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明細書 :化合物及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-023176 (P2016-023176A)
公開日 平成28年2月8日(2016.2.8)
発明の名称または考案の名称 化合物及びその製造方法
国際特許分類 C07F   7/00        (2006.01)
A61K   6/00        (2006.01)
FI C07F 7/00 A
A61K 6/00 B
A61K 6/00 Z
請求項の数または発明の数 3
出願形態 OL
全頁数 22
出願番号 特願2014-150588 (P2014-150588)
出願日 平成26年7月24日(2014.7.24)
発明者または考案者 【氏名】廣瀬 英晴
【氏名】米山 隆之
【氏名】菊地 久二
【氏名】平口 久子
【氏名】升谷 滋行
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100126882、【弁理士】、【氏名又は名称】五十嵐 光永
【識別番号】100175824、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 淳一
審査請求 未請求
テーマコード 4C089
4H049
Fターム 4C089AA06
4C089AA11
4C089BC20
4H049VN06
4H049VP01
4H049VQ30
4H049VR44
4H049VS12
4H049VU06
4H049VU20
4H049VV06
4H049VW02
要約 【課題】ジルコニアを主成分とするセラミックスとレジンとを高強度で接着できる新規化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物(式中、Rは炭素数1~8のアルキル基であり;Rは炭素数1~5のアルキレン基であり;Rは水素原子又はメチル基であり;nは1~3の整数であり;nが2又は3である場合、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、nが1又は2である場合、複数個のR及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)。
(RO)Zr(OROC(=O)C(-R)=CH4-n ・・・(1)
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
(RO)Zr(OROC(=O)C(-R)=CH4-n ・・・(1)
(式中、Rは炭素数1~8のアルキル基であり;Rは炭素数1~5のアルキレン基であり;Rは水素原子又はメチル基であり;nは1~3の整数であり;nが2又は3である場合、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、nが1又は2である場合、複数個のR及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
下記一般式(1)-1で表される化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物又はその塩と、を反応させて、下記一般式(4)-1で表される化合物を得る工程(A1)、
下記一般式(4)-1で表される化合物と、下記一般式(5)で表される化合物又はその塩と、を反応させて、下記一般式(6)で表される化合物を得る工程(A2)、
及び下記一般式(6)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物又はその塩と、を反応させて、下記一般式(1)-1で表される化合物を得る工程(A3)を有する化合物の製造方法。
ZrX ・・・・(2)
OH ・・・・(3)
(RO)αZrX4-α ・・・・(4)-1
CH=C(-R)C(=O)OROH ・・・・(5)
(RO)αZr(OROC(=O)C(-R)=CHβ4-α-β ・・・・(6)
(RO)n1Zr(OROC(=O)C(-R)=CH4-n1 ・・・・(1)-1
(式中、Xはハロゲン原子であり;Rは炭素数1~8のアルキル基であり;Rは炭素数1~5のアルキレン基であり;Rは水素原子又はメチル基であり;α及びβはそれぞれ独立に1又は2であり、ただしα+βは2又は3であり;n1は2又は3であり;一般式(1)-1中の複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、n1が2である場合、一般式(1)-1中の複数個のR及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
下記一般式(1)-2で表される化合物の製造方法であって、
下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物又はその塩と、を反応させて、下記一般式(4)-2で表される化合物を得る工程(B1)、
及び下記一般式(4)-2で表される化合物と、下記一般式(5)で表される化合物又はその塩と、を反応させて、下記一般式(1)-2で表される化合物を得る工程(B2)を有する化合物の製造方法。
ZrX ・・・・(2)
OH ・・・・(3)
OZrX ・・・・(4)-2
CH=C(-R)C(=O)OROH ・・・・(5)
OZr(OROC(=O)C(-R)=CH ・・・・(1)-2
(式中、Xはハロゲン原子であり;Rは炭素数1~8のアルキル基であり;Rは炭素数1~5のアルキレン基であり;Rは水素原子又はメチル基であり;一般式(1)-2中の複数個のR及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の有機ジルコニウム化合物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用セラミックス材料として、シリカ(SiO)を主成分とするセラミックスが使用されており、従来、このようなセラミックスはシランカップリング剤によってレジンとカップリングされ、接着する手法が広く普及している(非特許文献1参照)。なかでも、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(γ-MPTS、3-MPTS)は、歯科用コンポジットレジンの充填材であるシリカと、レジンとを接着させ、高強度の歯科用成形修復材料として使用されており、シリカを主成分とするセラミックスとレジンとの接着時のプライマーとしても使用されている。
【0003】
一方で、より高強度の歯科用セラミックス材料が求められており、ジルコニア(ZrO)を主成分とするセラミックスが有望視されている。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Hisamatsu N. et al, Dent. Mater.J.,24,440-446
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のカップリング剤を用いた場合には、ジルコニアを主成分とするセラミックスとレジンとの接着強度が不十分であるという問題点あった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、ジルコニアを主成分とするセラミックスとレジンとを高強度で接着できる新規化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物を提供する。
(RO)Zr(OROC(=O)C(-R)=CH4-n ・・・(1)
(式中、Rは炭素数1~8のアルキル基であり;Rは炭素数1~5のアルキレン基であり;Rは水素原子又はメチル基であり;nは1~3の整数であり;nが2又は3である場合、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、nが1又は2である場合、複数個のR及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0008】
また、本発明は、下記一般式(1)-1で表される化合物の製造方法であって、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物又はその塩と、を反応させて、下記一般式(4)-1で表される化合物を得る工程(A1)、下記一般式(4)-1で表される化合物と、下記一般式(5)で表される化合物又はその塩と、を反応させて、下記一般式(6)で表される化合物を得る工程(A2)、及び下記一般式(6)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物又はその塩と、を反応させて、下記一般式(1)-1で表される化合物を得る工程(A3)を有する化合物の製造方法を提供する。
ZrX ・・・・(2)
OH ・・・・(3)
(RO)αZrX4-α ・・・・(4)-1
CH=C(-R)C(=O)OROH ・・・・(5)
(RO)αZr(OROC(=O)C(-R)=CHβ4-α-β ・・・・(6)
(RO)n1Zr(OROC(=O)C(-R)=CH4-n1 ・・・・(1)-1
(式中、Xはハロゲン原子であり;Rは炭素数1~8のアルキル基であり;Rは炭素数1~5のアルキレン基であり;Rは水素原子又はメチル基であり;α及びβはそれぞれ独立に1又は2であり、ただしα+βは2又は3であり;n1は2又は3であり;一般式(1)-1中の複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、n1が2である場合、一般式(1)-1中の複数個のR及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0009】
また、本発明は、下記一般式(1)-2で表される化合物の製造方法であって、下記一般式(2)で表される化合物と、下記一般式(3)で表される化合物又はその塩と、を反応させて、下記一般式(4)-2で表される化合物を得る工程(B1)、及び下記一般式(4)-2で表される化合物と、下記一般式(5)で表される化合物又はその塩と、を反応させて、下記一般式(1)-2で表される化合物を得る工程(B2)を有する化合物の製造方法を提供する。
ZrX ・・・・(2)
OH ・・・・(3)
OZrX ・・・・(4)-2
CH=C(-R)C(=O)OROH ・・・・(5)
OZr(OROC(=O)C(-R)=CH ・・・・(1)-2
(式中、Xはハロゲン原子であり;Rは炭素数1~8のアルキル基であり;Rは炭素数1~5のアルキレン基であり;Rは水素原子又はメチル基であり;一般式(1)-2中の複数個のR及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ジルコニアを主成分とするセラミックスとレジンとを高強度で接着できる新規化合物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1で得られた化合物(1)のIRスペクトルのデータである。
【図2】実施例1で用いた塩化ジルコニウム(IV)のIRスペクトルのデータである。
【図3】実施例1で用いた1-ブタノールのIRスペクトルのデータである。
【図4】実施例1で用いた2-ヒドロキシエチルメタクリレートのIRスペクトルのデータである。
【図5】実施例1で得られた化合物(1)のH-NMRスペクトルのデータである。
【図6】実施例1で用いた1-ブタノールのH-NMRスペクトルのデータである。
【図7】実施例1で用いた2-ヒドロキシエチルメタクリレートのH-NMRスペクトルのデータである。
【図8】実施例1で得られた化合物(1)の13C-NMRスペクトルのデータである。
【図9】実施例1で用いた1-ブタノールの13C-NMRスペクトルのデータである。
【図10】実施例1で用いた2-ヒドロキシエチルメタクリレートの13C-NMRスペクトルのデータである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<化合物>
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される(以下、「化合物(1)」と略記することがある)。
(RO)Zr(OROC(=O)C(-R)=CH4-n ・・・(1)
(式中、Rは炭素数1~8のアルキル基であり;Rは炭素数1~5のアルキレン基であり;Rは水素原子又はメチル基であり;nは1~3の整数であり;nが2又は3である場合、複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、nが1又は2である場合、複数個のR及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)

【0013】
化合物(1)は、新規の有機ジルコニウム化合物(ジルコニウム原子を含む有機化合物)である。化合物(1)は、他の化合物と反応可能な反応点を二種類、合計で四箇所有する。そのうち、一般式「-OR」で表される基は、加水分解性の基であり、ジルコニア(ZrO)と縮合可能であり、一般式「-OROC(=O)C(-R)=CH」で表される基は、重合性の基であり、その末端の重合性不飽和結合(二重結合)によって、同様の重合性不飽和結合を有するモノマー、オリゴマー又はポリマーと共重合可能である。したがって、化合物(1)は、ジルコニアと、(メタ)アクリレートレジン等の重合性不飽和結合を有するレジンとを、カップリング反応によって高強度で接合でき、例えば、歯科用セラミックス材料の分野において、ジルコニアを主成分とするセラミックスと、(メタ)アクリレートレジンとのカップリング剤として有用である。

【0014】
また、化合物(1)は、一般式「-OR」で表される基が、ジルコニアに限らず、水酸基又はアルコキシ基等との反応性を有するため、これら基を有する無機材料又は有機材料と反応可能である。さらに、化合物(1)は、一般式「-OROC(=O)C(-R)=CH」で表される基が、(メタ)アクリレートレジンに限らず、重合性不飽和結合を有するレジンとの反応性を有するため、重合性不飽和結合を有する有機材料と反応可能である。したがって、化合物(1)は、このような多官能性化合物としての反応性を利用できる用途であれば、歯科用セラミックス材料の分野でのカップリング剤以外の用途にも適用可能である。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包括する概念とする。

【0015】
式中、Rは炭素数1~8のアルキル基であり、前記アルキル基は直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
における好ましいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等が例示できる。
におけるアルキル基は、炭素数が2~8であることが好ましく、2~5であることがより好ましい。前記炭素数が前記下限値以上であることで、化合物(1)はより安定なものとなる。また、前記炭素数が前記上限値以下であることで、化合物(1)は一般式「-OR」で表される基において、他の化合物とより円滑に反応する。

【0016】
式中、Rは炭素数1~5のアルキレン基(アルカンジイル基、2価の飽和炭化水素基)であり、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
前記アルキレン基としては、Rにおける前記アルキル基から1個の水素原子が除かれてなる2価の基のうち、炭素数が1~5であるものが例示でき、より具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、トリメチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1,1-ジメチルトリメチレン基、1,2-ジメチルトリメチレン基、1,3-ジメチルトリメチレン基、1-エチルトリメチレン基、2-エチルトリメチレン基、1-メチル-2-エチルエチレン基、n-プロピルエチレン基が例示できる。
におけるアルキレン基は、炭素数が1~4であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。

【0017】
式中、Rは水素原子又はメチル基であり、メチル基であることが好ましい。

【0018】
式中、nは1~3の整数である。
nが2又は3である場合、複数個(2個又は3個)のRは互いに同一でも異なっていてもよい。例えば、nが3である場合、3個のRはすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部(2個)のみ同一であってもよい。
nが1又は2である場合、複数個のR及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、nが1又は2である場合、複数個(2個又は3個)のRは互いに同一でも異なっていてもよい。同様に、nが1又は2である場合、複数個(2個又は3個)のRは互いに同一でも異なっていてもよい。
nは2又は3であることが好ましく、3であることがより好ましい。

【0019】
化合物(1)で好ましいものとしては、Rが炭素数2~5のアルキル基であり、Rが炭素数2又は3のアルキレン基であり、Rがメチル基であり、nが2又は3であるものが例示でき、特に好ましいものとしては、式「(CHCHCHCHO)ZrOCHCHOC(=O)C(-CH)=CH」で表される化合物(メタクリロイルオキシエトキシトリn-ブトキシジルコニウム)が例示できる。

【0020】
<化合物の製造方法>
化合物(1)は、原料となる無機ジルコニウム化合物(ジルコニウム原子を含む無機化合物)に対して、最初に一般式「-OR」で表される基を導入し、次いで、得られた中間体に相当する化合物に対して、一般式「-OROC(=O)C(-R)=CH」で表される基を導入し、次いで、必要に応じてさらに、得られた化合物に対して、一般式「-OR」で表される基を導入する方法により、簡便かつ効率的に製造できる。すなわち、化合物(1)は、nの値に応じて、以下の二つの方法(以下、「製造方法1」、「製造方法2」とそれぞれ略記する)により、好適に製造できる。

【0021】
[製造方法1]
nが2又は3である場合の化合物(1)に相当する、下記一般式(1)-1で表される化合物(以下、「化合物(1)-1」と略記することがある)は、下記一般式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」と略記することがある)と、下記一般式(3)で表される化合物(以下、「化合物(3)」と略記することがある)又はその塩と、を反応させて、下記一般式(4)-1で表される化合物(以下、「化合物(4)-1」と略記することがある)を得る工程(A1)、前記化合物(4)-1と、下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」と略記することがある)又はその塩と、を反応させて、下記一般式(6)で表される化合物(以下、「化合物(6)」と略記することがある)を得る工程(A2)、及び前記化合物(6)と、前記化合物(3)又はその塩と、を反応させて、化合物(1)-1を得る工程(A3)を有する方法で製造できる。
ZrX ・・・・(2)
OH ・・・・(3)
(RO)αZrX4-α ・・・・(4)-1
CH=C(-R)C(=O)OROH ・・・・(5)
(RO)αZr(OROC(=O)C(-R)=CHβ4-α-β ・・・・(6)
(RO)n1Zr(OROC(=O)C(-R)=CH4-n1 ・・・・(1)-1
(式中、Xはハロゲン原子であり;Rは炭素数1~8のアルキル基であり;Rは炭素数1~5のアルキレン基であり;Rは水素原子又はメチル基であり;α及びβはそれぞれ独立に1又は2であり、ただしα+βは2又は3であり;n1は2又は3であり;一般式(1)-1中の複数個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、n1が2である場合、一般式(1)-1中の複数個のR及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)

【0022】
(工程(A1))
工程(A1)では、化合物(2)と、化合物(3)又はその塩と、を反応させて、化合物(4)-1を得る。
化合物(2)は無機ジルコニウム化合物である。式中、Xはハロゲン原子であり、塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。特に好ましい化合物(2)としては、塩化ジルコニウム(IV)(ZrCl)が例示できる。

【0023】
化合物(3)は、アルコールであり、式中、Rは、一般式(1)中のRと同じである。
本工程の前記反応において、化合物(2)と反応させるのは、化合物(3)のみでもよいし、化合物(3)の塩のみでもよく、化合物(3)と化合物(3)の塩の両方でもよい。
化合物(3)の塩としては、化合物(3)の水酸基を構成する水素原子が、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等のアルカリ金属原子で置換されてなるもの、すなわち、アルカリ金属塩が例示できる。

【0024】
化合物(4)-1は、化合物(2)の1個又は2個のXが、一般式「-OR」で表される基(アルコキシ基)で置換された中間体である。
式中、αは1又は2であり、化合物(4)-1としては、下記一般式(4)-1a及び(4)-1bで表される化合物(以下、それぞれ「化合物(4)-1a」、「化合物(4)-1b」と略記することがある)が挙げられる。
OZrX ・・・・(4)-1a
(RO)ZrX ・・・・(4)-1b
(式中、R及びXは前記と同じである。)

【0025】
本工程では、化合物(4)-1a及び化合物(4)-1bが共に生成する可能性があるが、後述する後処理や精製によって、目的とするものを取り出すことが可能である。また、化合物(3)の使用量等、反応条件を調節することで、目的とするものの生成量を向上させることができる。

【0026】
本工程の前記反応における化合物(3)及びその塩の総使用量は、目的とする化合物(4)-1に応じて適宜調節すればよい。
例えば、化合物(4)-1aを得る場合には、化合物(3)及びその塩の総使用量は、化合物(2)の使用量に対して1~2倍モル量であることが好ましく、1~1.5倍モル量であることがより好ましい。
また、化合物(4)-1bを得る場合には、化合物(3)及びその塩の総使用量は、化合物(2)の使用量に対して2~5倍モル量であることが好ましく、2~3.5倍モル量であることがより好ましい。

【0027】
本工程の前記反応は、溶媒を用いて行うことが好ましい。
前記溶媒は、化合物(2)が溶解可能なものが好ましく、ジエチルエーテル等のエーテルが例示できる。
前記溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に選択できる。

【0028】
本工程の前記反応は、化合物(3)を用いる場合、塩基共存下で行ってもよい。
前記塩基は、無機塩基及び有機塩基のいずれでもよいが、反応液中で溶解可能なものが好ましく、溶媒を用いる場合には、その種類に応じて適宜選択すればよいが、通常は有機塩基であることが好ましい。
前記有機塩基としては、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族第三級アミン;ピリジン等の含窒素芳香族アミン等が例示できる。
塩基は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
本工程の前記反応において、塩基の使用量は、化合物(3)の使用量に対して1~5倍モル量であることが好ましく、1~3倍モル量であることがより好ましい。

【0029】
前記塩基を用いる場合、本工程の前記反応においては、化合物(2)及び化合物(3)の混合物に対して、塩基を添加することが好ましく、塩基を1~5時間かけて滴下することがより好ましい。

【0030】
本工程の前記反応において、反応温度は、-5~10℃であることが好ましく、0~7℃であることがより好ましい。
また、反応時間は、1~36時間であることが好ましく、5~24時間であることがより好ましい。

【0031】
本工程において、反応終了後は、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、化合物(4)-1を取り出すことができる。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は二種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、化合物(4)-1を取り出すことができる。また、取り出した化合物(4)-1は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は二種以上組み合わせて一回以上行うことで、精製してもよい。
また、本工程においては、反応終了後、必要に応じて後処理を行った後、化合物(4)-1を取り出すことなく、引き続き次工程を行ってもよい。

【0032】
(工程(A2))
工程(A2)では、化合物(4)-1と、化合物(5)又はその塩と、を反応させて、化合物(6)を得る。
化合物(5)は、その一端に重合性不飽和結合を有し、多端に水酸基を有する、二官能性化合物である。式中、R及びRは、一般式(1)中のR及びRと同じである。

【0033】
本工程の前記反応において、化合物(4)-1と反応させるのは、化合物(5)のみでもよいし、化合物(5)の塩のみでもよく、化合物(5)と化合物(5)の塩の両方でもよい。
化合物(5)の塩としては、化合物(5)の水酸基を構成する水素原子が、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等のアルカリ金属原子で置換されてなるもの、すなわち、アルカリ金属塩が例示できる。

【0034】
化合物(6)は、化合物(4)-1の1個又は2個のXが、一般式「-OROC(=O)C(-R)=CH」で表される基で置換された中間体である。
式中、βは1又は2である。ただしα+βは2又は3である。すなわち、化合物(6)としては、下記一般式(6a)、(6b)及び(6c)で表される化合物(以下、それぞれ「化合物(6a)」、「化合物(6b)」、「化合物(6c)」と略記することがある)が挙げられる。
OZr(OROC(=O)C(-R)=CH)X ・・・・(6a)
OZr(OROC(=O)C(-R)=CHX ・・・・(6b)
(RO)Zr(OROC(=O)C(-R)=CH)X ・・・・(6c)
(式中、R、R、R及びXは前記と同じである。)

【0035】
化合物(6a)及び(6b)は、化合物(4)-1aから生成する。
化合物(6c)は、化合物(4)-1bから生成する。

【0036】
本工程では、化合物(6a)、(6b)及び(6c)がいずれも生成する可能性があるが、後述する後処理や精製によって、目的とするものを取り出すことが可能である。また、化合物(5)又はその塩の使用量等、反応条件を調節することで、目的とするものの生成量を向上させることができる。

【0037】
本工程の前記反応における化合物(5)又はその塩の使用量は、用いる化合物(4)と、目的とする化合物(6)に応じて適宜調節すればよい。
例えば、化合物(4)-1aから化合物(6a)を得る場合、及び化合物(4)-1bから化合物(6c)を得る場合には、化合物(5)及びその塩の総使用量は、化合物(4)-1の使用量に対して1~2倍モル量であることが好ましく、1~1.5倍モル量であることがより好ましい。
また、化合物(4)-1aから化合物(6b)を得る場合には、化合物(5)及びその塩の総使用量は、化合物(4)-1の使用量に対して2~5倍モル量であることが好ましく、2~3.5倍モル量であることがより好ましい。
例えば、工程(A1)で反応終了後に化合物(4)-1を取り出さずに本工程(工程(A2))を行う場合には、工程(A1)での化合物(4)-1の生成率に基づいて、化合物(5)及びその塩の総使用量を調節するとよい。

【0038】
本工程の前記反応は、溶媒を用いて行うことが好ましい。
前記溶媒は、化合物(4)-1が溶解可能なものが好ましく、工程(A1)における溶媒と同様のものが例示できる。
前記溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に選択できる。

【0039】
本工程の前記反応は、化合物(5)を用いる場合、塩基共存下で行ってもよい。
前記塩基は、無機塩基及び有機塩基のいずれでもよいが、反応液中で溶解可能なものが好ましく、溶媒を用いる場合には、その種類に応じて適宜選択すればよいが、通常は有機塩基であることが好ましい。
前記塩基としては、工程(A1)における塩基と同様のものが例示できる。
塩基は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
本工程の前記反応において、塩基の使用量は、化合物(5)の使用量に対して1~5倍モル量であることが好ましく、1~3倍モル量であることがより好ましい。

【0040】
前記塩基を用いる場合、本工程の前記反応においては、化合物(4)-1に対して、化合物(5)及び塩基の混合物を添加することが好ましく、前記混合物を0.5~3時間かけて滴下することがより好ましい。

【0041】
本工程の前記反応において、反応温度は、-5~10℃であることが好ましく、0~7℃であることがより好ましい。
また、反応時間は、1~72時間であることが好ましく、5~60時間であることがより好ましい。

【0042】
本工程において、反応終了後は、工程(A1)における化合物(4)-1の場合と同様の方法で、化合物(6)を取り出せばよく、必要に応じて精製してもよく、又は化合物(6)を取り出すことなく、引き続き次工程を行ってもよい。

【0043】
(工程(A3))
工程(A3)では、化合物(6)と、前記化合物(3)又はその塩と、を反応させて、化合物(1)-1を得る。
本工程の前記反応において、化合物(6)と反応させるのは、化合物(3)のみでもよいし、化合物(3)の塩のみでもよく、化合物(3)と化合物(3)の塩の両方でもよい。
化合物(3)の塩としては、工程(A1)における化合物(3)の塩と同様のものが例示できる。
本工程で用いる化合物(3)又はその塩は、工程(A1)で用いた化合物(3)又はその塩と同じでもよいし、異なっていてもよい。

【0044】
化合物(1)-1は、nが2又は3である場合の化合物(1)であり、式中、n1は2又は3である。
一般式(1)-1中の複数個(2個又は3個)のRは互いに同一でも異なっていてもよい。例えば、n1が3である場合、3個のRはすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部(2個)のみ同一であってもよい。
n1が2である場合、一般式(1)-1中の複数個(2個)のR及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、n1が2である場合、複数個(2個)のRは互いに同一でも異なっていてもよい。同様に、n1が2である場合、複数個(2個)のRは互いに同一でも異なっていてもよい。
n1は3であることが好ましい。

【0045】
本工程で得られる化合物(1)-1としては、下記一般式(1)-1a及び(1)-1bで表される化合物(以下、それぞれ「化合物(1)-1a」、「化合物(1)-1b」と略記することがある)が挙げられる。
(RO)Zr(OROC(=O)C(-R)=CH ・・・・(1)-1a
(RO)Zr(OROC(=O)C(-R)=CH) ・・・・(1)-1b
(式中、R、R及びRは前記と同じである。)

【0046】
化合物(1)-1aは、化合物(6b)から生成する。
化合物(1)-1bは、化合物(6a)及び(6c)から生成する。

【0047】
本工程では、化合物(1)-1a及び化合物(1)-1bが共に生成する可能性があるが、後述する後処理や精製によって、目的とするものを取り出すことが可能である。

【0048】
本工程の前記反応における化合物(3)及びその塩の総使用量は、用いる化合物(6)に応じて適宜調節すればよい。
例えば、化合物(6b)から化合物(1)-1aを得る場合、及び化合物(6c)から化合物(1)-1bを得る場合には、化合物(3)及びその塩の総使用量は、化合物(6)の使用量に対して1~2倍モル量であることが好ましく、1~1.5倍モル量であることがより好ましい。
また、化合物(6a)から化合物(1)-1bを得る場合には、化合物(3)及びその塩の総使用量は、化合物(6)の使用量に対して2~5倍モル量であることが好ましく、2~3.5倍モル量であることがより好ましい。
例えば、工程(A2)で反応終了後に化合物(6)を取り出さずに本工程(工程(A3))を行う場合には、工程(A2)での化合物(6)の生成率に基づいて、化合物(3)及びその塩の総使用量を調節するとよい。

【0049】
本工程の前記反応は、溶媒を用いて行うことが好ましい。
前記溶媒は、化合物(6)が溶解可能なものが好ましく、工程(A1)又は(A2)における溶媒と同様のものが例示できる。
前記溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に選択できる。

【0050】
本工程の前記反応は、化合物(3)を用いる場合、塩基共存下で行ってもよい。
前記塩基は、無機塩基及び有機塩基のいずれでもよいが、反応液中で溶解可能なものが好ましく、溶媒を用いる場合には、その種類に応じて適宜選択すればよいが、通常は有機塩基であることが好ましい。
前記塩基としては、工程(A1)又は(A2)における塩基と同様のものが例示できる。
塩基は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
本工程の前記反応において、塩基の使用量は、化合物(3)の使用量に対して1~5倍モル量であることが好ましく、1~3倍モル量であることがより好ましい。

【0051】
本工程の前記反応において、反応温度は、-5~40℃であることが好ましく、0~30℃であることがより好ましい。
また、反応時間は、1~72時間であることが好ましく、5~60時間であることがより好ましい。

【0052】
本工程において、反応終了後は、工程(A1)における化合物(4)-1の場合と同様の方法で、化合物(1)-1を取り出せばよく、必要に応じて精製してもよい。

【0053】
化合物(1)-1、化合物(4)-1、化合物(6)等は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。

【0054】
製造方法1では、最初に化合物(2)と、化合物(3)又はその塩と、を反応させることにより、優れた取り扱い性かつ高効率で、化合物(1)-1が得られる。最初に化合物(2)と、化合物(5)又はその塩と、を反応させた場合には、化合物(5)又はその塩が重合してしまうことで、反応生成物がゲル化して取り扱い性が悪化してしまう。さらに、このような副反応(ゲル化)の進行に伴って、最終的に化合物(1)-1が得られないか、化合物(1)-1の収率が大幅に低下してしまうことがある。これに対して、最初に化合物(5)又はその塩ではなく、化合物(3)又はその塩を反応させることで、このようなゲル化が抑制される。

【0055】
また、製造方法1では、最後の反応で化合物(3)又はその塩を用いることでも、優れた取り扱い性かつ高純度で、化合物(1)-1が得られる。最後の反応で化合物(5)又はその塩を用い、これらが反応液中にある程度の量だけ残存した場合には、これら(化合物(5)又はその塩)を分離するのが難しく、化合物(1)-1の取り出しを簡便に行うことができない。さらに、化合物(5)又はその塩を分離しきれずに、化合物(1)-1の純度が低下してしまうことがある。反応液中で化合物(5)又はその塩の残存が認められないか、又は残存量が微量となるように、最後の反応で化合物(5)又はその塩の使用量を調節することで、これらの問題は回避できるが、最後の反応で化合物(5)又はその塩ではなく、化合物(3)又はその塩を用いることで、より効率的にこれらの問題を回避できる。

【0056】
[製造方法2]
nが1である場合の化合物(1)に相当する、下記一般式(1)-2で表される化合物(以下、「化合物(1)-2」と略記することがある)は、下記一般式(2)で表される化合物(化合物(2))と、下記一般式(3)で表される化合物(化合物(3))又はその塩と、を反応させて、下記一般式(4)-2で表される化合物(以下、「化合物(4)-2」と略記することがある)を得る工程(B1)、及び前記化合物(4)-2と、下記一般式(5)で表される化合物(化合物(5))又はその塩と、を反応させて、化合物(1)-2を得る工程(B2)を有する方法で製造できる。
ZrX ・・・・(2)
OH ・・・・(3)
OZrX ・・・・(4)-2
CH=C(-R)C(=O)OROH ・・・・(5)
OZr(OROC(=O)C(-R)=CH ・・・・(1)-2
(式中、Xはハロゲン原子であり;Rは炭素数1~8のアルキル基であり;Rは炭素数1~5のアルキレン基であり;Rは水素原子又はメチル基であり;一般式(1)-2中の複数個のR及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。)

【0057】
(工程(B1))
工程(B1)では、化合物(2)と、化合物(3)又はその塩と、を反応させて、化合物(4)-2を得る。
化合物(2)、化合物(3)及び化合物(3)の塩は、製造方法1における化合物(2)、化合物(3)及び化合物(3)の塩と同じものである。
本工程の前記反応において、化合物(2)と反応させるのは、化合物(3)のみでもよいし、化合物(3)の塩のみでもよく、化合物(3)と化合物(3)の塩の両方でもよい。

【0058】
化合物(4)-2は、化合物(2)の1個のXが、一般式「-OR」で表される基(アルコキシ基)で置換された中間体である。すなわち、化合物(4)-2は、製造方法1における化合物(4)-1aと同じものである。

【0059】
本工程の前記反応における化合物(3)及びその塩の総使用量は、化合物(2)の使用量に対して1~2倍モル量であることが好ましく、1~1.5倍モル量であることがより好ましい。

【0060】
本工程は、製造方法1の化合物(4)-1aを得る場合の工程(A1)と、同様の方法で行うことができる。例えば、反応時には溶媒、塩基を用いることができる。反応終了後は、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、化合物(4)-2を取り出すことができ、反応終了後、必要に応じて後処理を行った後、化合物(4)-2を取り出すことなく、引き続き次工程を行ってもよい。

【0061】
(工程(B2))
工程(B2)では、化合物(4)-2と、化合物(5)又はその塩と、を反応させて、化合物(1)-2を得る。
化合物(5)及び化合物(5)の塩は、製造方法1における化合物(5)及び化合物(5)の塩と同じものである。
本工程の前記反応において、化合物(4)-2と反応させるのは、化合物(5)のみでもよいし、化合物(5)の塩のみでもよく、化合物(5)と化合物(5)の塩の両方でもよい。

【0062】
化合物(1)-2は、nが1である場合の化合物(1)であり、一般式(1)-2中の複数個(3個)のR及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、3個のRはすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部(2個)のみ同一であってもよい。同様に、3個のRはすべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよく、一部(2個)のみ同一であってもよい。

【0063】
本工程の前記反応における化合物(5)及びその塩の総使用量は、化合物(4)-2の使用量に対して3~6倍モル量であることが好ましく、3~4.5倍モル量であることがより好ましい。
例えば、工程(B1)で反応終了後に化合物(4)-2を取り出さずに本工程(工程(B2))を行う場合には、工程(B1)での化合物(4)-2の生成率に基づいて、化合物(5)及びその塩の総使用量を調節するとよい。

【0064】
本工程の前記反応は、溶媒を用いて行うことが好ましい。
前記溶媒は、化合物(4)-2が溶解可能なものが好ましく、製造方法1の工程(A1)における溶媒と同様のものが例示できる。
前記溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に選択できる。

【0065】
本工程の前記反応は、化合物(5)を用いる場合、塩基共存下で行ってもよい。
前記塩基は、無機塩基及び有機塩基のいずれでもよいが、反応液中で溶解可能なものが好ましく、溶媒を用いる場合には、その種類に応じて適宜選択すればよいが、通常は有機塩基であることが好ましい。
前記塩基としては、製造方法1の工程(A1)における塩基と同様のものが例示できる。
塩基は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
本工程の前記反応において、塩基の使用量は、化合物(5)の使用量に対して1~5倍モル量であることが好ましく、1~3倍モル量であることがより好ましい。

【0066】
前記塩基を用いる場合、本工程の前記反応においては、例えば、化合物(4)-2に対して、化合物(5)及び塩基の混合物を添加することでき、この場合、前記混合物を0.5~3時間かけて滴下することが好ましい。

【0067】
本工程の前記反応において、反応温度は、-5~10℃であることが好ましく、0~7℃であることがより好ましい。
また、反応時間は、1~72時間であることが好ましく、5~60時間であることがより好ましい。

【0068】
本工程において、反応終了後は、製造方法1の工程(A1)における化合物(4)-1の場合と同様の方法で、化合物(1)-2を取り出せばよく、必要に応じて精製してもよい。

【0069】
化合物(1)-2、化合物(4)-2等は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。

【0070】
製造方法2は、反応時の化合物(3)又はその塩、及び化合物(5)又はその塩の使用量が若干異なり、それに伴い、化合物(3)又はその塩の二段階目の反応を行う工程(製造方法1における工程(A3))を省略した点以外は、製造方法1と同じものである。製造方法2は、本質的には製造方法1と同じであるといえる。

【0071】
製造方法2では、製造方法1の場合と同様に、最初に化合物(2)と、化合物(3)又はその塩と、を反応させることにより、優れた取り扱い性かつ高効率で、化合物(1)-2が得られる。最初に化合物(2)と、化合物(5)又はその塩と、を反応させた場合には、化合物(5)又はその塩が重合してしまうことで、反応生成物がゲル化して取り扱い性が悪化してしまう。さらに、このような副反応(ゲル化)の進行に伴って、最終的に化合物(1)-2が得られないか、化合物(1)-2の収率が大幅に低下してしまうことがある。これに対して、最初に化合物(5)又はその塩ではなく、化合物(3)又はその塩を反応させることで、このようなゲル化が抑制される。

【0072】
一方、製造方法2では、最後の反応で化合物(5)又はその塩を用いるが、その使用量が過剰とならないように調節して、反応液中で化合物(5)又はその塩の残存が認められないか、又は残存量が微量となるようにすることで、製造方法1において説明したような、反応液中に残存した過剰分の化合物(5)又はその塩を分離するという、操作上の負荷を低減又は回避できる。
【実施例】
【0073】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
本実施例及び比較例で用いた原料を以下に示す。
(化合物(2))
塩化ジルコニウム(IV):アルドリッチ社製
(化合物(3))
1-ブタノール:和光純薬社製
(化合物(5))
2-ヒドロキシエチルメタクリレート:和光純薬社製
(溶媒)
ジエチルエーテル:和光純薬社製
(塩基)
トリエチルアミン:和光純薬社製
【実施例】
【0074】
<化合物(1)の製造>
[実施例1]
((CHCHCHCHO)ZrOCHCHOC(=O)C(-CH)=CHの製造)
1Lの二口丸底フラスコにジエチルエーテル(400mL)と塩化ジルコニウム(IV)(23.60g、0.101モル)を入れた。前記フラスコを氷水に浸けて冷却しながら、内容物を撹拌子で撹拌して、塩化ジルコニウムを溶解させた。
次いで、フラスコを氷水温で冷却したまま、1-ブタノール(16.10g、0.217モル)をフラスコ内に加え、さらにトリエチルアミン(22.26g、0.22モル)を2時間かけてフラスコ内に滴下した後、さらに16時間内容物を撹拌して、反応させた。
次いで、フラスコを氷水温で冷却したまま、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(13.26g、0.102モル)とトリエチルアミン(22.56g、0.222 モル)の混合物を、1時間かけてフラスコ内に滴下した後、さらに48時間内容物を撹拌して、反応させた。
次いで、フラスコを氷水温で冷却したまま、1-ブタノール(8.89g、0.12モル)を1時間かけてフラスコ内に滴下した後、さらに室温下(約23℃)で48時間内容物を撹拌して、反応させた。
【実施例】
【0075】
得られた反応液をガラスフィルターでろ過し、ガラスフィルター上に残った白色粉末をジエチルエーテル及び脱水ベンゼンで洗浄した後、真空乾燥させて、白色粉末を得た(55.28g)を得た。得られた白色粉末は、反応時に副成するトリエチルアミン塩酸塩と考え られ、その収率、すなわち塩化ジルコニウム(IV)の反応率は99.1%であった。
一方、ろ液と前記白色粉末の洗浄液との混合物を減圧濃縮し、ジエチルエーテル、ベンゼン及びトリエチルアミンを留去して、目的物である化合物(1)((CHCHCHCHO)ZrOCHCHOC(=O)C(-CH)=CH)を無色~淡黄色の低粘度の液状物として得た(収率43%)。ここで、化合物(1)の収率は、塩化ジルコニウム(IV)を算出基準とするものである。
塩化ジルコニウム(IV)の反応率が99.1%と高かったにも関わらず、化合物(1)の収率が43%にとどまったのは、減圧濃縮によるジエチルエーテル、ベンゼン及びトリエチルアミンの留去時に、化合物(1)の一部も一緒に留去されてしまったためであると推測される。
【実施例】
【0076】
得られた化合物(1)は、原料である塩化ジルコニウム(IV)、1-ブタノール、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、さらに中間体、副生物と共に、下記条件でのIR、NMRによる分析に供した。
化合物(1)のIRスペクトルを図1に、塩化ジルコニウム(IV)のIRスペクトルを図2に、1-ブタノールのIRスペクトルを図3に、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのIRスペクトルを図4に、それぞれ示す。また、これらIRスペクトルの主な吸収位置と吸収の帰属を表1に示す。表1中、「2-HEMA」は2-ヒドロキシエチルメタクリレートを意味する。
さらに、化合物(1)のH-NMRスペクトルを図5に、1-ブタノールのH-NMRスペクトルを図6に、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのH-NMRスペクトルを図7に、それぞれ示す。そして、化合物(1)の13C-NMRスペクトルを図8に、1-ブタノールの13C-NMRスペクトルを図9に、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの13C-NMRスペクトルを図10に、それぞれ示す。
【実施例】
【0077】
(IR)
フーリエ変換赤外分光光度計(JASCO社製「FT-IR-430plus」)を用い、粉末試料についてはKBr錠剤法で、液状試料についてはKBr窓板を用いた液膜法で、それぞれ行った。
(NMR)
フーリエ変換核磁気共鳴装置(JEOL社製「ECX-400」)を用い、溶媒としてCDClを、内部標準としてTMS(テトラメチルシラン)を、それぞれ用いて、行った。
【実施例】
【0078】
(IRスペクトルの解析)
化合物(1)のIRスペクトル(図1)では、3347cm-1にZr-Oの伸縮振動(νZr-O)の倍音と考えられる吸収が出現し、これは、1-ブタノールのO-H伸縮振動(νO-H)の3336cm-1及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートのO-H伸縮振動(νO-H)の3429cm-1よりも高波数であった。また、化合物(1)の3000cm-1付近のメチル基及びメチレン基の吸収領域のスペクトル形状は、1-ブタノールのそれと類似の形状を示した。さらに、化合物(1)の2000~1500cm-1の領域には、エステルのC=O伸縮振動(νC=O)が1721cm-1に、>C=CH基のC=C伸縮振動(νC=C)が1637cm-1に、それぞれ出現し、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの対応する吸収と吸収位置がほぼ同じであったが、吸収強度は2-ヒドロキシエチルメタクリレートより小さかった。これらのことから、ジルコニウム原子に「CHCHCHCHO-」が、「-OCHCHOC(=O)C(-CH)=CH」よりも多く結合していると推測された。
なお、副成物であるトリエチルアミン塩酸塩のIRスペクトルは、独立行政法人産業技術総合研究所の有機化合物のスペクトルデータベースにおけるトリエチルアミン塩酸塩のIRスペクトルと一致した。
【実施例】
【0079】
【表1】
JP2016023176A_000002t.gif
【実施例】
【0080】
H-NMRスペクトルの解析)
図6(1-ブタノール)及び図7(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)を比較すると、1-ブタノールのa、b、c、eのCH基及び3個のCH基に起因する吸収が、それぞれ順に0.93ppm、1.38ppm、1.55ppm及び3.63 ppmに出現したのに対し、図5(化合物(1))のa、b、c、eのCH基及び3個のCH基に起因する吸収が、それぞれ順に0.94ppm、1.39ppm、1.55ppm及び3.64ppmに出現し、両者の吸収位置はほぼ同じであった。しかし、1-ブタノールのOH基に起因する吸収d(1.91ppm)は、化合物(1)のスペクトルでは消失していた。
また、図5(化合物(1))及び図7(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)を比較すると、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのa、c、d、e、fのCH基、2個のCH基、及び>C=CH基のプロトンに起因する吸収が、それぞれ順に1.96ppm、3.87ppm、4.29ppm、5.61ppm及び6.16ppmに出現したのに対し、化合物(1)のd、e、f、g、hのCH基、2個のCH基、及び>C=CH基のプロトンに起因する吸収が、それぞれ順に1.94ppm、3.64ppm、4.15ppm、5.55ppm及び6.10ppmに出現し、両者の吸収位置はほぼ同じであった。しかし、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのOH基に起因する吸収b(2.60ppm)は、化合物(1)のスペクトルでは消失していた。より詳細には、化合物(1)のスペクトル(図5)では、2-ヒドロキシエチルメタクリレートに由来するeのCH基の吸収が2-ヒドロキシエチルメタクリレートのそれ(cのCH基)よりも0.23ppm高磁場側に出現し、「CHCHCHCH-」のeのCH基の吸収と重なって出現していた。化合物(1)のfのCH基の吸収は、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのそれ(dのCH基)よりも0.14ppm高磁場側に出現していた。2-ヒドロキシエチルメタクリレートの>C=CH基の2個のプロトンに起因する吸収は、5.61ppm及び6.16ppmに出現していたが、化合物(1)では5.55ppm及び6.10ppmに出現し、高磁場側にシフトしていた。
化合物(1)のスペクトル(図5)で、aのCH基とdのCH基との積分強度比は、他の吸収の積分強度も参考にして算出すると約1:3であった。
【実施例】
【0081】
13C-NMRスペクトルの解析)
図8(化合物(1))及び図9(1-ブタノール)を比較すると、1-ブタノールのa、b、c、dのCH基及び3個のCH基に起因する吸収が、それぞれ順に13.76ppm、18.81ppm、34.71ppm及び62.43ppmに出現したのに対し、化合物(1)のa、c、d、fのCH基及び3個のCH基に起因する吸収は、それぞれ順に13.92ppm、19.13ppm、34.89ppm及び63.75ppmに出現した。詳細には、化合物(1)のスペクトルでは、fのCH基の吸収が、1-ブタノールのそれ(dのCH基)よりも1.32ppm低磁場側に出現したが、a、c、dの吸収は、1-ブタノールのそれら(a、b、cの吸収)とほぼ同じ位置であった。
また、図8(化合物(1))及び図10(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)を比較すると、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのa、b、cのCH基及び2個のCH基に起因する吸収が、それぞれ順に18.25ppm、61.16ppm及び66.31ppmに出現したのに対し、化合物(1)のb、e、gのCH基及び2個のCH基に起因する吸収が、それぞれ順に18.37ppm、62.68ppm及び64.66ppmに出現し、吸収位置の変動は2-ヒドロキシエチルメタクリレートに対して、それぞれ順に0.12ppm、1.52ppm及び-1.65ppmであり、高磁場側にシフトしていた。また、2-ヒドロキシエチルメタクリレートのd、e、fのCH=C基及びC=O基に起因する吸収が、それぞれ順に126.03ppm、135.93ppm及び167.72ppmに出現したのに対し、化合物(1)のh、i、jのCH=C基及びC=O基に起因する吸収が、それぞれ順に125.30ppm、136.57ppm及び167.73ppmに出現し、吸収位置の変動は2-ヒドロキシエチルメタクリレートに対して、それぞれ順に-0.73ppm、0.64ppm及び0.01ppmであった。
【実施例】
【0082】
以上のIR、H-NMR及び13C-NMRによる解析結果から、化合物(1)が確かに(CHCHCHCHO)ZrOCHCHOC(=O)C(-CH)=CHであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、ジルコニアを主成分とするセラミックスと、(メタ)アクリレートレジン等のレジンと、を接着するカップリング剤として利用可能であり、歯科用セラミックス材料の分野におけるカップリング剤として特に有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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