しての室温を28℃±2℃とすることが出来ることが分かる。

【0080】
図13までは、室内側の蓄熱媒体容器22の内径を200mmとして蓄熱媒体容器22の1本当たりの伝熱面積を一定とした。図14は、室内側の蓄熱媒体容器22の本数を6本として、単位伝熱面積当たり熱容量を変化させたときの最高室温と最低室温がどのように変化するかをシミュレーション計算によって求めた結果を示す図である。ここでは、室内側の蓄熱媒体容器22の内径を、50mm、100mm、150mm、200mm、400mm、600mmとして、単位伝熱面積当たり熱容量を変化させた。シミュレーション計算の方法は図13と同じである。最高室温と最低室温は、一日を通しての室温の最高値と最低値である。

【0081】
図14に示すように、単位伝熱面積当たり熱容量が小さくなるに従い、最高室温と最低室温の差が小さくなる。単位伝熱面積当たり熱容量を約0.2MJ/K/m2以下とすることで、一日を通しての室温を28℃±2℃以下とすることが出来ることが分かる。

【0082】
このように、夏季と冬季に応じて室内熱容量の変化の仕方を変更し、また、一日の時間帯において昼間と夜間とで室内熱容量を変化させることで、室内空間の室温を適切に調整することが可能になる。
【符号の説明】
【0083】
10 室温調整システム、12 大地、13 アプローチ部、14 建物、15 ダイニングキッチンルーム、16 室内空間、17 サンルーム、18 室外空間、19 付属室、20,21 蓄熱媒体、22,24 蓄熱媒体容器、26 接続管路、30 熱容量調整部、32,34 ポンプ装置、36,38,40 開閉弁、50 最高室温特性線、52 最低室温特性線、54,56,58,60 室温特性線、59,61 室内熱容量調整。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13