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明細書 :ホモセリン脱水素酵素を用いたホモシステインの定量法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 再公表特許(A1)
発行日 平成27年5月11日(2015.5.11)
発明の名称または考案の名称 ホモセリン脱水素酵素を用いたホモシステインの定量法
国際特許分類 C12Q   1/32        (2006.01)
FI C12Q 1/32
国際予備審査の請求 未請求
全頁数 9
出願番号 特願2013-556465 (P2013-556465)
国際出願番号 PCT/JP2013/052039
国際公開番号 WO2013/115248
国際出願日 平成25年1月30日(2013.1.30)
国際公開日 平成25年8月8日(2013.8.8)
優先権出願番号 2012019441
優先日 平成24年2月1日(2012.2.1)
優先権主張国 日本国(JP)
指定国 AP(BW , GH , GM , KE , LR , LS , MW , MZ , NA , RW , SD , SL , SZ , TZ , UG , ZM , ZW) , EA(AM , AZ , BY , KG , KZ , RU , TJ , TM) , EP(AL , AT , BE , BG , CH , CY , CZ , DE , DK , EE , ES , FI , FR , GB , GR , HR , HU , IE , IS , IT , LT , LU , LV , MC , MK , MT , NL , NO , PL , PT , RO , RS , SE , SI , SK , SM , TR) , OA(BF , BJ , CF , CG , CI , CM , GA , GN , GQ , GW , ML , MR , NE , SN , TD , TG) , AE , AG , AL , AM , AO , AT , AU , AZ , BA , BB , BG , BH , BN , BR , BW , BY , BZ , CA , CH , CL , CN , CO , CR , CU , CZ , DE , DK , DM , DO , DZ , EC , EE , EG , ES , FI , GB , GD , GE , GH , GM , GT , HN , HR , HU , ID , IL , IN , IS , JP , KE , KG , KM , KN , KP , KR , KZ , LA , LC , LK , LR , LS , LT , LU , LY , MA , MD , ME , MG , MK , MN , MW , MX , MY , MZ , NA , NG , NI , NO , NZ , OM , PA , PE , PG , PH , PL , PT , QA , RO , RS , RU , RW , SC , SD , SE , SG , SK , SL , SM , ST , SV , SY , TH , TJ , TM , TN , TR , TT , TZ , UA , UG , US , UZ , VC
発明者または考案者 【氏名】神野 英毅
【氏名】吉宗 一晃
【氏名】小森谷 友絵
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
【識別番号】100077562、【弁理士】、【氏名又は名称】高野 登志雄
【識別番号】100096736、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 俊夫
【識別番号】100117156、【弁理士】、【氏名又は名称】村田 正樹
【識別番号】100111028、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 博人
審査請求 未請求
テーマコード 4B063
Fターム 4B063QA01
4B063QQ80
4B063QR04
4B063QR65
4B063QS28
4B063QX01
要約 簡便な操作で正確なホモシステインを測定できる方法の提供。
ホモシステイン含有試料中において、ホモセリンにアーキア由来ホモセリン脱水素酵素を作用させてホモセリン脱水酵素活性を測定することを特徴とする、当該試料中のホモシステイン濃度の測定方法。
特許請求の範囲 【請求項1】
ホモシステイン含有試料中において、ホモセリンにアーキア由来ホモセリン脱水素酵素を作用させてホモセリン脱水素酵素活性を測定することを特徴とする、当該試料中のホモシステイン濃度の測定方法。
【請求項2】
アーキア由来ホモセリン脱水素酵素が、スルフォロバス由来のホモセリン脱水素酵素である請求項1記載の測定方法。
【請求項3】
アーキア由来ホモセリン脱水素酵素が、スルフォロバス・トコダイ由来のホモセリン脱水素酵素である請求項1又は2記載の測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の試料中のホモシステインの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホモシステインは、メチオニンの代謝中間物であり、健常の血漿中の濃度は低く、3~15μMである。しかし、ホモシステインの血中濃度が高くなると、心血管疾患の危険因子になることが知られている。例えば冠動脈疾患患者や脳血管疾患患者では血液中ホモシステイン濃度が高値になることが知られており、さらに糖尿病、高血圧、高脂血症、腎不全、妊娠時の合併症、アルツハイマー病等でも血中ホモシステイン濃度が高くなるという報告もある。その作用は、血中ホモシステイン濃度の上昇によってホモシステインが酸化した際に生じる過酸化水素やスーパーオキシドラジカル等の酸化ストレスによって内皮細胞障害を起こし、動脈硬化等が促進されるといわれている。
【0003】
従来のホモシステインの定量方法には検体中のホモシステインをSH基と反応する蛍光標識試薬で標識し、高速液体クロマトグラフィーにより分離して定量するプレラベルHPLC法、検体を高速液体クロマトグラフィーで分離し、後にSH基と反応する蛍光標識試薬で標識して定量するポストラベルHPLC法、ホモシステインと特異的に作用する酵素を用い、酵素反応生成物を抗体法により定量する酵素免疫法、ホモシステインに特異的に作用する酵素を用い、酵素反応生成物を酵素法により定量する方法など、幾つかの定量方法が存在する(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特許第3869601号公報
【特許文献2】特許第4233160号公報
【特許文献3】特許第4807920号公報
【特許文献4】米国特許出願公開2004/0096929号公報
【0005】

【非特許文献1】日本大学生産工学部第44回学術講演概要(2011-12-3)5-58
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のホモシステインの測定法のうち、HPLCを用いる方法は操作が煩雑であるという問題があり、酵素法については2種以上の酵素や酵素と抗体の組み合わせを使用するため操作が煩雑になる、試薬が高価になる等の問題があった。
従って、本発明は、簡便な操作で正確にホモシステインを測定できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、新たなホモシステインの定量法について種々検討してきたところ、ホモシステインに対する活性を有しないことが知られている超好熱アーキア由来ホモセリン脱水素酵素を、ホモセリンとホモシステインの共存系に作用させたところ、全く意外なことに、ホモシステインにより当該酵素のアロステリック効果が生じ、当該酵素のホモセリンに対する脱水素活性がホモシステイン濃度依存的に向上し、その脱水素活性を直接測定すれば、試料中のホモシステイン濃度が正確に測定できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[3]に係るものである。
[1]ホモシステイン含有試料中において、ホモセリンにアーキア由来ホモセリン脱水素酵素を作用させてホモセリン脱水素酵素活性を測定することを特徴とする、当該試料中のホモシステイン濃度の測定方法。
[2]アーキア由来ホモセリン脱水素酵素が、スルフォロバス由来のホモセリン脱水素酵素である[1]記載の測定方法。
[3]アーキア由来ホモセリン脱水素酵素が、スルフォロバス・トコダイ由来のホモセリン脱水素酵素である[1]又は[2]記載の測定方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1種類の酵素を反応させるだけで試料中のホモシステイン濃度が簡便かつ正確に定量できる。また、反応系が単純なので、分光光度計を備えた自動分析装置により迅速に定量できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ホモシステインによるホモセリン脱水素酵素の活性化作用を示す図である。
【図2】ホモセリン脱水素酵素の10μM DL-ホモシステインによる活性化を示す図である。
【図3】DL-ホモシステインによる反応速度への影響(反応開始後5分後の反応速度と初速度の比に対するホモシステインの影響)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の試料中のホモシステイン濃度測定方法は、ホモシステイン含有試料中において、ホモセリンにアーキア由来ホモセリン脱水素酵素を作用させ、ホモセリン脱水素酵素活性を測定するものである。

【0012】
用いられるホモシステイン含有試料としては、遊離のホモシステインを含有する生体試料であればよい。血液中でホモシステインは、遊離のホモシステインとしての存在量は少なく、そのほとんどが、ホモシスチン、ホモシステイン-システイン、ホモシステイン-タンパク質の形態で存在するので、まず還元してホモシステインを遊離させた試料を検体とするのが好ましい。この場合、測定されるのは総ホモシステイン量になる。ここで、還元処理手段としては、硫化水素、メタンチオール、2-メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、チオグリセロール、システアミン等のチオール化合物を反応させる方法等が挙げられる。この還元処理方法は公知の手段を採用できる(1)Refsum,H.et al.,Homocysteine and cardiovascular disease.Annu.Rev. ed.(1998)Vol.49,pp.31-62、2)Mansoor,M.A.et al.,Redox status and protein binding of plasma homocysteine and other aminothiols in patients with homocystinuria.Metabolism(1993)Vol.42,pp.1481-5、3)Mansoor,M.A.et al.,Redox status and protein binding of homocysteine and other aminothiols in patients with early-onset peripheral vascular disease.Arteroiscier Thromb.Vasc.Biol.(1995)Vol.15,pp.232-40、4)Chambers,J.C.et al.,Investigation of relationship between reduced,oxidized,and protein-bound homocysteine and vascular endothelial function in healthy human subjects.Circ.Res.(2001)Vol.89,pp.187-192、5)橋本隆男ら、「ホモシステイン代謝」、薬学雑誌(2007)127巻10号1579-92.)
また生体試料としては、血液、血漿、血清、髄液、リンパ液等が挙げられる。

【0013】
好ましいホモシステイン含有試料は、還元処理された血液、血漿又は血清である。

【0014】
本発明に用いられるホモセリン脱水素酵素は、哺乳類等の真核生物や細菌由来ではなくアーキア由来のホモセリン脱水素酵素である。細菌由来のホモセリン脱水素酵素はホモシステインで少し阻害されるという報告(RJ Rowbury,J.Gen.Microbiol.(1968),vol.54,pp.337-342)があり、使用できない。アーキア(古細菌)由来のホモセリン脱水素酵素であればよいが、スルフォロバス由来のホモセリン脱水素酵素が好ましく、特にスルフォロバス・トコダイ(Sulfolobus tokodaii)由来のホモセリン脱水素酵素がより好ましい。スルフォロバス属の好気、好酸、好熱性の古細菌は、陸上の火山や温泉などから採取でき、スルフォロバス・トコダイ以外にも、S. acidocaldarius、S. solfataricus、S. metallicus、S. shibatae、S. yangmingensis等も利用できる。

【0015】
本発明者の研究によれば、非特許文献1に記載のように、アーキア由来のホモセリン脱水素酵素は、ホモセリンに対する脱水素酵素活性(ホモセリンからアスパラギン酸-4-セミアルデヒドへの酸化反応をNAD(P)に依存して可逆的に触媒する活性)は有するが、ホモシステインに対す活性はない。従って、このアーキア由来のホモセリン脱水素酵素がホモシステインによって活性化され、ホモシステインの存在下でホモセリン脱水素酵素活性が増強されることは全く予測できなかった。

【0016】
アーキアからホモセリン脱水素酵素を採取するには、例えばアーキアを公知の手段により培養した培養液から採取することができるが、非特許文献1記載のように遺伝子組換え技術により形質転換した大腸菌を培養することにより採取することもできる。

【0017】
ホモシステイン含有試料中で、ホモセリンにアーキア由来ホモセリン脱水素酵素を作用させるには、例えばホモシステイン含有試料にアーキア由来ホモセリン脱水素酵素を添加してインキュベートし、次いで所定量のホモセリンを添加すればよい。アーキア由来のホモセリン脱水素酵素の添加量は、特に限定されないが、0.01~100U/ml程度、さらに0.5~2U/ml程度が好ましい。また、ホモセリンの添加量は、所定量であり、例えば0.01~10000mM、さらに1~100mMが好ましい。なお、酵素反応はpH3~11の緩衝液中、10~100℃で合計0.1分~60分インキュベートすればよい。

【0018】
ホモセリン脱水素酵素活性は、ホモセリンからアスパラギン酸-4-セミアルデヒドへの酸化反応であり、NAD又はNADPに依存して進行するから、反応系中にNAD又はNADPを存在させておき、NADからNADHの生成又はNADPからNADPHの生成を分光光度計により吸光度を測定すれば、ホモセリン脱水素酵素活性、すなわちホモシステイン濃度が定量できる。

【0019】
試料中のホモシステイン濃度は、予め作成しておいたホモシステイン濃度と酵素活性(例えば吸光度)に基づく検量線から決定することができる。
【実施例】
【0020】
次に実施例を上げて本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0021】
実施例1
[古細菌由来ホモセリン脱水素酵素の生産]
DDBJ(http://www.ddbj.nig.ac.jp/)等のデータベースから見出した好気・好酸性超好熱古細菌スルフォロバス・トコダイのゲノム上のHSDH推定遺伝子(915bp)を増幅するプライマーを設計し、PCRにより遺伝子を増幅した。増幅した遺伝子を発現ベクターpET101に挿入し発現プラスミドpST1519を構築した。pST1519でBL21-CodonPlus(DE3)-RIL Competent Cellsを形質転換した後、50μl/mlアンピシリン含有LB培地でOD660が0.6~0.8になるまで振盪培養し、0.2mM IPTGを加え、3時間37℃で培養した。培養で得られた菌体を遠心分離によって回収、1M KPB(pH7.0)、10mM MgCl2(pH7.0)で懸濁し、超音波破砕(出力35%,on time 2 sec, off time 2 sec, total time 60 min)を氷上で行った。更に、遠心分離後の上清を回収し、それを粗酵素液とし、酵素液をタンパク質濃度測定した。70℃に加熱した恒温槽で粗酵素を20分間加熱し、遠心分離によって上清を回収し、酵素液とした。
【実施例】
【0022】
実施例2
[活性測定]
酵素液(1U)に100mM リン酸緩衝液(pH7.0)、1mM MgCl2、1.3mM NAD+、各濃度のDL-ホモシステインをセルに加え、50℃で3分間インキュベートした。終濃度が10mMとなる様にDL-ホモセリンを添加し反応を開始させ、50℃において340nmの吸光度を経時的に観測することで活性測定を行った。酵素の1Unitは、50℃で1分間に1μmolのNADHを生じるのに必要な酵素量として定義した。図1にホモセリン脱水素酵素のホモシステインによる活性(ホモシステイン濃度と比活性の関係)化を示す。
図1から、本発明方法により、試料中のホモシステイン濃度が、ホモシステイン含有試料中で、ホモセリンとホモセリン脱水素酵素を作用させることにより、該試料中のホモシステイン濃度が定量できることがわかる。
【実施例】
【0023】
実施例3
[低濃度ホモシステインの活性測定]
酵素液(1U)に100mM リン酸緩衝液(pH7.0)、1mM MgCl2、1.3mM NAD+、各濃度のDL-ホモシステインをセルに加え、50℃で3分間インキュベートした。終濃度が8mMとなる様にDL-ホモセリンを添加し反応を開始させ、50℃において340nmの吸光度を経時的に観測することで活性測定を行った。
図2にホモセリン脱水素酵素の10μM DL-ホモシステインによる活性化を示す。血中濃度とほぼ同等の10μM ホモシステインによって経時的な吸光度変化が大きく影響を受けていることが示された。特に反応開始直後の初速度と反応5分後の速度がDL-ホモシステインによって影響を受ける。
この初速度と5分後の反応速度の比を計算したところ、図3の様にDL-ホモシステイン濃度との相関が得られた。この検量線によって数μMのホモシステインの定量が可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2