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明細書 :蛍光物質及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2016-044194 (P2016-044194A)
公開日 平成28年4月4日(2016.4.4)
発明の名称または考案の名称 蛍光物質及びその製造方法
国際特許分類 C09K  11/06        (2006.01)
FI C09K 11/06
請求項の数または発明の数 5
出願形態 OL
全頁数 14
出願番号 特願2014-167282 (P2014-167282)
出願日 平成26年8月20日(2014.8.20)
発明者または考案者 【氏名】岩淵 範之
【氏名】松藤 寛
【氏名】砂入 道夫
【氏名】瀧原 速仁
【氏名】佐々木 太平
【氏名】白井 智也
出願人 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100126882、【弁理士】、【氏名又は名称】五十嵐 光永
【識別番号】100175824、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 淳一
審査請求 未請求
要約 【課題】新規の蛍光物質及びその製造方法の提供。
【解決手段】3-O-メチルガリック酸及びその塩からなる群から選択される1種以上と、トリプトン、ペプトン、及び天然物からの抽出物である培養基材からなる群から選択される1種以上とを混合し、反応させて得られた蛍光物質;3-O-メチルガリック酸及びその塩からなる群から選択される1種以上と、トリプトン、ペプトン、及び天然物からの抽出物である培養基材からなる群から選択される1種以上とを混合し、反応を行う工程を有する蛍光物質の製造方法。
【選択図】なし
特許請求の範囲 【請求項1】
3-O-メチルガリック酸及びその塩からなる群から選択される1種以上と、トリプトン、ペプトン、及び天然物からの抽出物である培養基材からなる群から選択される1種以上とを混合し、反応させて得られた蛍光物質。
【請求項2】
芳香族環を有しない請求項1に記載の蛍光物質。
【請求項3】
分子量が1~7kDaである請求項1又は2に記載の蛍光物質。
【請求項4】
3-O-メチルガリック酸及びその塩からなる群から選択される1種以上と、トリプトン、ペプトン、及び天然物からの抽出物である培養基材からなる群から選択される1種以上とを混合し、反応を行う工程を有する蛍光物質の製造方法。
【請求項5】
酸素ガスを含む雰囲気下で前記反応を行う請求項4に記載の蛍光物質の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の蛍光物質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光材料は、その多彩で鮮やかな発色性、優れた加工性に加え、検出感度が高く、分子設計により種々の機能付加が可能であり、発光素子、トレーサー、診断薬、試薬等、種々の分野への利用が見込まれることから、優れた化学素材として大きく期待されている。このような有機発光材料のうち、有機蛍光物質は、通常、その構造中に芳香族環を有しており、これまでに主に合成化学的手法によって得られたものが種々報告されている。また、天然由来成分の原料の共存下で、シュードモナス(Pseudomonas)属の微生物を培養する非合成化学的手法により、有機蛍光物質を産生する手法も開示されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Kolesnikova IG, Sergeeva LN, Bekhtereva MN, Khokhlova IuM. Formation of pigments by Pseudomonas bacteria in relation to the ratio of medium components. Mikrobiologiia. 1971 May-Jun;40(3):485-9.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、新規の蛍光物質を得る試みは、その蛍光物質の有用性の高さに比して、未だ十分に為されたとはいえないのが実情である。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、新規の蛍光物質及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、3-O-メチルガリック酸及びその塩からなる群から選択される1種以上と、トリプトン、ペプトン、及び天然物からの抽出物である培養基材からなる群から選択される1種以上とを混合し、反応させて得られた蛍光物質を提供する。
【0007】
本発明の蛍光物質は、芳香族環を有しないものが好ましい。
本発明の蛍光物質は、分子量が1~7kDaであるものが好ましい。
【0008】
また、本発明は、3-O-メチルガリック酸及びその塩からなる群から選択される1種以上と、トリプトン、ペプトン、及び天然物からの抽出物である培養基材からなる群から選択される1種以上とを混合し、反応を行う工程を有する蛍光物質の製造方法を提供する。
本発明の蛍光物質の製造方法においては、酸素ガスを含む雰囲気下で前記反応を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、新規の蛍光物質及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1で得られた蛍光物質の励起光及び蛍光のスペクトルである。
【図2】実施例1で得られた蛍光物質のATR-FT/IRスペクトルのデータである。
【図3】3MGA、SYAL及びSYACのATR-FT/IRスペクトルのデータである。
【図4】実施例1で得られた蛍光物質のH-NMRスペクトルのデータである。
【図5】実施例1で得られた蛍光物質の13C-NMRスペクトルのデータである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る蛍光物質は、3-O-メチルガリック酸(3,4-ジヒドロキシ-5-メトキシ安息香酸、以下、「3MGA」と略記することがある)及びその塩(以下、3MGAとその塩とをまとめて「3MGA等」と略記することがある)からなる群から選択される1種以上と、トリプトン、ペプトン、及び天然物からの抽出物である培養基材(以下、「培地原料」と略記することがある)からなる群から選択される1種以上とを混合し、反応させて得られたものである。
なお、本明細書において、「3MGA等」との記載は、特に断りのない限り、上記のように3MGA及びその塩を包括したものを意味するものとする。

【0012】
本発明に係る蛍光物質は、通常、微生物の培養に使用される培地原料と、3MGAという特定の原料化合物とを用いて、微生物の培養を伴うことなく、反応を行うことで得られる、新規の蛍光性高分子化合物である。

【0013】
3MGAは、市販品が入手可能である。
一方、下記式に示すように、3MGAは、リグニン由来の成分であるシリングアルデヒド(以下、「SYAL」と略記することがある)から、シリンガ酸(以下、「SYAC」と略記することがある)を経て誘導可能な化合物である。3MGAは、このような経路を経る化学的手法によっても得ることが可能である。リグニンは、植物細胞壁の15~30%を占める主要な成分であり、複雑な構造を有し、未利用バイオマスの一つである。本発明は、このようなリグニン由来の成分であるSYALが利用可能であり、未利用バイオマスの有効利用という観点でも非常に有用性が高い。

【0014】
【化1】
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【0015】
本発明においては、前記培地原料との混合対象として、3MGA及びその塩からなる群から選択される1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。すなわち、本発明においては、3MGA又は3MGAの塩を単独で用いてもよいし、3MGA及び3MGAの塩を併用してもよい。また、3MGAの塩を用いる場合には、この塩は1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。

【0016】
3MGAの塩としては、カルボキシ基(-COOH)が塩を形成したものが例示でき、より具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;アンモニウム塩(アンモニアとの反応で形成した塩、「-COONH」を有する塩);トリエチルアンモニウム塩、ピリジニウム塩等の第一級、第二級又は第三級アミン塩等が例示できる。

【0017】
本発明においては、3MGAとの混合対象として、トリプトン、ペプトン、及び天然物からの抽出物である培養基材からなる群から選択される1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。これら培地原料は、微生物の培養で用いる培地の構成原料(培養基材)であり、タンパク質又はペプチドに相当する。
トリプトン及びペプトンも天然物からの抽出物に分類可能であるが、前記「天然物からの抽出物である培養基材」とは、ここではトリプトン及びペプトン以外のものを意味する。

【0018】
培養基材が抽出される前記天然物は特に限定されず、微生物の培養に好適なものを適宜選択でき、各種微生物、動物及び植物が例示できる。
前記天然物からの抽出物で好ましいものとしては、酵母エキス、肉エキス(獣肉エキス、魚肉エキス等)、麦芽エキス等が例示できる。

【0019】
3MGA等は、あらかじめ溶媒に溶解させた溶液として、前記培地原料との混合に供することが好ましい。このようにすることで、蛍光物質の収量が顕著に向上する。
3MGA等を溶解させる溶媒としては、水、有機溶媒が例示でき、前記有機溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド等、親水性溶媒が例示できる。ここで、「親水性溶媒」とは、水と均一に混合可能な溶媒を意味する。

【0020】
3MGA等の前記溶液において、3MGA等の合計濃度は、特に限定されないが、500~1500mg/mLであることが好ましい。

【0021】
前記培地原料は、あらかじめ溶媒に溶解させた溶液として、3MGA等との混合に供することが好ましい。このようにすることで、蛍光物質の収率が向上する。
培地原料を溶解させる溶媒としては、水が例示できる。すなわち、培地原料の溶液としては、水溶液が例示でき、例えば、目的とする培地原料を含有する液状の培地自体を用いてもよい。

【0022】
3MGA等と前記培地原料との混合時には、3MGA等の前記溶液と培地原料の前記溶液とを混合することが特に好ましい。

【0023】
3MGA等と前記培地原料との混合時において、培地原料の使用量は、3MGA等の使用量1質量部に対して、0.5~400質量部であることが好ましく、0.8~250質量部であることがより好ましく、2.5~80質量部であることが特に好ましい。培地原料の使用量がこのような範囲であることで、蛍光物質の収量がより向上する。

【0024】
3MGA等と前記培地原料との混合物は、通常、溶媒を含有する混合液であり、例えば、3MGA等の前記溶液と、培地原料の前記溶液とを混合した場合には、得られた混合液でそのまま反応を行えばよいし、3MGA等の前記溶液と、培地原料の前記溶液と、のいずれか一方又は両方で用いた溶媒を、3MGA等と前記培地原料に別途添加して混合液とし、反応を行ってもよい。また、前記溶媒とは異なるその他の溶媒を、3MGA等と前記培地原料に別途添加して、反応を行ってもよい。

【0025】
3MGA等と前記培地原料とを混合して得られた混合液において、反応前の3MGA等の濃度(初期濃度)は、0.2~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
また、前記混合液において、反応前の前記培地原料の濃度(初期濃度)は、0.01~15質量%であることが好ましく、0.05~10質量%であることがより好ましい。

【0026】
3MGA等と前記培地原料とを混合して得られた混合液においては、3MGA等が溶解していることが好ましい。このようにすることで、蛍光物質の収量が顕著に向上する。
同様に、前記混合液においては、前記培地原料が溶解していることが好ましい。このようにすることで、蛍光物質の収量が向上する。
そして、前記混合液においては、3MGA等及び前記培地原料が共に溶解していることが特に好ましい。

【0027】
前記反応は、本発明の効果を損なわない範囲内において、3MGA等、前記培地原料及び溶媒以外に、これらに該当しないその他の成分を用いて行ってもよい。
前記その他の成分の種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択できる。また、前記その他の成分の使用量も、その種類に応じて適宜調節すればよい。
本発明においては、蛍光物質の生成が阻害される傾向があることから、前記その他の成分として、グルコース等の糖類(単糖、オリゴ糖)を用いないことが好ましい。

【0028】
3MGA等と前記培地原料との混合後に行う反応の条件は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
通常、反応温度は、4~80℃であることが好ましく、15~60℃であることがより好ましく、20~40℃であることが特に好ましい。
反応時間は、反応温度に応じて適宜調節すればよいが、12~120時間であることが好ましく、24~72時間であることがより好ましい。

【0029】
前記反応は、空気雰囲気下等、酸素ガスを含む雰囲気下で行うことが好ましい。このようにすることで、蛍光物質の収量が顕著に向上する。

【0030】
前記混合液の溶媒成分として水を用いた場合には、3MGA等と前記培地原料とを混合した直後の混合液のpHは、6~8であることが好ましい。

【0031】
前記反応は、前記混合液を撹拌又は振とうしながら行うことが好ましい。
撹拌は、例えば、撹拌子又は撹拌翼等を回転させる方法、超音波を加える方法等、公知の方法で行えばよい。
振とうは、例えば、振とう培養器を用いる方法等、公知の方法で行うことができる。

【0032】
このように、本発明に係る蛍光物質は、3MGA等からなる群から選択される1種以上と、前記培地原料からなる群から選択される1種以上とを混合し、反応を行う工程を有する方法により製造でき、必要に応じて、その他の工程を行って製造してもよい。
例えば、反応終了後は、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、蛍光物質を取り出すことができる。すなわち、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮、ゲルろ過等の後処理操作をいずれか単独で、又は二種以上組み合わせて行い、濃縮、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過、凍結乾燥等の操作をいずれか単独で、又は二種以上組み合わせて行うことで、蛍光物質を取り出せる。また、蛍光物質は、さらに必要に応じて、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過、抽出、溶媒による撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は二種以上組み合わせて一回以上行うことで、精製してもよい。
また、反応終了後は、必要に応じて後処理を行った後、蛍光物質を取り出すことなく、引き続き目的とする用途に蛍光物質を用いてもよい。

【0033】
本発明に係る蛍光物質は、核磁気共鳴分光法(NMR)、赤外分光法(IR)等の分析によって、有機化合物であるものの、芳香族環を有しないことが確認されている。ここで「芳香族環」とは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の両方を含む概念である。従来知られている有機蛍光物質は芳香族環を有しており、本発明に係る蛍光物質は、非芳香族性の有機化合物である点で、従来のものとは全く相違するものである。
そして、本発明に係る蛍光物質は、芳香族環を有していないにもかかわらず、芳香族環を有する3MGAを一つの原料として得られるものであり、これは全く意外なことである。

【0034】
本発明に係る蛍光物質は、分子量が好ましくは1~7kDa、より好ましくは2~6kDaであり、数平均分子量が好ましくは2~6kDa、より好ましくは3~5kDaである。分子量、数平均分子量は、HPLC分析でのピーク面積値のデータを用いて算出する方法等、公知の方法で算出できる。

【0035】
本発明に係る蛍光物質は、例えば、極大波長が330~400nmの光で励起され、極大波長が410~520nmの蛍光を発生する。すなわち、前記蛍光物質は、紫外線又は可視光線により励起され、紫色~緑色の蛍光を発生する。

【0036】
本発明に係る蛍光物質は、従来の蛍光物質のように芳香族環を有していることによる制約を受けない。したがって、本発明に係る蛍光物質は、従来の蛍光物質では実現できなかった新規の利用法の開発に有望なものである。
【実施例】
【0037】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
なお、本実施例における「数平均分子量」は、特に断りの無い限り、HPLC分析でのピーク面積値のデータを用いて算出したものである。
【実施例】
【0038】
<蛍光物質の製造>
[実施例1]
濃度が5質量%であるトリプトン水溶液と、滅菌済みの濃度が1000mg/mLである3MGAのDMSO溶液とを混合し、混合液を得た。このとき、得られた混合液中での反応前の濃度(初期濃度)が、トリプトンは5質量%となるように、3MGAは1質量%となるように調節した。すなわち、トリプトン水溶液と、3MGAの前記滅菌済みDMSO溶液との混合時において、トリプトンの使用量は、3MGAの使用量1質量部に対して、5質量部である。3MGAの前記滅菌済みDMSO溶液は、濃度が1000mg/mLである3MGAのDMSO溶液を調製し、細孔径が0.22μmのフィルターを用いて、このDMSO溶液をろ過滅菌することで調製した。
ここで、3MGAの前記滅菌済みDMSO溶液を調製した理由は、培地原料を用いるにあたって、3MGA又はDMSOに由来する微生物の混入を抑制し、蛍光物質の製造時における微生物の関与の可能性を排除しておくためであり、これは本発明においては任意の操作である。本発明に係る蛍光物質の製造時に、上記のような滅菌操作は、必ずしも必要ではない。
また、用いたトリプトンは、原料である牛乳カゼインを消化酵素であるブタすい臓抽出物で消化(分解)したもの(日本BD社製「BD BactoTM Tryptone」)である。
【実施例】
【0039】
次いで、得られた混合液を、28℃、110rpmの条件で48時間好気的に振とうした。
次いで、ロータリーエバポレーターを用いて得られた反応液を濃縮乾固し、メタノールを添加して乾固物を溶解させた。Shepadex LH20カラム(20 mm i.d.×240 mm)を用いて、得られたメタノール溶液をサイズ排除クロマトグラフィー(溶出液:メタノール、流速1.5mL/分、室温)に供し、未反応の3MGAを含まず、且つUV照射によって蛍光が認められる画分を得た。
次いで、この画分を濃縮乾固し、得られた乾固物を水に溶解させた後、凍結乾燥させて、蛍光物質の粉末を得た。
【実施例】
【0040】
得られた蛍光物質は、極大波長が365nmの励起光の照射によって、極大波長が500nmの蛍光を発生した。このときの励起光及び蛍光のスペクトルを図1に示す。
【実施例】
【0041】
また、得られた蛍光物質は、主成分の分子量(分子量分布でピークトップの分子量)が4.2kDaであり、数平均分子量は3.2kDaであった。
【実施例】
【0042】
得られた蛍光物質について、ATR-FT/IR、H-NMR及び13C-NMRによる構造解析を行った。このとき取得したATR-FT/IRのスペクトルデータを図2に示す。また、参考までに、原料として用いた3MGAと、その類縁体であるSYAL、SYACのATR-FT/IRのスペクトルデータを図3に示す。図3には、それぞれの一部のピークの帰属を示した。そして、得られた蛍光物質のH-NMRのスペクトルデータを図4に、13C-NMRのスペクトルデータを図5に、それぞれ示す。
【実施例】
【0043】
ATR-FT/IRは、フーリエ変換赤外分光光度計(日本分光社製「FT/IR-6600型」、ATR PRO one(プリズム:ダイアモンド))、検出器(DLATGS)を用いて、一回反射型ATR(Attenuated Total Reflection)法で行い、得られたスペクトルは、ATR補正を行って得られたものである。分析は、分解4cm-1、積算128回の条件で行った。また、FT-IRでは、試料の屈折率を1.5、プリズムの屈折率を2.4とし、入射光の入射角度を45°に設定して解析を行った。
H-NMR及び13C-NMRは、日本電子社製「ECA-500」を用いて分析を行い、溶媒として重水(DO)を用い、積算回数をH-NMRでは32回、13C-NMRでは15000回とした。
【実施例】
【0044】
図2及び図3から明らかなように、蛍光物質のスペクトルは、3MGA、SYAL及びSYACのスペクトルとは異なっていた。
図2に示すように、蛍光物質はATR-FT/IRのスペクトルにおいて、C=Oに由来するシグナル(1650cm-1付近)と、O-Hに由来するシグナル(3300cm-1付近)が見られ、それ以外のシグナル(ピーク)はブロードであった。ただし、芳香族環に由来するシグナル(900~650cm-1、芳香族環のC-H面外変角振動)が見られず、蛍光物質が非芳香族の有機化合物であることを示していた。
【実施例】
【0045】
また、図4に示すように、H-NMRのスペクトルにおいて、6~8ppm付近の領域に、芳香族環に由来すると解されるシグナルが見られるが、これらシグナルは強度が小さく、その他のシグナルの強度と整合していなかった。これは、蛍光物質が芳香族環を有しているのではなく、芳香族環を有する不純物が蛍光物質に混入していることを示していた。
【実施例】
【0046】
また、図5に示すように、13C-NMRのスペクトルにおいて、通常、芳香族環に由来するシグナルが見られる110~130ppm付近に、シグナルはほとんど認められず、蛍光物質が非芳香族性の有機化合物であることを示していた。
【実施例】
【0047】
このように、本発明の蛍光物質は、芳香族環を有しない高分子化合物であることが確認された。
なお、蛍光物質のH-NMR及び13C-NMRのスペクトルは、3MGA、SYAL及びSYACのH-NMR並びに13C-NMRのスペクトルとは異なっていた。
【実施例】
【0048】
[実施例2~9]
表1に示すように、培地原料の種類と、混合液中での反応前の培地原料の濃度(初期濃度)とを、表1に示すとおりとした点以外は、実施例1と同様に、蛍光物質を得た。例えば、実施例6では、トリプトンを用いてその前記初期濃度を1質量%とするのに代えて、トリプトン及び酵母エキスを用い、トリプトンの前記初期濃度を1質量%、酵母エキス(固形分)の前記初期濃度を0.5質量%とした点以外は、実施例1と同様に蛍光物質を得た。
なお、LB培地は、トリプトン及び酵母エキスを、トリプトン/酵母エキス(固形分)=2/1(質量比)で含有するものであり、実施例8では、このLB培地と、3MGAの前記滅菌済みDMSO溶液とを混合して、得られた混合液中での前記初期濃度が、トリプトンは1質量%となるように、酵母エキス(固形分)は0.5質量%となるように調節した。
また、MB培地は、ペプトン及び酵母エキスを、ペプトン/酵母エキス(固形分)=1/1(質量比)で含有するものであり、実施例9では、このMB培地と、3MGAの前記滅菌済みDMSO溶液とを混合して、得られた混合液中での前記初期濃度が、ペプトン及び酵母エキス(固形分)のいずれもが0.5質量%となるように調節した。
そして、各実施例において、48時間好気的に撹拌した後の濃縮乾固前の反応液の蛍光強度を測定した。その結果を、励起光及び蛍光の極大波長と共に、表1に示す。
【実施例】
【0049】
なお、これら実施例では、培地原料の水溶液と、3MGAの前記滅菌済みDMSO溶液との混合時において、培地原料の使用量(固形分)は、3MGAの使用量1質量部に対して、それぞれ、10質量部(実施例2)、5質量部(実施例3)、1質量部(実施例4)、5質量部(実施例5)、15質量部(実施例6)、6質量部(実施例7)、15質量部(実施例8)、10質量部(実施例9)である。
【実施例】
【0050】
【表1】
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【実施例】
【0051】
実施例2~9で得られた蛍光物質は、蛍光の極大波長に違いが見られるものの、蛍光スペクトルはほぼ同じであり、これら実施例では、培地原料の種類によらず、いずれも類似の蛍光物質が得られた。
また、表1から明らかなように、得られた蛍光物質は、トリプトンを用いた場合(実施例2、6、8)に、蛍光強度が比較的高かった。
【実施例】
【0052】
[実施例10~15、比較例1]
表2に示すように、混合液中での反応前のトリプトンの濃度(初期濃度)を、1質量%に代えて、表1に示すとおりとした点以外は、実施例1と同様に蛍光物質を得た(実施例10~15)。さらに、トリプトンを用いなかった点以外は、実施例1と同様に蛍光物質の製造を試みた(比較例1)。
そして、各実施例及び比較例において、48時間好気的に撹拌した後の濃縮乾固前の反応液の蛍光強度を測定した。その結果を、励起光及び蛍光の極大波長と共に、表2に示す。
【実施例】
【0053】
なお、これら実施例では、培地原料(トリプトン)の水溶液と、3MGAの前記滅菌済みDMSO溶液との混合時において、培地原料の使用量(固形分)は、3MGAの使用量1質量部に対して、それぞれ、10質量部(実施例10)、5質量部(実施例11)、25質量部(実施例12)、50質量部(実施例13)、100質量部(実施例14)、200質量部(実施例15)である。
【実施例】
【0054】
【表2】
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【実施例】
【0055】
実施例10~15で得られた蛍光物質は、蛍光の極大波長に違いが見られるものの、蛍光スペクトルはほぼ同じであり、これら実施例では、トリプトンの初期濃度によらず、いずれも類似の蛍光物質が得られた。
また、表2から明らかなように、実施例10~13で、蛍光強度が比較的高かった。
一方、トリプトンを用いなかった比較例1では、蛍光物質が得られず、蛍光強度を測定できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、発光素子、トレーサー、診断薬、試薬等、蛍光物質が関わる分野全般で利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4